Volume 70,
Issue 11,
2015
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特集【骨髄異形成症候群(MDS)-最近の進歩-】
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最新医学 70巻11号, 2055-2056 (2015);
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座談会
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最新医学 70巻11号, 2057-2068 (2015);
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基礎
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最新医学 70巻11号, 2069-2075 (2015);
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骨髄異形成症候群(MDS)は,造血幹細胞に生じた遺伝子異常により発症する.次世代シークエンス解析により,MDS のクローン性進展様式,遺伝子異常とMDS臨床病態との関係が解明されつつある.RNA スプライシング・DNA メチル化関連遺伝子変異は発症初期に生じる「基幹変異」,他の異常は遅れて生じる「派生変異」とされている.しかし,加齢とともに獲得される一部の遺伝子変異は,血液異常を示さないままクローン性に増殖することが明らかとなった.
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最新医学 70巻11号, 2076-2084 (2015);
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骨髄異形成症候群(MDS)は,急性骨髄性白血病(AML)や骨髄増殖性疾患(MPN)と同様,骨髄系の特徴を有する腫瘍細胞のクローン性増殖によって特徴づけられる骨髄系の腫瘍である.1990年代に染色体転座の解析を中心として病態解明の進んだAML と比較して,MDS の病態に関しては従来不明な部分が多かったが,過去10年間のゲノム解析によってMDS の発症にかかわる主要なゲノムの異常が明らかにされた結果,現在,MDS は造血器腫瘍の中で最も遺伝学的解明の進んだ疾患の1つとなっている.MDS ではRNA スプライシング因子やエビゲノム調節因子の異常が非常に高頻度に認められ,その病態に深くかかわっていると考えられる.特にAML と比較した場合,5番染色体や7番染色体の欠失を含む不均衡型の染色体異常とならんで,RNA スプライシング因子の変異が突出して高い割合で認められる一方,RAS 経路やFLT3 などのシグナル伝達にかかわる変異はAML と比較して低頻度かつ進行例で認められることから,これらの変異が両者の病態の相違を考えるうえで重要である.また,遺伝子変異はMDS の予後を規定する重要な因子であることが明らかにされており,遺伝子変異の同定はMDS の病態の理解のみならず,診断や予後予測,治療選択の決定のうえでも大変重要である.本稿では,MDS のゲノム異常の理解に関する近年の知見を概説する.
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最新医学 70巻11号, 2085-2091 (2015);
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骨髄異形成症候群(MDS)の染色体所見は,腫瘍の持つクローン性の指標として,前白血病状態の発症から急性白血病への進展にかかわる機序を解明する手掛かりとなってきた.しかしながら本誌他稿でも詳述されるように,近年の分子生物学的解析手法の飛躍的な技術革新とその成果に伴い,MDS の病因論的研究は染色体解析から遺伝子解析へその主座を譲ることとなる.一方で,周辺疾患との鑑別や予後予測,治療法の選択など,臨床的側面ではその意義を深めている.本稿では,日常臨床に有用な染色体解析結果の判読やその解釈について述べるとともに,MDS 数千例の染色体所見集積に基づいた予後予測因子としての意義について解説する.
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最新医学 70巻11号, 2092-2099 (2015);
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低リスクの骨髄異形成症候群(MDS)の中には,免疫抑制療法により造血回復が得られる一群が存在する.このような例では,再生不良性貧血と同様の免疫病態が関与している可能性が高い.しかし,従来の形態学的手法のみで免疫病態の関与を診断することは難しい.再生不良性貧血の病態診断に用いられる発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)型血球の検出や血漿トロンボポエチン(TPO)値の測定は,MDS の病態診断にも応用可能である.
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最新医学 70巻11号, 2100-2105 (2015);
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先天性造血不全症候群はまれではあるが,造血不全を来した症例の診断に当たっては必ず鑑別しなければならない疾患群である.代表的な疾患には,Fanconi 貧血,先天性角化不全症,Shwachman–Diamond 症候群,Diamond–Blackfan 貧血などが挙げられるが,貧血のみを認める疾患,血小板減少のみを認める疾患,好中球減少のみを認める疾患を含めると,非常に数多くの疾患が存在する.近年の遺伝子解析研究の成果により原因遺伝子は多数同定されてきており,遺伝学的診断の意義は高まってきている一方,検索すべき遺伝子数が増加しているため,従来のサンガー法による遺伝子診断は限界を迎えている.先天性造血不全症候群に対する次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析の有効性が報告され始めており,今後の臨床診断への実用化が期待される.
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臨床像
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最新医学 70巻11号, 2106-2113 (2015);
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骨髄異形成症候群(MDS)の年罹患率は,欧米諸国で10万人当たり3~4人前後,日本で1~2人前後と推定されている.各国いずれも男性のほうが1.5~2倍高く,加齢により増加し,60 歳を超えると急激に増加する.高齢化社会に伴い,さらなる患者数の増加が懸念されている.MDS の大半は後天的要因によって発症し,うち10~20% は治療関連MDS として発症する.MDS 発症との関連が強く示唆される環境要因は,放射線とベンゼンである.
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最新医学 70巻11号, 2114-2120 (2015);
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骨髄異形成症候群(MDS)の診断は,血球形態,芽球比率,染色体分析,フローサイトメトリー法による細胞分析を参考にして行う.低形成MDS と再生不良性貧血との鑑別,および線維化を伴うMDS と原発性骨髄線維症との鑑別はしばしば困難であるが,前者はPNH 型血球の有無,後者はJAK2 等の遺伝子検査や脾腫の程度などから総合的に行う.MDS ではBehçet 病などの免疫異常をしばしば合併する.輸血等による鉄過剰症は肝障害や糖尿病などの臓器障害を引き起こす.
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最新医学 70巻11号, 2121-2126 (2015);
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遺伝性骨髄不全症候群(IBMFS)は,汎血球減少症や単一系統血球減少症を含む血球減少を来し,その多くは家族歴とともに特徴的な身体異常を伴う.また,骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML),固形がんを合併する頻度も高い.
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最新医学 70巻11号, 2127-2133 (2015);
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骨髄異形成症候群(MDS)は,血球減少から白血病化まで多彩な病態を示すため,予後予測は治療選択に重要な情報となる.1997年に発表された国際予後スコアリングシステム(IPSS)をはじめとし,多くの予後予測システムが提唱されてきたが,2012年の改訂版IPSS(IPSS–R)が現在最も有用である.染色体,骨髄中の芽球比率,血球減少の3因子に対して設定されたスコアの合計によって予後を5群に分類し,全生存期間や白血病化において有意に層別化できる.さらに,遺伝子異常を加えた予後予測が検討されている.
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治療
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最新医学 70巻11号, 2134-2139 (2015);
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低リスク骨髄異形成症候群(MDS)は,進行が緩徐で比較的予後良好なMDS の一群である.造血幹細胞移植やメチル化阻害薬により治療を行う高リスク群と対照的に,この群に対する治療は輸血をはじめとする対症療法が中心となるが,赤血球造血刺激薬や鉄キレート療法により,より長期の合併症を抑える治療が可能となりつつある.また,5q-症候群においてはレナリドミドが有効である.ここでは,これらの低リスクMDS における治療方針の概略を解説する.
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最新医学 70巻11号, 2140-2148 (2015);
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骨髄異形成症候群(MDS)は極めて多様性に富む疾患群であるが,病型の1つである5q-症候群は女性に多く,大球性貧血,血小板数は正常ないし増加,骨髄中巨核球の低分葉化,予後良好を特徴とする,均質な症候群である.近年,本症候群の病態が徐々に明らかにされ,治療ではレナリドミドが本症候群を含む5q- MDS に特異的に作用することが分かり,注目を集めている.
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最新医学 70巻11号, 2149-2158 (2015);
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高リスク骨髄異形成症候群(MDS)では,通常治療に比べてアザシチジン(AZA)治療によって生存期間が改善され,75 歳以上の高齢者,WHO 分類ではAML に分類されるFAB 分類のRAEB–t や,低形成MDS でも同様に生存期間の改善が見られる.効果発現までに4~6サイクルを要するため,効果の予測スコアが作成されている.AZA とさまざまな薬剤の併用療法や新規治療薬の臨床試験が進行中である.
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最新医学 70巻11号, 2159-2165 (2015);
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進行速度や予後が患者間で大きく異なる骨髄異形成症候群(MDS)においては,予後予測に基づく同種造血幹細胞移植の適応の検討が重要である.予後予測分類として国際予後スコアリングシステム(IPSS)が広く用いられており,Low あるいはInt–1 では診断時にすぐに移植を行うよりも待機的に移植を行うほうがより長い生存期間が期待できるのに対して,Int–2 あるいはHigh においては診断直後に移植を行うことによって最も長い(QOL 補正)生存期間が期待できることが示された.60~70歳の患者を対象とした臨床決断分析でも同様の結果であった.移植前の治療については,芽球割合が10~20% 未満で安定しているようなMDS 症例においては移植前に化学療法を行わないことが妥当と考えられるが,芽球の増加速度が速い場合や移植までに時間を要する場合には,芽球数のコントロールのために化学療法あるいはDNA メチル化阻害薬の投与を検討する.MDS は高齢者に多い疾患であるため,前処置の強度を減弱したミニ移植(RIC)が選択されることが多いが,通常の移植と比較して再発率は増加するので,若年患者に対しては骨髄破壊的前処置(MAC)を選択するほうが無難かもしれない.
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【連 載】
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最新医学 70巻11号, 2166-2170 (2015);
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痛みは,罹患期間の長短から急性痛と慢性痛,疾患別にはがん疼痛と非がん疼痛,機序の違いにより侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類される.個々の患者に適切な治療を提供するためには,痛みの強さだけではなく,痛みのパターンや性状,日常生活への支障度,心理状態などを総合して,痛みを評価する必要がある.さらに,痛みの治療中は定期的な評価を繰り返し,治療効果を確認する必要がある.
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最新医学 70巻11号, 2171-2176 (2015);
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最新医学 70巻11号, 2177-2183 (2015);
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最新医学 70巻11号, 2184-2191 (2015);
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【トピックス】
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最新医学 70巻11号, 2192-2196 (2015);
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卵巣がんに対する分子標的薬ベバシズマブの併用化学療法について述べる.第Ⅲ相臨床試験によると,卵巣がん初回治療では無増悪生存期間を有意に延長し,高リスク群では全生存期間を有意に延長した.再発治療では全生存期間の延長は示されなかったが,無増悪生存期間を有意に延長しQOL を改善した.消化管穿孔等の重篤な副作用があるため,どのような症例に使用するか,症例選択は慎重に行う必要がある.過去の論文と,ベバシズマブの使用指針について概説する.
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最新医学 70巻11号, 2197-2204 (2015);
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急性心筋梗塞に対する早期再灌流療法における未解決の問題は,心筋虚血再灌流傷害である.筆者らはナノ粒子によるドラッグデリバリーシステムの応用により,急性心筋梗塞サイズを縮小し患者予後を改善するナノ医療の実現を目指している.本稿では,その背景およびモデル動物における前臨床試験の成果を紹介する.
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【今月の略語】
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最新医学 70巻11号, 2205-2210 (2015);
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