Volume 32,
Issue 10,
2005
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総説
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癌と化学療法 32巻10号, 1377-1383 (2005);
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麻薬性鎮痛薬であるモルヒネは優れた鎮痛作用をもつ反面,長期間の使用により強度の依存を形成する。そのため患者ならびにその家族および医療者がモルヒネの有する依存形成能を懸念し,モルヒネの使用を躊躇するケースも少なくない。一方,痛みがある状態では,モルヒネの依存はほとんど問題とならないことが幅広い臨床経験から明らかにされ,そのことは世界保健機関の「がんの痛みからの解放」にも明記されている。しかしながら,こうした現象の機序についてはほとんど明確にされていないのが現状である。われわれは,慢性疼痛下におけるモルヒネの依存性について基礎科学的に検討し,慢性疼痛動物ではモルヒネをはじめとするオピオイドの依存性が抑制されることを明らかにした。そこで本稿では,なぜ痛みがある時にはオピオイドの精神依存形成が抑制されるのかについて概説する。さらに,モルヒネの主要な副作用である便秘や悪心・嘔吐について,フェンタニルやオキシコドンと比較検討した結果も併せて概説する。
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特集
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腹膜転移の治療
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癌と化学療法 32巻10号, 1384-1388 (2005);
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1984年から2003年までに当教室に入院した4型スキルス胃癌198例について,臨床病理学的に検討を行った。切除例は139例(72%)で,非切除の主因は癌性腹水であった。切除例でも48.2%に腹膜播種を伴っており,5年生存率は切除例全体で12%, 非切除例は0%であった。非切除例で1年生存を得たのは,TS-1とpaclitaxelを併用した1例のみであった。腹膜播種を伴った6例にcisplatinとetoposideの腹腔内投与を行い,2例で4週後に腹膜播種が消失したため根治術を行った。また,癌性腹水と右水腎症を伴った症例にTS-1を投与後根治術が可能となった症例を経験した。非切除例は,従来の化学療法を行ってもいまだ予後不良であり,予後向上にはTS-1, etoposide, taxane系といった新規抗癌剤による化学療法が必要である。また,自己腫瘍抗原活性化リンパ球を用いた特異的な免疫細胞療法は化学療法と同様に新しい補助療法になるものと思われた。
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癌と化学療法 32巻10号, 1389-1392 (2005);
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進行胃癌において腹膜播種再発は重要な課題である。術中腹腔細胞診は,早期に腹膜播種を発見できる有効な検査法であるものの,その意義については様々な論議があり一定した見解を得ていない。今回,当科における腹腔細胞診陽性例の臨床病理学的特徴および予後を検討した。その結果,腹膜播種および腹腔細胞診陽性例をP 0CY 1, P 1CY 0, P 1CY 1,P 2P 3(胃癌取扱い規約12版によるP 1, P 2, P 3に従った)の4群に分け検討したところ,予後について有意ではないが,P 1CY 1とP 2P 3はP 0CY 1とP 1CY 0に比べ予後不良の傾向を認めた。最近の国内外の報告と併せ,腹腔細胞診陽性例の臨床的意義とその治療法を述べる。さらに,腹腔洗浄水中の腫瘍マーカーや遺伝子診断を用いた潜在的腹膜播種検出の有用性につき概説する。
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癌と化学療法 32巻10号, 1393-1397 (2005);
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進行胃癌では腹膜転移として再発する頻度が高く,その予測と治療について検討した。洗浄細胞診を施行した457例では,肉眼的播種を認めた(P 1)59例中の36例(61%)で陽性となった。またP 0でも13例が陽性であった。陽性例はより予後が不良であったが,まだ差を認めていない。新規抗癌剤の登場により,その治療の主体は化学療法になりつつある。TS-1, paclitaxelを逐次投与した10例の生存期間中央値は17か月であり,癌性腹膜炎でも効果的であり,予後の改善が期待される。また消化管の通過障害のため23例で手術を施行し,21例で食事が可能となった。術後生存期間の中央値は7か月であり,予後の改善に有用であった。細胞診の感度の向上,化学療法,手術の標準化が今後の課題である。
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癌と化学療法 32巻10号, 1398-1403 (2005);
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限局した腹膜転移症例では,根治切除術が標準的治療と考えられている。一方,根治切除できない腹膜転移に対しては化学療法が主体となるが,減量手術を先行すべきか,化学療法の標準regimenは何か,いまだ解明されていない。減量手術のMST は4〜13か月,化学療法では5〜6か月と報告されているが,対象が異なっている。自験例P 2P 3症例のMST はCT 所見あり5か月,なし7.7か月と,化学療法の対象となるようなCT 所見を有する場合の予後は短い。一方,減量手術のmorbidityとmortalityは高く,それぞれ12〜44%, 3〜14%と報告されている。原発巣に伴う出血や狭窄がある場合には,緩和手術の適応となる。化学療法のregimenとしては5-FU,MTX/5-FU, 低分化型腺癌に有効で腹腔内移行も良好なTS-1やpaclitaxel, これらのcombinationなどが候補と考えられるが,今後適切な臨床試験が必要である。治療方針決定のためには,腹腔鏡または試験開腹により腹膜転移の重症度を評価することが重要である。
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癌と化学療法 32巻10号, 1404-1409 (2005);
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腹膜播種は消化器癌の非治癒因子の一つであり,従来から様々な治療が施行されているが,標準的治療は確立されていない。われわれは以前より胃癌の腹膜播種に対して,腹腔内温熱化学療法(CHPP)を行ってきた。肝転移の伴わないスキルス胃癌ではCHPP 施行例が非施行例より有意に予後が良好であった。腹膜播種以外の因子は肉眼的治癒切除が可能なスキルス胃癌のみに特にその効果を認めた。またP 1-2胃癌ではCHPP 施行例のほうが予後良好であったのに対し,P 3胃癌ではその効果は認めず,新たな治療法が必要と考えられた。一方,以前からCDDP をはじめとする多数の抗癌剤の腹腔内投与が行われてきた。そのなかでも新規抗癌剤であるtaxane系抗癌剤の腹腔内投与は高度腹膜播種陽性胃癌症例に対して有効であり,P 3症例でも局所制御が可能である。腹膜播種に対して非常に有望な治療法と考えられ,本療法の第 I /II 相試験が行われることが望まれる。
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原著
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癌と化学療法 32巻10号, 1411-1414 (2005);
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口腔扁平上皮癌患者に対し,neo-adjuvant chemotherapy(NAC)としてdocetaxel(TXT)とnedaplatin(CDGP)の併用化学療法を施行し,その有用性と安全性について検討した。症例は男性4例,女性4例の計8例で,原発部位は下顎歯肉2例,舌3例,頬粘膜2例,上顎歯肉1例であった。投与法は一括投与とし,day1にTXT 60mg/m2およびCDGP 70mg/m2を投与し,4週間の休薬期間をもって1コースとした。奏効率は1コース施行後で62.5%, CR 率が25.0%, 2コース施行後は奏効率が100.0%, CR 率が66.7%であった。病理組織学的効果判定では大星,下里らの分類で,GradeII A 4例,GradeII B 2例,GradeIV 2例であった。Grade 3以上の副作用は,白血球減少と好中球減少にみられたが,granulocytecolony stimulating factor(G-CSF)の投与により速やかに回復した。以上より,本療法は重篤な副作用もみられず,高い奏効率が得られるため,NAC として有用な方法であると考えられた。
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癌と化学療法 32巻10号, 1415-1419 (2005);
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toremifene(TOR)はSERM の一つであり,閉経後乳癌における治療効果はtamoxifen(TAM)と同等である。TORは高用量を用いることにより,TAM 耐性乳癌にも効果が認められている。今回,当院において閉経後,進行・再発乳癌に対する高用量TOR の有用性と安全性をレトロスペクティブに検討した。進行・再発10例に対し,TOR 120mg/日を投与した。観察期間(中央値)は38か月であった。多くは二次治療以降の投与であった。抗腫瘍効果は奏効3例(30%), clinical benefit(CB)は7例(70%)であり, TTP(中央値)は9か月,OS(中央値)は21.5か月であった。高用量TOR ではホルモン受容体陰性例,TAM 耐性,AI耐性にもCB が認められた。有害事象は8例に認めたが,いずれも軽度であった。進行・再発乳癌における高用量TOR の位置付けに関する十分なエビデンスはないが,TAM 耐性,AI 耐性後にも臨床効果が得られる症例があり,現時点では進行・再発乳癌の三次治療としての有用性が示唆される。
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癌と化学療法 32巻10号, 1421-1426 (2005);
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当院における切除不能進行胃癌23例を対象としたfirst-lineで施行したTS-1単独療法の治療効果と安全性について検討を行ったので報告する。TS-1の投与法は1日80〜120mg(分2)を28日間投与し,14日間休薬を1クールとした。抗腫瘍効果はPR 9例,NC 7例,PD 5例,NE 2例で奏効率は39.1%(95%信頼区間:19.7〜61.5%)であった。部位別では,原発巣43.5%(10/23), リンパ節33.3%(3/9), 肝転移巣16.7%(1/6)で,腹水例は8例中著効が1例,有効が3例に認められた。年齢別(70歳以上/70歳未満), 組織型別(分化型/未分化型)では有意差を認めなかった。1年生存率は32.8%,50%生存期間は295日であった。副作用は,白血球減少が7例(30.4%)と最も多く,次いでヘモグロビン減少,食欲不振,肝機能異常などであった。しかし,多くはgrade2までの軽微なものであり,grade3以上の発現は白血球減少2例(8.7%),肝機能異常2例(8.7%)と低率であった。外来フォロー率(外来期間/全治療期間)は68.1%と高率を示し,first-lineでのTS-1単独療法は,効果はもちろんだがQOL の維持からも有用であると考えられた。
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癌と化学療法 32巻10号, 1427-1430 (2005);
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5-FU 系抗癌剤抵抗性の進行・再発胃癌23例を対象とし,weekly paclitaxel療法の効果,安全性を検討した。投与法はshort premedication後にpaclitaxel 80mg/m2を週1回3週間投与,1週間休薬を1クールとした。1クールから28クール,平均6.4クールの投与が行われ,測定可能病変を有する10例における奏効率は40.0%であった。測定可能病変のない13例においても,注腸造影上の壁変形所見の改善を3例に,腹部CT 上の腹水の減少を1例に,骨シンチグラム上のuptakeの低下と血液検査上のDIC 所見の改善を1例に認めた。全生存期間の中央値は258日,無増悪生存期間の中央値は140日であった。有害事象としては,grade 3以上の白血球減少,好中球減少を13.0%に認めた。消化器症状をはじめとする非血液毒性は軽微であった。本治療は5-FU 系抗癌剤抵抗性の進行・再発胃癌に対する治療として有効かつ安全性の高い投与法であると考えられた。
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癌と化学療法 32巻10号, 1431-1436 (2005);
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肝細胞癌患者を対象に,肝動脈塞栓療法(TAE)における多孔性ゼラチン粒(無菌ゼラチン塞栓材,YM 670, ジェルパート粒)の臨床試験を実施し,有効性(塞栓性,抗腫瘍効果,再疎通性および操作性)と安全性(忍容性)を検討した。肝細胞癌患者63例に多孔性ゼラチン粒と非イオン性造影剤の混和液を,カテーテルを経由し,固有肝動脈末梢に注入した。全例(塞栓性100%)で良好な肝動脈塞栓が確認され,腫瘍壊死効果(35/62例,56.5%)が認められた。また,操作性についても全例で「極めて取り扱いやすい」または「取り扱いやすい」との評価を得た。TAE との関連性が否定されない有害事象の発現率は71.4%, 臨床検査値異常は98.4%と高率を示した。主な副作用は発熱,腹痛,嘔気,血圧上昇であり,また臨床検査値異常はAST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇,コリンエステラーゼ低下,LDH 上昇,総ビリルビン上昇などの肝機能異常であった。しかし,これらはいづれも,一過性でありTAE の手技自体に起因するものと考えられ,塞栓物質であるYM 670との関連性が否定されない有害事象は認められなかった。また,全例で「使用に適する」との忍容性(安全性)の評価を得た。
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癌と化学療法 32巻10号, 1437-1442 (2005);
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ヒト由来子宮体癌細胞株に対するdocetaxel(DOC)の抗腫瘍活性を,細胞培養系および腫瘍を皮下移植したヌードマウスを用いて検討した。分化度の異なるヒト子宮体癌細胞4株(AN3CA, KLE, HEC-1-A, HEC-1-B)を用いたin vitro細胞増殖阻害試験において,DOC は未分化,低分化,中分化型いずれの細胞株に対しても濃度に依存した増殖阻害作用を示し,72時間曝露における50%阻害濃度(IC50)は2.48〜82.40ng/ml であった。得られたIC50値の範囲は,子宮体癌に対する臨床用量70mg/m2投与時の最高血漿中濃度平均値2.27μg/ml の約1/900〜1/30であり,臨床血漿中濃度として到達可能な濃度であった。また,抗腫瘍活性をIC50値で比較すると,DOC の活性はpaclitaxel(PTX)とほぼ同等で,doxorubicin(DXR), fluorouracil(5-FU), cisplatin(CDDP)より強力であった。ヌードマウスに移植したヒト子宮体癌細胞株AN3CA に対して,DOC は高い抗腫瘍効果を示し,最大耐量(以下MTD) 33mg/kg/日(6日ごとに3回,静脈内投与)投与群のマウス全例に腫瘍消失生存が認められた(実験終了時,腫瘍移植後62日目の判定)。MTD 投与群における抗腫瘍効果は,すべての薬剤投与群(cyclophosphamide, mitomycin C, 5-FU, CDDP,DXR)のなかで最も高かった。MTD 未満の2用量(20.5, 12.5mg/kg/日)においても,殺細胞効果を示した。以上の結果から,DOC はヒト子宮体癌細胞株に対して抗腫瘍効果を有することが明らかとなり,子宮体癌治療薬としての有用性が期待された。
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症例
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癌と化学療法 32巻10号, 1443-1445 (2005);
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症例は66歳,男性。腹部CT 検査上左胃動脈幹リンパ節の著明な腫大と膵臓,脾臓浸潤が認められたため根治手術は困難と判断し,TS-1とpaclitaxel(PTX)による術前化学療法を施行した。TS-1 100mg/day(2週間投薬,1週間休薬)と,PTX 75mg/body(day1, 8)を1クールとし,計2クール施行した。2クール終了後のCT 検査では,膵臓と脾臓の境界が比較的明瞭となり,リンパ節も著明に縮小していた。腫瘍マーカーも著明な低下(CEA 92.5→ 12.2ng/ml, CA 19-9 2,739→ 193U/ml)が認められたため,胃全摘術,Roux-en Y 再建,1群+No.7, No.8 a の郭清を行った。術中所見として大弯リンパ節右群と左胃動脈幹リンパ節は腫大,硬結を認めたが白色に変性しており,病理組織検査の結果壊死したリンパ節を認めたものの,悪性所見は認められなかった。術後同化学療法を3クール施行し,手術後8か月経過しているがCT 検査,腫瘍マーカー上明らかに再発を認める所見はない。計5クールに及ぶ化学療法の間副作用はまったく出現せず,TS-1/PTX 療法は通院で施行可能な術前化学療法として有効であった。
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癌と化学療法 32巻10号, 1447-1451 (2005);
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進行・再発胃癌症例の治療にTS-1が導入され,単独投与のみならず様々な抗癌剤との併用により高い抗腫瘍効果が報告されている。今回われわれは,術前に膵浸潤が疑われた46歳,男性の進行胃癌患者にTS-1とlow-dose CDDP の併用療法を行い,病理組織学的所見は癌細胞の退化と線維化を示し,その効果がGrade3と判定された1例を経験した。治療経過中の有害事象はほとんどみられず,本法は進行胃癌症例に対して極めて有効な治療法と考えられたので報告した。
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癌と化学療法 32巻10号, 1453-1456 (2005);
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症例は66歳,女性。肝転移および膵頭部への浸潤を伴う進行胃癌で根治的切除は困難と判断し,幽門狭窄を認めたため胃空腸吻合術を施行した。術後13日目よりTS-1 100mg/body/dayを21日経口投与し,8日目にCDDP 90mg/body/dayを点滴静注する3週投与2週休薬を1クールとした治療を開始したところ,7クールの施行が可能であった。TS-1/CDDP 療法の開始とともに全身状態は改善し,腫瘍マーカーも低下した。しかし,4クール目より徐々に腹水の貯留を認めるようになり,効果が低下してきたため腹水のコントロールを行いつつ,TS-1 100mg/body/dayを14日経口投与14日休薬し,第1,15日目にPTX 90mg/body/dayを点滴静注するregimenに変更した。regimenの変更により腹水は著明に減少し,6クールを施行し得た。しかし副作用として徐々に末梢神経障害が増強してきたため,併用薬剤をCPT-11に変更したところ,奏効することなく死亡した。今回われわれは,進行胃癌患者にTS-1をkey drug とした他剤併用療法を施行することにより,1年5か月の長期生存およびQOL の改善を得られた1例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 32巻10号, 1457-1459 (2005);
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症例は79歳,女性。肝外側区域に直接浸潤を伴う胃癌に対し他院にて胃幽門側切除術を施行された。術後無治療にて当科受診。TS-1/low-dose CDDP 療法(TS-1 100mg/body/day, CDDP 10mg/body/weekly:3週投薬,1週休薬)を開始した。4コース終了後CR となった。その後も治療を継続し6コース終了時点でCR を維持している。PS 0であり,有害事象はみられていない。
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癌と化学療法 32巻10号, 1461-1463 (2005);
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高度進行胃癌2例に対してTS-1/CDDP 併用療法を施行,著効を奏した2症例を経験した。1例はNAC 2コース後Virchowリンパ節,傍大動脈リンパ節腫大が消失,根治切除が可能となった。他の1例は腹膜播種を伴う5型腫瘍で化学療法4コースで原発潰瘍はほぼ完全消失,これまでに計14コース施行,腹膜播種はNC で1年6か月経過している。TS-1/CDDP の併用療法では転移部位にかかわらず有効例が報告されており,本2例も著効例として報告した。
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癌と化学療法 32巻10号, 1465-1468 (2005);
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経口抗癌剤であるTS-1が進行・再発胃癌に臨床適応となって以来,単独療法のみならず様々な併用療法が試みられ,単独投与以上の高い抗腫瘍効果が報告されている。今回われわれは,多発肝転移,リンパ節転移による閉塞性黄疸を有する進行胃癌に対して胆道ドレナージ施行後にTS-1/CPT-11併用療法を開始し,原発巣,転移巣ともに著明に縮小した症例を経験した。治療中の有害事象はgrade 1の倦怠感とgrade 2の好中球減少のみであった。肝転移,リンパ節転移による肝機能障害閉塞性黄疸を有する進行胃癌において,ドレナージ施行後であれば,TS-1/CPT-11併用療法は,極めて有効な治療法となり得ると考えられた。
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癌と化学療法 32巻10号, 1469-1472 (2005);
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症例は68歳,男性のMUL に及ぶBorrmann 3型胃癌で,D 3郭清を伴う胃全摘術施行した。右胃動脈が腫瘍塞栓のためその根部断端に腫瘍が遺残となり,また術中エコー検索にて肝転移疑いがあったため根治度C となった。術中,mitomycin C 20mg をBeriplast に溶解して動脈断端に塗布し,術後,固有肝動脈より動注にてadriamycin 20g 投与,methotrexate+5-FU 交代療法を行い,UFT-E 経口投与を行ったが,術後6か月目に画像上,肝転移像を認めた。肝動脈カニュレーションの上,9か月目より5-FU 250mg/dayの7日間持続投与,7日間休薬を2年3か月施行した。術後5年までdoxifluridine(5′-DFUR), PSK 経口投与を行い肝転移が消失し,術後7年3か月の現在化学療法を行うことなく健在している。
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癌と化学療法 32巻10号, 1473-1475 (2005);
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胃穿孔による急性腹膜炎で発症し,胃小細胞癌の肝転移および膵浸潤の診断でCPT-11/CDDP 療法を行い,partial remission(PR)を得られた症例を経験したので報告する。症例は60歳の男性で,心窩部痛のため救急外来を受診。腹部CTでfree airを認めることから,消化管穿孔による急性腹膜炎の診断で緊急手術を行った。胃穿孔に対し大網充填術を施行。肝左葉表面に小結節を認め生検したところ,小細胞癌の転移であった。術後の上部消化管内視鏡で胃腫瘍が存在し,生検結果から胃原発の小細胞癌の診断となった。術中に膵浸潤と肝転移を認めたことから化学療法を行うこととし,術後12病日よりFP 療法を1コース行った。腹部CT で肝転移の増大を認めたため,CPT-11/CDDP 療法に変更し,腫瘍および肝転移の縮小を認めたことからPR と判断し,第71病日に退院した。
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癌と化学療法 32巻10号, 1477-1480 (2005);
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症例は78歳,女性。C 型肝炎からの肝細胞癌の発症でepirubicinによる動脈塞栓術やたび重なるエタノール注入療法にもかかわらず,腫瘍の増大が続き門脈本幹に腫瘍塞栓が出現したため,CDDP を併用したDSM とSAP-MS による動脈塞栓術を計3回行った。その結果,肝内腫瘍,門脈内腫瘍栓がともに消失し腫瘍マーカーの正常化を得た症例を経験した。問題となる副作用はなく肝機能障害も生じず,治療開始後1年半で再発なく生存中である。予後不良な門脈塞栓を伴う多発性の進行肝細胞癌に対してCDDP を用いたDSM とSAP-MS による動脈塞栓術は肝細胞癌患者の予後改善に寄与する可能性があると考える。
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癌と化学療法 32巻10号, 1481-1484 (2005);
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症例:54歳,女性。多発性肝肺転移を伴う上行結腸癌に対して,右半結腸切除と肝動注リザーバー挿入術を施行。術後7日目より肝転移巣増大に伴う悪心・嘔吐を認め,これに対してWHF 療法3クールを先行施行し経口摂取可能となった。その後術後3か月ごろより骨転移も認めるようになったが,肝動注(HAI)+UFT+CPT-11およびUFT/LV+CPT-11化学療法は患者のQOL 維持に効果的であり,術後8か月になる現在も外来にて化学療法継続中である。肝転移巣による消化器症状に対してもWHF 療法は有効であった。
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癌と化学療法 32巻10号, 1485-1487 (2005);
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gemcitabine(GEM)が無効となった局所進行膵癌に対してTS-1を投与した。症例は56歳,男性。StageIII 膵頭部癌による閉塞性黄疸にて入院となった。PTCD, ステント留置にて減黄後,GEM 1,000mg/m2にて化学療法を開始した。腫瘍はいったん縮小したが,8か月後には増大が確認された。その後ステント閉塞による胆管炎を併発したため,再度PTCD,ステント留置にて減黄後,TS-1 100mg/dayの単独投与を行ったところ,再び抗腫瘍効果を得ることができた。TS-1は進行膵癌に対するsecond-lineの薬剤として有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 32巻10号, 1489-1492 (2005);
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肝転移を伴う膵体尾部癌に対し,放射線治療併用のgemcitabine(GEM)肝動注+全身投与が有効であった2例を経験した。症例1:61歳,男性。原発巣に対し外照射(39.6Gy)+GEM 250mg/m2を週1回4週間全身投与し終了後肝動脈リザーバーを留置して肝動注200mg/body+全身投与1,000mg/bodyを週1回3週投与1週休薬で行った。肝転移は縮小したが肺転移のため開始後10か月で死亡した。症例2:72歳,女性。原発巣に外照射(41.4Gy)+GEM 400mg/bodyを肝動脈リザーバーより週1回5週間動注し,終了後肝動注400mg/body+全身投与800mg/bodyを隔週で行った。肝転移,原発巣とも縮小したが開始後8か月で増大に転じたため5-FU に変更し,開始後1年現在治療継続中である。放射線治療併用のGEM 肝動注+全身投与法は副作用も少なく肝転移を伴う膵癌に対する有効な治療法となる可能性がある。
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連載講座
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【外来化学療法】
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癌と化学療法 32巻10号, 1494-1495 (2005);
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癌と化学療法 32巻10号, 1496-1497 (2005);
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特別寄稿
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癌と化学療法 32巻10号, 1499-1506 (2005);
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第12回Oncology Forum では,本邦における癌予防の進展と今後の戦略について検討がなされた。国立がんセンターは,最も一般的な六つの癌種(胃癌,肺癌,肝癌,大腸癌,乳癌,子宮癌)に主眼をおいた,がん予防・検診研究センターを開設した。本検診プログラムによる累積発見率は3.3%と高いが,これは対象者を選択しているためとも考えられる。前立腺癌については検診と化学予防が検討されているが,問題はいかにこれらを広く普及させるかということに集約される。乳癌については,ハイリスクの受診者を特定することが可能である。肥満および家族歴は特に重要である。大腸癌については様々な食生活を評価する研究が行われているが,一般化できる段階ではなく,また一般的な検診や予防策を実施するための基盤がない。予防のための薬物療法は,極めて安全であることが求められ,また研究のために長期間を要することから困難である。総じていうと,癌予防はいまだ開発段階にある。癌予防の推進には新たな取り組みが必要であり,政府レベルでの新たな基盤整備が求められるであろう。
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癌と化学療法 32巻10号, 1507-1520 (2005);
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高齢患者が多く,他癌に比べて比較的進行が遅い前立腺癌においては,患者の期待余命や再発・進行リスクを勘案しながら,早期例に対しても根治的治療(前立腺全摘除術,放射線治療)以外に,保存的治療(主にホルモン療法)のみで治療することが少なくない。特に本邦においては,早期例,進行例ともホルモン療法単独で治療開始する患者が多く,治療効果の増強を期待してLH-RH アゴニストなどによる去勢治療と抗アンドロゲン剤を併用したmaximal androgen blockade(MAB)療法が広く施行されている。MAB 療法の有用性については,これまで主に転移例を対象とした多くの無作為化比較試験で検討されてきたが,非ステロイド性抗アンドロゲン剤としてflutamideを用いた場合は一部の試験で有効性を認めつつも,その効果が大きいとはいえなかった。しかしながら,本邦で実施されている病期C, D を対象としたbicalutamideを用いたMAB 療法の第III相試験では,LH-RH アゴニスト単独群に比べてMAB 療法群の成績が優れ,病期C の患者においてtime to progression(TTP)が大きく改善するなど,MAB 療法の有用性や適応に関する新しい知見が得られつつある。本座談会では,こうした現況および米国と日本における前立腺癌治療の考え方を踏まえながら,MAB 療法のもつ真の有用性,適応の考え方,早期例に対するホルモン療法の可能性,今後のMAB 療法の在り方などに関する広範なディスカッションがなされた。
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用語解説
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Source:
癌と化学療法 32巻10号, 1488-1488 (2005);
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癌と化学療法 32巻10号, 1493-1493 (2005);
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癌と化学療法 32巻10号, 1498-1498 (2005);
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癌と化学療法 32巻10号, 1521-1521 (2005);
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Journal Club
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Source:
癌と化学療法 32巻10号, 1522-1522 (2005);
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Source:
癌と化学療法 32巻10号, 1523-1523 (2005);
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