癌と化学療法
Volume 31, Issue 8, 2004
Volumes & issues:
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総 説
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COX-2と癌治療研究
31巻8号(2004);View Description Hide Description癌組織におけるCOX-2の発現に関しては大腸癌のみならず胃癌肺癌乳癌などにおいてもその発現の増強が認められる。COX-2が発癌に重要な役割を果たすことは培養細胞を用いた実験やノックアウトマウスを用いた動物実験で示されておりさらに臨床面では家族性大腸ポリポーシス症患者のポリープ抑制効果が報告され米国FDA はCOX-2阻害薬のFAP 患者への投与を承認した。癌の増殖浸潤転移の関してもCOX-2が重要な役割を果たしている。肺癌領域では抗癌剤や放射線治療により腫瘍内のCOX-2発現が増強されることが報告されておりCOX-2阻害薬の臨床応用が試みられている。また実験的検討ではあるが大腸癌の血行性転移におけるCOX-2阻害薬の転移抑制効果についても報告されている。COX-2阻害薬の作用機序については不明な点が多い。COX-2の分子生物学的機能についてさらなる研究を重ねCOX-2阻害薬が有効な抗腫瘍薬として臨床応用されることが期待される。
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特 集
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- 【包括医療制度でのがん治療】
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包括医療の国際情勢とわが国のDPC
31巻8号(2004);View Description Hide Description診断群分類の基本的な考え方は患者を病名(diagnosis)と提供されたサービスの種類(procedure)の組み合わせによって分類することである。Yale大学の研究グループにより開発された最初のDRG はアメリカmedicareの病院費用における1件当たり支払い方式として採用されその後分類の精緻化などが行われながら諸外国においても種々の形式で採用されている。わが国の診断群分類DPC は諸外国における動向を踏まえて開発されたものであり2001年から特定機能病院などへの支払いに採用されている。DPC によって包括される範囲はいわゆる病院費用であり入院基本料検査(内視鏡などの技術料を除く) 画像診断(選択的動脈造影カテーテル手技を除く) 投薬注射1,000点未満の処置料手術麻酔の部で算定する薬剤特定保険医療材料以外の薬剤材料料などとなっている。DPC 導入の目的はあくまで医療に関する情報の標準化と透明化でありこれにより情報に基づいた合議ができる体制を確立することである。その妥当性を高めるためにも重症度のより妥当な評価看護サービスやICU の評価抗がん剤などの高額薬剤の評価など分類の精緻化を行っていくことが求められている。 -
包括医療制度時代の病院経営
31巻8号(2004);View Description Hide Description2003年から特定機能病院で包括的医療費の支払い制度のdiagnosis procedure combination(DPC)が導入され2004年度から国立大学国立病院の独立法人化や新しい卒後研修教育制度がスタートした。今こそ病院は医療者から患者からそして医学生からも選ばれる病院へと変革しなければいけない時代となった。各病院は安全でミスの少ない医療患者が納得できる説明性透明性論理性のある医療そしてコストも考慮した効率性のある医療を提供する病院へと変革しなければいけない。そのためには病院に勤務するすべての職員が医師ナース技師薬剤師栄養士事務員などすべての職種にわたりチームとなって医療を進めなければいけない。包括医療制度の下ではチーム医療の実践が必要でありそのためにはクリティカルパス(あるいはクリニカルパス)を導入することがチーム医療の展開特に重要な医師の意識変革の絶好の契機になると考えられるので紹介した。 -
癌の外科治療と医療費の包括化
31巻8号(2004);View Description Hide Description現在特定機能病院において施行されているDPC による包括医療の経緯について簡単に要約した。またその癌外科治療に及ぼす影響について予想されるところを述べた。すでにDRG/PPS として施行されている米国でも様々の問題点が指摘されていることより単に医療費の削減という目的のために包括医療を全面的に癌の診療に導入することは間違っていることを指摘した。 -
DPCとがん診療
31巻8号(2004);View Description Hide Descriptionわが国の健康保険制度は長年にわたり出来高払い制度により運営されてきたが近年の医療費の高騰により見直しが必要となっている。2003年4月より特定機能病院を対象として導入された急性期入院医療の包括評価制度ではわが国で独自に開発された診断群分類:DPC により入院1日当たりの診療報酬を規定する形となっているが平成14年度の制度導入前の調査データの分析からはいくつかの問題点があることが指摘されている。㈰ 超短期の化学療法検査入院で出来高支払い時の実績を大きく下回る領域がある。㈪ 同一のDPC 分類症例について特定機能病院間に入院日数や検査項目などに大きなバリエーションがある。こうした状況は診療の入院から外来へのシフトを助長する他がん診療の標準化に対する関心を高めることになると予想される。今後は平成18年度に予定されている診療報酬改定を目指してデータに基づいた議論によりこうした課題を解決していく努力が必要とされる。 -
DPC施行による癌化学療法の変化
31巻8号(2004);View Description Hide Description2003年より全国82施設でdiagnosis procedure combination(DPC)が導入され癌化学療法は外来にシフトされるようになった。入院化学療法の奏効度を落とさないで外来化学療法を行うために当院では外来癌化学療法のセンター化を行い投与量方法などの混乱を避けるためセットメニューによる外来癌化学療法を開始した。一般消化器外科におけるメニューは食道癌1 胃癌7 大腸癌9 乳癌38 肝胆膵癌10である。DPC 導入による癌化学療法の外来シフトは世界的潮流であり外来化による奏効性の低下の防止が必要である。 -
DPCとクリティカルパス
31巻8号(2004);View Description Hide Descriptionクリティカルパスは医療の標準化を通して質の高い安全な医療を提供するとともに入院日数短縮や医療費削減など経済的効果を有する。2003年に導入された包括評価算定方式では診断群分類(diagnosis procedure combination:DPC)ごとに入院期間別日額医療費が設定されこれを意識した診療が求められている。DPC 対策としてはDPC ごとの診療の標準化とDPC 対象病院の平均入院期間より短い入院期間の設定材料費削減医療連携による病床の有効利用が重要でありいずれもクリティカルパスが中心的役割を発揮する。さらにクリティカルパス上に記載された基本タスクに応じて人件費材料費を算定し原価管理を行う手法も可能である。一方クリティカルパス導6による医療の質と安全性の向上は新規患者を取り込み病床稼働率低下への対策となる。DPC 対応型病院経営上クリティカルパスの導入と活用は必須である。
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原 著
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National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria(NCI-CTC Version 2.0) 日本語訳JCOG版の信頼性の検討
31巻8号(2004);View Description Hide Description癌臨床試験における毒性評価では評価者間にばらつきが認められることが経験的に知られている。そこで現在日本で使用されているマニュアルなしのNCI-CTC ver.2.0日本語訳JCOG 版を用いばらつきが大きいと思われる項目を対象として評価者間信頼性を検討しばらつきの原因を探索した。毒性評価は17例分の診療記録から5名のclinical researchcoordinator(CRC)が独立に評価した。評価終了後全員の協議によりGradeの決定を行いばらつきの原因の探索を行った。信頼性の指標とした一致割合は0.47〜0.88であったが評価にはばらつきが認められた。ばらつきはGrade 1と2Grade 2と3の間で顕著であり判定規準の解釈の違いや毒性規準の理解不足に起因すると考えられた。正しい毒性評価のためには教育の実施とFAQなど具体的な事例も含めたマニュアルが必要と考えられた。 -
EORTC QOL調査票胃癌患者用モジュールSTO22(日本語版)の開発
31巻8号(2004);View Description Hide Description胃癌患者10人を対象にEORTC により開発された胃癌患者用QOL 調査票であるQLQ-STO22(STO22)の日本語版のパイロットテストを行った。対象患者の背景は男性が6人年齢は23〜53歳の範囲であった。PS はPS 0:5人PS2:4人PS 4:1人であった。また臨床病期㈿の患者は5人であった。STO22日本語版の記入に要した時間は20〜40分程度であった。対象患者に対するインタビュー調査の結果STO22日本語版の全22項目は全体的に理解しやすい質問文で構成されており記入に際して負担を感じるほど長い時間を要しないとのコメントが得られた。さらに22項目の質問内容は胃癌患者の健康状態を適切かつ包括的に表しているものであるという評価が得られた。しかし22項目のうち5項目については質問内容に不明確なものがあり例の追記や質問文の修正により質問内容が明確になることが明らかになった。5項目に修正を加えることによりSTO22調査票原版から日本語版への翻訳過程を完了した。EORTC のQOL グループによって実施されている多数例の胃癌患者を対象としたバリデーション試験(EORTC protocol number 15001/40003)において検証が行われるSTO22調査票の計量心理学的特性の結果報告が待たれる。 -
Gemcitabineを用いた膵癌術後補助療法—安全性と治療成績—
31巻8号(2004);View Description Hide Description目的:gemcitabineは切除不能膵癌に対する症状緩和効果や予後の改善などの点から高く評価されているが術後補助療法における役割は明らかにされていない。本研究ではその安全性および有用性について検討を加えた。症例と方法:治癒切除を目的に膵切除が施行された通常型膵癌16例を対象とした。施行手術は膵頭十二指腸切除10例膵体尾部切除6例であった。gemcitabineは1,000mg/m2を隔週で投与した。2回を1クールとし6クール以上を目標回数とした。結果:対象の88%はstageⅣ(Ⅳa 7例Ⅳb 7例)であり2群以上のリンパ節転移を56%および門脈浸潤を38%に認めた。grade3以上の副作用は症候的に1例血液学的に2例の計3例(19%)であった。stageⅣの50%生存期間はそれぞれ20.4か月でありstageⅢの2例は生存中である。1年以内死亡例は腹腔内洗浄細胞診陽性例とPTCD 瘻孔再発例の2例であった。また16番リンパ節転移陽性4例中2例が2年以上生存中である。結語:gemcitabineを用いた術後補助化学療法は安全であり抗腫瘍効果も期待される。今後randomized control trialなどにて検討する必要があると思われた。 -
上皮性卵巣癌・卵管癌に対するDocetaxel+Carboplatin療法の検討
31巻8号(2004);View Description Hide Description卵巣癌卵管癌に対して術後補助化学療法維持化学療法としてdocetaxel+carboplatin療法を施行した。docetaxelは70mg/m??でcarboplatinはAUC 5で経静脈的に3週ごとに投与した。患者は32人で平均年齢54歳であり測定可能病変を有する7例中5例(70%)に奏効した。副作用はgrade 3/4の好中球減少が70%の周期でgrade 3/4の白血球減少が35%の周期でみられ過敏反応は25%の患者にみられたが治療を中止するほどではなかった。浮腫は30%の患者に末梢神経障害は7%の患者でみられた。docetaxelとcarboplatinの併用療法は卵巣および卵管癌に対して非常に有効であった。副作用は好中球減少が著明であったが神経障害はまれであった。本療法は初回化学療法として十分期待できる療法と思われた。
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症 例
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Gefitinib(Iressa)が奏効後再発した非小細胞肺癌の3例
31巻8号(2004);View Description Hide Descriptiongefitinib(商品名:Iressa)は最も早く臨床開発された上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル阻害物質である。化学療法に抵抗性を示す非小細胞肺癌症例ですでに有効性を示す症例報告が多くされる一方重篤な肺障害の存在が明らかになっている。gefitinibが奏効しその後再発した非小細胞肺癌の3症例を報告する。症例はすべて㈿期肺腺癌であり全症例1週間以内に自覚症状ないし検査データの改善を認めた。partial response(PR)の継続の後全症例3〜7か月で再発した。症例1はgefitinib中止後再投与したが効果なく死亡した。症例2はgefitinibを継続したが効果を認めなかった。症例3は他の化学療法を開始したが効果を認めなかった。gefitinibの奏効例はすでに多くの報告があるが奏効後の再発についての報告は乏しくgefitinibによる奏効例はその後の臨床経過と予後を知る上で重要と考え報告する。また今後分子標的薬の有効性を評価する上で治療の耐性は重要な問題になると思われる。 -
肺原発リンパ上皮腫様癌の術後再発に対し化学療法が奏効した1例
31巻8号(2004);View Description Hide Description症例は57歳女性。左肺下葉切除後の病理組織で肺原発リンパ上皮腫様癌と診断された。手術から約1年2か月後に胸膜肥厚が出現しその後も増大傾向を認めたためCBDCA(AUC=5)/PTX(180mg/m2)併用化学療法を4コース施行した。副作用は軽微で特に問題となるものは認められなかった。画像上治療前に認められた胸膜肥厚や胸水がほぼ消失しCR と判定した。治療前に訴えていた左背部痛についても治療開始後より徐々に軽快し治療前から内服していた鎮痛薬を中止することができた。肺原発リンパ上皮腫様癌は中国南部などのアジア地域が好発地域とされているが日本国内での報告は少ない。まれな腫瘍であるために確立された治療法はないがCBDCA/PTX 併用化学療法は忍容性も高く症状緩和などQOL の観点からも有効な治療法であると考えられた。 -
Imatinib MesylateによるNeoadjuvant Therapyが有効であった胃GIST症例
31巻8号(2004);View Description Hide DescriptionGIST は消化管で最も多い間葉系腫瘍でCajalの介在細胞のc-kit 遺伝子変異により発生する。imatinib mesylate(IM)は慢性骨髄性白血病の治療薬として開発されたがKIT 受容体の信号伝達も特異的に阻害しGIST の治療薬としての有用性が注目されている。われわれはIM の術前投与により腫瘍が著明に縮小し縮小手術が可能となった胃GIST の1症例を経験したので報告する。症例は62歳男性。主訴全身倦怠感。膵浸潤を疑う7.5cm の巨大GIST(KIT+ CD 34+ 細胞分裂像5/50HPF)と診断し膵脾合併胃全摘術が必要と考えられたためIM(400mg/body/day)の術前投与を開始した。有害事象として白血球減少(grade2) 下痢(grade1)を認めた。治療効果はPR で膵浸潤像も消失し噴門側胃切除術を施行した。切除標本病理所見では広範囲の変性を伴い腫瘍細胞密度の著明な低下を認めた。核濃縮が目立ち細胞分裂像もみられず腫瘍細胞の悪性度が低下している可能性があり再発の減少が期待される。しかし治療前と類似した組織像を示す領域も残存しており異なった特徴を有する腫瘍細胞の混在の可能性も示唆された。経過は良好で術後3か月現在再発を認めていない。IM による術前治療は腫瘍縮小に伴う切除範囲の縮小や再発率の減少などが期待でき進行GIST に対する有用な治療手段と考えられる。 -
TS-1を投与し3年2か月生存中の腹膜転移胃癌の1例
31巻8号(2004);View Description Hide Description症例は42歳女性。3型胃癌に対し胃全摘術を施行横行結腸および小腸間膜に米粒大の腹膜転移を多数認めstageⅣ 根治度C と診断した。術後化学療法としてTS-11回50mg を1日2回経口投与し4週投薬2週休薬を1コースとして開始した。副作用は軽度で2コース目以降は外来通院にて施行可能であった。12コース目施行中急性胆嚢炎を発症し2か月間休薬したが胆嚢炎の改善を待って再開した。以後23コース施行中であり術後3年2か月経過した現在CT 画像上腹膜転移の増大や腹腔内リンパ節の腫大腹水を認めることなく外来通院中である。 -
TS-1が奏効した胃癌術後大動脈周囲リンパ節転移の1例
31巻8号(2004);View Description Hide Description症例は58歳の男性でpStageⅢB の進行胃癌に対しD 2郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した。術後7か月目の腹部CT にて大動脈周囲に多数のリンパ節転移が認められ放射線照射も効果なくTS-1の投与を開始した(100mg/day 4週投与2週休薬を1クール)。1クール終了後から大動脈周囲リンパ節の著明な縮小を認め5クール終了後にはCR となり15クール終了した現在なおCR を維持している。しかし血清CEA 値はTS-1投与前には337ng/ml あり3クール終了後には2.7ng/ml にまで低下したがその後再び上昇しはじめ30〜50ng/ml 台を推移している。血清CEA 値の再上昇は再発巣の存在を疑わせるがCT 以外の画像診断あるいは上下部消化管内視鏡検査でも再発の徴候を認めていない。有害事象としてはgrade 2の白血球減少と貧血を認めたのみで良好なQOL を保ちながら外来通院による治療を継続中である。 -
TS-1が有効であった胃癌・肺転移の1例
31巻8号(2004);View Description Hide Description56歳男性。胃癌肺転移拡張型心筋症にて手術不能と判断。TS-1による化学療法を開始した。TS-1を100mg/day 28日間連日内服14日間休薬を1コースとして開始した。TS-1開始後胃原発巣はNC であったが肺転移はCR を得た。現在治療開始後15か月間のCR を維持している。副作用はみられなかった。よってTS-1は抗腫瘍効果QOL に対して有用であることが示された。 -
TS-1治療に抵抗性となったリンパ節および副腎転移再発胃癌症例に 対しPaclitaxelのWeekly投与でCRを得た1例
31巻8号(2004);View Description Hide DescriptionTS-1 UFT+PSK の術後adjuvant therapy実施後1年でリンパ節転移副腎転移再発したStageⅣ胃癌に対してTS-1(120mg/body 4週連続投与2週休薬)で治療を行うも抗腫瘍結果はPR にとどまり皮膚症状白血球減少症下痢などの有害事象はgrade1〜3であった。休薬しつつ断続的に投与を行うも間もなくPD に転じたためにこれを中止し再発進行乳癌の治療に準じてpaclitaxel(PTX 80mg/m2 3週連続投与1週休薬)のweekly投与を外来で行ったところ4クールでCR を得た。また有害事象はまったく認められなかった。5-FU 系抗癌剤に抵抗性の再発胃癌に対してPTX のweekly投与は抗腫瘍効果および有害事象の両観点からまた外来投与が可能であり極めて有用であると思われた。 -
大腸癌術後肝転移に5-FU+Levofolinate(l -LV)+CPT-11少量分割投与が奏効した1例
31巻8号(2004);View Description Hide Descriptionl-LV/5-FU 療法にCPT-11の少量分割投与を追加しPR を得た症例を経験した。症例は67歳男性。横行結腸癌に対し横行結腸切除術(D2)後の経過観察中に腹部CT にて肝転移が認められlevofolinate(l-LV)350mg+5-FU 750mg(1回/週×6週/1クール)を2クール施行した。施行後の評価はPD でありsecond-lineの治療法としてl-LV 350mg+5-FU 750mg(1回/週) CPT-1140mg(3回/週) 以上を4週連続2週休薬を1クールとして投与した。3クール施行後の治療効果判定のCT にてPR を得腹水も消失した。5-FU+l-LV+CPT-11少量分割投与法は副作用の出現も少なく患者のQOL も保たれ有効な治療法であると考えられた。 -
全身化学療法により著明な縮小効果を認め肝切除し得た大腸癌肝転移の1例
31巻8号(2004);View Description Hide Description症例は54歳男性。1991年他医にてS 状結腸癌に対しS 状結腸切除術施行。その後肝転移を認め1992年に肝部分切除術(術後肝動注施行もチューブ閉塞にて中止) 1994年にマイクロ波凝固療法を施行。その後再発を認めていなかった。2002年6月多発性肝肺転移を認め全身化学療法として5-FU 併用CDDP 少量反復投与療法施行。肝転移巣の著明な腫瘍縮小効果を認めCEA 値もほぼ正常化した。肝左葉の転移巣や肺転移巣はコントロール良好であったが2003年4月ごろより肝右葉に限局した新病変を認めそれに伴いCEA 値の再上昇を認めた。CPT-11 5-FU CDDP 3剤併用療法施行するもCEA 値は上昇し続けた。固有肝動脈閉塞による肝右葉の薬剤分布の低下が原因と考えられた。同年6月17日肝右葉切除ならびにラジオ波凝固療法施行。術後CEA 値は低下しその後再上昇するも肝切除以前に無効であったCPT-11 5-FU CDDP3剤併用療法施行し再び低下した。初回肝転移出現後約11年間生存中である。 -
5′-DFURが著効した大腸癌肝転移の1例
31巻8号(2004);View Description Hide Description症例は65歳男性で1998年6月下痢が出現し近医にてS 状結腸癌の診断を受け当科紹介入院となった。腹部CT 検査で肝S 8に約2cm の腫瘍を認め肝転移に対しては後日2期的に手術を行うことにした。同年8月12日S 状結腸切除を施行した。S 状結腸に10×6.5cm の2型の腫瘍を認め中分化腺癌s ly2 v 1 n 1であった。術後2週目より5′-DFURを600mg/日投与した。投与後2か月の腹部CT 検査で肝転移の縮小傾向がみられ4か月目のCT 検査では肝転移は消失した。5′-DFUR は術後2年間投与し術後5年の現在患者は無再発生存中でCEA も正常である。 -
5-Fluorouracil/l -Leucovorin動注療法により長期間進行が制御されている直腸癌原発肝転移の1症例
31巻8号(2004);View Description Hide Description同時性の肝転移(S1とS8)を合併した直腸癌症例に対して原発巣摘出術後三度経動脈的塞栓療法が行われたが結局PD となり術17か月後5-fluorouracil/l-leucovorin(5-FU/l-LV)併用動注療法に変更した。1回投与量は5-FU 500〜750mg/body(297.6〜446mg/m2)/2〜3hrs(持続動注) l-LV 50〜75mg/body(29.8〜44.6mg/m2)×2bolus(動注)とし原則として毎週通院にて投与した。本治療法開始4か月後S1の転移巣はPR にS8の転移巣はNC にさらに8か月後には各々PR とCR になった。相呼応して上昇していたCEA 値とCA19-9値も急激に低下し以後高値ながら明らかな上昇傾向を示すこともなく36か月(術53か月)経た現在まで安定し健在である。5-FU/l-LV 併用動注で長期継続投与すれば副作用もほとんどなく転移巣は長期間CR やPR のまま進行が制御される症例のあることが示唆された。
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短 報
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肝および膵癌細胞株におけるケモカインレセプターmRNAの発現
31巻8号(2004);View Description Hide Descriptionこの論文は英文抄録のみ存在します。抄録部分は原則的に和文抄録のみ表示しております。(本文はご覧いただけます)
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連載講座
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- 【センチネルリンパ節の研究最前線 】
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乳癌
31巻8号(2004);View Description Hide Description乳癌に対するセンチネルリンパ節生検(SNB)は欧米においては日常臨床のなかに定着しているがわが国ではまだそれほど普及していない。最近になってVeronesiなどによりrandomized controlled study (RCT)の結果が報告されたことから乳癌に対するSNB はエビデンスのある診断法として認められつつある。このため今後わが国においても普及するよう期待される。術前に非浸潤性乳管癌と診断された例に対してSNB を行うべきか否か意見が分かれるところであるが患者希望と医師の判断により適応を決めるというのが現状である。術前化学療法施行例に対するSNB は安全性の面から疑問視されている。このため術前化学療法を始める前にSNB を行う方法が注目されている。胸骨傍リンパ節に治療的意義はないがSNB の登場により診断的意義や病期分類が見直されつつある。術前の超音波下の穿刺吸引細胞診やMR 下の針生検で腋窩転移ありと診断された場合にはSNB を行わずに最初から郭清をすればコスト削減が可能である。 - 【臨床検査,診断に用いる腫瘍マーカー 】
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消化管腫瘍
31巻8号(2004);View Description Hide Description食道癌では陽性率が高くないがSCC TPA IAP が有用である。胃癌ではCEA CA 19-9が特に何らかの転移を伴う高分化型の症例で比較的高い。AFP は肝転移CA 125は腹膜播種に特異的である。CA 72-4とNCC-ST-439は高度進行のマーカーとして有用である。大腸癌においてはCEA CA 19-9が特に術前進行度予測に有用である。腫瘍マーカーの半減期とダブリングタイムは手術や化学療法の効果判定として有用な場合がある。腫瘍マーカーの術後再発症例のモニタリングの意義として胃癌術後における再発症例120例におけるCEA CA 19-9のモニタリングのprospective studyを紹介する。再発時のCEA CA 19-9の陽性率はそれぞれ65.8 85.0%と術前に比べいずれも有意に高い値を示した。術前にこれらのマーカーが陽性を示した症例のほとんどは再発時にもそのマーカーの上昇を認めた。画像診断による再発の指摘とマーカーの上昇時期を比較したところCEA では5〜12か月前平均3.6か月前に上昇が認められた。CA 19-9では10〜13か月前平均2.2か月前であった。これらの成績からマーカーを定期的にフォローアップすることは胃癌の再発の予測に意義が高いものと考えられた。
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国際がん情報
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特別寄稿
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The 3rd Conference on Asian Trends in Prostate Cancer Hormone Therapy
31巻8号(2004);View Description Hide Descriptionこの論文は英文抄録のみ存在します。抄録部分は原則的に和文抄録のみ表示しております。(本文はご覧いただけます)
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Journal Club
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用語解説
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癌にまつわる症候群:Gardner Syndrom、PETポジトロン断層撮影(positron emission tomo-graphy)
31巻8号(2004);View Description Hide Description -
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