癌と化学療法
Volume 32, Issue 5, 2005
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総説
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抗がん剤とABC トランスポーター
32巻5号(2005);View Description Hide Description抗がん剤がその効果を発揮するためには,最終的にがん細胞の標的分子に十分量が到達することが必須である。抗がん剤のがん細胞への到達は薬物動態解析から推測されるが,その薬物動態は主に吸収,分布,代謝,排泄の四つの要因からなる。この細胞外および体外への排泄を担う主要分子としてABC トランスポーターが存在する。これらの過程のいずれかが障害されると,臨床的な抗がん剤耐性を招くことになる。薬剤輸送蛋白であるトランスポーター型のABC 蛋白は主に細胞膜に存在しATP エネルギーを利用して,基質の濃度勾配に逆らって薬剤を細胞内から細胞外へ能動輸送する抗がん剤排出ポンプとして機能し,薬剤の細胞内蓄積の減少という形で耐性に寄与する。他方,細胞質内に到達した薬剤を細胞質内のゴルジ装置をはじめとする小胞内に隔離し,標的分子との接触を阻止する。一方,個体レベルから考えると薬剤の排泄だけでなく吸収にも大きく関与している。現在までに48 個のヒトABC 遺伝子が分離され,その構造相同性よりA 〜G 群までの七つのグループに分類されている。抗がん剤輸送に関与する主なABC トランスポーターは現在Pgp/ABCB 1 ,MRP 1 〜3/ABCC 1 〜3 ,BCRP/ABCG 2 とされ,それぞれの基質となる抗がん剤が存在する。最近,分子標的薬がPgp やBCRP の基質であることが注目され,ABC トランスポーターの遺伝子多型が薬物動態,薬効,有害事象に大きくかかわることもわかっている。今後,実地医療のなかでABC トランスポーターの重要性を認識する必要があり,そのためにもABC トランスポーターの網羅的な研究とその成果の流布が求められる。
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特集
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- 膵癌の診断と治療の進歩
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膵癌における遺伝子異常の特徴
32巻5号(2005);View Description Hide Description膵癌のなかで最も高頻度かつ悪性である膵管癌と他の組織型の膵癌では,遺伝子異常のパターンが異なることが明らかとなった。膵管癌では,他の臓器のがんと比較しても非常に多くの遺伝子異常がみられ,このことが膵管癌の悪性度が非常に高いことの要因と思われ,複数の分子を標的とした治療剤の組み合わせを開発する必要があろう。また,膵管由来の腫瘍の発生にはK-ras 遺伝子異常が重要であることが明らかとなり,膵癌発生予防のためには,K-ras 変異の抑制が重要であろう。 -
膵癌の病理像と病理学的評価
32巻5号(2005);View Description Hide Description膵管癌は膵腫瘍のなかで最も頻度が高く,一般に境界不明瞭な灰白色〜白色調の硬い結節を形成する。組織学的には中〜高分化型管状腺癌で,強い線維増生を伴っていることが多い。浸潤性膵癌(腺癌)の前駆病変として膵粘液性嚢胞腫瘍(MCNs),膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMNs )と膵上皮内腫瘍性病変(PanINs )が知られている。このなかで分子生物学的知見を根拠にPanIN を膵管癌の前駆病変とする考えが広まりつつあるが,まだ膵管癌の発育進展過程が十分に解明されたわけではない。たとえば,概念的には別とされるIPMN と膵管癌,IPMN とPanIN の鑑別ですら,病理学的には時に困難である。膵癌の病理学的検索・診断においては,腫瘍病理像に加え組織異型度や進展度の評価が重要である。その結果の解釈に当たっては,検索の方法や診断基準についても注意を払う必要がある。 -
臨床病理
32巻5号(2005);View Description Hide Description日本膵臓学会の膵癌登録に登録された1981 年〜2000 年までの23,284 例と2001 年〜2002 年までの2,298 例における組織型分類を比較した。膵管内乳頭腫瘍,粘液性嚢胞性腫瘍,内分泌腫瘍の組織分類がより詳細になり,膵管内管状腫瘍,solid-pseudopapillary tumor の登録も増加した。漿液性嚢胞腺癌,上皮内癌の登録は減少した。通常型膵癌の分布に変化はなかった。通常型膵癌のStage と組織学的分類には明らかな相関があり,Stage が進むほど分化度の低い癌が多くなる。Stage IVa では高〜中分化型管状腺癌と乳頭腺癌の間に予後の差はないが,他のStage では乳頭腺癌の予後が良好であった。低分化型腺癌,腺扁平上皮癌,未分化癌はいずれのStage においても予後不良であった。組織学的な確定診断をつけることは膵癌の予後の予見,治療方針の決定に極めて重要であり,膵癌登録と協同して,膵癌診療の進歩に貢献していくことが望まれる。 -
膵癌診断の最近の進歩
32巻5号(2005);View Description Hide Description膵癌は消化器癌のなかで最も予後不良の癌である。その原因として膵臓は後腹膜臓器であること,特異的症状に乏しいこと,浸潤性増殖を特徴とすることがあげられる。腫瘍マーカー,膵マーカーや超音波検査を使った無症状,有症状者の膵癌スクリーニングは進行癌のみしか発見できないことや経済効率の面より有効ではないことはすでに明らかとなっている。しかし1cm 以下のより小さな膵癌を発見すれば手術的根治も期待されることより,膵癌の予後改善は早期発見に尽きることは論を待たない。膵癌高危険群に対する膵臓の精査が膵癌の早期発見につながることが期待される。膵癌に対する高危険群としての糖尿病と膵管内乳頭腫瘍の可能性を自験例に基づき紹介した。 -
膵癌の治療
32巻5号(2005);View Description Hide Description外科的切除が膵癌の唯一治癒可能な治療法であるが,切除例においてもいまだ治療成績は不良である。また,拡大手術によっても標準手術で得られる成績に上乗せする効果は期待できないことが明らかとなっており,手術の内容によって治療効果を向上させることは現状では難しい。さらに,高度進行例で手術不能と診断される膵癌も少なくない。このような現状においては,化学療法や放射線療法といった非手術的治療法が,膵癌全体の治療体系において極めて重要な位置を占めることは論をまたない。近年,これらの非手術的治療法の領域はエビデンスレベルの高い報告が相次いでなされ,大規模な臨床試験も複数進行中である。膵癌の診療に携わる者は,これらの結果に常に関心をもってみていく姿勢が望まれる。本稿では,膵癌に対する外科治療や化学療法,放射線治療の現況を中心に概説した。
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原著
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TS-1 と低用量Cisplatin による口腔扁平上皮癌に対する術前化学療法−Preliminary Study−
32巻5号(2005);View Description Hide Description口腔扁平上皮癌患者に対してTS-1 と低用量cisplatin (CDDP )の術前併用化学療法を行い,臨床的および組織学的効果と副作用について調査し,術前化学療法としての有用性を検討した。新鮮例14 例に対して,術前化学療法としてTS-1 80 〜120mg/日(day 1 〜14),CDDP 5mg/m2 (day 1 〜5, 8 〜12 )の投与を行い,終了後1 〜2 週以内に根治手術あるいは生検を実施した。手術摘出物あるいは化学療法後の生検標本により,化学療法の組織学的効果を判定した。組織学的にCR が認められた症例は7 例,臨床的CR は5 例で,PR を含めた奏効率はそれぞれ50.0 ,64.3 %であった。組織学的CR の得られた7 例のうち2 例は根治手術を行わなかった。全症例が治療後2 年を経過するが,局所再発は組織学的効果がIIa であった1 例に認められたのみで,全患者が無担癌生存している。副作用の出現頻度は,好中球減少42.9 %,白血球減少28.6 %,悪心・嘔吐21.4 %,ヘモグロビン減少14.3 %,血小板減少7.1 %であった。grade 3 は好中球減少の2 例のみで,他の副作用はすべてgrade 2 以下であった。 -
進行・再発乳癌に対する中等量Docetaxel 隔週投与法の検討(京滋乳癌研究会第15 次研究)
32巻5号(2005);View Description Hide Description進行・再発乳癌に対する中等量docetaxel (TXT )隔週投与法の有効性,安全性,doxifluridine (5 ′-DFUR )の上乗せ効果について検討した。外来で中等量(30 〜50mg/m2 )TXT を隔週投与した。外来での簡便性を優先し,実際の投与に際しては30 〜50mg/m2 に相当する60mg/body を基本投与量とした。4 コース終了時点でNC ,PD の症例には5 ′-DFUR 800mg/body を併用した。評価対象症例は38 例(登録症例40 例)で,平均年齢は56.0 (38 〜74 )歳,全例女性であった。再発例34 例,進行例4 例,転移・再発部位は骨15 例,リンパ節14 例,肺12 例,皮膚7 例,肝6 例,胸膜3 例,脳2 例であった。評価可能病変を有する32 例,副作用記載が正確な34 例をそれぞれの検討対象とした。38 例に対して平均7.13 (4 〜24 )Kur のTXT 単剤投与が行われ,平均投与量は58.4mg/回(38.3mg/m2 )であった。CR 3 例,PR 7 例,NC13 例,PD 9 例,評価対象症例における有効率は31.3 %(10/32 )であった。NC ,PD 22 例中13 例が併用療法に移行し,評価対象となった10 例ではPR 1 例,NC 2 例,PD 7 例で,5 ′-DFUR の上乗せ効果が10.0 %(1/10 )に認められた。grade3 以上の副作用は骨髄抑制26.5 %,倦怠感5.9 %,神経障害,浮腫各2.9 %に認められた。以上の結果から,進行・再発乳癌に対する中等量TXT 隔週投与は,有効性,安全性などからみて有用な方法と考えられた。5 ′-DFUR の上乗せ効果は10 例中1 例に認められた。 -
進行再発胃癌に対するTS-1 とWeekly CDDP 併用療法の検討−第 I 相臨床試験−
32巻5号(2005);View Description Hide Description進行再発胃癌に対してTS-1 +weekly CDDP 併用化学療法におけるCDDP 推奨用量決定のための第Ⅰ相試験を行った。投与方法はTS-1 を用法用量どおり80mg/m2 で3 週間投与2 週休薬とし,CDDP は第8 ,15 ,22 日目に併用投与した。CDDP の投与については,投与当日に原則として1,500ml の水分負荷を行った。結果として12 例が登録され,レベル3 (30mg/m2 )でgrade3 の好中球減少を1 例,grade3 の悪心・嘔吐を1 例,DLT に規定したgrade3 の肝機能異常を1 例認めたが,MTD には到達しなかった。8 例が評価病変を有しており,レベル1 (20mg/m2 )では奏効例を認めなかったが,レベル2 (25mg/m2 ),3 の奏効率はそれぞれ100 ,66.7 %と良好であった。長期投与の可能性および奏効率の点から25mg/m2 を推奨用量とした。 -
A Pilot Study of Weekly Paclitaxel Administration for Patients with Relapsed Cervical Cancer after Heavy Medication
32巻5号(2005);View Description Hide Description広汎子宮全摘術,放射線療法および多剤併用抗癌剤療法後に再発をきたした子宮頸癌に対する治療法は確立していない。今回,パクリタキセル毎週投与法の効果と毒性を検討した。適格症例8 例に対し,パクリタキセル80mg/m2 を毎週投与とした。奏効率75 %,無再発期間中央値14 か月,生存期間中央値19 か月であり,Grade3/4 の血液毒性は好中球減少が12.5 %に認められた。Grade3/4 の非血液毒性は認められなかった。以上より,本療法は濃厚な治療後に再発をきたした子宮頸癌に対して認容可能な治療法であると考えられた。 -
外来通院がん治療に関する2002 年度全国病院調査結果報告
32巻5号(2005);View Description Hide Description2002 年4 月の外来がん化学療法加算新設により通院化学療法センターなどを設けて外来がん化学療法を行う医療機関が増加していくことを踏まえ,基礎データとして全国の一般病床数200 以上の病院を対象に2002 年度時点の外来がん化学療法の実態を調査した。推計全悪性新生物外来患者数は1 日当たり114,767 人で,わが国における全悪性新生物外来患者の約6 割であった。外来がん化学療法を受けた患者の総推計数は25,289 人であり,うち経口剤処方,経静脈投与の推計数は各々18,887 人,5,440 人であった。外来放射線療法を受けた患者の総推計数は6,088 人であった。通院化学療法センターは16 %の施設ですでに設置,21 %が近い将来に設置予定,63 %が設置予定なしであった。今後,同様の調査を行うことにより外来がん治療の規模の変遷は評価可能であるが,同時にがん治療の質を評価する仕組みも必要と思われる。 -
Human Orotate Phosphoribosyl Transferase 抗体の作製とその応用
32巻5号(2005);View Description Hide Descriptionorotate phosphoribosyl transferase (OPRT ,EC 2.4.2.10 )は5-fluorouracil (5-FU )の活性化酵素であり,thymidylate synthase (TS ,EC 2.1.1.45 )やdihydropyrimidine dehydrogenase (DPD ,EC 1.3.1.2 )などとともに,重要な5-FU の感受性規定因子である。われわれはヒト腫瘍内OPRT を高感度に検出し,5-FU の臨床効果との関連性を検討するために,新規にOPRT ペプチドに対する特異的なポリクローナル抗体を作製した。本抗体を用いてimmunoblot 法,および免疫組織化学染色法による蛋白発現とOPRT 活性との相関性を検討した結果,両者がよく相関することを見いだした。以上の結果から,われわれの作製した抗OPRT 抗体は臨床検体を用いたOPRT 蛋白の検出に十分応用可能であり,癌患者の予後や5-FU の臨床効果におけるOPRT の役割が明らかになるものと思われる。
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症例
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術前FAP 療法が有効であったT 4 食道胃接合部扁平上皮癌の1 例
32巻5号(2005);View Description Hide Description症例は59 歳,男性。上部消化管造影および内視鏡検査にて胸部下部食道から胃体中部小弯側に及ぶ3 型癌病変を認め,生検の結果中分化型扁平上皮癌と診断された。胸腹部CT 検査にて横隔膜および大動脈への浸潤が疑われたため,術前FAP療法を行った。化学療法後の画像評価にて縮小率65 %と判定,大動脈への浸潤も認めなくなったため,手術を施行した。左胸腹連続切開にて下部食道胃全摘術,Roux-en Y 法胸腔内吻合再建,横隔膜脚合併切除および下縦隔+腹部リンパ節郭清を行った。組織学的に原発巣はGrade 1 ,リンパ節転移巣はGrade 3 の治療効果を認めた。本例においては,術前化学療法と下縦隔および腹部リンパ節郭清を含む切除術を組み合わせることにより,有効な治療が行い得たと考えられた。 -
Paclitaxel・TS-1 併用療法が奏効した腹膜播種を有する胃癌の1 例
32巻5号(2005);View Description Hide Description症例は49 歳,女性。腹膜播種を有する切除不能進行胃癌と診断し,化学療法としてpaclitaxel (TXL)・TS-1 併用療法を施行した。投与スケジュールは,day1, 8,15 にTXL 60mg/m2 を静脈内投与,day1 〜5, day8 〜12, day15 〜19 にTS-1 120mg/day の経口投与を1 クールとし, 5 週間ごとに施行した。経過中,grade 1 の末梢神経障害を認めるのみで,その他重篤な副作用は認めなかった。治療効果としては1 クール終了後より腹水の減少を認め腹部膨満感が改善し,2 クール目以降は通院による治療が可能になった。6 か月経過後に腹水の増加および出血傾向がみられ治療を変更した。最終効果判定は1 クール終了後より縮小した病巣は4 クール終了後でも著明な縮小および平坦化を認め,効果判定はPR であった。TXL ・TS-1 併用療法は腹膜播種を有する胃癌症例に対し,治療効果およびQOL の面から有望な治療法として期待される。 -
肝動脈化学塞栓術と肝動注化学療法により2 年6 か月生存中Vp3 Vv2 HCC の1 例
32巻5号(2005);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。肝炎ウイルスマーカーは陰性であった。CT 画像上,肝臓内の右門脈一次分枝(Vp3 ),右・中肝静脈本幹内(Vv2 )に脈管侵襲を有した腫瘍径17cm 大の肝細胞癌(HCC )を認めた。腫瘍マーカーはAFP 値6,919ng/ml,PIVKA-II値91,700mAU/ml であった。2002 年3 月に,このVp3 Vv2 HCC に対して側副血行路を含む合計3 回の肝動脈化学塞栓術(TACE )を施行した。TACE 後引き続き同年5 月より,5-FU とCDDP を用いたlow-dose FP 肝動注化学療法を施行した。初回TACE 施行2 年6 か月後の2004 年9 月現在,画像および腫瘍マーカー上,HCC は消失し生存中である。 -
原発特定が不可能であった転移性膵内分泌腫瘍の1 剖検例
32巻5号(2005);View Description Hide Description40 歳の男性が右頬部腫脹を訴え,初診時の診断にて頭頸部領域のameloblastoma もしくは未分化,低分化癌とされ,cisplatin/docetaxel (CDDP 75mg/m2, TXT 80mg/m2 )を2 コース施行してPR となったが後に膵腫瘤を認め,carbo‐platin/paclitaxel (CBDCA AUC =6, TXL 200mg/m2 )2 コースの治療により再びPR となった。さらに後にPD となり,死亡したが剖検にて転移性膵内分泌腫瘍と診断された。本症例は結果的に原発不明癌の様相を呈したが,原発不明癌には化学療法に反応するsub-group が存在する。本症例のような低分化型神経内分泌腫瘍では化学療法感受性が高いとされ,初診時の病理学的診断をより厳密にすることで化学療法の感受性,予後の予測が明確になる可能性があった。 -
軽微な脱毛のみで化学療法,内分泌療法が奏効した進行乳癌の1 例
32巻5号(2005);View Description Hide Description症例は55 歳,女性。左頸部リンパ節転移を認めるT4c, N3, M1 の高度進行乳癌に対し,化学・内分泌療法を行い軽微な脱毛のみでpartial response (PR )を得ることができた。レジメンはCTF (CPA 100mg/body/day 1 〜14, THP 30mg/body/day 1,8, 5-FU 750mg/body/day 1,8 )に,tamoxifen (20mg/body )連日投与を行った。投与期間は4 週を1コースとし,4 コース施行した。通常,CAF (CEF )を3 コース行えば脱毛はgrade 3 (完全脱毛)を来すが本レジメン(CTF )ではgrade1 であった。女性の頭髪脱毛に対する拒否感は強く,脱毛の程度はQOL に強く影響するように思われる。本治療regimen は精神的なQOL 維持の観点からも意義があると考えられる。今回は1 例の報告であるが,さらに症例を重ねることで再発進行乳癌に対する有効な治療法の一つに成り得ると考える。 -
局所進行乳癌に対するDocetaxel 同時併用放射線治療の効果について
32巻5号(2005);View Description Hide Description進行乳癌に対してdocetaxel (20mg/m2 )の毎週投与と66 〜70Gy 放射線治療を同時併用した2 例について報告する。2 例はいずれもT 4 症例であったが局所は2 例ともCR となり,重篤な有害事象は認めなかった。1 例においては局所の長期制御が得られ,生存延長にも寄与したと考える。 -
5 ′-Deoxy-5-Fluorouridine (5 ′-DFUR),Medroxyprogesterone Acetate (MPA),Cyclophosphamide (CPA)併用療法(DMpC 療法)が奏効した進行乳癌の2 例
32巻5号(2005);View Description Hide Description症例は多発性骨転移を伴う未治療の進行乳癌の2 例。first-line therapy として経口治療薬であるDMpC 療法(doxi‐fluridine, medroxyprogesterone, cyclophosphamide )を開始した。2 例とも1 か月後から腫瘍の縮小と腫瘍マーカーの減少がみられた。5 か月後と10 か月後の現在,2 例ともPR である。副作用は1 例にのみgrade 2 の白血球減少がみられたのみである。DMpC 療法は簡便で安全性に優れた高い抗腫瘍効果をもつ経口治療薬であり,長期間,外来での治療が可能である。 -
UFT,Cyclophosphamide, Medroxyprogesterone Acetate 療法が著効を示したAnthracycline,Taxane 耐性乳癌多発肝転移の1 例
32巻5号(2005);View Description Hide Description患者は53 歳,女性。皮膚の発赤,腫脹を伴うT 4, N 2, M 1 (肝,肺)Stage IVの乳癌に対しEC 療法を6 サイクル施行,原発巣,肝,肺の転移巣の縮小を認めPR と判定した。局所コントロールの目的で両胸筋温存乳房切除術を施行した。scirrhous carcinoma n 2 (24/26),ER (−),PgR (−),HER 2/neu (−)であった。術後すぐに腫瘍マーカーの再上昇がみられ,paclitaxel のweekly 投与(80mg/m2 )を開始した。しかし,マーカーの上昇は続くためdocetaxel のweekly 投与(35mg/m2 )に変更した。腫瘍マーカーはやや低下を示したが肝機能の急速な悪化がみられたため化学療法を中止した。肝機能の改善はみられず,腹部CT では肝全体が無数の腫瘍によって占められていた。UFT, cyclophosphamide (CPA),medroxyprogesterone acetate (MPA )経口投与のレジメを開始した。投与3 か月後肝機能は正常化し,6 か月後のCT では肝転移巣は完全に消失した。しかし腫瘍マーカー正常化せず,乳房切除創周囲に再発がみられたため,6 サイクル(36 週)で中止した。
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短報
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連載講座
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- 【センチネルリンパ節の研究最前線】
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胃癌Sentinel Node Navigation Surgery 多施設共同研究の動向
32巻5号(2005);View Description Hide Descriptionsentinel node (SN )理論の妥当性および臨床的有用性については,消化器癌領域でも大きな期待が寄せられている。欧米では大腸癌に対する正確な病期診断を目的として多施設共同研究が進行中である。一方,早期胃癌の発見頻度が高い本邦では,SN 理論を用いて早期胃癌縮小手術の適応を拡大すべく臨床研究が進行している。胃癌については,最近5 年間で単施設研究としては比較的良好な成績が数多く報告されているが,今後の臨床応用に向けて多施設共同研究によるSN 理論そのものの検証,標準手技の確立が急務となっている。現在,JCOG 胃癌外科グループとSNNS 研究会・厚生労働省がん研究助成金研究班がそれぞれ多施設共同研究を遂行している。JCOG 胃癌外科グループでは,特殊な設備を必要とせず,日常臨床に応用しやすい漿膜下色素注入法を採用しており,多施設共同研究にて良好な成績が得られた場合,開腹手術においては広く普及することが期待される。SNNS 研究会・厚生労働省がん研究助成金研究班では,将来の腹腔鏡下低侵襲手術への応用を視野に入れ,色素とRI を併用し,内視鏡的粘膜下層注入法を採用している。いずれの多施設共同試験も今後の胃癌領域への臨床応用の方向性を見極める上で極めて重要な研究である。
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連載口座
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- 【臨床検査,診断に用いる腫瘍マーカー】
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小児がんの腫瘍マーカー
32巻5号(2005);View Description Hide Description腫瘍マーカーとは,がん細胞自身あるいはがんに対する生体の反応によって産生され,それを組織や細胞,血液,体液中から検出することが診断と治療経過の評価に有用な物質あるいは検査を指す。小児がんにおいては,従来の腫瘍マーカーに加えて腫瘍細胞の遺伝子異常の検討が広く行われており,これらを診断の確定あるいは予後を予測する因子としてだけではなく,治療効果を判定する指標としても用いられつつある。このような遺伝子の検討を広い意味での腫瘍マーカーとしてとらえることも可能である。
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特別寄稿
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MAB 療法の再評価と内分泌療法の進展−Bicalutamide を用いたMAB 療法と新たな内分泌療法への期待−
32巻5号(2005);View Description Hide Description近年,本邦においてもPSA 検査の普及などにより前立腺癌の早期発見例が急増し,早期癌患者に対する治療の重要性が高まっている。一般に限局癌は前立腺全摘除術(全摘術)や放射線療法によって治癒可能とされてきたが,限局癌であってもPSA 値やGleason スコアが高い症例,あるいは局所進行例では,根治的治療を行っても再発を来しやすく,治療成績を向上させるために他治療との併用が検討されてきた。内分泌療法は,最近の臨床試験で全摘術,放射線療法のアジュバント療法に用いることにより,このような高リスク例に対して延命効果が期待できること,また,bicalutamide を用いた大規模試験(early pros‐tate cancer (EPC )プログラム)ではアジュバント療法や初期治療での有効性が示されるなど,早期癌治療における役割が増している。一方,その有効性について多くの議論がなされてきた進行前立腺癌に対するmaximal androgen blockade (MAB )療法に関しても,本稿で紹介されているre-analysis で,bicalutamide を併用することにより,他の非ステロイド性抗アンドロゲン剤を併用した場合と比べて死亡リスクの減少効果が大きいことが示されている。本ワークショップでは,カナダ,英国,米国,日本の前立腺癌専門医が集まり,こうした観点から,早期例に対する根治的治療の在り方,内分泌療法の意義と有効性,従来のMAB 療法の試験法や評価法の問題点,MAB 療法に関する新たな知見,今後の課題や展望などが議論された。加えて,ホルモン抵抗性前立腺癌や抗アンドロゲン作用をもつ新規の物質に関する話題が紹介された。本稿では,ワークショップにおける各参加者の発表と討論の概要を紹介する。
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用語解説
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癌にまつわる症候群:Postpolypectomy Syndrome(ポリペクトミー後症候群)、ARDS (acute respiratony distress syndrome:急性呼吸促迫症候群)
32巻5号(2005);View Description Hide Description -
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Journal Club
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