最新医学
Volume 70, Issue 10, 2015
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【900号記念対談】
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特集【大きく変化する神経内分泌腫瘍(NET)の概念と治療】
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- 座談会
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- 総論
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神経内分泌腫瘍―臨床と研究の歴史と現状―
70巻10号(2015);View Description Hide Descriptionインスリンやセクレチン,ガストリンという消化管ホルモン発見とその生理学的意義の研究の歴史と,インスリノーマやガストリノーマという機能性神経内分泌腫瘍(NET)の診療の要点と注意点について述べ,NET のKi67 指標に基づくWHO 2010病理分類の意義と治療薬の開発と,日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)の発足と診療ガイドライン作成と公開などについて述べた. -
神経内分泌腫瘍の名称と我が国の疫学の変遷
70巻10号(2015);View Description Hide Description神経内分泌腫瘍(NET)は,内分泌細胞や神経細胞から発症する腫瘍の総称で,Oberndorfer が1907年に初めて多発性の小腸腫瘍の性状からkarzinoide(カルチノイド)として報告した.2010年に改訂された新WHO 分類では,カルチノイドという用語はカルチノイド徴候のみに用いて,NET に名称が統一された.また,日本における膵・消化管NET の疫学調査が施行され,その実態が解明されてきた.第2回全国疫学調査によると,2010年の膵NET の年間受療者数は2005年の約1.2倍に,消化管NET は約1.8倍に増加している. -
神経内分泌腫瘍―臨床的概要と内分泌学的特色―
70巻10号(2015);View Description Hide Description神経内分泌腫瘍(NET)は,神経内分泌細胞に由来する腫瘍の総称で,全身のさまざまな臓器に発生する.我が国の疫学調査では,膵・消化管NET の受療者は11,000人を超え,増加傾向にある.機能性NET ではホルモン過剰による特異的な症状から診断されることが多いが,非機能性NET では症状が少なく進行例が多い.診療には存在診断および正確な局在診断が必要であり,NET 患者の悉皆登録への期待が大きい. - 診断
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胃・十二指腸神経内分泌腫瘍の内視鏡診断と治療方針
70巻10号(2015);View Description Hide Description胃・十二指腸神経内分泌腫瘍(NET)は,内視鏡にて粘膜下腫瘍の形態をとることが多く,やや黄色調,中心に陥凹を伴うことがある.超音波内視鏡では,第2,3層に主座を持つ,境界明瞭な低エコー性病変となることが多い.胃NET の治療方針(内視鏡切除もしくは外科切除)はRindi 分類の病型によるとされている.十二指腸NET の治療方針は,ガストリノーマ,乳頭部NET では外科切除が推奨されるが,それ以外では腫瘍径によるとされている. -
膵神経内分泌腫瘍の画像所見
70巻10号(2015);View Description Hide Description膵神経内分泌腫瘍(PNEN)の画像診断について解説した.NET G1/G2 の典型例は,境界明瞭,髄様,多血性の所見を呈するため鑑別診断にPNEN を挙げることは容易である.しかし非典型例として,① D胞変性,② 乏血性,③ 膵管狭窄併発,④ 主膵管内進展があることを認識しておくことが重要である.また,NEC は膵管がんに類似した画像所見を呈するため注意が必要である. -
EUS–FNA による膵神経内分泌腫瘍診断の実際
70巻10号(2015);View Description Hide Description消化管や膵臓に発生する神経内分泌腫瘍(NEN)の報告数が増加している.2010年に,細胞分裂所見とKi67 標識率に基づいて分類される新しいNEN のWHO 病理分類が公表された.超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS–FNA)を用いた膵NEN(PNEN)の診断における有用性が報告され,組織学的診断のみならず,悪性度診断にも応用されている.EUS–FNA を用いてPNEN の診断を行うためには十分な組織量が必要であり,穿刺方法や検体処理法を工夫する必要がある. -
膵・消化管神経内分泌腫瘍の細胞像の特徴と細胞診の注意点
70巻10号(2015);View Description Hide Description超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS–FNA)の普及に伴い,膵・消化管神経内分泌腫瘍(GEP–NET)を細胞診によって診断する機会が増えている.GEP–NET のうち高分化型神経内分泌腫瘍(NET)では,特徴的な核所見により細胞診の有用性が高い.一方で,NET でも非典型的な細胞像を呈する症例や,NET と細胞像が類似する他病変も存在し,常にその可能性を念頭に置いて診断することが重要である.GEP–NETの中でも特に細胞診で遭遇する頻度の高い膵NET と,その鑑別となる病変の細胞像を紹介する. -
神経内分泌腫瘍の病理組織像の最近の概念の変遷
70巻10号(2015);View Description Hide Description神経内分泌腫瘍(NET),特に膵消化管神経内分泌腫瘍(GEP–NET)の病理学的概念は,腫瘍細胞の増殖動態に基づく新分類であるWHO 2010 によりかなり整理された.しかしどのような分類でも完全なものはなく,特にNEC/NEN G3 はKi67 標識率が20% 以上の症例と規範されているが,治療への反応性,臨床予後などの点で今後細分化する必要があると考えられている.また,WHO 2015 として最近提唱された呼吸器原発のNET の病理分類との整合性も考えていかなくてはならない. -
膵神経内分泌腫瘍の分子遺伝学
70巻10号(2015);View Description Hide Description膵神経内分泌腫瘍(NET)の全エクソンシークエンス解析が終了して,約4年が経過した.これまでの既知のドライバー遺伝子(MEN1)に加えて,新規のドライバー遺伝子(ATRX /DAXX ),さらにmTOR 経路が深く関与することが明らかになった.2015年2月に,イタリアと豪州を中心とした100例の全ゲノムシークエンス解析がICGC ミーティングで発表された.膵NET の網羅的なゲノム解析はほぼ終了し,この成果を踏まえた既知の分子標的治療薬の対象患者の層別化や,新たな分子標的治療薬の開発の時代を迎えようとしている. -
遺伝性神経内分泌腫瘍―多発性内分泌腫瘍症1型に伴う膵・消化管NET―
70巻10号(2015);View Description Hide Description神経内分泌腫瘍(NET)腫瘍細胞における体細胞遺伝子変異の網羅的解析では,半数近くにおいてMEN1 遺伝子の変異が認められ,この遺伝子がNET 発生に大きく関与していることが明らかにされている.NET の10% はその背景に多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)を有しており,NET 患者のうちから適切にMEN1 患者を診断することは,膵NET の治療方針の決定はもちろん,それ以外のMEN1 関連病変のサーベイランスや治療計画の決定,さらにはリスクのある血縁者に対する早期診断と早期治療も可能にする. - 治療
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消化管神経内分泌腫瘍の外科的治療
70巻10号(2015);View Description Hide Description遠隔転移を伴わない消化管神経内分泌腫瘍(NET)の場合,一部の症例で内視鏡的治療が許容されるが,多くの症例でリンパ節郭清を伴う切除術が推奨される.発症部位によってリンパ節転移の頻度が異なるなど,部位による差も認められるため,これらを考慮して術式を決定すべきである.遠隔転移を伴う消化管NET でも,腫瘍の遺残なく切除が可能であれば切除術が推奨されている. -
診療ガイドラインに基づいた膵神経内分泌腫瘍の治療
70巻10号(2015);View Description Hide Description膵神経内分泌腫瘍(NET)は,過剰分泌されるホルモンの有無・種類により多くのサブカテゴリーに分類される.また遺伝性疾患に伴うものと散発性NET にも分類される.遺伝性疾患に伴うNET では,異時性・同時性に多発する傾向がある.悪性腫瘍としての治療と過剰分泌されるホルモンによる内分泌症状の緩和の両方を考慮した手術適応,術式選択が重要である.診療ガイドラインに沿って膵NET の外科治療について説明を行う. -
薬物療法
70巻10号(2015);View Description Hide Description神経内分泌腫瘍(NET)の内分泌症状に対しては,ソマトスタチンアナログなどの治療薬が用いられる.また,ソマトスタチンアナログにはNET の増殖抑制作用も示されている.分子標的薬としては膵原発NET に対してエベロリムスやスニチニブの有効性が示されている.細胞傷害性薬剤としてはストレプトゾシン,テモゾロミドなどがキードラッグである.神経内分泌がん(NEC)に対してはシスプラチン+エトポシド併用療法もしくはシスプラチン+イリノテカン併用療法が用いられている. -
膵・消化管原発神経内分泌腫瘍に対する集学的治療―転移病巣に対する局所療法を中心に―
70巻10号(2015);View Description Hide Description膵・消化管原発の神経内分泌腫瘍(NET)は,診断時に遠隔転移,特に肝転移を認めることが多い.治癒の可能性から肝転移巣の外科的切除が第一選択となるが,手術適応とならない症例でも,ラジオ波焼灼術や血管内治療などの局所療法を行うことにより,機能性腫瘍の症状緩和,局所の病勢制御,一定の生存割合の改善が得られる.転移病巣を伴うNET では,外科的切除,薬物療法,局所療法などによる集学的治療が重要である.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(4) 慢性の痛みの疫学
70巻10号(2015);View Description Hide Description壮年者および高齢者の多くが腰痛,膝痛,肩痛をはじめ多くの部位に慢性的に痛みを有しており,日常生活動作やQOL に及ぼす影響は大きい.このため慢性の痛みにおいては単に医学的な面だけではなく,多くの側面にも注目して扱う必要がある.そのため今後,慢性の痛みにおける診断・治療を進めるための組織として,集学的(学際的)痛みセンターを構築することなどにより,学問的基盤のもと,慢性の痛みに対する対策を総合的に進める必要がある. -
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造(7) 外側からのアプローチ(4) 前頭斜走路(仮称)と放線冠,下部視放線(マイヤー/フレヒジヒ–マイヤーのループ),紡錘状回と舌状回,グラチオレット管と前交連
70巻10号(2015);View Description Hide Description -
ノーベル賞と医学の進歩・発展(34) ウォーレン,マーシャルによるヘリコバクター・ピロリ菌発見とその意義
70巻10号(2015);View Description Hide Description
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【トピックス】
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肝内グリコーゲンセンサーと脂肪分解をつなぐ神経性飢餓応答
70巻10号(2015);View Description Hide Description生命の最も危機的な代謝環境である飢餓に適応するよう,エネルギーの貯蔵様式と消費形態を生体は巧みに進化させてきた.我々の最新の研究により,肝内のグリコーゲン消費を感知する未知なるメカニズムが存在すること,さらに神経系制御によって短期的かつ簡便なエネルギー利用形態となる糖代謝と大量のエネルギー利用を可能とする脂質代謝の2つの制御様式を密接に連関し,精緻に制御していることが明らかになった. -
骨細胞による多臓器制御―造血幹細胞・免疫システムからエネルギー代謝まで―
70巻10号(2015);View Description Hide Description造血/免疫/糖・脂質エネルギー代謝に共通する特徴として,進化の過程で外界からのストレスに対応し全身の恒常性を維持するために高度に洗練されてきたシステムという側面が挙げられる.これは,地球上の重力を感知し続けることで培われた機構ととらえると,メカノトランスダクションと臓器連関の存在が見えてくる.重力感知装置である骨組織内骨細胞が,この多臓器間ネットワークの中心に位置することが明らかとなってきた.
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【今月の略語】
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