癌と化学療法
Volume 33, Issue 5, 2006
Volumes & issues:
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総説
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特集
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- 在宅医療の現況と将来
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胃癌
33巻5号(2006);View Description Hide Description最近,様々な医療状況の変化に伴い,癌の化学療法が入院治療から外来治療へとシフトしている。胃癌においても一昔前は外来化学療法はごく限られたレジメンでしか可能でなかった。しかしTS-1をはじめとする新規抗癌剤の登場により,現在では外来での化学療法がむしろ主流となっている。それに伴って,胃癌患者においても在宅医療の機会がますます増えることになってきた。胃癌患者の特徴として,その病初期から原発巣あるいはそれ以外の部での通過障害を来すことが多く,それによる種々の不快な症状あるいは経口摂取困難などが在宅での生活を妨げる要因であった。しかし現在ではこれらの症状を軽減する技術あるいは在宅静脈栄養法などの進歩によってより長期の在宅生活が可能となってきた。在宅医療を今後ますます発展させるためには主治医のみならず地域の医療機関,訪問看護なども含めた支援体制作りが必要である。 -
肺がん
33巻5号(2006);View Description Hide Description進行肺がんにおける病初期の化学療法は生存期間延長に寄与している。しかし,平均的な生存期間は約1年弱であることから,病初期の比較的良好な時期に在宅期間の延長と社会生活の継続を目指すべきで,ここに外来化学療法の導入の意義がある。近年,副作用を軽減する技術の発達,効果の優れた新抗がん剤の開発などから外来化学療法が可能となっている。加えて,肺がんの在宅治療を成功させるためには,臨床腫瘍学的緊急症の予防と緩和治療に精通していなくてはならない。 -
乳がんの外来化学療法と在宅医療の現状と将来
33巻5号(2006);View Description Hide Description乳がんは体表の臓器である乳腺に発生する疾患である。そのために,内臓器由来の肺や消化器がんとはかなり異なる乳がん特有の臨床経過をたどる。また,乳がんは欧米のエビデンスの集積により標準治療が外科,内科,放射線分野において世界的にある程度確立している。治療の主体は外来で行われ,在宅医療をいかに援助することが重要である。在宅治療を成功に導くためには,チーム医療の構築が急務である。 -
造血器悪性腫瘍の在宅医療
33巻5号(2006);View Description Hide Description白血病や悪性リンパ腫などの造血器系悪性腫瘍は入院あるいは外来で治療されることが多く,在宅医療は現状では積極的に行われているとはいい難い。そのなかで,化学療法後の好中球減少症に対するG-CSF の投与や疼痛に対する麻薬やopioidの投与などは在宅医療として行われており,患者のQOL の向上に寄与している。 -
進行膵癌の治療
33巻5号(2006);View Description Hide Description膵癌在宅医療の現状を外来(在宅)化学療法とbest supportive careの面から考察した。外来化学療法はgemcitabineの登場により,副作用が軽く症状緩和効果と延命効果も認めることから,一般に広く行われるようになってきた。gemcitabineの効果がなくなってきた場合の二次化学療法剤がない現状であるので,best supportive careが必要となる。この場合には栄養面からは糖尿病の管理,腹水のコントロール,疼痛コントロールが重要となってくる。特に疼痛コントロールについては種々の麻薬製剤の開発により,在宅医療も可能となってきた。 -
大腸癌の在宅医療の現状と将来
33巻5号(2006);View Description Hide Description近年,大腸癌の化学療法は急速に進歩している。そして,進行・再発大腸癌における治療の主役となってきた。しかし,手術や放射線治療も抗癌剤治療中に生じる各種症状のマネジメントには重要な治療手段であることに変わりはない。手術不能再発大腸癌の治療の目標は,良好なQOL を維持しながら延命も図ることである。現在のわが国での標準治療はFOLFIRI/FOLFOX だが,欧米では分子標的治療薬が使われだしている。しかしたいへん高価である。経口フッ化ピリミジン剤の効果,抗癌剤の感受性と副作用の予知に向けた研究に期待が向けられる。QOL と延命のバランスをとることが大切である。そのために,患者の気持ちを十分聴き,不安や悩みに対してサポートを続けることが大切である。医療者には緩和医療の知識とactive listening の手法が必要となる。EBM ばかりでなく個人個人の考え方も尊重し,外来での化学療法の継続を図り,個人の日常生活・社会的活動が維持されるべきである。そして,「癌の性格」と「患者の個性」とにマッチしたオーダーメード医療が実現されることを期待する。 -
在宅緩和ケアへの移行と疼痛管理について
33巻5号(2006);View Description Hide Description在宅緩和ケアへの移行には,院内のみならずその地域における多職種の連携が不可欠である。スムーズに行うためには,早期より準備することも重要である。また,保険診療に熟知し,患者に余分な負担をかけずに最大限のQOL を保った診療を行うべきである。オピオイドを中心とした疼痛マネジメントを修得することにより,良好な在宅緩和ケアが行える。癌性疼痛にはオピオイド不耐性痛みがあり,これらについても対応が必要とされる。
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原著
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頭頸部癌に対するTS-1Adjuvant Chemotherapy—2週投薬1週休薬法投与における副作用を中心に—
33巻5号(2006);View Description Hide Description頭頸部癌に対して局所コントロール率や予後を向上させるために放射線治療,手術,化学療法を組み合わせた集学的治療がなされている。近年,新たな抗腫瘍薬の出現をみるが,そのなかでも5-FU の持続静脈注射とほぼ同等の血中濃度が得られる経口剤として開発されたTS-1を使用してadjuvant chemotherapyを行った。今回,2週投薬1週休薬での副作用を中心にその使用経験を報告する。2002年1月から2004年11月まで当科にてTS-1加療を施行した32例のうち22例に対しadjuvant chemotherapyを行った。TS-1開始当初の6症例は4週投薬2週休薬にて行っていたが,3週目以降の血液毒性を高頻度に認めたため,プロトコールの変更を要した。その後,2週投薬1週休薬とし,16例に行った。4週投薬2週休薬では66.7%に高度の血液毒性を認め,2クール以上の継続投薬が不可能であったが,2週投薬1週休薬に変更した後では,grade2の白血球減少を1例に認めるだけであった。これらの継続投薬症例では大球性貧血を高頻度に認めたが,程度は軽く休薬や中止を要する症例はなかった。一方,2週投薬1週休薬においても中止せざるを得なかった症例は,下肢の浮腫や色素沈着,皮膚発赤,下痢など血液毒性とは異なる有害事象を比較的早期に認めたが,休薬,用量減量にて継続投薬が可能な症例も認めた。TS-1の2週投薬1週休薬は,4週投薬2週休薬に比べ,治療の中断を要する副作用が比較的少なく,外来においても安全に長期投薬が可能な方法と考えられる。 -
切除不能・再発胃癌に対するWeekly Paclitaxel(PTX)の有効性と副作用の検討
33巻5号(2006);View Description Hide Description前治療の有無を問わない切除不能・再発胃癌に対するweekly PTX の有効性と副作用についてretrospectiveな検討を行った。対象患者は26例,切除不能胃癌が17例,手術後の再発胃癌が9例,男性18例,女性8例であり,平均年齢65歳(37〜78歳),初回治療2例,二次治療17例,三次治療以降は7例であった。投与サイクルの中央値は2.0サイクルで,測定可能病変のある症例は21例であった。そのうちCR 0%,PR 14.3%(3/21), NC 52.4%(11/21), PD は33.3%(7/21)で,non-PD 率は66.7%(14/21)であった。治療成功期間(PTX の治療開始日から最終投与日)の中央値(TTF)は61日,生存期間中央値(MST)は221日であった。また,grade3以上の副作用は認められず,副作用も軽度であることから,長期にわたって外来投与可能であることが示唆されたと考える。 -
胃癌症例におけるThymidylate SynthaseおよびDihydropyrimidine Dehydrogenase発現とUFT 術前投与による組織学的効果に関する検討
33巻5号(2006);View Description Hide Descriptionフッ化ピリミジン系抗癌剤は腫瘍におけるDNA 合成の際にdUMP からdTMP の合成を触媒するTS を標的酵素とし,DPD により代謝される。胃癌症例の手術待機中の癌の進行予防やdown staging を目的にUFT の術前投与を行った。方法と対象:胃癌24例に対し術前化学療法としてUFT 360mg/m2/dayを3週以上投与した。化学療法前・後(手術時)の腫瘍内の免疫組織化学染色によるTS 発現,DPD 発現を測定し,組織学的効果判定結果と対比して,各々関連性を検討した。結果:TS 発現,DPD 発現はUFT 投与前後で有意に低下していた(p<0.05)。組織学的効果判定では24例中11例(46%)がGrade1b, 2と評価された。また,DPD 高値例15例中8例がGrade1b, 2(53.3%)であった。結語:DIF 作用を有するUFT にはDPD 高値例に対しても高い組織学的効果が得られ,UFT の術前投与は臨床上,十分有用な手段となり得る可能性が示唆された。 -
肺癌化学療法におけるRamosetronとAzasetronの急性および遅延性悪心・嘔吐に対する効果の比較検討
33巻5号(2006);View Description Hide Descriptionわれわれは肺癌患者を対象として,cisplatinによって引き起こされる急性および遅延性嘔吐に対するramosetronとazasetronの有効性と安全性について,retrospectiveに比較検討した。100人の対象患者はcisplatin, ifosfamide, irinotecanのCIC 療法を受けた。ramosetron(0.3mg)またはazasetron(10mg)は,cisplatin投与開始30分前に静注した。すべての患者は,dexamethasone(32mg)の投与も受けている。嘔吐の完全抑制率は両群に違いは認められなかったが,悪心のgradeはazasetron群に比べてramosetron群が有意に低かった。さらに悪心時に用いる救済措置薬であるchlorpromazineの投与は,azasetron群に比べてramosetron群が有意に少なかった。副作用はramosetron群で27例,azasetron群で24例認められたが,いずれも軽微であり安全性に問題は認められなかった。結論として,ramosetronは肺癌患者へのcisplatinによって引き起こされる急性および遅延性嘔吐に対して有用性が高いことが示唆された。 -
外来癌化学療法における皮下埋込型中心静脈ポートの有用性と留置手技のコツ
33巻5号(2006);View Description Hide Description癌化学療法は患者のQOL 向上を求めて外来通院治療にて施行されるケースが増えてきた。輸液ルートとして, 1.末梢血管, 2.中心静脈(intravenous hyperalimentaion:IVH)カテーテル, 3.皮下埋込型IVH ポートがあるが,末梢血管確保が困難な症例には皮下埋込型IVH ポートが優れている。外来通院化学療法患者11名(男女比=2:9, 年齢中央値56歳)に皮下埋込型IVH ポートを設置し,化学療法を施行した。合併症は2例(18%)に認めた。1例は設置直後に皮下膿瘍から敗血症に陥り,他の1例は化学療法施行中に真菌血症を発症した。両者ともいったんポートを抜去し,感染が消退後,再設置し,化学療法を施行できた。皮下埋込型IVHポート設置術は,手技上のポイントに留意すれば簡便・安全に施行でき,また合併症については早期発見・早期治療が重症化防止につながると考えられる。患者アンケート調査によれば,全員が皮下埋込型IVH ポートの留置に満足との回答を得た。本法は外来通院化学療法を受ける患者に安全・快適な点滴環境を提供し,患者のQOL 向上に寄与する有用な手段と考えられた。
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症例
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DIF 製剤が奏効した胸膜播種を伴う切除不能進行非小細胞肺癌の1例
33巻5号(2006);View Description Hide Description症例は68歳,女性。胸部CT で右肺に腫瘤陰影が認められ,当院へ紹介となった。右肺S 7に約3.5cm の腫瘤陰影を認めた。術前StageはT2N0M0, StageⅠB と診断し,手術を施行した。術中所見は主病巣の浸潤は認めないが,び漫性に胸膜播種を認めたため根治手術は不可能と判断し,組織診断のためのS 6播種巣の生検を行った。病理組織検査はpapillary adenocarcinomaであり,T4NXM0R2, pStageIII B となった。家族の希望で本人へは治癒切除と説明し,術後補助化学療法の形でUFTの内服を行う方針とした。経過中,CEA が漸増するもCT では著変は認めなかった。術後2年目に右胸水の貯留を認め,TS-1へ変更した。CEA の減少に伴い,胸水も減少した。UFT やTS-1などの経口抗癌剤による治療は外来での通院加療が可能であり,QOL を損なわずに継続できる点で意義があると思われた。 -
異時性多発性非小細胞肺癌の第2癌に対しTS-1+CDDP 併用化学療法が奏効した1例
33巻5号(2006);View Description Hide Description症例は66歳,男性。1999年3月に肺癌(中分化型腺癌,pT 2N 0M 0)にて右上葉切除術およびND 2a系統的リンパ節郭清術を施行された。2003年11月に胸部CT にて左S 6に異常陰影を認め,CT ガイド下腫瘤生検および縦隔リンパ節生検にて,多発性非小細胞肺癌第2癌(低分化型扁平上皮癌,cT 1N 2M 0, stageIII A)と診断された。CBDCA, PTX 併用療法を2コース施行,副作用により,CBDCA およびGEM に変更し,2コース施行した。しかし腫瘍は増大傾向にあったため,gefitinib投与に変更,連日投与にて6か月間継続したが,腫瘍は増大,縦隔リンパ節の増大を認めた。2005年1月よりTS-1+CDDP 併用化学療法を施行した。TS-1は120mg/日で1日2分割投与,3週投与2週休薬とし,day8にCDDP60mg/m2投与とした。3コース目より,TS-1を150mg/日に増量,6コースの化学療法を施行した。有害事象はgrade1の白血球減少を認めるのみであった。腫瘍径は最大46%の縮小(PR)が認められ,全奏効期間は約5か月であった。TS-1+CDDP 化学療法は多レジメン施行後の使用であるにもかかわらず奏効した。 -
Docetaxelを用いた多剤併用化学療法が奏効した食道癌肺転移再発の1例
33巻5号(2006);View Description Hide Description症例は67歳,女性。食道癌に対して化学放射線療法(5-FU/CDDP 療法および局所放射線療法)を施行され,2年半後に多発肺転移再発を来した。docetaxel/CDDP 併用化学療法を3クール行い,その後は外来でdocetaxel/nedaplatin隔週投与を継続し,約15か月目にCR と判定された。FP 療法後不耐例,再発例に対してはこれまで有効な二次治療の報告がなく,今後の選択肢として期待できるものと考え報告した。 -
胃癌リンパ節転移による閉塞性黄疸に対してCPT-11+CDDP 併用化学療法が著効した1例
33巻5号(2006);View Description Hide Description症例は74歳,男性。心窩部膨満感と体重減少を主訴に上部消化管内視鏡検査を行い胃前庭部に全周性の2型胃癌が指摘された。腹部リンパ節転移と右肺に多発転移巣が認められcStageIVと診断し,TS-1 80mg の内服を開始した。6クール投与後幽門狭窄を来したため,姑息的幽門側胃切除,Roux-en Y 再建術を施行した。その後もTS-1の80mg 内服を再開し,術後5クール目を終了した時点で膵上縁と肝門部へのリンパ節転移による閉塞性黄疸が認められたため,PTCD を挿入した。減黄後CPT-11 60mg/m2,CDDP 30mg/m2のbiweekly投与を開始した。外来に移行し投与量をCPT-11 60mg/body,CDDP 30mg/bodyと減量し継続した。リンパ節の縮小効果が得られPTCD も抜去可能となった。CPT-11+CDDP 併用化学療法はsecond-lineの治療として有効な選択肢の一つになり得ると考えられる。 -
TS-1化学療法が奏効した胃癌多発骨転移によるDIC の1例
33巻5号(2006);View Description Hide Description71歳,女性。3型胃癌で組織型は低分化腺癌。貧血の進行を認めていることから,胃全的術を施行。術後18病日にDICを併発。抗DIC 療法を開始し,併せてTS-1による5日間投与・2日間休薬(5投2休) 3週連続投与法を施行した。DIC の改善を認め3クール開始後に退院となった。TS-1の5投2休・3週連続投与法はDIC に対して有効な治療法と考えられた。 -
術前TS-1/CDDP 併用療法が著効し根治切除となったStageIV進行胃癌の1例
33巻5号(2006);View Description Hide Description症例は60歳,女性。検診で異常を指摘され近医受診。胃癌の診断で本院紹介受診した。胃内視鏡にて胃体上部小弯から前庭部にかけて約10cm の3型腫瘍を認めた。生検では低分化型腺癌であった。CT 検査にて膵浸潤に加え,肝左葉外側への直接浸潤と腹膜播種を疑われcStageIVと診断された。根治術は不可能と判断し術前化学療法を選択した。TS-1 120mg/dayを21日連続経口投与,CDDP はday8に95mg(60mg/m2)を点滴静注した。2週休薬し5週を1コースとした。合計2コース施行し原発巣は著明に縮小しcStagII へとdownstageが得られ,胃全摘術,D 2郭清を施行しpStage㈵B で根治度A の手術であった。術後1年を経過したが再発,転移は認めていない。本法は進行胃癌症例に対して極めて有効な治療法と考えられたので文献的考察を加えて報告する。 -
大腸癌術後UFT 療法に伴う高ビリルビン血症にタウリンを併用した4症例
33巻5号(2006);View Description Hide Description根治度A の手術を行ったstageII, III の大腸癌症例69例に対し術後補助化学療法としてUFT(fluorouracilとして300〜400mg/日)を投与した。このうち,高ビリルビン血症を認めたのは8例で顕性黄疸症例,皮膚症状併発した症例,既往の喘息様呼吸困難が再燃した症例,多発性肝転移が発見された症例はUFT の服用を中止したが,T-Bil 2.3mg/dl 以下の不顕性黄疸の4例にタウリン(98%アミノエチルスルホン酸として3.0g/日)を併用したところ,高ビリルビン血症が軽快した。タウリンはUFT 投与時の高ビリルビン血症に有用である。 -
大腸癌肝転移に対してl-Leucovorin/5-FU 療法およびLeucovorin/UFT 療法が奏効した1例
33巻5号(2006);View Description Hide Description症例は73歳,男性。多発肝転移を伴うS 状結腸癌で入院し気管支喘息による閉塞性呼吸障害を認めたため,原発巣のS 状結腸切除術のみ施行した。術後肝転移に対して,肝動注療法を勧めたが同意は得られず全身化学療法のl-LV/5-FU(l-LV 375mg/body, 5-FU 750mg/body週1回6週投与2週休薬を1クール)療法を施行し2クール後にほぼCR を得た。その後,維持療法として経口でLV/UFT(LV 75mg/body/day, UFT 450mg/body/day2週投与1週休薬で6週を1クール)療法を12クール施行した。経過中,嘔気・嘔吐,下痢などはみられず骨髄抑制所見などの副作用も認めず,手術後2年経過した時点でのCT でもCR を維持しており化学療法を終了した。 -
化学療法が奏効したS 状結腸腸間膜脂肪肉腫の1例
33巻5号(2006);View Description Hide Description腸間膜原発脂肪肉腫の術後再発に対してifosfamide(IFM)とcisplatin(CDDP)による化学療法が奏効した症例を経験した。症例は58歳,男性。下腹部の違和感を主訴に来院。造影CT にて骨盤腔に造影効果の高い非上皮性腫瘍を認めた。腫瘍は,直腸診にて可動性良好であり腸間膜由来の脂肪肉腫と診断し,2002年8月22日に腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は,S 状結腸腸間膜から発生した11×14×7cm, 640g の多形性脂肪肉腫であった。2003年3月24日,骨盤内再発巣の切除術を施行。同年9月18日,二度目の骨盤内再発時の手術所見では,小腸腸間膜に多発する再発巣を認めたため,根治切除は困難と判断し,閉腹した。10月1日よりIFM 3.0g/bodyを3日間連日投与,出血性膀胱炎の予防目的にメスナ1,800mg/bodyを3日間併用した。以後外来にて,IFM 3.0g/body/day, メスナ1,800mg/body/day, CDDP 30mg/body/dayのweekly投与を開始した。12月10日の腹部造影CT にて縮小効果がみられたが,grade2の脱毛,grade2の白血球減少がみられ,biweekly投与に変更した。その後も縮小効果は持続し副作用もなく,2004年8月のCT にてほぼCR となり,現在も再燃兆候なく外来にて同じ化学療法を継続中である。 -
B 型肝炎ウイルスキャリアに発症した急性型CD 8陽性成人T 細胞白血病の1例—Lamivudine併用化学療法の治療効果の可能性—
33巻5号(2006);View Description Hide Description非典型的な表面抗原を有するATL は極めて予後不良である。われわれは,HBV キャリアに発症した急性型CD 8陽性ATL 症例を報告する。lamivudine併用化学療法を施行し,既報告例に比べ長期の生存が得られた。症例は64歳,男性。2002年1月腹水,腹部腫瘤の精査加療目的に当院入院となった。HTLV-1抗体,HBs-Ag が陽性。CT 検査にて腹部腫瘤,腹水,両側胸水を認めた。腹水検査では異型リンパ球を多数認め,表面マーカーはCD 2, CD 5, CD 8,CD 25が陽性であった。サザンブロット解析でHTLV-1プロウイルスのmonoclonalな組み込みが確認され,急性型CD 8陽性ATL と診断された。化学療法に伴うHBV の再活性化を考慮し,lamivudineを予防投与した。その後にCHOP 療法が計6コース施行され,寛解となった。しかし治療終了13か月後にATL の再発を認めた。サルベージ療法の治療効果は一過性であり,2004年2月に敗血症で永眠された。ATL 発症からの生存期間は25か月であった。本例では,lamivudineと化学療法の併用が治療効果を発揮した可能性がある。 -
化学療法に先行した局所放射線療法を用いて良好な結果を得た限局期鼻NK/T 細胞リンパ腫の4例
33巻5号(2006);View Description Hide Description鼻NK/T 細胞リンパ腫は,わが国に比較的多いEBV 関連悪性リンパ腫の一種で,その標準的治療は確立されていない。限局期では,原発巣である鼻腔あるいはその周辺組織にとどまり放射線治療が奏効する一方で,進行期・再発例の予後は著しく不良である。今回われわれは,限局期鼻NK/T 細胞リンパ腫4例において化学療法に先行して54Gyを超える高線量の放射線療法の安全性について評価した。鼻腔周辺の高線量放射線治療は,毒性の大きい治療であり,3例においてgrade3の口内炎,残りの1例においてgrade2の口内炎の発症を認めた。放射線毒性から回復しだい,化学療法を追加し,4例中2例にgrade3の口内炎の再燃を認めたものの,治療後9か月以上4例とも寛解を維持している。診断早期の化学療法に先行した高線量放射線療法は有効性が期待される半面,合併症の管理を行いながら安全に行う必要がある。
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連載講座
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- 【外来化学療法】
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- 【治験管理室訪問】
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東京大学医科学研究所附属病院臨床試験管理推進室—探索型臨床研究(トランスレーショナル・リサーチ)推進のために—
33巻5号(2006);View Description Hide Description
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特別寄稿
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科学的根拠に基づいた悪心・嘔吐対策
33巻5号(2006);View Description Hide Description化学療法によって起こる副作用,特に自覚的な副作用のなかで最も頻度が高いもののなかに悪心・嘔吐がある。しかしながら最近の薬物療法の進歩により,悪心・嘔吐をかなりの確率で予防することが可能になってきた。本論文では,1999年の米国臨床腫瘍学会と,2004年にNCCN から出された悪心・嘔吐対策のガイドラインを中心に最新の文献の情報を加味して記載した。
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用語解説
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