最新医学
Volume 71, Issue 3, 2016
Volumes & issues:
-
認知症
-
-
- 【疫学】
-
認知症の有病率
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description2009年に若年性認知症(EOD)の10万対の患者数は47.6人,推定総数は3.78万人と報告された.これは1997年の全国調査とほぼ同数である.65歳以上における認知症の全国有病率は2012年10月に15% で,患者数約462万人と推定された.なお,EOD の原因疾患として,欧米とは異なり,血管障害が最多であること,また晩発性認知症の有病率調査が大都市で行われていないことへの疑問もある. -
認知症の自然歴-発症前Alzheimer 病の概念をめぐって-
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionAN1792試験を始め,疾患修飾薬治験の中断や不成功から,バイオマーカーを新機軸とした極早期のAlzheimer 病(AD)の疾患概念が提唱され,先制医療構想に繋がった.もう一方で,AD 脳に蓄積するアミロイドやタウを生体画像化する研究が進み,疾患修飾薬治験において,被験者の組み入れに必須のツールとなりつつある. -
Alzheimer 病の危険因子・防御因子
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionAlzheimer 病(AD)は加齢と密接に関連する神経変性疾患である.久山町研究を含む国内外の追跡調査の成績によると,アポリポタンパクE(APOE-e4),糖尿病,喫煙,うつ症状はAD 発症の有意な危険因子であった.一方,運動および和食+野菜+牛乳・乳製品という食事パターンとAD 発症の間に,有意な負の関連が存在した.つまり,加齢や遺伝的要因に基づくAD のリスクは,生活習慣病の予防や生活習慣の是正によって軽減できる可能性がある. - 【病態生理】
-
タウの最新の話題
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Descriptionアミロイドb タンパク(Ab)を標的にしたAlzheimer 病治療薬の相次ぐ失敗から,タウへの注目が俄に高まってきた.タウ病理の進展は,神経細胞脱落を介して臨床症状と密接にかかわっており,近年のタウPET 開発の進展によって,治療効果の判定などに応用される日が近くなっている.治療法開発についてもタウの凝集抑制や分解促進,抗体療法についての研究が進み,モデル動物では神経細胞脱落抑制に成功している.これらの近頃のトピックを概説した. -
アミロイドb タンパクをめぐる最近の話題
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Descriptionアミロイドb タンパク(Ab)が,Alzheimer 病(AD)における神経細胞死誘導の物質的基盤であるとする考え方(アミロイド・カスケード仮説)は,AD 基礎研究ならびにAD 疾患修飾薬開発の論理的基盤となってきた.しかし,Ab を標的とする創薬開発では失敗が相次ぎ,アミロイド・カスケードの再検証が求められている.一方,脳画像検査の発展や大規模な遺伝疫学研究は,Ab のAD における意義をあらためて明らかにしつつある. -
αシヌクレイン細胞間伝播を制御する小胞輸送機構
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionParkinson 病(PD)などに代表される神経変性疾患において,病変部位における異常凝集タンパクの沈着は,病理学的指標であるばかりでなく,神経細胞死につながる重要なステップであると考えられている.長い間,異常凝集タンパクの蓄積とこれに続く神経変性は,個々の神経細胞において独立して起るもの(cell-autonomous)と推定されてきた.一方,胎児ドパミン神経移植を受けたPD 患者剖検脳のドナー由来神経細胞において,Lewy 小体様封入体が確認されたという報告を端緒として,異常凝集タンパクが細胞間を伝播し,周辺神経組織へ病変を拡大させるという,細胞非自律的(non-cell-autonomous)な病態機序-いわゆるプリオン仮説-が提唱され,従来の病態概念が大きく変化してきている.細胞外を往来する凝集性タンパクは,疾患修飾療法のターゲットとしても注目されている. -
プリオンモデル
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description認知症などの神経変性疾患において,線維化したタンパク異常凝集物が細胞間を伝播し,病理が広がっていく“プリオン様”の性質に注目が集まっている.神経変性疾患で細胞内に異常蓄積するa シヌクレイン(a-syn),タウなどのタンパクにおいても,細胞間伝播の可能性が確認されている.この“プリオン様伝播”という新しい考え方は,凝集体の伝播を抑制するという,新たな視点での創薬が可能になると考えられる. -
FUS の最近の話題
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionFUS 変異やFUS 陽性封入体が認められる筋萎縮性側索硬化症(ALS),および前頭側頭葉変性症(FTLD)が発見されて以来,その分子機構の解析が進み,これらの疾患にRNA 代謝の異常が深く関与することが明らかにされてきた.しかしながら,その異常は,転写,スプライシング,翻訳,mRNA 輸送など,非常に多岐にわたり,病態の発現および進行にかかわる直接的な原因の同定が,適切な診断や治療法の開発に不可欠である. -
周皮細胞と認知症
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description周皮細胞は主に毛細血管レベルに分布し,微小循環の調節に重要な役割を持つ細胞の1つである.近年,周皮細胞が血液脳関門(BBB)の維持や脳血流調節に関与しており,その機能低下が認知症の病態に影響を及ぼす可能性が指摘されている.このことは,周皮細胞機能の維持や改善が,認知症治療の新たな標的と成りうることを示唆している.本稿では,最近の知見を交えながら,周皮細胞の機能や認知症病態との関連について述べる. -
認知症疾患における複合病理
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description認知症患者の脳には,ほかの認知症疾患を示唆するような病理学的変化が複合することがある.疾患ごとに出現しやすい複合病理とそうでないものがあり,複合病理が原疾患の病態に関連して出現する場合と,単なる偶発所見として出現する場合とがあることを示唆する.近年,複合病理が認知症の臨床フェノタイプに関連するという報告もある.本稿では,主な認知症疾患における複合病理の知見について述べる. -
認知症の動物モデルupdate
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description認知症の動物モデルは,非常に多岐にわたるものがこれまでに作出されてきている.主にはマウスなどのげっ歯類モデルであり,認知症の中で多くを占めるAlzheimer 病や,前頭側頭型認知症(FTD)の原因遺伝子であるAPP やMAPT の変異を組み込んだtransgene によるtransgenic マウスモデルである.これらの解析を通じて,認知症の病態解明および治療法開発が進められている. -
iPS 細胞を用いた認知症モデル
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description人工多能性幹細胞(iPS 細胞)が報告されてから,さまざまな疾患の病態解析や治療薬開発において利用され,研究が進められている.本稿では,Alzheimer 病(AD)を始めとした,神経変性疾患のiPS 細胞を用いた疾患モデルの構築・研究の現状について概説し,その問題点や今後の展望に関しても述べる. - 【診断・バイオマーカー】
-
認知症の診断基準
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description近年は認知症研究の著しい進歩を反映し,認知症の診断基準も大きく変わろうとしている.そこで,2013年に出版された精神障害の診断・統計マニュアル(DSM)-5における認知症診断基準を概説し,従来のDSM-Ⅳとの違いを指摘するとともに,その基本的な考え方に触れた.また,Alzheimer 病の診断基準については,DSM-5と国立老化研究所(NIA)-Alzheimer 病協会(AA)による基準を紹介し,軽度認知障害(MCI)概念の取込み,バイオマーカーの考え方などを中心に,解説を加えた. -
認知機能評価update
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description認知機能を客観的に評価するために,種々の神経心理学的検査が使われる.認知機能障害のスクリーニング,適切な対応のための各認知機能の評価,経過や治療効果判定のための評価など,目的によって適切な検査を選択する必要がある.対象の心身の状態を考慮して検査を実施し,病前能力を考慮しながら,量的および質的に評価することが望ましい.日常生活における認知的活動の変化をとらえることも,認知機能を推測するのに有用であり,質問紙票や構造的面接によって介護者から情報を得る. -
アミロイドイメージング
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Descriptionアミロイドイメージングの実用化により,Alzheimer 病(AD)の早期病態研究が進み,従来は認知症発症後に診断されたAD の概念が,前駆期や発症前期を含むようになった.治療薬開発の目標も,進行遅延から発症予防へと明確に切り替わった.アミロイドイメージングは,臨床研究のみならず,日常診療への適用も考慮されるようになってきている.早期病態への注目から,AD の病態仮説も再検討されつつある. -
タウイメージング:PBB3
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description[11C]PBB3 を用いたヒト臨床陽電子放出断層撮像(PET)研究の成果が蓄積されてきたことで,タウPET イメージングの臨床診断における有効性が明らかになりつつある.タウPET イメージングによるAlzheimer 病( AD)の重症度診断,非Alzheimer 型タウオパチーの鑑別診断が実現する日も遠くない.タウPET リガンドや画像定量解析法の改良が進むことで,タウPET イメージング技術がさらに進歩することが期待される. -
タウイメージング:18F-THK5351
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description18F-THK5351 は,脳内に蓄積したタウタンパクを計測する目的で新たに開発され,従来のPETトレーサーよりも高い感度でタウタンパクの検出を可能にする.本トレーサーを用いたタウイメージングは,脳内にタウタンパクが蓄積する疾患群の鑑別診断だけでなく,現在開発されている疾患修飾薬の薬効評価におけるサロゲートマーカーとしての使用や,治療対象者の選定といった,治療薬開発のツールとしても期待されている. -
Alzheimer 病におけるFDG-PET
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description18F-フルオロデオキシグルコース(18F-FDG)を用いたポジトロン断層撮影(PET)による糖代謝イメージングは,脳の神経活動を客観的に評価できる方法として,認知症疾患の研究・診断に広く利用されている.Alzheimer 病(AD)の診断においては,2011年に診断基準が改定され,FDG-PET は病態の進行を客観的に評価するバイオマーカーとして研究クライテリアの中に組み込まれており,その重要性が示唆されている.本稿では,FDG-PET のAD 診断における有用性・実用性を中心に解説する. -
脳脊髄液・血液バイオマーカー
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description脳内病理を反映する脳脊髄液バイオマーカー変化が,認知症病型の診断基準に組み入れられるなど,認知症におけるバイオマーカーの応用が広がっている.認知症の病型診断における有用性に加え,認知機能障害が出現する前の段階での早期診断,軽度認知障害から認知症へのコンバート予測,病態修飾薬の薬剤効果判定を目的として,脳脊髄液バイオマーカーが活用されている.微量分子の分析技術の進歩により,新しい血液バイオマーカー候補が報告され,実用化に向けて期待される. -
SPECT
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description今日の認知症診療において,画像診断は重要な役割を果たす.特に単一光放射コンピュータ断層撮影(SPECT)やポジトロン断層撮影(PET)を始めとした脳機能画像検査は,特に重要である.比較的多くの施設で実施可能なSPECT は,認知症の日常診療において広く普及している.本稿では,各病型の典型的症例の画像提示を中心に述べる. -
認知症のMRI
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description認知症を示す疾患のうち,磁気共鳴画像法(MRI)が診断に有用な,前頭側頭葉変性症(FTLD)と炎症性脳アミロイド血管症(ICAA)について述べる.FTLD では前頭側頭葉の萎縮を認めるが,左右非対称性のことが多い.ICAA では非対称性の大脳白質病変を認め,皮質下白質U線維まで及んでいるのが特徴である.白質病変のある皮質では微小出血を認める.MRI 磁化率強調画像(SWI)が必須である. -
認知症における脳内ネットワーク変化:機能的ネットワークを中心に
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description安静時機能的MRI を用いた安静時ネットワークは,0.1 Hz 以下の遅い安静時blood oxygenation level dependent(BOLD)活動が脳内で同期している領域によって構成される.代表的な安静時ネットワークとして,デフォルトモードネットワーク(DMN)がよく知られているが,それ以外にも多彩な解析方法で,各回路の結合状態を評価できる.本稿では,安静時ネットワーク所見の評価方法と,代表的認知症の早期診断や進行におけるネットワーク解析の有用性について概説する. - 【Alzheimer 病update:治療を中心に】
-
Alzheimer 病治療へ向けた新規標的分子機構
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Descriptionアミロイドb タンパク(Ab)とタウタンパクの蓄積が,Alzheimer 病(AD)発症機構における鍵分子機構であると認識され,これらを標的とした治療薬開発研究が進められてきた.加えて近年,これらの蓄積病態を制御,もしくは修飾する新しいメカニズムや,神経変性に直接かかわる自然炎症関連分子が明らかとなり,AD に対する新たな創薬標的分子機構として注目を浴びつつある. -
Alzheimer 病治療薬の使い分け
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionAlzheimer 病(AD)の治療薬として現在,本邦ではコリンエステラーゼ(ChE)阻害薬として,ドネペジル,ガランタミン,リバスチグミンが,N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬としてメマンチンが,承認されている.それぞれの治療薬の特徴と,これらの治療薬の使い分けについて解説する. -
Alzheimer 病の臨床治験の現状
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionAlzheimer 病(AD)は,症状の出現する10年以上も前から,神経病理学的変化が生じてくることが明らかとされている.現在AD の治療薬として認可されているものは,神経伝達物質の異常を標的とするものであるが,AD の病態そのものには抑制効果がなく,根本的治療薬とは考えられていない.本稿では,AD 治療薬の開発戦略とともに,AD に対する最新の臨床治験の概要を紹介する. -
リハビリテーション
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description認知症は,生活管理能力低下を引き起す.よって,認知症のリハビリテーション(リハ)では,国際生活機能分類(ICF)の視点で全人的にとらえ,認知機能だけをリハのターゲットにするのではなく,生物学的(認知機能)・心理学的(快・笑顔・ほめ合い)・社会学的(絆・他者との関係性・役割)側面のすべてに働きかけて,生活を再構築することや,穏やかな生活を支えることが大切である.また,認知症はあっても,片麻痺や骨折のリハでの機能改善は期待できる. -
Alzheimer 病患者のBPSD への対応
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionAlzheimer 病(AD)の行動・心理症状(BPSD)は,患者本人が苦痛であるばかりでなく,介護者の負担を増大させる.適切なケアや治療によって改善が期待できる症状であることから,BPSD の治療は,非薬物療法が優先される.抗認知症薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンのBPSD に対する効果も知られているが,改善が得られない場合は,安全性に配慮しながら,漢方薬や非定型抗精神病薬などの薬物療法を行う. -
介護-新オレンジプランに基づいて-
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description急増する認知症の人に対応するために,医療介護のシステム作りが急務である.本稿では,現在我が国で認知症の人とその家族を支えるために進められている,認知症初期集中支援チーム,認知症地域支援専門員,認知症カフェ,認知症家族教室について紹介した.介護職の教育研修システムは不十分であり,今後の充実が望まれる. - 【Alzheimer 病以外の認知症update】
-
MCI:軽度認知障害
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description認知症が急増しており,その治療・予防に関心が集まり,認知症の前段階ともされる軽度認知障害(MCI)が注目されている.一般には,MCI は認知症でも正常でもない状態である.認知症,中でもAlzheimer 型認知症の根本治療薬の開発に向けて,その早期診断との関連もあり,一層注目されるようになってきている. -
血管性認知症:update
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description血管性認知症とAlzheimer 病の鑑別診断は,必ずしも容易でない.このため,血管性認知症,その前駆期である血管性軽度認知障害(v-MCI),混合型認知症,脳卒中後認知症を包含する用語として,血管性認知障害(VCI)が提唱されている.VCIの中核にある血管性認知症のおよそ半数を脳小血管病性認知症が占め,その原因として,高血圧性脳小血管病と脳アミロイド血管症(CAA)が指摘されている.このうち,CAA はAlzheimer 病にも高率に合併し,両認知症疾患の中間に位置づけられている. -
プリオン病
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionCreutzfeldt-Jakob 病(CJD)に代表されるプリオン病は,病因から孤発性CJD(sCJD),遺伝性プリオン病,獲得性プリオン病に分類される.sCJD は,プリオンタンパク(PrP)遺伝子コドン129 多型と異常プリオンタンパク(PrPSc)の型から6型に分類され,遺伝性プリオン病はPrP 遺伝子変異によって,それぞれ異なった病型を呈する.我が国の獲得性プリオン病は,1例の変異型CJD を除き,全例硬膜移植後CJD(dCJD)で,現在までに全世界のdCJD の60 % 以上が我が国で発症しており,dCJD の多発は我が国の大きな問題である.近年,試験管内でPrPSc を増幅する方法が確立され,脳脊髄液や鼻粘膜を用いてPrPSc を検出することが可能となってきている.治療については,現時点で科学的に有効性が証明されたものはないが,治療法開発が進行している. -
嗜銀顆粒性認知症
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description嗜銀顆粒性認知症(DG)は,Gallyas 鍍銀染色により,高齢者連続剖検例の病理学的検討から分離された疾患である.高齢者ブレインバンク登録例の網羅的検討から,嗜銀顆粒は変性型認知症関連異常タンパク蓄積としては,神経原線維変化,老人斑に次ぎ,TDP-43と頻度的にはほぼ同じで,Lewy 小体病理よりも頻度が高い変化であること,進展ステージが高くなると単独でも認知障害の原因となること,ほかの変性型認知症関連タンパク蓄積を修飾すること,が明らかとなった.純粋病理を示した症例から抽出された臨床的特徴は,以下である.① Alzheimer 病(AD)に比べ高齢発症である.② 遂行機能が比較的保たれ,進行は緩徐である.③ 易怒性,頑固,自発性低下など,前頭側頭型認知症様症状を示すが,前頭側頭葉変性症(FTLD)-tau,TDP-43 に比べ,症状は軽い.④ 形態・機能画像で左右差を持った,側頭葉内側面前方の萎縮・機能低下を示す,⑤ 髄液バイオマーカー・アミロイドPET でAD と区別される.⑥ 塩酸ドネペジルは,意識水準を上げることで記憶障害に効果を持つことはあるが,脱抑制やParkinson 症状による歩行障害をもたらす可能性があるため,注意が必要である.認知症とともに生きていく教育の導入と,患者の目線での医療的指導により,長期在宅療養が可能である. -
Lewy 小体型認知症
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide DescriptionLewy 小体型認知症(DLB)は,その前駆期から記憶障害が軽度で,注意・遂行機能障害,視空間認知機能障害が強く,レム期睡眠行動異常症(RBD),自律神経症状が見られる.病理診断で確定診断された症例の生前の画像は,脳MRI では内側側頭葉の萎縮が軽度で,メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)心筋シンチグラフィでは,高率にMIBG 集積が低下し,MIBG 集積と心臓交感神経の変性が相関し,ドパミントランスポーター(DAT)シンチグラフィでは,線条体のDAT 機能の低下が認められる. -
前頭側頭型認知症Up to date
71巻3月増刊号(2016);View Description Hide Description前頭側頭型認知症(FTD)は,特徴的な行動障害,遂行機能障害,言語障害を主徴とし,前頭葉および側頭葉前方に病変の首座が認められる神経変性疾患であり,初期から出現する症状により,行動異常型FTD(bvFTD),意味性認知症(SD),進行性非流暢性失語(PNFA)に大別される.bvFTD では,脱抑制,自発性の低下/無気力,共感の欠如,常同/ 強迫性行為,口唇傾向と食習慣の変化,といった症状が認められ,記憶や視空間認知能力は比較的保持されているにもかかわらず,遂行機能障害が認められるという特徴がある.SD では語想起および語の理解障害という2方向性の失語,表層性失読(失書),復唱の保持や流暢性の発話といった特徴が認められる.本邦ではbvFTD およびSD が特定疾患に組み入れられ,医療資源を有効に利用するためにも適切な診断が求められている.またFTD の重要な予後規定因子として運動ニューロン障害(MND)の合併が報告されており,MND 合併に注意する必要がある. - 【今号の略語】
-
-