Volume 32,
Issue 12,
2005
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総説
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癌と化学療法 32巻12号, 1879-1885 (2005);
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gefitinib(Iressa, ZD 1839)は,上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼを選択的に阻害する小分子化学物質である。gefitinibは前治療のある非小細胞肺がんに対し,約10〜20%の頻度で著明な腫瘍縮小効果を示す。しかし,非小細胞肺がんの初回治療として,標準化学療法にgefitinibを追加しても生存期間の延長はみられなかった。また,gefitinib投与は前治療のある進行非小細胞肺癌に対する試験においても,プラセボと比較して有意な生存期間の延長はなかった。III期非小細胞肺癌において,化学放射線療法後の維持療法としてのgefitinib投与も,生存期間の延長は示されなかった。これらの試験で生存期間の延長が示されなかった一つの理由として,患者選択がgefitinibの感受性によらなかったということが考えられる。臨床試験から,gefitinibが奏効する患者層に明らかな偏りがみられた。奏効例は女性,非喫煙者,腺癌,日本人により多くみられた。最近,EGFR 遺伝子の変異と増幅がNSCLC のなかに認められ,それらがgefitinibの感受性を予測することが報告された。一方,gefitinib投与後再発した腫瘍の一部にEGFR 遺伝子の二次性変異(T 790M)があり,gefitinib耐性の原因として報告された。gefitinibは,grade 3/4の有害事象の頻度が少ないが,日本では,臨床導入直後より間質性肺炎の発症が報告された。今後われわれは,より選択された患者に対してgefitinib投与の臨床試験を遂行し,また感受性予測因子,耐性メカニズム,間質性肺炎の発症メカニズム・予測因子などのさらなる解明をしていかなければならない。
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特集
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ゲノム情報と化学療法
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癌と化学療法 32巻12号, 1886-1890 (2005);
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個人にあわせ,最適医薬品を適切量用いた個別化医療を実践するため,ゲノム情報の活用方法が種々検討されてきた。2005年3月,アメリカ食品医薬品局(FDA)はpharmacogenomicデータ提出のガイダンスを発表した。本稿では薬物療法の基盤として,ゲノム情報の取扱いについての最近の動向を交え,バイオマーカーとしての遺伝子関連情報を整理した。抗がん薬と薬物代謝酵素遺伝子を関連付けるテーラーメード医療実現に向けた最近の取組みと課題について解説する。
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癌と化学療法 32巻12号, 1891-1894 (2005);
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癌はゲノム不安定性を背景に様々なゲノム異常が生じこれらが蓄積することにより悪性形質を獲得し,選択を受けることにより発生・進展していく。遺伝子異常は点突然変異,転座,増幅や欠失といったゲノム一次構造異常やエピゲノム異常など様々であるが,われわれはゲノムコピー数異常を指標として癌の治療標的遺伝子の同定に取り組んでいる。コピー数異常をゲノムワイドに高分解能に発見する手法として,ゲノムアレイの作製とこれを用いたCGH アレイ法が確立され,分子標的を含む新たな癌関連遺伝子の同定に威力を発揮している。実際にわれわれも自作のCGH アレイにより,様々な癌遺伝子,癌抑制遺伝子を同定し,今後もゲノム異常を指標とした分子標的の同定がさらに加速されることが期待される。
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癌と化学療法 32巻12号, 1895-1901 (2005);
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分子標的薬剤の登場は,癌の化学療法に大きな変革をもたらしつつあるが,抗癌剤耐性は依然として癌治療の大きな障害であり続けている。SNPs解析やcDNA マイクロアレイなどにより遺伝子の変異や発現レベルを調べ,抗癌剤に対する反応性を決定する要因を明らかにすることが可能になってきた。症例ごとに抗癌剤感受性を予測し,各々の症例に最適な抗癌剤と投与量を選択する個別化治療の研究が進行しており,抗癌剤の重篤な副作用や,抗癌剤耐性細胞の出現を減少させることができるのではないかと期待されている。現在知られている遺伝子多型と抗癌剤耐性(感受性)の関係,分子標的薬剤に対する耐性に関与した腫瘍内標的分子の変異,マイクロアレイを用いた抗癌剤耐性(感受性)の予測について述べる。
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癌と化学療法 32巻12号, 1902-1907 (2005);
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薬剤感受性を規定する要因としてゲノム情報(遺伝子多型)を求める研究が活発に行われている。しかしながら,感受性要因としての確定に至ったものは数少ない。ゲノム情報は生命の成り立ち,生業を規定する膨大な基盤情報であるが,いまだゲノム情報のほとんどはその生物学的意義が明らかではない。ゲノム計画はゲノム機能の本格的な解析に入り,その第II相,ヒトゲノムの発現調節領域や遺伝子発現にかかわる生体分子の相互作用の解明研究,すなわちゲノム機能ネットワーク解析プロジェクトへと進んでいる。薬剤感受性機構は多因子の関与する複雑系である。また,体内薬物動態よりも腫瘍細胞の固有特性が効果により大きな影響を及ぼし,腫瘍細胞内関連遺伝子の発現量が重要な感受性規定因子となることが示されている。しかしながら,発現調節領域の配列情報すら不確定な遺伝子も数多い。感受性研究にとって関連遺伝子群の発現にかかわる調節機構とそれらのネットワークの解明は極めて重要な意味をもつ。薬剤感受性にかかわるゲノム研究の新たな方向性としての発現制御機構の解明研究について紹介する。
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癌と化学療法 32巻12号, 1908-1913 (2005);
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近年,オーダーメード医療実現への期待の高まりからpharmacogenomicsに注目が集まっている。抗癌剤に限らず,薬剤の効果のでやすさや副作用出現の有無には個人差があることは経験的にも明らかである。これらの個人差には遺伝的要因が関連していることがこれまでの研究から明らかになっている。抗癌剤の副作用に関連するものでは,DPYD 遺伝子の多型と5-FU, MTHFR 遺伝子の多型とmethotrexate, UGT 1A 1遺伝子の多型とイリノテカン,TPMT 遺伝子と6-MP などがある。米国ではイリノテカンの添付文書にUGT 1A 1遺伝子の多型情報について記載されるようになり,これらの多型情報の臨床応用もいよいよ現実のものとなりつつある。本稿では,上に述べた遺伝子と抗癌剤の副作用との関係を概説し,さらに来たるべきオーダーメード医療を実現させるためにpharmacogenomics研究の将来への方向性についても議論をしたい。
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原著
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癌と化学療法 32巻12号, 1915-1918 (2005);
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頭頸部癌に対してdocetaxel(DOC)25〜30mg/m2(約40mg/body)を毎週1回,3週連続投与1週休薬,あるいは6週連続投与2週休薬する方法(weekly投与法)を施行し,DOC 60mg/m2を3週ごとに1回投与する方法(standard投与法)と治療効果と副作用について比較検討した。weekly投与法は18例,standard投与法は29例に施行した。化学療法による治療歴がない症例はweekly投与法では18例中1例だけであったが,standard投与法では29例中10例であった。奏効率は,weekly投与法では22.2%, standard投与法では47.8%であったが,進行,再発癌においてlong NC(6か月以上のNC)を含めると両者は40.0, 42.9%で,ほぼ同等であった。grade3以上の副作用はweekly投与法では粘膜炎の1例(5.6%)のみで,standard投与法では白血球減少が12例(41.4%), 血小板減少は2例(6.9%)であった。weekly投与法は重篤な副作用がなく,外来通院での治療も十分可能で,高齢者や合併症をもつ患者にも有用な方法と考えられる。
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癌と化学療法 32巻12号, 1919-1923 (2005);
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最近,本邦において乳癌に対する補助化学療法として高用量のFEC が使われることが増えている。しかし,日本人を対象にした高用量FEC の安全性や耐用性について,十分な検討はされていない。そこで,原発乳癌患者59人を対象に,補助化学療法としてFEC(75)(5-FU:500mg/m2, epirubicin:75mg/m2, cyclophosphamide:500mg/m2, q 3w, 6サイクル)を施行し,その忍容性について検討した。59人中56人(94.9%)で6サイクル投与が可能であった。epirubicinの平均投与量は431.7mg/m2で,予定投与量(450mg/m.2)の95.9%であった。副作用では,59人中45人(76.2%)にgrade3以上の好中球減少を認めた。febrile neutropenia(grade 3)と感染(grade 2)はそれぞれ3.4%と10.2%であった。その他の副作用では,貧血(88.2%), 全身倦怠感(42.4%), 悪心(40.6%), 肝機能障害(40.7%), 嘔吐(18.7%)が認められたが,それらのほとんどはgrade 2以下であった。また,臨床的に心不全症状を呈する患者は認めなかった。以上の結果より,乳癌補助化学療法としてFEC(75)はその忍容性において問題はないと考えられた。
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癌と化学療法 32巻12号, 1925-1928 (2005);
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投与前の超音波検査で脂肪肝が存在しなかった156名の乳がん患者にタモキシフェン(20mg)が投与された。肝転移・脂肪肝の検出のために定期的に腹部超音波検査をおこなった。全患者の36%に超音波検査上Grade2以上の脂肪肝が認められた。そしてGrade 2以上の脂肪肝の発生は投与開始後平均11.3か月であり,脂肪肝の45%は投与後6か月以内に発生していた。20例(12.8%)に5-FU 系抗癌剤が補助療法として2年間内服併用され,12例(7.7%)にCAF 療法が5クール施行された。これらの補助化学療法は術後の脂肪肝の発生に統計的な影響を及ぼさなかった。いっぽう,脂肪肝のGradeと血中トリグリセライド値との間にも明らかな相関が認められた。乳癌の術後フォローアップにおいて肝転移の有無のみならず脂肪肝の発症を知る上で腹部超音波検査は有用で,特に術後6か月以内の超音波検査を推奨する。
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癌と化学療法 32巻12号, 1929-1934 (2005);
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大腸癌新鮮凍結組織のthymidylate synthase(TS), dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD), orotate phosphoribosyltransferase(OPRT)の各mRNA を半定量し,各酵素発現の関係や,発現の組み合わせからみた5-fluorouracil(FU)系抗癌剤の効果との関係について検討した。TS mRNA とDPD mRNA, あるいはOPRT mRNA との間には弱い正の相関がみられたが,DPD mRNA とOPRT mRNA の間には相関関係を認めなかった(n=112)。5-FU 系抗癌剤の治療を受けた標的病変を有する大腸癌39例のうち,TS mRNA 低発現の23例(中央値をcut off)は高発現の16例より奏効率が高かった(p=0.02)。TS 低発現,DPD 低発現,OPRT 高発現の少なくとも2因子以上を有する16例のほうが1因子以下の23例より奏効率が高い傾向がみられた(p=0.09)。1因子のみで奏効した4例のいずれもが,TS 低発現あるいはDPD 低発現であった。以上から,3酵素のなかではTS mRNA 低発現,次いでDPD mRNA 低発現が大腸癌に対する5-FU 系抗癌剤の効果予測に重要であるが,OPRT mRNA 発現を検討する意義は乏しいと考えられた。
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癌と化学療法 32巻12号, 1935-1938 (2005);
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当院にてtegafur/uracil(UFT )+経口Leucovorin(UZEL )療法(UFT/UZEL 療法)を初回治療として施行した進行再発大腸癌8症例について治療効果や副作用をまとめ,本療法の有用性を検討した。8例のうち3例が切除不能の進行症例,5例が再発症例であり,原発部位は結腸5例,直腸3例で,転移部位は肝5例,肺2例,リンパ節2例,腹膜1例,膵1例であった。治療はUFT(300mg/m2/day)とUZEL(75mg/body/day)を4週間連日経口投与し1週間休薬して1コースとし,平均7.6コース施行した。効果判定が可能であった7例においては,PR が6例,NC が1例であり,奏効率は86%であった。副作用は全例に認められ,2例(25%)にgrade3の副作用を認めた。しかし,副作用のために治療を中止した症例はなかった。本療法は有効性,安全性および患者QOL の面からも進行再発大腸癌に対する有用な治療法であると考えられた。
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症例
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癌と化学療法 32巻12号, 1941-1944 (2005);
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症例は65歳,男性。めまい,倦怠感,発熱を主訴に2002年4月当科受診,腹部CT 上最大径17cm の腫瘍を認め,肝左葉に径12cm の厚い被膜と隔壁を伴う嚢胞性腫瘍を認めた。肝転移を伴う胃GIST と診断,現時点での根治術は困難であると考え,2002年5月9日よりimatinib mesylate(IM 400mg/日)の投与を開始した。治療効果はPR と判定し根治術可能と判断,2003年3月18日当院外科にて胃全摘術,肝左葉切除・S 6部分切除術を施行した。術後経過は良好であり術後早期よりIM の内服を再開したが,経済的理由および白血球減少(grade3)から,術後2か月で中止を余儀なくされた。しかし2004年10月,肝・腹膜再発を認めIM の内服を再開,現在治療継続中である。IM によるneoadjuvant 療法の有効性を指摘する報告例が散見されるが,その長期予後に関する報告は少ない。今後の治療オプションに関する考察も含めて報告する。
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癌と化学療法 32巻12号, 1945-1948 (2005);
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症例は50歳,男性。横行結腸浸潤によるイレウスを伴う4型胃癌で切除不能であった。TS-1/cisplatin(CDDP)併用療法を行うも奏効せず。second-lineとしてpaclitaxel(PTX)/doxifluridine(5′-DFUR)併用療法(本法)を4サイクル行ったところ,横行結腸狭窄部の完全拡張が得られたため開腹手術を行った。腫瘍は一塊となっていたが,腹膜播種はなく胃全摘および右半結腸切除術を行い切除し得た。術後経過は良好でQOL は著明に改善したが腹膜播種によるイレウス,閉塞性黄疸を併発し,残念ながら初診から1年で原病死した。本法は副作用も軽微でTS-1無効例に対して有用であった。しかし,切除可能例でも腹膜播種をいかにコントロールするかが今後の課題と考えられた。
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癌と化学療法 32巻12号, 1949-1952 (2005);
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症例は62歳,女性。多発性肝転移を伴う進行盲腸癌に対して,2002年2月26日,回盲部切除術(D3)と肝動注用リザーバー留置術を行った。近傍の腸間膜に腹膜播種がみられたが,合併切除し得た。病理所見はII, 5.0×2.5cm, mod, se,INFγ, ly1, v1, n2, stageIVであった。術前のCA 19-9は420U/ml と上昇していた。術後,l-leucovorin(LV)/5-fluorouracil(5-FU)の全身投与+weekly high-dose 5-FU(WHF)肝動注の併用療法を行い,腹部CT 上,肝転移巣は消失し,CA 19-9は低下したが正常値にはならなかった。再発,再燃を疑わせる所見はなかったが,動注療法を続けたところ2002年10月ごろからCA 19-9が再上昇した。CT 上では再燃,再発を疑わせる所見はみられなかったが,12月18日から低用量irinoteca(CPT-11)/cisplatin(CDDP)の全身投与に切り替えたところCA 19-9は低下し,2004年3月には正常値になった。低用量CPT-11/CDDP 療法は副作用も軽微で5-FU 耐性症例に対するsecond-line治療としての有用性が示唆された。
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癌と化学療法 32巻12号, 1955-1957 (2005);
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症例は72歳,女性。左頸部リンパ節腫大を認め,当院を受診した。腹部CT 検査で壁肥厚した腸管像と多発性リンパ節腫大を認め,小腸造影検査で小腸腫瘤を認めた。以上より小腸腫瘤および左頸部リンパ節腫大の診断にて手術を施行した。左頸部リンパ節を針生検し,術中迅速病理検査にて低分化型腺癌と診断された。Virchow転移を来していたため根治術の適応はなしと判断し,小腸部分切除術を施行した。5×4cm 大の全周性の2型腫瘍で病理組織学的には,poorly differentiatedadenocarcinoma, si(膀胱), n 4, P 0, ly3, v 3, H 0, M(−), StageIVであった。術後,TS-180mg/body/day, 分2の内服を開始した。4週内服,2週休薬を1コースとした。2コース後の頸部,腹部CT 検査では術前に認めたリンパ節の腫大は縮小傾向にあり,1年後にはリンパ節の腫大はまったく認めなくなった。化学療法効果判定はCR と判断し,以降もTS-1の内服を継続した。術後3年9か月の現在も画像上の再発は認めず腫瘍マーカーの上昇もなく,またTS-1の副作用もなく内服を継続している。
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癌と化学療法 32巻12号, 1959-1961 (2005);
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症例は57歳,女性。多発性肝転移を伴う横行結腸癌の診断の下,結腸右半切除術(D3)を施行した。術後経口UFT+Leucovorin(LV)による化学療法を行い,開始後6か月でCT 画像上肝転移の消失を確認し,14か月後も再発所見なく経過している。本例により進行大腸癌に対する経口UFT+LV の有効性およびQOL を重視した治療の選択性が示唆された。
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癌と化学療法 32巻12号, 1963-1966 (2005);
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大腸癌肝転移の症例に低用量CDDP+5-FU 持続肝動注療法は有用な治療法であるが,持続注入によるQOL の低下が問題となっている。そこで外来施行のための工夫を行った。5-FU の粘稠性や血栓形成の問題を工夫することにより,通院日数,フューザーポンプ接続期間を含めたQOL を保てた。閉塞,屈曲,感染などカテーテルトラブルは大腿動脈アプローチ法にて入れ替えることによって改善できた。奏効率はCR 2例,PR 7例,SD 1例であった。CR 1例,PR 1例に対し,それぞれ17か月後,6か月後に肝切除を施行した。ポート感染を認めた2例のうち1例に大腿動脈仮性動脈瘤破裂を来し,4か月後に肝不全で死亡した。PR 1例,SD 1例が8か月後に肺転移が出現し,全身化学療法に切り替えた。治療経過中における肝外病変の出現が今後の課題であると思われた。
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癌と化学療法 32巻12号, 1967-1970 (2005);
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大腸癌の切除不能例,再発例および遠隔転移例の化学療法は5-fluorouracil(5-FU)を中心にLeucovorinを併用する治療法が標準的療法として認められている。今回われわれはS 状結腸癌の同時性多発肺転移に対し,S 状結腸を切除した後,経口dl-Leucovorin(Uzel)およびtegafur and uracil(UFT)を併用したところ,著効を呈した1例を経験した。UFT400mg/日,Uzel75mg/日4週間投与1週間休薬法で3コース施行した。肺転移は著明に腫瘍縮小効果(PR)が認められ,認められるなかで最大の腫瘍(34.5×35.7mm)が存在する右下葉切除,および同側に小さな転移性腫瘍(4.4×4.6mm)が存在する上葉の部分切除を行った。肺葉および肺部分切除後も術前と同様の内服化学療法を継続し,5コース終了した2005年1月15日現在も腫瘍の増悪を認めていない。本症例は内服化学療法中,副作用認めず一度も入院することなく約1年間転移巣を制御できたという点から,本症例のquality of life(QOL)の維持が可能であったと考えられる。
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癌と化学療法 32巻12号, 1973-1975 (2005);
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51歳,男性。進行直腸癌による肛門部痛,亜イレウスを来し当科に紹介となった。精査の結果直腸Rbの中分化型腺癌で臨床病期はstageIIIa(Ai仙骨浸潤,N 0, M 0)と診断し術前に化学放射線療法を施行した。レジメンはirinotecan(CPT-11),UFT-E, Uzelに加え放射線療法に増感効果の目的でlow-dose cisplatin(CDDP)を併用した。4コース施行後,PR(50%縮小)が得られ,腹会陰式直腸切断術を施行した。創部感染を認めた以外術後経過は良好であった。切除標本でも著明な縮小効果を認め,病理組織検査において癌組織の遺残はなかった。術後9か月以上経過した現在,再発徴候を認めていない。有害事象はgrade 2の下痢,悪心を認めたが血液毒性,肝腎障害は軽度であった。遠隔転移のない局所進行直腸癌に対し,本レジメンは有効な治療法であった。
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癌と化学療法 32巻12号, 1977-1980 (2005);
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多発肺転移および縦隔リンパ節転移を伴う肝細胞癌に対し,原発巣切除後5-FU/CDDP(FP)による全身化学療法が著効し,complete response(CR)が得られた症例を経験したので報告する。症例は54歳,男性。アルコール性肝硬変に伴う肝細胞癌の診断で入院した。診断時点で単発の肺転移を伴っていた。原発巣切除後,転移巣は増悪し,多発肺転移と縦隔リンパ節転移を有するようになった。そこで5-FU を250mg/m2/day持続静注,CDDP を10mg/m2/day静注し,週5日間行うlow-dose FP 療法を開始した。この治療を6週行ったところ転移巣は縮小した。アルコールによる肝障害のため治療を継続することができなかったが,約10か月後には転移巣は完全に消失した。治療中grade 4の骨髄障害が認められたが休薬により回復した。low-dose FP 療法は,遠隔転移を伴う進行肝細胞癌に対する有用な治療法と考えられた。
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癌と化学療法 32巻12号, 1981-1984 (2005);
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gemcitabineは膵癌に対して海外においても本邦においても第一選択の薬剤である。主たる用量規定毒性は白血球減少,好中球減少,血小板減少であるが末梢性浮腫,うっ血性心不全,間質性肺炎などの副作用も報告されている。今回われわれは,切除不能膵癌に対してgemcitabine単独療法を開始し総投与量11,000mg/m2となったころから,下腿を中心とした末梢性浮腫が出現したが利尿剤,steroid内服によりコントロールし,gemcitabine単独療法を継続できた症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 32巻12号, 1985-1988 (2005);
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gefitinibは既治療進行非小細胞肺癌に対して有効である。しかし,未治療進行非小細胞肺癌に対するgefitinib単剤治療の有効性,安全性については明らかでない。細胞毒性の強い化学療法が適さないか,またはそれを拒否され当院で初回治療として単剤のgefitinibで治療された12例をレトロスペクティブに検討した。患者は男性6例,女性6例であった。年齢の中央値は76.5歳(34〜82)であった。組織型は全例腺癌であった。病期はII B 期が1例,III B 期が4例,IV期が7例で,高齢者が5例,ECOG PS(performance status)3の症例が4例であった。PR 5例,SD 2例で,奏効率は41%であった。無増悪期間中央値は126日であった。grade1下痢を3例,grade1/2皮疹・爪周囲炎を8例,grade1/2肝障害を2例に認めた。grade 3やgrade 4の毒性は認めなかった。gefitinib単剤治療は未治療非小細胞肺癌,特に標準的化学療法が適さない患者に対して治療の選択肢となり得るかもしれない。初回治療としてのgefitinib単剤のプロスペクティブな検討が期待される。
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癌と化学療法 32巻12号, 1989-1992 (2005);
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63歳,男性。呼吸困難を主訴に受診し,急性心不全にて入院となった。心不全は改善傾向示するも,胸部CT にて縦隔腫瘍と心嚢液貯留を指摘され,経皮的腫瘍生検にて胸腺扁平上皮癌と診断した。carboplatinとetoposideの併用化学療法と放射線療法(44Gy)同時併用施行した。grade 4の好中球減少症以外重篤な副作用はなかった。3コース終了後,腫瘍は約81%縮小し,心嚢液は消失した。そのため外科的に胸腺腫瘍と肺内転移巣をすべて摘出でき,術後経過も良好であった。この化学放射線療法同時併用は手術不可能な胸腺扁平上皮癌に施行される価値があると考えられた。
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癌と化学療法 32巻12号, 1993-1996 (2005);
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症例は48歳,男性。持続する鼻炎症状および右顔面腫脹を主訴に市立堺病院を受診,鼻腔内生検にてnasal NK/T-cell lymphomaと診断され,加療目的にて当科に紹介入院。CHOP 療法を行ったが病巣は拡大したため,顔面および頸部に放射線照射を開始するとともにDeVIC 療法を併用したが効果は認められなかった。腫瘍パラフィン標本のasparagine synthetase免疫染色が弱陽性であったことより,L-asparaginase投与を2コース行ったところ,症状改善とおよび腫瘍の縮小を認めた。3コース目開始直前より再び発熱が出現。L-asparaginaseを投与したがLDH, AST, ALT の上昇を認め急激な呼吸,循環不全のため永眠された。剖検では,血球貪食症候群および原疾患の多臓器への浸潤を認めた。放射線療法および多剤抵抗性のnasal NK/T-cell lymphomaに対しL-asparaginaseが有効であったが,単剤投与による効果は持続しなかった。今後,asparagine synthetase低発現NK/T-cell lymphomaに対しては初回治療として積極的にL-asparaginaseを組み込んだ化学療法を考慮する必要がある。
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癌と化学療法 32巻12号, 1997-2000 (2005);
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現在,癌性疼痛に対して経皮吸収型フェンタニル貼付剤(フェンタニルパッチ)が頻用されているが,フェンタニルパッチを増量しても十分な鎮痛効果が得られないことが時々ある。症例は44歳,男性,肺癌。背部の疼痛に対してフェンタニルパッチ75μg/hr(7.5mg/3日間)で良好な鎮痛コントロールが維持されたが,経過とともに疼痛も悪化し徐々に薬剤を増量した。しかし,フェンタニルパッチを300μg/hr(30mg/3日間)に達しても鎮痛が達成できず,神経過興奮の副作用が出現した。そこでオピオイドローテーションを行い,フェンタニルパッチ150μg/hr(15mg/3日間)と硫酸モルヒネ徐放剤360mg/日を併用したところ十分な鎮痛が得られた。この現象はオピオイド耐性が関与していると考察した。臨床現場においてオピオイドの一部ローテーションや異なるオピオイドの併用の工夫で良好な鎮痛効果が得られたと報告されている。しかしオピオイド耐性の基礎研究では,まだこの工夫に対する裏付けが十分になされていない。本症例においては,オピオイドの一部ローテーションとオピオイド併用が有効であった。
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連載講座
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【外来化学療法】
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癌と化学療法 32巻12号, 2002-2003 (2005);
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癌と化学療法 32巻12号, 2004-2005 (2005);
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用語解説
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癌と化学療法 32巻12号, 1939-1939 (2005);
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Journal Club
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癌と化学療法 32巻12号, 1953-1953 (2005);
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癌と化学療法 32巻12号, 1958-1958 (2005);
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癌と化学療法 32巻12号, 1971-1971 (2005);
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癌と化学療法 32巻12号, 1980-1980 (2005);
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癌と化学療法 32巻12号, 2006-2006 (2005);
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癌と化学療法 32巻12号, 2007-2007 (2005);
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