最新医学
Volume 73, Issue 2, 2018
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特集【がん免疫療法の新たな展開】
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- 鼎談
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がん免疫療法の歴史と今後の課題
73巻2号(2018);View Description Hide Description近年,免疫チェックポイント阻害薬が高い治療効果を示し,生体のがんに対する免疫応答の有効性は疑いようのないものとなった.現在,第4 のがん治療法としてがん免疫療法が注目を集めている.最近では,がんの遺伝子変異に由来するネオアンチゲンが注目され,それらを標的とした個別化がん免疫療法の成果が出始めている.本稿では,がん免疫療法の歴史からその最前線まで紹介し,今後の課題について考える. -
免疫チェックポイント阻害薬―メカニズムと治療効果,有害事象―
73巻2号(2018);View Description Hide DescriptionT細胞性免疫の機能調整を担う免疫チェックポイントB7/CTLA‒4 経路およびPD‒1/PD‒L1 経路の阻害薬は,新たながん治療としてその一翼を担い始めている.特にPD‒1/PD‒L1経路の阻害薬は現在,世界で5剤が9つのがん種と特定の遺伝子変異を持つ固形腫瘍に薬事承認を受けている.また,同薬剤に関するバイオマーカー探索や最適な併用療法開発も急速に進んでおり,まさにがん免疫治療の時代が到来している. -
がん免疫における制御性T 細胞の機能
73巻2号(2018);View Description Hide Description免疫チェックポイント阻害薬の有効性がさまざまながん種で証明され,がん免疫治療が脚光を浴びている.がん細胞は免疫系からの攻撃を回避し増殖しているが,その機構の中でも制御性T細胞が重要な働きを担っていることが明らかになっている.免疫チェックポイント阻害薬だけではなく,がん免疫にかかわる制御性T細胞を標的とした治療法の開発も期待される. -
樹状細胞を利用したがん免疫療法
73巻2号(2018);View Description Hide Descriptionがん細胞は,自己由来細胞でありながらその免疫からの回避において,しばしばHLA を欠損している場合があり,このことが宿主の免疫からうまく逃れ,再発の一因になっていると考えられている.生体防御には,異物に対して短時間で非特異的に働く自然免疫と,特定の異物のみを抗原として認識して排除する獲得免疫が存在する.樹状細胞は,未感作のT細胞に抗原特異的なT細胞を誘導できるプロフェッショナルな抗原提示細胞として知られる.樹状細胞を利用して抗がん機能を有する獲得免疫を樹立させるさまざまな免疫療法と,それぞれの違いを紹介する. -
がん免疫アジュバント
73巻2号(2018);View Description Hide Description近年の免疫チェックポイント阻害薬の成功により,がん治療における免疫系の関与が臨床でも明らかにされた.一方で,がん抗原特異的な免疫反応を誘導するがんワクチンの薬効は,高いと認識されていないのが現状である.これらの免疫反応を増強させるため,自然免疫活性化物質をアジュバントとして使用する試みが盛んに実施されている.本稿では,がんワクチン・がん免疫療法に用いられるアジュバントについて,近年の研究・開発状況を概説する. -
腫瘍ネオアンチゲンを標的とした免疫治療
73巻2号(2018);View Description Hide Description免疫チェックポイント阻害薬は,画期的ながんの治療法である.しかし無効な症例,がんが多々あり,次の手段として腫瘍ネオアンチゲンを標的とする免疫療法が期待を集めている.我々は,次世代シークエンシングにより患者腫瘍に特異的な遺伝子変異を同定し,それらを認識する腫瘍浸潤リンパ球を投与する非常に“personalized”な臨床治験を数年行ってきたが,途中経過は解決すべき問題がまだ多いことを示している. -
代謝と抗腫瘍エフェクターT 細胞
73巻2号(2018);View Description Hide Description近年,T細胞のエフェクター機能について,細胞内代謝の視点からアプローチした研究報告が散見されている.特にT細胞受容体(TCR)シグナルの下流では,解糖系の亢進が種々の機序によってT細胞のエフェクター機能につながっていることが明らかになってきた.さらには,アミノ酸代謝やエネルギーセンサー分子であるAMPK の活性化がそれらに深くかかわっていることも報告されている.CD8 陽性T細胞の代謝を調節し,そのエフェクター機能を高めることで抗腫瘍効果をもたらすがん免疫療法のさらなる進歩に期待したい. -
TCR 遺伝子改変T 細胞療法
73巻2号(2018);View Description Hide Description世界初の遺伝子改変T細胞製品としてCD19キメラ抗原受容体T細胞(CAR‒T)「キムリア」が,急性リンパ性白血病の治療として2017年8月30日に米国食品医薬品局に承認された.免疫チェックポイント阻害療法に加え,CAR‒T細胞療法や本稿で述べるT細胞受容体(TCR)遺伝子改変T細胞療法等の腫瘍反応性を付与された細胞の輸注療法が,今後次々とがん治療の医療現場にもたらされることが期待される.本稿ではTCR遺伝子改変T細胞療法の開発状況を概観し,今後の課題と展望を議論する. -
キメラ抗原受容体T 細胞療法
73巻2号(2018);View Description Hide DescriptionCAR‒T療法は,遺伝子改変により腫瘍特異性と機能増強を付与したT細胞を用いる免疫細胞療法である.CD19特異的CAR‒T療法の臨床的な成功が注目されている一方で,固形腫瘍に対するCAR‒T療法の臨床開発では十分な治療効果が得られていない.また,臨床開発の過程で致死的な有害事象や耐性例も報告されている.現在,安全性と有効性を高めるため,急速に進歩しているゲノム編集技術や細胞工学技術を駆使した新たな取り組みがなされている. -
iPS 細胞技術を応用したがん免疫療法―幹細胞生物学,腫瘍免疫学,遺伝子治療学の融合が生み出しつつあるもの―
73巻2号(2018);View Description Hide Description効果のあるT細胞治療を実現するためには,「抗原特異性」,「細胞数」,「細胞のfitness」が重要であることが分かってきた.それらを備える細胞として,iPS細胞を介して誘導した再生T細胞への期待が高まっている.本稿では,iPS細胞からの抗原特異的キラーT細胞誘導の基礎や,同種T細胞治療プラットフォームとしての再生T細胞の臨床応用に向けた動向などについて概説する. -
がん免疫療法におけるバイオマーカー開発
73巻2号(2018);View Description Hide Descriptionがん免疫療法のバイオマーカー開発は,腫瘍免疫の理解とともに発展している.生体のがんに対する免疫応答を治療に結びつけるがん免疫療法において,その中心を担う腫瘍特異的T細胞が認識する抗原は遺伝子変異産物から生じるネオアンチゲンであることが明らかになり,遺伝子変異の数までがバイオマーカーとなりうることが明らかになった.本稿では,免疫チェックポイント阻害薬に関するバイオマーカーを中心に概説する. -
がん免疫療法の臨床試験の現状と展望
73巻2号(2018);View Description Hide Description免疫チェックポイント阻害薬は,宿主の免疫系を介してがん細胞を攻撃させる薬剤であり,従来の抗がん剤とは作用機序が異なる.免疫チェックポイント阻害薬の開発過程においては,がん免疫療法に特有の現象を考慮したうえで,近年,免疫療法特有の臨床開発が試みられている.免疫チェックポイント阻害薬を軸として,主ながん免疫療法の開発状況,がん免疫療法に適した治療効果判定方法の模索,新しい臨床開発の方法について概説する. -
個別化・複合がん免疫療法の開発に向けて
73巻2号(2018);View Description Hide Description抗腫瘍CD8+T細胞を主要エフェクターとする免疫チェックポイント阻害薬が実用化されたが,多くのがんでの単独治療の奏効率は10~30% であり,その治療効果改善のために,他の標準がん治療,および抗腫瘍T細胞応答に重要な調節ポイントに対する免疫制御薬を併用する複合がん免疫療法の基礎研究と,PD‒1/PD‒L1阻害を中心とした併用療法の臨床試験が進められている.今後,症例ごとに適切な併用を行う個別化・複合がん免疫療法の開発が期待される.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(32) 運動器の痛み 4.慢性腰痛への対応:『腰痛診療ガイドライン2012』を踏まえて
73巻2号(2018);View Description Hide Description慢性腰痛は,発症から3ヵ月以上継続する腰痛と定義される.本邦でも患者数が多く,医療上のみならず社会経済上も大きな問題である.『腰痛診療ガイドライン2012』によれば,治療の原則は“Stay active !”(積極的に動け!)である.運動療法が第1に推奨される.安静保持はむしろ禁忌である.薬物療法は,運動療法を効果的に行うための「補助療法(adjuvant therapy)」である.慢性腰痛の中には,うつ病やうつ状態を併発し,深い社会心理的要因を有する患者が一定の割合で存在する.整形外科医のみならず,リハ医,精神科医,リハビリスタッフなど複数の専門家が関与する包括的な治療が必要である.
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【トピックス】
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B 型肝炎に対する新規クラス治療の開発状況
73巻2号(2018);View Description Hide Description慢性HBV 感染症に核酸アナログ製剤やペグインターフェロン製剤を使用することにより,ウイルス血症および肝炎の制御は可能となった.しかし,既存の治療法ではHBs 抗原消失は低率で,長期間治療してもHBV 遺伝子排除を含んだ「完全治癒」は困難であり,続発症としての肝線維化進展や肝細胞がんのリスクは残存する.現在,現実的目標である「機能的治癒」を目指した新規クラスの抗HBV 薬開発が世界的に進んでおり,本稿では現時点での開発状況を紹介する.
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【今月の略語】
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