Volume 63,
Issue 10,
2008
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アプローチ
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最新医学 63巻10号, 2005-2015 (2008);
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肥満症は,エネルギー摂取と消費のバランス異常に基づく過剰な脂肪蓄積によって発症する.このエネルギーバランス調節機構の中心に視床下部があり,食行動および末梢エネルギー代謝を制御している.視床下部にはエネルギー動態をモニターするセンサーがあり,レプチンをはじめとする末梢由来のホルモンや代謝産物,遠心性および求心性の自律神経系,脳内の各種神経ペプチドやモノアミン類が,その調節系を駆動する情報伝達系として機能している.
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中枢からのアプローチ
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最新医学 63巻10号, 2016-2020 (2008);
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視床下部において摂食行動と相関してその発現が変動するNesfatin-1 は,外因性に第三脳室内に投与されても皮下などの末梢に投与されても動物の摂食行動を抑制する.このようなNesfatin-1 による摂食抑制機構には,中枢においてレプチン系とは独立したメラノコルチン系の関与が推察されるが,これとともに最近の研究成果では,視床下部において認められるオキシトシンやメラニン凝集ホルモン(MCH)の変動が関与する可能性も示唆される.
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最新医学 63巻10号, 2021-2028 (2008);
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近年,摂食行動を調節するシグナル分子として視床下部AMP キナーゼ(AMPK)が注目されている.視床下部AMPK は,栄養素やホルモンなどさまざまな摂食抑制因子によって活性が低下し,逆に飢餓や摂食促進因子によって亢進する.AMPK は末梢組織と同様,神経細胞(あるいはグリア細胞)内において代謝を変化させ,これを細胞内シグナルとして用いることにより摂食行動を制御している可能性がある.
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最新医学 63巻10号, 2029-2032 (2008);
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視床下部に存在する神経ヒスタミンは,摂食調節,エネルギー消費調節に重要であり,また肥満遺伝子産物であるレプチンの脳内ターゲットの1つとしても機能している.また神経ヒスタミンは,ヒスタミンH1 受容体を介した食事のリズム調節を介してもエネルギー代謝調節をしていると考えられている.そこで本稿では,主にヒスタミン神経系とエネルギー代謝調節,摂食リズムとの関係について述べる.
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最新医学 63巻10号, 2033-2041 (2008);
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レプチンとインスリンが摂食を抑制する分子機序として,視床下部におけるPI3キナーゼ/Akt/FoxO1 経路とJAK2/STAT3 経路が重要である.FoxO1 とSTAT3は視床下部弓状核において,摂食調節神経ペプチドAgRP とPOMC の転写調節を介して中枢性の摂食調節にかかわっている.
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末梢からのアプローチ
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最新医学 63巻10号, 2042-2049 (2008);
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肥満とは体脂肪が過剰に蓄積された状態であり,脂肪細胞自身のサイズの増大(肥大化)と脂肪細胞の数の増加(過形成)が関与しているものと考えられる.最新の研究成果は,脂肪細胞の肥大化の調節機構や肥大化によりもたらされる肥満症病態の介在因子を明らかにし,「肥満症治療のアプローチ」の可能性が探索されている.一方,肥満発症における脂肪細胞の分化・増殖機構を標的とした肥満症治療のトランスレーショナルリサーチが実際可能かどうかは,さらなる検討が必要である.
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最新医学 63巻10号, 2050-2057 (2008);
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肥満の脂肪組織にはマクロファージ浸潤の増加が認められ,脂肪組織の炎症性変化における病態生理的意義が注目されている.我々はすでに,脂肪細胞に由来する飽和脂肪酸がマクロファージの炎症性変化を誘導し,これによりマクロファージにおけるTNFα 産生が増加して脂肪細胞の炎症性変化を増大するという「悪循環」を見いだした.肥満の脂肪組織における炎症性変化は,メタボリックシンドロームの新しい創薬ターゲットになることが期待される.
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最新医学 63巻10号, 2058-2069 (2008);
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我々は抗糖尿病・抗動脈硬化ホルモンであるアディポネクチンの受容体AdipoR1,R2 をクローニングした.AdipoR1,R2 は,アディポネクチンによるAMP キナーゼやPPARα 活性化の代謝作用を伝達した.肥満ではAdipoR1,R2 の発現レベルの低下を認め,アディポネクチン抵抗性を来し,血中アディポネクチンの低下と相まって,インスリン抵抗性が惹起される.PPARα アゴニストはAdipoR1,R2 の発現を増加させた.高活性型の高分子量アディポネクチンを増加させるPPARγ アゴニストとの併用は相加効果が期待される.酵母のAdipoR ホモログ(PHO36)のリガンドであるオスモチンが,骨格筋細胞においてAdipoR を介してAMP キナーゼを活性化した.AdipoR アゴニストを開発できる可能性がある.
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最新医学 63巻10号, 2070-2077 (2008);
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細胞内でグルココルチコイドの再活性化を担う酵素,11β-HSD1 の発現や活性は,肥満の脂肪組織において組織特異的に上昇し,インスリン抵抗性や種々の代謝パラメーターとよく相関する.最近の研究から,11β-HSD1 の調節異常を基盤とする脂肪組織の機能異常(アディポステロイド)がストレス誘導性肥満の病態に関与することや肥満の脂肪組織で生じている炎症に関与することが明らかとなり,メタボリックシンドローム治療標的として注目される.
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最新医学 63巻10号, 2078-2084 (2008);
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PPAR ファミリーは,脂質をリガンドとする核内受容体として,エネルギー代謝転写制御に中心的な役割を担っている.PPARα は肝臓を中心に脂肪酸燃焼系を活性化し,血中トリグリセリドを低下させる.PPARδ は骨格筋の燃焼系活性化などにおいて同様の作用が注目されている.PPARγ は脂肪分化あるいは脂肪酸取り込みを制御する.各薬剤リガンドは,それぞれの発現組織でエネルギー代謝を改善させる生活習慣病治療標的として期待されている.
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最新医学 63巻10号, 2085-2092 (2008);
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肥満,インスリン感受性に影響を与えるステロイドホルモンとして性ステロイド(テストステロン,エストロゲン)を取り上げ,末梢作用の観点から概説した.性ステロイドには抗肥満作用があり,加齢に伴う性ステロイドの低下は,生活習慣病,特に内臓脂肪型肥満を基盤とするメタボリックシンドロームの発症の重要な背景要因となっている可能性がある.
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中枢と末梢のクロストーク
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最新医学 63巻10号, 2093-2101 (2008);
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近年,エネルギー代謝のホメオスタシス維持における臓器間相互作用の重要性が注目されている.脳(中枢)と末梢臓器(肝,胃・腸管,脂肪など)の相互作用もその1つであり,最近の研究の進歩は著しい.脳はエネルギー代謝のオーガナイザーとして中心的な役割を果たしており,特に個体レベルで末梢臓器の代謝を解析する場合,脳との相互作用が鍵となることも多い.本稿ではエネルギー代謝調節の中枢−末梢のクロストークについて解説する.
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最新医学 63巻10号, 2102-2108 (2008);
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摂食行動には末梢および中枢のさまざまな因子が多層的かつ多重的に関与しており,それらの因子が精巧なネットワークを構築することで生体のエネルギーバランスは維持されている.迷走神経求心路は,摂食調節に関連する末梢の情報を中枢へ伝達する重要なルートとして認識されている.迷走神経による情報は液性因子からの情報と統合され,脳内神経ネットワークを作動させることにより,エネルギー収支バランスの維持に寄与しているものと考えられる.
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最新医学 63巻10号, 2109-2115 (2008);
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外来性に導入したレプチンは,食事量を適度に抑えたうえに,ケトンを産生しない脂肪分解を起こす.また,白色脂肪細胞を脂肪燃焼細胞へと形質転換させる.レプチンによる肥満治療が成功した際の最大のベネフィットである.一方で,内因性高レプチン血症ではこの作用は発揮されず,むしろレプチン分泌は持続し,肥満時に見られる非脂肪組織での脂肪毒性を抑制する.レプチン抵抗性とレプチンの生理機能を再検討する.
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【エッセー】
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代謝病の周辺(10)
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最新医学 63巻10号, 2116-2119 (2008);
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【対 談】
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最新医学 63巻10号, 2120-2126 (2008);
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【トピックス】
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最新医学 63巻10号, 2127-2132 (2008);
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最新医学 63巻10号, 2133-2138 (2008);
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【今月の略語】
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最新医学 63巻10号, 2139-2144 (2008);
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