癌と化学療法
Volume 32, Issue 3, 2005
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総説
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食道胃接合部癌
32巻3号(2005);View Description Hide Description食道胃接合部癌については30年以上議論が行われている分野である。現在,食道胃接合部の定義に関しては西の分類とSiewert の分類があるが,解剖,生理,組織,診断,治療の面からなかなか統一した見解が得られていなかった経緯がある。今後,共通の定義に基づき食道胃接合部癌をprospectiveに解析して食道癌取扱い規約と胃癌取扱い規約の整合性と治療指針を確立することが課題である。
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特集
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- 難治性造血器疾患と造血器腫瘍治療の進歩
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骨髄異形成症候群
32巻3号(2005);View Description Hide Description骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)は骨髄細胞の無効造血によって血球減少がもたらされる疾患であり,不応性貧血ならびに前白血病状態という側面をもっている。MDS の分類にはFAB 分類とWHO分類とがあり,予後分類としてInternational Prognostic Scoring System(IPSS)がある。治療法は保存的な支持療法から造血幹細胞移植まで,種々のものが病状に応じて選択されている。 -
急性骨髄性白血病治療の現状と新規治療法
32巻3号(2005);View Description Hide Description急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の寛解率は70〜80%となったが,50%以上の症例は再発する。日本では,未治療AML と急性前骨髄球性白血病(APL)に対する臨床第III相試験が進行中である(JALSG AML 201,APL 204)。化学療法の有効性を高めるため,種々の試みがなされている。AML 治療における六つのトピックスを取り上げた。1. AML とhigh-risk MDS 症例に対しMDR-1 modulatorを化学療法に追加することで臨床的な利益が得られるかを検討するため,PSC 833を用いた無作為割付の第III相試験が行われた。化学療法単独と比較し,PSC 833を加えても寛解率とoverall survival(OS)は改善しなかった。2. G-CSF priming 効果をみるため,多数例による無作為割付試験が行われた。寛解となった症例において,寛解導入療法にG-CSF を加えたほうが再発率は低かった。G-CSF を用いた化学療法感受性亢進のメリットは,中間リスク群において特に明らかであった。3. Ara-C にfludarabineを加えることでAra-CTP 濃度は上昇する。白血病芽球への細胞傷害はAra-CTP が担っている。無作為割付第III相試験において,high-risk MDS とAML症例を,Ara-C+G-CSF の寛解導入療法にfludarabineを追加するか否かで割り付けた(FLAG vs AG)。白血病細胞中のAra-CTP 濃度はFLAG 群で増加した。Ara-C にfludarabineを組み合わせても寛解率,OS, event-free survival, diseasefreesurvivalといった臨床的な予後は有意に改善しなかった。4. calicheamicinを結合させたヒト化抗CD 33マウスモノクローナル抗体(マイロターグ)が臨床応用されている。初回再発CD 33陽性AML の277例を解析した第II相試験では,26%の寛解率が得られた。5.ATRA 耐性となったAPL に対する亜砒酸療法の有効性は確立した。日本でも2004 年11 月に認可された。6.FLT 3 変異を有するAML の頻度は高く予後も不良なため,FLT 3 阻害剤の開発に関心が集まっている。数種類の化合物が開発中である。 -
慢性骨髄性白血病
32巻3号(2005);View Description Hide Description慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)は,9番と22番染色体の相互転座t(9:22)(q 34:q 11)を有することを特徴とする造血器腫瘍である。この染色体転座によりPhiladelphia(Ph)染色体上に生じたBCR-ABL キメラ遺伝子によるBCR-ABL チロシンキナーゼの恒常的な活性化が病態に深く関与している。CML 細胞のBCR-ABL チロシンキナーゼ活性を選択的に阻害するimatinib mesylate(imatinib)が,1998年6月に最初のCML 患者に投与されて以来,多くのCML 患者に投与され,その有用性が示されてきた。臨床第㈵相や第II相試験の結果を受けて,第III相試験(IRIS Study)では,未治療初期(診断より6か月以内)慢性期1,106例の患者に対し,imatinib(400mg/day)とinterferonα+低用量Ara-C との無作為化比較試験が施行された。中央値30か月の経過観察の結果は,耐用性,血液学的完全寛解率,細胞遺伝学的寛解率(大寛解90%, 完全寛解82%), 生存率(95%:移植を非センサー)と有意に優れていた。imatinibがCML治療の第一選択薬となり,CML の治療戦略を大きく変えたことは事実であるが,細胞遺伝学的あるいは分子学的寛解の意味,治癒の有無,至適な投与量,そして同種移植との関係について解決すべき問題も残されている。 -
多発性骨髄腫
32巻3号(2005);View Description Hide Description多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)は高齢者に好発する難治性血液疾患の代表である。近年,自己造血幹細胞移植併用大量化学療法が標準的治療として確立されるなど,MM の治癒指向型治療戦略が急激に進歩している。さらに,Thalidomideをはじめとした有望な新規薬剤が数多く臨床応用されており,MM の治療戦略は大きな変貌を遂げている。これら治療法の最近の進歩についてまとめた。 -
悪性リンパ腫
32巻3号(2005);View Description Hide Description今世紀に入り,抗体(rituximab)やpurine analog などの新薬の開発,自家および同種造血幹細胞移植方法の進歩により,悪性リンパ腫に対しての急速な治療進歩がみられる。最も発症頻度の高いび漫性大細胞型B 細胞性リンパ腫の初発例に対する標準的治療法は,30年ぶりにCHOP 療法からR-CHOP 療法に変わることがすべてのリスク群で検証された。従来の化学療法では増悪が頻発し,治癒が期待できなかった濾胞性リンパ腫に対してもrituximabによる維持療法,R-CHOP 療法,purine analog, rituximabによるin vivo purging でのauto-PBSCT, RIST などの治療戦略の進歩により,少なくとも従来の治療成績を超える無増悪生存率の向上が検証されてきており,今後は生存率の向上が期待されている。初発ホジキンリンパ腫に対しては,限局早期に対する4コースのABVD 療法に連続する区域照射,進行期に対する6〜8コースのABVD(d)療法が標準的治療法であり,さらなる治療効果の向上と毒性低減をめざした臨床試験が進行中である。
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原著
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進行胃癌,大腸癌に対する術前短期TS-1投与の有用性についての検討—(Pilot study)組織学的効果判定結果からTS-1の術後補助化学療法の有効性を予測する—
32巻3号(2005);View Description Hide Description進行胃癌6例,大腸癌4例,計10症例に対し,術前に2週間TS-1を投与し,術後標本を用いた組織学的効果判定結果から,術後化学療法の有効性を予測できるかを検討した。これらのうち2症例を中心に提示し,術前TS-1投与の有用性について検討を加えて報告した。症例1はLM 領域の3型胃癌。TS-1 80mg/day(65mg/m2_)を14日間投与し,7日間の休薬後,幽門側胃切除術を施行した。術後標本を用いた組織学的効果判定結果1)からGrade 3の結果を得た。症例2はLM 領域の2型胃癌。TS-1 100mg/day(73mg/m2)を14日間投与した。2日間の休薬後,気管支肺炎による熱発を来したため予定を延長し,休薬後22日に幽門側胃切除術を施行。術後標本を用いた組織学的効果判定結果からGrade2の結果を得た。2症例ともTS-1に対する感受性が非常に高いと判断できた。両症例とも現在TS-1 5日投与2日休薬(5投2休)の投与2)で経過観察中である。今回,われわれは6例の進行胃癌と4例の進行大腸癌に対し同様のプロトコールを施行し,その結果を検討したところ,極めて有用であることが判明した。現在,それぞれの組織学的効果判定結果と組織学的進行度により,術後化学療法のregimenの決定を行い,慎重に経過観察を行っている。 -
HER 2過剰発現を呈する転移性乳癌に対するDocetaxelとTrastuzumab併用療法の検討
32巻3号(2005);View Description Hide DescriptionHER 2過剰発現を呈する転移性乳癌症例40例に対し,docetaxel (TXT)70mg/m2を3週間隔とtrastuzumab 4mg/kg → 2mg/kg を1週間隔の併用療法を行い,3週を1コースとして2コース以上6コースまで投与することとし,抗腫瘍効果と安全性を検討した。適格例39例中,CR 6例,PR 22例,SD 7例,PD 1例,NE 3例であり,抗腫瘍効果は71.8%であった。Grade 3以上の主な血液毒性は,白血球減少と好中球減少であり,白血球減少はGrade 3が67.5%, Grade 4が20.0%, 好中球減少はGrade 3が22.5%, Grade 4が60.0%であった。また,非血液毒性の多くはGrade 2以下であり,Grade3の体重増加が2例,食欲不振,末梢神経障害,発熱,発疹が各々1例発現したのみであった。TXT とtrastuzumabの併用療法は高い抗腫瘍効果を示し,副作用も重篤なものは認められず忍容可能であったことから,今後の転移性乳癌の治療として重要な位置を占めることが期待される。 -
Minocycline, OK-432, Cisplatinの低用量3剤併用胸腔内注入療法による癌性胸膜炎の治療経験
32巻3号(2005);View Description Hide Description癌性胸膜炎と診断された12症例に対してminocycline, OK-432, cisplatin(CDDP)の低用量併用胸腔内注入療法を施行し,有効性および副作用につき検討した。全例,胸腔ドレナージを行い,胸水を排除した後にCDDP 5〜20mg, OK-432 1〜3KE, minocycline25mg を胸水が減少するまで胸腔内注入を繰り返した。著効11例,無効1例であった。平均施行回数は1.9回であった。薬剤注入後から抜管までの期間は平均5.3日と短期間であった。著効例では自覚症状とともにquality of life(QOL)の改善が得られた。主な合併症は胸痛,発熱,消化器症状であったが,いずれも重篤な副作用はみられなかった。癌性胸膜炎に対するminocycline, OK-432, CDDP の低用量併用胸腔内薬物療法は患者への侵襲が少なく,簡便かつ安全に施行できる有効な治療方法と考えられた。 -
Cost-effectiveness of Letrozole versus Tamoxifen as First-line Hormonal Therapy in Treating Postmenopausal Women with Advanced Breast Cancer in Japan
32巻3号(2005);View Description Hide Descriptionこの論文は英文抄録のみ存在します。抄録部分は原則的に和文抄録のみ表示しております。(本文はご覧いただけます)
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症例
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乳癌卵巣転移,癌性腹膜炎再発に対して術後CBDCA 腹腔内投与+PTX Weekly投与が奏効した1例
32巻3号(2005);View Description Hide Description乳癌術後6年目の46歳,女性。原発性卵巣癌およびそれに起因する癌性腹膜炎と考えられたため,子宮および子宮附属器全摘術を施行し,術後直ちにCBDCA の腹腔内投与およびPTX weekly投与を行った。しかし,乳癌原発巣と卵巣腫瘍,大網などの組織像を詳細に検討した結果,乳癌再発による転移性卵巣癌,癌性腹膜炎と判明した。また,ホルモン・レセプターはER, PgR ともに原発腫瘍,転移性卵巣癌でいずれも陽性,HER 2newはいずれも陰性であり,原発腫瘍の分子生物学的特長は転移腫瘍に引き継がれていた。一方,乳癌は骨,肝,肺,胸膜,リンパ節など比較的全身に転移しやすい癌として知られており,剖検例では卵巣転移,腹膜播種は比較的高率である。しかしこれは乳癌末期の最終状態であるためと考えられており,臨床的に治療の対象となる状態で再発部位が卵巣や腹膜であることは極めてまれである。それゆえに治療法は確定されていないが,CBDCA の腹腔内投与およびPTX weekly投与とその後doxifluridine+anastrozoleでfollow upしたところ,約1年間の無再発期間を得,現在も再発徴候を認めていない。本邦ではCDDP, CBDCA などの白金製剤が乳癌に対していまだに導入されていないが,進行再発乳癌にはCBDCA+PTX が有効である可能性が示唆された。 -
12年間の経過中にExemestaneが著効した乳癌骨転移の1例
32巻3号(2005);View Description Hide Description症例は75歳,女性。1990年12月ごろより腰痛のため近くの整形外科を受診していたが軽快せず歩行不能となったため,1992年5月,精査目的で当院を受診。骨シンチ所見からL 1, L 2の転移性腫瘍が確認され,整形外科手術時のL1L2の病理組織所見および血清腫瘍マーカー値から乳癌原発と考え,TAM 20mg/day, 5-FU 150mg/dayを開始した。その後,腫瘍マーカーは細かな増減を繰り返し,1997年1月24日,2001年1月5日にみられた急激な増大に対してはMPA 800mg/day, 5′-DFUR 600mg/dayが奏効したものの,いずれも副作用のため継続投与は困難であった。2003年12月2日,再び腫瘍マーカーの著しい増大(CA15-3 600U/ml, CEA 197ng/ml)がみられ,MPA および5′-DFUR を投与するも改善がみられず背部痛も持続していたためexemestane 25mg/dayを投与したところ臨床症状,腫瘍マーカーともに著明に改善した。exemestaneは,転移性乳癌に対するホルモン療法として有用であると考えられた。 -
Etoposide, Ifosfamide, Nedaplatinによる3剤併用化学療法が著効した胸腺癌の1例
32巻3号(2005);View Description Hide Description今回われわれは,etoposide(ETP), ifosfamide(IFO), nedaplatinによる3剤併用化学療法が著効した胸腺癌の1例を経験したので報告する。症例は68歳,女性。主訴は嗄声・嚥下障害。胸部CT 検査にて前縦隔腫瘍を認め,CT ガイド下生検にて胸腺癌(扁平上皮癌型)と診断された。ETP, IFO, cisplatin(CDDP)によるVIP 療法の変法としてCDDP の代わりにnedaplatinを用い,ETP 100mg/m2(day 1〜3), IFO 1,000mg/m2(day 1〜3), nedaplatin 70mg/m2(day1)の3剤併用化学療法を行い,3コース終了後著明な腫瘍縮小効果を認めた。nedaplatinを含む多剤併用化学療法は,胸腺癌に対する化学療法の一つとして今後検討していく価値があると考えられた。 -
胃癌術後症例に対するLow-Dose FP 療法の検討
32巻3号(2005);View Description Hide Description進行胃癌の術後化学療法にlow-dose FP 療法を施行した。対象はpStageII以上とし,5-FU 250mg/body, CDDP 10mg/body, 10日間/2週あるいは5-FU 250mg/m2,CDDP 5mg/m2, 連日14日間を1コースとし,1コースの80%以上投与例を適格例とした。30症例に施行し2例が副作用のため本人の希望で脱落例となった。有害事象はgrade3の好中球減少が1例にみられたが,食欲不振,嘔気,体重減少,下痢,全身倦怠,creatinine上昇はいずれもgrade 2以下で重篤なものはなかった。2年生存率は,cur A 100%, cur B 85%, cur C 0%で,cur C 群のmedian survival time(MST)は10か月であった。胃癌術後のlow-dose FP 療法は安全に施行でき,cur A, cur B 例における成績は良好であるが,入院を要し今後TS-1などの経口剤へ移行すると考えられる。cur C においてはsequential chemotherapyの検討が必要である。 -
術後Weekly Paclitaxel(TXL)療法により長期生存中の根治度C スキルス胃癌の1例
32巻3号(2005);View Description Hide Descriptionpaclitaxel(TXL)のweekly投与により2年間治療継続中の高度進行胃癌を経験したので報告する。症例は66歳,女性。著明なリンパ節転移と腹膜転移を伴うスキルス胃癌に対して,2002年5月胃全摘,脾摘術を施行した。最終診断は低分化腺癌,pT 3, sN 3, sH 0, pP 1, CYX, sM 0, ow(+), aw(−), ly3, v 2, fStageIVで,根治度C であった。術後TS-1 80mg/bodyの化学療法を開始したがgrade4の好中球減少とgrade2の食欲不振を認め1クールで休薬とした。その後CA19-9の上昇を認めたため2002年9月よりTXL 70mg/m2_のweekly投与(3週投与6週休薬)を開始した。CA19-9は徐々に減少し正常値まで改善した。1〜3クールにgrade3/4の血液毒性を認めたが休薬期間を6週間と長く設定した結果10クールを安全に施行し,2年以上にわたり良好なQOL を得ることができた。現在腹膜転移を伴う胃癌に対する有効な治療法は少ない。TXL のweekly投与は腹膜転移を伴うスキルス胃癌に対する有効な治療法の一つになり得ると考えられた。 -
肝動注療法にて切除可能となった大腸癌多発肝転移の3例
32巻3号(2005);View Description Hide Description術前肝動注療法により切除可能となった大腸癌多発肝転移を3例経験したので報告する。症例1:55歳,女性。S 状結腸癌と6個の両葉多発肝転移の診断でS 状結腸切除術を施行した。術後肝動注療法にて,S 8とS 6の転移巣のみとなり,術後1年5か月後に肝部分切除をした。症例2:66歳,男性。盲腸癌と肝転移(S 6)の診断で右半結腸切除と肝部分切除術を施行した。術後6か月のCT にて多発肝転移を認め,肝動注療法を開始し1年8か月後にCR となった。その後に肝転移が再発し,2年3か月後と3年1か月後に肝切除術をした。症例3:52歳,女性。上行結腸癌と両葉多発肝転移の診断で右半結腸切除術と肝の粗大病変のみを部分切除した。術後の肝動注療法と全身化学療法にてS 7の転移巣のみとなり,1年4か月後に肝右葉切除を施行した。症例2は肺転移再発があり現在治療中である。他の2例は,術後4年目であるが再発なく健存している。 -
Levofolinate(l-LV), 5-Fluorouracil(5-FU)による肝動注化学療法と放射線療法が奏効した両葉多発直腸癌肝転移の1例
32巻3号(2005);View Description Hide Description症例は43歳,男性。直腸癌に対して,高位前方切除術を施行された(ss, n 0, P 0, H 3, M(−), stageIV)。両葉多発肝転移に対してCDDP(10mg/body), 5-FU(250mg/body), 週5日投与による肝動注療法を行ったが無効であった。薬剤をlevofolinate(425mg/body), 5-FU(1,000mg/body), 週1日投与に変更したところ肝転移巣は石灰化を伴って著明に縮小し,画像上PR となった。腫瘍マーカー(CA19-9, CEA)は速やかに10%以下に低下し,約7か月間上昇傾向を認めなかった。その間も肝動注療法により肝転移巣はコントロール可能であった。経過中に出現した縦隔リンパ節転移,大動脈周囲リンパ節転移,下大静脈内腫瘍塞栓転移に対し,各々同一レジメによる全身化学療法,放射線療法(45Gy), 放射線治療(32Gy)を行い,すべてPR となった。その後急速に肝・肺転移が増大して肝転移の診断から2年後に死亡された。肝転移は20か月間良好にコントロールされていた。直腸癌肝転移の治療においては転移部位に応じて適切な治療法を選択することが重要である。 -
血液透析療法を施行している直腸癌再発患者に対するCPT-11導入の経験
32巻3号(2005);View Description Hide Description血液透析療法を施行している直腸癌再発患者に対しCPT-11の導入を経験した。透析の時期を投与後24時間としたところ予想されたpharmacokineticsを示したが,本症例では強い骨髄抑制が認められた。腎不全患者においては様々な臓器機能障害を有している可能性を考慮すると,pharmacokineticsを検討しながら増量するのが安全な方法と考えられた。CPT-11は大腸癌においてkey drug であるだけでなく,様々な癌種に有効である。今後,症例を集積してゆくことで安全性と有効性が明らかにされ,透析患者にCPT-11の恩恵をもたらすことができると考える。 -
抗癌剤誘発性嘔吐抑制に及ぼすステロイド剤の影響
32巻3号(2005);View Description Hide Description抗癌剤による癌治療継続を中止する原因の一つとして,その副作用による悪心・嘔吐がある。これらの悪心・嘔吐の副作用対策としては,ステロイド製剤を中心に5-HT3受容体拮抗剤またはメトクロプラミドの併用が行われている。今回,われわれは癌患者に対して行った放射線化学療法による副作用の発現が,5-HT3受容体拮抗剤を単独投与した場合と,5-HT3受容体拮抗剤とステロイド製剤を併用した場合とではどの程度差が生じるのか検討した。被験者はstageIV食道癌の60代男性で,nedaplatin 100mg/day+5-FU 750mg/day(5日間)を1クールとして,放射線療法(60Gy)を併用した。1クール目は,嘔吐の発現抑制のために5-HT3受容体拮抗剤を単独投与し,2クール目は,5-HT3受容体拮抗剤とステロイド製剤を併用した。1クール目と2クール目の投与期間中の総ビリルビン量,GOT, GPT の肝機能検査値,またBUN,Cre, Na, K, Clの腎機能検査値から肝障害,腎障害による嘔吐の誘発が起きていないと推察された。5-HT3受容体拮抗剤単独投与に比べ,ステロイド製剤との併用により5-HT3受容体拮抗剤の使用量および嘔吐の誘発期間を1/3に激減させる結果が得られた。以上の結果から,5-HT3受容体拮抗剤単独投与では抑制不能な嘔吐に対し,ステロイド製剤を併用することで著しい嘔吐抑制効果を示すことが認められた。
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連載講座
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- 【センチネルリンパ節の研究最前線 】
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センチネルリンパ節生検を指標とした早期胃癌縮小手術—Lymphatic Basin Dissection法の導入—
32巻3号(2005);View Description Hide Description早期胃癌のセンチネルリンパ節生検の結果は転移診断敏感度85%(34/40)・ 正診率98%(259/265)と良好である。この結果は,センチネルリンパ節生検を早期胃癌縮小手術の適応決定に応用することを期待させる。しかし,臨床応用するに当たり二つの胃癌特有の問題点がある。一つは術野での同定・生検の難易度が高いこと,もう一点は転移診断法をfalse negativeの危険をはらむ術中迅速病理に頼らざるを得ないこと,である。これを解決すべく,lymphatic basin dissection法を開発した。lymphatic basinとは色素法で染めだされるリンパ流域のことを指し,lymphatic basin dissectionとは,lymphatic basinを一括郭清しback tableでセンチネルリンパ節の同定と生検を行う生検手技である。lymphatic basin dissectionは確実なセンチネルリンパ節生検と安全性の高いバックアップ郭清の点で優れた方法である。これまで143例にlymphatic basin dissectionを伴う縮小手術を行い,現在,他病死・他癌死9例を除く134例が無再発生存中である。 - 【臨床検査,診断に用いる腫瘍マーカー】
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婦人科腫瘍
32巻3号(2005);View Description Hide Description産婦人科領域の悪性腫瘍には主なものとして卵巣癌,子宮頸癌,子宮体癌,絨毛癌などがある。卵巣癌は腹腔内に位置することから,治療前に厳密な意味での病理組織学的確定診断がほとんどの場合不可能であるために腫瘍マーカーのもつ意義は大きく,CA 125をはじめ糖鎖抗原を中心とした多数の腫瘍マーカーが用いられている。婦人科癌のなかで最も多い子宮頸癌の約半数は早期癌の状態で発見されるものの,ある程度進行したものについては扁平上皮癌の腫瘍マーカーであるSCC 抗原の測定が効果的である。また,子宮体癌については,特異性が高くしかも高陽性率を示す腫瘍マーカーは存在しないのが現状である。一方で,絨毛癌については妊娠数の減少や,胞状奇胎が寛解に至るまでの厳重な一次管理が行われていることによりその数は激減したが,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG)というほぼ理想的な腫瘍マーカーが存在する。
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用語解説
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