Volume 72,
Issue 10,
2017
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特集【甲状腺臨床の最前線】
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最新医学 72巻10号, 1359-1360 (2017);
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座談会
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最新医学 72巻10号, 1361-1372 (2017);
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基礎
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最新医学 72巻10号, 1373-1377 (2017);
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T3 の標的遺伝子の5 ~ 6割は活性化され,ほかは抑制される.後者の数は少なくないが,機序は今も不明である.その代表である甲状腺刺激ホルモン(TSH)b 遺伝子では,「抑制は活性化の鏡像」という前提に基づき「負のT3 応答配列」が想定されてきた.しかし,その後の報告は必ずしもこの前提を支持しない.我々は,T3 結合甲状腺ホルモン受容体(TR)がTSH 産生細胞の分化決定因子GATA2 の機能を阻害するというtethering 機序を提唱している.
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最新医学 72巻10号, 1378-1383 (2017);
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甲状腺ホルモン核内受容体の一部は細胞質,細胞膜(脂質ラフト)やミトコンドリアに局在し,甲状腺ホルモンの結合により,遺伝子発現制御を介さずに,細胞内シグナル伝達系を活性化して,細胞の生存促進などに関与することが明らかになってきた.甲状腺ホルモンはしばしば幹細胞から神経細胞や膵島細胞への分化誘導プロトコールにおいて用いられるが,このような細胞生存促進作用が重要な役割を果たしているのかもしれない.
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最新医学 72巻10号, 1384-1391 (2017);
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TRH は,1969年に単離,構造決定された最初の視床下部ホルモンである.主に視床下部室傍核より産生分泌されたTRH は,下垂体前葉TSH の合成,放出を促進する.TRH は視床下部以外の中枢神経系,さらに膵臓や生殖臓器を含む全身に広く存在している.これまでの多くの研究により提示されたさまざまな生体における機能を検証し,新たな発見を得るために,動物モデルを利用したさらなる研究が求められる.
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バセドウ病と甲状腺機能異常
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最新医学 72巻10号, 1392-1397 (2017);
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バセドウ病は刺激型抗TSH 受容体抗体によって生じる自己免疫疾患であるため,この受容体(特にA サブユニット)での免疫でマウスに抗体産生および疾患発症を誘導できる.ただしタンパク質の扱いが難しいため,遺伝子を用いた免疫法が普及し,アデノウイルスあるいはin vivo electroporation を併用したDNA ワクチンがよく使われている.バセドウ病自体に加え,眼症のモデルも最近報告されている.さらに最近,自然発症モデルも開発され,バラエティに富んだモデルがそろったことになる.病態解析・新規治療法開発などへ期待が持たれる.
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最新医学 72巻10号, 1398-1402 (2017);
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バセドウ病の感受性遺伝子の探索は,ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって大きく進展している.従来から知られているCTLA‒4 とHLA 以外に,バセドウ病特異的なものとしてTSH 受容体の関連が確認された.さらに,IL2RA,FCRL3,PTPN22 などとの関連が見いだされた.さらに,抗甲状腺薬による無顆粒球症の感受性遺伝子が明らかにされた.
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最新医学 72巻10号, 1403-1409 (2017);
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本邦において新規に甲状腺クリーゼの診断基準が作成され,全国調査を行い,その修正と治療ガイドラインが作成された.その特徴はチアマゾール(MMI)による治療の推奨であり,無機ヨウ素薬および副腎皮質ステロイド薬の同時投与も推奨された.頻脈に対しては,b1 選択性の高いb 遮断薬が推奨された.重症患者や治療抵抗性患者では治療的血漿交換や体外循環による治療も推奨され,救命率を高めるため包括的治療のアルゴリズムが作成された.
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最新医学 72巻10号, 1410-1417 (2017);
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近年,チアマゾールの催奇形性が明らかになったことで,妊娠可能年齢のバセドウ病の管理に混乱が生じている.器官形成期のチアマゾール曝露を避けることと,妊娠前から妊娠中の甲状腺機能のコントロールを両立させることが重要である.また,2017年3月に,米国甲状腺学会によって妊娠中と産後の甲状腺疾患の診断と管理に関するガイドラインが改訂され,甲状腺機能低下症の管理指針がより使いやすいものになった.
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不適切TSH 分泌症候群
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最新医学 72巻10号, 1418-1423 (2017);
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甲状腺ホルモン不応症(RTH)b は,甲状腺ホルモン受容体(TR)b 遺伝子変異によりホルモンに対する標的臓器の反応性が減弱する症候群である.甲状腺ホルモンが過剰であるにもかかわらず甲状腺刺激ホルモン(TSH)が抑制されない,不適切TSH 分泌症候群を呈する.下垂体TSH 産生腫瘍との鑑別が重要である.さまざまな症状を呈し得るが,無治療や対症療法で良い症例が多い.近年TRa 遺伝子異常症が報告されたが,表現型はRTHb と異なる.
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最新医学 72巻10号, 1424-1431 (2017);
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TSH 産生下垂体腫瘍の原因としては,胚細胞変異の多発性内分泌腫瘍におけるMen1 遺伝子異常,そして体細胞変異としては甲状腺ホルモン受容体の変異が数例で報告されている.しかし,多くの散発性TSH 産生下垂体腫瘍の発症機構については全く不明であった.私たちは,TSH 産生下垂体腫瘍における遺伝子異常を網羅的に解析し,原因となりうる体細胞性DNA バリアントと染色体コピー数の変化を明らかにした.両者には共通の遺伝子も含まれ,機能的な検討も含めて今後のさらなる検討が期待される.
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甲状腺がん
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最新医学 72巻10号, 1432-1438 (2017);
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甲状腺がんはさまざまな組織型に分類されるが,分化がんのうち乳頭がんでは主としてMAPK 経路が,濾胞がんではPI3K ‒AKT 経路が遺伝子変異によって活性化することが,これらのがん発生に大きな役割を果たしていると考えられる.乳頭がんではBRAF V600E やRET /PTC ,濾胞がんではRAS 変異やPAX8 /PPAR g の頻度が高い.分化がんでは,悪性度の高い腫瘍には加えてTERT プロモーターの変異が見られるようになる.低分化がん,未分化がんでは上記2 つのシグナル伝達経路上の変異が重複するようになり,さらにTERT プロモーター,TP53 の変異も急増する.
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最新医学 72巻10号, 1439-1445 (2017);
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米国甲状腺学会(ATA)の成人の甲状腺結節と甲状腺分化がんの取り扱いガイドラインが2015年に改訂され,甲状腺切除範囲にリスクに応じた片葉切除の採用と,甲状腺微小乳頭がんに対する非手術経過観察の選択肢の採用という大きな変更点があったので,我が国の甲状腺腫瘍診療ガイドライン(2010年版)や当院の微小がんの非手術経過観察に関する報告と対比しながら紹介する.
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最新医学 72巻10号, 1446-1451 (2017);
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進行性,転移性の甲状腺がんへの薬物療法は皆無であったが,近年甲状腺がんへのさまざまな分子標的薬(MKI)が開発されている.第Ⅲ相臨床試験の良好な成績により,本邦では,レンバチニブ,ソラフェニブ,バンデタニブが保険適応となった.病勢制御にはMKI の長期投与が必要となるが,MKI 投与初期には重篤な副作用が出現することがある.MKI 投与の適切な患者選択,開始のタイミング,副作用管理には,医師,コメディカルによるチーム医療が重要である.
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最新医学 72巻10号, 1452-1459 (2017);
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チェルノブイリと福島での原発事故後,「放射線と甲状腺」が注目されているが,被ばく線量の違いから両者の放射線リスクは大きく異なる.大量被ばくによる組織反応では,細胞死,臓器不全による晩発性甲状腺機能低下が問題となるが,本稿では低線量被ばくで問題となる確率的影響,すなわち甲状腺発がんリスクを中心に紹介する.チェルノブイリ原発事故後の線量依存性の放射線発がんリスクと,福島原発事故以降のマス・スクリーニング効果による過剰診断との違いを正しく理解する必要がある.
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【連 載】
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最新医学 72巻10号, 1460-1464 (2017);
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心身医学療法の1つである自律訓練法(AT)の適用範囲は広く,心療内科における不安・緊張を有するさまざまな疾患に用いられる.当科では27年間にわたり,集団AT を自覚症状の改善と向精神薬の減量・離脱を目的として施行してきた.本稿では,AT および集団AT の概要,集団AT の効果や線維筋痛症(FM)への適応を述べ,痛みとAT の関連について検討することを目的とした.
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最新医学 72巻10号, 1465-1468 (2017);
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【トピックス】
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最新医学 72巻10号, 1469-1474 (2017);
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急性肺塞栓症(PE)治療の第1選択は抗凝固療法であり,日本では未分画ヘパリンとワルファリンが使用されてきた.近年,従来薬より有用性が高い非経口Xa 阻害薬フォンダパリヌクス,ならびに直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)のエドキサバン,リバーロキサバン,アピキサバンが,日本でもPE 治療に使用できるようになった.特にDOAC は,より長期の再発予防,入院期間の短縮,がん患者への有用性など多くの可能性を持っており,大変期待されている.
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最新医学 72巻10号, 1475-1478 (2017);
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乳房外パジェット病は皮膚科で扱う希少がんの1つであるが,治療の研究や開発が遅れている現状がある.乳がんに似た特性を持つことから,乳がんに適応のある治療法が周回遅れで用いられており,その差は開く一方である.今回,乳房外パジェット病において,世界で初めての臨床試験を実施するため,一般診療においては適応外のために用いることができない抗HER2 抗体に着目した.試験の背景と概要についてまとめた.
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【今月の略語】
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最新医学 72巻10号, 1479-1484 (2017);
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