癌と化学療法
Volume 33, Issue 3, 2006
Volumes & issues:
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総説
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癌幹細胞の同定法としてのSP 細胞分画とその意義
33巻3号(2006);View Description Hide Description成体内の種々の組織中に組織特異的な幹細胞が存在することが知られており,胚性幹細胞との対比で体性幹細胞とも称される。組織中では常に異常細胞などが除外され,代わりに必要とされる種類の細胞が必要数生みだされ再生している。再生を担う細胞群はそれぞれの組織中に存在する体性幹細胞を源とする例が多く,血液系の細胞は造血幹細胞から,また神経系の細胞は神経幹細胞から分化する。幹細胞はHoechst 33342dyeで染色されにくくUV 光で励起して放出される蛍光を異なる2波長で検出し,蛍光強度を二次元展開することにより大部分の細胞集団(main population:MP)よりも蛍光強度の低い細胞群,side population(SP)細胞としてフローサイトメトリーで同定する手法を用いた研究が展開されている。われわれは数種類の癌細胞株について体性幹細胞の特性の一つであるSP 細胞の存在の有無を調べたところ,いくつかの癌細胞株中にSP 細胞が存在することを見いだした。これら癌細胞株中のSP 細胞が幹細胞特異的性質をもつことを,C 6神経膠腫株を用いて示した。癌幹細胞と正常な体性幹細胞の相違点を明らかにすることで,癌幹細胞特異的な治療法の開発の糸口を得るだけでなく体性幹細胞の理解にも寄与するものと思われる。
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特集
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- Adjuvant ChemotherapyのEBM に基づく有用性
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Evidenceに基づく非小細胞肺癌術後補助療法の有用性
33巻3号(2006);View Description Hide Description非小細胞肺癌術後時補助療法に関する最新のevidenceに基づいて,その有用性につき検討した。2003年に肺癌診療ガイドラインが出版された時には術後補助療法の有用性は確立していなかったが,その後に質の高いランダム化比較試験やメタアナリシスの結果が2003〜2005年の米国臨床腫瘍学会で公表され,プラチナを含む併用化学療法や経口抗癌剤UFT が術後補助療法として有効であることが示された。これらのevidenceに基づいて,非小細胞肺癌完全切除例に対しては術後補助化学療法を行うことが,標準治療であると考えられる。 -
大腸癌の補助化学療法
33巻3号(2006);View Description Hide Description欧米では,5-fluorouracil(5-FU)+leucovorin(LV)が大腸癌の標準補助化学療法として確立している。これを対照として,oxaliplatin+5-FU+LV, capecitabine, uracil-tegafur(UFT)+LV などの新しいregimenを治療群とする大規模臨床試験が行われ,新しいevidenceが次々と報告され,新しい標準化学療法が確立しつつある。これに対し,わが国では長く経口FU 系抗癌剤を用いた独自の臨床試験が行われてきた。最近になり,UFT やcarmofurなどの経口FU 系抗癌剤の有用性が臨床試験やメタアナリシスで示されるようになり,日本からも独自のevidenceが世界に向けて発信されるようになった。今後はcetuximabやbevacizumabなどの分子標的薬を併用することにより,さらなる治療成績の向上が期待されるが,費用の問題が浮上するであろう。 -
胃癌
33巻3号(2006);View Description Hide Descriptionevidence based medicine(EBM)に基づく補助化学療法の有用性は大規模臨床比較試験の結果に基づき評価しなければならない。胃癌補助化学療法の歴史は長く,多くの臨床試験が行われてきた。しかし古い時代の臨床試験に関しては多くの問題点が指摘された。その後臨床試験に関する認識も深まり,わが国でもJapan Oncology Group(JCOG)をはじめとする医師主導型の研究グループが組織され,質の高い臨床試験が行われる時代に入っている。これまでになされた多くの試験の結果はnegative result であったが,2005年National Surgical Adjuvant Study of Gastric Cancer(N・SAS-GC)として行われたUFT 内服による補助化学療法のRCT の結果が久々のpositive result として発表され,話題を呼んだ。統計学的にも明らかな生存曲線上の有意差があり,補助化学療法の有用性を強く示唆する結果であるが,目標症例数500例のうち190例の集積で中止された試験の結果であるため,このRCT 1本のみで決定的なevidenceとなり得るpivotal studyとはいい難く,さらなるevidenceが必要である。 -
乳癌術後化学療法におけるEBM
33巻3号(2006);View Description Hide Description乳癌術後化学療法は,数々の比較試験やメタアナリシスの結果を踏まえた上で変遷し,現在では腋窩リンパ節転移陽性あるいは再発リスクの高い腋窩リンパ節転移陰性症例に対しては標準的な化学療法のレジメンとしてanthracyclineを含む治療が広く行われている。さらにリンパ節転移陽性乳癌症例に対しては,AC に加えてtaxaneを用いるレジメンも行われるようになった。将来的にはdose denseの応用や,さらにHER 2陽性症例に対してはtrastuzumabが用いられる可能性がある。このように変化し続ける標準療法を日常臨床に効率的に取り入れるためには,EBM の手法を利用して作成されたガイドラインを参考にするとよい。
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原著
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進行・再発胃癌に対するWeekly Paclitaxel/Doxifluridine併用療法の検討
33巻3号(2006);View Description Hide Description今回われわれは,進行・再発胃癌23例に対して,weekly paclitaxel/doxifluridine(5′-DFUR)併用療法を行い,その有効性および安全性について検討した。対象は切除不能症例7例,非治癒切除症例5例,再発症例11例。23例中20例に他の抗癌剤による前治療歴あり。投与方法はpaclitaxel 70mg/m2の3週連続投与1週休薬,5′-DFUR は800mg/day連日経口投与し,4週間を1クールとした。成績はCR 2例,PR 1例,NC 10例,PD 4例であり,奏効率は17.6%(3/17)であった。CR 例は,原発巣・肝転移・腹部リンパ節転移を有する切除不能症例が1例,腹部リンパ節転移を有する再発症例が1例であった。生存期間中央値は387日であった。1年生存率,2年生存率はそれぞれ52, 24%であった。有害事象に関しては,grade4の血液毒性は1例も認められず,grade3の白血球減少・好中球減少がそれぞれ1例に認められたのみで,全例外来通院にて施行可能であった。Weekly paclitaxel/5′-DFUR 併用療法は進行再発胃癌に対して有効かつ安全な治療法であると考えられた。 -
大腸癌術後補助化学療法における経口UFT/Leucovorin療法の5日間投与2日間休薬投与法の有用性
33巻3号(2006);View Description Hide Description大腸癌の化学療法において,経口のUFT/Leucovorin(LV)療法は従来の標準治療であった経静脈的な5-fluorouracil/LV 療法との比較試験の結果から,標準治療の一つとなった。UFT 単剤の5日間投与2日間休薬投与法(5投2休投与法)は長期間の投与において,副作用が軽微で安全性が高く,完遂性に優れた投与方法として評価されている。そこで54例の大腸癌患者を対象にして,経口UFT/LV の5投2休投与法の投与状況,副作用について調査検討した。grade2以上の副作用を認めたのは10例(19%)であり,そのうちgrade3以上は1例(2%)のみであった。副作用による投与中止例は8例(15%)で,grade3の食欲不振と下痢1例,grade2の食欲不振2例,発疹2例,味覚障害1例,手先のしびれ1例,grade1の腹痛1例であり,血液毒性のために投与が中止となった症例は認められなかった。血液毒性としては,grade 2の貧血を9例(19%), 白血球減少を2例(4%)に認めた。投与期間の中央値は242日(8か月)であった。以上の結果から,経口UFT/LV の5投2休投与法は従来報告されている28日間投与7日間休薬の投与方法での成績に比し,比較的発現頻度の高い副作用である下痢および食欲不振がともに著しく軽度であり,本法は長期間投与する際の投与方法として,副作用の少ない優れた方法であると考えられた。抗腫瘍効果および生存率改善効果の検証は今後の課題である。 -
ヒト食道癌の培養細胞株およびヌードマウス移植癌株に対するDocetaxelの抗腫瘍効果
33巻3号(2006);View Description Hide Descriptionヒト由来食道癌細胞株およびヌードマウス移植ヒト食道癌株に対するdocetaxel (DOC)の抗腫瘍活性を検討した。低分化〜高分化の異なる分化度のヒト食道癌細胞4株(T.T, TE-5, TE-9, TE-15)を用いたin vitro 細胞増殖阻害試験において,DOC はいずれの細胞株に対しても濃度に依存した増殖阻害作用を示し,72時間暴露における50%阻害濃度(IC50)は0.84〜1.68ng/ml であった。得られたIC50値の範囲は,食道癌に対する臨床推奨用量70mg/m2投与時の最高血漿中濃度2.27μg/ml の約1/2,700〜1/1,400であり,血中濃度として臨床上到達可能であると考えられた。また抗腫瘍活性をIC50値で比較すると,DOC はpaclitaxel(PTX)よりも約2倍強力であり,fluorouracil(5-FU)やcisplatin(CDDP)よりも約1,000倍強力であった。ヌードマウスに移植したヒト食道扁平上皮癌株H-190(高分化)およびH-204(中分化)を用いて,DOC のin vivo における抗腫瘍効果を検討した結果,DOC の4.5, 6.7mg/kg/日(4日ごとに3回静脈内投与)は,H-190株に対して100%近い増殖阻害率を示すとともに,腫瘍縮小効果を示した。H-204株に対しては,腫瘍縮小効果を認めなかったものの,DOC(4.5,6.7, 10mg/kg/日)は用量依存的に腫瘍増殖を遅延させた。一方,対照薬として用いたPTX は,6.7, 10mg/kg/日(4日ごとに3回静脈内投与)において,H-190株に対してDOC と同程度の腫瘍縮小効果を示したが,H-204株に対しては無効であった。以上の結果から,DOC はヒト食道癌細胞株およびヌードマウス移植ヒト食道癌株に対して抗腫瘍効果を有することが明らかとなり,食道癌治療薬としての有用性が期待された。 -
TS-1に対するアレルギー試験としてのリンパ球刺激試験(DLST)の意義
33巻3号(2006);View Description Hide Descriptionティーエスワン(TS-1)を含む5-FU 系抗癌剤の服用患者のなかには,発疹,間質性肺炎,肝障害といった薬剤アレルギーを示唆する副作用がしばしばみられている。このような薬剤アレルギーが疑われた場合,起因薬剤の同定などに,3H-thymidineのDNA 取り込みを指標とした薬剤リンパ球刺激試験(DLST)が汎用されている。われわれは,TS-1の薬剤アレルギー評価を適切に行う上での参考データを得るために,TS-1服用歴のない健常人ボランティア20名を対象にDLSTを実施した。その結果,20名中6名にDLST 陽性反応がみられた。TS-1を含む5-FU 系抗癌剤ではDNA de novo 合成系の阻害に伴い,細胞内のsalvage経路を介したthymidineの取り込みが亢進することにより,DLST で偽陽性を示す可能性が示唆された。TS-1の薬剤アレルギー評価にはDLST の問題点を考慮した上で,他の検査方法を組み合わせるなどをして,慎重に判断する必要があると考えられた。 -
がん患者の難治性嘔吐に対するolanzapineの使用経験
33巻3号(2006);View Description Hide Description近年統合失調症の治療薬であるolanzapineが,がん患者の難治性嘔吐や化学療法中の遅発性嘔吐に対して有効であると報告されている。本剤は,セロトニン,ドーパミン,ヒスタミン,ムスカリンなど複数の神経物質受容体に対し拮抗剤として働き,制吐作用を発揮する。当院で難治性嘔吐に対し,olanzapineを投与した5症例について報告する。適格条件を満たした5症例のうち,3症例は嘔吐が消失し食欲不振も改善された。2症例は嘔吐の改善はみられたが,効果は限定的であった。副作用は全例に認めなかった。olanzapineはがん患者の嘔吐の緩和のみならず,食欲増進作用が食欲不振の改善に有利に働くと考えた。
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症例
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TS-1新規投与法を用いた術前化学療法によりCR となった口唇癌の1例
33巻3号(2006);View Description Hide Description術前療法の目的で行ったTS-1による化学療法により原発巣,ならびに頸部リンパ節の転移巣が消失した口唇癌症例を経験したので報告する。症例は49歳,男性。下口唇癌(扁平上皮癌T1N2cM0)。両側頸郭清術を含めた治療を計画し,術前化学療法として当科で新たに開発した新規TS-1投与法により,外来通院にて治療を開始した。TS-1の投与は,120mg/dayを5日間投薬,2日間休薬のサイクルで3週施行し,第4週に休薬する方法で1コース行った。その結果,原発巣は消失し頸部リンパ節の著しい縮小を認めた。術前化学療法施行中,口内炎以外に明らかな副作用は認められなかった。化学療法後,左頸部に触知したリンパ節を腫瘍の残存と考えて左側頸部郭清術を施行したところ,病理組織所見ではリンパ節内に癌細胞は残存せず,硝子化を認めるのみで病理学的CR と判定された。今回試みたTS-1の新規投与法は,効果も高い上に副作用も軽度で頭頸部癌に対する化学療法として極めて有効であると考えられた。 -
口腔癌切除不能再発症例に対する抗癌剤感受性試験による個別化化学療法の試み
33巻3号(2006);View Description Hide Description口腔癌再発例では,しばしば切除不能となり治療法の選択に苦慮することがある。特に放射線照射後の再発において,どのような抗癌剤を選択するかは難しい問題である。われわれは口腔癌切除不能再発例に対し,collagen gel droplet embeddedculture sensitivity test(CD-DST)法を用いた抗癌剤感受性試験による化学療法選択を試みた。6例の局所再発ならびに遠隔転移巣をもつ口腔癌患者に対して,CD-DST 法による感受性試験の結果を踏まえた化学療法を行った。感受性試験の結果は,1例で評価不能,1例で検索した抗癌剤に感受性なしと判定され,この2例に関しては緩和療法のみを施行した。感受性のある薬剤が見いだされた4例に対しては,感受性試験に基づいた化学療法を施行した。重篤な有害事象はなく,生存期間の中央値は10.9か月であった。CD-DST 法による感受性試験に基づく化学療法は,治療法の選択において重要な情報を提供するものと考えられた。 -
Examestaneが著効した再発乳癌の1例
33巻3号(2006);View Description Hide Description患者は85歳,女性。狭心症発作にて発症しCT 検査にて肺多発転移があり,再発乳癌と診断された。患者は85歳と高齢であったが乳癌手術後12年目の再発であり,極めて遅い再発であることや再発病巣が肺多発転移ではあるが life-threateningではないことから,治療はホルモン剤治療を選択し,再発乳癌に対して最も治療効果の高いホルモン剤の一つであるexamestaneを使用した。治療効果は明らかで,治療開始後5か月でPR, 10か月でCR となった。8か月間CR の状態が継続し,それ以後PD となったがその後も腫瘍の成長は極めて遅く,治療開始後26か月現在無症状で経過している。全経過中にとりたてて副作用はなかったが,一度慢性硬膜下血腫の合併があった。examestaneはホルモン剤としては極めて治療効果の高い薬剤であり,本症例のように高齢者でも安全に投与することができる薬剤であった。 -
CMF によるThird-Line Chemotherapyが著効した乳がん術後肺転移の1例
33巻3号(2006);View Description Hide Description患者は35歳,女性。肺転移からがん性リンパ管症を発症したtaxane, anthracycline抵抗性の再発乳がんに対しCMFを行いCR が得られた。重篤な副作用は認めなかった。CMF は副作用が少なく,QOL を保ちつつ治療継続可能で,かつ本症例のように著効例も存在するため,再発乳がんに対するthird-line以降のchemotherapyとして有用と考えられた。 -
進展型小細胞肺癌に対するIrinotecan/Cisplatin変法が奏効した1例
33巻3号(2006);View Description Hide Description症例は73歳,男性。全身倦怠,食欲不振と体重減少を主訴とし入院した。右側胸水,胸壁と右下肺の腫瘤,縦隔リンパ節の著明な腫大と腹腔内転移があり,胸水細胞診所見より進展型小細胞肺癌と診断した。cisplatin 60mg/m2を第1日に,irinotecan 80mg/m2を第1, 8日に投与する3週1コース法(IP 変法)を合計4コース行ったところ,重篤な副作用なく腫瘍は著明に縮小し,本変法が有用である可能性が示された。 -
Amrubicinの隔週投与により腫瘍マーカーの改善がみられた小細胞肺癌の1例
33巻3号(2006);View Description Hide Description症例は,小細胞肺癌(限局型)と診断された62歳の男性。初回治療として,cisplatin(CDDP)とetoposide(ETP)による化学療法と放射線治療の同時併用を施行し,complete remissionを得た。約10か月後よりpro-GRP は上昇傾向を示したため,CDDP とirinotecan(CPT-11)による併用化学療法,CPT-11, paclitaxel, amrubicin(AMR)による単剤化学療法を施行した。単剤治療としては,AMR(30mg/m2)の3連日投与法が最も有効と考えられたが,重篤な骨髄抑制のため継続困難と判断した。そこで,AMR(30mg/m2)の隔週投与法を試みた。腫瘍マーカーの減少傾向を認め,約7か月間にわたって腫瘍マーカーの上昇を抑制できた。この期間中に重篤な合併症は認められなかった。小細胞肺癌に対するAMR 3連日投与法が,骨髄抑制のため継続困難な場合,隔週投与は有効な投与法である可能性が示唆された。 -
経皮吸収型フェンタニル製剤の肺癌終末期での長期高用量使用例
33巻3号(2006);View Description Hide Description近年,癌性疼痛患者に対し新たなオピオイドが使用可能になった。経皮吸収型フェンタニル製剤(フェンタニルパッチ)はこれまでのオピオイドになかった投与経路である。本剤を高用量で長期にわたって使用し,在宅療養が可能であった症例を報告する。他院にて乳癌手術,肺癌手術を施行し1年後に骨転移が発見され,放射線治療を行うもさらに進行し,転移巣の著明な疼痛を主訴に当院受診となる。癌性疼痛に対して,1年9か月間の生存期間中30mg 以上の高用量のフェンタニルパッチを約1年3か月余り貼付し,生存期間中ほとんどを希望の独居生活が可能であった。さらに良好な疼痛緩和が図れ,副作用もなく安全に実行できたことに本オピオイドは有用であったと考えられた。 -
化学療法により2年以上にわたって自覚症状なく良好なPS が得られた高齢者StageIV胃癌の1例
33巻3号(2006);View Description Hide Description83歳,男性。PS 1。StageIV胃癌に対し,2003年1月よりTS-1を開始。加齢による腎機能低下を認めたため,基本投与量を推奨量より20%減量した80mg/bodyとし,4週投与2週休薬で11コース,2週投与2週休薬で6コース行った。開始1コース後に自覚症状は消失し,その後腫瘍マーカーの正常化,腹水の消失が得られた。約20か月にわたり自覚症状なく良好なPS が得られていたが,2004年9月下旬内視鏡検査にて原発巣の増悪が確認されsecond-lineとしてpaclitaxel(PTX)weekly投与を開始した。導入時,PS 2と低下しており高齢であることから,1回投与量は70mg/bodyと減量した。 short premedication後,PTX を1時間で経静脈投与し,週1回3週投与,1週休薬を1コースとした。開始1コース後に自覚症状は消失し,PS 0へ改善し退院,計4コース行われた。全治療期間をとおしてgrade2以上の有害事象はなく良好なPS が得られた。高齢者に対する化学療法は単に暦年齢ではなくPS を含めた全身状態を加味した的確な投与量,投与法を設定することより,十分にその恩恵が得られるものと思われた。 -
Weekly Paclitaxel療法無効例に対しWeekly Paclitaxel+5′-DFUR 療法が奏効した再発胃癌の1例
33巻3号(2006);View Description Hide Description症例は35歳,女性。胃癌術後約2年で肺転移,骨転移を来した。化学療法としてTS-1+CDDP 療法を行うも効果なく,weekly paclitaxel (PTX)を施行した。しかし肺転移巣の増大がみられたため,相乗効果を期待して5′-deoxy-5-fluorouridine(5′-DFUR)の併用を行った。投与スケジュールは5′-DFUR 600mg/bodyを連日経口投与し,PTX は70mg/m2をday1, 8, 15に静脈内投与し,3週投与1週休薬を1クールとした。経過中に重篤な副作用はなかった。1クール終了後全身状態改善し2クール目以降は通院による治療が可能になった。3クール終了後肺転移巣は縮小率37.9%の縮小を認めた。今回の経験は,PTX 単独投与で効果のない症例が他の薬剤に切り替えることなく5′-DFUR を併用することで奏効を期待できる可能性を示唆,進行・再発胃癌に対する治療選択の種類を多くするものである。 -
血液透析患者におけるInterleukin-2の血中濃度推移—局所再発性腎癌に対するInterleukin-2治療経験からの検討—
33巻3号(2006);View Description Hide Description局所再発を繰り返す透析患者に発生した腎癌治療に対して,補助療法としてinterleukin-2(IL-2)による補助療法を施行した。IL-2は主に近位尿細管で排泄されるため,濃度を決めるために抗ヒトIL-2抗体を使用したELISA 法にて血中濃度を測定した。これまでに報告された正常人でのデータと比較すると,透析患者においては35万国内標準単位投与した時と正常腎機能患者に70万国内標準単位投与した時が,ほぼ同様な代謝曲線であることが示唆された。今回の報告は透析患者において,IL-2を用いた治療を考える場合の至適用量設定の参考になるかもしれない。
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連載講座
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- 【外来化学療法】
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新薬の紹介
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タミバロテン(Am-80)による再発難治性急性前骨髄球性白血病の治療
33巻3号(2006);View Description Hide Description新合成レチノイドであるタミバロテン(Am-80)は,急性前骨髄球性白血病(APL)細胞に対し,all-trans retinoic acid(ATRA)を数倍上回る分化誘導作用をもち,細胞内レチノイン酸結合蛋白に親和性が低く,血中濃度が長期間維持されることなどからATRA 耐性を克服する可能性が期待される。pilot studyではATRA 治療後再発APL 24例中14例(58%)に完全寛解(CR)が得られた。副作用は皮膚粘膜症状,高脂血症などがみられたが,ATRA 投与に比べ軽度であった。14例のCR 例のうち,同種造血幹細胞移植を受けた6例中4例が,移植を受けなかった8例中4例が4年の観察期間中無病生存中である。引き続き行われた臨床第II相試験でも41例中25例(61%)にCR が得られ,このうち初回再発例では23例中18例(78.3%)にCR が得られた。Am-80はATRA を上回る治療効果が期待され,初回治療,再発後治療の両面において治療戦略上での最も効果的な位置付けを明らかにするべく臨床試験が望まれる。
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