最新医学
Volume 72, Issue 11, 2017
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特集【骨髄増殖性腫瘍(MPN)の分子病態と診断・治療のup‒to‒date】
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- 座談会
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- 基礎
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MPN 幹細胞
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionMPN は,造血幹細胞の異常により,分化した骨髄系,赤芽球系,巨核球系の1系統または複数の系統の血球がクローナルな増殖を来す疾患群である.JAK2V617F変異,CALR 変異などのドライバー遺伝子変異が造血幹細胞レベルで生じ,これらの変異の生じた腫瘍性幹細胞が徐々にクローンを拡大し,骨髄球系細胞の増殖を生じ,MPN 病態を呈すると考えられる. -
疾患由来iPS 細胞を用いたMPN の病態解析
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptioniPS 細胞は疾患モデルとしても応用され,MPN 由来iPS 細胞の樹立が報告されている.MPN 由来iPS 細胞は原疾患の特徴を反映した有効な疾患モデルの1つであり,その応用によって新たな知見も報告されてきている. -
MPN におけるドライバー遺伝子変異による腫瘍化の分子メカニズム
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionMPN では,ドライバー遺伝子変異によりサイトカイン受容体下流のシグナル伝達系が恒常的に活性化し,これにより腫瘍化した細胞が骨髄中で増殖することで,血球数の異常な増加や骨髄の線維化を引き起こすと考えられている.これまでに,変異遺伝子の同定やその機能の解明によって疾患の分子病態が明らかにされ,分子標的薬による治療が実現した.さらなる病態解明により,薬物療法による根治の実現が期待されている. -
Ph 陰性MPN におけるエピゲノム異常
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionMPN は,骨髄における1系統以上の骨髄系細胞の増殖を特徴とする造血幹細胞のクローン性腫瘍である.近年,次世代シークエンサーの網羅的解析が進み,造血器腫瘍の発生・進展にジェネティック・エピジェネティック両者の変異が重要な役割を担うことが明らかになってきた.本稿では,Ph 陰性MPN において特定されているエピゲノム変異の代表例について解説する. -
MPN における骨髄病理診断の役割
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionMPN は従来の古典的な分類が踏襲されるが,JAK2 をはじめとする特定の遺伝子異常が高発現する疾患として,WHO 2008年分類では遺伝子検索の重要性が強調された.今回の改定では骨髄病理組織診断の重要性が強調され,骨髄病理診断が原発性骨髄線維症のみならず,真性多血症,本態性血小板血症の診断基準の大項目に取り入れられた.そのため,MPN 診断において骨髄病理は必須検査項目となった.本稿では,MPN 診断における骨髄病理の意義について解説した. -
家族性MPN
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionPh 陰性MPN の多くは,JAK2 ,MPL ,CALR の体細胞変異によって孤発性に起こるが,1塩基多型や生殖細胞変異体によってJAK2 ,MPL ,CALR などの遺伝子変異を獲得しやすくなる家族性MPN の存在も報告されている.近年,家族性MPN の素因としてATG2B やGSKIP の生殖細胞の重複が報告されたが,発症機序はいまだ不明な点が多く,さらなる研究が必要である. - 臨床
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MPN 診断の実際―WHO2016 基準を中心に―
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionMPN の2016年版WHO 分類においては,真性多血症の診断基準の主項目に骨髄生検の所見が取り入れられ,原発性骨髄線維症が前線維化期と線維化期に分割されるなど,病理組織所見が一層重要視されている.また,2008年版の公開以降に明らかになったCALR 変異が,本態性血小板血症と原発性骨髄線維症の診断基準に追加された.本稿においては,こうした変更のコンセプトや臨床所見との関連も含めて概説する. -
MPN における遺伝子変異の検査手法と実際
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionMPN のおよそ8割程度にJAK2 ,MPL ,CALR 遺伝子の変異が見られ,MPN の診断に遺伝子検査は必須になりつつある.一方で,骨髄線維症への移行やインターフェロン療法に伴う病態モニタリングのため,変異を検出するだけでなく定量する必要も出てきている.本稿では,最近の遺伝子変異検出・定量技術の動向に触れ,遺伝子検査の将来を俯瞰したい. -
Ph 陰性MPN の予後・予後予測因子
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionPh 陰性MPN の生存期間は比較的長期であるが,症例によって幅があり,個々の症例に対して適切な治療を選択するためには適切な予後予測モデルの選択が必要である.Ph 陰性MPN の病態が明らかになるにつれて種々の予後因子が解析され,それらに基づく予後予測モデルが考案されてきた.近年はJAK2 ,CALR ,MPL といったドライバー変異のみならず,さまざまな遺伝子変異の予後への関与も明らかにされてきている. -
MPN に対する治療ゴールと新たな戦略
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionMPN のうち,真性多血症(PV),本態性血小板血症(ET),骨髄線維症(MF)においてJAK2 V617F 変異が近年同定され,病態についての分子生物学的な機序の理解が深まるとともに,WHO 分類において診断基準に取り入れられるなど,日常臨床においてもその重要性が増している.JAK 阻害薬はMF に対して欧米で承認され,MPN に対する新たな分子標的療法として期待されているが,その耐性機序についても報告されつつある.PV,ET に対しても新規治療薬剤による新たな治療戦略が検討されつつある. -
JAK 阻害薬を中心に
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionMPN に対する治療薬として,ルキソリチニブが登場して5年が経過した.脾臓や全身症候の改善効果のエビデンスは確立したが,ルキソリチニブが長期的な予後を改善するかどうかは明確ではない.一方,ルキソリチニブ以外のJAK 阻害薬の多くは,有効性や安全性の問題より開発が中断されている.このため,MPN の新たな治療戦略として,ルキソリチニブをベースとした併用療法の開発が注目されている. -
インターフェロンの復活
72巻11号(2017);View Description Hide DescriptionJAK 阻害薬であるルキソリチニブは,慢性骨髄性白血病におけるチロシンキナーゼ阻害薬と異なり,変異遺伝子を消滅させることはない.一方,インターフェロン(IFN)は変異遺伝子量を高頻度に減少させ,中止後も血液学的寛解を長期間維持できる症例がある.最近では半減期が長く副作用の少ないペグ化IFN が開発され,発見後,約60年が経過したIFN は,MPN の領域でまさに「ルネサンス」,復活の時を迎えようとしている. -
Ph 陰性MPN に対する造血幹細胞移植―移植適応とそのタイミング―
72巻11号(2017);View Description Hide Description骨髄線維症では,Dynamic IPSS(DIPSS)リスクカテゴリーのIntermediate‒2 およびHigh が移植適応となる.また,低リスク症例であっても,予後不良の遺伝子変異や頻回の輸血を必要とする症例においても移植適応を検討すべきである.続発性骨髄線維症の移植適応に関しては,DIPSS よりMyelofibrosis Secondary to PV and ET‒Prognostic Model(MYSEC‒PM)の有用性が示唆されている.骨髄線維症/白血病に移行していないコントロール不良の真性多血症,本態性血小板血症に対しても,造血幹細胞移植は施行されることがあるが,その適応と至適なタイミングは明らかにされていない.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(29) 運動器の痛み 1.変形性関節症と痛みの科学
72巻11号(2017);View Description Hide Description変形性関節症は関節軟骨が変性摩耗する疾患であり,その病態解明が進んでいるが,痛みの発生機序に関しては不明な点が多い.変形性関節症を関節軟骨の“wear and tear arthritis”から骨や滑膜,筋肉などを含む関節全体の問題“Joint failure”ととらえると,痛みの病態も理解しやすい.さらに,痛みを長期化・難治化させる神経感作や心理・社会的因子を把握することが重要である.
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【トピックス】
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腎臓の自律神経と血圧
72巻11号(2017);View Description Hide Description交感神経活性の亢進は,高血圧発症要因の1つである.交感神経活性の亢進に対して腎臓は大きな役割を果たしており,中でも腎交感神経の関与は大きい.近年,治療抵抗性高血圧に対しての腎交感神経アブレーションの有用性が報告されており,注目を集めている.そこで本稿では,自律神経と血圧,ならびに腎臓と自律神経に関して概説し,腎交感神経切除による血圧コントロールに関して,最近の基礎的・臨床的知見を踏まえて解説する. -
肝臓免疫応答・免疫寛容誘導機序―腸肝相関の関与―
72巻11号(2017);View Description Hide Description肝臓内に存在する免疫細胞がさまざまな肝疾患の病態に関与することが報告されているが,その詳細な免疫学的機序はいまだ不明な点が多い.本研究において,マウスのコンカナバリンA(ConA)惹起T 細胞応答性急性肝障害モデルを用いて,投与早期の免疫応答期にTNF 産生性CD11b+マクロファージがTh1 活性化を介して肝障害の病態形成に重要な役割を果たす一方,投与7日目の免疫寛容期にCD11c+通常型樹状細胞がTLR9 依存的にIL‒10 を産生し,肝障害の軽減に寄与することが明らかになった.
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【今月の略語】
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