最新医学
2014, 69巻3月増刊号
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特集【再生医療の最新の進歩(前篇)次世代再生医療に向けた基盤研究】
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- 序論
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- 再生医療を可能にする細胞ソース
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ES 細胞研究の展望と課題
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide DescriptionヒトES / iPS 細胞の臨床利用に向けた研究開発が進められているが,従来の医療とは違いさまざまな面で新しい試みであり,解決が必要な問題は山積している.ヒトES 細胞を臨床に用いるためにどのように培養するのか,その技術がどのように進展してきたか,を中心に解説する.ES 細胞で培われたさまざまな技術はiPS 細胞の利用にもそのまま活用されており,両者の研究を一体的に進めることが重要である. -
iPS 細胞研究の展望と課題
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description人工多能性幹(iPS)細胞がヒト線維芽細胞から樹立されてから7年が経った.2012年には,iPS 細胞を世界で初めて樹立した山中伸弥教授が,その功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞した.皮膚や血液から作製可能なiPS 細胞は,再生医療だけでなく,疾患研究や創薬などの有用なツールとして期待が高まっている.実際に,最近ではiPS 細胞を用いた加齢黄斑変性への臨床研究が認可された.今後,iPS 細胞を用いた治療法が普及すれば,研究室だけでなく医療の現場においても,iPS 細胞についての知識が求められることが予想される.そこで本稿では,iPS 細胞の樹立された経緯やiPS 細胞の可能性,問題点などiPS 細胞に関する基本的な事柄について紹介したい. -
Muse細胞研究の展望と課題
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description骨髄,脂肪,皮膚や市販の線維芽細胞などの間葉系の細胞に,腫瘍性を持たない多能性幹細胞Muse 細胞が発見された.この細胞の最大のメリットは,安全性と同時に,分化誘導を必要とせず,生体内に投与すれば傷害部位に遊走・生着し,場の論理に応じて自発的に分化し,組織修復と機能回復をもたらしてくれるという,臨床応用上の簡便性である.この細胞の再生医療への応用の道筋を考察したい. -
直接リプログラミング技術を用いた再生医療の展望
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description心疾患は世界中で死因の上位に位置している.成人では心筋の再生能力は限られていることから,障害された心筋を再生する新たな技術が求められている.心臓に大量に存在する心臓線維芽細胞を心筋細胞に転換する直接リプログラミングは,新たな心筋再生療法と成りうる.これまでに,複数の心筋関連因子によるマウスまたはヒトでの心筋直接リプログラミングが報告されている.本稿では,近年の心筋リプログラミング研究の進歩を検討し,臨床応用に向けた展望を紹介する. - iPS細胞を用いた疾患モデル研究
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iPS 細胞を用いた神経変性疾患モデル
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description2006年にマウスの線維芽細胞から,2007年にヒトの線維芽細胞から人工多能性幹細胞(iPS 細胞)が作製され,現在までにさまざまな分野でiPS 細胞を用いた研究が報告されている.神経変性疾患の分野では,神経細胞の再生が難しいために動物モデルや細胞モデルを用いて研究が進められてきており,患者の遺伝子情報を有した疾患標的細胞を用いて研究できるiPS 細胞の技術は,強力なツールである.本稿では,iPS 細胞を用いた神経変性疾患の研究について述べる. -
iPS 細胞を用いた心疾患モデル
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide DescriptionヒトiPS 細胞は患者体細胞から容易に作成することが可能で,患者ゲノムにコードされたすべての遺伝情報を受け継いでいる.すなわち,同分化細胞を用いることにより疾患モデルを作成することが可能であり,未解決だった病気の原因解明や,ドラッグスクリーニングなどにより新規治療方法の開発が期待されている.これらの研究結果をもとに,現在治療方法がない難治性心疾患に対する,革新的な新規治療方法の開発が待たれる. -
iPS 細胞を用いた筋疾患モデル
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description骨格筋疾患には,有効な治療法が確立されていない難病が多くあり,新規治療薬の開発に向け,患者由来iPS 細胞を活用した研究が期待されている.その実現のため,我々は高効率で極めて再現性高くiPS 細胞を骨格筋へ分化誘導させる方法を確立し,三好型ミオパチーの膜修復異常という病態再現に成功した.この手法を応用することで,多くの筋疾患に対する新たな治療法や薬剤の開発につながるものと期待できる. - iPS細胞を用いた再生医療への挑戦
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新たな輸血製剤の創生
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description山中伸弥博士らが成功した人工多能性幹(iPS)細胞の作製は,瞬く間に世界を圧巻し,“成熟細胞の初期化”という新領域を開拓したジョン・ガードン博士と共に2012 年のノーベル生理学医学賞を授与された.iPS 細胞の登場は,胚性幹細胞の研究によって生まれた再生医療実現への希望を,さらに加速度的に大きくしている.本稿では,筆者らが所属している造血研究領域において,iPS細胞が及ぼした波及効果の実例を紹介する. -
iPS 細胞技術がもたらす新たな軟骨疾患研究・治療
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description軟骨は胎生期には骨格の鋳型として体を支え,生後は成長軟骨として骨格を伸長させ,また関節軟骨として滑らかな関節運動を担っている.成長軟骨の障害は骨系統疾患を引き起し,全身骨格の(多くの場合)短縮,変形を起す.一方,関節軟骨の損傷は膝などの関節運動機能障害を起す.iPS 細胞の開発により,骨系統疾患患者の体細胞からiPS 細胞を作り,それを軟骨細胞へ分化させることで,試験管内で患者の軟骨細胞を作ることが可能になりつつある.この疾患モデルにより,骨系統疾患の病態解析や創薬が行われることが期待される.関節軟骨の欠損に対しては,HLA ホモiPS 細胞ストックから軟骨細胞を分化誘導して,欠損部に他家移植する治療方法の開発が進められている.また,ダイレクト・リプログラミングによって,iPS 細胞を経ずに軟骨細胞を直接誘導することも可能になっている. -
ヒト代謝性臓器の創出に向けた開発戦略
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description移植医療における最も重要な未解決課題が,ドナー臓器の絶対的不足であることは明らかである.この課題を解決するために,ヒト臓器の人為的構成を可能とする革新的な細胞操作技術を開発する必要がある.我々は,ヒトiPS 細胞由来肝内胚葉細胞を材料として,血管内皮細胞と間葉系細胞との共培養によるヒト器官原基(ヒトiPS 細胞由来肝細胞原基:hiPSC-LB)の人為的創出法を開発した.そして,ヒト器官原基移植(organ bud transplantation)による生体内における機能的な臓器創出が有効な治療手法となることを明らかにした. -
糖尿病治療を目指したiPS 細胞からの膵島形成
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Descriptionインスリン依存型の重症糖尿病治療にあたり,膵島移植法が有効であることが示されている.しかし,絶対的なドナー不足や免疫拒絶の問題が本法の普及を妨げる.これを根本的に解決する方法として,多能性幹細胞などからの膵内分泌細胞,あるいは膵島そのものの再生に注目が集まっている.本稿では,多能性幹細胞,特にヒトES / iPS 細胞からの膵内分泌,膵島再生について概説する. -
パーキンソン病に対する再生医療
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Descriptionパーキンソン病の細胞移植治療は1980 年代から行われており,研究データが蓄積されているにもかかわらず,一般的な治療法として確立されるまでには至っていない.胚性幹細胞(ES 細胞)や人工多能性幹細胞(iPS 細胞)が開発されたことにより,細胞移植治療が治療法の1つとなる可能性が出てきた.本稿では現在までに行われてきた研究を挙げながら,パーキンソン病の再生医療に関して考えていきたい. -
脊髄損傷に対する再生医療
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description医学の著しい進歩にもかかわらず,損傷した脊髄を直接修復する治療法はいまだ確立されていない.しかし近年,動物実験レベルで脊髄損傷に対する細胞移植治療の有効性が数多く報告されている.本稿では,これまで行われてきた脊髄損傷に対する神経幹細胞移植研究について,特にiPS 細胞研究に関する話題を中心に概説する. - 3次元組織・臓器を創る
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異種動物個体内での臓器再生
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description多能性幹細胞による臓器,組織の作製技術の開発は,世界中で活発に研究されている.しかしながら,これまでに成体臓器と同等の機能を持つ完全分化した臓器作製の報告はない.この問題を解決するためには,動物の発生原理を利用した臓器作製法の開発が必要である.本稿では,我々の開発した,胚盤胞補完法による成体臓器と同等の機能を持つ臓器の作製法を紹介したい. -
生体足場を用いた機能的臓器再生
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description末期臓器不全の治療として同所臓器移植がある.しかし,慢性的な臓器不足が世界的に大きな問題となっている.近年,臓器不足を克服するため,再生医療が注目を集めている.究極の治療法となる機能的な臓器再生は本当に実現可能なのであろうか.近年,新たな再生手法の開発,および多能性幹細胞研究の進展で,機能的臓器再生が少しずつではあるが現実味を帯びてきた.本稿では,機能的臓器として腎臓に焦点を当て,腎臓再生法の開発の現況について紹介するとともに,限界や問題点にも言及する. -
血管網付与技術による3次元心筋組織の構築
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description再生組織への血管網付与技術は,ティッシュエンジニアリング研究において克服すべき世界的課題となっている.我々は心筋細胞シートの段階的積層化技術を開発し,生体内と生体外環境において血管網を伴った厚い心筋組織の構築を成功させた.機能的な血管網を有することは,再生組織の生存のみならず栄養物質の代謝,老廃物の排泄といった臓器の果たす役割としても極めて重要であり,本技術は種々の組織・臓器再生への応用が可能である. - 再生医療普及のための基盤技術
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ヒト多能性幹細胞用培養基質の開発
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Descriptionヒト多能性幹細胞(hPSCs)を医療に利用するためには,これらの細胞を安全に増幅する培養技術の確立が不可欠である.マウス胎仔線維芽細胞(MEF)をフィーダー細胞とする従来の培養法は異種動物成分の混入が不可避であるため,フィーダー細胞を使わないhPSCs の培養法の開発が急務となっている.現在,ラミニンやビトロネクチンなど,さまざまな多能性幹細胞用の培養基質が市販されている.ラミニン511E8 は接着力が非常に強く,大量・拡大培養に適しており,医療用hPSCs の標準的な培養基質としての普及が期待される. -
普及を目指した他家細胞シート移植による食道再生医療の試み
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description我々は温度応答性培養皿を用いて,平面上に培養した細胞をシート状に回収して治療に使う“細胞シートテクノロジー”を開発し,自己の体細胞から培養作製した上皮細胞シートを使った食道再生治療のヒト臨床を,日本だけでなく海外にも展開してきた.さらに,この再生治療が普及し,標準治療として実現化を目指し,培養加工技術の開発だけでなく,同種細胞を利用して組織工学製品の開発を目指している. -
再生医療における免疫制御
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description再生医療として多能性幹細胞から誘導した細胞・組織を移植する際,多くの場合同種異系(アロ)移植となることが予想され,免疫抑制が必要である.臓器移植の発展とともに進化してきた免疫抑制療法を再生医療特有の状況に適合させていく作業や,ES 細胞やiPS 細胞から免疫制御に役立つような新しい細胞を作製するといった,再生医療時代にも通用する新しいコンセプトに基づいた免疫制御研究が必要である. -
iPS 細胞大量培養技術開発
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide DescriptioniPS 細胞を用いた再生医療および創薬研究の実現・普及には,安定・安全・安価な未分化細胞,および分化細胞の供給技術開発が不可欠である.すでに世界的にも複数の大量培養技術が開発され始めており,我々も3次元浮遊撹拌懸濁培養技術開発により,ヒトiPS 細胞の未分化増幅,および効率的心筋分化を量産可能なスケールで実現している.iPS 細胞応用研究と密接に関連する大量培養技術の重要性は,今後ますます高まるものと考えられる. -
臨床用iPS 細胞バンキング:CiRA における再生医療用HLA ホモiPS 細胞ストックプロジェクト
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide DescriptioniPS 細胞による再生医療を広く普及させるための一策として,iPS 細胞のバンク化が検討されている.本稿では,京都大学iPS 細胞研究所(CiRA)で行われている,日本人への適合性の高い再生医療用iPS 細胞バンクを樹立する試みについて,ドナー選択や製造施設,製造手法,iPS 細胞バンク事業の国際協調などを中心に紹介する. -
再生医療における血管形成の制御
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description再生医療において血管形成制御に求められる課題は大きく分けて2つある.1つは,ES 細胞,iPS 細胞,あるいは未分化多能性幹細胞を用いて形成された組織塊の移植に際し,いかに組織塊に臓器特異的血管が誘導できるか,そしていかにレシピエントと再生組織塊間に速やかな血流循環を誘導できるか,2つめには,虚血疾患に対する血管再生に対する治療では,いかに安定した,血流の豊富な成熟機能的血管の形成が誘導できるかである. -
再生医療製品の造腫瘍性評価
69巻3月増刊号(2014);View Description Hide Description“造腫瘍性”とは,動物体内に移植された細胞集団が,悪性または良性の腫瘍を形成する能力を言う.造腫瘍性は再生医療製品のリスクの1つであり,臨床適用される最終製品の造腫瘍性の評価と管理は,安全性確保のための重要な課題である.しかしながら,再生医療製品は,原料となる(幹)細胞の多様性に加え,最終製品の適用法についてもさまざまなケースが想定されるため,造腫瘍性の評価においては,総合的な考察が求められる.
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【今月の略語】
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