最新医学
Volume 73, Issue 7, 2018
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特集【薬剤性肺障害-病態・診断・治療の Update-】
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- 鼎談
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薬剤性肺障害の遺伝的素因
73巻7号(2018);View Description Hide Description分子標的薬ゲフィチニブが上市され全国的に使用されると,薬剤性肺障害が多発,数百人が死亡し大きな社会問題になった.頻度は投与患者の4 ~ 5 % で,うち10人に1人程度が死亡していた.全世界のデータ収集により,薬剤性肺障害が多発している国は日本のみであることが明らかになった.患者全エクソーム関連解析の結果,MUC4 遺伝子が責任遺伝子として抽出された.現在,MUC4 の詳細な解析が進行中である. -
薬剤性肺障害の診断
73巻7号(2018);View Description Hide Description薬剤性肺障害の診断は,新たに出現した肺障害が薬剤との時間的関連があり,他の原因を除外できる場合に得られる.その病像は多様であり,KL‒6 などが有用である場合もあるが,本疾患を常に念頭に置くことが診断の第1歩である.添付文書の情報を参照するなど,基本に忠実な診療が早期診断につながる.起因薬剤の同定はしばしば困難であり,誘発試験やリンパ球刺激試験が行われるが,種々の問題があり,有用性は限られている. -
薬剤性肺障害の画像所見
73巻7号(2018);View Description Hide Description薬剤性肺障害のCT による画像パターンは7 型に分類される.背景に通常型間質性肺炎や非特異性間質性肺炎等の慢性間質性肺炎を有するほど,薬剤性肺障害は発生頻度が上がり,かつ重篤となる.薬剤性肺障害は一般的に,癒着等により呼吸性移動が低下した領域には生じず,動きの良いほうに発生するが,免疫チェックポイント阻害薬ではその限りではない. -
薬剤性肺障害の診断における薬剤リンパ球刺激試験
73巻7号(2018);View Description Hide Description薬剤リンパ球刺激試験(DLST)は,我が国では広く薬剤性肺障害の診断に用いられてきた.しかし,薬剤との関連性を評価するためには,薬剤負荷試験(DCT)が最も信頼できる方法である.我々はDLST とDCT の関連性を検討したが,DLST の結果とDCT の結果には関連性がなかった.さらに,DLST の偽陽性あるいは偽陰性のために真実が見逃される可能性があり,薬剤性肺障害におけるDLST の解釈には注意が必要である. -
薬剤性肺障害の治療と予後,医薬品副作用被害救済制度
73巻7号(2018);View Description Hide Description薬剤性肺障害の治療の基本は,被疑薬の中止,副腎皮質ステロイドの投与,呼吸管理であるが,副腎皮質ステロイドの投与量や投与期間に確立したものはない.予後を判断するうえでびまん性肺胞傷害を呈しているかは重要であり,高分解能CT などを参考に診断する必要がある.薬剤性肺障害には公的な救済制度があるため,患者などの申し出に応じて医師は診断書を発行する必要がある. -
分子標的薬による薬剤性肺障害
73巻7号(2018);View Description Hide Description非小細胞肺がんを中心としたがんの薬物治療は,分子標的薬の登場によって劇的に進歩した.しかし,非小細胞肺がんに対する分子標的薬であるゲフィチニブ上市後に多くの薬剤性肺障害の発症,かつ致死例を経験し,我々は多くの知見を得た.今後も多くのがん腫に対し,多くの分子標的薬が使用されることが予想される.本稿ではゲフィチニブによる薬剤性肺障害を中心に,各分子標的薬での薬剤性肺障害についてリスク因子や診断,治療などを概説する. -
免疫チェックポイント阻害薬による薬剤性肺障害
73巻7号(2018);View Description Hide Descriptionがんの薬物療法に免疫チェックポイント阻害薬が導入され,トピックスとなっている.安全性の面では独特な免疫関連有害事象が目を引くが,間質性肺疾患が重篤な副作用の代表であるのは他の抗悪性腫瘍薬と同様である.本稿では,免疫チェックポイント阻害薬による間質性肺疾患の発現状況や特徴,治療指針について概説する. -
細胞障害性抗がん剤による薬剤性肺障害
73巻7号(2018);View Description Hide Description近年,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が日常的に使用されるようになり,薬剤性肺障害に遭遇する機会は増加しているが,細胞障害性抗がん剤による肺障害は古くから知られている.臨床症状や画像で特異的な所見に乏しく,診断に苦慮するケースも存在する.薬剤によりその発症頻度や経過は異なるが,薬剤性肺障害はときに致命的な経過をたどる副作用であるため,治療にあたって使用する薬剤の発症頻度や特徴を理解しておくことは重要である. -
抗リウマチ薬による薬剤性肺障害
73巻7号(2018);View Description Hide Description近年,関節リウマチ(RA)患者に対して,疾患修飾性抗リウマチ薬をはじめ,生物学的製剤などさまざまな抗リウマチ薬が臨床で使用されるようになってきた.基本的にすべての抗リウマチ薬は肺障害を惹起する可能性があるが,臨床では日和見感染,RA 固有の肺病変との鑑別が困難なことが少なくない.RA 診療では,治療に用いる抗リウマチ薬が肺障害を起こす可能性があることに常に注意を払い,本症の早期診断に努めるべきである. -
間質性肺炎治療における薬剤性肺障害
73巻7号(2018);View Description Hide Description薬剤性肺障害の診断は,すべての薬剤で肺障害の可能性があるため,投与中のみならず投与後にも発症することを意識していく必要がある.中でも間質性肺炎治療中の薬剤性肺障害の場合,既存の間質性肺炎の増悪や呼吸器感染症の併発に関しても慎重に鑑別を行う必要がある.実臨床においては,肺病変の変化を早期に発見し,いかに鑑別し,対応していくかが求められる重要な病態である. -
炎症性腸疾患,ウイルス性肝炎治療における薬剤性肺障害
73巻7号(2018);View Description Hide Description炎症性腸疾患治療薬では,5 ‒アミノサリチル酸製剤であるメサラジンが副作用の比較的少ない薬剤として汎用されているが,肺障害を来す場合があり,薬剤性好酸球性肺炎としての報告が多い.ウイルス性肝炎治療薬では,インターフェロン(IFN),小柴胡湯が肺障害を来す薬剤として認識されている.IFN フリーの直接型抗ウイルス薬が登場し,肺障害について今後の動向に注意が必要である. -
糖尿病,脂質異常症の治療における薬剤性肺障害
73巻7号(2018);View Description Hide Description2型糖尿病,脂質異常症に対する治療薬のうち,dipeptidyl peptidase‒4(DPP‒4)阻害薬,hydroxymethylglutaryl‒CoA(HMG‒CoA)還元酵素阻害薬による薬剤性肺障害の報告は比較的多く,厚生労働省から注意喚起されている.薬剤性肺障害はときに致死的になることもあり,発熱,咳嗽,呼吸困難などの症状出現時,胸部聴診で異常所見(特に捻髪音)を聴取するとき,胸部X線写真で変化が見られるときは,薬剤性肺障害を含めた鑑別を行い,対応する必要がある. -
抗血栓薬,降圧薬,抗不整脈薬による薬剤性肺障害
73巻7号(2018);View Description Hide Description抗血栓薬,降圧薬,抗不整脈薬による肺実質の障害,すなわち薬剤性肺炎は,多彩な病像を呈し,呼吸不全に至ることも多い.休薬によって改善する場合もあるが,生命を脅かす場合もある.抗不整脈薬アミオダロンによる薬剤性肺炎はよく知られているが,最近,非弁膜性心房細動に頻用される直接経口抗凝固薬(DOAC)による薬剤性肺炎,肺胞出血の報告が散見されており,高齢者や腎機能低下症例での使用にあたっては注意を要する.
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【トピックス】
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臨床微生物検査の最新技術
73巻7号(2018);View Description Hide Description質量分析装置を用いた迅速な菌種同定とその結果に基づいた抗菌薬適正使用への介入(Antimicrobial Stewardship)は,効果的な抗菌薬治療までにかかる時間や入院期間の短縮,死亡率の低下につながる.病態別(症候群別)に想定される病原体を網羅的に検出,同定する全自動遺伝子検査装置も販売されている.今後,これらの最新技術を有効に活用することによって,抗菌薬・抗ウイルス薬の適正使用,入院期間の短縮,医療関連感染の予防などが期待できる. -
反復配列RNA の異常発現による膵発がん促進機構
73巻7号(2018);View Description Hide Description我々は,難治がんの代表として知られる膵がんにおいて,ゲノム上のタンパク質をコードしない反復配列領域からの転写産物が発がん過程の早期から異常発現することに着目し,この反復配列RNA が遺伝子修復機構を阻害することで突然変異を増加させ,細胞がん化を促進する「細胞内変異原」として働くことを見いだした.また,反復配列RNA を血中から高感度に測定する手法を開発することで,新たな早期診断バイオマーカーとなる可能性を示した. -
KRAS 遺伝子変異肺がんに対する分子標的治療
73巻7号(2018);View Description Hide DescriptionKRAS 遺伝子変異は肺腺がんの10% 程度に認められるが,変異タンパク質の直接阻害が困難なため,有効な治療薬が存在しない.現在,結晶構造解析などを用いた直接阻害薬の開発が続けられているのに加え,下流シグナルの抑制によって細胞死を誘導する手法,代謝経路を標的とした治療開発,遺伝子の発現抑制スクリーニングを用いた変異KRAS の生存に必要な遺伝子の同定による新たな標的分子の探索が続けられている.
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【今月の略語】
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