最新医学
Volume 64, Issue 8, 2009
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特集【心房細動の総合的マネージメント】
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アプローチ
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ガイドラインに基づいた心房細動治療
64巻8号(2009);View Description Hide Description心房細動に対する包括的アプローチが求められる中,本邦でもJAST,J-RHYTHM,J-BAF などのエビデンスが集積され,新しいガイドラインが示された.そこではまず抗血栓療法を重視し,孤立性発作性心房細動ではNa チャネル遮断薬によるリズム治療を推奨した.一方,持続性心房細動や病的心に伴う心房細動にはレート治療を基本方針とするものの,ベプリジル,ソタロール,アミオダロンなどによる注意深いリズム治療も選択肢に含めた.
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疫学・分類・病態生理・予後
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日本人の心房細動の疫学— 年代・年齢・自然歴—
64巻8号(2009);View Description Hide Description日本における心房細動の有病率は男女いずれも加齢とともに増加し,報告によって多少の差はあるものの,80 歳以上では男性が約4%,女性が約2% と男性のほうが多い.欧米の報告よりも有病率は低いが,新規発症率は特に男性において経年的に増えており,今後も患者数は増加し続けると思われる.抗不整脈薬を投与しても一定の割合で慢性心房細動に移行するため,危険因子の管理による予防医学が今後の重要課題になると思われる. -
心房細動の分類と基礎疾患
64巻8号(2009);View Description Hide Description心房細動を初めて発症したものを初発性として,発症からの時間経過により発作性,持続性,永続性に分類される.背景にある病態により弁膜症性,非弁膜症性に分類され,明らかな病因を診断し得ない場合には孤立性(lone)心房細動と呼ばれている.今日までの研究成果により,家族性に発症する遺伝性心房細動にはSCN5A の変異ないし異型が関連することが報告された. -
心房細動の発生機序
64巻8号(2009);View Description Hide Description心房細動の発生機序は従来,心房内リエントリー説と異所性異常興奮説の2つが議論されてきた.最近では,多くは肺静脈で生じる期外収縮が心房細動開始のトリガーとなっていることが判明し,心房細動の開始機序と心房細動が維持される機序とに区別して議論されるようになっている.心房細動が持続すると心房筋に電気的リモデリングが生じ,さらに心房細動の発生を容易にし,またさらに心房細動が持続すると不可逆的な構造的リモデリングが出現し,心房細動は慢性化しやすくなる. -
心房細動と炎症— 心内膜リモデリング—
64巻8号(2009);View Description Hide Description心房細動を抗不整脈薬で治療するという狭い考え方からのパラダイムシフトが今生じている.これは,数多くの心房細動に関する大規模臨床試験が我々に教えてくれたこと,そしてすでに循環器ほかの領域で注目されてきた炎症のメカニズムが心房細動に応用され始めたことを考えると,当然の結果であろう.炎症性マーカーを用いた臨床報告,心房筋標本を用いた組織学的検討は,心房細動という不整脈にさまざまなメカニズムを介して炎症が関与することを明らかにしている. -
心原性脳塞栓症の頻度と機能予後
64巻8号(2009);View Description Hide Description脳卒中患者は現在,要介護人口の4割を占めると言われているが,特に心原性脳塞栓症は急激かつ広範な梗塞を来すため,他の病型に比して重症で,予後不良な病態である.高齢社会を迎えた我が国では心房細動の罹患者数が増加しているが,それと平行して心房細動を原因とする心原性脳塞栓症が急速に増えており,適切な予防策が必要と考えられる.
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薬物治療
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Upstream Element と治療の意義
64巻8号(2009);View Description Hide Description心房ストレッチや炎症によるアンジオテンシンIIの上昇は,Erk カスケードを活性化し,線維化を促進する.心筋の線維化は伝導障害を招き,多数のリエントリーが形成され心房細動は持続する.アンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬は短期的な電気的リモデリングを抑制するだけでなく,線維化のような長期的な構造的リモデリングに対しても抑制効果があるため,心房細動慢性化予防のアップストリーム治療になりうることが期待される. -
レートコントロールとリズムコントロール
64巻8号(2009);View Description Hide Description2008 年版に改訂された日本循環器学会(JCS)の心房細動治療ガイドラインでは,J-RHYTHM 試験の結果を踏まえ,孤立性・発作性心房細動の治療は第1選択としてNa チャネル遮断薬を用いてリズムコントロールを行うことが推奨されている.一方,孤立性・持続性心房細動および器質的病的心に伴う心房細動に対しては,アップストリーム治療を優先したうえでレートコントロールをまず行い,必要があればリズムコントロールを行う. -
新規抗心房細動薬—方向性と開発状況—
64巻8号(2009);View Description Hide Description日本における心房細動治療において,QOL の観点からリズムコントロールの意義が認められたが,ダウンストリームアプローチとして使用される現存の抗心房細動薬は過度のQT 延長やtorsade de pointes を引き起こすことから,必ずしも理想的な治療薬とは言い難い.心房筋細胞活動電位に関与する膜電流の中で特徴的なものは,非常に速い活性化過程を示す遅延整流 K+電流(IKur)とアセチルコリン感受性 K+電流(IK.ACh)であり,これらに対する特異的遮断薬の探索が精力的に進められている. -
血栓塞栓の機序と抗凝固療法
64巻8号(2009);View Description Hide Description心房細動における血栓形成と心原性脳塞栓を予防することは極めて重要である.血栓形成には心房内の血流うっ滞以外にも,Virchow の3要素である心房内膜,血液性状などが重要であることが分かってきた.脳塞栓のリスク評価として臨床的に用いられるCHADS2 スコアは比較的簡単にスコア化が可能であり,日本循環器学会ガイドライン2008 年改訂版ではこの評価法が用いられている.スコアに応じた積極的な抗凝固療法が推奨される.
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非薬物治療
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心房細動アブレーション— 原理と三次元マッピングの役割—
64巻8号(2009);View Description Hide Description心房細動は肺静脈内の異常興奮から発生すると考えられ,これを標的とした心房細動アブレーションが行われている.当初,肺静脈内の異常興奮部位に対する選択的アブレーションが行われていたが,まもなく肺静脈隔離アブレーション術が開発された.最近では難治例に対し,左房内の線状アブレーションやCFAE と呼ばれる異常電位に対するアブレーションも展開されている.心房細動アブレーションでは三次元マッピングが多用される. -
ペースメーカーで細動は予防可能か
64巻8号(2009);View Description Hide Descriptionペースメーカーによる発作性心房細動の予防には,ペースメーカーモードの選択,発作性心房細動予防のアルゴリズム,心室ペーシング抑制アルゴリズム,心房・心室のペーシング部位などを考慮する必要がある.発作性心房細動が発症しこれが持続するためには,発症の引き金(トリガー)となる上室性期外収縮と,発作性心房細動が持続するための基質が必要である.このトリガーを抑制するのがペースメーカーの発作性心房細動抑制のアルゴリズムで,基質を抑制するのがペーシング部位に当たり,さらに,ペースメーカーモードや心室ペーシング抑制アルゴリズムはトリガーや基質を増悪させる心機能に関与すると考えられる. -
外科用アブレーションデバイスを用いた新しい心房細動手術
64巻8号(2009);View Description Hide Description心房細動手術の基本は,伝導ブロックを作製し,マクロリエントリーや異常興奮の伝播を遮断することである.伝導ブロックは従来,切開・縫合や凍結凝固によって作製されてきたが,出血の危険性や時間がかかるといった問題があった.近年,高周波,マイクロ波などをエネルギー源とした新しい外科用アブレーションデバイスが開発され,心房細動治癒率は従来の切開・再縫合と同等であるうえに,より簡単かつ低侵襲に行うことができるようになった.
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【エッセー】
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- 学会の旅・留学の旅−私の呼吸器病学−(8)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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