最新医学
Volume 67, Issue 8, 2012
Volumes & issues:
-
特集【自己免疫性肝胆膵疾患-最近の知見-】
-
-
-
座談会
-
-
-
自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見
-
-
自己免疫性肝炎・原発性胆汁性肝硬変・硬化性胆管炎(IgG4 関連硬化性胆管炎を含む)の病理診断における最新の知見
67巻8号(2012);View Description Hide Description代表的な自己免疫性肝胆道疾患として,自己免疫性肝炎(AIH),原発性胆汁性肝硬変(PBC),原発性硬化性胆管炎(PSC)あるいはIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4–SC)がある.AIHでは,国際診断基準での病理所見,急性肝炎様発症の病理所見が注目されている.PBCでは新しい病期・活動度分類が普及しつつある.IgG4–SCとPSCとの鑑別が重要である.PBCとAIH,PSCとAIHのオーバーラップでの診断に,病理所見が重要である. -
自己免疫性肝炎の診断・治療における最近の知見
67巻8号(2012);View Description Hide Description最近の我が国の全国集計により,自己免疫性肝炎の診断数は増加していることが明らかとなっている.一方,従来臨床的特徴とされたIgG上昇,血清自己抗体の高力価陽性所見に乏しい非定型とも言える症例の増加や,慢性肝炎像を伴わない急性発症型の存在は,薬物性肝障害との鑑別診断を含め,診断指針の再検討の必要性を示している.我が国で臨床的に使用されているウルソデオキシコール酸の意義についても明確な指針が求められている. -
原発性胆汁性肝硬変―自己免疫性肝炎オーバーラップ症候群の診断・治療における最新の知見―
67巻8号(2012);View Description Hide Description自己免疫性肝疾患である原発性胆汁性肝硬変(PBC)と自己免疫性肝炎(AIH)では,両者の特徴を併せ持った病態が存在することが知られており,PBC–AIHオーバーラップ症候群と呼ばれている.真の合併はまれであるが,治療方針の決定や予後予測の観点から,本症を定義・診断することの臨床的意義は大きいと考えられる.とりわけステロイドの使用により病状の改善が期待されることから,治療時機を逸しないことが重要である. -
原発性胆汁性肝硬変の病因・病態における最近の知見
67巻8号(2012);View Description Hide Description原発性胆汁性肝硬変(PBC)が自己免疫疾患であることが,ゲノムワイド関連解析の結果からも確認されつつある.PBCでは小細胆管炎を病変の主座とするので,肝臓の線維化進展形式が,肝細胞の炎症から引き起こされる肝硬変と機序が異なる.モデル動物から,胆汁酸による胆管細胞傷害が疾患原因である可能性が示された.PBC肝臓の解析により,自然免疫から獲得免疫までさまざまなレベルでの破綻によってPBCの病態が形成されることが明らかになっている. -
我が国における原発性硬化性胆管炎の実態に関する最新の知見
67巻8号(2012);View Description Hide Description原発性硬化性胆管炎は,肝内・外胆管に多発性・びまん性狭窄が生じ,胆汁うっ滞を来す慢性肝疾患である.合併症としては炎症性腸疾患,大腸直腸がん,胆管がん,胆嚢がんの頻度が高い.ウルソデオキシコール酸がしばしば使用されるが,近年その位置づけには疑問符が投げかけられている.強い胆管狭窄に対する内視鏡的治療によって予後は改善する.現在我々は9年ぶりの全国調査を実施しており,今秋には結果をまとめる予定である. -
IgG4 関連硬化性胆管炎の概念・診断・治療における最新の知見
67巻8号(2012);View Description Hide DescriptionIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4–SC)は,血中IgG4値の上昇,病変局所の線維化とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤などを特徴とする原因不明の硬化性胆管炎である.さまざまな胆管狭窄像を呈するため,原発性硬化性胆管炎,胆管がん,膵がんなどとの鑑別が必要である.本邦においてもIgG4–SC臨床診断基準2012が発表され,今後,これに従って診断を行うことが重要である.治療はステロイドに良好な反応性を示し,予後もおおむね良好であると考えられている. -
自己免疫性肝疾患の肝移植における最近の知見―特に原発性胆汁性肝硬変,原発性硬化性胆管炎に対する肝移植について―
67巻8号(2012);View Description Hide Description自己免疫性肝疾患は,肝細胞障害や胆管障害の発症とその後の障害が慢性的に持続する病態に自己免疫が関与し,終末期には肝硬変にまで至る病態と考えられているが,いまだ不明な点が多い疾患である.今回,自己免疫性肝疾患,特に原発性胆汁性肝硬変(PBC),原発性硬化性胆管炎(PSC)についての肝移植適応,肝移植の成績,移植後再発について,当科での経験も踏まえて解説する.
-
-
自己免疫性膵炎における最近の知見
-
-
自己免疫性膵炎の疾患概念・診断における最近の知見―亜型分類(1型・2型)と国際コンセンサス診断基準―
67巻8号(2012);View Description Hide Description自己免疫性膵炎(AIP)は我が国で命名され,疾患概念が提唱された.日本人のAIPの大多数は,臨床的にはIgG4の産生過剰,組織学的にはLPSPで特徴づけられる.欧米から病理組織学的にIDCP/GELで定義される別のタイプのAIPが提唱され,前者を1型,後者を2型とするホノルル・コンセンサスが形成された.世界の共通基盤形成のため,1型と2型の診断を可能とする国際コンセンサス診断基準(ICDC)が2011年に発表された. -
新しい診断基準の中での自己免疫性膵炎(1型・2型)の病理診断
67巻8号(2012);View Description Hide Description近年,自己免疫性膵炎(AIP)のInternational Consensus Diagnostic Criteriaや本邦の自己免疫性膵炎臨床診断基準2011が提唱された.IgG4関連疾患についても本邦から包括診断基準2011が提唱され,国際的な合意声明が近刊予定にある.これらの中で,病理所見は重要な位置を占めている.本稿ではAIPの診断基準にある病理所見の項目について解説し,さらにIgG4関連疾患の診断基準における考え方との相違,背景にある議論や問題点について述べた. -
自己免疫性膵炎の免疫遺伝学的背景における最近の知見
67巻8号(2012);View Description Hide Description自己免疫性膵炎(AIP)は,IgG4が関連する全身性疾患と認識されているが,この疾患の病態・発症機序の詳細については充分解析されていない.AIPは,多くの自己免疫疾患同様,遺伝と環境要因が関与する多因子性疾患と考えられる.本稿では免疫学的機能を示すHLA,CTLA4,FCRL3,TLR4,KCNA3遺伝子の疾患感受性について,得られた知見を紹介する. -
自己免疫性膵炎(1型)の免疫学的解析における最近の知見―自然免疫系の関与―
67巻8号(2012);View Description Hide DescriptionIgG4関連疾患は,血清IgG4値の上昇とIgG4陽性形質細胞の標的臓器への浸潤を特色とする疾患である.自己免疫性膵炎(1型)はIgG4関連疾患の膵臓病変であると認識されつつある.IgG4関連疾患の発症には,獲得免疫反応と自然免疫反応の双方がかかわる.Toll–like receptorおよびNOD–like receptorを中心とする自然免疫システムの活性化が,IgG4関連疾患の発症に関与することが明らかになりつつある. -
自己免疫性膵炎(1型)の免疫学的解析における最近の知見―制御性T細胞の関与―
67巻8号(2012);View Description Hide Description自己免疫性膵炎(AIP)は,2010年に開催された国際膵臓学会で合意された国際コンセンサスにより,IgG4の関与した1型と好中球病変を特徴とした2型に分類されることとなった.日本を含むアジアでは,1型AIPが多く存在する.また一方で,自己免疫疾患には制御性T細胞の関与が報告されているが,1型AIPでの役割は不明である.我々は,1型AIPにおける制御性T細胞のかかわりについて検討した.その結果,ナイーブ制御性T細胞の減少が発症に関与しており,1型AIPに特徴的な血中IgG4上昇とIgG4陽性形質細胞浸潤にはICOS陽性制御性T細胞の増加との関連性が示唆された. -
自己免疫性膵炎の治療における最近の知見
67巻8号(2012);View Description Hide Description自己免疫性膵炎の標準治療法は,ステロイド治療である.閉塞性黄疸などの有症状例が原則として適応となる.治療開始前に可能な限り膵がんや胆管がんを否定して診断を確定し,黄疸例では胆道ドレナージ術を,糖尿病合併例では血糖のコントロールを行う.経口プレドニゾロンを0.6mg/体重kg/日から投与開始し,2~4週間の投与後1~2週間ごとに5mgずつ減量していく.再燃防止のために少量プレドニゾロンによる維持療法を行う例が多い.
-
-
【連 載】
-
-
現代社会とうつ病(16) 現代型うつ病は病気か
67巻8号(2012);View Description Hide Descriptionうつ病人口の増加とともに,「現代型うつ病」と呼ばれる病像が主流になりつつある.軽症で治りにくく,「生き方」と症状の区別が曖昧なものへの変化である.背景にあるのは社会的規範の変容,すなわち勤勉主義の退潮と「操作主義」や「コミュニケーション偏重主義」の全面化である.いかに「怠け」的であれ,治療者は当事者のニーズを尊重すべきであるが,治療に際しては薬物のみならず環境調整や「人薬」的な対応が必要とされる. -
-
-
-
【トピックス】
-
-
KRAS 変異を伴う自己免疫性リンパ増殖症候群―ALPS と JMML を結びつける新たな疾患―
67巻8号(2012);View Description Hide Description自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)は,FASシグナル経路の異常によるリンパ球増多,自己免疫を呈する疾患である.若年性骨髄単球性白血病(JMML)は小児特有の骨髄異形成症候群(MDS)の中に位置づけられ,造血幹細胞でのRAS/MAPK経路の障害が関与している.我々は,リンパ球を含む造血幹細胞レベルの体細胞KRAS変異を持つALPS様の疾患を発見した.血液学的にはJMML様の所見も認められ,これをRAS associated ALPS like diseases(RALD)と命名した.無関係と思われていたJMMLとALPSが,RALDを交差点とする形で交わっている. -
EGFR 遺伝子ステータスに応じた非小細胞肺がんに対する分子標的薬
67巻8号(2012);View Description Hide Description遺伝子変異陽性肺がんに対するEGFR–TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ)の治療効果が,本邦を含めた複数の第Ⅲ相試験で明らかになった.奏効率,無増悪生存期間ともEGFR–TKIが有意に良好であるが,クロスオーバーが起こるため生存期間には差がない.現段階では,EGFR–TKIを二次治療以降より一次治療に用いるほうが良いという明確なエビデンスはない.しかし,EGFR–TKIがキードラッグであることは疑いなく,EGFR–TKIの投与の時期を逸することがないよう注意が必要である.
-
-
【症 例】
-
-
-
【今月の略語】
-
-