Volume 67,
Issue 10,
2012
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特集【急性骨髄性白血病-分子異常と予後-】
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最新医学 67巻10号, 2387-2388 (2012);
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座談会
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最新医学 67巻10号, 2389-2399 (2012);
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総論
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最新医学 67巻10号, 2400-2405 (2012);
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急性骨髄性白血病(AML)で観察される染色体転座の結果,キメラ遺伝子が形成される.キメラ遺伝子からは,がん遺伝子(EVI1)が異所性に発現したり,キメラ遺伝子産物(PML–RARA,CBF キメラ,MLL キメラなど)が発現したりする.これらの分子異常の多くは,遺伝子発現の制御を破綻させて白血病を発症させる.染色体異常の有無およびその種類に関する知見は,AML の予後予測および治療の層別化に極めて有用である.
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最新医学 67巻10号, 2406-2412 (2012);
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急性骨髄性白血病(AML)の40~50% は正常核型を有する.これまでAML は,細胞増殖・生存にかかわるクラスⅠ変異と細胞分化にかかわるクラスⅡ変異が同時に起こって発症すると考えられてきた.しかし近年,エピジェネティクスにかかわる分子の遺伝子変異が多数明らかにされ,クラスⅢ変異と呼ばれるようになった.これらの遺伝子異常によって正常核型AML の予後を層別化し,至適な治療法を確立することが今後の課題である.
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最新医学 67巻10号, 2413-2419 (2012);
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造血器腫瘍では,p15/INK4B 領域のメチル化に代表されるエピゲノム異常が病態を進行させることが以前より知られていたが,これらのエピゲノム異常は偶発的に生じ,自然選択的に残るものと考えられてきた.近年のシークエンス技術の進歩により,DNA 修飾酵素,ヒストン修飾酵素に遺伝子異常が発見され,エピゲノム異常による白血病発症の仕組みが次第に明らかになりつつある.さらには,白血病の治療においてはDNA メチル化阻害薬,ヒストン修飾酵素阻害薬が使用されるようになり,一定の効果が得られるようになっている.本稿では,エピゲノム修飾の仕組みについて概説した後,エピゲノム異常による白血病発症の病態について,最近明らかにされたエピゲノム関連の遺伝子異常を中心に概説する.
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最新医学 67巻10号, 2420-2425 (2012);
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急性骨髄性白血病(AML)の遺伝子発現はその遺伝子異常を反映しており,重要な予後マーカーである(t 8;21),(t 15;17),inv(16),C/EBPa 変異,NPM1 変異,FLT3 –ITD 変異などと関連した遺伝子発現シグナチャーが存在する.幹細胞性と関連した遺伝子発現シグナチャーも存在し,予後マーカーとなりうることが報告されている.これらの遺伝子発現情報に加えて,遺伝子異常も直接検出するトランスクリプトーム検査が,次世代シークエンサーを用いて可能となりつつある.
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最新医学 67巻10号, 2426-2432 (2012);
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ヒト急性骨髄性白血病(AML)では,白血病細胞内にごく少数存在する「白血病幹細胞」のみが自己複製を行いながら,白血病細胞集団全体を供給していると考えられている.正常造血幹細胞に複数の白血病関連遺伝子を強制発現・抑制することにより,白血病幹細胞への悪性化過程を再構築することが可能である.このことから,複数の遺伝子異常が主として造血幹細胞に集積した結果,白血病幹細胞へトランスフォームすると考えられる.また,免疫不全マウスを用いた異種移植実験の改良によってヒト白血病幹細胞の純化・同定が可能となり,白血病幹細胞の維持機構や機能の解析も進歩している.これらの成果により,白血病幹細胞を標的とした治療法の開発が期待されている.
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各論
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最新医学 67巻10号, 2433-2439 (2012);
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RUNX1/AML1 異常は,白血病原性を持つ代表的な転写因子異常である.これまでに転座,変異,発現異常という3つの白血病化機構が解明されている.RUNX1 転写因子複合体の転座によるCBF 白血病は予後良好であるが,RUNX1 遺伝子変異AML は予後不良である.また短いアイソフォームの過剰発現など,RUNX1 発現制御逸脱による機序も明らかになりつつある.このようにRUNX1 機能異常は白血病化の主要因であると言える.
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最新医学 67巻10号, 2440-2447 (2012);
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急性前骨髄球性白血病(APL)の95% 以上の症例で,PML –RARA キメラ遺伝子が同定されている.PML–RARa 遺伝子産物は,RARa の転写を抑制するとともに野生型PML の機能を阻害する.これに付加的な遺伝子異常が加わり,APL が発症する.全トランスレチノイン酸や亜ヒ酸はPML–RARa を分解するものであり,同時に投与することでAPL 幹細胞が除去できる可能性がある.
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最新医学 67巻10号, 2448-2454 (2012);
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FLT3 遺伝子変異は,急性骨髄性白血病(AML)に高頻度で認める活性型変異である.変異FLT3 分子は恒常的に活性化を示し,主として細胞増殖促進をもたらすことによって白血病の発症・進展に関与している.FLT3 遺伝子変異はAML における予後不良因子であることから,変異FLT3 分子を標的とした阻害薬の開発が進められている.しかし,現時点では臨床応用可能な薬剤開発には至らず,選択性,阻害活性,耐性,有害事象など多くの解決すべき問題が残されている.
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最新医学 67巻10号, 2455-2458 (2012);
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正常な核型を持つ急性骨髄性白血病(AML)では,高頻度に核小体タンパク質ヌクレオホスミン(NPM)の変異体NPMc を伴う.NPMc 変異体を伴うAML は臨床レベルと遺伝子制御レベルでさまざまな特徴を持ち,AML の中で一大グループを形成している.その分子メカニズムはまだ不明な点が多いが,NPMc ノックインマウスやゲノムの解析などにより,NPMc–AML 発症メカニズム解明への手掛かりが徐々に得られつつある.
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最新医学 67巻10号, 2459-2465 (2012);
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転写因子C/EBPa は急性骨髄性白血病(AML)の約8%,正常核型例の12% に変異を認める.N端の変異によりp30 のドミナントネガティブフォームが形成され,C端の変異により2量体形成が損なわれる不活化変異である.N端とC端の両変異を約6割に認める.ダブル変異例の治療反応性は良好で,染色体予後良好群に匹敵する.単一変異例はFLT3 –ITD やNPM1 変異を合併しやすく,共存する遺伝子変異により予後が異なる.
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最新医学 67巻10号, 2466-2471 (2012);
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本稿では,急性骨髄性白血病(AML)において高発現が予後不良を規定する代表的な遺伝子について,その臨床的意義,分子メカニズムを概説する.最近AML の治療成績の向上があまり見られていないが,AML は多様な病態を示す疾患の集合であり,治療成績改善のため,1つには本稿で取り上げるような難治性AML の各サブタイプにおける予後不良の克服が必須であると考えられることから,今後取り組むべき課題について明らかにしたい.
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特集トピックス
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最新医学 67巻10号, 2472-2478 (2012);
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エピジェネティックな変化を治療に応用しようとする試みは造血器腫瘍では骨髄異形成症候群で行われ,デシタビン,5-アザシチジン(アザシチジン)が有効であることが分かり,利用されている.従来からDNA に作用する脱メチル化薬と考えられてきたが,最近になって,アザシチジンはデシタビンと異なり代謝拮抗薬として働き,核酸プールの枯渇を導くとの仮説が提唱された.
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最新医学 67巻10号, 2479-2484 (2012);
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ゲノムワイド解析技術の進展により,急性白血病細胞クローンの遺伝学的な多様性が明らかになってきた.各クローンは新しい変異を加えながら,生存や増殖に有利な異常を獲得したものが主要なクローンとしてウエートを占めていく.多様なクローンの中には,白血病発症前から存在する前白血病クローンや,再発の原因になるクローンが含まれている可能性があり,それらの特性を解析することで新しい治療標的を同定できる可能性がある.
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【連 載】
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最新医学 67巻10号, 2486-2503 (2012);
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最新医学 67巻10号, 2504-2507 (2012);
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最新医学 67巻10号, 2508-2512 (2012);
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最新医学 67巻10号, 2513-2516 (2012);
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【トピックス】
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最新医学 67巻10号, 2517-2522 (2012);
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蛍光シグナルを用いたバイオイメージング技術は,さまざまな蛍光タンパク質・色素および検出器の開発によって飛躍的に進歩してきた.その結果,生体内での腫瘍組織の時空間的動態解析が可能となってきている.本稿では,病理学的および生化学的解析を中心とする従来のがん研究では困難であった多様ながん動態変化を,蛍光バイオイメージング技術によってとらえることのできた例を紹介するとともに,今後の可能性について述べたい.
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最新医学 67巻10号, 2523-2530 (2012);
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浸透圧性脱髄症候群(ODS)は,ヒトにおいては橋中心髄鞘崩壊に代表される中枢性の脱髄疾患であり,多くの場合低ナトリウム(Na)血症の治療時に血清Na 濃度が急速に補正されることによって生じる重篤な合併症である.ODS はいったん発症すると治療法はなく,脱髄発症・進展の予防や髄鞘再生などの治療法が期待されている.我々は,ミノサイクリンがミクログリアの炎症性サイトカイン発現およびミクログリアの脱髄部への移動・集積を抑制することによってODS の発症・進展を予防することを動物モデルで示した1).
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【今月の略語】
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最新医学 67巻10号, 2531-2536 (2012);
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