最新医学
Volume 74, Issue 6, 2019
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特集【脳血管と認知症】
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- 鼎談
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- 基礎
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アミロイドβクリアランスと認知症
74巻6号(2019);View Description Hide Description脳実質のAβのクリアランス機構として,少なくとも4つの経路が知られている.すなわち,① トランスサイトーシスによる血管内腔への排出経路,② 血管壁内の Aβドレナージ経路(IPAD),③ グリンパティック経路,④ Aβ分解酵素やグリア による分解経路である.これらクリアランス機構は,加齢に伴い蓄積するAβのクリアランスに相補的にかかわっており,介入によって促進できればアルツハイマー型認知症の治療法となりうると期待されている. -
ペリサイトによる脳の堅牢性の維持と破綻による疾患との関連
74巻6号(2019);View Description Hide Descriptionペリサイトは脳微小血管に存在する壁細胞の一種であり,近年,その多様かつ重要な機能が明らかとされたことにより,多くの研究者が注目することとなった.その機能は脳血管系の形態形成から脳微小循環制御,炎症メディエーターとしての機能など多岐にわたる.また,その障害による疾患への関与からも注目を集めている.本稿では,これまでに明らかとされたペリサイトに関する多様な知見を総論する. -
慢性脳低灌流と認知症
74巻6号(2019);View Description Hide Description慢性脳低灌流と認知症の関連については,脳小血管病に分類される皮質下血管性認知症と脳アミロイド血管症において,大脳白質病変の原因としての慢性脳低灌流状態が重要視されている.病態モデル動物では,虚血性大脳白質病変を生じ,学習・記憶機能障害を発症する慢性脳低灌流モデルが開発され,病態解明,バイオマーカー探索,予防法・治療法開発などに汎用されている. -
神経グリア血管単位と認知機能障害
74巻6号(2019);View Description Hide Description脳の複雑な機能を制御するには,脳内外の異なる細胞種同士が適切に相互連携する必要がある.そのため,神経系・グリア系・血管系細胞を1つの単位(神経グリア血管単位;neuro-glia-vascular unit)として考え,脳を包括的に保護しようとする方向に研究が進んでいる.本稿では,脳血管性認知症やアルツハイマー病における神経グリア血管単位の破綻と認知機能障害の関連について,最近の知見を紹介する. - 診断・臨床
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認知症と炎症マーカー
74巻6号(2019);View Description Hide Description認知症,特にアルツハイマー病への血管リスク因子の関与が確立され,その背景に血管炎症,あるいは炎症マーカーとの関連が示唆されている.血管炎症マーカーとしては,高感度CRPが代表的なものであるが,高感度CRPと認知症との関連は年齢, 時期,遺伝子多型との関係で一致した見解を得ていない.脳小血管病の存在が将来の認知症リスクを高めることはよく知られているが,脳小血管病と血液炎症マーカーとの関連についても報告が集積しつつある.認知症の根本的治療法が存在しない現在,血管炎症抑制を標的とした治療手段は,将来の認知症発症リスクを低減させることが 期待される. -
高血圧および血圧変動と認知症
74巻6号(2019);View Description Hide Description我が国では,認知症患者の急増が医療・社会問題となっている.近年の国内外の疫学調査において,血圧変動と認知機能低下および認知症発症との関係が報告されている.福岡県糟屋郡久山町における認知症コホート研究(久山町研究)の成績では,家庭血圧の日間変動の増大に伴い,血管性認知症およびアルツハイマー型認知症の発症リスクが有意に上昇した.認知症予防において,血圧値のみならず血圧変動にも留意した高血圧管理が重要であると言えよう. -
動脈スティッフネスと認知症
74巻6号(2019);View Description Hide Description動脈スティッフネスは大血管から小血管に至る動脈硬化の程度を示し,高血圧症や糖尿病などの生活習慣病,心臓や腎臓などの血管関連疾患も反映する.最近では,脳血管障害との関連が報告され,脳卒中や認知症の共通リスク因子である脳小血管病との関連も注目されている.認知症は,国民の健康生活を考えるうえで重要な疾患であり,その機序の解明に動脈スティッフネスの評価が役立つかもしれない. -
脳卒中後認知症(poststroke dementia)の病態
74巻6号(2019);View Description Hide Description脳卒中そのものによる認知機能障害は,血管性認知機能障害(vascular cognitive impairment)と呼ばれる.一方,脳卒中発作後しばらくしてから何らかの認知症を発症してくることがあり,この場合,脳卒中は認知機能障害の誘因あるいはリスク因子と考えられる.これらを総じて脳卒中後に来す認知症をpoststroke dementiaと言う. -
心房細動と認知症
74巻6号(2019);View Description Hide Description心房細動の発症には糖尿病や高血圧,肥満やメタボリックシンドロームの関与が報告されている.また,認知症の発症に関しても同様に,生活習慣病の関連が示唆されている.認知症発症のリスク因子として,心房細動が挙げられ,そのメカニズムとして血栓塞栓症,慢性脳低灌流や微小血管病変などの関与が考えられている.心房細動患者において,抗凝固療法やカテーテルアブレーションなどの治療が認知症発症予防に有効な可能性がある. -
認知症リスクとしての無症候性白質病変
74巻6号(2019);View Description Hide Description高齢者に認められる無症候性白質病変は,主に脳小血管病による慢性虚血性変化によって生じる.脳室周囲,深部/皮質下白質,橋に生じ,高度なものは脳卒中のみならず認知症のリスクとなり,特に遂行機能や情報処理速度の低下と密接な関係がある.画像所見上は,ラクナ梗塞や血管周囲腔との鑑別が必要である. -
認知症リスクとしての脳微小出血(マイクロブリーズ)
74巻6号(2019);View Description Hide Description脳小血管病の一表現系である脳微小出血と認知症との研究が始まって久しい.脳微小出血はその分布パターンにより高血圧性細動脈障害と脳アミロイド血管症に大別しうるため,推定病理学的な観点からも認知症との関連がメジャーな研究対象となっている.本稿では両者の関連について,これまでの横断・縦断的研究,動物実験モデルの報告を交えて概説した.我々はこれらの研究成果を今後の予防法確立,創薬への礎にしなければならない. -
認知症リスクとしての皮質微小梗塞
74巻6号(2019);View Description Hide Description皮質微小梗塞は,病理組織学的検査によって検出される直径50mm~5mm以下の皮質内に限局する梗塞である.発症機序は十分に解明されていないが,脳アミロイド 血管症や微小塞栓症,慢性脳低灌流などが原因として挙げられており,認知機能障害および認知症との関連が指摘されている. -
頸動脈病変と認知機能
74巻6号(2019);View Description Hide Description頸動脈内膜剥離術(CEA)前後に神経心理検査を行い,「頸部頸動脈狭窄は慢性的 な脳循環障害があるので,たとえ脳虚血症状がなくても認知機能が低下しているので はないか」を明らかにする試みが行われている.当施設のデータから,約10%の症例で「頸動脈病変による脳血流の低下→脳代謝の低下→大脳皮質神経受容体機能の低下・大脳白質神経線維構築の障害→認知機能の低下」が可逆的に起こっていると思われる. -
遺伝性脳小血管病の診断と臨床
74巻6号(2019);View Description Hide Description遺伝性脳小血管病はまれな疾患であるが,最近の遺伝子検査の進歩により,新たな遺伝子変異が見つかってきている.脳血管障害,血管性認知症に加えて,その他の神経所見,身体所見の診察をもとに,積極的に鑑別診断を行うことにより,適切な診断と治療につなげることができる.
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寄稿文集
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