最新医学
Volume 66, Issue 5, 2011
Volumes & issues:
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特集【中枢神経系感染症のUp-To-Date】
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座談会
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病態
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単純ヘルペス脳炎における HSV 再活性化の機序
66巻5号(2011);View Description Hide Description初感染後神経細胞に潜伏感染を樹立した単純ヘルペスウイルスは,再活性化の結果単純ヘルペス脳炎を発症することがある.神経細胞におけるウイルス再活性化に対し,CD8+T 細胞など宿主免疫系による細胞傷害を伴わない制御メカニズムの存在が想定される.脳炎の増悪要因としても注目される炎症反応とは一線を画する免疫による制御反応の解明が実現すれば,発症予防や治療成績の向上に結びつくことが期待される. -
HHV-6 脳炎のメカニズムとその診断,治療— サイトカインとウイルス直接侵襲の関与—
66巻5号(2011);View Description Hide DescriptionHHV-6 は,突発性発疹(突発疹)の原因ウイルスである.本疾患は一般的に予後良好であるが,ときに脳炎・脳症を引き起こす.近年,さまざまな臨床病型のHHV-6脳炎・脳症が報告されており,病型ごとの病態解析が今後の治療法開発などの点で重要と考えられる.また,HHV-6 は初感染後潜伏感染し,宿主が免疫抑制状態に陥った際に再活性化して脳炎を起こす.記憶障害と頭部MRI における海馬の病変が本疾患の特徴的な所見で,臨床的には辺縁系脳炎の経過を示すことが多い.in vitro 実験系による解析では,ガンシクロビルやフォスカルネットが有効であることが知られており,臨床的にも主にこの2つの抗ウイルス薬が使用されている. -
抗 NMDA 受容体脳炎に合併した卵巣奇形腫と正常卵巣における NMDA 受容体の分布
66巻5号(2011);View Description Hide Description抗NMDA 受容体脳炎に合併した卵巣奇形腫と正常卵巣を免疫組織化学的に検索し,本症におけるNMDA 受容体の抗原提示の契機や抗体産生の機序について考察した.脳炎合併の卵巣奇形腫には多量のNR2B 抗原やGluR 関連抗原が発現しており,正常卵巣の卵胞内にもNR2B 抗原が発現していた.本症発症前の感冒様の前駆症状によってこれらの抗原が提示され,抗体産生に結びつき,抗NMDA 受容体脳炎を発症する可能性が考えられた.この際,卵巣奇形腫の存在はNMDA 受容体抗原を大量に提示する可能性があり,本疾患発症の重要な危険因子と位置づけられる. -
抗 NMDA 受容体脳炎における最近の進歩
66巻5号(2011);View Description Hide Description抗NMDA 受容体脳炎は,NMDA 受容体のNR1 サブユニットの細胞外成分に対する抗体を有する自己免疫性脳炎である.この数年で,臨床像の多様性,年齢,性,人種による腫瘍合併率の違い,過去に知られていた類縁疾患との関係,細胞レベルでの抗体の作用機序などが明らかにされてきており,現在では,本疾患は「自己免疫性シナプス脳症」の1つとしてとらえられている.今回,400 例の臨床データに基づいた新しい治療アルゴリズムが,Dalmau らのグループから提唱された.
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臨床
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単純ヘルペス脳炎の診断と治療
66巻5号(2011);View Description Hide Description単純ヘルペス脳炎(HSE)は,未治療では致死率が約60〜70% の重篤な疾患であることから,neurological emergency として位置づけられている.臨床症状や髄液検査,画像所見からHSE が疑われる場合は,直ちにアシクロビルを開始し,髄液のPCR を含めたウイルス学的検査を行う.臨床的にHSE を否定できない場合には,アシクロビルを継続しながら髄液を再検することが重要である. -
結核性髄膜炎の最近の動向
66巻5号(2011);View Description Hide Description結核性髄膜炎は内科的緊急疾患であり,治療の遅れは転帰不良と強く関連するので,疑った場合には確定診断を待たずに直ちに抗結核療法を開始するべきである.最初の2ヵ月間はイソニアジド(INH),リファンピシン(RFP),ピラジナミド,エタンブトールの4剤で治療し,その後10ヵ月間はINH,RFP の2剤による治療が基本であり,重症度にかかわらず,すべてのHIV 非感染例で副腎皮質ステロイドの併用が推奨される. -
中枢神経系真菌感染症における最近の動向
66巻5号(2011);View Description Hide Description中枢神経系真菌感染症ではクリプトコックス属による髄膜炎がよく知られているが,そのほか髄膜炎の原因菌としてカンジダ属,また海外ではこれにコクシジオイデス属,ヒストプラスマ属が加わる.クリプトコックス髄膜炎は健常人でも認められることがあるが,HIV 感染者に合併する疾患として重要である.一方,近年北米を中心に新たな遺伝子型のクリプトコックス属による感染症が多発するなど,真菌症分野においてもその様相が変化してきており,今後の動向が注目される. -
細菌性髄膜炎におけるワクチン接種の意義と問題点
66巻5号(2011);View Description Hide Description細菌性髄膜炎は,抗菌化学療法の進歩した今日においても治療に難渋することの多い重症感染症であり,発症した場合は適切な治療が行われても死亡したり後遺症を残したりすることがあるため,発症予防が重要なポイントとなる.国内でもようやく接種が開始された7価肺炎球菌結合型ワクチンとインフルエンザ菌b型ワクチンは,細菌性髄膜炎の予防に極めて重要なワクチンであり,今後定期接種化による普及・接種率向上が望まれる. -
新型インフルエンザ脳症の臨床像
66巻5号(2011);View Description Hide Description2009/2010 シーズンの新型インフルエンザ脳症には,季節性インフルエンザ脳症と異なる臨床的な特徴があった.すなわち, 1.年長児症例が多い, 2.初発神経症状として異常行動が多い, 3.頭部MRI で脳梁膨大部病変を認める例が多いという特徴である.これらは同シーズンの流行の主体が学童であったことによると考えられる.新型インフルエンザ脳症による致命率は季節性と同じであり,次シーズン以後,流行の主体が乳幼児に移行した場合の重症化に注意が必要である. -
亜急性硬化性全脳炎に対する治療の動向
66巻5号(2011);View Description Hide Description亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は,変異した麻疹ウイルス(SSPE ウイルス)が神経組織に持続感染した脳炎である.神経障害にはSSPE ウイルスの増殖が直接かかわっているため,ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬や免疫賦活薬などが試用されてきた.これまで試みられた薬剤では,イノシンプラノベクスとインターフェロンの2剤に延命効果が示されている.近年,核酸類似抗ウイルス薬であるリバビリンを脳室内に直接投与する治療が期待されている. -
プリオン病に対する治療法の開発
66巻5号(2011);View Description Hide Descriptionプリオン病の脳には不溶性プリオンタンパク質が凝集し,神経細胞の脱落,空胞の形成が強く見られる.頻度の高い孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病でも,発生率は年間100 万人に約1人とまれであるが,発症すると進行性で致死的な神経変性疾患である.有効な治療法は確立されていないが,近年,正常型プリオンタンパク質から異常型への構造変化や蓄積を阻害する化学物質がスクリーニングされ,臨床応用されている.その中で,キナクリン,フルピルチン,ペントサンポリサルフェートなどの臨床研究を概説する. -
プリオン病のサーベイランス
66巻5号(2011);View Description Hide Description我が国のCJD サーベイランスは,1999 年4月より開始された.2010 年8月までに2,005 例の情報が収集され,1,552 例がプリオン病と判定された.孤発性CJD1,192 例(76.8%),遺伝性プリオン病271 例(17.5%),硬膜移植後CJD 83 例(5.3%),変異型CJD 1例(0.1%),分類不能CJD 5例(0.3%)で,硬膜移植後CJD は過去の症例を加えると141 例となった. -
橋本脳症— 小脳失調型を中心に—
66巻5号(2011);View Description Hide Description橋本脳症は,慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う自己免疫性脳症である.これまでに筆者らの施設で行った多数例の解析結果から,本症の患者では急性脳症型を呈する症例が半数以上を占めるが,臨床像は多彩であり,小脳失調症状を主徴とする病型も約1割存在する.慢性の失調症状を呈し脊髄小脳変性症が疑われる症例でも,特に眼振を欠き,脳波の徐波化を伴い,頭部MRI で小脳萎縮が乏しい場合は,橋本脳症の可能性を鑑別として念頭に置く必要があると考えられる.
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【連 載】
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【トピックス】
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発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に対するエクリズマブ治療
66巻5号(2011);View Description Hide DescriptionPNH の溶血に対する治療薬として,ヒト化抗C5 抗体であるエクリズマブ(ソリリス)が開発され,本邦では2010 年6月より販売開始となった.発売より半年が過ぎた現在まで,欧米での成績と同等の有効性と安全性を示している.エクリズマブの効果,安全性,適応,問題点について考察した. -
新規制吐薬を用いたシスプラチンの外来治療
66巻5号(2011);View Description Hide Descriptionシスプラチン(CDDP)は,固形がん治療におけるキードラッグであるが,悪心・嘔吐などの副作用が強く,さらに腎障害予防目的に大量輸液と強制利尿が必要とされ,我が国ではこれまで基本的に入院で治療が行われてきた.一方,支持療法の進歩により,欧米ではday1のみ輸液を行う(short hydration)外来化学療法が中心である.本邦でもNK1 受容体拮抗薬と第2世代5-HT3 受容体拮抗薬が使用可能となり,症例を適切に選択すればshort hydrationによるCDDP の外来治療が可能な時代となった.
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【今月の略語】
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