最新医学
Volume 64, Issue 1, 2009
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特集【睡眠時無呼吸−最近の進歩と展望−】
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アプローチ
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社会生活と予後に大きな影響を与える重要な病態
64巻1号(2009);View Description Hide Description米国においては1,500 万人の睡眠時無呼吸が存在するとの報告が見られる.閉塞型睡眠時無呼吸の50% には高血圧があり,40% がやがて糖尿病になり,高血圧患者の30%,糖尿病患者の23% は閉塞型睡眠時無呼吸患者とされる.中枢型睡眠時無呼吸も,心不全患者の予後を左右することが明らかになっている.睡眠時無呼吸は,睡眠不足以外では日中の過度の眠気の最も頻度の高い原因である.顔面形態などの影響もあり,本邦の閉塞型睡眠時無呼吸の頻度は欧米と同程度とされる.睡眠時無呼吸は学際的に検討が必要な領域と考えられる.
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睡眠時無呼吸の病態生理と呼吸調節
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閉塞型睡眠時無呼吸— 咽頭閉塞とその周期性のメカニズム—
64巻1号(2009);View Description Hide Description閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)の病態は,依然としてすべてが解明されたわけではない.肥満あるいは顎顔面形態異常による咽頭周囲の解剖学的アンバランスが,咽頭閉塞性を増加させることは確かなようである.さらに,特に肥満OSA 患者では,肺容量減少が咽頭閉塞性増加に大きく寄与しているようである.呼吸器系の不安定性が高い患者では,OSA を周期的に繰り返し重症化しやすいと考えられている. -
中枢型睡眠時無呼吸の病態生理
64巻1号(2009);View Description Hide Description中枢型睡眠時無呼吸はまれな疾患であり,閉塞型睡眠時無呼吸に比べて臨床的重要性は少ないと考えられている.しかし高齢者,特に嚥下障害や自律神経障害を伴う症例においては,考えられているより頻度が高く,見逃されている可能性がある.近年,脳幹部呼吸調節神経機構の解明が進み,さらに先天性肺胞低換気症候群の原因遺伝子も発見されて,中枢型睡眠時無呼吸の病態解明は急速に進んでいる.
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疫学と診断
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診断と疫学の新展開
64巻1号(2009);View Description Hide Description米国を中心に行われた疫学研究の成果により,「閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)関連症状+無呼吸低呼吸指数(AHI)5 以上」のほかに「自覚症状の有無にかかわらず,AHI が15 以上」をOSAS と診断する基準が提唱されている.診断に当たっては過眠を呈する類似疾患の鑑別が重要であり,スクリーニング検査に基づく診断アルゴリズムが提示されている.勤労男性を対象とした日本人の睡眠時無呼吸症候群(SAS)有病率が明らかにされ,予想以上の高率であった.小児のOSAS の実態解明(有病率,病態,健康被害や学習障害,QOL 障害の解明)が急務である. -
日本の睡眠呼吸障害の特徴
64巻1号(2009);View Description Hide Description日本人の睡眠呼吸障害の危険因子は,欧米と同様に男性,高齢,肥満であることが明らかになってきた.特記すべきことは,日本人は欧米人に比して肥満の程度が軽いにもかかわらず,有病率は肥満者が多い欧米と変わらないかむしろ多いということである.日本人は解剖学的に睡眠呼吸障害を発症しやすい顔面頭蓋骨格をしているため,わずかな体重増加でも睡眠呼吸障害を生じやすいと考えられている.日本人は,高血圧症や糖尿病などの生活習慣病のみならず,睡眠呼吸障害に関しても肥満に対する感受性が高い.
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治療
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CPAP 治療と治療アドヒランス(adherence)向上の工夫
64巻1号(2009);View Description Hide Description経鼻持続陽圧呼吸(nasal CPAP)療法は睡眠時無呼吸症候群患者に対する第1選択の治療法であり,その有効性,安全性ともすでに確立されている.しかし,根治療法ではなく対症療法であり,また毎晩機器を装着して就寝しなくてはならないため,長期にわたる継続(アドヒランス)が難しいことがある.アドヒランスを高めるためには,機器の改良だけでなくきめ細かな患者対策が必要である. -
閉塞型睡眠時無呼吸症候群の日中の眠気—治療開始前に考慮すべきこととそのコントロールの実際—
64巻1号(2009);View Description Hide Description眠気は非特異的な症状であり,それが病的なものかどうか,またどういう原因で眠いのかを簡単に判断することは難しい.したがって,一見,閉塞型睡眠時無呼吸症候群による眠気と思えても,他の疾患が併存している可能性や,十分な睡眠時間が取れているかどうかなど,生活習慣全般から吟味していく必要がある.確実な治療法としての持続陽圧呼吸療法(CPAP)を導入する場合に,その前後で考慮しなければならないポイントについてまとめた. -
本邦の心不全の現状と睡眠時無呼吸—酸素療法の有効性と限界—
64巻1号(2009);View Description Hide Description心不全の概念は時代とともに大きな変遷を遂げ,治療法も大きく変わってきた.高齢化社会の進展とともに心不全は急速に増加しつつある.過去20 年間に多くの薬物療法が開発されたが,その有効性は満足のいくものとはほど遠い.非薬物療法として今,心不全に合併する睡眠時無呼吸に対する治療が注目されている.我が国では,夜間酸素療法が中枢型睡眠時無呼吸を有する心不全患者のアウトカムとQOL を改善する可能性が示された. -
心疾患に対するCPAP,NPPVとASV
64巻1号(2009);View Description Hide Descriptionさまざまな循環器疾患に睡眠時無呼吸を合併することが知られている.その多くは閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)であり,OSA の治療法の第1選択は持続陽圧呼吸療法(CPAP)である.OSA 患者におけるCPAP の心疾患一次および二次予防効果については,幾つかの前向き観察研究よりほぼ明らかである.一方,中枢型睡眠時無呼吸(CSA)は多くの場合,心不全の結果招来される病態である.CSA に対してCPAPは部分的効果しか発揮できないが,非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)特にAdaptive-servo ventilation(ASV)が優れている.ただし,ASV の心不全患者に対する予後改善効果は今後明らかにされる必要がある. -
口腔内装置治療の有効性と限界および顎矯正手術の展開
64巻1号(2009);View Description Hide Description日本人は,欧米人と比較して前後に短く上下に長い顎顔面形態の特徴から,肥満の程度が低くても睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい.下顎を前方で固定する口腔内装置がその有効性と簡便性から広く臨床で使用されるようになった.また,下顎や上顎が小さく後退している睡眠時無呼吸症候群の患者に対する顎矯正手術は,審美的改善とともに呼吸機能の著明な改善を認めることが多い.今後,適応を慎重に診断し積極的に応用されるべきである. -
睡眠時無呼吸の薬物療法と新薬の展開
64巻1号(2009);View Description Hide Description現在において有効性が確認されている睡眠呼吸障害の標準的治療法は,経鼻持続陽圧呼吸療法(nasal CPAP)である.しかしながらnasal CPAP をさまざまな理由で中断したり,nasal CPAP にても呼吸障害が残存したりする患者が存在する.そういった患者群に対して,nasal CPAP に代わる治療あるいは補助的な治療が必要となる.現時点において薬物療法の有効性を十分に支持するエビデンスは少ないが,今後期待される治療法の1つである.
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睡眠時無呼吸と全身病態
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閉塞型睡眠時無呼吸と高血圧,脳卒中との関連─解明できた点と不明点─
64巻1号(2009);View Description Hide Description閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)により予後が悪化し,dose-response の関係があることが明確になりつつあり,経鼻持続陽圧呼吸療法(nasal CPAP)により予後が改善すると考えられる.高血圧合併のメカニズムについては多因子によると考えられているが,睡眠時無呼吸とともに繰り返す低酸素血症により交感神経系の亢進状態となり,覚醒時にも高血圧となる.また,血管拡張能の低下,動脈硬化の関与も考えられているが,動物実験などで今後詳細なメカニズムが検討されると考えられる.脳卒中との関係もやはりdose-response の関係があるが,脳卒中を合併した症例のnasal CPAP の効果については,アドヒランスも含め,なお明確でない. -
睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患(高血圧以外)およびメタボリックシンドローム
64巻1号(2009);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群(SAS)は,肥満,高血圧,メタボリックシンドロームなどと関連し,虚血性心疾患や心房細動などの心疾患のリスクである.心血管病の一次予防として,メタボリックシンドロームを代表とする生活習慣病の是正,すなわち生活習慣の修正が必須である.一時的な介入で終わらずに,困難ではあるが継続することが逆にリスクを共通とするSAS の治療にもつながり,定期的な指導が大切である. -
小児の閉塞型睡眠時無呼吸に関する最近の動向
64巻1号(2009);View Description Hide Description頻度は1〜4% と考えられている小児の閉塞型睡眠時無呼吸症候群であるが,睡眠ポリグラフ検査では2呼吸周期以上持続する無呼吸を異常としてカウントする.合併症では中枢神経系,代謝への影響に近年特に注目が集まり,学業成績不振,注意欠陥,多動,そして肥満との関連に関心が高まっている.治療としてはアデノイド扁桃摘除術,持続陽圧呼吸,口腔内装具に加え,抗炎症療法も試みられ始めている. -
睡眠時無呼吸と神経内科疾患および認知機能
64巻1号(2009);View Description Hide Description神経疾患において睡眠関連呼吸障害(SRBD)の合併が多い.特に日常診療でも問題となる多系統萎縮症(MSA)と神経筋疾患におけるSRBD について,また閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と認知機能との関連について解説した.(1)MSA におけるSRBD はGerhardt 症候群,中枢型呼吸障害など多岐にわたり,SRBD は突然死の原因となりうる.(2)神経筋疾患における呼吸障害の病初期には睡眠中に肺胞低換気を呈し,非侵襲的人工呼吸管理によりQOL の向上が期待できる.(3)OSAS では,前頭前野の機能障害による遂行機能障害が見られるが,治療による改善は部分的であり,病態には睡眠の分断化,間欠的低酸素血症のほか,多種の要因が関与していると考えられている.
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睡眠時無呼吸と基礎研究
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睡眠時無呼吸の動物モデル
64巻1号(2009);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群はヒトに起こる疾患であるが,その病態を特に細胞・分子レベルで調べるためには動物モデルが有用である.動物モデルとして主にラット・マウスなどのげっ歯類を対象に,一定の時間間隔でケージ内に間欠的に低酸素を投与する間欠的低酸素モデルが一般的である.イヌ,サル,ブタなどのより大型動物でも睡眠時無呼吸モデルが報告されている.このような動物モデルを用いた研究を紹介し,その問題点を含めて考察する. -
睡眠時無呼吸由来の低酸素と細胞・分子生物学
64巻1号(2009);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群患者において夜間の無呼吸によって引き起こされる間欠的低酸素は,心血管,脳血管,内分泌代謝系に多大な影響を及ぼす.この間欠的低酸素は交感神経系の活性化,血管内皮細胞の障害,酸化ストレスの増強,凝固系異常,代謝内分泌系異常,炎症反応の増強に関与することが明らかになっている.これらの異常が動脈硬化の発症と進展に重要な役割を果たしており,多くの免疫担当細胞やサイトカインが関与して,心血管・脳血管イベントの発症リスクを高めている.
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【エッセー】
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- 学会の旅・留学の旅−私の呼吸器病学−(1)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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