Volume 32,
Issue 13,
2005
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総説
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癌と化学療法 32巻13号, 2017-2023 (2005);
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消化器癌に対する化学療法の幕開けは,1957年にHeidelbergerにより創薬された5-fluorouracil(5-FU)で,1990年代までの40年間,大腸癌化学療法の基本薬剤として広く貢献してきた。化学療法のsecond waveは,biochemical modulationへの発展であった。5-FU の効果増強を目的に,methotrexateやl-leucovorin(LV)との時間差投与が行われ,5-FU/LV 療法はmeta-analysisの結果から大腸癌の標準化学療法として認められるようになった。さらにUFT, TS-1やcapecitabineといった経口フッ化ピリミジン系薬剤も静注療法と比して同等の延命効果が認められ,選択肢の一つとして重要な位置を占めるようになった。irinotecan(CPT-11)の効果は化学療法を一変させた。消化器癌治療を進展させ,2000年にはCPT-11+5-FU/LV が欧米での大腸癌に対するfirst-line chemotherapyとして認められた。日本では1999年まで5-FU/LV 療法の承認が得られなかったため,欧米に遅れをとってしまった。oxaliplatin(L-OHP)は初めにヨーロッパで承認され,infusional 5-FU/LV を併用したFOLFOX が1998年に承認された。2004年にはFOLFOX 4が米国でfirst-line chemotherapyとして認められた。日本で産声をあげたL-OHP はついに2005年3月に国内での承認が得られた。FOLFOX 4が採用されL-OHP は瞬く間に臨床現場に拡大していった。molecular targeted agent の開発が行われbevacizumabやcetuximabは大規模第III相臨床試験の結果,その優れた有効性により米国で承認された。生存期間中央値は5-FU/LV 療法にCPT-11やL-OHP の併用によって段階的に延長を認め,さらにmolecular targeted agent の追加により20か月を超えるようになった。
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特集
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頭頸部癌診療の進歩
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癌と化学療法 32巻13号, 2024-2029 (2005);
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頭頸部癌に対する動注法は歴史的にみて三つの方法があるが,それぞれの利点,欠点がある。今回は最近注目されている浅側頭動脈よりの新しい超選択的動注法を用いた連日・同時動注化学放射線療法を中心に述べる。方法は浅側頭動脈より新しく開発された弯曲カテーテルを用いて腫瘍栄養血管に逆行性に挿入する。口腔癌stageIII,IV症例(35例)に対してdocetaxel(DOC):60mg/m2(15mg/m2/week)とcisplatin(CDDP):100mg/m2(5mg/m2/day), 放射線療法40Gy(2Gy/day)を術前治療として連日の同時併用で4週間行った。この方法はカテーテルの長期留置が可能で可能であることから,連日の同時放射線療法と動注化学療法の併用が可能となった。カテーテル挿入成功が31例であり,カテーテル挿入の成功率は88.6%であった。治療効果は臨床効果ではCR が25例(80.6%), 切除腫瘍の病理組織効果ではGradeIII以上が28例(90.3%)と極めて高い治療効果が得られた。この方法は頭頸部癌の新しい治療戦略の一つとして期待される。
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癌と化学療法 32巻13号, 2030-2034 (2005);
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進行した頭頸部癌に対して根治手術を施行した場合,臓器と機能が犠牲となることが問題としてあげられる。臓器温存率を改善する試みとして,放射線治療に化学療法を先行させる方法(neoadjuvant またはinduction chemotherapy), 同時併用する方法(concurrent またはconcomitant chemotherapy), 放射線治療後に化学療法を行う方法(adjuvant chemotherapy),そして交互に行う方法(alternative chemotherapy)がある。最近のmeta-analysisを用いたsystematic reviewにおいて,放射線治療と化学療法との同時併用は放射線治療単独に比べて頭頸部扁平上皮癌における生存率に統計学的有意な向上があり,化学療法を先行させる方法より優れていると報告されている。cisplatinを含むレジメンの同時併用化学療法が頭頸部扁平上皮癌において最も有効と考えられているが,スタンダードの化学療法のレジメンは確立されていない。当科では根治手術を最小限にして喉頭温存を図る目的で,放射線治療に化学療法としてcisplatin, 5-fluorouracil, methotrexate,leucovorinの4剤を同時併用してきており,切除可能な進行下咽頭扁平上皮癌を対象とした治療成績を示した。現在までの報告と今回の結果から臓器温存を図る方法として化学療法と放射線治療の同時併用は適していると考えられる。
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癌と化学療法 32巻13号, 2035-2039 (2005);
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タキサンは頭頸部扁平上皮癌に有効な薬剤であり,単剤で20〜40%の奏効率である。本邦における第Ⅰ相試験では最大耐量が70〜90mg/m2で推奨用量が60mg/m2であり,主な有害事象は好中球減少であった。docetaxelとcisplatinの併用は効果的な組み合わせであり,進行再発頭頸部癌に対して40〜70%の奏効率を示し,cisplatinと 5-fluorouracilの組み合わせと同等の評価がされている。Cisplatin,5-fluorouracil, docetaxelの3剤併用は広く臨床応用されその一次効果は従来のcisplatinと5-fluorouracilの併用を上回る期待がされている。しかしながら,本当にこの組み合わせが優っているか否かは,現在進行中の比較試験であるEORTC の研究結果を待たねばならない。Docetaxelによる同時併用療法は切除不能症例において有効な治療法である。Cisplatinと5-fluorouracilの同時併用療法は照射単独に比べて統計的に有意な生存期間延長を認めている。Docetaxelを含んだレジメンもこれと同等の効果が期待されるが,強い粘膜毒性が急性毒性であり,嚥下障害が慢性毒性となっている。したがって,3剤併用による同時併用は日本人には毒性が強く施行が難しいと思われる。より強力な粘膜障害の補助治療開発が必要である。
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癌と化学療法 32巻13号, 2040-2045 (2005);
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頭頸部癌に対する化学療法は,従来からCDDP と5-FU の併用療法が第一選択として行われている。わが国で開発されたテガフールを基盤とするTS-1は,経口剤でありながら十分な効果をもつ薬剤として注目され頭頸部癌に対しても優れた効果を示している。そして様々な施設でTS-1とCDDP との併用について臨床第I/II相試験が行われている。われわれは多施設共同で行ったTS-1とCDDP 併用の第II相試験で34例の評価可能例に対してCR 7例,PR 16例と奏効率67.6%と良好であったが,骨髄毒性が5-FU を使用した場合と同等ないし増強していると考えられた。TS-1とcarboplatinやnedaplatinとの併用も検討されている。また,化学放射線治療に関してもTS-1との併用療法が検討されている。放射線治療と併用した場合のTS-1の投与期間や投与量に関して臨床第㈵相試験が行われており,将来その効果と有用性が検討されるであろう。TS-1は経口剤で投与が簡便であり今後は様々な併用療法が開発されると考えられるが,毒性も強いため慎重な投与が必要である。しかし,有用性の面では5-FU かそれ以上の効果をもつと考えられるので,今後,大規模な臨床第II相試験の結果が待たれる。
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癌と化学療法 32巻13号, 2046-2051 (2005);
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放射線,化学療法,手術の進歩にもかかわらず,頭頸部癌患者の生存率はここ30年間有意な変化を認めていない。このような状況のなか,現在遺伝子治療を含め様々な新しい治療法が開発されつつある。頭頸部癌に対する最近の遺伝子治療と分子標的治療について,なかでも増殖型アデノウイルスベクターに焦点をおいて概説する。現在,非増殖型アデノウイルスベクターは便利でかつ安全なベクターとして多くに使用されてきた。しかしながら,遺伝子導入細胞への導入効率に制限があった。増殖型アデノウイルスベクターは,正常組織内ではなく標的癌細胞でのみ複製増殖が可能なようにデザインされており,癌細胞はアデノウイルスの複製増殖により生じる細胞毒性で腫瘍細胞の崩壊が引き起こされる。最近,増殖型ウイルスベクターを用いた基礎実験で抗腫瘍効果の証明がなされ,いくつかの臨床試験においてその安全性や臨床効果を証明する報告がされるようになった。
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原著
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癌と化学療法 32巻13号, 2053-2057 (2005);
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capecitabineは新規経口フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍薬であり,3段階の代謝を受けて活性代謝物である5-fluorouracilに変換されるプロドラッグである。代謝酵素の分布の違いを利用し,骨髄細胞や消化管に比較して腫瘍組織へ選択的に5′-deoxy-5-fluorouridine(doxifluridine:5′-DFUR)として薬物を分布させ腫瘍細胞内で5-fluorouracilに活性化されるようにデザインされている。この薬物動態学的利点から,capecitabineは5′-DFUR より高用量投与が可能であり,高い有効性が期待できる。capecitabineの薬物動態学的優越性を検討するため,capecitabineと同一の試験デザインで行ったdocetaxel無効の乳癌に対する5′-DFUR の第II相臨床試験において,臨床薬理学的検討を行い両剤の薬物動態および薬力学を比較した。capecitabine投与後の5′-DFUR の濃度時間曲線下面積(AUC)は,5′-DFUR 投与後と比較して2.3倍大きく,腫瘍細胞でより高い5-fluorouracil濃度が得られていることが示唆された。5′-DFUR と比較してcapecitabineは薬物動態学的に優れていることが示された。
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癌と化学療法 32巻13号, 2059-2064 (2005);
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aggressive B-cell non-Hodgkin’s lymphoma(NHL)症例に対する自家造血幹細胞併用大量化学療法(high dose therapy followed by autologous stem cell transplantation:HDT-ASCT)について検討を行った。1991年から2004年に標準化学療法では完全寛解に至らなかった25例(化学療法抵抗性)ならびに完全寛解に至った26例に対してHDT-ASCTを施行した。化学療法抵抗性25例では化学療法に感受性を有していた14例の完全寛解率は50.0%, 化学療法に抵抗性であった11例では完全寛解例はみられなかった。それぞれの5年event free survival(EFS)は51.3%および20.8%, またinternational prognostic index(IPI)low-risk グループ,high-risk グループの5年EFS は75.0, 16.3%であった。HDT-ASCTは化学療法抵抗性例よりも化学療法感受性例に有効であるものと考えられる。完全寛解状態で地固め療法としてHDT-ASCT を施行した26症例においてlow-risk グループならびにhigh-risk グループの5年disease free survivalはそれぞれ60.0%および68.8%であった。high-risk グループにおいてはHDT-ASCT を地固め療法とすることにより予後改善が得られるものと考えられる。今後,aggressive NHL high-risk グループに対しては寛解導入療法あるいは地固め療法としてリツキサンを併用したHDT-ASCT の検討が必要と考えられる。
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癌と化学療法 32巻13号, 2065-2069 (2005);
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われわれは以前より,頭頸部癌の治療としてcisplatinと5-FU を組み合わせたFP 療法を用いたconcurrent chemoradiotherapyを行ってきたが,進行癌においては期待していたようなよい治療成績を残せなかった。そのため,治療効果向上を目的としてfirst-lineのレジメンを変更し,臨床第㈵相試験を行った。FP 療法のうち,時間依存性の薬剤である5-FU を内服薬TS-1に変更し,2週間連続投与できるようにし,さらに用量依存性の薬剤であるcisplatinを腎機能障害が少ないnedaplatinに変更することでより安全に必要用量投与できるようにした。用法はTS-1を2週間連続投与し,その4日目にnedaplatinを投与した。加えて放射線治療を連日同時併用して行った。level0, 1, 2の3段階の用量を設定し,臨床第㈵相試験を行った結果,有害事象として,level2で2症例にgrade3の放射線性粘膜炎が生じたことにより,われわれは最大耐用量(MTD)をTS-1 80mg/m2(最高120mg/body), nedaplatin 100mg/m2とし,推奨投与量(RD)をTS-1 80mg/m2(最高120mg/body), nedaplatin 90mg/m2と決定した。
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癌と化学療法 32巻13号, 2071-2077 (2005);
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【目的】エストロゲンレセプター(ER)陽性閉経前乳癌患者のadjuvant 治療におけるgoserelin(GOS)投与の意義を無作為化比較試験により検討した。【方法】n+, あるいはn 0かつT≧3cm のER 陽性閉経前乳癌患者に対し,tamoxifen(TAM)20mg/日,GOS 3.6mg/4週,GOS+TAM のいずれかを2年間投与し,臨床効果と安全性を検討した。【成績】評価対象症例数は207例で,TAM 群に対するGOS 群の無病生存期間(DFS),全生存期間(OS)のハザード比は,それぞれ0.87〔95%信頼区間(CI):0.47〜1.63〕,2.10(95%CI:0.38〜11.49)であった。また3群の副作用発現率は類似していた(42〜55%)。本試験では目標症例数に満たず,統計学的に十分な検討が行えなかったため,海外の同様の試験結果(ZIPP)と併せ,メタアナリシスを行った。その結果,GOS 非投与群(1,424例)に対するGOS 投与群(1,442例)のDFS, OS のハザード比は,それぞれ0.83(95%CI:0.72〜0.95), 0.85(95%CI:0.70〜1.03)であった。【結論】207例の解析では統計学的有意差はなかったが,メタアナリシスでは,GOS 投与群がGOS 非投与群に比べDFS を有意に延長した。また,GOS の忍容性は高いと推察された。以上より,ER 陽性閉経前乳癌のadjuvant 治療におけるGOS 投与は有用であることが示唆された。
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癌と化学療法 32巻13号, 2079-2085 (2005);
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【目的】大型3型(径≧8cm)4型胃癌,あるいはBulky N 2を有する進行胃癌に対する術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy:NAC)の治療成績を検討した。【対象】年齢75歳以下で,術前画像診断にて根治切除可能と判断された症例を対象とした。NAC のregimenはTS-1 80〜120mg/bodyを1〜21日経口投与し,CDDP 60mg/m2を8日目に点滴投与し,1コース4週×2コース終了後21〜34日に胃切除+D 2以上リンパ節郭清を行った。治療完遂率,手術摘出標本の病理組織学的効果判定について検討した。【結果】検討対象となった症例数は10例で,その平均年齢60.7歳,治療完遂率8/10例(80%)であり,切除標本の病理組織学的診断にてGrade2の診断が得られたresponderは5例であり,response rateは50%であった。responder 5例のうちの2症例はNAC によるdown staging が病理組織学的に評価できた症例であり,1例はStageIIIA からStage㈵A へ,別の1例はStageIVからStage㈵A にdown staging されたと推察される。non-responderの5例中3例が再発しており,そのrelapse free interval(RFI)の平均値は238日であった。一方,responderの5例中では1例が術後331日で再発を認めたが,他の4例はいまだ再発を認めていない。【結語】大型3型/4型/Bulky N 2進行胃癌に対するTS-1+CDDP のNAC は有効と考えられるが,その真価を確認するために手術単独療法とのphase III studyの必要性がある。
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癌と化学療法 32巻13号, 2087-2090 (2005);
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予後不良な進行再発大腸癌患者に対する外来化学療法としてホリナート・テガフール・ウラシル(以下UFT/Leucovorin)内服療法を19例に対して行い,効果ならびに問題点について検討した。UFT 300mg/m2/day, Leucovorin 75mg/body/dayを28日間投与7日間休薬を1クールとする推奨レジメンで行った。効果はPR 6例,SD 8例,PD 5例であり奏効率は31.6%であった。Kaplan-Meier法による50%生存期間は16か月であった。主な副作用は悪心4例(grade2以下), 下痢4例,好中球減少3例(grade2以下), 口内炎2例(grade2以下)であった。本療法は奏効率,延命効果の面で良好な成績を示した。また,副作用も少なく,外来投与が安全に施行可能であり,有用な化学療法と考えられた。
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癌と化学療法 32巻13号, 2091-2095 (2005);
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頭頸部進行扁平上皮癌患者を対象に,cisplatinを含む化学療法によって誘発される悪心や嘔吐の予防効果をramosetron 0.3mg とdexamethasone 8mg の併用とramosetron 0.3mg とdexamethasone 12mg の併用療法を,無作為化クロスオーバー法を用いて検討した。対象は2001年1月から2002年12月の間に横浜市立大学医学部附属病院と横浜市立大学医学部附属市民総合医療センターにおいてcisplatinを中心とした化学療法を施行した25名の症例である。dexamethasone 12mg 併用群と8mg 併用群と比較したが,悪心・嘔吐の予防効果に有意差は認められなかった。今回の研究で,ramosetron 0.3mg とdexamethasone 8mg でも頭頸部進行癌患者の悪心・嘔吐の予防効果は十分に有効であることが示唆された。
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症例
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癌と化学療法 32巻13号, 2097-2099 (2005);
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乳癌による癌性髄膜炎はまれであるが予後不良の疾患で,本邦報告例の平均生存日数は約80日である。今回われわれはanthracycline,paclitaxel治療後に癌性髄膜炎再発を来した44歳の女性に対し,MTX, Ara-C 髄注とdocetaxel併用化学療法を施行し,QOL の改善ならびに髄液検査上,腫瘍細胞数の減少,変性を認めた1例を経験した。最終的には髄膜炎症状再燃し,発症後128日目に死亡した。髄注とdocetaxel併用療法が有効であった1例について文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 32巻13号, 2101-2104 (2005);
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症例は40歳,女性。肝左葉外側区域への浸潤と胃横行結腸間膜への腹膜播種伴う4型進行胃癌に対して,paclitaxel(PTX)/CDDP weekly投与を行った。PTX 80mg/m2とCDDP 25mg/m2をday1, 8, 15に投与した後,1週間休薬を1クールとした。4クール施行後CA 19-9の値は890U/ml から41.4U/ml に減少した。臓器への浸潤や腹膜播種が消失し,胃腫瘍の縮小も認められたため根治術可能と判断し,D2郭清を伴う胃全摘脾合併切除術を行った。術後PTX/CDDP weekly療法を6クール行い現在再発もなく経過観察中である。この化学療法は,外来での投与も可能で進行胃癌に対する有効な治療法と考えられた。
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癌と化学療法 32巻13号, 2105-2107 (2005);
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症例は74歳の男性。心窩部痛と腹部膨満を主訴に当院内科を受診し,2型の進行胃癌と診断された。腹部CT 検査にて遠隔転移は認められず,根治切除可能であると判断し,手術を施行した。No.8aリンパ節転移が膵頭部に広範囲に浸潤しており,根治手術を行うためには膵頭十二指腸切除が必要であった。術前に間質性肺炎を合併していたために,根治手術を断念し,No.8aリンパ節を残存させて幽門側胃切除とD 2郭清を行った。術後1か月より合計38Gyの照射をNo.8aリンパ節転移病変に行ったところ,転移は約2か月後に消失した。4年経過した現在,外来にて経過を観察中で,明らかな再発は認めていない。局所因子で非治癒切除となった胃癌症例に対して,術後放射線療法と補助化学療法が有効な症例が存在する。これら症例に対して,術後放射線療法は有用なオプションの一つであると考えられた。
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癌と化学療法 32巻13号, 2109-2111 (2005);
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TS-1+paclitaxel(PTX)の併用投与を行い,胃癌の癌性腹水が完全に消失した著効例を経験したので報告する。症例は66歳,男性。胃癌の診断で術前化学療法後,2002年3月4日に胃全摘術,膵体尾部脾合併切除術およびD 3リンパ節郭清術を受けた。退院後は外来にてフォローしていたが,18か月後に著明な腹水貯留が出現し,腹水細胞診にてClass㈸であった。TS-1 100mg/日(連日投与)およびPTX 120mg/日(週1投与)を開始し,2週終了時には腹水が完全に消失し,さらに同レジメンを2クール追加した。18か月たった現在も腹水の出現を認めていない。なお,副作用はgrade2の白血球減少,grade 2の脱毛を認めたが,重篤な過敏症や末梢神経障害などは認めなかった。
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癌と化学療法 32巻13号, 2113-2116 (2005);
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症例は62歳,男性。背部痛にて当院を受診し,精査にて多発肝転移を伴った2型胃癌が発見された。肝転移が予後因子と考え,TS-1とMMC 肝動注に温熱療法を併用した化学温熱療法を2コース施行した。肝転移巣はPR となったが原発巣はNC であったため,TS-1とCDDP の24時間持続静注投与に温熱療法を併用した化学温熱療法を4コース追加した。3コース終了時点で原発巣は瘢痕化し,生検でも癌細胞を認めず,原発巣CR, リンパ節CR, 肝転移巣PR, 総合PR と評価した。肝転移巣が予後因子と考えられた胃癌に対し,肝動注を併用した治療をまず先行させ,その後原発巣を含む化学温熱治療を施行する方法は有効な手段と考えられた。
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癌と化学療法 32巻13号, 2117-2120 (2005);
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TS-1治療抵抗性胃癌のsecond-line chemotherapyとして,paclitaxelのweekly投与が有効であった再発胃癌の1例を経験したので報告する。症例は65歳,女性。MUL に広がる3型胃癌で,腹部大動脈周囲リンパ節に転移を認めた。2003年3月根治的に胃全摘術を施行。病理組織学的検査の結果は低分化腺癌,pT 3, pN 3, StageIVであった。術後,TS-1による補助化学療法を施行していたが,2004年3月血尿出現し,CT にて腹部大動脈周囲リンパ節転移と左腎転移を認めた。血尿持続するため血管造影下に腎動脈を塞栓し止血した。その後,4月よりpaclitaxelのweekly投与を開始。3コース終了時にはCR となり,7コース終了時にもCR が持続していた。2005年1月現在全身状態良好で,重篤な有害事象もなくpaclitaxelの投与を継続している。本療法はTS-1治療抵抗性胃癌のsecond-line chemotherapyとして有用と考えられた。
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癌と化学療法 32巻13号, 2121-2123 (2005);
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症例は75歳,男性。肝細胞癌と多発性肝転移・リンパ節転移を伴った進行胃癌に対し,2004年4月幽門側胃切除術を行った。術後TS-1の内服とlow-dose CDDP の肝動注療法を行ったが,3クール終了時点でCT 上胃癌の肝転移は著明に縮小し,リンパ節転移は消失,肝細胞癌も抗癌剤投与前の54.1%に縮小した。TS-1内服とlow-dose CDDP 肝動注の併用療法が肝転移・リンパ節転移を伴った進行胃癌のみならず,併存していた肝細胞癌に対しても有効であった1例を提示した。
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癌と化学療法 32巻13号, 2125-2128 (2005);
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症例は64歳,男性。タール便が出現し,近医にて原因を検索されていたが特定し得なかった。2001年に再度下血の頻度が増加したため,当院内科に紹介された。下血の精査を目的とする小腸造影により,空腸起始部にバリウム貯留を伴う病変を認め,小腸腫瘍が疑われた。手術の目的で外科を紹介され,小腸部分切除術および横行結腸合併切除術を施行した。術後の病理組織検査にて小腸GIST と診断された。外来にて経過観察していたが,術後1年3か月目のCT 検査にて腹腔内に多発性腫瘤と腹水の貯留を認めた。手術による摘出は困難と判断し,imatinib mesylate(STI 571)400mg/日の投与を開始した。薬剤投与により臨床症状は速やかに軽快した。投与開始後11か月目のCT 検査において,腹水および腹腔内多発腫瘤の完全消失を認めた。病変消失3か月後のCT 検査においても新たな病変の出現はみられず,画像上CR と判断した。再発小腸GIST に対する化学療法著効例の報告は数少なく,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 32巻13号, 2129-2131 (2005);
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症例は78歳,女性。2003年6月盲腸癌に対し右半結腸切除術D 2郭清を施行した。切除標本の病理組織学的所見は中分化型腺癌,壁深達度ss, リンパ節転移陰性であり組織学的病期はstageIIであった。術後補助化学療法は行わず経過観察していた。2004年4月CEA 14.9ng/ml と上昇を認めた。腹部CT 検査を施行したところ吻合部近傍に右腸腰筋に接する50×35×50mm 大の腫瘍を認めた。局所再発と診断し,UFT+Leucovorinによる化学療法を開始した。grade1の体重減少,色素沈着,そう痒症,食欲低下を認めたが,外来通院で治療可能であった。2004年11月6クールの化学療法終了後CEA は3.1ng/ml と正常化し,腹部CT 検査では腫瘍は消失した。2005年4月現在,再発徴候を認めずCR と判定した。
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癌と化学療法 32巻13号, 2133-2136 (2005);
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症例は76歳,男性。2002年1月黄疸を主訴に当科入院,膵頭部3cm 大の腫瘍を指摘され,1月28日手術施行した。術中生検でwell differentiated adenocarcinomaの診断,広範な門脈浸潤を認めたため非切除とし,肝管空腸吻合施行した(T 4NXM 0, StageIVa)。CD-DST 法により抗癌剤感受性試験を施行,gemcitabineに最も感受性が高かったため,2002年3月よりgemcitabine800mg/m2/week(3週投与1週休薬)で化学療法を開始した(通算23コース施行)。画像上NC が20か月持続,CEA,DUPAN-2は確実に増加したが,2003年11月(術後22か月)まで自覚症状なく外来通院可能であった。2003年11月の腹部CT 検査にて腹水出現,その後2004年2月まで化学療法施行したが,2004年4月癌性腹膜炎,胸膜炎にて死亡した。CD-DST 法が有用で,gemcitabine投与で症状なく22か月外来通院が可能であった非切除膵癌の1例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 32巻13号, 2137-2139 (2005);
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症例は72歳,女性。紹介医で進行乳癌に対して,手術と術後化学療法を施行されるも局所再発および肺リンパ管症としての再発を呈した。paclitaxelに対して治療抵抗性を示した。脳転移も認め,呼吸困難とそれに伴う離床困難となった。capecitabineとtrastuzumab併用療法によって脳転移巣・肺リンパ管症の改善が得られた。一時退院もできるまでに全身状態も改善したが,副作用による中断中に急性増悪した。paclitaxel不応とされた症例に対してもcapecitabineとtrastuzumab併用療法は有効なレジメと思われる。
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癌と化学療法 32巻13号, 2141-2143 (2005);
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乳癌肺転移の1例を報告した。症例は,1999年12月に手術を受け,2000年12月に再発した。アントラサイクリン系およびタキサン系抗癌剤は効果なく,経口フッ化ピリミジン系抗癌剤であるS-1単剤療法の第II相試験(80mg/m2/日,分2, 経口)に参加した。4コース終了後に肺の腫瘍サイズは開始時に比べ47.5%と著明な縮小効果が得られた。S-1単独によるサルベージ療法は基準用量を維持できれば,良好な抗腫瘍効果および優れた忍容性を示すことから,アントラサイクリン系およびタキサン系抗癌剤に耐性の進行・再発乳癌に対する在宅治療として有効と考えられた。
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2145-2147 (2005);
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5-HT3受容体拮抗型制吐剤indisetron hydrochlorideがCPT-11誘発下痢に対して有効であった1例を経験したので報告する。症例は63歳,男性。胃癌原発巣切除後にリンパ節転移が出現したため,CPT-11(125mg/m2)の24時間持続投与を開始した。化学療法開始の翌日からCPT-11の副作用と考えられる下痢が発現したので,半夏瀉心湯の投与を開始した。しかし下痢は改善されず,その後もgrade 1〜2程度で遷延した。化学療法5コース目よりそれまでの制吐剤に替えてindisetron hydrochlorideを投与した。その結果,他の対症療法なしで下痢が改善された。本症例においては,indisetron hydrochlorideが制吐剤としての役割に加えてCPT-11誘発下痢にも有効であったと考えられる。
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連載講座
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【外来化学療法】
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2148-2149 (2005);
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2150-2151 (2005);
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国際がん情報
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2153-2157 (2005);
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用語解説
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2096-2096 (2005);
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2100-2100 (2005);
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2108-2108 (2005);
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Journal Club
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癌と化学療法 32巻13号, 2112-2112 (2005);
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2124-2124 (2005);
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Source:
癌と化学療法 32巻13号, 2140-2140 (2005);
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