最新医学
Volume 74, Issue 3, 2019
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特集【人工知能(AI)の医療分野への 応用と解決すべき問題点】
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- 鼎談
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ビッグデータとAI の医療応用
74巻3号(2019);View Description Hide Description本稿では医療画像の診断支援などに関して,ビッグデータとAIの側面から論じる とともに,今後,本分野がどのように発展するかを議論する.医療の現場においては, 大量の検査情報が取得されている.医療画像データ(医用画像データ)は,日常診療 の中で日々蓄積され,診断治療などに利用される.しかしながら,これらのデータは 日常臨床のみでなく,革新的な医療機器を実現するための基礎的なデータともなる宝 の山である.そこで,本稿ではビッグデータが情報処理の概念を大きく変革しつつあ ることを示し,医療画像認識にどのような影響を与えるかを論ずる.また,医療画像 を取集するためのクラウド基盤についても紹介する. -
AI技術のがんゲノム医療分野への 応用と解決すべき問題点
74巻3号(2019);View Description Hide Description臨床の現場に入りつつあるがんゲノム医療において,情報解析が必須となってきて いる.情報解析では,① データ解析による遺伝子変異の検出,② 知識データベース を用いた臨床的意義づけ,③ 各個人に合わせたレポート作成,の3つを主に行うが, この各部分においてAI技術が活用され,全体としても自動化されてきている事例を 紹介する.また,解決すべき問題点,知的財産権に関する課題についても取り上げる. -
機械学習とこれからの医療技術への展開
74巻3号(2019);View Description Hide Description近年の情報通信技術の発展により,AIを用いたシステムが次々と開発されており, その背後では,コンピュータにヒトのような学習能力を持たせる機械学習と呼ばれる 知的情報処理技術が用いられている.本稿では,機械学習技術の概要を述べるととも に,機械学習に関する研究を推進している理化学研究所革新知能統合研究(AIP)セ ンターの活動を紹介する.そして,AIPセンターにおける医療研究の取り組みを紹 介し,今後の展望を述べる. -
病院のIT化とAI医療への課題
74巻3号(2019);View Description Hide Description病院における医療機器の進歩は目覚ましく,医療の世界にもビッグデータ化,AI 化の波が押し寄せて来ている.本稿では,病院のIT化とAI医療に焦点を当て,克 服すべき課題について述べる.① 病院における標準化にはまだ課題が多い.② 医療 データ統合は,技術的な進歩と手法の進歩により期待が高まっている.③ AI機能を 実臨床で活用するためには課題が残されている.しかし,これからの病院ではIT化 が進み,AI技術が欠かせないものになっていくと思われる. -
AIによる医用画像のコンピュータ支援診断
74巻3号(2019);View Description Hide Description本稿では,AI,特に深層学習を利用した医用画像のコンピュータ支援診断(CAD) システムについて解説する.まず,本稿で用いる主な用語の説明をした後で,深層学 習の概要について述べる.続いて,深層学習に基づく最近のCADシステムの例につ いて示す.最後に,システムを開発したり使用する際の注意点,および課題について 触れる. -
AIによる創薬
74巻3号(2019);View Description Hide Description近年,医療・創薬の分野もビッグデータ時代を迎え,豊富な生命情報データを利用 して創薬過程を計算機で実現できつつある(生体プロファイル型計算機創薬).この ビッグデータを縮約して創薬に生かす方法論としてAIが期待されている.本稿では, 実用性レベルに達したAIバーチャル・スクリーニング法と,タンパク質相互作用ネッ トワークの生体タンパク質に創薬の標的分子を探索するAI的方法に関して,最近の 発展を紹介する. -
ビッグデータ創薬
74巻3号(2019);View Description Hide Description近年,世界中で爆発的に増大し続けるさまざまなビッグデータから,知識発見や新 たな価値を創造する科学技術として,ビッグデータ科学が注目されている.創薬分野 においても,ハイスループットスクリーニング(high throughput screening:HTS) やオミクスデータなど,大量のビッグデータに直面し,AIを駆使する方法でビッグ データから効率的に医薬品を創出することが期待されている.本稿では,創薬におけ るAI応用事例を示すことで,創薬分野におけるビッグデータとAIの可能性につい て述べる. -
循環器領域のAIの現状と将来の展望
74巻3号(2019);View Description Hide Description現在,日米ともにAIを利用した医療機器開発が急速に進んでいる.米国では FDAの認可を受けた心機能測定専用の画像診断ソフトが次々と出現している.最近 では画像診断用のAIだけでなく,患者個人のリスク因子を解析して,疾病発症率を 予測するAI開発が進みつつある.将来的にはウェアラブルデバイスとAIを組み合 わせ,患者個別の治療計画を提供するプレシジョン・メディシンの時代が到来すると 予想される. -
AI技術を用いた統合的な がん医療システムの開発と解決すべき問題点
74巻3号(2019);View Description Hide Description深層学習技術の登場により,近年AI技術に対して大きな期待が寄せられている. 内閣府の第5期科学技術基本計画において打ち出された「Society 5.0」の実現に向け ても,重要な基盤としてAI関連の研究開発を強化することが挙げられており,国策 としてAI技術のさまざまな分野への導入が進められている.本稿では,戦略的創造 研究推進事業(CREST)および官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)という 2つのAIに関係する国家プロジェクトを研究代表として推進した経験に基づき,メ ディカルAI研究の現状および解決すべき問題点に関して論じる. -
医師国家試験を自動解答する AIプログラムの開発2.0
74巻3号(2019);View Description Hide DescriptionAI技術を用いた病名診断支援システムの構築を最終目標とし,そのパイロット研 究として,医師国家試験を自動解答するプログラムの構築を行ってきた.本稿では, 処方薬問題に解答できるシステムの拡張など,自動解答プログラムのその後のアップ デート(バージョン2)について解説する. -
画像診断のためのディープラーニング活用 ―特に米国と中国での実用化について―
74巻3号(2019);View Description Hide Description画像に関しては,ディープラーニングの出現によって画期的進歩がみられた.した がって,医療においても2019年初めの時点では,画像診断をはじめとする医用画像 が真っ先にAIの恩恵を受ける分野である.米国は,2018年6月からAIを活用した 医療機器の認可を加速度的に進めており,すでに30以上が認可されている.中国の 医療AIもすでに実用化の段階にある.日本は他の先進国と比較すると,医療AIに ついて開発・認可とも遅れているのが現状である. -
機械学習など先端技術を活用した 精神神経疾患の診断・重症度評価
74巻3号(2019);View Description Hide Description精神疾患には,診断や重症度評価に有用なバイオマーカーが乏しい.精神疾患の診 断および重症度評価は,主に患者の主観的な訴えに基づいて行われ,客観性を欠くこ とが長く問題視されてきた.近年のAIを中心とした技術の発展は,臨床症状の定量 化や検体検査,画像検査に関する新たな研究を可能にし,今後の精神疾患の診断や重 症度評価における新たな方法を供する可能性がある. -
病理画像のAI解析
74巻3号(2019);View Description Hide DescriptionAIの医療応用には大きな期待が寄せられている.しかしながらその実用化までの 道のりには,幾つか,他の分野には見られない特徴的な問題が存在している.本稿で は,医療AIの現状から,病理学分野への応用,そして,その問題点について考察し た.真に医療現場で役立つAIを実現させるためには,現場を知る医療従事者とAI 研究者の協力体制が必須である.特に現在の医療AIは,問題設定がすべての鍵を握 るといっても過言ではない.AI技術が1人でも多くの患者さんの役に立つことを期 待している. -
放射線科領域のAI
74巻3号(2019);View Description Hide Description多層化したニューラルネットを適切に学習させることが可能になり,いわゆる深層 学習が実現したことによって,第3次AIブームが起きている.ニューラルネットは 入力データ,出力データの形式に制限がなく,数値化できるものであればどのような データも入力・出力として利用できる.このため,適用範囲が非常に幅広い.本稿で は,その中でも放射線科領域への応用について,具体例を幾つか挙げながら概説した い.
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【トピックス】
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AYA世代の急性白血病に対する治療戦略
74巻3号(2019);View Description Hide Description急性リンパ性白血病(ALL)および急性 骨髄性白血病(AML)は,AYA世代の代 表的な悪性腫瘍である.ALLにおいては 小児型化学療法が標準治療であるが, AMLにおいては必ずしも定まっていない. いずれの病型においても治療の最適化が課 題である.ALL,AMLそれぞれの疾患に おける分子遺伝学的背景が次々と明らかに されつつあり,今後は,より有効かつ安全 な治療法の確立に向けて,新規治療の導入 が期待される. -
マイクロRNAを介した発達障害・精神障害の 分子病態
74巻3号(2019);View Description Hide Description発達障害・精神障害は,患者数の増加と ともに大きな生活障害をもたらす重要疾患 であるとの認識が高まっており,病態の解 明と病態に基づく根本的治療法の開発が望 まれている.近年,機能性ncRNAの一種 であるmiRNAが,遺伝子発現のブレーキ システムを担うことで多様な生命現象を制 御することや,miRNAによる制御不全が 脳疾患を含めたさまざまな疾患の病態に深 く関与することが明らかにされ,注目を集 めている.本稿では,発達障害・精神障害 の病態におけるmiRNAの関与について, 最新の知見を概説する. -
GLP–1受容体作動薬の最近の話題
74巻3号(2019);View Description Hide Description糖尿病は心血管疾患の重要なリスク因子 であるが,基礎研究においてGLP‒1の心 臓保護作用が示唆されている.臨床におい ても近年,GLP‒1受容体作動薬の心血管ア ウトカムに関する大規模臨床試験から心血 管保護効果を有することが明らかになった. 現在,新たな週1回注射製剤や経口GLP‒1 受容体作動薬の開発も進行しており,これ らが使用可能となればGLP‒1受容体作動 薬は糖尿病治療においてさらに重要な位置 づけとなることが期待される.
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