癌と化学療法
2005, 32巻Supplement I
Volumes & issues:
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第16回日本在宅医療研究会学術集会
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- ワークショップ1 在宅通院化学療法
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当科における通院・在宅化学療法
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description当科における通院・在宅化学療法について報告する。1996年12月より通院・在宅化学療法を行った患者総数は97名(乳癌22例, 胃癌20例, 結腸癌29例, 直腸癌12例, 肝臓癌1例, 胆管癌3例, 膵臓癌4例, 十二指腸乳頭部癌2例, 卵巣癌2例, 悪性リンパ腫2例)で, うち9名に在宅で化学療法を行った。56名が死亡し, 41名が生存加療中である。いずれの疾患においても比較的良好な奏効率を示した。副作用も重篤なものはなく, いずれも外来通院で対処できた。通院・在宅化学療法は患者のQOL を維持した有効な治療方法であるが, 専門の治療室の開設と専門看護師の養成, スタッフの充実が急務であると考えられた。
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ワークショップ1 在宅通院化学療法
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臨床腫瘍部における外来通院化学療法の現状と問題点
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description当院で臨床腫瘍部外来通院治療室が発足してから1年8か月を経過した。目的:臨床腫瘍部での外来通院化学療法(外来化療)の現状分析と問題点について考察した。対象と方法:外来化療を施行した延べ数4,500件について, 現疾患, 外来での化療時間, 疾患別の化療時間, 化療回数, また化療外来でのインシデントやアクシデントなどについて検討した。結果と考察:臓器別件数では乳癌49%, 消化器癌47%(食道癌4%, 胃癌28%, 大腸癌15%), その他の消化器など4%であった。時間は癌種, レジメンの内容, 年齢などにより違いがあるが, 時間枠別にみると1時間以内は主に乳癌が多く全体の40%で, 1〜2時間, 2〜3時間は乳癌と消化器癌がほぼ同等で, 40%と15%, 3時間以上は主に消化器癌で5%であった。化療外来での誤薬, 薬剤の血管外漏出事故などはなく, 化療による副作用としての好中球減少時の発熱, 下痢などでの救急入院が若干名にみられた。外来化療を安全に行うために, 近医との連携も重要で, 発熱時の対応や, 顆粒球減少時のG-CSF 投与についてもできるかぎり近医に協力をお願いし, 患者の通院負担を減じるようにしている。臨床腫瘍部での外来化療では, 患者個々に合わせたきめの細かい治療が可能で, かつ副作用が問題となるレジメンのコントロールも可能であった。しかし, 外来での診察と化療の実施についてはマンパワーの不足により, いまだに円滑に行わないため待ち時間も長く, 今後, 臨床腫瘍部でのパラメディカルを含めた業務の見直しが必要である。このためにはより効率的な外来診療体系の確立が必要であると思われた。 -
安全な外来がん化学療法をめざして—外来がん化学療法プロトコールデータベースの有用性—
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description外来がん化学療法の安全管理を目的に, 外来がん化学療法室で実施されるがん化学療法のプロトコール(PTC)を登録制とし, 薬剤師はパーソナルコンピュータを用いデータベース(DB)の作成を行い, 各PTC を登録した(登録数:15疾患122件, 2005年4月現在)。その結果処方監査が容易となり, 受理処方箋2,409枚中61件の疑義照会が行われ, うち13件の投与量変更があった。また, 処方監査にかかる時間も短縮され, さらにPTC 登録時の溶解液統一化により, 調製・投与過誤の防止化, 在庫薬の減少化が行えた(在庫金額40,418円)。以上よりがん化学療法のPTC 事前登録制・DB 化は, 治療の安全性向上および効率化に寄与していると考える。 -
外来化学療法の現状と将来
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description外来化学療法がしだいに盛んになり, 外来治療センターも設立されるようになった。当科で1日25人の外来化学療法を施行したが, 治療オーダー開始から薬剤到着まで平均27.6分のところ, 混雑時は1時間を要し, 治療開始までに1時間30分を要する場合もあった。患者の増加に伴い, 治療室の有効利用, 治療所要時間別に患者の振り分けを行うことも必要である。今後, 化学療法が持続投与になる可能性があり, IVH ポートと携帯用ポンプを使用した化学療法も普及すると思われ, このような治療を支援できる体制を構築することが必要不可欠となると思われる。
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一般演題 対応困難例
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合同カンファレンスを契機に在宅療養へ移行できた終末期患者の1例—多職種カンファレンスに関する考察—
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description当病院では一般病棟において緩和ケアを提供し, 多職種による合同カンファレンスを開催している。本論文では, 合同カンファレンスを契機に患者と家族のコミュニケーションを改善し在宅療養へ移行できた72歳, 女性, 肺癌術後再発の1例を報告し, 多職種による合同カンファレンスの運用について検討を行った。結論として, カンファレンスの事前準備, 時間厳守, 病棟で実施すること, コールへの対応方法, 栄養士の参加が重要であると考えられた。今後の課題として, 開催のタイミングとスタッフ間での結果の共有方法, 看取りの教育などがあげられた。 -
疼痛コントロールを図りながら在宅死を迎えた1事例
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description当院訪問看護室において, 9割が癌終末期である。そのなかでも主訴が多く, また疼痛コントロールのため高容量の強オピオイドを使用し, 著しい症状の変化がありながらもQOL を維持し自宅で看取ることができた事例について報告する。患者は69歳, 女性。大腸癌。夫と長男家族と同居していた。外来化学療法後骨転移が判明し, 強オピオイドを使用開始となり在宅ホスピスケアに移行する。その後, 皮膚転移層の自壊, 左大腿の病的骨折により家族の介護に対する不安が増強したが, 家で過ごしたいという本人の意思を尊重し在宅を続けた。われわれは電話訪問と訪問回数を増やし, 医療や精神的サポートに努め, 患者のQOL を維持し在宅死を迎えることができた。患者, 家族双方のQOLを保つには症状コントロールに加え, 家族へ看取りの説明をするタイミング, 連絡方法, 電話訪問を的確に行うことが重要であると痛感した。
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ワークショップ2 クリニカルパスが繋ぐ医療—病院から在宅へ—
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在宅ケアのクリニカルパス
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description在宅ケアに必要なニーズが最初から網羅されている「竹内式アセスメント」を用いて, 在宅ケアのクリニカルパスと, 在宅を視野に入れた新しい問診票を開発したのでその開発の経過と特徴を紹介した。そして, 在宅ケアのクリニカルパスと新しい問診票は, 快適な在宅生活と安心できる早期退院のツールとして有効であることを述べた。
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一般演題 薬剤師の役割, 通院在宅化学療法
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外来化学療法におけるEpirubicin Hydrochloride(EPI)点滴投与による血管炎の現状
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description外来通院におけるepirubicin hydrochloride(EPI)の血管炎発現が多くみられるようになった。安全で副作用が少ない状態で通院治療を続けるための援助が必要である。本研究の目的は通院で乳がん術後補助療法において, EPIを点滴投与した患者血管炎の現状および血管炎の発生にかかわる要因を明らかにすることである。研究方法は記録物調査。過去の診療録より, EPIの血管炎発現状況およびEPI 1回投与量, 年代, 既往症, 体格の関連要因を抽出する。投与方法は, 生理食塩水または5%ブドウ糖50〜100ml にEPI 1回投与量を希釈し, 30分かけて点滴していた。その結果, EPIの点滴投与で45例中35例に血管炎発現があった。年代(60歳以上), 既往症, 体格(BMI 25以上)と血管炎発現の関連はみられなかった。EPI 1回投与量110mg 以上29例中23例に血管炎が発現していた。診療録からは, 投与方法のみが血管炎の要因とわかった。先行研究により, EPI は血管への停滞時間が短いほど血管炎が少ないという報告があることと, 本調査の結果より投与方法を検討した。その結果, 現在ワンショット法に変え血管炎の発現は抑えられている。 -
薬剤部門における外来がん化学療法のセーフティマネージメント
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description外来がん化学療法の運用において, セーフティマネージメントに大きな関心が寄せられている。東海大学八王子病院では, 1.「使用履歴を加味した正確な処方鑑査」として注射処方鑑査システム(処方リスクマネージャ)を, 2.「注射薬混合調製時の確実な実施情報伝達」として注射指示伝票(注射ワークシート)を薬剤部門に導入し運用を行っている。上記運用の有用性を検討した結果, 1.処方リスクマネージャを利用した鑑査により, 0.57%のプロトコール逸脱が判明し, それらすべてのオーダが修正された。 2.削除オーダを取り消し線で表示した注射ワークシートの併用により, 3.1%の変更情報が確実に伝達され, 変更前薬剤の混合を完全に防ぐことができた。薬剤部門が注射処方鑑査システムによる使用歴を含めた鑑査と, 確実な情報伝達による抗悪性腫瘍用薬の混合調製業務を行うことで, 外来がん化学療法におけるセーフティマネージメントに大きく貢献できた。 -
無菌製剤の供給に向けて—第1号患者の受け入れまで—
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description高齢社会の到来とともに医療の機能分化が進み, 在宅療養者に対する医療・介護サービスの充実が求められている。これらのサービスの一つとして, 薬局・薬剤師は医療保険では在宅患者訪問薬剤管理指導, 介護保険では居宅療養管理指導を訪問によって行っている。このような在宅療養者への薬剤師のかかわりは, 1994年厚生省(当時)によって「薬局の成熟度」として示されている。現在では第3ステップの医薬分業が定着し, 今後第4ステップ(無菌製剤供給)の整備に向けた努力が必要になってきたところである。無菌製剤の供給は, 薬局にとっては初めての経験になるので, 薬剤師の臨床研修, 無菌調剤技術の習得, クリーンルームなどの設備の整備が必要になる。このような薬局の準備と併行して, 近隣の医療機関と受け入れの準備が必要になる。今回, 初めてのHPN 患者を受け入れる機会があり, これまでの経過と今後の課題について報告する。 -
在宅医療を支援する薬局の課題
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description最近, 病院が積極的に在院日数の短縮に取り組むようになってきたため, その受け皿である在宅医療が推進されつつある。在宅医療は, 主治医, 訪問看護, 薬剤供給などについて, 地域で完結したシステムが必要である。特に制度面から癌患者の在宅医療が推進されつつあるので, 薬剤供給体制の整備が急務である。薬剤師は, 注射薬などの調剤だけではなく, 患者訪問活動, 主治医・訪問看護師への情報提供をとおして薬の適正使用に貢献する。今後, 在宅医療を推進する上から, 薬局の整備と臨床経験に富んだ薬剤師の養成が必要である。
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一般演題 チーム医療
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当院のホスピスケアにおける継続医療構築の取り組み
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description松山ベテル病院はホスピス病棟を2000年4月より開設し, 在宅サービス事業の一環として在宅ホスピスケアも行っている。患者・家族が終末期における療養の場として病棟や老人施設あるいは自宅の選択を自由にスムーズに行えることはホスピスケアを受ける上でたいへん重要なことであると考え, 2004年4月よりホスピス相談外来を新設し, 患者・家族の希望に添う形での継続医療の構築に取り組んでいる。当院ホスピス病棟は, 受け入れ患者の基準を余命6か月以内の終末期がん患者としているが, ホスピス相談外来を設置したことで患者・家族の希望に添う形での継続医療が行えるようになり, 余命半年以上の患者の対応もスムーズに行うことが可能となった。 -
癌終末期患者の在宅療養における病院看護師と訪問看護師の連携のあり方
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description包括医療の導入により在院日数が短縮され, 訪問看護を利用する患者も増加している。看護の継続を図るためには病院看護師と訪問看護師とのよりよい連携が望まれる。今回, 癌終末期患者の在宅療養支援において, 訪問看護師が病院看護師に望む連携, 退院時共同指導の実施状況, 在宅移行後の訪問看護ステーションの看護師と病院看護師の情報交換や支援方法の現状について五つのカテゴリー, 1.在宅移行前, 2.在宅移行直後, 3.安定期, 4.臨死期, 5.その他(病院看護師への要望)別, 12の質問項目を作成しアンケート調査を実施した。都内の459名の訪問看護師から回答を得た。癌終末期患者の病院看護師と訪問看護師の連携のあり方で明らかになったことは, 1. 訪問看護の依頼者には, 退院調整の役割を担う看護師の存在があった, 2. 訪問看護師の退院時共同指導への参加は, 所属するステーションの人的・経済性が影響していた, 3. 訪問看護師は, 病院の情報と患者・家族の思いにずれがあると感じていたが, 患者・家族の意思を確認するなどの看護行為をとおして対処していた, 4. 在宅療養中の病院医療者との連携は, 自宅での看取りを患者・家族が決めていない場合の臨死期において, 多く図られていた。 -
がん終末期患者の在宅療養移行における病診連携のアンケート調査
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Descriptionがん終末期患者が安心して在宅療養に移行するための急性期病院(以下, 急性期)医師と地域医療担当(以下, 地域)医師の役割, 協働を検討する目的で, 医師を対象としたアンケート調査を行った。調査は急性期と地域医師の2群とし, それぞれのアンケート用紙を配布, 回収した。配布数185, 回答数は123(急性期医師35, 地域医師88), 回収率66.5%であった。急性期医師の医師経験年数は18.7±9.0年, 地域医師は経験20.9±9.2年, 訪問診療経験93.2%であった。調査結果において急性期と地域医師の患者評価で有意に差があったものは, 退院時の患者家族の病状理解, 患者家族への医療処置指導, 症状緩和, 病院での精神的フォローであった。また, 地域医師の約70%は夜間および緊急時の医療対応に患者家族が不安をもっていると回答し, 約70%が緊急時の急性期病院対応に困った経験があるとしている。一方, 急性期医師の62%は緊急時の対応を必ずしていると回答している。患者家族にとって, 安心でQOL が高い在宅療養を行うためには具体的目標が2群医師間および患者で共有できることが重要と考えられる。急性期医師と地域医師が十分に連携を取り, 在宅医療移行時の役割分担を明確にし, 共通目標を達成する方策を考えていくことが必要である。 -
退院支援スクリーニング票の活用
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description退院支援スクリーニング票(以下, スクリーニング)は, 早期に退院支援が介入できるように入院時にすべての患者に行っている。スクリーニングを看護部の活動目標のバランススコアカード(BSC)評価指標としたことにより, 導入直後より新入院患者の約40%以上に実施できた。スクリーニングで2項目以上チェックされている場合は退院支援の介入を行うことが多い。また, スクリーニングでチェックのあった患者の場合には入院後1週間以内に退院支援依頼がだされることが多かった。
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一般演題 チーム医療, その他
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摂食・嚥下障害者の主介護者の介護経験—主体的な介護の取り組み—
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description本研究の目的は, 摂食・嚥下障害者の主介護者の介護経験について明らかにすることである。訪問看護を利用している摂食・嚥下障害者の主介護者8名へのインタビューを質的に分析した。その結果, 主介護者の介護経験は, 1.“なんとか看ていけるであろう”という思いでの摂食・嚥下障害に対する介護の始まり, 2.摂食・嚥下障害に対する介護への心の揺らぎと受け入れ, および介護の知恵, 3.食の価値観との葛藤と受け入れ, および介護の知恵, 4.“このまま介護していけるだろうか”と“なんとかできている”という共存する思い, 5.“自分ならやっていける”という思いを得る, 6.要介護者の生活の再構築をめざした取り組み, 7.生活と介護のバランスを調整し, 自身の生活の再構築への取り組みという7局面に分類することができた。介護経験を理解することは, 援助の視点を明確にし, 援助の質を高めると考える。
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一般演題 情報ネットワーク, その他
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テレビ電話利用による「在宅遠隔療養支援システム」の効果と課題
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description「在宅遠隔療養支援システム」(以下, 支援システム)とは, 在宅にバイタル測定用機器やテレビ電話を設置し, 情報通信回線を利用してリアルタイムで療養者宅と医療機関をつなぎ, 在宅療養を支援するシステムである。在宅機器として, 専用電話機・バイタル測定用機器・テレビモニター・カメラを各1台ずつ設置し, 医療機関のセンターパソコンで療養者のデータ管理やテレビ電話による健康相談を実施する。当院では県の「遠隔医療補助事業」の支援を受けて, 2004年4月に「支援システム」を導入した。初年度は3名の在宅利用者を予定し, 2名が支援システムを利用した。結果, 支援システムは状態安定者の健康管理に役立つなどの効果がみられたが, 保険算定できない現状では, 利用者効果と提供サービスの内容や利用者負担のバランスを考え, 運用を検討する必要があるという結論に至った。 -
特別養護老人ホーム入所者における急性期医療の考察
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description急性期医療を要する特養老人ホーム入所者についてその現状を調査し考察した。検討内容:入院治療を必要とした入所者57名において, 入院件数, 入院理由, 入院期間, 転帰を調べた。結果と考察:呼吸器疾患の入院件数が最も多く, また入院の総日数も最も長かった。呼吸器疾患の入院に限れば, 胃瘻造設の患者群において, 入院の頻度や在院日数が有意に減少していた。嚥下困難の対策を講じることは入院機会の減少に役立つことが考察された。 -
地域医療支援病院における在宅調整—在宅調整専任看護師の役割—
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description当院は, 東京都の南多摩地区の5市からなる南多摩保険医療圏の地域医療支援病院である。癌医療と救急医療を重点医療とし, ベッド数306床の急性短期病院である。当院の地域医療連携室は, 室長・事務・MSW ・看護師で組織し, 地域医療機関との連携を実施している。2004年度の看護相談係の業務実績では, ターミナル患者240件(累計)に対応し, HPN 導入指導87件, うち34人が在宅に移行した。今回は, 在宅移行に院内外多くの職種がかかわり, 在宅療養に高度な医療的処置を必要とする在宅IVH 導入患者の退院調整について紹介し, 当院の看護相談係の役割について事例を交えて所見を報告する。
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対応困難例
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心理的要因が強い患者とのかかわりを通して—嘔吐に対してセデーションしながら外来化学療法を行った症例—
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description嘔吐がひどいため入院で化学療法を行っていた患者を, 外来化学療法でジアゼパムを使いセデーションしながら行ったことで嘔吐が軽減された症例である。39歳, 子宮, 卵巣癌(stage III)腹腔内転移。2002年子宮全摘, 両側卵巣摘出を行っている。化学療法では嘔吐がひどく約4日間の入院で行っていたが, 食事の音を聞いただけでも吐いており, 治療に対しても拒否されていた。そこで外来化学療法に移行し, セデーションしながらの化学療法が効果的ではないかと考えた。治療中はぐっすり眠らせ, うとうとした状態で帰宅させるのである。セデーションし治療後患者は,「治療中は眠れる」安心感から嘔吐も少なくなり, 治療に対しても拒否しなくなった。 -
乳癌食道転移による頸部食道狭窄に対して気管切開と胃瘻造設にて在宅緩和ケアを行った1例
32巻Supplement I(2005);View Description Hide Description症例は66歳, 女性。乳癌手術を受けた7年後に嚥下障害を徐々に認めた。乳癌食道転移と診断し放射線治療, 外来化学療法を施行した。約4年間の治療後に病状悪化し, 栄養管理と誤嚥防止のために胃瘻造設, 気管切開を施行した。病状の進行と身体環境の変化から本人, 家族は退院に不安を感じていたが, チームアプローチを通じて在宅ケアへ移行した。ケアの要点は頸腕部にかけての疼痛コントロール, 気管切開部のカニューレ交換, 抗癌剤投薬を含めた胃瘻の管理であった。在宅中は精神的にも落ち着き穏やかに過ごすようになったが, 症状悪化と家族の疲労のため2か月後に再入院した。再入院後は入院生活の環境で, 本人らしい生活を支えていけるように配慮していった。再入院2か月後, 穏やかに永眠された。入院中からの緩和チーム介入と外来での訪問看護, 何よりも家族のサポートにより在宅ケアを実行できたと思われた。
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