最新医学
Volume 67, Issue 6, 2012
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【特集】気管支喘息-最近の進歩と展望-
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座談会
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【特集】気管支喘息-最近の進歩と展望-
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病態理解の進展
67巻6号(2012);View Description Hide Description近年,喘息はさまざまな臨床的表現型からなる症候群と理解されてきており,その病態形成には異なる免疫応答を介した複数の機序が関与すると考えられている.複雑な病態形成において,基本病態として気道炎症が存在することは各表現型において共通している.慢性気道炎症は気道傷害を繰り返すことによって気道構造の変化(リモデリング)を惹起し,非可逆性の気流制限をもたらし,気道過敏性を亢進させると考えられる. -
国際ガイドライン(GINA)アップデート
67巻6号(2012);View Description Hide DescriptionGINA2011 の改訂には大きな変革は見られていない.幼小児用ガイドラインの発刊により,成人を基準にした吸入ステロイド薬の用量が独立して表にまとめられた.またステップアップ時に,吸入手技やアドヒアランスのチェック,症状が喘息によるものであることの確認が明記された.新しい項目は気管支温熱形成術(bronchial thermoplasty)で,長期の安全性がまだ確定していないことを指摘し,慎重な対応を求めている. -
本邦のガイドラインに沿った治療戦略
67巻6号(2012);View Description Hide Description喘息の薬物治療は,気道炎症を抑制するための長期管理と喘息増悪に対する治療からなる.長期管理のための薬物療法は,その強度から4つの治療ステップに分けられる.吸入ステロイド薬,長時間作用性吸入β2 刺激薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬,徐放性テオフィリン製剤などが使われるが,中心となるのは吸入ステロイド薬である.薬物投与は,喘息のコントロール良好を達成・維持するために適切な治療ステップを選択して行う. -
気道炎症モニタリングの現状と展望
67巻6号(2012);View Description Hide Description喘息の臨床像は多様であるが,持続性の気道炎症は一貫した特徴である.従来,気道炎症は病理組織や喀痰により評価されてきたが,近年,非侵襲的に採取できる呼気がバイオマーカーとして注目されている.特に,呼気一酸化窒素濃度はリアルタイムに測定が可能で,好酸球性炎症やステロイド薬反応性の予測に有用である.これまでの症状や肺機能の評価に気道炎症モニタリングを加えていくことにより,喘息の管理効率はさらに向上すると考えられる. -
新しい喘息患者呼吸機能評価法
67巻6号(2012);View Description Hide Description広域周波数オシレーション法は,最近普及してきている安静換気で行い得る呼吸機能検査である.気管支喘息患者では特に有用であり,日常診療で聴診器のような位置づけで使うことができる可能性を持つ.モストグラフではカラー画面で病態を理解しやすくしており,日常臨床での本検査にさらに親しみやすさを与えているものと思う. -
高齢者喘息をめぐる問題点
67巻6号(2012);View Description Hide Description人口の高齢化に伴い,65 歳以上の高齢者喘息患者の増加が想定されている.喘息死の顕著な減少の一方で高齢者喘息死の減少度は鈍く,喘息死全体の87% を高齢者が占めている.病態生理学的には,気道リモデリングによる不可逆的気流閉塞,非アトピー例が多いことなどが特徴である.典型的な症状を呈しにくく,慢性閉塞性肺疾患などとの鑑別や合併がしばしば問題となり,病歴聴取や検査もときに困難なため,診断が難しい場合が少なくない.治療に関しては,合併症や併用薬が多いこと,吸気フローの低下や吸入手技の拙劣さ,アドヒアランスの低下,薬剤クリアランスの低下に伴う副作用の増強などが問題となる. -
アスリート喘息管理上の注意点
67巻6号(2012);View Description Hide Description近年,運動誘発気道収縮(EIB)を含めたアスリートの喘息の有病率は増加している.これはトレーニングに際して,激しい換気による冷気,乾燥などの刺激が気道炎症の惹起の一因として関与している可能性が報告されている.アスリート喘息の治療も通常の喘息患者と同様に,喘息予防・管理ガイドライン(JGL)2009 に従った吸入ステロイド薬(ICS)による治療を基本とするが,EIB はICS による治療だけでは完全には防げないことが多い.吸入β2 刺激薬やロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA),クロモグリク酸ナトリウム(DSCG)などを組み合わせた治療が有効である. -
抗 IgE 抗体の現状
67巻6号(2012);View Description Hide DescriptionIgE を標的とする抗IgE 抗体オマリズマブが,アレルギー性喘息に対する最初の生物学的製剤として欧米および我が国の臨床現場で使用され,効果を上げている.この抗体はマスト細胞の活性化抑制にとどまらず,種々の炎症細胞にも変化をもたらすことが分かってきた.アトピー型喘息の成人患者だけでなく小児および他疾患でも効果が検討されており,抗IgE 抗体の臨床効果および作用機序の解明を通じてさまざまなアレルギー病態にIgE がどのように関与するか,今後全貌が明らかになることが期待される. -
今後の喘息治療薬
67巻6号(2012);View Description Hide Description吸入ステロイド薬を中心とする抗炎症療法の普及とともに喘息死亡者数は減少し,喘息患者のコントロールが良好になった.一方,従来の治療に反応しない難治性の患者が存在し,新しい治療薬が求められている.治療薬の候補には,PDE4 阻害薬,可溶性IL–4 受容体,ヒト化抗IL–5 モノクローナル抗体,TNFα拮抗薬などが挙げられる.今後,難治性喘息の詳しい病態の解明と,その病態に応じた治療の選択肢が増えることが望まれる. -
難治性喘息の表現型
67巻6号(2012);View Description Hide Description難治性喘息は吸入ステロイド薬などの気管支喘息の標準治療によってもコントロールできない喘息であり,中等症までの気管支喘息とは異なる疾患概念が必要と考えられている.さらに難治性喘息の病態は均一ではなく,症状や発作の誘引,気道炎症の解析から種々の表現型(フェノタイプ)の存在が明らかとなった.さらに近年では,クラスター解析によってこれらフェノタイプを組み合わせた病型分類も行われている. -
喘息発症における環境および遺伝因子の役割
67巻6号(2012);View Description Hide Description喘息の発症は,複数の遺伝子多型が,それぞれが与えられた環境下で生じるわずかな機能的な変化の総和として決定される.これまでに多くの遺伝領域や遺伝子と喘息や他のアレルギー疾患との連鎖や関連が報告されてきた.遺伝子と遺伝子との有機的な繋がり,環境と遺伝子との動的な繋がりに目を向けることで,アレルギーや喘息における分子病態の多様性の解明,さらには病態の理解に基づいた創薬研究,薬理遺伝学などに繋がることが期待される. -
喘息治療の薬理遺伝学
67巻6号(2012);View Description Hide Description喘息治療の反応性には個体差が存在し,遺伝的素因が関連する.これまでβ2 刺激薬,抗ロイコトリエン薬,吸入ステロイド薬の効果と遺伝子多型の関連性が検討されてきた.サンプル数や対象の違いにより再現性の問題はあるが,幾つかの候補遺伝子が明らかにされている.最近では,ゲノムワイド関連解析により新しい遺伝子も発見されている.これらの情報は,最小の副作用で最大の治療効果を持つ個別化医療に繋がるものと期待されている. -
注目される類縁疾患:好酸球性副鼻腔炎
67巻6号(2012);View Description Hide Description好酸球性副鼻腔炎は,副鼻腔粘膜または鼻茸に著明な好酸球浸潤を伴う易再発性の慢性副鼻腔炎である.成人で両側性に多発性の鼻茸があり,好酸球に富む粘稠性分泌物の貯留を認める.早期に嗅覚障害が出現する.篩骨洞病変が中心であるが,汎副鼻腔炎の所見を呈することも少なくない.副腎皮質ステロイド薬の全身投与や点鼻療法が有用である.効果が不十分な場合に内視鏡下副鼻腔手術を行うが,術後治療や長期的な経過観察が重要である.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(14) 児童・思春期のうつ病とその治療
67巻6号(2012);View Description Hide Description近年,子どものうつ病の存在に注目が集まっている.ただし,その病態像は成人と異なり,抑うつ気分よりもイライラが目立つことがあり,臨床症状および経過を丁寧に検討したうえで確定診断に至るべきである.また,自殺念慮の高まりなどの重大な副作用を抗うつ薬の投与によって認める可能性があることから,安易な薬物療法は避けるべきであり,言語的・非言語的を問わず心理・社会的な治療を積極的に行っていくべきである. -
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【トピックス】
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低線量 CT による肺がん検診の現状と今後
67巻6号(2012);View Description Hide Description低線量CT による肺がん検診については,米国臨床腫瘍学会(ASCO)のClinical Cancer Advance 2011 でlandmark trialとされた米国NLST 試験により,胸部写真による検診に比べ20% の肺がん死亡率低減効果が証明された.欧州で実施されているランダム化比較試験のデータと統合するメタ解析が,2015 年以降に予定されている.欧米では肺がん検診に対するパラダイムシフトが急速に起こりつつあり,我が国で低線量CT による肺がん検診をどのようにエビデンスとして検証し,検診体制に組み込むのか,肺がん二次予防策のみならず,肺がん診療の全般にかかわる重要な課題である.我が国における現行の肺がん検診体制に関しては,縦割りの検診運営,精度管理体制のばらつき,検診方法の不十分な検証方法などが指摘されており,抜本的に見直す必要がある. -
てんかん治療の新しい流れ
67巻6号(2012);View Description Hide Description『てんかん治療ガイドライン2010』をもとにして,我が国でのてんかん治療の現況を述べ,さらには抗てんかん薬治療に関する欧米のてんかんガイドラインでの第1選択薬を紹介し,我が国と欧米での新しいてんかん治療の現状を述べる.薬物療法以外の治療法として,てんかん外科治療および我が国でも承認された迷走神経刺激療法の現状を紹介し,新規抗てんかん薬治療を含め,てんかん治療は新時代に入っていることを述べる.
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【今月の略語】
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