癌と化学療法
Volume 33, Issue 7, 2006
Volumes & issues:
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総説
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抗癌剤による肺障害—その現状と問題点—
33巻7号(2006);View Description Hide Descriptiongefitinibによる肺障害に関するいくつかの大規模な臨床的調査が行われ,抗癌剤による肺障害に関する多くの新たな知見が得られるとともに,新規抗癌剤開発における問題点も明らかになった。gefitinibによる肺障害の解析により,抗癌剤による肺障害の多様な病態,発症に関する人種差,発症の危険因子,その診断の困難さが明らかになった。さらに,新規抗癌剤の開発過程に内在する問題点,市販後調査の重要性などについて再認識した。抗癌剤による肺障害に適切に対応するためには,その発生機序を明らかにする必要がある。
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特集
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- 大腸癌化学療法—最近の併用投与—
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切除不能進行・再発大腸癌に対するTegafur/Uracil(UFT)+経口Leucovorin(LV)の使用経験
33巻7号(2006);View Description Hide Description当院にてUFT/LV 単独療法を施行した進行・再発大腸癌82例の臨床成績を検討した。対象は,2003年9月〜2005年3月までにUFT/LV 単独療法(UFT300mg/m2/day, LV 75mg/day, 4週投与1週休薬)を施行した進行・再発大腸癌82例で,年齢中央値63歳(34〜80歳), 男性/女性:49/33例,PS 0/1/2:53/28/1例,未治療例28例,既治療例54例であった。評価項目は奏効率,有害事象,生存期間であり,これらをretrospectiveに検討した。腫瘍縮小効果の評価が可能であったのは82例中54例で,全体の奏効率は14.8%(95%信頼区間:5.3〜24.3%),未治療例では奏効率33.3%,既治療例では奏効率5.5%であった。grade3以上の有害事象は7.3%に認めたのみで,いずれも下痢・肝機能障害であった。生存期間については未治療例の28例で算出し,MST は25.8か月,1年生存率 88.0%, 2年生存率 60.5%であった。実地臨床においてもUFT/LV 単独療法はブリッジング試験と遜色のない結果が得られ,経口剤という利便性,毒性が少ないという安全性の観点からも,UFT/LV 単独療法は進行・再発大腸癌化学療法の重要な選択肢の一つと考えられた。 -
Capecitabine
33巻7号(2006);View Description Hide Descriptioncapecitabineは経口フッ化ピリミジン製剤のなかにおいて世界中で広く用いられている薬剤である。転移性結腸直腸癌において5-FU/LV(bolus)と比較し同等の有効性と優れた安全性が証明されている。また,ステージ III の結腸癌に対する術後補助化学療法の試験(Xeloda Adjuvant Chemotherapy Trial:X-ACT)では標準補助化学療法である 5-FU/LV(bolus)に対して disease-free survival (DFS), overall survival (OS)で少なくとも同等の効果を有し,relapse-free survival(RFS)に関しては有意に延長すること,毒性が少ないことが証明された。これらの結果に加え,capecitabine にoxaliplatin や irinotecan を併用したレジメンが検討されており,現在までの第II相試験からは非常に期待できる結果が報告されている。本邦では1994年から開発に入っており,2005年に報告された化学療法未施行の転移性結腸直腸癌を対象とした海外用法・用量による第II相試験では,奏効率35%(95% CI 23.1〜48.4), time to progression(TTP)中央値169日,生存期間中央値が617日と有望な結果が報告された。副作用において,capecitabineの特徴的なhand-foot syndrome(HFS)が73.3%の患者に出現したが,grade 3/4に至った患者は 13.3%,HFSによる中止は1名のみで,休薬/減量により対応可能であった。現在,結腸癌に対する術後補助化学療法の適応で承認申請中であるが,本邦での早い承認が待たれる薬剤である。 -
TS-1/Irinotecan併用療法—現在の知見—
33巻7号(2006);View Description Hide Descriptionirinotecan(CPT-11)と持続静注型 5-FU/LV の併用療法は,進行・再発大腸癌に対する標準治療法である。しかし,5-FU の持続静注はカテーテル留置や携帯ポンプを必要とするために,より簡便である経口フッ化ピリミジン製剤を用いた治療法の開発が求められている。2004年初頭に,進行・再発大腸癌に対して追加承認されたTS-1は,使用療法において 5-FU 持続静注に代わる製剤としての開発が期待されている。そのなかでも,標準治療に代わる候補として,TS-1 と CPT-11 併用療法が注目されている。現時点では,様々なスケジュールによる報告がなされており,いずれも比較的安全に外来治療として実施できることが検証されている。また,この治療法が標準治療候補となり得るだけの有用性を示した第II相試験の結果の報告もではじめている。今後は TS-1 と CPT-11 併用療法が,標準治療である FOLFIRI 療法などに対して安全性および利便性で優れ,かつ生存期間において同等であることを比較試験で検証されることが期待される。 -
CPT-11(24時間持続)+UFT/LV
33巻7号(2006);View Description Hide Description進行・再発大腸癌を対象とした UFT/LV 経口投与と CPT-11・ 24時間持続静注至適用量を推定するとともに,本療法の有効性および安全性を検討した。投与方法はUFT(300mg/m2/day)/LV(75mg/body)を固定し day1〜21投与,CPT-11(80〜120mg/m2:24hour)をday1, day15に投与し 28dayを1クールとする。120mg/m2でgrade3の白血球,好中球減少を2例認め MTD としたため,RD は100mg/m2とした。奏効率は 41.7%(5/12), grade3以上の有害事象は血液毒性 25%(3/12), 消化器毒性 8.3%(1/12)であった。比較的低用量で血液毒性,消化器毒性も軽度であり,有用な治療法となり得ると思われた。 -
転移・再発結腸・直腸癌患者を対象とした5-FU/l-LeucovorinとIrinotecan併用療法(FOLFIRI 療法)
33巻7号(2006);View Description Hide Description2000年にirinotecan(CPT-11)/5-fluorouracil(5-FU)/Leucovorin(LV)併用療法が化学療法未施行例を対象とし欧米で行われた第III相試験の結果,5-FU/LV 療法に比べ延命効果を示すことが報告され,転移性大腸癌に対する標準治療となった。そのうち,5-FU/LV 持続静注/CPT-11併用療法のことをFOLFIRI療法という。FOLFIRI はCPT-11 180mg/m2をday 1 に 90分間,それと同時に l-LV 200mg/m2を2時間で点滴静注する。その直後に 5-FU 400mg/m2 を急速静注投与し,その後,46時間で5-FU 2,400mg/m2を持続静注する。これを2週間ごとに繰り返す。FOLFIRI 療法はFOLFOX 療法と共に切除不能進行再発大腸癌に対する世界的な標準化学療法である。本邦においても支持療法を十分に行うことにより安全に施行できる。 -
IFL
33巻7号(2006);View Description Hide DescriptionSaltz らによって報告された急速静注5-FU/Leucovorin(LV)+irinotecan(CPT-11)併用療法(IFL 療法)は,長い間切除不能・再発大腸癌の標準治療であった5-FU/LV 療法と比較して奏効率,無増悪生存期間,生存期間中央値すべてにおいて有意に優れていた。しかし,その後 IFL 療法の毒性や早期死亡率が高いことが問題となり,さらに持続静注5-FU/LV+CPT-11併用療法(FOLFIRI 療法)や持続静注5-FU/LV+oxaliplatin(L-OHP)併用療法(FOLFOX 療法)の良好な成績が報告され,現在ではFOLFIRI 療法,またはFOLFOX 療法が標準治療と認識されるようになっている。 -
FOLFOX
33巻7号(2006);View Description Hide DescriptionFOLFOX は大腸癌に対する世界の標準治療であり,国内のガイドラインにも1番に記載されているレジメンである。主にFOLFOX 4とmFOLFOX 6の二つの投与方法がある。FOLFOX は消化器症状が比較的少ないので使いやすいが,実地臨床においてFOLFOX を使用する際の注意点は, 1.irinotecanと同程度の好中球減少が起こる, 2.初期の神経症状は必発である, 3.後期には蓄積性の機能障害が生じる, 4.アナフィラキシーショックと間質性肺炎がまれに生じる, 5.中心静脈ポートを使用する場合は,血栓や断裂などの合併症に注意する。蓄積性の神経障害があるために長期間連続して使用できないが,数か月後に神経症状が回復すれば再開できる。FOLFOX は最も効果が高いが注意点も多い。投与基準を守り,適切に延期・減量を行い,FOLFOX を望む患者が,多くの病院で安全に治療が受けられるようになることを期待する。
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原著
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Retrospective Analysis on Prognostic Impact of Adjuvant Chemotherapy in the Patients with Advanced and Resectable Oral Squamous Cell Carcinoma
33巻7号(2006);View Description Hide Description【目的】口腔扁平上皮癌に対する補助化学療法の効果を検討した報告は少なく,その有用性は不明なままである。本研究の目的は切除可能な口腔扁平上皮癌進行例における補助化学療法の効果をレトロスペクティブに検討することである。【方法】ステージ3および4の口腔扁平上皮癌進行例で腫瘍の根治的切除が確認された41例を対象とした。予後を左右するであろういくつかの因子(T分類,病理組織学的分化度,腫瘍の浸潤様式,頸部転移リンパ節の個数およびレベル,術前・術後の放射線治療,術前化学療法,補助化学療法)が,患者の生命予後,局所再発および遠隔転移発現に及ぼす影響について,変数選択比例ハザードモデルを用いて解析した。【結果】頸部転移リンパ節のレベルは疾患特異生存率(cause-specific survival)を左右する有意な因子であり(p<0.02), 補助化学療法は有意でないものの影響を及ぼしている傾向が見られた(p=0.07)。また頸部転移リンパ節の個数および補助化学療法は無癌生存率(disease-free survival)を左右する有意な予後因子であった(p<0.01)。【結論】本研究の結果から,補助化学療法は無癌生存率の改善に有用であると考えられた。 -
乳癌再発転移とEstrogen Receptor/Progesterone Receptorの変化
33巻7号(2006);View Description Hide Description乳癌転移再発によるestrogen receptor(ER), progesterone receptor(PgR)量の変化と関与する因子を検討した。1983年以降,複数の標本を採取した177例からの443標本について244対の同時,122対の異時比較を行った。ER, PgR の一致率は主に陽性からの陰性化により81%, 異時ではER で69%, PgR で71%であった。10%以下の少数ではあるものの陰性の陽性化がみられた。陽性から陰性への変化は内分泌療法の介在で多く,年齢,標本採取間隔,術後期間,内分泌療法,化学療法の介在,HER 2を考慮した重回帰分析ではER について有意(p=0.015)であった。原発巣と再発巣とでは陰性化陽性化を含めて3割のデータは一致しないのであるから,直近のER, PgR データにより計画的な再発治療実施が期待できる。 -
肺癌化学療法における悪心・嘔吐と神経伝達物質ノルアドレナリンの関連性
33巻7号(2006);View Description Hide Description肺癌化学療法(docetaxel 60mg/m2, cisplatin 80mg/m2)後の悪心・嘔吐において,制吐剤の有効例と無効例間の血中セロトニン(S)および血中カテコールアミン(アドレナリン(A), ノルアドレナリン(NA), ドパミン(D))の関連性を検討した。全37例に制吐剤の予防的多剤併用療法(癌化学療法開始直前にgranisetron(GR)3mg, methylprednisolone 500mg, metoclopramide(ME)40mg, 2, 3日目はGR 3mg, ME 40mg)を行った。矢田部-ギルフォード性格検査により選別した心因的高危険群16例には,癌化学療法前日の夕食後からprochlorperazine 15mg を1日3回,悪心・嘔吐が消失するまで追加投与した。血中濃度は癌化学療法前日,抗癌剤投与後2,4,14日目に測定した。その結果,NA では癌化学療法前日(p<0.05), 14日目(p<0.01), D では14日目(p<0.01)に制吐剤の有効例と無効例間で有意差が確認できた。今後,悪心・嘔吐に関連している神経伝達物質として,従来のS およびD だけでなくNA にも注目していきたい。 -
Gemcitabine無効進行膵癌に対するInterferon-α+CDDP+5-FU 療法—Preliminary Report—
33巻7号(2006);View Description Hide Descriptiongemcitabine(GEM)が無効であった切除不能あるいは再発膵癌10例を対象とし,IFN-α+CDDP+5-FU 療法を施行した。CDDP 35mg/m2を各週の第1日に点滴静注し,IFN-α500万国際単位を第2, 4, 6日に皮下投与,5-FU 175mg/m2/日を1週間持続静注するcycleを4週続けて行い 1courseとした。1course終了時SD 以上の症例に2course目を導入した。10例の平均年齢は56.2歳,男性8例,女性2例であった。主たる転移・再発部位は肝5例,肺1例,腹膜2例,局所2例であった。治療効果判定はCR 1例,PR 2, SD 2, PD 5で,奏効率(PR 以上)は30%であった。副作用(grade3以上)は食欲低下60%, 好中球減少40%, 血小板減少40%であった。本療法は副作用対策と症例選択基準に課題が残るが,一部のGEM 無効膵癌症例に有効である。 -
高齢者大腸癌症例に対するUFT+Leucovorin療法の検討
33巻7号(2006);View Description Hide Description【はじめに】UFT+Leucovorin(LV)療法は大腸癌に対する標準的な化学療法の一つであり,重篤な副作用が少ないと報告されている。高齢者大腸癌症例に対するUFT+LV 療法の治療成績および有害事象発生状況を明らかにすることを目的に検討を行った。【対象および方法】2004年1月〜2005年6月の間にUFT+LV 療法を施行した70歳以上の大腸癌症例12例(年齢中央値76歳)を対象とした。7例は進行再発病変に対する化学療法であり,5例が術後補助療法であった。治療成績および有害事象発生状況につき,同時期の非高齢者大腸癌症例と比較検討した。【結果】治療コース数は中央値4コースであった。全例で300mg/m2でのUFT 投与が可能であった。治療成績はCR 1例,PR 1例であり,奏効率は28.6%であった。毒性は軽微なもののみであった。主な有害事象は下痢3例,Hb減少7例であった。いずれもgrade1〜2であり,grade3〜4の副作用を認めなかった。【まとめ】UFT+LV 療法は高齢者大腸癌症例に対しても非高齢者症例と同様に有用であり,安全に施行可能であると考えられた。 -
子宮体癌の術後補助化学療法としてのPaclitaxel+Carboplatin併用療法の治療成績—CAP 療法と比較して—
33巻7号(2006);View Description Hide Description子宮体癌の術後化学療法として,paclitaxel(PTX)とcarboplatin(CBDCA)の併用療法(TJ 療法)を施行した14症例とcyclophosphamide(CPA), doxorubicin(DXR)とcisplatin(CDDP)の併用療法(CAP 療法)を施行した39例の副作用および治療効果について比較検討した。TJ 療法はPTX(175mg/m2)とCBDCA(AUC 5)をday1に投与(3週ごと), CAP 療法はCPA(500mg/m2), DXR(40mg/m2)とCDDP(50mg/m2)をday 1に投与した(4週ごと)。grade3以上の血液毒性の頻度(TJ 群,CAP 群)は,白血球減少(71.4%, 64.1%), 好中球減少(100%, 87.1%), 血小板減少(0%, 12.8%), 血色素減少(0%, 20.5%)であったが,有意差は認めなかった。grade3以上の非血液毒性は,悪心(0%, 15.4%), 嘔吐(0%, 12.8%)でCAP 療法に有意に(p=0.0000736, 0.000736), 末梢性知覚障害(7.1%, 0%)と関節痛(7.1%, 0%)はTJ 療法に有意に高頻度に認めた(p=0.00129, 0.00000538)。また,生存率,無病生存率ともに有意差は認めなかった。TJ 療法はCAP 療法と比較して,関節痛や神経障害に注意が必要なものの安全に行うことができ,かつ同等の効果が期待できる治療法と考えられた。 -
VX 2担癌ウサギにおける肝動注用微粉末化Cisplatin製剤(アイエーコールTM)とLipiodol混和液動注後の血中総プラチナ濃度の推移と抗腫瘍効果の検討—7Tesla MRI を用いて—
33巻7号(2006);View Description Hide Description肝動注用微粉末化cisplatin製剤(以下,アイエーコールTM)を用いて,肝VX 2担癌ウサギにおけるアイエーコールTM単剤投与群とLipiodol混和投与群における動注後,24時間血中総プラチナ濃度の推移と24時間後の組織内総プラチナ濃度を測定した。また,7Tesla MRI を用いて肝VX 2担癌ウサギへの各種動注療法(アイエーコールTM単剤投与群,Lipiodol混和投与群,Lipiodol単剤投与群,生理食塩水単剤投与群)における腫瘍縮小率を測定した。24時間内の血中総プラチナ濃度は,Lipiodol混和投与群にて低く維持された。腫瘍縮小率ではLipiodol混和群>Lipiodol単剤群≒cisplatin単剤群>生食群となる傾向を認めた。アイエーコールTMとLipiodol混和動注が効果的であることが示唆された。
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症例
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心タンポナーデを合併した再発乳癌の1例
33巻7号(2006);View Description Hide Description症例は56歳,女性。乳癌に対して左乳腺部分切除,腋窩リンパ節郭清を施行され,術後化学放射線療法を施行されたが1年後に再発し,5'-DFUR paclitaxel, capecitabineによる加療の効果乏しく進行した。trastuzumabとvinorelbineの併用療法を開始したが,癌性心膜炎による心嚢液貯留が悪化し心タンポナーデを併発した。心嚢ドレナージの後,再貯留予防のためthiotepaを心嚢内に投与し,その後永眠までの4か月の間に心嚢液貯留の再燃を認めなかった症例を経験したため報告する。 -
TS-1/Docetaxel/CDDP 併用化学療法が著効した進行胸部食道癌の1例
33巻7号(2006);View Description Hide Description症例は74歳,男性。食後つかえ感を主訴に前医を受診し,進行胸部食道癌と診断され精査加療目的のため当科紹介入院となった。肺合併症による基礎疾患のため手術ならびに放射線療法は困難と判断し,TS-1/docetaxel/CDDP 併用化学療法を施行した。TS-1 100mg/body(day1〜14), docetaxel35mg/m2(day1, 8), CDDP 10mg/m2(day1, 8)を1コースとし,3週間ごとに投与した。全経過中にgrade2以上の血液毒性ならびに非血液毒性はなかった。3コース終了後の内視鏡およびCT 検査で原発巣は消失し,生検組織検査でも癌組織は得られなかった。治療終了後3か月経過した現在も再発はない。TS-1/docetaxel/CDDP による本併用化学療法は,経口可能な手術・放射線療法困難症例に対する食道癌の化学療法として有用と考えられた。 -
Weekly Paclitaxel療法が奏効した食道原発悪性黒色腫の1例
33巻7号(2006);View Description Hide Description症例は44歳,男性。人間ドックにて下部食道に隆起性病変が見つかり,上部消化管内視鏡下生検にて食道未分化癌と診断された。2004年1月より放射線化学療法が開始されたが,中間評価の内視鏡検査にて食道原発悪性黒色腫と訂正され,CVD 療法・緩和的放射線療法・DAC-Tam 療法が施行された。しかし,いずれも無効で新たに多発肝転移・多発リンパ節転移が出現,食道狭窄も進行し経口摂取不能となった。2004年10月よりpaclitaxelの毎週投与が開始され,2コース終了時より食事摂取が可能となり,その後約4か月の自宅療養が可能となった。3コース終了時のCT でPR と判定,全5コースの投与を行ったが重篤な副作用は認められなかった。Weekly paclitaxel療法は,食道原発悪性黒色腫に安全で有効なレジメンになり得ることが示唆された。 -
Cisplatin/TS-1併用化学療法が有効であった肺癌・胃癌の重複癌の1例
33巻7号(2006);View Description Hide Description症例は76歳,男性。数年来の間質性肺炎を伴った進行肺扁平上皮癌および3型胃癌の重複癌に対し,cisplatin(CDDP)とTS-1の併用療法を行った。化学療法はTS-1 120mg/body(day1〜21), CDDP 60mg/m2(day8)を1コースとし,6週間ごとに3コース施行した。軽度の腎機能低下を認めたため3コース目はCDDP を減量して投与した。間質性肺炎の増悪を惹起することなく,胃癌・肺癌ともに縮小効果を認めた。 -
化学療法,放射線療法が奏効した切除不能進行胃小細胞癌の1例
33巻7号(2006);View Description Hide Description胃小細胞癌は非常にまれな疾患であり,様々な治療にもかかわらずその予後は不良である。われわれは切除不能進行胃小細胞癌に対して化学療法,放射線療法が奏効した1例を経験したので報告する。症例は69歳,男性。2003年10月食欲低下を主訴に入院となった。胃小弯,後壁を主体に3型病変を認め,生検で小細胞癌の診断を得た。また小弯側リンパ節転移,左副腎転移を認めた。11月手術施行するも膵浸潤,高度リンパ節転移にて原発巣は切除不能であった。2004年1月よりTS-1/PTX を4クール,CDDP/CPT-11を9クール施行しPR が得られた。2005年1月左副腎転移巣の増大を認めCDDP/ETP に変更している。4月に構語障害が出現し,多発性脳転移を認めたが全脳照射にて転移巣は著明に縮小し症状も軽快した。本症例より化学療法,放射線療法が胃小細胞癌の原発巣,転移巣制御に有効であると考えられた。 -
胃癌脳転移にPaclitaxel投与が有用であった1例
33巻7号(2006);View Description Hide Description症例は76歳,男性。膵への直接浸潤を疑わせる胃癌にて手術施行。約1年6か月後に脳転移を認めたため,右側頭葉後頭葉切除および局所照射30Gy施行。しかしその4か月後に小脳を中心に多発脳転移が出現した。そこでpaclitaxelのweekly投与(70mg/m2)を行ったところ脳転移巣は縮小し,ガンマナイフの併用にてさらなるQOLの改善が認められた。他院にて余命約1か月以内の告知を受けながらも劇的な改善がみられたが,残念ながら入院後約5か月目にFournier's gangreneを併発し敗血症のため死亡した。他病死までの間,転移性脳腫瘍は十分にコントロールされておりpaclitaxelは脳転移病巣に対しても極めて有用な薬剤であると思われた。 -
Dihydropyrimidine Dehydrogenase(DPD)欠損症と診断された再発胃癌の1例
33巻7号(2006);View Description Hide Descriptionフッ化ピリミジン系抗癌剤は胃癌の化学療法として汎用されている薬剤であるが,その分解酵素であるdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)の欠損により重篤な毒性を来したと考えられる再発胃癌の1例を経験した。症例は39歳,男性。CEA の上昇により再発を疑われ,TS-1の投与を開始した。しかし,投与5日目にgrade2の食欲不振,悪心が出現し投与を中止した。約1か月後,希望により薬剤をUFT に変更して投与を開始したところ,投与5日目で前回と同様の症状に加え,grade1の歯肉出血,発熱を来したため投与7日目に自発的に内服を中止し,緊急入院となった。いったん臨床症状の改善はみられたが骨髄癌症からDIC を併発し,入院19日目に多発性脳出血により死亡した。末梢血単核球中のDPD 活性値が5pmol/mg/min以下であったことから,有害事象の発現要因はDPD 欠損症と考えた。 -
低用量CDDP/5-FU 療法と併用放射線療法が奏効した胃癌術後再発の2例
33巻7号(2006);View Description Hide Description胃癌根治術後の再発例2例に対して,化学療法併用放射線治療を施行した。1例目は胃全摘術後の吻合部局所再発で経口抗癌剤の投与が不可能であった。治療後,再発腫瘍は著明に縮小し全粥摂取可能となりPR と判定した。2例目は胃全摘術後の傍大動脈リンパ節再発であり,治療終了後リンパ節は消失しCR と判定した。1例目にgrade 3の好中球減少を認めたが,治療終了後28か月の生存を得ることができた。2例目は有害事象なく外来にて経過観察中である。低用量CDDP/5-FU療法と放射線併用療法は,腹膜播種を伴わない胃癌術後再発に対して有用な治療法となり得ると思われた。 -
胃癌術後腹膜転移に対しTS-1+Paclitaxel(PTX)併用療法により長期生存が得られた1症例
33巻7号(2006);View Description Hide Description胃癌術後腹膜転移に対しTS-1+paclitaxel(PTX)投与により約3年の長期生存を得た症例を経験した。症例は62歳,女性。進行胃癌にて胃全摘,膵尾側,脾合併切除施行した。T3N2M0, StageIII B であった。術後5-FU+cisplatin(CDDP)による化学療法を施行し,外来通院中であった。術後3年経過中,便通異常を認め精査にて腹膜転移によるS 状結腸狭窄を指摘された。人工肛門造設後,TS-1+paclitaxelの投与を開始した。外来にて化学療法を続行し,症状が悪化するまで約26か月間,在宅療法が可能であった。grade1の脱毛を認める以外,重篤な有害事象も認めなかった。本療法は外来で施行可能であり,長期間投与可能であったことが生存に寄与した可能性が示唆された。 -
Imatinib Mesilate減量後も効果が持続した胃Gastrointestinal Stromal Tumor(GIST)の1例
33巻7号(2006);View Description Hide Description症例は78歳,女性。黒色便を契機に精査を行い胃GIST の肝転移と診断した。imatinib mesilate(以下:imatinib)400mg/日を開始したところ原発巣はPR, 転移巣はSD と効果を認めたが,grade 2の浮腫と白血球減少,貧血を認めた。投与量を1日200mg に減量したところ速やかに副作用の改善を認め,かつ原発巣,転移巣ともにPR と効果も持続している。imatinibの減量方法に関して文献的考察を加え報告する。 -
CarboplatinとPaclitaxelの併用療法が著効した腹膜悪性中皮腫の1例
33巻7号(2006);View Description Hide Description腹膜悪性中皮腫は,確立された治療方法のない予後不良な疾患とされている。症例は71歳の女性で,腹部膨満感,呼吸苦を主訴に2005年2月に当院外科を受診した。検査上,炎症所見の上昇を認めた。精査にて胸腹水の貯留および骨盤腔左側の腫瘤様陰影を認めた。また,PET により胸腹腔内に播種性病変を示唆する異常集積像を認めた。腹水のヒアルロン酸は高値で細胞診では分類不能な低分化癌の診断であったが,免疫組織化学染色により腹膜悪性中皮腫と診断された。cisplatin(CDDP)の腹腔内投与の後,2005年3月よりcarboplatin(CBDCA)およびpaclitaxel(PTX)静脈内投与を行った。化学療法施行後,胸腹水の消失およびPET での異常集積像の消失を認めた。腹膜悪性中皮腫は予後不良な疾患とされているが,自験例においては化学療法が極めて有効であった。積極的に化学療法を行うことにより,予後の改善が期待される。
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連載講座
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- 【外来化学療法】
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- 【治験管理室訪問】
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特別寄稿
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抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン(改訂)について
33巻7号(2006);View Description Hide Description1991年2月に厚生省(現厚生労働省)より「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(旧ガイドライン)が通知されてから,10年以上の歳月が経過した。この間,分子標的薬などの新規作用機序を有する薬剤の開発や海外臨床試験成績の積極的など抗悪性腫瘍薬を取り巻く状況に大きな変化が認められた。それらの状況の変化を踏まえて,今回,2005年11月にガイドラインの改訂を行った。主な改訂事項は,非小細胞肺癌,胃癌,大腸癌,乳癌など罹患数の多い癌腫では,延命効果を中心に評価する第III相試験の成績を承認申請時に提出しなければならないことの明記,改正GCP(Good Clinical Practice)の記載の追加,および海外臨床試験成績の利用についての記載追加などである。
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Journal Club
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用語解説
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