癌と化学療法
Volume 33, Issue 4, 2006
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総説
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多発性骨髄腫治療の進歩—治癒をめざして—
33巻4号(2006);View Description Hide Description多発性骨髄腫は長く治癒が期待できない疾患とされてきた。実際,通常化学療法を受けた患者の生存期間中央値は約3年であり,またその生存曲線は右肩下がりを続け,長期生存率は2〜4%であり,他の血液腫瘍の成績に比べ大きく劣るものであった。しかし1990年代に入り,自己末梢血造血幹細胞移植が導入され,生存期間中央値は約5年と延長が得られた。さらに,血管新生抑制作用を有するthalidomideやそのanalog のlenalidomide, proteasome inhibitorであるbortezomibなどの新規薬剤が導入され,再発・難治例の治療成績が向上し,生存期間の延長をもたらすようになった。現在,これら新規薬剤が初期治療に導入されるようになり,さらなる成績向上が期待されている。今後は治癒が必須と考えられる患者,つまり若年齢の患者においては,造血幹細胞移植(自己末梢血または同種)および新規薬剤を有効に使用し,治癒をめざすべき時代が到来したと考える。
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特集
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- 最近の放射線治療法の進歩
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小線源療法(前立腺癌)
33巻4号(2006);View Description Hide Description小線源治療の最近のトピックは前立腺癌組織内照射である。欧米ですでに確立し普及しているI-125シード線源永久挿入療法が,2003年に日本でもようやく解禁となった。経直腸超音波ガイド下にシードを多数挿入するため,前立腺の形状に合わせて線源を挿入することが可能であり,正確に前立腺組織のみに大量の放射線を投与することが可能である。周囲組織への影響が少なく,1〜2時間の処置で終了するため,他の治療に比べて患者に優しい治療といえる。腫瘍が前立腺に限局し,PSA,Gleason scoreが低い低リスク群に対しては,シード治療のみでも前立腺全摘術や外照射治療と同等の長期成績が欧米で得られている。低リスク群以外の限局前立腺癌に対しては外照射併用が勧められる。またIr-192を用いた高線量率組織内照射は,低リスク群以外の限局前立腺癌に対して生物学的にも物理学的にも優れた効果が期待されている。いずれの小線源治療も,限局前立腺癌の根治治療として日本でも早急に普及すると考えられる。 -
線量分割法の工夫—Altered Fractionationについて—
33巻4号(2006);View Description Hide Description放射線生物学に基づく治療成績向上の試みとして,altered fractionation(AF)と総称される線量分割法の工夫がある。このAF は大きく二つに分けられる。一つは腫瘍と正常組織の放射線感受性の差に着目して,1回線量を減らし総線量を増加する試みであり,多分割照射法に代表される。もう一つは照射期間中に生じる腫瘍再増殖に着目し,総治療期間を短縮することで治療成績の低下を防ぐ工夫で,加速多分割照射法に代表される。AF の有効性は様々な癌種で多数報告されているが,標準的治療とされることはまれである。特に頭頸部癌で多数検討されており,多くの報告で局所制御率を向上させているが,必ずしも生存率の改善には結び付いておらず,課題を残している。小細胞肺癌では加速多分割照射法が標準的照射法の一つとされているが,異論も多く議論の余地がある。この他に非小細胞肺癌や食道癌,膀胱癌,悪性神経膠腫などでもAF の有用性が報告されているが,現在のところ標準的治療法とはなっていない。現在,定位照射法の普及とともに線量・分割・時間関係はより重要な課題となっており,こうした過少分割照射hypofractionationの研究とともにAF の意義も確立していくものと考えられる。 -
強度変調放射線治療(IMRT)
33巻4号(2006);View Description Hide Description癌治療に放射線療法が施行される割合が,本邦でも年々増加し,欧米なみに癌治療のなかで放射線治療の有用性が広く認知されるようになってきている。その放射線治療のなかで,ライナックを用いた外部照射法(放射線を体外から照射する方法)が最もよく使用されているが,この照射法には非侵襲的に短時間で治療することが可能であるという大きな利点と癌組織だけでなく周囲の正常臓器にも放射線が照射され,正常組織に有害反応が起こってしまうという問題点がある。この問題点を軽減する目的で,近年のコンピュータ技術の進歩を利用して3D-conformal radiation therapy(3D-CRT), intensity modulated radiation therapy(IMRT),stereotactic radiosurgery(SRS), stereotactic radiation therapy(SRT)などの治療法が高精度放射線治療として臨床応用されている。したがって,これらの高精度放射線治療の基本的な目的は,腫瘍にはできるだけ大きな線量を集中的に投与し,可及的に周囲正常臓器の線量投与を抑えることである。諸家の報告によると前立腺癌に対するIMRT の治療成績は,現在までの放射線治療の成績と比較して,効果・有害反応ともに良好であるとされており,頭頸部癌では唾液腺障害を主とした遅発性有害反応を大幅に改善しつつ,治療効果は従来どおりの放射線治療と差がないか良好であるとされている。本稿では,このような最新の放射線治療であるIMRT を中心に最新の外部照射法について解説し,東京女子医科大学病院で施行している高精度放射線治療についても説明を加えた。 -
重粒子線治療—特に炭素イオン線治療の進歩—
33巻4号(2006);View Description Hide Description重粒子線のなかでも炭素イオン線はプラス荷電を有した高LET 放射線であるため,従来のX 線と比較し,生物学的特徴としてより強い抗腫瘍効果をもつと同時に,線量集中性の良好な荷電粒子線としての物理学的特徴を有している。さらに,炭素イオン線は酸素濃度や細胞周期の影響を受けずにがん細胞のDNA に損傷を与えることができる放射線である。以上から,炭素イオン線治療は放射線抵抗性の腫瘍に対しても効果を発揮できるとともに,腫瘍周囲の正常組織に対する有害事象を最小限に抑えることが可能な放射線治療と考えられる。この特徴をがん治療に応用するために,放射線医学総合研究所(放医研)に治療用の重粒子加速器(HIMAC)が建設された。HIMAC で加速された炭素イオン線を利用して,1994年6月から放射線医学総合研究所で臨床試験として開始された重粒子線治療は,現在までに42のプロトコールを施行し,各疾患に対する重粒子線治療の安全性および有効性を確認してきた。2005年8月までの治療患者数は2,371症例(2,479部位)であり,1年当たりの治療件数は年々増加している。2003年11月からは多くの疾患で高度先進医療に移行して治療を継続する一方,超難治性癌に対する治療成績の向上や短期照射法の確立を目的とした臨床試験は現在も継続中である。本稿では,炭素イオン線の特徴,放医研での治療体制,有害事象とその対応,代表的疾患の治療成績について,今後の展望を加えながら説明する。 -
陽子線治療
33巻4号(2006);View Description Hide Description陽子線はブラッグピークによる優れた線量集中性と従来のガンマ線や,X 線と生物学的に等価であるために使いやすい放射線である。陽子線治療はすでに約半世紀の歴史をもつ治療であり,40,000例以上の治療実績がある。しかし1990年のロマリンダ大学メディカルセンター以降,特に近年,病院設置型の治療施設が次々と建設され,陽子線治療は実用化の時代に突入した。眼の悪性黒色腫,頭蓋底腫瘍,頭頸部がん,肺がん,食道がん,肝細胞がん,前立腺がんなどで優れた治療成績がだされており,臨床面・技術面ともに今後の発展が期待される治療である。 -
体幹部定位照射
33巻4号(2006);View Description Hide Description近年,Ⅰ期肺癌(T 1N 0M 0, T 2N 0M 0)に対する定位放射線照射技術が実用化されている。この治療法は特殊な体幹部固定用フレームや同期照射技術や追尾照射技術を用いることにより,従来は頭蓋内腫瘍のみに可能であった1回10Gy以上の大線量での小分割照射法を可能とした。この技術は現在までに世界的にみても日本を中心にして開発され,臨床応用成果も日本から主に報告されている。現在までの報告では,1回線量が10〜15Gyで3〜5回照射する方法が一般的であるが,それらのほとんどの報告で局所制御率は90%以上であり,合併症も重篤なものはまれである。これは国外からも非常に注目されている技術であり,多施設共同研究JCOG 0403が開始されている。
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原著
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頭頸部悪性腫瘍患者における年代別Creatinine Clearance Rate値の検討
33巻4号(2006);View Description Hide Description頭頸部悪性腫瘍の大部分は扁平上皮癌である。扁平上皮癌は化学療法剤に対し,ある程度の感受性を示しcisplatin(CDDP), 5-fluorouracil, taxanesが各国で使用されているが,CDDP はその主体となるものである。CDDP の有害事象の一つに腎機能障害があげられ,CDDP 投与前後の十分な水分負荷やCDDP 投与中の中和剤投与などが対処法として施行されている。われわれはCDDP 投与前にcreatinine clearance rate(Ccr)値を用いた腎機能評価を行っている。日本ではCcr値が65ml/min以上の患者に対しCDDP を60〜70mg/m2/dayで投与し,Ccr値が60ml/min以下の患者に対して白金製剤を用いる場合,化学療法剤による腎機能悪化を予防するためcarboplatinなどを用いる。他国ではCDDP 投与量は70〜100 mg/m2/dayであるが,日本人の腎機能を考慮に入れた際,前述のCDDP 投与量が適切と考えられている。今回われわれは,2004年1月から2005年8月までに当科へ入院した107例の頭頸部悪性腫瘍患者のCcr値を集計した。Ccr値は加齢とともに減少しており,Ccr値が65ml/min未満の症例が占める割合は50歳代43.5%, 60歳代45.7%, 70歳代50.0%, 80歳代85.7%であった。アメリカでの70歳以上の健常者平均glomerular filtration rate値は75ml/min/1.73m2で,この数値はCDDP 70〜100 mg/m2/day投与に十分耐え得る腎機能と考えられる。アメリカでの末期腎機能障害の罹患率は日本の1.3倍であり,またその最多基礎疾患である糖尿病の罹患率に両国間の差はほとんど認めない。明らかな原因は不明であるが,日本人の腎機能は加齢とともに急速に低下することが確認された。 -
未治療進行非小細胞肺癌に対するGefitinibによる初回治療の検討
33巻4号(2006);View Description Hide Description目的:未治療進行非小細胞肺癌に対するgefitinibによる初回治療の有効性と安全性を検討した。方法:当院でgefitinibが初回治療として投与された未治療進行非小細胞肺癌患者19例を対象に後ろ向きに解析した。これらの症例は,基礎疾患やperformance status(PS)不良,化学療法拒否などの理由でgefitinibが初回治療として投与された。結果:年齢中央値68歳,男性/女性10/9例,III期/IV期7/12例,喫煙/非喫煙12/7例,腺癌/非腺癌13/6例,PS 0/1/2/3/4は0/4/7/5/3例であった。4例で部分奏効が得られ,奏効率は21.0%であった。生存期間中央値は6.8か月,1年生存率は27%であった。毒性は全般に軽度であった。grade3以上の毒性は,下痢が1例(5%)に認められた。間質性肺炎(grade1)が1例(5%)に認められた。結論:未治療進行非小細胞肺癌に対して,gefitinibによる初回治療は有効である可能性が示唆された。 -
進行非小細胞肺癌に対するCarboplatin+Weekly Paclitaxel併用化学療法の検討
33巻4号(2006);View Description Hide Description目的:進行非小細胞肺癌に対するcarboplatin+weekly paclitaxel併用化学療法の有効性と安全性を検討した。方法:当院で同療法が施行された進行非小細胞肺癌患者49例を対象に後ろ向きに解析した。投与スケジュールはcarboplatin AUC 5-6をday 1に,paclitaxel 70mg/m2をday 1, 8, 15に投与し,4週間隔で繰り返した。結果:投与コース数中央値は4コース(範囲:1〜7)であった。24例で部分奏効が得られ,奏効率は48.9%であった。生存期間中央値は12.8か月,1年生存率は50.7%であった。毒性は全般に軽度であった。最も多い毒性は好中球減少であり,grade3/4が32%に認められた。grade3/4の血液毒性の頻度は,貧血(16%), 血小板減少(8%)であった。grade3/4の非血液毒性の頻度は,発熱性好中球減少(2%), 肺炎(10%), 間質性肺炎(2%)であった。結論:進行非小細胞肺癌に対して本療法は,有効かつ耐用可能な治療法と考えられた。本療法は進行非小細胞肺癌に対する標準治療になり得る可能性が示唆された。 -
食道癌に対するTS-1, Cisplatin, Docetaxelを用いた実験的併用化学療法
33巻4号(2006);View Description Hide Description当院における食道癌切除症例より樹立したヌードマウス継代株であるExp-594,Exp-597, Exp-598を用いてTS-1とcisplatin(CDDP)の併用療法およびこれにdocetaxel(DTX)を加えた3剤併用効果について,in vivo ヌードマウス移植法およびin vitro succinate dehydrogenase inhibition test(SDI)法で検討した。in vivo ではExp-594, Exp-598に対して,TS-1, CDDP とも単独投与では抗腫瘍効果が認められなかったが,両剤を併用することにより効果が増強された。Exp-597では,単独,併用群ともに抗腫瘍効果は認められなかった。5-fluorouracil (5-FU), CDDP を用いたin vitro の検討でも,Exp-594, Exp-598は併用効果が認められたが,Exp-597では併用効果が認められなかった。そこでExp-597に対して,DTX を加えた3剤併用療法の検討をしたところ,in vivo およびin vitro とも3剤による併用効果が認められた。TS-1, CDDP の2剤で効果の認められた2株のうちExp-594においてthymidylate synthase(TS)阻害率を測定したところ,TS-1単独投与で47.4%, TS-1とCDDP の併用で62.3%と高い阻害率が示された。以上により,食道癌に対するTS-1+CDDP 療法は有用な治療法であることが示された。また,TS-1+CDDP 療法で効果の認められない食道癌に対しては,DTXを加えた3剤併用療法が,second-line, third-lineとして考慮され得る有用な治療法であることが示唆された。 -
胃癌切除例におけるOrotate Phosphoribosyltransferase(OPRT)酵素活性,蛋白に関する臨床病理学的検討
33巻4号(2006);View Description Hide Descriptionorotate phosphoribosyltransferase(OPRT)は5-FU リン酸化による活性化酵素であり,5-FU に対する感受性にかかわる因子として注目されている。そこで胃癌切除症例75例を対象とし,OPRT 酵素活性ならびに新しく確立したサンドイッチELISA 系を用いてOPRT 値を測定するとともに,OPRT 値と臨床病理学的因子との関連も検討した。OPRT 蛋白量は平均値5.4±3.6ng/mg proteinであり,OPRT 酵素活性と有意な相関を示した(y=0.545x−0.017, r2=0.617, p<0.0001)。臨床病理学的因子のうち,組織型では未分化型胃癌のOPRT 活性は分化型に比較し有意に低値,浸潤型は非浸潤型に比較し有意に低値であった。その他の脈管浸潤,転移との間には差を認めず,また臨床病期とも関連は認めなかった。以上の結果より胃癌組織中におけるOPRT 活性は未分化,浸潤型胃癌に有意に低値であり,胃癌の生物学的悪性度,化学療法抵抗性と関連があることが示唆された。
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症例
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Carboplatin+Docetaxelによる化学療法が著効した高齢者非小細胞肺癌の1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description症例は79歳,男性。右季肋部痛を主訴に受診し精査の結果,左上葉原発の非小細胞肺癌T 2N 2M 1(多発肝転移),病期IV期と診断された。carboplatin+docetaxelにて化学療法4クール施行し効果はPR。その後再発時にも同様のレジメで2クール追加し,効果はPR であった。高齢者の非小細胞肺癌に対し,carboplatin+docetaxelは比較的安全で外来でも行える有効な治療法であると考えられた。 -
脳転移術後Gefitinib(Iressa)2年間投与により原発巣CR が確認された肺癌の1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description症例:54歳,女性。2001年7月下旬,めまい,頭痛,嘔吐を主訴に当院脳外科受診。精査で右肺腫瘍+小脳腫瘍の診断の下,同年8月7日脳腫瘍摘出術施行。術後病理では転移性脳腫瘍(乳頭型腺癌)と診断された。肺腫瘍の精査を希望せず,術後放射線療法(50Gy)+化学療法(CBDCA+VNR:2クール)を施行。2002年7月MRI上再発が疑われ,9月よりgefitinib投与を開始した。胸部X 線およびCT 上縮小効果を認めた。患者の希望もあり再度PET を含め精査を施行したが遠隔転移を認めず,2004年10月8日右上葉切除術(ND 2a)施行。術後病理では,no evidence of malignancy ,n 0であった。結語:自験例では脳転移手術3年後に肺原発巣を切除し,病理組織でpsammoma bodyが認められたがcancer cellは認められず,gefitinibによるCR が考えられた。 -
TS-1+CDDP が著効を示した肺腺癌の1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description症例は67歳,男性。主訴は湿性咳嗽および胸痛であった。右上葉に縦隔に浸潤する腫瘤影を認め,右肺門,心横隔膜角にリンパ節腫大を認めた。右下葉,左舌区の肝両葉に転移巣を認めた。喀痰より腺癌が認められ,肺癌(腺癌,cT4N2M1,stageIV)と診断した。臨床第II相試験に登録され,TS-1 120mg/body, days 1〜21+cisplatin 60mg/m2, day 8にて化学療法を6サイクル施行した。抗腫瘍効果は,縮小率87%であった。血液毒性として,grade 2の好中球減少,白血球減少を認めたが非血液毒性は軽度であった。6サイクルの化学療法終了後,再増悪を認めたため,gefitinibを含め5レジメンの化学療法を行ったが,脳転移に伴う症状の増悪のため死亡された。無増悪期間は240日,生存期間は709日であった。本症例においては,TS-1+CDDP 療法は著効した。本レジメンの肺癌に対する有用性をさらに検討する価値があるものと思われる。 -
Second-Line治療としての粉末Cisplatin製剤肝動注が効果的であった肝細胞癌の1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description症例は72歳,男性。10数年来,C 型肝硬変にてフォローしており,2001年4月に肝細胞癌(以下,肝癌)初発。2004年6月肝癌は肝右葉全体に広がり,AFPは42,696 ng/ml と著増しリザーバーを導入。low-dose FP(LFP)療法を施行したが効果なく,2004年10月にはAFP は755,030ng/ml と上昇,腹水も出現,食道胃静脈瘤の悪化も認めた。なお,肝外病変は認めなかった。2004年10月より粉末cisplatin製剤(CDDP)をリザーバーから動注した(CDDP 50mg/m2/20min,monthly)。CDDP 3回投与後,AFP は910ng/ml と著明に低下,肝右葉のび漫性病変の縮小を認め,腹水も消失した。さらに4回目投与後AFP は8ng/ml と正常化,CT 画像上もCR となった。また,CDDP 投与に伴う重篤な有害事象は認めなかった。進行肝癌に対するリザーバーからのLFP 療法は良好な成績を収めているが,それに続く治療は手探り状態である。LFP 抵抗例に対し,second-line治療としてCDDP 肝動注が効果的であった1例を経験したので報告する。 -
TS-1/CDDP 術前補助化学療法によって原発巣が消失したスキルス胃癌の1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description症例は72歳,女性。スキルス型進行胃癌に対し,TS-1/CDDP による術前補助化学療法(TS-1 80mg/m2/日を3週間連日経口投与,day8にCDDP 60mg/m2点滴静注)を行った。1クール終了後にPR と判定し,胃全摘術を行った。病理組織学的に原発巣に癌組織を認めず,少数のリンパ節転移(3/67個)を認めるのみであった。術後1年9か月を経て無再発生存中である。 -
TS-1抵抗性となった切除不能進行胃癌に対してPaclitaxel+Doxifluridine併用療法が著効した1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description症例は74歳,男性。胃体部のtype 3胃癌と肝転移を指摘され,他院にてTS-1(120mg/body)の投与が行われた。TS-1投与2コース目には腹部CT,上部消化管内視鏡検査にて増悪が確認されたため,二次治療目的で当科へ紹介となった。2004年2月よりpaclitaxel(PTX)+doxifluridine(5′-DFUR)併用療法を開始した。投与スケジュールはPTX 80mg/m2をday1, 8, 5′-DFUR 600mg/m2をday1〜14に投与し,1週間の休薬期間を設け,計3週間を1コースとした。5コース終了後の腹部CT,上部消化管内視鏡検査で原発巣,肝転移巣とも著明な縮小が認められPR が得られた。以降,腫瘍マーカーおよびPS の悪化を来す12月まで13コースが施行された。TS-1に抵抗性となった切除不能進行胃癌患者に対し,PTX+5′-DFUR 併用療法が奏効した症例を経験したので報告する。 -
Paclitaxel投与により腹膜播種によるイレウスと多発肝転移に奏効のみられたAFP 産生胃癌の1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description症例は71歳,男性。stageIVのAFP 産生胃癌に対し,TS-1+CDDP 併用療法を2クール施行後転移巣の著明な縮小を得たため,幽門側胃切除術+D 2郭清を施行した。術後TS-1単剤投与を行ったが,しだいに増悪傾向となった。再度TS-1+CDDP併用療法を施行したがPD であり,癌性腹膜炎による腸閉塞を発症した。paclitaxelの隔週投与を行ったところ,癌性腹膜炎,腸閉塞の改善がみられ,経口摂取が可能となった。副作用はgrade 3の好中球減少とgrade 1の脱毛を認めるのみであり,コントロールは良好であった。paclitaxelはTS-1耐性となった癌性腹膜炎を有する胃癌症例に対しても治療効果およびQOL を改善することが可能であり,有望な治療法として期待される。 -
TS-1投与により著効が得られた腹部大動脈周囲リンパ節転移,頸椎転移,腹膜播種転移を有した進行大腸癌の1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description腹部大動脈周囲リンパ節転移,頸椎転移を伴う回盲部癌にTS-1療法が著効した症例を経験したので報告する。症例は68歳,女性。腹部大動脈周囲リンパ節転移を伴う回盲部癌の診断で姑息的に回盲部切除を行った。術後,頸椎転移を認め除痛目的に放射線治療を行うとともに,TS-1 80mg/day経口投与(4週間投与2週間休薬)を外来にて開始した。4クール終了時にはCT とPET 上,大動脈周囲リンパ節,頸椎腫瘤はほぼ消失していた。治療中はまったく副作用を認めず,現在術後10か月で治療継続中である。本症例は,TS-1にてQOL を保ちつつ著効が得られた貴重な症例であると考えられた。また本症例の原発巣のthymidylate synthase(TS),dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)について免疫染色を行ったところDPD 染色陽性,TS 染色陰性であったことから本症例はTS-1に感受性のある症例であることが推測された。 -
Cisplatin肝動注療法とTS-1経口投与が奏効した膵腺房細胞癌肝転移の1例
33巻4号(2006);View Description Hide Description膵腺房細胞癌はまれで,その化学療法に関する報告は少ない。今回,TS-1経口投与とcisplatin肝動注療法が奏効した膵腺房細胞癌肝転移の1例を経験した。症例は49歳,男性。糖尿病の経過中に膵体部腫瘤と多発性肝腫瘍を発見された。術前にTS-1を経口投与後,膵体部腫瘍摘出および肝外側区域切除とMCT 焼灼術を行った。病理診断は腺房細胞癌で,膵体部腫瘍は転移リンパ節と診断され,原発巣の所在は不明であった。術後TS-1経口投与およびcisplatin肝動注を行い,肝転移は消失した。しかし約1年後の腹部CT で膵体部腫瘤を認め,再手術を行った。肝転移はコントロールされており膵腫瘍を摘出した。病理診断は原発性膵腺房細胞癌であった。一般に予後不良とされる膵腺房細胞癌に対してTS-1とcisplatinの併用療法が有効である可能性が示唆された。 -
がん患者の呼吸困難に対してオキシコドン徐放錠が有効であった3症例
33巻4号(2006);View Description Hide Description呼吸困難は進行がん患者によくみられる症状である。症状緩和の薬物治療として,モルヒネの全身投与が有用である。しかし,モルヒネ以外のオピオイドで同様の呼吸困難緩和作用が得られるかは現在までほとんど検討されていない。われわれは,モルヒネの持続皮下注射により呼吸困難が改善された3症例に対してオキシコドン徐放錠に変更を行い,呼吸困難緩和作用を評価した。3症例すべて新たな副作用の出現なく,モルヒネとオキシコドン徐放錠は同等の呼吸困難緩和作用を認めた。今後さらに適切な研究デザインで,オキシコドンの呼吸困難緩和作用を確認する必要がある。
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連載講座
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- 【外来化学療法】
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- 【治験管理室訪問】
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特別寄稿
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乳癌に対するVinorelbineの臨床試験—科学的有用性と厚生労働省による承認までの過程について—
33巻4号(2006);View Description Hide Descriptionvinorelbineは,フランスで開発された新規vinca alkaloid誘導体であり,海外では乳癌,非小細胞肺癌に対して,90年代より広く臨床的に使用されている。本邦でも非小細胞肺癌においては1999年に承認を取得し薬価収載,販売され,乳癌においても2005年5月に適応症追加承認となった。本邦における第㈵相臨床試験は1988年から開始され,進行・再発乳癌を対象として実施された臨床試験は6試験あり,単剤投与として1st lineでの治療からanthracycline系薬剤およびtaxane系薬剤の両剤による治療を受けた症例に対する治療まで,すべての対象で有効性が認められた。それらの結果をレビューするのと同時に,海外での併用療法での成績も照会した。また,開発当初より乳癌治療の薬剤として科学的に十分な臨床的有用性が示され,1993年に承認申請が行われたが,結果的に,承認取得まで17年を要した経過を説明し,医療担当者,患者と厚生労働省(当局)との関係についても考察し,その問題点を指摘した。
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用語解説
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