最新医学
Volume 64, Issue 4, 2009
Volumes & issues:
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特集【全ゲノム関連解析と多因子疾患】
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アプローチ
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全ゲノム関連解析— 歴史的背景と現状—
64巻4号(2009);View Description Hide Description2002 年,理化学研究所において世界で最初に報告された全ゲノム関連解析は,多因子疾患の遺伝的原因を網羅的に検索する画期的な手法であり,2007 年から世界各地で広く行われるようになっている.140 年の歴史を持つ遺伝統計学は,さまざまな歴史を経て洗練され,連鎖解析によりメンデル型遺伝病の多くの原因を明らかにしたが,今後多くの多因子病の遺伝的原因を明らかにするであろう.
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技術開発とデータベース
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SNP 解析技術
64巻4号(2009);View Description Hide Description2002 年に理化学研究所心筋梗塞関連遺伝子研究チームが,世界で初めてSNP をマーカーとした全ゲノム関連解析(GWAS)による多因子疾患の関連遺伝子の同定に成功した.2005 年以降,Affymetrix 社,Illumina 社からGWAS 用SNP チップが発売され,世界中で大規模なGWAS が行われている.本稿では,我々が使用しているSNP 解析技術を紹介するとともに,SNP データの品質管理の重要性について述べる. -
ゲノムコピー数多型の意義とその解析法
64巻4号(2009);View Description Hide Descriptionゲノム構造変異,とりわけゲノムコピー数多型(CNV)について,高密度マイクロアレイおよび高速シークエンサーを用いた解析によって全貌が次第に明らかにされつつあり,de novo に生ずるCNV も少なからず存在する.CNV を生み出すメカニズムは,遺伝子重複あるいは欠失を生じる基本的なプロセスと同様と考えられる.CNV と疾患との関連についての解析は専ら候補遺伝子領域に対して行われているが,ゲノムワイドな関連解析を実施するためには,包括的かつ定量的なCNV 測定法が樹立される必要がある. -
国際HapMap・JSNP データベースとその利用法
64巻4号(2009);View Description Hide Description生活習慣病の原因の特定には,1塩基多型(SNP)を網羅的に調べることが大変強力な方法となる.それに着目し,日本独自に,遺伝子中心の精度の高いSNP データベースが構築され,また世界初のゲノムワイド関連解析や全染色体上の連鎖不平衡地図の構築の成果を当センターから発信した.これを遺伝子外にも展開すべく国際HapMap プロジェクトが発足し,我々も参画し,全ゲノム上の代表(タグ)SNP を同定した.それに基づく全ゲノム関連解析は,今や爆発的発展を遂げつつある. -
ファーマコゲノミクスとオーダーメイド医療
64巻4号(2009);View Description Hide Description薬の作用とゲノム情報を結びつけることにより,個々の患者に合った薬を適切に使い分けようという研究分野がファーマコゲノミクスである.本稿では,遺伝子多型解析に基づくファーマコゲノミクスによって, 1.医薬品の副作用を回避する, 2.効果を予測する, 3.個々の患者に適切な用量を予測する例として,HIV 治療薬ネビラピン,乳癌治療薬タモキシフェン,抗凝固薬ワルファリンのオーダーメイド投薬を紹介する.
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各疾患領域における遺伝子解析
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心筋梗塞感受性分子の同定・解析
64巻4号(2009);View Description Hide Description2002 年に筆者らが世界で初めて1塩基多型を用いた心筋梗塞の全ゲノム関連解析(GWAS)を報告して以来,国際HapMap プロジェクトによるハプロタイプ地図の構築やタイピング技術の進展に伴って多くの研究施設でGWAS が進められ,生活習慣病の遺伝的リスク多型が続々と報告されている.ここでは,我々が進めてきた心筋梗塞感受性分子の同定とその解析について概説する. -
変形性関節症の全ゲノム関連解析
64巻4号(2009);View Description Hide Description変形性関節症は,一般集団における罹患率の非常に高い疾患(common disease)である.変形性関節症は多因子遺伝病で,遺伝的要因(疾患感受性遺伝子)がその病因に関与する.我々のグループで同定した変形性関節症の疾患感受性遺伝子,CALM1 とDVWA の発見の過程とその機能解析について述べた. -
関節リウマチの疾患関連遺伝子と全ゲノム関連解析
64巻4号(2009);View Description Hide Description関節リウマチは代表的な自己免疫疾患であり,病因,病態がいまだに不明の難病である.免疫が関与する疾患の場合,ヒトの免疫学の解析方法が十分でなく,病因,病態の解析は容易ではない.モデル動物からの情報と実際のヒトの疾患との乖離も少なからずある.この点で疾患関連遺伝子の情報はヒトの疾患からの直接の情報であり,疾患の理解と今後のオーダーメイド医療に非常に有用である. -
糖尿病関連遺伝子の全ゲノム関連解析
64巻4号(2009);View Description Hide Description2型糖尿病の成因として遺伝因子が関与することにはおそらく異論はないものと思われるが,多因子が関与することおよび肥満や生活習慣など種々の要因が複雑にかかわることから,その解明は困難な時期が長く続いてきた.最近になり,我が国も含め複数のグループから2型糖尿病を対象としたゲノムワイド関連解析の結果が相次いで報告され,KCNQ1,TCF7L2 領域など十数ヵ所の有力な2型糖尿病関連遺伝子領域が同定されている. -
精神疾患関連遺伝子の全ゲノム関連解析
64巻4号(2009);View Description Hide Description精神疾患のゲノム解析は,コピー数変異を使った全ゲノム関連解析により大きく進歩した.その結果,1q21,15q11.2,15q13.3,16p11.2,22q12 のコピー数変異をはじめとして,精神疾患のリスクを大きく高める変異が多く見つかってきている.まだそれらの変異が発見される患者の割合は少ないが,今後さらに増えることが期待される.一方,関連する疾患に特異性が乏しく,おのおのの精神疾患発症のメカニズムの解明が今後の課題である. -
パーキンソン病関連遺伝子の全ゲノム関連解析
64巻4号(2009);View Description Hide Descriptionメンデル遺伝性パーキンソン病家系から6つの原因遺伝子が明らかにされ,それらを切り口にして孤発性パーキンソン病の病態解明が進んでいる.患者の大多数を占める孤発性パーキンソン病は多因子疾患であり,我々はαシヌクレインが孤発性パーキンソン病の確実な疾患感受性遺伝子として同定した.そのほか,まれな変異としてゴーシェ病遺伝子が重要である.現在パーキンソン病においてSNP チップを用いた全ゲノム関連解析が進行している. -
大腸癌関連遺伝子の全ゲノム関連解析
64巻4号(2009);View Description Hide Descriptionヒトゲノム全配列の決定以降,遺伝子多型に関するデータベース構築が急速に進み,現在さまざまな疾患で全ゲノム関連解析が行われている.大腸癌においても10ヵ所以上の疾患感受性領域がすでに同定されている.本稿では,我々が行った日本人における解析結果も含めて最近の知見を紹介する.今後これらの研究成果が大腸癌の発症予防や病態の解明につながると期待される. -
胃癌関連遺伝子の全ゲノム関連解析
64巻4号(2009);View Description Hide Description胃腺癌をintestinal 型とdiffuse 型に分けた場合,後者の発症機構には未知の部分が多く,Helicobacter pylori 感染対策によっても劇的な減少は困難と考えられている.diffuse 型胃癌に対して全ゲノム関連解析を行い,PSCA 遺伝子多型を新規遺伝素因として同定した.この遺伝子は胃癌では発現が抑制されており,分化途上の正常胃上皮前駆細胞の負の増殖調節因子であることが示唆された. -
アレルギー疾患関連遺伝子の全ゲノム関連解析
64巻4号(2009);View Description Hide Description高速大量タイピングや網羅的発現解析など,近年のゲノム解析技術の進歩は目覚ましく,アレルギー領域でも,気管支喘息や血清IgE について全ゲノム関連解析(GWAS)が行われ,その結果が検証されつつある.今後アスピリン喘息やアナフィラキシーなど重篤な病態に関連する遺伝子,さらに薬剤応答性や重症化に関連する遺伝子の同定など,GWAS はアレルギー疾患の科学的病態解明に重要な位置を占めていくものと思われる.
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【エッセー】
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- 学会の旅・留学の旅−私の呼吸器病学−(4)
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【対 談】
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【トピックス】
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【特 報】
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【総 説】
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感覚性の脊髄神経ネットワークを形成する分子メカニズム
64巻4号(2009);View Description Hide Description脊椎動物の神経系は非常に複雑な回路網からなるが,その形成メカニズムの全容解明は生命科学における最重要課題の1つである.我々は,感覚性の末梢神経を構成している脊髄神経節細胞(DRG)の軸索ガイダンスに注目し,その投射路形成過程に複数の軸索反発因子および未知の軸索誘引因子が関与していることを明らかにした.本稿ではDRG の軸索ガイダンスに関する最近の研究成果を紹介し,その分子メカニズムを概説する.
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【症 例】
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【今月の略語】
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