最新医学
Volume 68, Issue 7, 2013
Volumes & issues:
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特集【致死性不整脈診療の最前線】
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- 座談会
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- 致死性不整脈疾患への新たなアプローチ法
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ゲノム解析テクノロジー
68巻7号(2013);View Description Hide Description解析技術の急速な進歩により,これまでの1塩基多型(SNP)を対象とした解析から,遺伝子領域すべてを解析するエクソーム解析,ひいてはヒトゲノムの30 億塩基対すべてを調べる全ゲノムシークエンス解析へと,解析手法の幅が広がってきている. -
iPS 細胞を用いた循環器疾患モデル構築
68巻7号(2013);View Description Hide DescriptionヒトiPS 細胞は,患者から容易に作製することができる多能性幹細胞であり,ゲノムにコードされた遺伝情報をすべて引き継いでいる.臨床応用に向けて期待されている再生医療のほかに,遺伝性疾患の病態解明と新規治療方法の開発に向けた疾患モデル作製も盛んに行われている.未解決であった病因解明や,ドラッグスクリーニングを経て新規治療方法の開発が行われている.これらの研究をもとに革新的治療方法の開発が待たれている. -
コンピュータシミュレーション―不整脈治療へ向けた新たなアプローチ―
68巻7号(2013);View Description Hide Description近年,不整脈研究の分野において,コンピュータシミュレーションによる理論的アプローチが注目されるようになった.致死性不整脈の治療に対する社会的ニーズは高いが,その遺伝的背景も含めた発生メカニズムおよび最適な治療法については不明な点も多い.本稿では,システムバイオロジーに基づいて構築されたコンピュータモデルを用いることで広がる新たな不整脈治療の可能性について,幾つかの例を挙げながら概説する. -
致死性不整脈に対する非侵襲的検査指標を用いてのリスク層別化
68巻7号(2013);View Description Hide Description近年,非侵襲的検査指標を用いた致死性不整脈に対しての予知が盛んに行われるようになった.運動負荷中に評価するT波オルタナンスと,加算平均心電図で測定する心室レートポテンシャルがその中心にある.この2つは,平成24 年度の診療報酬改正で新規の保険収載技術として承認された.ホルター心電図で測定する心拍変動指標と心拍タービュランスも,比較的活用度の高い検査指標である.本稿では,これら非侵襲的検査指標のリスク層別化における特徴について概説する. -
侵襲的治療の現状と可能性
68巻7号(2013);View Description Hide Description致死性心室性不整脈に対する治療の要は植え込み型除細動器(ICD)であるが,その限界やQOL のため心室頻拍/心室細動の予防治療を行うことは必須である.近年,心室頻拍のみならず心室細動においてもカテーテルアブレーションや交感神経修飾術をはじめとする侵襲的治療の有効性が報告されている.個々の症例に当たっては,薬物治療,ICD 設定プログラムの工夫なども含め,総合的に治療戦略を立てることが重要である. - 致死性不整脈診療 各論
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先天性 QT 延長症候群
68巻7号(2013);View Description Hide Description先天性QT 延長症候群が報告されてから50 年がたった.これまでに,分子遺伝学の分野である遺伝子変異の同定技術や変異タンパク質の機能変化を検討する電気生理学的な技術により,疾患の病態理解は着実に前進してきた.現在は次世代シークエンサーの登場や昨年のノーベル賞で話題となっているiPS 細胞といった新技術などにより,新たな研究段階へと進もうとしている.今後,これらの新技術から得られた研究結果が臨床管理へ着実に応用されていくことが期待される. -
後天性 QT 延長症候群
68巻7号(2013);View Description Hide Description通常は正常なQT 時間の心電図を示すが,薬剤,電解質異常,徐脈などの二次的要因を契機にQT 延長やTorsades de Pointes といった不整脈を呈するものを,後天性QT 延長症候群と言う.先天性QT 延長症候群がイオンチャネルの異常によって説明されるように,後天性QT 延長の一部にも何らかの遺伝子バリエーションや異常を持つことが明らかになった.また疾患特異的な遺伝子多型は通常はその機能異常が顕在化せず,薬剤などQT を延長させる要因があるときのみリスクとなることも分かってきた.今後はゲノムワイド集団相関解析などを用いた研究により,再分極修飾遺伝子がさらに明らかになっていくものと思われる. -
Brugada 症候群
68巻7号(2013);View Description Hide Description1992 年にBrugada 症候群が報告されて以来さまざまな知見が報告され,遺伝子変異や病態,治療について相当な発展を遂げた.臨床病態ではさまざまな心電図変化が心室細動を予測するために重要であることが分かってきた.電気生理学的検査による心室細動誘発は予後予測に有用かどうかは議論が分かれるが,誘発法や不応期がリスク評価に重要である.しかし確実なリスク評価法が確立されていないため,さまざまな臨床像を考慮し,評価を行う必要がある. -
遺伝性心臓伝導障害
68巻7号(2013);View Description Hide Description遺伝性心臓伝導障害のうち,進行性心臓伝導障害(PCCD)は,明らかな基礎心疾患の存在なしに進行性の房室ブロック・脚ブロックなどの心臓伝導異常を来す.心筋Na チャネル,Ca2+ 活性化非選択性陽イオンチャネル,コネキシン40 などに変異が報告されている.ラミン心筋症や副伝導路症候群や神経筋疾患にも心臓伝導障害を来すものがある.また,伝導系の発生に関与するさまざまな転写因子も疾患候補遺伝子として挙げられている. -
カテコラミン誘発多形性心室頻拍
68巻7号(2013);View Description Hide Descriptionカテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)は,運動や情動の変化などにより突然死を起こす致死的不整脈の1つである.遺伝子解析により,リアノジン受容体(RyR2),カルセクエストリン2(CASQ2),トリアジン(TRDN),カルモジュリン(CaM)などの異常が発見され,発症機序も徐々に明らかになってきている.フレカイニド,プロパフェノン,カルベジロールなどの有効性も報告されている. -
QT 短縮症候群の遺伝的背景と臨床的特徴
68巻7号(2013);View Description Hide DescriptionQT 短縮症候群は,異常に短いQT 間隔と心室細動による突然死を特徴とする不整脈症候群である.QT 延長症候群やBrugada 症候群といった遺伝性不整脈症候群と同じように,QT 短縮症候群も遺伝性疾患であり,現在までに幾つかの原因遺伝子が同定されている.心室細動による突然死の予防のために植え込み型除細動器(ICD)が用いられる.疾患頻度が低い疾患であることから,薬物療法の効果は検討が不十分である. -
家族性徐脈症候群
68巻7号(2013);View Description Hide Description洞不全症候群,房室ブロックなどの徐脈性不整脈疾患は,加齢性変化にて多く見られるが,若年や家族性に認められる場合には遺伝的素因の関与が強く示唆される.我々は,家族性ペースメーカー植え込み患者の約半数で,心臓Na+ チャネル遺伝子(SCN5A),またはラミンA/C 遺伝子(LMNA)異常を同定しており,背景疾患を考慮すると植え込み型除細動器や除細動機能付き両室ペーシング植え込みが望ましい例もあり,家族性徐脈症候群における遺伝子スクリーニングは非常に有用であると考える. -
催不整脈性右室心筋症・異形成
68巻7号(2013);View Description Hide Description催不整脈性右室心筋症・異形成(ARVC/D)は,右心室を中心とした心筋変性による右心不全,右心室由来の心室性不整脈を特徴とし,突然死の原因となる遺伝性疾患である.2010 年に診断基準が改訂され,病理所見や左心室の関与に対する基準が変更された.ARVC/D の主な原因はデスモソーム関連タンパク質をコードする遺伝子変異であることが解明され,新たな診断基準項目にも加えられている.突然死予防のため,運動制限や植え込み型除細動器(ICD)の植え込みを含めた不整脈のコントロールが重要である. -
家族性心房細動
68巻7号(2013);View Description Hide Description心房細動は,高血圧,僧帽弁膜症,虚血性心疾患,心筋症,甲状腺機能亢進症を背景として発症することが多い.一方,心房細動の5%,あるいは明らかな基礎疾患を有さない孤立性心房細動の15% は家族歴を有する.これまで家族性心房細動家系より心筋イオンチャネルを中心に遺伝子変異が同定され,機能解析により遺伝子変異による心房細動発症機序が明らかにされた.これらの遺伝子変異の発見は,心房細動の分子生物学的発症メカニズムの解明のために大きく寄与したと考えられる.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(27) 支持と共感の技― 自己愛の視点から見たうつ病へのアプローチ―
68巻7号(2013);View Description Hide Descriptionうつ病者は自己愛があり,他人からの愛や承認が生きるうえで必須である.対象喪失とは,そのような愛や承認の中断である.共感や支持は重要なツールであり,治療目標の設定と治療契約は大切である.Here and now で接し,自己愛転移に気づき,待ち,干渉せず,より成熟した転移を育む.逆転移に注意するが,進展の中で治療者からの分離が始まり,同時に意味のある記憶が甦る.理想(の母親)を断念し限界を受容することで,治療の終結が近づく. -
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【トピックス】
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抗 VGKC 複合体抗体関連症候群
68巻7号(2013);View Description Hide Description抗VGKC 複合体抗体は,電位依存性カリウムチャネル(VGKC)と複合体を形成する各コンポーネントに対する自己抗体の総称である.筋痙攣を主徴とし,末梢神経の過剰興奮に起因するIsaacs 症候群や末梢神経系,自律神経系,中枢神経系の広範な症状を呈するMorvan 症候群では抗Caspr–2 抗体が,そして高率に抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)を合併する亜急性の自己免疫性辺縁系脳炎では抗LGI–1 抗体が関連すると理解されている.
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【今月の略語】
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