最新医学
Volume 64, Issue 5, 2009
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特集【関節リウマチ−治癒を目指す治療の新時代へ−】
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アプローチ
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治療パラダイムシフト
64巻5号(2009);View Description Hide Description関節リウマチの薬物治療の基本的な考え方が大きく変わった背景について解説した.特に薬物治療のゴールが寛解とされる現在,それによって何がもたらされたのか,今後何を変革すればさらなる寛解導入率の改善が図れるのか,欧米のみならず,日本のエビデンスから考察した.
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治療に直結する病因・病態研究最前線
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関節リウマチ治療標的としてのシトルリン化抗原
64巻5号(2009);View Description Hide Description関節リウマチ患者(RA)では,その血清中に抗シトルリン化ペプチド抗体が高い特異度で出現するため,RA の病因・病態と抗シトルリン化ペプチド抗体の関連が注目されている.炎症関節には種々のシトルリン化抗原が存在し,抗シトルリン化ペプチド抗体と免疫複合体を形成することで関節炎の発症・増悪に関与していると考えられており,この免疫反応経路の修飾による関節炎治療の可能性が検討されている. -
治療反応性と関連する予後因子
64巻5号(2009);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)の予後不良因子,治療反応性を規定する因子の解析は,極めて重要である.ベースラインの自己抗体陽性(特に抗CCP 抗体高力価),炎症反応高値,MMP-3 高値は関節破壊進展の予後不良因子であり,自己抗体陽性と関連する遺伝的背景はHLA-DRB1*SE が最も強く相関し,また環境因子としては喫煙も注目されている.治療反応性は性別,自己抗体,ベースラインの疾患活動性などで異なることが明らかとなるも,遺伝的背景の解析は報告で異なる点もあり,今後はgene-environmental interaction の研究が待たれる.
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診断と評価
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寛解・治癒を目指すための診断法—特に関節リウマチの早期診断における抗CCP 抗体の有用性について—
64巻5号(2009);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)の治療戦略において,生物学的製剤の登場によってパラダイムシフトがもたらされ,臨床的寛解のみでなく,画像的寛解が治療の目標となった.そのためには早期診断が重要であるが,世界的に用いられている米国リウマチ学会(ACR)の1987 年改訂RA 分類基準は早期RA の診断には適していない.抗CCP抗体はRA において極めて高い疾患特異度を有し,早期RA の診断にも有用である.さらに,RA 診断基準を満たさない診断未確定関節炎においても,抗CCP 抗体陽性例はRA に進展する可能性が高く,RA として治療を考慮する必要がある. -
関節リウマチのタイトコントロールについて
64巻5号(2009);View Description Hide Description近年,生物学的製剤導入に伴い,これまでの炎症コントロールから関節破壊防止へと関節リウマチ(RA)の治療戦略は変化し,寛解が現実的な治療目標となってきている.RA 発症早期の寛解導入のために,疾患活動性のコントロールを厳重に行っていくタイトコントロールという概念が提唱されている.本稿では,タイトコントロール,RA 寛解,RA 疾患活動性評価法などの概略を述べ,実際にタイトコントロールの治療戦略を用いて行われた臨床研究などから,「RA 寛解の早期導入とその維持」がいかにRA 患者の予後にとって重要であるかを説明していく.
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治療戦略
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寛解・治癒を目指すための薬剤選択— NSAID,ステロイド,DMARD,生物学的製剤の使い方—
64巻5号(2009);View Description Hide Description関節リウマチの治療目標は疾患制御と関節破壊の進展抑制で,治療は抗炎症薬を中心とした対症療法,抗リウマチ薬を中心とした根本療法の2本立てで行われる.メトトレキサート(MTX)を中心として抗リウマチ薬が治療の基本となる.しかし,臨床的寛解,画像的寛解,機能的寛解,さらに薬剤フリー寛解(治癒)を目指すためには,早期からのTNF 阻害薬などの生物学的製剤とMTX の併用が必要である.関節破壊や身体機能障害が不可逆性になる前からの適切な治療介入の重要性を概説する. -
2008 年米国リウマチ学会勧告を読み解く
64巻5号(2009);View Description Hide Description米国リウマチ学会は2008 年になって,リウマチ専門医を対象とした指針として疾患修飾性抗リウマチ薬の使用に関するACR 勧告を公表した.本勧告は,各種臨床要因で層別した抗リウマチ薬使用に関する指針と,禁忌などの安全性情報などからなっている.我が国の臨床現場への適用の可否を含め,ACR 勧告を解説した.
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薬剤選択
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早期症例に対する最新治療
64巻5号(2009);View Description Hide Description関節リウマチの治療目標は関節破壊の停止・修復を可能にする寛解の達成である.そのために,発病極早期からの強力な治療が勧められている.治療の中心はメトトレキサートを中心とする強力な抗リウマチ薬である.薬剤の選択に当たっては,疾患活動性,既存の骨破壊の有無,罹病期間,リウマトイド因子や抗CCP 抗体を考慮する.最近では,診断基準を満たさない診断未確定関節炎の段階で抗リウマチ薬を開始する考え方が定着してきた.発病早期の寛解導入により,drug-free remission が現実的になっている. -
メトトレキサート不応症例に対する最新の治療
64巻5号(2009);View Description Hide Description現在,関節リウマチ患者の7〜8割にメトトレキサート(MTX)が処方され,以前より活動性コントロールは向上した.しかし有効性と安全性の面から,将来は分子標的薬に替わられるであろう.当面,MTX 不応症例に対してはTNF 阻害薬の併用をまず患者に提示すべきであり,次の選択肢として,有効性重視ならトシリズマブへの変更,安全性重視ならブシラミンやタクロリムスの併用,以下他の抗リウマチ薬を漸次試みることとなろう. -
生物学的製剤の変更と中止のタイミング
64巻5号(2009);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)は,生物学的製剤の登場で約3割が寛解可能となり,寛解を維持することにより,生物学的製剤の中止,さらに薬剤フリー寛解も可能となってきている.しかしTNF 阻害薬無効例も少なからず存在し,本邦では現在までにTNF 阻害薬が3剤(インフリキシマブ,エタネルセプト,アダリムマブ),IL-6 受容体抗体(トシリズマブ)がRA に使用可能であり,TNF 阻害薬の一次無効・二次無効といった無効症例に対する救済もさらに可能となってきている. -
合併症症例における抗リウマチ薬の選択とリスクマネージメント
64巻5号(2009);View Description Hide Description合併症を有する関節リウマチ患者では,その種類と重症度を的確に評価し,各症例の治療ゴールを設定する.特に肺・腎・肝・血液合併症を有する患者では,疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の選択に十分な注意が必要である.自分が使用する低分子DMARDs,生物学的製剤の添付文書にしっかりと目を通し,禁忌・慎重投与・副作用の種類と頻度を確認し,副作用発現時の対応について理解しておくことがリスクマネージメントの第一歩である.
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新しい治療薬
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抗IL-6 受容体抗体トシリズマブ
64巻5号(2009);View Description Hide Descriptionトシリズマブはヒト化抗IL-6 受容体抗体であり,関節リウマチの治療薬として2008 年4月に承認された.その特徴は,メトトレキサートの併用を必ずしも必要とせず,しかも寛解導入率と長期継続率において優れていることである.関節破壊の抑制効果も確認されている.IL-6 は自己免疫疾患の発症に重要な役割を果たしているTh17 細胞の分化に不可欠であり,IL-6 の阻害は根本に作用する可能性がある.IL-6阻害治療の研究により,治癒を目指した治療法の確立が可能になるかもしれない. -
新規抗 TNF 製剤 アダリムマブ,ゴリムマブ,セルトリズマブ
64巻5号(2009);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)は,早期から積極的に抗リウマチ薬,特にメトトレキサート(MTX)や生物学的製剤を用いて治療することで高い寛解導入率が得られ,しかも関節破壊の進行阻止が可能となってきた.特に生物学的製剤の中でもTNF 阻害薬を適切に使うことにより,関節予後のみならず生命予後も改善することが明らかとなっている.これまでにインフリキシマブ,エタネルセプトが我が国で広く使用されてきたが,2008 年7月から第2世代TNFα 抗体とも言うべきアダリムマブが使用できるようになった.さらに第3世代の抗TNFα 抗体であるゴリムマブ,セルトリズマブの臨床試験が進行中である. -
CTLA4IgGFc 融合タンパク質アバタセプト
64巻5号(2009);View Description Hide DescriptionアバタセプトはCTLA4 とIgG との融合タンパク質で,CD28 を介したT細胞活性化の共刺激経路を遮断する.10mg/kg を4週ごとに点滴静注し,メトトレキサート無効例に対し,TNF 阻害薬と同程度に関節リウマチ(RA)の臨床的活動性および骨破壊の進行を抑制する.TNF 阻害薬抵抗性のRA にも有効で,安全性も高い.TNF 製剤との併用は相加効果はなく,感染症が増加するため勧められないが,極めて有用性の高い期待の薬剤である. -
JAK3 阻害薬
64巻5号(2009);View Description Hide Description抗体や受容体タンパク質を用いたTNF 阻害薬などの生物学的製剤に続き,これらと同等以上の抗リウマチ作用を備え,経口摂取可能な低分子化合物の創薬研究が活発である.インターロイキンのタイプI受容体細胞内シグナル伝達にかかわる主要なチロシンキナーゼであるJAK3 は,実用化に向けて臨床試験が進行中の標的分子の1つである.JAK3 阻害薬であるCP-690,550 は関節リウマチ患者に対し,単独あるいはメトトレキサート併用での良好な短期治療成績を示している.
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【エッセー】
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- 学会の旅・留学の旅−私の呼吸器病学−(5)
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【対 談】
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【トピックス】
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【特 報】
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【今月の略語】
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