癌と化学療法
Volume 32, Issue 11, 2005
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特集【第26回癌免疫外科研究会,第27回日本癌局所療法研究会】
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大腸癌患者における末梢血モノサイトのグルタチオン含量と腫瘍辺縁間質との関連
32巻11号(2005);View Description Hide Description背景と目的:癌免疫療法を奏効させるために, 腫瘍辺縁間質(ストローマ)の発達程度を予測することは重要である。われわれは, 癌局所レドックス状態を類推し得るモノサイト(Mo)中のグルタチオン(GSH)含量に着目, 末梢血Moから癌局所のストローマ発達程度を予測し得る可能性を検討した。対象と方法:大腸癌患者21例に対し術前採血を行い, Moを分離。蛍光染色後, 蛍光顕微鏡で観察。強, 中, 弱陽性に分類し各細胞数を数えGSH スコアを算定した。術後, 摘出病理標本を検鏡, 腫瘍最深部付近, 200倍拡1視野当たりのストローマの表面積(%)を3視野で測定し, ストローマスコアを算定。結果:GSH スコアの平均値は290.2。ストローマスコアの平均値は60.8。両スコアの間には相関関係(相関係数=0.421, p<0.05)が認められた。結論:MoGSH 含量の測定はストローマ形成を予測する因子たる可能性がある。 -
固形癌に対するアンチセンスBcl-2 の抗癌剤効果増強と免疫修飾作用
32巻11号(2005);View Description Hide Description背景・目的:Bcl-2蛋白はアポトーシス抵抗因子であり, 抗癌剤耐性を誘導する。アンチセンス(AS)Bcl-2(Genasense)は米国で臨床試験が進行中であるが, その効果にはアンチセンス作用とCpG-motifによる免疫誘導の非アンチセンス効果が示唆されている。胃癌・乳癌細胞に対するAS ODNsによる抗癌剤効果増強作用, AS Bcl-2 の非アンチセンス効果について検討した。対象・方法:胃癌細胞MKN-45, 乳癌細胞BT-474, ZR-75-1, MDA-MB-231を用い, AS Bcl-2 はS-oligo, 18-mer, in vitro ではリポフェクチン法により24時間処理で行った。AS Bcl-2 の免疫誘導作用はCpG-motifのメチル化(MeODN)と比較した。抗腫瘍効果はMTT 法, in vivo はヌードマウス可移植性腫瘍を用いた。結果・考察:AS ODNsによるin vitro感受性増強はADM, CDDP, taxane系で認められ, MKN-45 3〜4倍, BT-474 8〜10倍, ZR-75-1 3〜7倍, MDA-MB-231 3〜6倍であった。Bax, Cleaved PARPの増加, Bcl-2, pAktの減少によるアポトーシス誘導を認めた。in vivo でもAS Bcl-2 併用による抗腫瘍効果増強が認められた。AS Bcl-2 処理により脾腫大, IL-12産生の増加が認められ, IFN-γの増加はみられなかった。摘出脾表面マーカー解析では, AS Bcl-2 により, CD80, CD83, CD86, CD27の増加が認められた。AS Bcl-2 の効果増強にはアンチセンス作用とpDC, B-cellを介した免疫修飾作用の関与が示唆された。AS Bcl-2 は胃癌・乳癌に対する有用なchemosensitizerである可能性が示唆された。 -
乳癌の担癌患者におけるIndoleamine 2, 3-Dioxygenase発現の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description乳癌におけるindoleamine 2, 3-dioxygenase(IDO)の免疫抑制への関与を検索した。癌部と非癌部の30症例の凍結標本60検体より, 定量化RT-PCR 法によってIDOの発現を検討した。また, 乳癌患者10例と健常人10例の末梢血より同様に定量化RT-PCR 法とHPLC 法によりIDOの発現を検討した。得られた情報を各症例の臨床病理学的因子および累積生存率と比較検討した。IDOはすべての症例の癌部と非癌部に発現していた。癌部におけるIDOの発現は, 非癌部よりも有意に増強していた。癌部におけるIDOの発現は進行癌で高値であった。immunosuppressive acidic protein(IAP)値とIDOの発現量には相関関係がみられた。IDO高発現群と低発現群の術後累積生存率には差を認めなかった。末梢血中におけるIDOの発現は, 健常人群に比べて乳癌の担癌患者群のほうが有意に発現量が高かった。乳癌の担癌患者において, IDOは局所と全身の免疫抑制に重要な役割を演じていると考えられた。 -
乳癌術後補助化学療法(FEC 療法)における免疫能および副作用の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description乳癌根治術後リンパ節転移陽性患者に対して, 最近多くの施設で外来治療で施行されているFEC 療法施行時の免疫機能に及ぼす影響, およびシイタケ菌糸体抽出物(LEM)併用の効果を検討した。方法:FEC 75療法(5-FU 500mg/m2, epirubicin75mg/m2, cyclophosphamide 500mg/m2, 21日毎投与)。2クール目にLEM 9g/day内服を併用した。結果:NK 細胞活性および白血球数はFEC 療法により7日目に有意に低下し, 21日目には回復した。LEM を併用すると7日目の低下はみられなかった。QOL 全体では本治療では低下しなかったが, 非投与群では身体状況に限ると7日目に有意に低下しており, その低下はLEM を併用することにより防止された。まとめ:FEC 75療法は免疫能には少なからず影響を及ぼしており, LEM の併用は免疫能およびQOL の低下防止に有用であると考えられた。 -
α-Galactosyl Ceramide反復投与によるNatural Killer T 細胞活性化への影響
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionα-galactosyl ceramide(α-GalCer)はnatural killer T 細胞(NKT 細胞)を活性化することにより抗腫瘍効果をもたらすことが知られており, 現在臨床試験が進行中である。今回われわれは, この糖脂質を頻回投与することにより, NKT 細胞の活性化に変化がみられるかどうかを動物実験にて検討してみた。初回投与後では, 活性化NKT 細胞はIFN-γ, IL-4を分泌後, 大部分がアポトーシスにより消失していたが, 4回目の刺激後では分画の消失が抑制されていた。頻回刺激後では血清IFN-γは上昇せず, また血清IL-4値のレベルは初回投与以降持続低値を示していた。頻回投与後, マウスでのNKT 細胞の活性化マーカーはむしろ低下しており, こうした結果より頻回刺激によってα-GalCerに対するNKT 細胞の反応が抑制されていることがわかった。臨床応用に当たり, α-GalCer投与間隔の慎重な検討が要することを示唆するものであり, また今後において高率よくNKT 細胞活性化持続させるためのさらなる研究が必要であると考えられた。 -
放射線, 5-FU およびOK-432におけるIL-10, TGF-βの抑制効果
32巻11号(2005);View Description Hide DescriptionOK-432の抗腫瘍免疫活性における放射線および5-FU の影響につき検索した。ヒト末梢血単核球をOK-432で処理するとTh1サイトカイン(IFN-γ, TNF-α, IL-12, IL-18)のみならず抗腫瘍免疫抑制に働くIL-10およびTGF-βの産生も認めた。OK-432添加時に5-FU あるいは放射線で処理すると, Th1サイトカイン誘導に変化を認めなかったが, IL-10およびTGF-βの産生が有意に抑制された。OK-432により, サイトカインシグナルの負の調節因子SOCS-1およびSOCS-3遺伝子の発現増強を認めたが, 5-FU あるいは放射線により低下した。OK-432によるIL-10およびTGF-β誘導は, SOCS-1またはSOCS-3のアンチセンスODN により抑制された。放射線および5-FU は, SOCS-1またはSOCS-3発現を抑制することによりOK-432の抗腫瘍免疫活性を増強することが示唆された。 -
OK-432由来DNA の抗腫瘍活性
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionレンサ球菌由来抗腫瘍免疫療法製剤OK-432の活性成分の探索を行ってきた。本研究では, OK-432由来DNA(OK-DNA)の抗腫瘍免疫活性につき検索した。制限酵素処理による検索によりOK-DNA が非メチル化CpG motifを保有することが明らかとなった。ヒト末梢血単核球をOK-DNA で処理すると, サイトカイン誘導ならびに細胞障害活性の増強を認めた。OK-DNA は野生型マウス脾細胞でもサイトカインを誘導したが, TLR9-/-マウスでは誘導しなかった。担癌マウスにOK-DNAを投与すると, 野生型マウスにおいて有意な腫瘍増殖抑制効果を認めたが, TLR9-/-マウスでは効果を発現しなかった。OK-432の抗腫瘍効果もTLR9-/-マウスでは減弱した。OK-432の抗腫瘍効果において, OK-DNA のTLR9を介した免疫活性が役割の一端を担っていることが示唆された。 -
ヒト頭頸部癌細胞におけるOK-432活性成分によるToll-Like Receptor(TLR)4を介したp53非依存的アポトーシスの誘導
32巻11号(2005);View Description Hide DescriptionOK-432の活性成分(OK-PSA)はToll-like receptor(TLR)4/MD-2複合体を介して抗腫瘍免疫活性を発現する。本研究ではヒト頭頸部癌細胞株におけるOK-PSA の作用につき検索した。扁平上皮癌(SCC)細胞7株および唾液腺癌(SGC)細胞5株中, TLR4発現細胞は全12株, MD-2発現細胞は5株であった。SCC 細胞ではTLR4/MD-2両遺伝子を発現する4株が, SGC 細胞ではMD-2発現に関係なくTLR4を発現した全5株がOK-PSA に反応してNF-κB 転写活性が上昇した。これらの細胞株においてOK-PSA はcaspase-1, caspase-3およびcaspase-8を活性化し, アポトーシスを誘導した。OK-PSAによるアポトーシス誘導は変異型p53を有するSGC 細胞においても同様に認められた。頭頸部癌細胞株において, OK-PSAはTLR4シグナルを介してp53非依存的にcaspasesを活性化し, アポトーシスを誘導することが示唆された。 -
癌性胸腹水に対するLentinan+OK-432胸腹腔内反復投与の臨床的検討
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionわれわれは以前より, Lentinan(LTN)+OK-432併用療法はTh1, Th2バランスを制御し得る有効な治療法になり得ると考え, 癌性胸腹水患者に臨床応用を行っている。現在までに本療法を行った全10症例11病巣中, 7病巣で胸腹水の完全消失, 1病巣で減少を認め, そのうちサイトカイン濃度を経時的に測定した2症例では繰り返しLTN+OK-432を投与することにより, Th1サイトカインであるIL-12(p70), IFN-γは初回投与より2回目投与にて著明に上昇する傾向がみられた。ただしTh2サイトカインであるIL-10は明らかな抑制を認めなかった。本併用療法では効果を認めた8病巣中7病巣では2回以上の投与で効果を得ており, ある程度の継続投与でTh1サイトカインをより強く誘導することが治療効果に結び付くものと予想された。 -
PSK による大腸癌術後補助免疫化学療法のResponder判定におけるエビデンス
32巻11号(2005);View Description Hide Description大腸癌患者ではTh1/Th2バランスが崩れTh2優位に傾いている。PSKによりTh2優位状態が解除される症例がresponderになる可能性があり検討した。根治度A, B が施行された大腸癌患者57例を対象とし, 術前にPSK を3g/日, 7日間経口投与しPSK 投与前後において末梢血のCD4陽性細胞における細胞内サイトカインの解析を行った。その結果PSK 投与により, CD4+ IL-10+ は有意に低下したが, CD4+ IL-6+ は低下が認められなかった。再発例と無再発例を比較すると, 無再発例においてPSK 投与前後のCD4+ IL-10+ 比が有意に低値であった。CD4+ IL-6+ 比は再発例, 無再発例において差が認められなかった。再発例においてはCD4+ IL-10+ 比が0.8以上であるため, 0.8未満の症例がPSK のresponderになる可能性が示唆された。 -
樹状細胞腫瘍内局注療法で反応を示した2症例
32巻11号(2005);View Description Hide Description当科では学内倫理委員会の承認を得て, peptide-pulsed DC(dendritic cells)皮下接種療法を行ってきたが, 20症例の検討では奏効率が程度と十分とはいえないのが現状であり, 担癌状態ゆえのanergyやDCのmigrationおよびeffectorの到達効率などに問題があると思われた。これに対し, DCの腫瘍内局注療法はDCを腫瘍内に直接注入することでDCの腫瘍内でのphagocytosisによる局所効果, その後のCTL inductionによるsystemicな効果が期され, DCの癌ワクチン効果が皮下接種より効率的に作用すると期待されており, 既存の加療無効の高度進行癌でUS もしくはEUS 下に穿刺可能病変が存在する症例を対象にその有用性を検討している。そのなかで今回, 興味ある反応を示した2症例を経験したので報告する。 -
当施設における樹状細胞腫瘍内局注療法の経験
32巻11号(2005);View Description Hide Description樹状細胞(DC)療法を1年間に21例に施行し, そのうちアフェレーシスにてDC を採取し, 再発した腫瘍局所に未熟樹状細胞を局注した症例は16例であった。このうちVater乳頭癌の鎖骨上リンパ節転移, 胃癌の吻合部再発, 口腔内悪性黒色腫の3例に効果が得られた。 -
細胞性免疫に及ぼすシメチジンの影響
32巻11号(2005);View Description Hide DescriptionH2-blockerであるシメチジンは細胞性免疫の賦活作用を有することが報告されている。一方, NKT 細胞は抗腫瘍免疫において重要な役割を果たすことが確認され, 近年, 注目されている。今回われわれは, 細胞性免疫全体に及ぼすシメチジンの影響に着目し検討を行った。健常人ボランティア6人にシメチジン800mg/dayを7日間連続投与した。投与前, 投与後1,3, 5, 7日目に採血し, 白血球数およびその分画の計測, 末梢血細胞分画の推移の検討を行った。血算では白血球増加傾向が認められ, それは主に好中球およびCD3+ T リンパ球の増加によるものであり, さらにはT リンパ球のうち, 特にCD4+ 細胞の増加が認められた。一方, NK 細胞の割合は減少しており, NKT 細胞の割合は変化しなかった。シメチジンは特異的な細胞性免疫を亢進することが確認され, 抗腫瘍免疫の賦活剤としての応用性が示唆された。 -
抗癌剤使用中シメチジン投与におけるE-selectinの興味ある変動
32巻11号(2005);View Description Hide Description癌細胞の血行性転移にかかわる重要な因子に, 血管内皮細胞上に発現する接着分子であるE-selectinがある。その発現を抑制できれば, 転移を成立させるための1段階を抑制し, 癌の転移を抑制できると考えられる。胃癌・大腸癌化学療法患者をシメチジン投与群・非投与群の2群に分け, シメチジンが抗癌剤により発現が亢進していると推測される血管内皮上のE-selectinの発現を抑制しているか否かを血中E-selectinを測定することで検討した。シメチジン投与群のなかで, シメチジン投与中は血中E-selectinの上昇を抑制していたが, 投与終了後に徐々に上昇するという特に興味深い変動を示した1例を経験したので報告する。 -
マウスにおける脾臓由来のIL-2遺伝子導入樹状細胞と癌細胞の融合細胞によるワクチン療法
32巻11号(2005);View Description Hide DescriptionIL-2遺伝子導入したマウス脾由来の樹状細胞(DC)と癌細胞(QRsP 線維肉腫)の融合細胞を作製し, C57BL/6マウス肺転移モデルでの腫瘍ワクチンとしての有用性を検討した。DCはマウス脾臓より誘導し, IL-2遺伝子はadenoviral vectorを用い導入した。融合細胞はDCと放射線処理した癌細胞をpolyethyleneglycolにて作製し, 表面マーカー, 形態の観察, 抗腫瘍免疫誘導, 肺転移予防・治療効果を検討した。その結果, 融合細胞膜の一体化が確認され, 表面にDC 同様の表面マーカーを認めた。融合細胞をマウスに投与すると脾細胞内でのIFN-γ産生とCTL 誘導を認め, IL-2遺伝子導入で増強した。肺転移予防・治療効果の検討では融合細胞投与群の肺転移数は, DC, 腫瘍細胞, PBS 投与群に比べ有意に減少し, さらにIL-2遺伝子導入でワクチン効果は有意に増強した。脾由来DC と腫瘍細胞からなる融合細胞ワクチンにより, 腫瘍特異免疫誘導が確認されIL-2遺伝子導入で抗腫瘍効果は増強された。 -
担癌ラットにおける免疫抑制物質吸着繊維カラムの細胞性免疫能増強効果
32巻11号(2005);View Description Hide Description癌の進行とともに血中には種々の特異的・非特異的免疫抑制物質が増加し, 抗腫瘍細胞性免疫能は抑制される。今回, 免疫抑制物質吸着繊維カラム(吸着材としてアミノ基含有多孔質極細繊維を使用)を考案し, これを用いた体外循環による, 担癌ラットの細胞性免疫増強効果を検討した。免疫抑制物質吸着繊維カラムを回路内に組み込み60分間の体外循環治療を施行し,脾細胞のnatural killer(NK)活性の検討を行った。免疫抑制物質吸着繊維カラムによる体外循環群は空カラム体外循環群,非循環群に比べ有意なNK 活性の増強を認めた。担癌宿主血中の免疫抑制物質を除去するこの体外循環治療は, 新たな癌免疫療法となる可能性が示唆された。 -
鹿角霊芝経口投与によるCyclophosphamideの副作用軽減効果
32巻11号(2005);View Description Hide Description鹿角霊芝はサルノコシカケ科マンネンタケの一種で, 同系腫瘍に対して抗腫瘍効果を示すことや, 制癌化学療法剤であるcyclophosphamide(CY)と併用することで抗腫瘍効果が増強されることが明らかになっている。CY は癌治療において有効なアルキル化剤だが, 体力の低下, 白血球の減少, 免疫機能の低下など様々な副作用を引き起こすため, 癌に対する生体防御機能の低下を起こす危険性が指摘されている。そこでわれわれは, CY が引き起こす副作用を鹿角霊芝の経口摂取により軽減できるか否かを検討した。C57BL/6マウスにCY を腹腔内投与すると, 体重の減少, 好中球の減少および過剰なリバウンド,脾臓中のT 細胞, NK 細胞などの数の減少などがみられた。しかし, あらかじめ鹿角霊芝を摂取していたマウスでは, このようなCY による副作用が有意に軽減されていた。したがって, 鹿角霊芝をCY と併用することで, CY の副作用を緩和できることが明らかになった。 -
大腸癌に対するTS-1/CPT-11療法施行時における宿主免疫能の変動
32巻11号(2005);View Description Hide Description当科では, 進行・再発大腸癌に対してTS-1/CPT-11療法を施行しているが, 本療法は欧米のレジメンに匹敵する成績が期待されている。今回, 本療法の宿主に対する影響を免疫能の面から検討したので報告する。対象は2004年6月から8月までに, 大腸癌に対してTS-1/CPT-11療法を施行した4例である。投与法はTS-1 80mg/body/dayを21日間経口投与し2週間休薬, その間day1, 15にCPT-11 80mg/bodyを点滴静注した。その初回投与時における宿主免疫能の変動を検討した。免疫能のパラメータのうち有意な変化をみたものはなかったが, Th1/Th2比, NK 細胞比は減少, サプレッサーT 細胞比は増加と宿主の免疫能は本療法により低下傾向を認めた。抗腫瘍効果の期待できるTS-1/CPT-11療法であるが, 反面, 宿主の免疫能を低下させる可能性が示唆された。 -
当センターにおける肝細胞癌局所治療—JIS Scoreを用いたラジオ波熱凝固療法とエタノール局注療法の治療成績の比較—
32巻11号(2005);View Description Hide Description腫瘍径3cm 以下かつ腫瘍数3個以内, または腫瘍径5cm 以下単発と診断され, 局所治療を施行された肝細胞癌149例(経皮的エタノール局注療法施行90例, 経皮的ラジオ波熱凝固療法施行59例)の長期成績をJIS score別に比較検討した。腫瘍径が3cm を超える結節は, すべて経カテーテル的肝動脈塞栓術を併用した(エタノール局注療法施行例94%, ラジオ波熱凝固療法施行例25%に併用)。JIS-0, 1, 2症例の3年生存率は, エタノール局注群で86, 76, 56%, ラジオ波熱凝固群で96, 83, 68%, JIS-0, 1症例の5年生存率はそれぞれ, 69, 53%と95, 83%であり, 両治療法間の生存率に有意差を認めなかった。肝動脈塞栓術の併用などの集学的治療により, 局所治療としてのエタノール局注療法とラジオ波熱凝固療法は, ほぼ同等の成績が期待できるものと考えられた。 -
肝細胞癌, 転移性肝癌に対するラジオ波凝固療法
32巻11号(2005);View Description Hide Description肝細胞癌(以下HCC)29例36結節, 転移性肝癌(以下meta)16例38結節に対するラジオ波凝固療法(以下RFA)の治療成績を検討した。腫瘍サイズは8〜82mm(平均26.4mm)。metaの原発巣は結腸9例, 直腸2例, 乳腺2例, 胃2例, 食道1例。穿刺方法は超音波下44結節, CT 透視下24結節, 開腹超音波下6結節。穿刺針はRadionics社Cool-tip needle 3.0cm 針を用いた。平均完全凝固率・平均他部位再発率は平均観察期間13.5か月でHCC 83.3% ・30.6%, meta 65.8% ・31.6%で, HCC がmetaに比べて完全凝固率が有意に高かった(p<0.05)。またHCC, metaともに腫瘍径が3cm 以下の病変の平均完全凝固率が3cm を超える病変よりも有意に高かった(p<0.05)。HCCの多発例では他部位再発率が62.5%と単発例(28.6%)に比べて有意に高かった(p<0.05)。またmetaでは開腹超音波下でのRFA による完全凝固率が100%で, CT透視下, 超音波下に比べて有意に高かった(p<0.05)。 -
大腸癌肝転移に対する鏡視下ラジオ波焼灼療法
32巻11号(2005);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対するラジオ波焼灼療法(RFA)については, いまだ一定の見解は得られていない。可能なかぎり切除することが望ましいが, 全身状態などから切除困難な場合もある。われわれは切除とならなかった6例のH1またはH2大腸癌肝転移症例に対し鏡視下RFA を施行した。平均腫瘍径22.9mm, 平均腫瘍個数1.2個, 占居部位はS4:2例, S5:1例, S6:1例, S7:2例, S8:1例, 平均穿刺回数3.0回であった。全例合併症は認めず, 再手術はなかった。焼灼部近傍の再発はなく, 肺転移を2例, 肝内再発を2例に認めた。肝内再発の1例は同時性肝転移(H2)に対してRFA 前に肝動注を行っていた症例で, 肝動注で効果を得ていた転移巣の再燃であった。現在まで癌死1例, 他病死1で平均生存日数は451.2日であった。鏡視下RFA は局所コントロール良好で, 切除困難な大腸癌肝転移症例に対する治療の選択肢として考慮すべき術式と考えられた。 -
肝細胞癌に対する鏡視下局所凝固療法例の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description1998年から2004年まで当院で行った肝細胞癌に対する鏡視下局所凝固療法施行18例を対象とし, 同時期の腹腔鏡下肝部分切除術6例と比較を行った。内訳は腹腔鏡下マイクロ波凝固壊死療法(以下L-MCT)10例, 腹腔鏡下ラジオ波焼灼術(以下L-RFA)5例, 胸腔鏡下マイクロ波凝固壊死療法(以下T-MCT)が3例であった。手術時間はL-MCT で114分, L-RFAで92分であり切除術の208分より有意に短かった。全例合併症はなく術後在院日数はそれぞれ13.1, 8.2, 13.0日であった。局所再発がL-MCT 群とL-RFA 群において1例ずつ認められたが, 肝表面より観察困難な1例と娘結節を有する1例であった。累積生存率は3年71.4%, 5年53.6%であった。鏡視下局所凝固療法は経皮的RFA が困難である肝辺縁の肝細胞癌に対しては侵襲が少なく有用であるが, 肝表面から観察可能で範囲が明瞭である場合がよい適応である。 -
肝細胞癌の局所凝固療法における新しいアプローチ—用手補助腹腔鏡下ラジオ波凝固療法—
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionわれわれは通常の腹腔鏡下外科手術(LS)では治療困難な肝細胞癌に対して, 用手補助腹腔鏡下ラジオ波凝固療法(HALS-RFA)を行っている。2001年11月以降, 10例の症例を経験した。HALS を選択した理由は癒着高度3例, 肝ドーム部に存在3例, 他臓器や脈管近接3例, 他臓器同時手術1例であった。同時期に行った通常のLS 62例, 開腹下手術(OS)9例と比較を行った。術中平均出血量はHALS 85ml, LS 14ml, OS 319ml でHALS はOS より少なかったが有意差はなかった。術後最大CRP 平均値はHALS 3.2mg/dl, LS 4.9mg/dl, OS 10.5mg/dl でHALS はLS との間に差はなく, OS より有意に低値であった(p<0.001)。術後合併症はHALS 2/10例, LS 2/62例, OS 3/9例に認めた。治療部位再発はHALS 1/10例に認め, LS 2/62例, OS 0/9例と差がなかった。本療法は低侵襲かつ根治性が十分得られる治療法であり有用と考えられた。 -
当院の悪性胆道狭窄に対する胆道ステント治療の治療成績
32巻11号(2005);View Description Hide Description当院における2001年4月から2005年3月までの膵・胆道疾患による切除不能悪性胆道狭窄51症例に対する胆道ステント治療の臨床成績を開存期間, ステント留置からの生存期間についてステント種類, 疾患で比較検討を行った。ステント種類別の開存期間, 生存期間に有意差はなかった。疾患別の生存期間は胆道癌で他の疾患に比べて616±246日と長かった。ステントの留置回数はステントの種類によって差はなく, 有効な減黄が行われていた。全症例で減黄不能で死亡した例はみられなかった。狭窄部位, 疾患, 処置時のperformance statusにより留置経路, ステント種類の選別を行う必要があると考えられた。切除不能悪性胆道狭窄に対する胆道ステントの有用性が示唆された。 -
閉塞部位別にみた各種胆道ステントの評価と最善の選択
32巻11号(2005);View Description Hide Description切除不能悪性胆道閉塞に対するステント留置による内瘻化は, すでに広く普及した治療である。ステントの開存期間は長期であるほどよいが, 同時に閉塞時の治療にも目を向けなければならない。そこで, こうした観点から現時点における最善の胆道ステントの選択を肝門部胆管閉塞と肝外胆管閉塞に分けて検討した。結果, ステントの開存期間は肝門部閉塞ではMSが, 肝外閉塞ではCMS, MS がTS に比し有意に優れていたが, MS では閉塞時に抜去が不可能であるためPTBD を必要とすることが多く, 再内瘻化に難渋する症例や外瘻維持を余儀なくされ, その後のQOLが著しく障害される症例がみられた。一方, CMS は抜去可能であるためMS よりも閉塞時治療が容易であった。つまり, 肝門部におけるMS 留置は, 閉塞時の対策を十分考慮した上で慎重に行うべきであり, 肝外閉塞ではCMS が最も有用なステントであると考えられた。 -
胆道ステント療法の意義—進行上部・肝門部胆管癌に対する集学的治療—
32巻11号(2005);View Description Hide Description上部・肝門部胆管癌の切除不能症例に対して現在当科で施行している集学的療法(192Ir-高線量胆管腔内照射療法+体外照射+化学療法+金属ステント)の治療成績を外科治療と比較, 胆管癌治療における集学的療法の意義を検討した。累積生存率において集学的療法群は根治度C に終わった切除群の成績を凌駕することはできず, 2年生存率も得られなかった。また, 集学的療法群のなかでの放射線治療(体外照射, 腔内照射)の意義を検討すると, 放射線治療の付加は有意差をもって累積生存率およびステント開存率を改善していた。上部・肝門部胆管癌に対する治療第一選択は切除であり, 切除の可能性を十分検討することが必要である。しかし年齢や全身状態などの要因から切除不能と判断される進行症例に対しては胆道ステント療法に放射線治療および癌化学療法を組み合わせた集学的治療にて予後向上の可能性があり, 今後積極的に進めていくべき治療と考える。 -
癌の動脈内注入化学療法—40年の経験から—
32巻11号(2005);View Description Hide Description最近の15年間(1990〜2005年)に701例の肝細胞癌に対してSeldinger法で肝動脈にカテーテルを挿入し, 埋込み式の動注ポートを用いて, epirubicinと5-FU の長期持続動注を行った。(epirubicin+mitomycin C)の化学塞栓も併用したが門脈閉塞例では割愛した。その結果, 症例の70%において腫瘍の縮小と腫瘍マーカー(AFP, PIVKA-II)の減少が認められた。また1,091例の結腸癌, 直腸癌, 胃癌, 膵癌の転移性肝癌に対しても同様の方法で5-FU, mitomycin C, adriamycin, epirubicin, cisplatin の長期持続動注を行ったが, 症例の80%において腫瘍の縮小と腫瘍マーカー(CEA, CA19-9, TPA, DUPAN-2, SPan-1)の減少が認められた。埋込み式ポートを用いた抗癌剤の動注化学療法は頭頸部癌, 乳癌でも著効を得ることが多く, また膵癌の一部でも抗腫瘍効果と延命効果を得ることができた。 -
進行胃癌による上部消化管癌性狭窄に対するステント療法の意義
32巻11号(2005);View Description Hide Description進行胃癌による上部消化管癌性狭窄に対しステント留置を行った10症例を対象に, ステント療法の有用性と安全性について検討した。年齢中央値は65.5歳, 男性6例/女性4例, 胃癌初発6例/再発4例であった。ステント留置部位は, 初発胃癌では噴門部2例, 幽門部4例であり, 再発胃癌では胃全摘後食道空腸吻合部1例, 胃全摘後空腸パウチ流出路1例, 幽門側胃切後十二指腸水平脚1例, 幽門側胃切後残胃空腸吻合部1例であった。全例でUltraflex ステントが使用され, ステント留置後化学療法が5例に行われた。半数で経口摂取が著明に改善し, 全体の経口摂取改善率は80%であった。ステント留置後の生存期間は129日, 在宅率(在宅期間/生存期間)は30.4%であり, 化学療法の有無で差はなかった。全例にステント挿入が成功し, 縦隔炎を1例に合併した。腫瘍のingrowthは4例に認め, ステントのdislocationが2例にみられた。 -
高齢者に対する胆道ステント療法の臨床的意義
32巻11号(2005);View Description Hide Description高齢者に対する胆道ステント療法の背景には, 原疾患の治療が困難, ステント材料費が社会的コストを増加させる, 適応能力が低くtube freeでないと退院が難しい, 合併症が多く病態も多彩で予後の予測が困難などの特徴がある。地域中核病院である当院における65歳以上の30症例の留置後生存日数は13〜1,275日(平均278日, 中央値169日), ステント開存生存日数13〜1,275日(平均225日, 中央値148日), 退院後再入院までのtube free在宅期間は0〜1,162日(平均192日, 中央値121日)であり, これに要したステントは平均1.3本であった。ステント材料費/在宅日数は保険点数に換算して約300点となり, 入院費と比較して必ずしも高くはなかった。また, 4症例が1年6か月以上生存するなど長期生存はまれではないが, 予後の予測は困難でステント療法の適応に明確な基準を設けることは難しい。 -
悪性胆道狭窄に対するメタリックステントとチューブステントによる内瘻術の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description悪性胆道狭窄に対しメタリックステント(MS)留置後に細菌接着抑制効果を有する親水性ヘパリン化チューブ(hydrophilic heparinized tube:H-PSD)と埋設用ポート(implantable port:IP)を用いた胆道内瘻術を行い, その治療効果や合併症などを検討した。対象は2002年4月から2004年3月の2年間に当院にて治療した治癒切除不能悪性胆道狭窄症例計82例中, MSとH-PSD を用いて胆道内瘻術を施行した20症例である。抗腫瘍療法は胆管癌(A 群)6例には放射線併用動注化学療法, stage IVa膵癌(B 群)8例とstage IVb膵癌(C 群)6例には膵周囲動脈塞栓術と肝脾動注化学療法を施行した。50%開存期間はA 群12か月, B 群6か月, C 群7か月, 50%生存期間はA 群16か月, B 群23か月, C 群13か月であった。合併症は1例においてIP 周囲の感染を来し抜去し, 3例において胆管炎を認めH-PSD の交換を要したがIPを取りだすことで胆管へのアプローチは容易であった。チューブステントにはMS にはない利点もあり, 症例によっては本内瘻術が有用であると思われた。 -
Paclitaxel腹腔内投与と静脈内投与の腫瘍内PyNPase活性変化の実験的検討
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionマウスを用いて, 実験的に腫瘍内PyNPase活性の変化をpaclitaxelの静注と腹腔内投与で比較検討した。ヌードマウスの皮下にWiDr大腸癌細胞を移植し, 約3週間後にpaclitaxelの静脈内, 腹腔内投与を2回施行した(20mg/kg, 15mg/kg)。約1週間後屠殺し, 腫瘍のPyNPase活性を測定した。対象として化学療法を施行しない群をおいた。paclitaxelの腹腔内投与と静脈内投与時に皮下腫瘍PyNPase活性上昇に差を認めなかった。paclitaxel腹腔内投与時にも腹膜転移巣以外の転移巣にpaclitaxel静脈内投与と同程度の5′-DFUR, capecitabineの効果の増強が起こる可能性が示唆された。 -
実験的胃癌腹膜播種に対する腹腔内化学療法の効果
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionコラーゲンゲル法により原発胃癌の薬剤感受性を調べたところ, CBDCA, CDDP, 5-FU, docetaxel(DOC)が高い感受性を示した。胃癌高度腹膜転移株MKN-45-P をTS-1(12mg/kg)で治療した群では, 治療開始日に関係なく対照群の生存率と差がなかった。5-FU 15mg/kg ip・18回, 30mg/kg ip・9回投与群ではTS-1 12mg/kg po(計20回)や対照群に比べ有意に生存率がよかった。5-FU 30mg/kg ip投与群の注入液の5-FU 濃度は600μg/ml と高値を示した。TS-1 12mg/kg 投与60分での腹水中5-FU, CDHP 濃度は927±558ng/ml, 1,483±719ng/ml であった。CDDP 3.5mg ip投与(6, 13日)群, TS-1単独群, 対照群ではMST 36, 28, 32日で差を認めなかった。しかし, CDDP+TS-1(8mg/kg)群ではMST 50日で有意に他の3群より生存率が良好であった。DOC 8mg/kg, 2mg/kg ip投与群ではMST 90, 63日で, それぞれ4匹, 1匹は腹膜播種が消失していた。DOC 8mg/kg ip投与後は8時間後も腹水中DOC 濃度(4.58±0.28μg/ml)は高い濃度を維持していたが, iv投与では腹水中濃度はip投与後に比べ1/100の値であった。また, 腹膜播種組織内のDOC 濃度はip投与8時間ではiv投与後に比べ有意に高い値(4.65±1.33μg/gr)を示した。CBDCA 50mg/kg(day3, 7ip)100mg/kg(day3, ip)投与群では有意に対照群より生存率が良好であった。MST は対照群26.3日, 100mg/kg 群37.7日, 50mg/kg 群40.3日であった。しかし, 体重減少を認めた例はなかった。以上より胃癌高度腹膜転移株MKN-45-P による腹膜播種モデルにおいて, 5-FU ip, TS-1po+CDDP ip, DOC ip, CBDCA ip療法は有効であり, 臨床への応用が期待される。 -
腹膜播種を伴う進行・再発胃癌に対するTS-1後Paclitaxel療法の治療成績
32巻11号(2005);View Description Hide Description進行・再発胃癌患者には腹膜播種を伴うことが多いが, いまだ有効な治療法は確立されていない。教室では2002年1月から腹膜播種を伴う進行・再発胃癌患者に対してTS-1後にpaclitaxel(PTX)を用いた治療を行っており, その安全性と有効性について検討した。対象患者は腹膜播種を伴う進行・再発胃癌患者23例で, TS-1後にPTX 療法を行った。TS-1による治療からPTX 療法へ移行できた患者は19例(83%)であった。有害事象は, TS-1後のPTX 療法においても重篤なものは少なく安全に施行可能であった。また, 全治療期間の80%に外来治療が可能でありquality of lifeの維持に貢献できた。治療成績としては, 無増悪期間中央値199日, 生存期間中央値は全例で363日, 完遂例で436日とほぼ満足いくものであった。腹膜播種を伴う胃癌患者に対するTS-1後PTX 療法は安全でかつ有効な治療法と考えられる。 -
高度進行胃癌に対する腹腔洗浄細胞診(CY)の意義と問題点
32巻11号(2005);View Description Hide Description1988年より胃癌症例に対し, 腹腔洗浄細胞診(CY)を1,255例に施行してきた。P0, CY0:914例, P0, CY1:100例, P1:90例, P2:53例, P3:98例。CY は開腹直後ダグラス窩で施行し, CEA, MOC-31免疫染色を446例, 316例に測定した。H0, pT3, pT4の切除胃癌638例の多変量解析で根治度, t, n因子, CY, 組織型が独立した予後因子であった。P0, CY0:352例にCEA またはMOC-31を施行し36例(10.2%)が拾い上げ診断された。P0, CY1:90例で, CY を除いた治癒切除例(70例)の5年生存率22.8%は非治癒切除例(20例)の11.9%と比較し良好であった(p<0.01)。以上よりCY は免疫染色など補助診断による精度向上を図ることが重要である。また, P0, CY1症例では他に癌の遺残がない場合, 集学的治療を考慮するべきである。 -
大腸癌両葉多発肝転移に対する局所焼灼治療併用肝切除の治療成績
32巻11号(2005);View Description Hide Description目的:大腸癌両葉多発肝転移に対する局所焼灼治療(マイクロウエーブ凝固療法:MCT)併用肝切除の成績からその有用性を検討した。対象:H3転移切除例中MCT 併用群(Hx-MCT 群)15例と肝切除単独群(Hx 群)34例。結果:肝転移個数はHx-MCT 群が14個とHx 群の8個に比較し多かった(p=0.03)。残肝再発例のうち, 切離, 焼灼部の近傍再発はHx-MCT 群12.5%, Hx 群47.1%であり, MCT 併用で近傍再発は増加する傾向はなかった。1年, 3年累積生存率は, Hx-MCT 群76%, 42%, Hx 群89%, 57%と差はなかった。結語:局所焼灼治療併用肝切除は, 治療成績も良好で切除適応拡大が可能であり, 大腸癌両葉多発肝転移に対する有用な治療法と考えられた。 -
転移性肝癌切除断端への凍結治療
32巻11号(2005);View Description Hide Description肝切除断端の再発を抑えるのには, 1cm の切除マージンを確実にすることが大切で, 切除断端への凍結治療の追加は, 切除マージンが十分確保できなかった患者の断端再発を抑制する有用と思われる。具体的にはわれわれは, 液体窒素用小型凍結機器CRY-AC(Brymill社, USA)を使用している。切除マージンが不確実と思われる部位に, 先端が平坦なプローブを直接当て, 1か所3分間の凍結かけている。2002年6月より現在まで, 転移性肝癌のために肝切除術を行った14例において, 肝切除断端に凍結治療が加えられた。断端よりの出血, 術後の胆汁の漏れはなかったが, 断端再発は1例において認められた。凍結治療は脈管に損傷を起こしにくい特徴があり, 切除断端に露出した脈管をもつ患者においても, 合併症を認めなかった。断端再発を抑制し得たかどうかの検討は時間の経過が必要で, 今後症例を重ね検討したい。 -
マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)による異型子宮内膜増殖症の低侵襲治療
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionマイクロ波子宮内膜アブレーション(microwave endometrial ablation:MEA)は過多月経に対して子宮摘出術に替えて行われる低侵襲の治療法である。多数の合併症をもつために, 子宮摘出術の手術リスクの高い患者に発見された0期の子宮体癌である複雑型異型子宮内膜増殖症が2回のMEA で治療された。最初のMEA では子宮留血腫を予防するために内子宮口近くの子宮内膜にマイクロ波は照射されなかった。しかし, 24か月後に複雑型異型子宮内膜増殖症が再発したため再度MEA が施行された。2回目のMEA では内子宮口も含めてマイクロ波が照射された。術後1か月に子宮内膜が消失し子宮内が完全に無血管領域に変化したことが造影MRI で確認された。その後, 18か月間再発はない。 -
各種担子菌製剤の局所投与による抗腫瘍効果の差異
32巻11号(2005);View Description Hide Description担子菌のうちタコウキン科, ハラタケ科, キシメジ科の5種の製剤の抗腫瘍効果をマウス“二重移植腫瘍系”の原発巣に腫瘍内局所投与療法により比較し, その蛋白量の違いとの相関を調べた。カワラタケ菌糸体抽出物PSK, マツタケ菌糸体抽出物マツマックス, アガリクス子実体抽出物, ヒメマツタケ子実体抽出物, シイタケ子実体精製物Lentinanを実験に供した。PSK は原発巣, 転移巣に治癒がみられた。マツマックス, アガリクス製剤は原発巣に治癒, 転移巣に増殖抑制がみられた。ヒメマツタケ製剤は原発巣に増殖抑制がみられ, Lentinanは原発巣, 転移巣とも抗腫瘍効果が認められなかった。マクロファージ活性化の指標としてBALB/cマウスに薬剤を皮内注射時の血清IAPを測定した。蛋白を含まないLentinanを除いて他4種はIAP を誘導した。以上の結果, 各種担子菌製剤は蛋白含有量に比例し抗腫瘍効果が表れた。 -
表在性肝細胞癌に対する鏡視下ラジオ波凝固療法の工夫
32巻11号(2005);View Description Hide Description肝表在性の肝細胞癌は経皮穿刺・凝固では出血などの合併症が起こりやすい側面がある。われわれは肝表在性腫瘍については内視鏡下ラジオ波凝固療法を第一選択としている。また, 2004年より鏡視下治療時にはmargin確保と腫瘍内圧の上昇を抑制する観点から, 腫瘍の直接穿刺を避け, 周囲からラジオ波凝固を先行する方式で治療を行っている。この周囲凝固先行型ラジオ波凝固療法では, 1.腫瘍を鏡視下に確認し, エコーで腫瘍範囲をマーキングする。 2.腫瘍の辺縁から穿刺凝固を開始し, 凝固範囲を想定し全周性にを複数回RFA を行いmarginを確保する。 3.腫瘍径2.5cm 以上では周囲の凝固が終了した段階で改めて腫瘍の直接穿刺, 凝固を行う。2004年4月からの治療対象は29名で, 表在性腫瘍の凝固の際に起きやすい合併症は直視下で防止可能であり, 術後の画像検索では腫瘍の焼灼と十分な周囲のmarginが確保されていた。平均観察期間290日中では局所再発はなく, 術後平均在院日数は9.7日で重篤な合併症はなかった。肝表在性の肝細胞癌に対する内視鏡下での周囲凝固先行型RFA はより高い根治性をめざした安全な治療選択肢と考えられた。 -
鏡視下熱凝固療法における治療の工夫
32巻11号(2005);View Description Hide Description肝細胞癌に対する熱凝固療法において, 肝表に存在する腫瘍や経皮的アプローチでは安全な穿刺経路を確保できない腫瘍に対して, 鏡視下に治療を行うことによりその治療適応が拡がった。鏡視下に治療を行う際, 従来のリニア型エコー下による治療ではフリーハンドによる穿刺が強いられていた。視野の確保や操作スペースの確保が困難なことがある尾状葉やS6背側の腫瘍に対しては, コンベックスタイプ型エコーを使用することにより試験穿刺を必要とせず, 比較的容易な穿刺が可能となり, 治療の安全性と確実性が向上した。 -
当科における肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法の治療経験
32巻11号(2005);View Description Hide Description肝細胞癌の治療法には様々な選択肢がある。1998年にわが国にラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)が導入され, 経皮的エタノール注入療法と経皮的マイクロ波凝固療法の利点を併せもつ優れた治療として普及しつつある。今回われわれは当科における肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法の治療効果および合併症を中心に検討した。2001年4月から2005年5月までにRFA を施行した肝細胞癌17例を対象とした。主にRadionics社のCool-tip needleを用いて経皮的または開腹下において焼灼した。腫瘍はいずれも単発で平均腫瘍径は2.24cmであった。完全焼灼例は15例で不完全焼灼例は2例であった。完全焼灼例15例のうち局所再発は1例に認め, 局所再発率は6.7%であった。合併症は軽微なものを認めたが, 重篤な合併症は認めなかった。今回の検討の結果からRFA は安全に施行でき治療効果の高い治療法であると考えられた。今後RFA の適応および長期成績を十分検討することにより, 肝癌治療の一つの治療として確立されることが示唆された。 -
大腸癌肝転移に対するラジオ波およびマイクロウエーブ波(RFA/MCT)を用いた癌局所焼灼療法の治療成績
32巻11号(2005);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対して, これまでの肝切除術や動注化学療法に加え近年, ラジオ波やマイクロ波を用いた局所凝固焼灼療法(RFA/MCT)が積極的に試みられている。そこで, 教室で施行してきた局所凝固焼灼療法の治療成績について検討した。対象と方法:2001年9月以降, 局所凝固焼灼療法を施行した大腸癌肝転移21例のうちRFA を施行した9例を対象とした。補助療法として全例に低用量FP 分割投与を施行した。結果:RFA 9例(25病変), MCT 15例(82病変)でRFA の3例はMCT を併用した。肝転移程度はH1, H2各1例, H3が7例で腫瘍径は1.0〜4.7cm(平均2.7cm), 焼灼回数は1〜6回(平均2.4回)であった。合併症は発熱やAST/ALT の上昇を認めたが重篤なものはなく, 3年生存率は50%と良好な予後が得られた。まとめ:大腸癌肝転移に対する局所凝固焼灼療法は合併症も少なく, 切除不能例に対する局所制御方法として有効であることが示唆された。 -
大腸癌肝転移に対する集学的治療としてのラジオ波焼灼療法の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対する集学的治療としてのラジオ波焼灼療法(RFA)の検討を行った。対象:2003年3月から2004年12月の間に, 大腸癌肝転移に対してRadionics社Cool-tip electrode needleにてRFA を施行した10例30病巣/16治療。結果:平均年齢は69.8歳, 1治療当たりの腫瘍個数は1〜5個(平均1.9個), 腫瘍径は5〜82mm(平均29.5mm)であった。1症例当たりのRFA 施行回数は, 単回6例, 2回2例, 3回2例であった。5治療でCT 透視下の経肺穿刺を行ったが, 重篤な合併症は認めなかった。平均観察期間は14.8か月で23.1%に焼灼部位再発を認め, 再発までの期間は平均6.2か月であった。多治療施行後の再発でも繰り返しRFA を施行することで延命に寄与すると考えられた。まとめ:RFA は低侵襲で繰り返し安全に行え, 大腸癌肝転移の集学的治療の一つとして選択し得る。 -
大腸癌肝転移巣に対するRFA(ラジオ波組織熱焼灼療法)と動注化学療法
32巻11号(2005);View Description Hide Description肝硬変を伴った大腸癌肝転移巣に対してRFA を施行した3症例を経験し, その適応を考察した。症例1は, 高度肝機能障害を伴ったS 状結腸癌ss, n1(+), 同時性肝転移(S5, S6, S8)に対してRFA を施行した。1年6か月残肝に再発(S3, S4)し現在IFL(CPT-11/5-FU/Leucovorin)を施行中である。症例2は, 盲腸癌ss, n2(+), 同時性肝転移(S5, S6, S8)に対して肝部分切除後にRFA を施行した。11か月残肝に再発(S5, S6, S7)し, 再び肝部分切除後にRFA を施行した。現在肺転移を併発し, IFL(CPT-11/5-FU/Leucovorin)とWHF を併用中である。症例3は, 下行結腸癌ss, n1(+), 4年8か月後の異時性肝転移(S5, S7, S8)に対してRFA を施行した。RFA より1年後癌性腹膜炎で死亡した。いずれ症例においてもRFA 後のCT では転移巣はdynamic CT にて血流のないlow density massとして同定され, 全病巣が壊死に陥っており局所制御は良好であった。また重篤な副作用は認めなかった。高度肝機能障害を伴った多発肝転移などの肝切除不能例には, RFA を含めた局所凝固療法の適応と考える。 -
乳癌肝転移に対するラジオ波熱凝固療法(RFA)
32巻11号(2005);View Description Hide Description乳癌の肝転移は肝外病変を伴うことが多く, 全身療法が適応となる。しかし, 肝外病変がなければ局所療法も一つの選択肢と考えられる。今回, RFA を併用した3症例について報告する。症例1:65歳, 女性, 1997年左乳房切除。2001年肺転移に放射線照射し, paclitaxelを投与した。2002年, 2.8cm の肝転移巣を経皮的にRFA を施行した。肺転移巣の悪化のため, RFA 後1年で死亡した。肝転移巣は最終的に4cm 大に増大した。症例2:36歳, 女性, 2000年左乳房切除(Stage IIIa), 術後化学療法施行した。2001年肝S7の2cmの転移に経皮的にRFA 施行し, 現在まで3年8か月再発を認めていない。症例3:43歳, 女性, 2003年左乳房切除(Stage IIIa), 術後化学療法を施行した。2004年, 3.5×4cmの肝転移巣を開腹下にRFA を施行した。15か月再発を認めていない。 -
進行大腸癌におけるPyNPase/DPD 活性と臨床病理学的検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description進行大腸癌70例を対象に腫瘍組織, 隣接正常組織のpyrimidine nucleoside phosphorylase(PyNPase)およびdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)酵素活性を測定し, 臨床病理学的検討と予後について検討した。PyNPaseは腫瘍部で82.7±41.9U/mg protein(正常部は37.2±24.0U/mg protein)と高値を示し(p<0.001)反対にDPD は正常部で40.3±19.4U/mg protein(腫瘍部は33.8±18.0U/mg protein)と高値を示した(p<0.05)。病理組織学的検討においてはリンパ節転移陽性症例では, リンパ節転移陰性症例に対してPyNPaseは高値を示した(p<0.05)。術後補助療法にてgrade2以上の副作用発現症例では正常組織のDPD 活性は有意に低値を示した(p<0.05)。治癒切除可能であったDukes’B, C 症例について予後を検討するとPyNPase活性高値の症例は低値の症例に対して再発例は多かったが, 術後補助化学療法として5′-DFUR投与した群では無再発生存期間の延長を認めた(p<0.05)。 -
当科における進行・再発胃癌に対する化学療法の現状
32巻11号(2005);View Description Hide DescriptionTS-1, CPT-11, CDDP, taxane系などの新規抗癌剤が登場した1998年10月以降, 進行・再発胃癌に対する化学療法を施行した全症例(157例)を対象に治療成績を検討した。全症例のMST は426日であった。その内訳は, 術後再発59例, 根治度C 47例, 切除不能51例であり, MST はそれぞれ590, 610, 215日であった。 -
術後肝転移再発膵癌症例の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description背景:膵癌は切除術が唯一の根治療法であるが, 根治術後に局所再発やリンパ節, 腹膜や肝転移などの進展形式をとることが多い。再発膵癌に対し, 従来確実な効果を有する治療法がなかったが, gemcitabine(GEM)が膵癌に対し保険適応となり, 再発膵癌に対しても化学療法が見直されるようになってきた。今回, 術後肝転移再発膵癌症例の検討を行った。対象・方法:対象は, 1998年4月から2005年3月までの肝転移再発膵癌症例とし, 検討項目は治療法, 生存期間とした。結果:術後肝転移再発膵癌症例は9例で, 未治療4例, 有治療5例であった。未治療例の平均生存期間および1年生存率は6.0か月, 0%で有治療例では, 22.3か月, 75%であった。有治療例の効果判定は, CR 1例, PR 2例, NC 2例であった。GEM 投与方法は経動脈と経静脈の2ルートより行い, 長期間外来投与が行えた。結語:術後肝転移再発膵癌に対しGEM を中心とした化学療法を行い良好な結果が得られた。 -
胃癌肝転移に対する切除の適応と意義
32巻11号(2005);View Description Hide Description当院では, 切除可能な胃癌肝転移症例に対して積極的に切除を行ってきた。これらの症例を踏まえ, 臨床病理学的に胃癌肝転移切除の適応と意義について検討した。1991年1月より2005年5月までに当院で経験した胃癌肝転移切除症例26例(再肝切除症例3例を含む29回切除)を対象にした。全体の5年生存率は25.3%であった。臨床病理学的因子について解析した結果, 原発巣の深達度とリンパ節転移の有無が予後規定因子として認められた。残肝再発症例3例に対し再肝切除を行ったが, いずれも初回手術から30か月近く生存した。両葉多発性の肝転移症例のなかでも化学療法を併用することにより切除し得た症例も経験した。以上より胃癌肝転移に対する肝切除は有効な治療法であり, 再肝切除や化学療法の併用により予後の改善が期待できる。 -
胃癌腹膜播種における腹腔内化学療法の有用性と新規抗癌剤の貢献度
32巻11号(2005);View Description Hide Description104例の胃癌腹膜播種症例を対象に腹腔内化学療法の有用性について検討した。72例に胃切除術が行われ, そのうち5例がCDDP-ip(50〜100mg/100〜200ml), 16例がCHPP(CDDP 300mg, MMC 30mg, ETP 150mg/8l/42〜43℃/60min), 17例がCMV-ip(CDDP 150mg, MMC 20mg, ETP 100mg/1l/60min)による腹腔内化学療法を行われた。CMV-ip群は他の治療群に比較して有意に予後良好であった。26例の高度播種症例に対しTS-1(60mg/m2)とtaxaneの腹腔内投与(docetaxel 40〜60mg/bodyまたはpaclitaxel 120〜180mg/body)を行ったところ, 18例が奏効し9例にR0-1手術を行った。これら9例のMST は944日, 2年生存率は63%であり, 非切除10例に比べ有意に予後良好であった。胃癌腹膜播種の予後を向上させるためには全身および腹腔内化学療法に加え, 遺残のない手術療法を集学的に行う必要がある。 -
胃癌腹膜播種に対する低浸透圧CDDP 腹腔内化学療法の安全性と効果
32巻11号(2005);View Description Hide Description胃癌腹膜播種に対する低浸透圧CDDP 腹腔内投与と, それに続くMTX/5-FU およびUFT を用いた全身化学療法の安全性と効果について検討した。1998年4月から2004年3月までに胃癌に対し胃切除術が施行され, 肉眼的腹膜播種陽性あるいは腹腔内洗浄細胞診陽性と診断された7症例(男性3例, 女性4例, 平均年齢59.4歳)を対象とした。腹腔内投与はCDDP 100mg/bodyを蒸留水と混和し, 閉腹前に腹腔内に投与し30から60分後に排出した。術後合併症として腹腔内膿瘍, 腎機能低下をそれぞれ1例に認め, その後の全身化学療法に伴う有害事象としてgrade3の貧血と白血球減少をそれぞれ3例と1例に認めた。手術からの無増悪期間の中央値は109日, 全生存期間の中央値は248日であった。胃癌腹膜播種に対する低浸透圧CDDP 腹腔内投与は比較的安全に施行可能であるが, 治療効果は新規抗癌剤による化学療法を上回るものではない。 -
長期生存を得た腹腔細胞診陽性胃癌に対するCDDP 腹腔内投与の有効性
32巻11号(2005);View Description Hide Description腹腔洗浄細胞診陽性胃癌に対するCDDPの腹腔内反復投与の有効性を検討した。平均生存期間338日, 1年生存率60%で2年生存率45%であった。P0CY1の腹腔内反復投与例は非施行例より生存率が延長する傾向がみられた(p=0.06)が, P1CY1症例には認められなかった。また, P0CY1に対して3種類以上の抗癌剤を使用した症例は2種類以下の症例よりも, 予後がよい傾向を認めた(p=0.09)。P0CY1胃癌症例に対しては様々な治療を組み合わせ, なるべくQOL を損ねない集学的治療が有効であると考えられた。 -
大腸癌手術例における腹腔洗浄細胞診の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description大腸癌278例の腹腔洗浄細胞診(CY)を行った。CY(+)は7.9%あり, 腹膜播種陽性P(+)18例では66.7%あったが, P(−)260例では3.8%と低かった。深達度ss以上244例の腫瘍先深部の組織型別では, P(+)は低分化ほど高率となり, CY(+)も低分化で高かった。P(+)のなかではCY(+)は, P1, 2よりP3で, cur B よりcur C で高率だった。P(−)260例でもCY(+)は, stage IV 期が6/42例あり, stage IIIb期以下の治癒切除4/218例より高かった(14.3% vs 1.8%)。そのうち特にM(+)で多かった(66.7%)。P(−), CY(+)治癒切除4例の予後は, 2例が20か月および5年以上無再発生存。1例は半年後肝転移切除しその後再発なし。もう1例は脳肺腹壁再発を来し死亡した。CY(+)およびP(+)は組織型が低分化ほど多く, CY(+)はP(+)では播種が高度ほど, 切除可能より不能例で高率になる。一方, P(−)治癒切除例ではCY(+)はまれで腹膜再発の予測因子とはならないが, すでに遠隔転移を来した症例で高頻度となることから, そのような症例では腹膜再発の他, 血行性遠隔転移の危険性も考慮すべきと考えられた。 -
胃癌腹膜播種性転移における定量PCR を用いたReg IV の発現解析
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionわれわれは, これまでに理研DNA チップを用いて腹水胃癌樹立細胞株5種類で特異的に発現上昇している遺伝子を複数個同定した。このうちReg IV はReg gene familyの一つで分泌蛋白質であり, 胃や大腸, 膵臓, 前立腺で分泌されることが知られているが, 胃癌腹膜転移における役割はいまだ不明である。そこでReg IV の胃癌腹膜転移における発現を検討した。方法:2004年までに当科で切除された胃癌41症例の胃癌組織および術中腹腔内洗浄水について, Reg IV の発現量をリアルタイムRT-PCR で測定し検討した。結果:胃癌組織におけるReg IVの発現は正常胃粘膜に比し, 約20倍と有意に上昇していた。また術中腹腔内洗浄液では, Reg IV は腹膜播種陽性例で陰性例に比し, 有意に発現上昇していた。考察:Reg IV はReg gene familyの一つで分泌蛋白質である。近年, 胃癌や大腸腺腫におけるReg IV の関与が報告されている。胃癌腹膜転移におけるReg IV の役割はいまだ明らかではないが, 今回胃癌腹膜転移にて高発現していることを確認したため, Reg IV が胃癌腹膜転移に何らかの関連があるものと推測された。Reg IV は腹腔内遊離癌細胞検出のための新しいマーカーとなり得る可能性が示唆された。 -
Cisplatin(CDDP)+Paclitaxel(PTX)腹腔内投与により腹水が軽快した悪性腹膜中皮腫の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description今回, cisplatin(CDDP)+paclitaxel(PTX)腹腔内投与により腹水が軽快した腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する。症例は63歳, 男性。体重減少, 腹部膨満があり当科紹介入院。CT などにて多量の腹水と大網内の多発腫瘤が認められた。腹水細胞診にてClass V と診断, 穿刺針生検にて悪性中皮腫と診断された。CDDP 70mg/day, PTX 100mg/dayの腹腔内投与を週1回, 2週間施行。摂食可能となり, CT にて腹水は著明に減少したが, 主病巣には変化を認めなかった。PTX やCDDP の腹腔内投与は胃癌, 大腸癌などで行われているが, 特に近年PTX の腹腔内投与が胃癌の腹膜播種に対して有効との報告がある。腹膜中皮腫に対しても今回の化学療法が腹水を減少させQOL を改善させたとの報告例があり, 本症例に施行し同様の効果が得られた。 -
進行膵癌の癌性胸腹水に対するGemcitabine腹腔内および胸腔内投与に関する検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description進行膵癌の癌性胸腹水に対してgemcitabine(GEM)の腹腔内および胸腔内投与を行い, その効果と安全性について検討した。対象は, 2002年4月から2004年3月までに経験した進行膵癌64例中, 腹水または胸水の貯留を認めた癌性腹膜炎の5例と癌性胸膜炎の3例である。その8例に対し, 腹水または胸水穿刺後にGEM 500mg/m2を腹腔内または胸腔内に注入した。投与後, GEM の血中移行と副作用の有無について検討した。そして反復投与を行い, 胸腹水量の変化と細胞診検査による効果判定を行った。GEM 腹腔内胸腔内投与後の血中濃度は, 静脈内投与に比べて低値であった。癌性腹水の5例中3例で腹水の減少を, 癌性胸水の3例中2例で胸水の減少を認めた。副作用は, grade1/2の白血球減少を4例, 血小板減少を3例, 脱毛を2例に認めたが, いずれも軽微なものだった。本治療は副作用が少なく, 癌性胸腹水を伴う進行膵癌患者のQOL 改善に寄与し得る治療法の一つと考えられた。 -
WS カテーテルを用いた肝動注化学療法—カテーテル抜去症例を中心に—
32巻11号(2005);View Description Hide Description経皮的にWS カテーテルの挿入を行って肝動注を施行した47例(5Fr28例, 3.3Fr19例)について検討した。40症例(85%)で「投げ込み法」にてカテーテルの留置を行うことができ, 経過中カテーテルの位置異常は認めなかった。20例(5Fr12例, 3.3Fr8例)で抜去を試みたが, 全例で合併症なく容易に抜去することができ, 患者のQOL は向上した。抜去カテーテル表面の電顕像ではフィブリン網の形成はなく抗血栓性が保たれていた。3DCT による肝動脈形態の追跡では, 5Fr使用例では長期留置例を中心として7例で狭窄を認めたが, 3.3Fr使用例では1例を除いて変化を認めず, 肝動脈の開存性がよく保たれていた。先端部に形状記憶コイルを埋め込んだWS カテーテルは血管壁にコイル固定することなしに安定した留置が得られ, 後に抜去することも可能である。本カテーテルを用いた抜去を前提とした肝動注化学療法は, 特に期間を限定した治療である場合, 有用であると考えられた。 -
根治術不能と診断された進行直腸癌および局所再発直腸癌に対する経内腸骨動脈の動注化学療法を施行した5例
32巻11号(2005);View Description Hide Description根治術不能と診断された進行直腸癌および局所再発直腸癌に対して, 経内腸骨動脈の動注化学療法を施行した5例について報告する。方法は, 毎週1回左右のリザーバーよりそれぞれ5-FU 500mg, l-leucovorin 125mg/m2を動注した。治療施行回数および施行期間は, 平均40(17〜74)回, 平均12.8(5〜23)か月であった。治療効果は, 症状が消失または緩和した症例4例, 画像評価(CT)で腫瘍の縮小を認めた症例2例, CEA 値が低下した症例が3例であった。合併症は, 皮膚障害が全例, 下肢の感覚障害3例, 感染2例, カテーテル閉塞が2例に認められた。治療継続状況では, 全例が合併症の出現により投与量の減量や休薬・中止され他の治療法が施行されていた。臨床経過は原発直腸癌では1年後および3年後に, 再発直腸癌では7か月後および1年後に原癌死し, 原発直腸癌1例は治療を継続しているが, 肝・肺に多発転移を認め治療開始後2年生存中である。 -
大腸癌肝転移に対する化学療法の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description大腸癌では肝転移が最も頻度の高い転移臓器であり, 肝転移の進行が患者の予後を左右する。大腸癌肝転移に対する第一選択の治療法は外科的切除であるが, 切除できない肝転移が多い。このような症例に対し, 化学療法が極めて重要となってくる。今回われわれは, 大腸癌肝転移の非切除症例のうち肝転移が予後の規定因子になると考えられる18症例に対し, WHF 法にて肝動注化学療法を施行し, その後irinotecan(CPT-11)を中心とした多剤併用の全身化学療法を行った。治療成績は,奏効率が72%(13/18)であり, 1年生存率100%(16/16), 2年生存率83%(10/12), 3年生存率50%(5/10)であった。この併用化学療法は有用な治療法と考えられた。 -
切除不能食道癌に対するDocetaxel併用放射線治療の経験
32巻11号(2005);View Description Hide Description目的:切除不能食道癌に対する治療として, docetaxelを併用した放射線治療の有効性および安全性を検討した。対象と方法:2003年以降, 当院で治療した切除不能食道癌で, 病理組織学的に扁平上皮癌と診断された10症例を対象とした。治療方法は, 放射線治療は1日2Gyを1週間に5日行い, 合計60Gyを照射した。docetaxelは放射線治療開始と同時期に1週間に1回, 10mg/m2を1時間で点滴静注を行い, 6週間にわたり施行した。結果:10症例中9例で抗腫瘍効果の判定が可能であった。CR 1例, PR 6例, SD 1例, PD 1例で, 奏効率は77.7%であった。有害事象はgrade2の白血球減少を2例で認めた。考察:docetaxelは腫瘍細胞の細胞周期をG2/M 期で停止することで放射線治療の増感受剤としての働きをもつとされる。今回の検討では有効性, 安全性ともに満足すべき結果が得られ, 外来治療およびneoadjuvant 治療への応用が期待される。 -
切除不能胆道系悪性腫瘍に対する放射線併用化学療法の有効性に関する検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description緒言:切除不能胆道系悪性腫瘍に対して放射線併用化学療法を試行したので, その有効性について検討した。対象:2002年2月から2004年3月までに切除不能と判断された胆道系悪性腫瘍7例。方法:照射方法は三次元原体照射単独5例, 原体照射+RALS 2例。化学療法は5-FU+CDDP を行い, 放射線終了後も継続治療を行った。効果判定はCT および腫瘍マーカーの推移にて判断した。結果:1年生存率は85.7%で生存期間は中央値で1.41年(0.65〜2.65年)であった。治療効果は, 画像上PR と判断されたものは2例にとどまったが, 照射終了1か月後の腫瘍マーカーは85.7%(6/7)で照射前値の1/3以下に低下した。副作用は嘔気・嘔吐, 食欲不振などを認めたが, いずれもgrade2以下であった。結語:放射線併用化学療法は切除不能胆道系悪性腫瘍に対して, 予後の改善に有効である可能性が示唆された。 -
進行膵臓癌に対する少量Gemcitabine併用放射線化学療法症例の経験
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionはじめに:局所進行膵臓癌に対し少量gemcitabine(GEM)併用放射線化学療法を実施。対象と方法:対象は遠隔転移のない浸潤性膵管癌症例8例。切除例3例, 非切除例5例。術中照射は8〜10cmのコーンを用いて25Gy。術後体外照射は合計50Gyを週5回×5週間に分割照射。体外照射時に少量GEM 投与例4例, 非投与例4例。GEM 40mg/m2, 週2回投与。治療終了後の腫瘍マーカーとCT を検討。結果:最初の3例で治療中にgrade3の白血球減少症が出現。切除, 非切除に関係なく腫瘍マーカーの激減あり。画像では腫瘍CT 値が低下し, 縮小。まとめ:少量GEM 併用放射線化学療法の効果判定は, 長期的経過の検討を含めて今後さらに症例の集積が必要であるが, GEM 40mg/m2/week が局所制御に効果的かつ実践的である可能性が示唆された。 -
Docetaxelを併用した食道癌に対する化学放射線療法
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptiondocetaxel(DOC)と放射線照射の併用効果が頭頸部癌において示されているが, 今回DOC を併用した化学放射線療法を施行した食道癌を4症例経験した。症例は術前無治療の3例および化学療法施行後再燃を来した1例の計4症例である。DOCは週1回の10mg/m2の投与し, 根治放射線照射を行った。4症例全例で治療を完遂可能で重篤な合併症は認めていない。腫瘍縮小効果は術前未治療例の1例でCR, 2例でPR であり, 化学療法後再燃の症例は照射野外に再発を来したが, 照射野内はCR を維持している。低用量のDOCを併用した化学放射線療法により食道癌に対して良好な局所制御効果が得られた。DOCが放射線に対する増感剤として強く作用してい得ることを示唆すると考えられる。 -
食道癌術後左主気管支再発による気管支完全閉塞に右肺肺梗塞を合併した1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は54歳, 女性。胸部T4食道癌に対して術前化学療法および食道癌根治術を施行した。術後2か月で高度の呼吸困難を訴え緊急入院した。入院時血液ガスは挿管下FiO2:1.0, Peep:5mmHg の条件でPaO2:25mmHg と高度の低酸素血症を呈していた。胸部CT で左主気管支内腔に突出する径2cm の腫瘍と左無気肺, 肺血流シンチグラフィで右肺全体の血流低下を認め, 再発腫瘍による左主気管支の閉塞と右肺梗塞による呼吸不全と診断した。高度の低酸素血症がありステント挿入操作自体の危険性が高いため, 抗凝固・血栓溶解療法を行いつつ左主気管支開存を目的にFogarty catheterによる拡張, Nd-YAG レーザーによる腫瘍焼灼を施行した。その後呼吸状態が一時的に改善したため閉塞部にexpandable metallic stent(EMS)を留置した。EMS 挿入に伴う合併症はなく呼吸困難と無気肺は劇的に改善し退院した。退院後は放射線治療を施行し左主気管支内腔の腫瘍は消失した。一側の気道閉塞と対側の血流障害を同時に合併した高度の呼吸不全症例に対して集学的な治療管理により救命できた症例を経験した。 -
十二指腸原発GIST 術後の多発肝転移にImatinib Mesylateが著効を示した1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description緒言:GIST の化学療法に対してimatinib mesylate:IM(Glivec)が日本でも使用可能となったが, まだその日も浅く効果についても報告数はいまだ少ないのが現状である。今回われわれは十二指腸原発GIST 術後多発性肝転移例に対してIM 投与が著効を示した1例を経験したので報告する。症例:症例は36歳, 男性。近医にて十二指腸原発GIST に対して膵頭十二指腸切除術を施行された。術後follow中, 3か月目に多発性の肝転移を認めたため, 加療目的に当院に紹介となった。治療および経過:当院外来にてIM(400mg/body/day)の投与を行った。治療開始後4か月目に肝転移巣は著明な縮小を認めた。また, 治療開始6か月後にはCT 上肝転移巣は完全に消失し, FDG-PET にても肝への取り込みはまったく認められなくなり, 治療効果はCR と判断された。有害事象は軽度の肝機能障害を有するのみであった。治療後の経過は良好であり, 現在治療開始後18か月を経過したが, 転移巣の再燃を認めていない。結語:IM はGIST の切除不能多発肝転移に対する治療選択の一つとして有用であると考えられた。今後IM 感受性に関連するc-kit 変異の解析など基礎的研究と臨床データの集積が必要になると考えられた。 -
早期胃癌に対する胃局所切除術の評価とその限界
32巻11号(2005);View Description Hide Description1999年から2004年に胃粘膜内癌に対する縮小手術として, 幽門側胃切除術(D1+α)7例, 胃分節切除術9例, 胃局所切除術13例を施行した。術後の胃内視鏡検査, BMIの低下率, RIシンチグラムによる胃排泄能の結果などから胃局所切除術, 特に大弯側病変における胃局所切除術は, 器質的および機能的術後障害を軽微にできる可能性が示唆された。しかし, 臨床および術中所見での深達度M, リンパ節転移N0の正診率は69%であり, 胃局所切除術の1例に局所リンパ節再発を認めたことから, 今後sentinel node navigation surgeryなどの導入による厳密な適応が必要であると考えられた。 -
腎障害のある胃癌患者に対するPaclitaxel(PTX)腹腔内投与の治療経験—血清と腹水中のPTX 濃度の変化と腎への影響について—
32巻11号(2005);View Description Hide Description癌性腹水のある胃癌患者に対して, paclitaxel(PTX)の腹腔内投与を施行し, 腎機能障害の有無で腹水中と血清中の経時的濃度変化や副作用の発現などについて検討した。症例は50歳台, 女性, 以前より腎機能障害を指摘されていたが治療歴はなかった。今回多量の腹水による呼吸困難で救急搬送され, 入院先で胃癌, 癌性腹水と診断された。当院にてPTX の腹腔内投与を行い腎機能低下に伴う合併症を起こすことなく治療し得た。PTX は腎機能障害のある患者に対しても投与可能であることが示唆された。 -
腎機能低下を伴う進行胃癌に対するPK 測定に基づいたTS-1継続投与の試み
32巻11号(2005);View Description Hide DescriptionTS-1に配合された5-FU 分解阻害剤5-chloro-2,4-dihydroxypyridine(CDHP)は, 5-FU の分解経路におけるdihydoropyrimidine dehydrogenase(DPD)を選択的に阻害する。CDHP は主に腎排泄性であるため, 腎機能低下例では5-FU の血中濃度が上昇し, 毒性発現が増加することが知られている。今回われわれは, TS-1投与中に腎機能悪化を来し有害事象のため治療継続が困難になった症例に対し, 5-FU のPK パラメータをCmax とAUC(0〜∞)とT1/2について測定し, 至適TS-1投与法を推定した。投与方法はTS-1の60mg/body1日1回投与28日投与14日休薬で, この方法でTS-1治療を再開継続することが可能となった。5-FU の薬物血中動態を測定し,TS-1の至適投与方法を推定することは腎機能低下例において有用である可能性があると考える。 -
Weekly Paclitaxel投与により再発癌性腹水が完全消失(CR)した大動脈周囲リンパ節転移を有したStage IV 胃癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は71歳, 女性。2002年3月7日, 体下部中心の進行胃癌に対して胃全摘, 脾摘, 胆摘およびD2+αリンパ節郭清, 腹腔ポート留置を行った。所見はMLU, 10×14cm, por1 type3 pT3, pN3(12p:1/1, 16b1 int:3/3, 16b1 lat:2/2), P1(横行結腸間膜), CY1, H0, p stage IV であり, 根治度はB であった。術後腹腔ポートよりMTX/CDDP/5-FU のdouble modulation療法を1クール行い退院した。それ以降は外来にて, 同じく腹腔ポートよりMTX 30mg+5-FU 750mg をbi-weekly で継続していた。同年8月に食思不振と下痢が出現し, 再入院となった。腹部CT では著明な腹水の貯留を認め, 腹水の穿刺細胞診ではadenocarcinomaとの診断結果であった。抗癌剤に起因した化学的な刺激による炎症反応とも考えられたため, ポートからの化学療法を中止し, 同月末からはpaclitaxel 90mg/bodyをweeklyで経静脈的に開始した。全身状態が改善したためいったん退院し, その後も外来にてpaclitaxel 90mg をbi-weeklyに継続した。同年の11月の腹部CT では腹水の減少を認め, その後さらに腹水は消失した。約3年を経た2005年3月の現在までpaclitaxel 90mg を2〜3週ごとに継続中であるが, 腹水の再貯留やリンパ節の腫大, 肝転移なども認めていない。 -
TS-1を中心に多剤をSequentialに併用し著効が得られた胃癌肝・肺転移の1症例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は61歳, 男性。噴門小弯中心, ECJ より胃体中部に至る大きな癌腫で, 肝・肺多発転移を伴っていた。治癒切除不可と判断し, TS-1による外来化学療法を開始した。TS-1は単剤で著効を示し, CEA 値4,528ng/ml が約3か月で44ng/ml まで低下し, 内視鏡や画像診断でも著明な腫瘍縮小が得られPR となった。しかし約半年でCEA 値が漸増しはじめ, TS-1にCDDP を併用したが効果なく, paclitaxel(PTX)単独に変更した。CEA 値が上昇したのでPTX にTS-1を併用した。この併用が奏効し, 再度CEA 値が低下した。最初の治療から約1年間, CEA 値の良好なコントロールが得られた。その後, TS-1にCPT-11やMMC, docetaxel(DOC)をsequentialに併用し, 約2年間は症状もなく良好なQOL を保てた。TS-1を中心にsequentialに他剤を併用する方法の有用性が示唆された。 -
術前CDDP+TS-1併用化学療法が著効した胃癌肝転移の1切除例
32巻11号(2005);View Description Hide Description患者は40歳台, 女性。2004年3月ごろ心窩部痛で近医を受診した。胃カメラで胃角部に巨大なBorrmann II 型の腫瘍を指摘された。胃生検でGroup V(tub 2, por1), 胃癌と診断。腹部CT 検査で肝S2, S3, S5にSOLを腹部超音波検査で多発性肝転移を指摘された。治癒切除不可能と考え, まず化学療法でdownstaging を図った。レジメンはCDDP 70mg/m2 day8 24時間投与TS-1 80mg/m2 day1〜14 2週投薬, 2週休薬を1クールとする投与法で3クール施行した。2004年5月16日の腹部CT 検査で肝腫瘤はS3:3cm, S2:1cm, S5:1.5cmの大きさであったが, 9月14日ではS3:1.5cm, S5:5mmに縮小, S2の病変は消失していた。胃角病変はほとんど上皮化していた。以上よりPR と判断。9月28日に幽門側切除術, S3肝部分切除術, S5マイクロ波凝固術を施行した。胃癌肝転移症例の予後は不良であり確立された治療はないが, 術前CDDP+TS-1併用化学療法でdownstaging が得られたことより有用な術前化学療法の一つであると考えられた。 -
胃癌術後Schnitzler転移による直腸狭窄に対しTS-1, CDDP 併用化学療法が著効した1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は40歳, 女性。2000年9月胃癌にて胃全摘術, 膵尾・脾・胆嚢合併切除術施行, P1, SE, H0, N2でStage IVであった。外来で定期的に通院していたが, 2004年9月より血便を認め, 直腸指診で直腸前壁に硬い腫瘤を触れた。S 状結腸ファイバーで直腸前壁に出血を伴う潰瘍性病変を認めた。生検の結果, Group V, 低分化型腺癌であった。2004年10月よりTS-1 100mg/dayを3週間投与し2週目にCDDPを24時間かけて100mg/bodyを点滴静注した。3クール施行した後, 2005年2月の大腸ファイバーで直腸にあった腫瘤は消失し瘢痕を認めるのみとなった。CT 検査でも傍大動脈周囲のリンパ節腫大は縮小し直腸の壁肥厚も改善されていた。便秘, 血便は消失し現在, TS-1 100mg/dayの経口投与で経過観察中である。 -
肝動注カテーテルが原因と考えられた総肝動脈仮性動脈瘤の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Descriptionわれわれは肝動注カテーテルにより発生した総肝動脈仮性動脈瘤に対し, 金属コイル塞栓が奏効した症例を経験したので報告する。症例は87歳, 男性。1999年に他院で直腸癌に対し前方切除術を施行された。2003年2月に肝腫瘍が出現したので当科紹介となった。2003年3月17日入院の上, 2003年3月20日拡大肝左葉切除術, S7, S8部分切除術を施行した。術後補助療法として術後予防的肝動注を合計10回施行した。カテーテルはGDA-coil法で挿入した。その後経過観察していたが, 2004年1月下旬より腹痛と背部痛が出現した。外来にて経過観察していたが痛みが増強するので2004年3月1日に入院となった。CT, MRI で総肝動脈に仮性動脈瘤を認め, 肝動注のカテーテルが原因と考えられた。2004年3月8日, 緊急で血管造影を施行した。36個の金属コイルにて動脈瘤を塞栓したところ, 腹痛背部痛は消失した。 -
CPT-11+TS-1併用化学療法により腹膜播種が消失しCR となった1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は35歳, 男性。2004年4月22日下行結腸癌の診断にて下行結腸切除術, D1郭清施行。術中所見ではP3H0N1SE, Stage IV であった。5月18日腹部CT ではダグラス窩に1.2cm および腹壁創直下に1.7cmの腹膜播種を認めた。6月22日よりCPT-11+TS-1併用化学療法を開始した。投与方法は5週(35日)の間にCPT-11を2回点滴(150mg/body day1 and 15)し, TS-1を3週(day1〜21)内服(120mg/body/day)した。2コース終了後には腹膜播種消失し, CR inとなった。さらに3コース終了後のCT でCR 確定となった。この間の有害事象はgrade1の好中球減少のみであった。4コース目の投与は行わなかったが, その後も再発することなく経過し, 化学療法終了後から約6か月経過した2005年3月3日撮影の腹部CT でも再発は認めず, 現在もCR のまま経過している。 -
切除不能直腸癌に対してTS-1+CPT-11療法により切除可能となった1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は50歳代の女性。下腹部腫瘤を主訴に当院初診した。大腸内視鏡にて直腸癌と診断した。CT 検査では肝転移, 肺転移, 肝門部リンパ節転移, 肺転移を認めた。切除不能直腸癌に対して, TS-1+CPT-11療法を施行した。TS-1は80mg/m2を2週投与2週休薬で経口投与, CPT-11は80mg/m2を隔週投与とした。有害事象としてgrade1の白血球減少と好中球減少を認めた。2クールでpartial responseの効果が得られ, 6クール後downstageが得られたため根治手術施行した。切除標本の組織学的効果判定ではリンパ節でGrade1a, 肝転移巣ではGrade3であった。本療法は非常に忍容性に優れ, 簡便でコンプライアンスが得られやすい。切除不能大腸癌に対する有効な治療になり得ると考えられた。今後, FOLFIRI やFOLFOX regimenとの第III相試験での検証が期待される。 -
大腸癌肝肺転移に対しL-OHP を使用した1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description大腸癌術後再発に対してoxaliplatin(L-OHP)を使用した1例を経験した。症例は77歳, 男性。2003年5月に上行結腸癌・肝転移に対し, 右半結腸切除術・肝外側区域切除術を施行。術後再発に対し, 肝動注療法・CPT-11+5′-DFUR を行いPD となったため, FOLFOX4レジメンを行った。副作用はL-OHPの累積投与量が750mg を超えた時期より, 末梢神経障害(知覚異常)を認めたが, 10か月以上投与を継続して行い, 腫瘍の増大をコントロールすることができた。 -
直腸癌の管腔内転移により発症したと考えられた転移性痔瘻癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は63歳, 男性。痔瘻の手術後, 肛門部痛が継続したため来院。指診で肛門部腫瘤を認め, 生検で中分化型腺癌であった。また同時に内視鏡で肛門縁から15cm に直腸癌を認め, こちらも中分化型腺癌であったため, 直腸癌の管腔内転移により発症した転移性痔瘻癌の可能性が示唆された。直腸癌に対して前方切除術を施行したが, CT で左肺転移が指摘されていたため, 痔瘻癌には術後QOL の低下も危惧し, 経肛門的局所切除を行った。切除標本の検討では, 両腫瘍は組織学的に極めて類似し, 免疫染色(Ki-67, p53, Muc2, CD10, CK-7, CK-20)および癌関連遺伝子(p53, K-ras, MSI)の検討でも同様の結果であった。以上より, 痔瘻癌は直腸癌からの管腔内転移により発症した可能性が極めて高いと考えられた。 -
直腸癌局所再発に対してTissue Expanderを用いて放射線化学療法を行った1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は64歳, 女性。下部直腸癌に対し腹会陰式直腸切断術施行。腫瘍は径4.5cmの2型, 組織型はmucinous, 進行度はa2, n1(+), P0, H0, M(−), stage IIIaであった。術後補助療法として5-FU/LV を2クール施行したが, 術後7か月目より臀部痛出現。精査の結果, 仙骨前面にφ4.5×6cm の腫瘍を認め, 局所再発巣の仙骨浸潤と診断。tissue expander骨盤内留置, dexon meshによる骨盤底形成術施行し, 放射線化学療法(CRT)を3クール施行(CPT-11 100mg/body, 5′-DFUR 800mg/body, 総線量65Gy)。CEAはCRT 前最大13.8ng/ml から正常化, 画像上はNCを維持し, 臀部痛も消失した。腫瘍壊死による骨盤内膿瘍を認めたが保存的に軽快した。CRT 後約2年にわたる腫瘍マーカーの正常化とQOL 改善を認めた症例を経験し, 直腸癌局所再発に対し本法が有用である可能性が示唆された。 -
乳癌術後局所皮膚再発にIrinotecan Hydrochloride(CPT-11)を投与し制御し得た2症例の検討
32巻11号(2005);View Description Hide Description乳癌は, 化学療法や放射線療法にも反応し内分泌療法にも奏効を示し, その有用性が報告されている。しかし, anthracycline系, taxanes系薬剤に抵抗性を示す症例も少なくない。今回われわれは, そのような薬剤に耐性獲得をして局所皮膚再発を認めた症例に対してirinotecan hydrochloride(CPT-11)を用いて局所コントロールし得たので報告する。2症例ともに局所皮膚再発部位の縮小あるいは消失を認めた。また, 腫瘍マーカーの低下も認めた。これらより耐性獲得した再発・進行局所乳癌症例に対して, CPT-11の有用性が示唆された。 -
MRIマンモグラフィが発見の契機となったHollywood症候群後に発生した乳癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は64歳, 女性。約40年前に豊胸術施行されている。左乳房痛を主訴に当院受診。理学的に左C 領域に1×2cmの不整形, 境界不明瞭な腫瘤を触知したがparaffinomaとの鑑別が困難であった。所属リンパ節の腫大を認めなかった。MRIにて15mm のspiculaを伴う不整な腫瘤を認め, ABC 施行にてClass IV の診断を得た。左乳癌T2N0M0, Stage IIA の診断で胸筋温存乳房切除術+センチネルリンパ節生検術を施行。術中迅速診断にてリンパ節転移陽性であったため, level II リンパ節郭清を付加した。病理組織診断はPap, f+, n+(level I 8/11), ER/PGR ともに陽性, HER2 score 0であった。非癌部はparaffinomaの所見であった。術後補助化学療法としてCPA 800mg, EPI 80mg, 5-FU 750mg 施行, 現在6cycle施行するも明らかな有害事象もなく経過観察中である。 -
難治性再発乳癌に対するTrastuzumab(Herceptin)と自己活性化リンパ球局所投与の併用による免疫療法
32巻11号(2005);View Description Hide Description標準化学療法(cyclophosphamide,adriamycin,5-fluorouracil:CAF など)で無効となったHER2/neu陽性再発乳癌2症例に対し, trastuzumab(Herceptin)と患者活性化リンパ球の局所注入による免疫療法を行い, その臨床経過などを検討した。まず, ex vivo にて自己腫瘍細胞と末梢血リンパ球と共培養により活性化リンパ球を誘導した。リンパ球の性状および細胞障害性を確認した後, 自己活性化リンパ球による局所注入とtrastuzumab併用を行い, それぞれ6回と11回投与した。2症例とも癌腫縮小などの臨床反応がみられ, tumor markerも低下した。有害事象として発熱の他, 症例1では頻脈, 症例2では低血圧がみられた。以上より再発乳癌2症例ではtrastuzumabと自己活性化リンパ球との併用が安全に行われ, 抗腫瘍臨床反応がみられた。 -
集学的治療により良好な経過が得られたStage IV 乳癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は63歳, 女性。潰瘍を伴う右乳房腫瘤と黄疸を主訴に当科受診。多発性肺肝転移を認めるStage IV 乳癌と診断した。多量の腹水を認め, 血液生化学検査にてT-Bil 3.9mg/dl が上昇していた。太い針生検による病理組織検査にてGroup Vであり, HER2 score(3+)であった。trastuzumab(TZB)(weekly)とdocetaxel(DOC)(tri-weekly)の併用療法を開始した。TZB 5回, DOC 2回終了時に腹水と黄疸は消失した。さらに治療を継続したところ主病巣は縮小し(PR), 腋窩リンパ節も縮小した(PR)。肝転移巣および肺転移巣も画像上縮小した(PR)。その後はTZB 単独療法を継続していたが1年後に脳転移を認め, 放射線治療を行った。治療経過中, 好中球減少(grade1), 脱毛(grade2)を認めたが重篤な副作用は認めず, 治療を中断することなく2年が経過している。現在, 脳転移巣は認めるものの神経症状はなく, 日常生活を妨げることなく良好なQOL が保たれている。 -
癌性胸膜炎による胸水貯留に対して良好なコントロールが得られた再発乳癌の2例
32巻11号(2005);View Description Hide Description癌性胸膜炎による胸水貯留をコントロールし, 再発後長期間の外来治療を継続している再発乳癌の2例を報告する。1例目は49歳, 女性。1993年9月に右乳癌にて胸筋温存乳房切除術を施行。2000年6月に多発性肝転移にて再発。肝動注化学療法を含めたCEF 療法の後, 2001年12月に拡大肝右葉切除術を施行した。2003年12月に右胸水貯留出現。胸腔ドレナージ後, OK-432胸腔内投与による胸膜癒着術を施行した。その後, weekly paclitaxel療法を導入・継続している。2例目は55歳, 女性。1999年9月に左乳癌にて胸筋温存乳房切除術を施行。2003年5月に局所再発, 癌性胸膜炎を認めた。胸腔ドレナージ後, 感染性胸膜炎を合併, 感染症治療の後, カテーテルを抜去した。その後, CE 療法に続いて内服の化学内分泌療法を開始した。上記2例ともに2005年7月現在, 胸水の再貯留は認められず外来通院加療中である。 -
肝切除後4年無再発生存中の乳癌単発性肝転移の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description乳癌単発性肝転移に対し, 肝切除を施行後4年間無再発で生存中の1例を経験したので報告する。症例は53歳, 女性。2000年5月左乳癌T1N0M0(Stage I)の診断で胸筋温存乳房切除術を施行した。病理組織学的診断はmedullary carcinoma, n0, f, ER(−), PgR(−)であった。以後, 外来にて経口化学療法を施行し経過観察中, 2001年3月に施行した腹部超音波検査にて肝S6に孤立性の腫瘤性病変が認められ, 精査加療目的入院。他臓器に明らかな病変は認めず乳癌肝転移と診断し, 同年5月肝右葉切除術を施行した。病理組織学的所見にて乳癌肝転移と診断した。肝切除後4年経過した現在も再発の徴候は認めていない。乳癌の肝転移は他の再発部位に比し予後不良とされ, 肝切除の適応となる症例は少ないが本症例のように切除可能な症例に対しては, 積極的に外科的切除をすることにより長期生存や根治の可能性が得られると考えられた。 -
ラップ(Wrap)療法が著効した巨大肝細胞癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は50歳代, 男性。2004年5月, 上腹部痛にて近医を受診し, 肝腫瘤を指摘された。精査にてB 型肝炎を背景とした約10cm 大の肝細胞癌と診断された。肝内転移を伴い, リンパ節転移も疑われたためTAEを第一選択とし, 二度にわたり施行した。しかし, 腫瘍の尾内側はGDAおよびRGEAからの寄生栄養動脈により供血され, 十分な塞栓が不可能なため, viable lesionが残存し増大傾向を認めた。そこで同年8月, 同部の供血路を断つ目的で開腹下にラップ療法(側副血行路遮断術+シリコン膜被覆)を施行した。術後, ラップ療法単独の効果により, viableであった腫瘍尾内側部は壊死に陥り, PIVKA-II も陰性化した。術後10か月現在, 無増悪生存中である。 -
集学的治療により長期生存した高度の門脈, 胆管腫瘍塞栓を伴う進行肝細胞癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description門脈・胆管腫瘍塞栓を伴う進行肝細胞癌(HCC)症例に集学的治療を行い, 長期生存を得たので報告する。症例は60歳, 男性。1999年4月に肝左葉の門脈および胆管の腫瘍塞栓を伴う腫瘍径5cm のHCC を認め, 入院となった。術前肝動脈化学塞栓療法(TACE)後に, 7月に肝拡大左葉切除術を施行した。2000年1月に肝後区域に6個のHCC を認め, 開腹下マイクロ波凝固療法を施行した。4月には肝後区域にび漫性の再発を認め, CDDPと5-FU によるリザーバー肝動注療法を施行して, CR を得た。2001年1月にS7にHCC を認めTACE を施行したが, 同年6月に再発を認め, CO2アンギオ下経皮的ラジオ波凝固療法を施行した。2002年9月, 再度同部位に横隔膜浸潤を伴う再発を認め, 横隔膜の合併切除を伴う肝部分切除術を施行した。同年1月残肝再発に対しTACE を施行した。しかし, 2003年3月に肝外転移を来し全身化学療法を施行するも効果なく, 同年6月に永眠された。本症例が長期生存できたのは, 最初の手術が適切に行われ, その後繰り返す再発に対し肝機能を温存しつつ, 腫瘍マーカーや画像所見の推移を指標に適切な治療が選択されたためと考えられた。 -
集学的治療が奏効し長期生存中の肝癌の1症例
32巻11号(2005);View Description Hide Description多発肝癌に対し, 初回TAE およびPEIT を行い, その後局所の再発に対してTAEや肝臓切除およびRFA を施行し, 長期に生存している症例を経験した。症例は現在66歳, 男性で1992年HCV 陽性を指摘され, 1998年8月ごろよりAFP, PIVKA-II の上昇を認め, S5, S7, S8に3個の肝臓癌が存在することがわかり, TAE 施行, さらにPEIT を追加した。その後, 再発を繰り返し, 以後4年3か月の間にTAEを計12回施行した。この間に徐々に右葉が萎縮し, 2002年11月に右3区域切除, 右横隔膜合併切除を施行した。組織診断は高分化の肝細胞癌であった。術後1年3か月目に残肝S3に新病変が出現し, TAE およびCT ガイド下RFA を施行。その後肺CT にて左肺上葉に単発の転移性腫瘍が出現, 胸腔鏡にて切除された。本症例は肝臓癌初発より6年10か月が経過し, 現在tumor freeで比較的長期に生存中である。 -
門脈腫瘍栓除去術後, 残存腫瘍栓放射線療法を中心とする集学的治療が著効した肝細胞癌(Vp4)の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は57歳, 男性。C 型肝炎の経過観察中に腫瘍マーカーが高値となり精査。Vp4門脈腫瘍栓を指摘される。原発巣は後区域にdiffuseに存在した。このVp4肝細胞癌に対し, 肝後区域切除, 門脈腫瘍栓摘出術, 胆嚢摘出術を行った。術後残存した門脈腫瘍栓が術後45日目にもviableであったために肝動脈化学療法, 肝動脈塞栓療法, 腫瘍栓に対する放射線療法を行い血流の途絶と腫瘍の退縮を得た。門脈腫瘍栓除去術後, 残存腫瘍栓に治療された報告はほとんどなく考察を加え報告した。 -
減量肝切除と経皮的肝灌流化学療法(PIHP)のDual Treatmentにより2年間の局所完全寛解を得た門脈腫瘍栓合併両葉多発肝癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description高度な門脈腫瘍栓(Vp3,4)を有する多発肝細胞癌(m-HCC)は従来有効な治療法がなく, 6か月以上の生存は例外的と考えられていた。当施設ではVp3,4 m-HCC に対し, 減量肝切除にPIHP を併用するdual treatment(dual Tx)を導入し, 高率に中〜長期生存を得ている。今回, 本療法により2年間の局所完全寛解を得た症例を報告する。症例は53歳, 男性。肝右葉に塊状型主腫瘍, 両葉に多数の肝内転移巣(IM)を認め, さらに門脈本幹に達する腫瘍栓(Vp4)を合併していた。肝機能はICG R15が12.4%と比較的保たれていたため, 門脈腫瘍栓摘出を伴う肝拡大右葉切除を実施し, その後3か月以内に2回のPIHP を施行した。その結果, 残肝のIM はすべて消失し, 2年間局所完全寛解が継続した。最終的には縦隔内再発に伴う上大静脈閉塞を来し, 減量肝切除の27か月後に死亡した。以上より, dual Tx は肝機能が許容すればVp3,4 m-HCCに対して最も有効な治療となり得ると考えられた。 -
減量肝切除と経皮的肝灌流(PIHP)の2段階治療(Dual Treatment)により完全に局所制御できた両側門脈腫瘍栓合併多発肝細胞癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description急激な門脈腫瘍進展を示したVp4肝細胞癌に対し減量肝切除と経皮的肝灌流(PIHP)の2段階治療(dual treatment)を施行し, 2年以上の完全な局所制御を達成したので報告する。症例は55歳, 男性。2003年6月, 両葉多発の肝細胞癌とVp4の門脈腫瘍栓(PVTT)で本院を紹介された。初診時, 肝左葉への血流は保たれていたが14日後にはPVTT が門脈臍部から脾静脈合流部に進展し, 準緊急的に拡大肝右葉切除・PVTT 摘出術を施行した。さらに左葉の多数の残存腫瘍に2回のPIHPを追加しCR となった。2005年3月, 右肺転移を来したが肺切除により腫瘍マーカーは正常化し, 2005年6月現在再発は認めていない。dual treatment は高度血管侵襲を伴う多発進行肝細胞癌において, 中・長期予後を実現できる最も強力な治療戦略である。しかし本例のような超進行例ではCR 達成後数年を経て, 他臓器転移が出現する場合があり, 綿密な経過観察が必要と考えられた。 -
Vp3再々発肝細胞癌に対して術前TAE 併用肝切除により5年以上無再発生存が得られた1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description門脈内腫瘍栓(Vp3)を伴う肝細胞癌の再々発に対して, 術前肝動脈塞栓療法(TAE)+再肝切除により長期(5年以上)無再発生存中の1例を経験した。50歳台, 男性。単発肝細胞癌および同単発再発に対して二度の肝切除術を施行。再々発疑いにて精査入院となった。腹部CT および血管造影検査にて, 肝後区域に門脈内腫瘍栓(Vp3)を伴う境界不明瞭な腫瘍を認めた。腫瘍マーカーはAFP 648ng/ml, PIVKA-II<30AU/ml。術前に右肝動脈よりTAE(epi-ADM/CDDP/Lipiodol/spongel )を施行後, 肝後区域切除術および門脈内腫瘍栓摘出術を施行した。組織学的所見では門脈内腫瘍栓を含め, 腫瘍は完全壊死に陥っていた。術後6年1か月現在, 無再発生存中である。 -
肝細胞癌切除後の下大静脈内腫瘍栓, 多発肺転移に対してTS-1/Interferon-αの併用療法により著効が得られた1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は56歳, 男性。HCV(+)。2002年5月14日にHCC, Vp3, IM3に対して拡大肝左葉切除術, 肝部分切除術と門脈内腫瘍栓摘出術を施行した。術後2週間目よりIFN-αの皮下投与と5-FU の肝動注(以下, IFN 併用動注化学療法)を開始した。3クール施行後の9月に右肝静脈内に腫瘍栓を認め, 5クール終了後の2003年1月には胸部CT にて右肺S6に1cmの肺転移を2個認めた。その後IFN 併用動注化学療法を継続するも肝静脈内腫瘍栓は下大静脈内まで進展し, 肺転移は両肺に広がり, 大きさ, 個数ともに増大したため, 11月よりTS-1とIFN-αの併用療法に変更した。1クール終了後の2004年1月の腹部CT にて右肝静脈内の腫瘍は著明に縮小し, 造影効果は失われていた。両肺の転移は大きさ, 個数ともに縮小した。その後3クールを追加し, TS-1/IFN 併用療法開始から1年6か月を経過する現在までに残肝再発を認めず, 肺転移はさらに縮小傾向にある。また, TS-1/IFN 併用療法中に明らかな有害事象を認めなかった。本症例は5-FU の肝動注とIFN-αの併用療法からTS-1の経口投与とIFN-αの併用療法に変更したことで治療効果が明らかに増強した。このことより, TS-1/IFN は遠隔転移を伴う高度進行肝細胞癌に対して, 今後有効な治療選択の一つとなり得る可能性がある。 -
肝動注療法によりいったん消失, その後同部位に再発した直腸癌肝転移の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は66歳の男性。多発肝転移を伴う直腸癌に対して, 2002年4月低位前方切除術を施行した(well:ly1v2n1H3P0 M(−))。2002年7月から2003年2月, 肝動注療法を施行した。外来通院で5-FU 1,500mg/body/weekの投与を行った(総投与量30,000mg )。病巣はS2, S4に瘢痕を残すのみとなった。2003年7月肝再々発巣が出現。DXR 動注+CPT-11全身投与を行ったが奏効せず, 2005年3月肝部分切除術を施行した。病巣はS4の径5cmの腫瘤を最大とし, S3/5/6/7に多発していたが, すべて部分切除で切除可能であった。本症例では, 肝動注により転移巣は一時消失したものの, その後同部位に再発しているのが特徴的である。大腸癌肝転移巣に対する治療戦略としては, 肝動注療法後一時病巣が消失したようにみえても同部位への再燃の可能性を考慮し治療に当たる必要がある。 -
大腸癌多発肝転移に対して肝動注療法によりCR が得られた2例
32巻11号(2005);View Description Hide Description大腸癌同時性多発肝転移に対し, 肝動注療法によりCR が得られた2例を経験したので報告する。症例1は64歳, 男性。貧血を指摘され上行結腸癌と診断。肝両葉に6個の肝転移を認め, 結腸右半切除術施行。術後UFT-E 2g の経口投与とCDDP 3mg, 5-FU 500mg の肝動注を施行した。9クール後, 転移巣は消失し, 瘢痕部の肝切除術を施行。病理組織学的にも癌細胞は認めなかった。CR から4年10か月経過, 再燃は認めていない。症例2は69歳, 男性。便柱狭窄, 下血を認め直腸癌と診断。肝両葉に5個の肝転移を認め, 低位前方切除術を施行した。術後l-LV 25mg, 5-FU 500mg による肝動注を施行, 3クール後転移巣は消失した。CR から2年1か月経過, 再燃は認めていない。肝動注療法は大腸癌多発肝転移に対する有用な治療法の一つと考えられる。 -
肝細胞癌切除後の肺・副腎転移に対する外科切除により長期生存が得られた1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は65歳, 男性。肝S7/S8原発の肝細胞癌に対して術前TAE 後に肝S7/S8部分切除術を施行。初回切除後38か月目に, 径2cm 大の肺転移巣を認め, UFT 内服を開始。その12か月後, 右副腎に径2cm 大の腫瘍を認め, 肝細胞癌の副腎転移と診断。肺転移巣が単発であり, 画像上, 肝内転移を認めないため, 右副腎切除術および右肺S9部分切除術を施行した。病理組織学的にいずれも肝細胞癌の転移であった。その10か月後に肝内再発を認め, TAEを2回施行するも腫瘍増大に伴う閉塞性黄疸のために治療継続不能となったが, 初回切除より6年9か月の長期生存が得られた。遠隔転移症例においても単発かつ残肝への再発巣が制御されている症例では, たとえ転移巣が2臓器に及んでも外科的切除により長期予後を得られる可能性があると考えられた。 -
肺癌左副腎転移に対する腹腔鏡補助下摘除術の経験
32巻11号(2005);View Description Hide Description転移性副腎腫瘍に対し, 腹腔鏡補助下に摘出し良好な経過を得た症例を報告する。症例は75歳, 男性。2000年6月下旬に右側胸部痛を自覚した。紹介元で右肺尖部の肺癌と診断され, 化学放射線療法を施行された。この時, 直径1.6cmの左副腎腫瘍を指摘されていた。3か月経ても副腎腫瘍は変化せず, 他部位に再発を認めなかったため, 同年11月30日右肺上葉切除・胸壁合併切除術が施行された。その後左副腎腫瘍の増大傾向を認め, 手術目的で当科入院となった。画像所見および経過から肺癌の副腎転移と診断した。腹腔鏡補助下左副腎摘除術を施行し, 経過良好で術後2週間で紹介元へ転院となった。腹腔鏡下副腎摘除術は1992年に初めて報告されて以来, 副腎良性腫瘍に対する術式として定着している。手術機器の進歩や手術手技の向上に伴い, その適応は悪性疾患にも拡大されつつある。 -
5-FU, CDDP, Adriamycin(FAP)による肝動注化学療法が著効した進行肝細胞癌の2 例
32巻11号(2005);View Description Hide Description肝内多発や門脈内腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対してしばしば動注化学療法が選択されるが, 現時点では確立した治療法はない。われわれは以前5-FU, CDDP, ADM による多剤併用動注化学療法(以下FAP)によりCR を得た症例を経験した。今回さらにFAP 動注化学療法による著効例を2例経験したので報告する。症例1は71歳, 男性。HCV 陽性肝細胞癌に対する術後再発(IM3, Vp0)に対して5-FU(500mg/day continuous infusion, day1〜5), adriamycin(10mg/day day1),CDDP(10mg/day day1)によるFAP 肝動注化学療法を施行した。10コース終了時点でCR となり腫瘍マーカーもすべて陰性化した。治療開始後21か月後現在無再発生存中である。症例2は74歳, 男性。TAE 治療後のHCV 陽性進行肝細胞癌(IM3, Vp4)に対して, 症例1と同様のプロトコールによりFAP 動注化学療法を施行した。8コース終了時点でCRとなり, 治療開始後9か月経過した現在無再発生存中である。現在までにFAPを用いた肝動注化学療法を, Vp2以上の門脈内腫瘍栓を伴う多発肝細胞癌15例に施行したが, 全症例外来治療が可能であった。本治療の奏効率は33.3%(CR, PR 症例)で, 生存率の改善も認められた。以上より, 難治性進行肝細胞癌に対するFAP 動注化学療法はQOL を維持した外来治療が可能であり, 集学的治療の一つとして期待し得ると思われた。 -
黄疸を伴った胆管内発育型肝細胞癌患者に対するPGE1 併用肝動注化学療法の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は69歳, 男性。C 型肝硬変合併肝細胞癌(以下HCC)S7に対し2001年11月ラジオ波焼灼術(以下RFA)を施行。その後外来にて経過観察中であったが, 2004年3月に, 黄疸を認めたため当院入院となった。入院時現症では, 腹部平坦軟で腫瘤は触知せず, 貧血は認めなかったが球結膜に黄疸が認められた。入院時検査所見で軽度の炎症と貧血を認め, 生化学検査では黄疸を伴う肝胆道系酵素の上昇を認めた。腫瘍マーカー(AFP, PIVKA-II)の上昇も認められた。腹部エコーとCTにてS8のHCC による胆管内腫瘍栓と右肝管の拡張を認めたため, 経皮経肝胆管ドレナージ(以下PTBD)を施行し減黄を図るもT-Bilは7.29mg/dl と軽度減少したのみであった。そのため, 肝庇護目的にまずprostaglandin E1(PGE1)を動注カテーテルより投与し, その1週間後より同時に肝動注化学療法(CDDP+5-FU)を4週間行った。肝動注の終了時にはT-Bil 1.92mg/dl と著明な改善を認め, 肝胆道系酵素の著明な低下も認められた。腹部CT ではS8のHCCの縮小を認めPR とした。その後, 汎血球減少がみられるも保存的に加療し2004年6月に退院した。HCC を合併し黄疸を伴った患者に対して, PGE1 を併用した肝動注化学療法は有効であった。 -
術後早期再発胆管細胞癌に対し集学的治療が奏効した1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description多発肝転移巣を有する胆管細胞癌に対し肝切除, 予防肝動注を施行し, 術後1年足らずで腹壁再発, 肝門部リンパ節再発を来した症例に対して, 放射線療法, メタリックステント, 全身化学療法を行い再発後2年コントロールできた症例を経験したので報告する。症例は61歳, 男性。初回手術後, 予防肝動注を施行。術後約10か月後に腹壁再発を来したため摘出術施行(術中腹水細胞診class V)。さらに術後2年後, 肝門部リンパ節再発の増悪, 黄疸に対し全身化学療法を施行し腫瘍マーカーの減少を認め, ステント挿入, 放射線療法によって黄疸の消失を得た。その後, 腹膜再発増悪および悪液質にて初回手術から約3年後死亡した。本症例では肝再発が終末期まで1個であり, また肝門部リンパ節転移も増大しなかったことより, 集学的治療はある程度有効であったと考えられる。 -
集学的治療により効果の得られた高度進行性胆管細胞癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は45歳, 男性。2004年6月より右側腹部痛を自覚。精査の結果, 肝右葉に腫瘤を指摘され当院紹介となった。来院時検査では胆道系酵素の軽度上昇とCEA の上昇を認めた。腹部CT 検査では, 肝右葉全体を占拠する巨大腫瘤と肝左葉にも直径2〜3cm 大の多発性腫瘤が認められた。肝内胆管癌と診断し2004年10月肝拡大右葉切除, 尾状葉切除と可及的にリンパ節郭清を行った。術後順調に回復し, 11月より残肝腫瘍に対する肝動脈注入化学療法を開始した。皮下ポートより外来にて5-FU+CDDP 投与を継続した。経時的な画像所見では残肝腫瘍径の縮小を認めたがPR と判定した。QOLを十分に保った状態で外来通院を続けることが可能であった。このように, 多発性肝内転移を有する高度進行性肝内胆管細胞癌に対しても姑息的切除と動注化学療法を組み合わせることによって, その予後の改善を図れる可能性が示唆された。 -
切除不能進行胆嚢癌に対する放射線療法併用肝動注化学療法の奏効例
32巻11号(2005);View Description Hide Description切除不能進行胆嚢癌の予後は非常に厳しく, 確立された化学療法のレジメはない。間欠的肝動注化学療法と放射線療法の併用した奏効を得た2症例について報告する。45歳, 男性は576日間, 69歳, 男性は246日間にわたり良好なQOLを維持しながら加療を行えた。 -
進行膵癌に対して放射線化学療法を施行した1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は56歳, 男性。2004年2月より下痢出現。近医にて5月に施行した腹部CT にて進行膵癌と診断される。6月当院外科紹介受診となる。腹腔動脈浸潤にて手術適応なしと判断され, 放射線化学療法としてradiation 3Gy/dayおよびgemcitabine(GEM)1,200mg/week(800mg/m2, BSA 1.6, day1, 8, 15)の投与を開始した。副作用は嘔気, 全身倦怠感などを認めるもgrade1であった。治療後の造影CT にて腫瘍径は5.7×4.8cm → 5.2×4.4cm(縮小率9%)と縮小した。引き続きGEM+UFT 併用化学療法を開始した(1クールUFT 360mg/day total 4,320mg, GEM 1,200mg/body total 2,400mg)。CA19-9は低下傾向を示し, 5クール終了時には619から39U/ml まで減少した。腹部CT では4クール終了の段階で腫瘍の縮小率が21%であった。また自覚症状も下痢が軽快し, QOL も改善した。約6か月にわたりコントロール良好であったが, 2005年3月よりCA19-9が増加し, 下痢, 痛みも認めるようになったためにGEM+cisplatin(CDDP)1クール, GEM+TS-1 1クールを施行した。難治癌である手術不能進行膵癌に対して, GEM と放射線の併用療法およびGEM+UFT 併用療法が奏効し, QOLの改善が得られた1例を報告した。 -
残膵再発性病変を切除し得た膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は, 1996年WHOの病理分類で膵粘液性嚢胞腫瘍とは異なった臨床病理学的疾患として分類された。近年の画像診断の進歩に伴い, 多数の症例が見いだされるようになってきた。われわれは, 初回切除後6か月で残膵再発を来したが, 切除し得た膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)の1例を経験したので報告する。初発病変は膵体部の嚢胞性病変で, 膵体尾部切除・合併切除術を施行した。病理組織学的診断は浸潤性腺癌で, 膵管断端は陰性であった。術後6か月目に腹部CT にて膵鈎部に嚢胞性病変の再発を認めた。残膵全摘術を施行した結果, 腺扁平上皮癌と診断された。再切除後3年経過した現在, 再発なく健在である。IPMN は同時性あるいは異時性の膵内多発が報告されており, 注意深い経過観察が重要である。 -
肝膵同時切除後局所再発による門脈閉塞に対し経皮経肝的門脈内ステント留置が有効であった胆管癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description肝門部〜膵頭部領域の悪性腫瘍切除術後における癌局所再発は, しばしば門脈閉塞を来し門脈圧亢進症状を呈する。今回われわれは, 肝, 膵頭十二指腸切除後局所再発により肝外門脈閉塞を来し肝性脳症を生じた胆管癌症例に対し, 経皮経肝的門脈内ステント留置し, 症状の改善をみた症例を経験したので報告する。症例は73歳, 男性。2002年7月, 上中部胆管癌の診断にて肝(S1+S4)切除+膵頭十二指腸切除術+肝外門脈合併切除再建術を施行。術後経過良好にて退院し, 以後外来通院していた。同年12月, 意識消失を認め緊急入院。精査にて局所再発による肝外門脈閉塞の診断となり, 門脈圧亢進による肝性脳症が原因となる意識消失が考えられた。経皮経肝的門脈内ステント留置後, 病状は安定し約3週間の入院期間で退院となった。肝外門脈閉塞症例に対する経皮経肝的門脈内ステント留置術は, QOL の向上が得られる有用な治療手段と考えられた。 -
中部胆管癌に対しNon-Covered Stent留置1週間後の造影でRapid Obstructionを認め, Covered Stent再留置後長期開存および長期予後を得た1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description症例は73歳, 女性。黄疸を主訴に当科紹介入院となった。入院時血液検査上肝機能異常およびCA19-9の上昇を認めた。腹部エコー上中部胆管に境界明瞭な類円形のmassを認めた。入院後PTBD を施行, 中部胆管で完全閉塞を認めた。胆汁細胞診でadenocarcinomaと診断された。以上より中部胆管癌と診断されたが, 患者の痴呆による譫妄や夜間徘徊が強いため根治手術を断念し, non-covered stent を留置した。しかし1週間後の造影でstent 内に腫瘍の突出を認めたため(rapid obstruction),stent 内にcovered stent を留置することとなった。stent 再挿入後486日間の開存を得た。再閉塞に対しPTBD が施行されたが, 当科初回入院日より596日目に永眠された。腫瘍因子以外の理由により手術不可能な症例に対し, metallic stentによる内瘻術はQOLを損なわず, また予後を短縮させることもなく, 適応となり得る治療法であると考えられた。 -
Covered Type食道Stentにより良好なQOL が得られた食道気管瘻を有する胸部上部食道癌の1例
32巻11号(2005);View Description Hide Description64歳, 男性。胸部上部食道癌で気管浸潤とN3のため放射線化学療法を施行し, CR となったが食道気管瘻が生じて経口摂取不能となった。covered self-expandable metallic stent(SEMS)を食道に留置することで経口摂取が可能となり, 自宅で日常生活を送ることができた。頸部や胸部上部食道癌に対するSEMS 挿入は不快感を伴うことが多い。しかしながら, 食道気管瘻を伴う食道癌症例に対する姑息治療としてcovered SEMS 留置は患者のQOLを改善するのに有効な手段であると考えられた。 -
経皮的ラジオ波凝固療法による末期甲状腺癌の1治療例
32巻11号(2005);View Description Hide Description69歳, 女性。1998年, 甲状腺未分化癌の診断で放射線療法, 腫瘍切除術および化学療法を施行した。再発に対し化学療法を定期的に繰り返したが, 腫瘍は漸次増大し食道圧排により食物の通過障害を生じるようになった。経静脈的高カロリー輸液または胃瘻による栄養管理の必要性を伝えたが, 患者は頑なに拒否し経口摂取を強く希望した。インフォームド・コンセントを得て, 2003年4月2日, Cool-tip針にて経皮的ラジオ波凝固療法(9分:30→ 120W, 12分:50→ 110W, 9分:50→ 100W))を行った。2日後に経内視鏡的に食道カバードステントを留置し, 経口摂取を開始した。甲状腺未分化癌の侵襲的加療は論議があるものの, 本腫瘍に対して本邦初のRFA および食道ステント留置を行い, QOL の改善を得たので報告する。
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