最新医学
Volume 66, Issue 1, 2011
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特集【インクレチン研究と創薬への展開】
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座談会
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本論
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インクレチン研究の歴史
66巻1号(2011);View Description Hide Description近年,2型糖尿病のインスリン分泌障害に対する新たな治療戦略として,「インクレチン」と呼ばれる消化管ホルモンが脚光を浴び,最近の知見の蓄積により,インクレチン関連薬として臨床応用が可能になった.我が国でも2009 年12 月にインクレチン関連薬であるDPP-4 阻害薬が初めて保険収載され,2010 年6月にはGLP-1 受容体作動薬が続いた.本稿では,インクレチンの概念と今日までの歴史について述べる. -
GIP と GLP-1 の膵島への作用
66巻1号(2011);View Description Hide Description食事摂取により分泌され,インスリン分泌を促進する消化管ホルモンをインクレチンと呼び,GIP とGLP-1 が主要なものである.GIP とGLP-1 は膵β細胞に対して,インスリン分泌に加えて細胞の保護作用を有している.また膵α細胞に対しては,GIP はグルカゴン分泌促進に,GLP-1 は分泌抑制に作用する. -
インクレチンの膵外作用
66巻1号(2011);View Description Hide Descriptionインスリン分泌促進因子であるインクレチン(GLP-1 とGIP)は,膵β細胞以外の組織にもその受容体が発現している.膵β細胞への作用は共通であるが,膵外での受容体発現様式は2つのホルモンで異なるため,固有の作用を発揮している.インクレチン薬はGLP-1 シグナルの刺激という点では共通であるが,GIP シグナルでは異なり,これが薬効の違いに繋がっている. -
インクレチン分泌のメカニズム
66巻1号(2011);View Description Hide Descriptionインクレチンは,食事摂取に応答して消化管内分泌細胞から分泌され,血糖依存的にインスリン分泌を促進するホルモンの総称で,これまでにGIP とGLP-1 が確認されている.インクレチン分泌制御に関する分子機構は依然不明な点が多い.しかし,近年のインクレチン関連薬の普及に伴い,精力的に解明が進められている.本稿ではインクレチン分泌制御機構について,これまでの知見と最近の話題を概説したい. -
糖尿病とインクレチン
66巻1号(2011);View Description Hide Description近年,DPP-4 阻害薬やGLP-1 アナログ製剤などインクレチンをターゲットとした糖尿病治療が注目されている.日本人は欧米人と比較してGLP-1 分泌が少なく,またDPP-4 によるインクレチンの不活化が亢進していることが示唆される.したがって,日本人にとってインクレチンをターゲットとした治療はより大きな効果が期待される.本稿では糖尿病患者におけるインクレチン分泌動態について,新しい知見を含めて概説する. -
DPP-4 阻害薬
66巻1号(2011);View Description Hide DescriptionDPP-4 阻害薬は,GLP-1 やGIP の不活化を抑制することによりそれらのインクレチン作用を増強し,インスリン分泌促進,グルカゴン分泌抑制により血糖を降下させる.単独では低血糖を来しにくく,2型糖尿病患者に幅広く適用可能である.期待されるヒトでのβ細胞保護作用や長期の安全性については,さらに慎重に評価していく必要がある. -
GLP-1 受容体作動薬
66巻1号(2011);View Description Hide Description糖尿病治療薬の中でも最も注目されているGLP-1 受容体作動薬であるが,現在国内にて使用可能なリラグルチド(ビクトーザ)と,海外において使用可能であるエキセナチド(バイエッタ)について,その構造,薬物動態,臨床試験の成績を概説する.リラグルチドは日本国内の臨床試験において,2型糖尿病患者に0.9mg/日の用量を使用した際,治療開始後52 週間で約1.9% のHbA1c 改善を示し,一方,エキセナチドは2010 年10 月,日本国内での製造販売が承認され,2011 年中にも一般臨床にて使用可能となるものと予想される. -
糖尿病治療の新しいパラダイムシフト— インクレチン治療は糖尿病治療を変革するか—
66巻1号(2011);View Description Hide DescriptionDPP-4 阻害薬とGLP-1 受容体作動薬のインクレチン関連薬が日本で使用され始めた.これらの薬剤は,従来の薬剤にはなかったβ細胞保護作用やグルカゴン分泌抑制作用など,新しい薬剤効果や糖尿病の病態の本質を改善する可能性を秘めている.さらに心血管系の保護作用も期待されること,また治療に伴う低血糖が少ないことから,糖尿病治療薬として全く新しい位置を占めることが期待される.本稿では総論として,インクレチン関連薬による2型糖尿病の治療戦略を論ずる. -
糖尿病合併症とインクレチン
66巻1号(2011);View Description Hide Description近年,インクレチン(GLP-1 およびGIP)には,膵β細胞以外の細胞あるいは組織に対する作用,すなわち膵外作用のあることが明らかになってきた.一方で,糖尿病合併症は糖尿病患者のQOL を著しく低下させる要因となっており,その新たな治療薬の開発が切望されている.本稿では,糖尿病治療薬として注目されているインクレチン関連薬が糖尿病合併症に及ぼす効果について概説したい.
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トピックス
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GLP-1 の膵島再生・膵島イメージングへの応用
66巻1号(2011);View Description Hide Description新規の2型糖尿病治療薬の標的であるGLP-1 は,血糖依存性にインスリン分泌を促進するだけでなく,膵β細胞を増殖・再生させる可能性があるため注目されている.我々はGLP-1 受容体を標的とすることによって膵島イメージングが可能であることを報告し,実用化に向けて開発中である.非侵襲的に膵β細胞量を定量できれば,膵島量の観点から糖尿病の病態を解明することや治療法を最適化,さらには治療効果の評価が可能となる. -
Bariatric Surgery とインクレチン効果
66巻1号(2011);View Description Hide Description病的肥満の治療法で減量目的に施行されるbariatric surgery による耐糖能異常の改善には,減量による二次的効果のほかに,消化管ホルモンであるインクレチン作用の変化が深く関与していることが明らかとなり,肥満や糖尿病に対する治療に大きなインパクトを与えることが予想される. -
メトホルミン,α-グルコシダーゼ阻害薬とインクレチン
66巻1号(2011);View Description Hide Description肝臓からの糖放出抑制作用を有するビグアナイド薬と,消化管よりのブドウ糖吸収を遅延させるα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は,ともに膵β細胞におけるインスリン分泌機構へは直接影響せず,抗糖尿病効果を発揮する.また,両薬剤は共通して内因性インクレチンホルモンの血中動態に影響を及ぼすことが示されており,メトホルミンはGLP-1 の分解を抑制し,一方でα-GI にはGIP 分泌抑制とGLP-1 分泌促進の2つの作用の存在が示唆されている.これらの薬剤の効果は,インクレチンホルモンのエンハンサーあるいはサプレッサーとして末梢ならびに中枢にて機能的に発揮されることから,インクレチン関連薬との併用療法により,糖尿病治療の効率を引き上げる可能性が期待されている. -
スルホニル尿素薬とインクレチン
66巻1号(2011);View Description Hide Description近年,糖尿病の新たな治療薬としてインクレチン関連薬が注目されている.インクレチンは膵β細胞のcAMP 産生を増加させることによって,プロテインキナーゼA(PKA)依存性経路およびPKA 非依存性経路を介してインスリン分泌を増強する.最近筆者らは,PKA 非依存性経路を担うEpac2A が,インスリン分泌促進薬として広く使用されているスルホニル尿素(SU)薬によって活性化されることを新たに見いだし,また,Epac2A を欠損させたマウスではSU 薬によるインスリン分泌作用や血糖降下作用が減弱することを明らかにした.これらの結果は,Epac2A がSU 薬とインクレチンの共通の作用標的であることを示している.臨床的に,多くの2型糖尿病患者に対してSU 薬とインクレチン関連薬の併用が血糖改善に効果があり,またある種の症例では重篤な低血糖を招来することも報告されていることから,Epac2A を介したインスリン分泌機構の解明は重要な課題であると考えられる.
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【連 載】
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【対 談】
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【トピックス】
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α-グルコシダーゼ阻害薬ボグリボースによる耐糖能異常からの2型糖尿病の発症予防,ならびに正常型への復帰
66巻1号(2011);View Description Hide Description経口糖負荷試験(OGTT)成績が耐糖能異常(IGT)である日本人を対象に,α-グルコシダーゼ阻害薬ボグリボースによる2型糖尿病の発症抑制について,無作為化比較試験を実行した.中間解析にて有意差が認められたことから,早期中止を決定した.平均投与期間1年.試験終了時点での糖尿病累積症例数は,ボグリボース群897 例中50 例に対してプラセボ群881 例中106 例であった.ハザード比(HR)は0.595で,2型糖尿病発症リスクが41% 抑制された.正常型への累積移行例数は,ボグリボース群599 例,プラセボ群454 例であり,HR 1.539 であった.
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【今月の略語】
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