癌と化学療法
Volume 33, Issue 9, 2006
Volumes & issues:
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総説
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悪性中皮腫の診断と治療
33巻9号(2006);View Description Hide Description中皮腫は胸膜腔,腹膜腔,心膜腔を広く覆う中皮細胞に発生する悪性腫瘍で,まれに腹膜鞘状突起の遺残である精巣鞘膜にも発生する。20世紀後半の大量のアスベスト消費の影響で,先進諸国では1990年初頭より急増傾向がみられ,2020年ごろにピークを迎える。従来の中皮腫化学療法は悲観的であったが,抗中皮腫活性のある抗癌剤が登場し,再現性のある治療法が生まれている。中皮腫は治療に抵抗する予後不良の悪性腫瘍であるが,患者数の急増と新規葉酸拮抗薬の良好な抗中皮腫活性を背景に,新たなる治療法が検討されている。
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特集
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- 動注化学療法の進歩
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肝細胞癌
33巻9号(2006);View Description Hide Description肉眼的門脈内腫瘍栓を伴う症例や肝内多発症例といった高度進行肝細胞癌は,既存の局所治療に対し抵抗性であり,そのような症例に対し,しばしば動注化学療法が選択される。動注化学療法は,多くのレジメンの開発によって奏効率の向上が認められており,5-FU を機軸としたFP(5-FU+CDDP)療法やIFN 併用療法が注目されている。その他,動注用のCDDP 製剤も保険適応となり,その有用性が期待される。さらにカテーテルや皮下埋め込み式リザーバーなどの開発の進歩により,外来通院でも治療可能となったことから,その治療法を適応した報告は飛躍的に増加している。しかしながら,肝細胞癌に対する動注化学療法は併存する肝予備能に左右され,また標準的治療レジメンが確立されていないのが現状である。当科では,肉眼的門脈内腫瘍栓を伴う高度進行肝細胞癌症例に対し,IFN-α併用5-FU 動注化学療法を施行し,良好な成績を得ている。今後,進行肝細胞癌の治療体系において,重要な役割を担うことが期待される。 -
進行膵癌に対する持続動注化学療法
33巻9号(2006);View Description Hide Description切除不能進行膵癌に対し様々な療法が試みられてきたが十分な効果が認められているとは言い難い。そこで,われわれは奏効率よりもQOL を最も重視した治療法の一つの方法として膵動注化学療法を行ってきた。その結果,奏効率は17.3%, 平均生存期間は282.1±204.7日,生存期間中央値は243.0±84.7日であり,多くの症例で自宅での治療期間が維持できた。持続動注化学療法は生存期間の延長やQOL を考慮した新たな治療法の一つとして期待できると思われる。 -
消化器癌肝転移に対する肝動注化学療法
33巻9号(2006);View Description Hide Description消化器癌肝転移に対する肝動注化学療法は長い歴史をもち,優れた腫瘍縮小効果が確認されている。しかし,欧米における大腸癌肝転移に対する全身化学療法とのRCT で生存期間延長への寄与が確認できず,以後の全身化学療法の成績向上もあり,first-line治療からは除外されてきた。他方,肝動注化学療法のためのカテーテル留置技術は,本邦でIVR を利用する手技が独自に発展し,すでに高度なレベルで標準化されている。近年,欧米から全身化学療法との併用による優れた成績や生存期間延長を確認したRCT が報告され,再検討の機運が高まっている。良質な肝動注化学療法の臨床試験を行うためには適切なカテーテル留置技術が不可欠であり,これが可能な本邦の肝動注再評価における役割は極めて重要である。 -
子宮頸癌に対する動注化学療法の効果と問題点
33巻9号(2006);View Description Hide Description子宮頸癌に対する術前や放射線治療前,あるいは放射線治療との同時併用での化学療法の有用性の報告は多数なされている。特に本邦では,IVR の技術を利用した動注化学療法が各施設で行われており,その有効性が報告されている。しかし,randomized controlled trial(RCT)ではなく,治療の有効性を確認する治験であるため,そのエビデンスは確立されておらず今後のRCT が待たれる。自験例では,術前および放射線治療前に動注療法を施行した症例は49例で,Stage㈵b(bulky tumor>径3cm), II, III,IVa はそれぞれ15, 18, 11, 5例であった。生存期間の中央値は62か月,2年および5年生存率は 81.6, 70.6%であった。治療による grade 4 の障害はみられなかった。晩期の障害としては,8.2%に腸閉塞がみられた。動注療法でdownstage が得られ,手術が完遂した症例では生存率の改善もみられたが,効果が得られず手術が施行できなかった症例では,むしろ予後が不良になることが明らかであった。今後は,進行症例での治療法の検討が必要である。 -
頭頸部癌におけるDocetaxel, Cisplatin, 5-Fluorouracil による超選択的動注療法—特に舌癌症例・その他の方法と比較して—
33巻9号(2006);View Description Hide Description頭頸部癌の非切除治癒を目的として,第1日目にDOC 50〜60mg/m2とCDDP 50〜60mg/m2を大腿動脈経由で順行性に超選択的動注し,第2日目より5日間は5-FU 600〜750mg/m2/dayを持続点滴静注する化学療法(超選択的動注DCF療法)を施行している。2000年4月より現在までの頭頸部進行・再発癌の治療は70症例に達し,成績は追跡期間中央値1,017日で生存率92.7%, 臓器温存率90.1%であり本療法による合併症はほとんどない。今回は誌面の都合上,舌扁平上皮癌症例について報告する。症例は舌扁平上皮癌19例であり,全例に組織学的CR を得た。追跡期間中央値1,371日(45.7か月:471〜2,133日),Kaplan-Meier法による生存率は94.74%で,臓器温存率は88.42%であった。生存率,臓器保存率両者において,以前施行していたCDDP と5-FU の静注併用療法(5年生存率20%)ならびにCDDP のみ超選択的動注し5-FU を持続静注する療法(5年生存率28.5%)より超選択的動注DCF 療法のほうが優れた成績が得られた。副作用は白血球減少,脱毛などが主なものであった。放射線同時併用療法を施行した症例では,粘膜炎,皮膚炎が出現したが,いずれも可逆的変化であった。
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原著
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乳癌骨転移症例に対するPamidronate 90mg/日/月 使用症例における安全性の検討
33巻9号(2006);View Description Hide Descriptionpamidronate 90mg/日/3〜4週投与は,2004年11月に「乳癌溶骨性骨転移の治療」の適応が承認された。今回,当科におけるpamidronate90mg/日/4週投与症例を検討し,その安全性の評価を行った。2004年7月より12月までの同剤使用症例44例(他剤からの切り替え例37例,新規投与例7例)において,投与後1か月の腎機能,有害事象など安全性を中心に検討した。平均年齢55.4歳(36〜76歳), 単独使用1例(0.2%), 他療法併用として内分泌療法17例(放射線治療2例含む)(38.6%), 化学療法15例(放治1例,trastuzumab併用7例)(36.4%), 内分泌化学療法11例(放治2例)(25.0%)であった。有害事象は,発熱6例(13.6%), 骨痛3例(6.8%)などいずれもgrade1であり,腎機能障害は認められなかった。骨関連事象(骨折,手術など)も認めなかった。投与前,投与1か月後,投与3か月後の末梢血,生化学的検査を比較検討したところ,赤血球数の1か月後,血清カルシウムの3か月後の変動に有意差を認めたものの(p=0.03), その他のヘモグロビン,血小板数,BUN, 血清クレアチニンおよびカリウムには有意な変動は認められなかった。臨床的効果を痛みの軽減もしくは腫瘍マーカーの低下から判定したところ,効果ありは40例(91.0%), 効果なしは2例(4.5%), 不明2例(4.5%)であった。pamidronate 1回90mg 4週間隔投与は安全に行い得た。 -
当科におけるT4食道癌に対するChemoradiation Therapy(CRT)の治療成績
33巻9号(2006);View Description Hide DescriptionT 4食道癌手術症例の予後は悪く治療法の選択には慎重でなければならない。今回われわれは,T 4食道癌21例に対してchemoradiation therapy(CRT)を施行し,その効果および予後について検討した。奏効率は53%(CR 2例,PR 9例,NC,PD 10例)であり1年生存率は38%, 2年生存率は28%であった。また,mean survival time(MST)は282日であった。T 4食道癌に対する放射線化学療法は,これまでの手術療法と同等の治療成績を示したが,このことはCRT がT 4食道癌に対する標準治療に位置付けられることを示していると考えられた。 -
TS-1を前治療に有する進行再発胃癌患者に対するSecond-Line ChemotherapyとしてのPaclitaxel Weekly投与の有用性
33巻9号(2006);View Description Hide DescriptionTS-1を前治療に有する進行再発胃癌患者に対するsecond-line chemotherapyとしてのpaclitaxel weekly投与の有用性につき検討した。対象は進行再発胃癌患者17例を対象とした。奏効率は0%であったが,腹膜播種に対して腹水の減少を認めた2例にPR を認めた。生存期間中央値(MST)は495日であった。有害事象は,grade3の白血球減少を2例,11.8%に,脱毛を13例,76.5%に認めたが,全例外来での通院治療が可能であった。paclitaxel weekly投与はTS-1に続くsecondline chemotherapyとして有用であると思われた。 -
Gemcitabineの個別化最大継続可能量を考慮した進行膵癌に対する化学療法の検討
33巻9号(2006);View Description Hide Description進行膵癌に対しgemcitabine(GEM)を症例ごとに個別化最大継続可能量individual Maximum Repeatable Dose(iMRD)を決定して投与する方法(iMRD 法)の臨床的意義を検討した。初回GEM 500mg/m2投与後の血液学的有害事象が,CTC-gradeで「0」なら2回目の投与量は100mg/m2増量,「1」なら同量,「2」なら100mg/m2減量とし,3回目も2回目投与後のgradeで同様の増減を行い3回目の投与量をiMRD とし,以降毎週投与した。高齢者や何らかの合併症を有する初回化学療法施行転移性膵癌(n=16), 術後再発膵癌(n=2)計18例を対象とした。GEM の投与回数は平均15.0回で抗腫瘍効果はPR 2例(11.1%), SD 11例(61.1%), PD 5例(27.8%)で,腫瘍マーカー50%以上の低下は12例(66.7%)であった。初回治療例の生存期間中央値は262日,平均投与量は286mg/m2/wであった(標準法では242日,596mg/m2/ w)。有害事象はgrade3の白血球減少,好中球減少,血小板減少を各々5例,8例,3例に認め,grade4はなかった。iMRD法は標準法に匹敵する臨床的効果が期待される。 -
進行膵癌に対するGemcitabineとCDDP ・ 5-FU 療法の治療成績の比較検討
33巻9号(2006);View Description Hide Descriptiongemcitabine hydrochloride(GEM)は切除不能膵癌に対する第一選択薬剤と評価されている。今回,当科におけるGEM とCDDP ・ 5-FU 療法(FP 療法)の効果をretrospectiveに比較検討し,FP 療法がGEM のsecond-lineになり得るか否か評価した。対象はFP 群19例(II 1例,III 2例,IVa 2例,IVb 14例)とGEM 群32例(IVa 3例,IVb 29例)。奏効率はFP 群10.5%, GEM 群15.6%。50%平均生存期間はFP 群137日,GEM 群241日で統計的有意差は認めなかったが,IVb症例に限ればGEM 群で有意な延命効果が認められた。副作用ではFP 群で消化器症状が強かった。今回の検討からFP療法はGEM のsecond-lineとすることは困難と思われた。 -
進行,再発大腸癌に対する低用量CPT-11+5-FU/l-LV 療法の経験
33巻9号(2006);View Description Hide Description本邦における進行再発大腸癌に対する癌化学療法は欧米と比較して大きく遅れており,安全でかつ効果が期待できるregimenの作成は急務である。今回,RPMI regimenを基本としてこれに小容量CPT-11を加えたregimenを作成し,その抗腫瘍効果と安全性を検討した。28日間を1コースと定め,day1,8,15にCPT-11+ 5-FU/l-LV をweekly投与とし,第4週は休薬期間とした。それぞれのdoseは5-FU 500mg/m2, l-LV 200mg/m2, 初回投与ではCPT-11 60mg/m2, 前治療のある症例ではCPT-11 40mg/m2と設定した。前治療を有した11症例と前治療のない9例の計20症例を対象に行い,評価可能な19例中,CR 1例,PR 5例,SD 11例,PD 2例で奏効率31.6%であった。また,3か月以上のSD であったいわゆるprolonged NC は8例を得,奏効率31.6%と併せてclinical benefit は73.7%に認められた。さらにTTF の中央値は6.5か月であり,FOLFIRI のTTP 中央値6.7か月に遜色はなく,また現在のところMST は20.4か月と良好であった。一方,有害事象は好中球減少症,全身倦怠,消化器症状が主体であったが,grade3以上は30.0%と比較的軽微であった。以上,低用量CPT-11+5-FU/l-LV 療法は外来通院が可能であり患者のQOL に寄与し,かつ抗腫瘍効果,有害事象の両観点からも有効な治療法であることが示唆された。 -
初回再発の退形成性星細胞腫患者に対するTemozolomide単剤投与の有効性および安全性の検討—多施設共同第II相試験—
33巻9号(2006);View Description Hide Description初回再発の退形成性星細胞腫患者32名を対象としたtemozolomideの多施設共同第II相試験を行い,有効性と安全性を評価した。temozolomideは28日間を1クールとし,各クールの初めの5日間に150または200mg/m2/日を1日1回連日経口投与した。全登録例における奏効率は34%(11/32)(95%信頼区間18.6%〜53.2%)で,奏効例の内訳は著効3例,有効8例であった。不変以上であった症例の割合は91%(29/32)(95%信頼区間75.0%〜98.0%)であった。また,6か月無増悪生存率は40.6%, 無増悪生存期間の中央値は4.1か月であった。自他覚症状の有害事象においては便秘(50%), 悪心(25%)の発現頻度が高かったが,これらは便秘の1例を除いてすべて中等度以下の重症度で,標準的な緩下剤あるいは制吐剤でコントロール可能であった。主たる臨床検査値異常変動は,リンパ球数減少(50%,grade3以上25%),好中球数減少(47%,grade3以上6%),白血球数減少(38%,grade3以上3%),血小板数減少(31%,grade 3以上9%),GPT 増加(25%,grade 3以上3%)であった。temozolomideは初回再発の退形成性星細胞腫に対して優れた奏効率と忍容性を示した。
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症例
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乳房照射+腋窩リンパ節郭清にて経過観察中の潜在性乳癌の1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description症例は78歳,女性。左腋窩腫瘤を主訴に当科を受診した。触診では左腋窩に直径0.7cm 大の弾性硬の腫瘤を認めたものの,両側乳房に腫瘤は触知しなかった。マンモグラフィでは腫瘤陰影,石灰化を認めず,エコー,ヘリカルCT, dynamic-MRI においても両側乳房に異常を認めなかった。穿刺吸引細胞診ではclass㈸(腺癌)であった。全身検索行うも原発巣認めず,診断確定のため腫瘤摘出術を施行した。切除標本の免疫染色にてER, PgR, GCDFP-15, ラクトアルブミンが陽性であり,潜在性乳癌と診断した。治療は左腋窩リンパ節郭清+左乳房照射を行った。術後は補助療法として化学・内分泌療法を行い,現在まで2年10か月無再発生存中である。ヘリカルCT, dynamic-MRI でも原発巣同定不能な潜在性乳癌に対して,乳房照射+腋窩リンパ節郭清にて経過観察を施行した1例について若干の文献的考察を加えて報告する。 -
Trastuzumab/Paclitaxel併用療法にて速やかにCR が得られたHER 2過剰発現再発乳癌の1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description症例は57歳,女性。左乳癌(T 1 cN 1 M 0)術後2年目に局所再発と両側肺転移を来し,ホルモン療法を行うも6か月後に多発肝転移が出現しPD となった。anthracycline系薬剤による前治療歴を有しなかったがHER 2 3+とHER 2過剰発現を認めたため,trastuzumabとtaxane系薬剤であるpaclitaxelとの併用療法で速やかにCR が得られた。trastuzumab/paclitaxel併用療法はanthracycline系薬剤による前治療歴を有しないHER 2過剰発現再発乳癌のfirst-lineの治療法になり得ると考えられた。 -
Bi-Weekly TrastuzumabとPaclitaxelの併用が多発性肝転移を伴う進行乳癌に著効を示した1症例
33巻9号(2006);View Description Hide Description69歳,女性。左乳房に7×6cm 大の腫瘤があり,腋窩に腫大癒合したリンパ節を触知,CT で多発性肝転移を認めた(T 3N 2M 1b, StageIV)。穿刺吸引組織診では浸潤性乳管癌でありホルモンレセプターはER(−), PgR(−), Hercep Test score 3+であった。3か月間はtrastuzumabの毎週単独療法を試みたが,腫瘍マーカー,肝機能マーカーの上昇を認めたためpaclitaxel併用(weekly6, bi-weekly 9コース)と同時にtrastuzumabもbi-weeklyに変更した。4か月で腫瘍マーカーが陰性化,9か月で肝転移巣のCR が得られ,乳房腫瘤も触れなくなり,手術は回避された。以降はbi-weekly trastuzumabのみでCR が8か月以上維持されている。患者の利便性の観点からbi-weekly trastuzumabとpaclitaxelは有望な投与方法となり得る可能性が示唆された。 -
リンパ節再発に対してTrastuzumab+Paclitaxel療法が奏効しCR が得られた乳癌の2例
33巻9号(2006);View Description Hide Description今回,われわれは腋窩リンパ節再発,鎖骨上リンパ節再発に対してtrastuzumab+paclitaxelを投与し,CR となった乳癌の2例を経験したので報告する。症例1は52歳の女性。左乳癌にて2002年7月に乳房切除術を施行した(硬癌,2.2cm, 組織学的異型度grade3, ly(+),v(+), n(−)(0/11), ER(−), PgR(−), HER 2/neu(3+))。同年12月腋窩リンパ節再発を認め,2003年1月より,AC 療法を4サイクル施行したがNC であった。同年5月よりtrastuzumab+paclitaxelを投与し,12週目にCR となり9月までで治療を終了した。以後,2006年2月現在,CR を維持している。症例2は59歳の女性。右乳癌にて2002年5月に乳房切除術を施行した(硬癌,1.8cm, 組織学的異型度grade2, ly(+),v(+), n(−)(0/5), ER(+), PgR(±), HER 2/neu(3+))。術後補助療法として,tamoxifenを服用していたが,2004年10月,右鎖骨上リンパ節に転移を認めた。exemestaneを投与したが奏効せず,2005年3月よりtrastuzumab+paclitaxelを投与したところ16週でCR となった。2006年2月現在,再々発を認めていない。 -
TS-1とTrastuzumabとの併用療法が奏効した多剤耐性再発乳癌の1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description術後多剤耐性の再発乳癌に対してTS-1とtrastuzumabの併用投与により,多発骨転移が著明に改善した症例を経験した。前治療としてtaxane系抗癌剤あるいはvinorelbineとtrastuzumabの併用治療を行ったが,病巣の増悪傾向を認めたためTS-1とtrastuzumabの併用療法に変更した。TS-1を100mg/day(分2)で2週間経口投与し1週間休薬,trastuzumabは2mg/kg(weekly)を4週投与し1週休薬するレジメで開始したところ,3クール終了時には腫瘍マーカーが正常値となり骨転移巣も著明に改善した。TS-1とtrastuzumabの併用療法は多剤耐性の再発乳癌に対し有効な治療法となり得ると考えられた。 -
TS-1+Irinotecan併用療法により17か月間の長期生存が得られている非治癒切除胃癌の1例
33巻9号(2006);View Description Hide DescriptionTS-1+irinotecan(CPT-11)併用療法を行い,17か月間の長期生存が得られている非治癒切除胃癌症例を経験したので報告する。症例は56歳,女性。2004年6月3日,胃癌に対して胃全摘術を施行したが,著明なリンパ節転移のため非治癒切除になった。術後,TS-1+CPT-11併用療法を開始したが,1コース目にgrade 4の好中球減少とgrade 3の嘔気,食欲不振が出現したため2コース目からは減量して継続した。その後重篤な有害事象は出現せず,5コース終了後には標的病変であるリンパ節転移に対してPR となり,QOL も著明に改善した。TS-1+CPT-11併用療法は粘り強く継続することで長期投与,長期生存が期待できる治療法であると思われた。 -
Paclitaxel+5-FU 投与が有効であった腹膜播種を伴う進行胃癌の1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description腹膜播種を伴う進行胃癌に対し,paclitaxel(PTX)+5-FU 投与を施行し長期生存を得た1例を経験したので報告する。症例は41歳,女性。腹膜播種による結腸浸潤,膀胱浸潤を伴う4型胃癌の診断にて術前化学療法を行った。投与法は5-FU 600mg/ body/day持続静注,day1〜5およびPTX 90mg/body/day, day 8, 15, 22を28日1コースとした。4コース終了後奏効度cPR と診断し,胃全摘術を施行した。術後も同じregimenにて8コース施行した。この間新病変の出現,腹膜播種進行もなく,副作用も軽度の吐気,食思不振のみであった。手術後経口摂取可能となり,術後の化学療法は外来通院で行いQOL を維持できた。術後12か月stable diseaseを保っていたが,治療開始18か月後より癌性腹膜炎が増悪し19か月目に永眠した。本治療法は進行胃癌に対し有用な治療法の一つであると思われた。 -
CPT-11+Low-Dose 5-FU+CDDP 療法が著効した多発肝転移を有する噴門部胃癌の1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description症例は53歳,男性で多発肝転移を伴う3型噴門部胃癌を呈していた。CPT-11(60mg/body,day1and 8)+low-dose 5-FU+CDDP(5-FU 500mg/body/day,and CDDP 5mg/body/day, day 1〜5 and 8〜12, continuous infusion, every 3 weeks)からなる併用化学療法を施行した。最初の2コースは入院で投与し,その後は外来治療で行った。重篤な副作用なく7コースの投与の結果,原発巣,肝転移巣ともに著効し完全消退が得られた。その後TS-1+CPT-11からなる化学療法を継続しているが6か月間のCR を維持している。CPT-11/low-dose 5-FU+CDDP は進行胃癌に対する効果的なレジメンになり得る。 -
TS-1が奏効し治癒切除が可能となったN 3胃癌の1例
33巻9号(2006);View Description Hide DescriptionTS-1が奏効し切除し得た進行胃癌の1例を経験したので報告する。症例は64歳,男性。胃内視鏡検査で進行胃癌と診断された。腹部CT で胃前庭部の壁肥厚と胃,膵,大動脈周囲にリンパ節腫大を認めた。TS-1 120mg/日(4週間内服,2週間休薬)を3コース施行した。胃内視鏡検査で胃腫瘍はしだいに縮小し,腹部CT 検査では膵,大動脈周囲のリンパ節は指摘できなくなった。治癒切除が可能と判断し,D 3郭清を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織検査では,por,pT 2, pMP and pap, pT 1, pSM 2, pPM(−), pDM(−), pN 1, pStageII, 根治度A であった。術前化学療法としてTS-1の有効性が示唆された。 -
TS-1/CDDP 併用療法が奏効した癌性腹膜炎を伴う進行胃癌の1手術例
33巻9号(2006);View Description Hide Description患者は40歳,女性。下腹部痛にて来院,精査にて卵巣転移,癌性腹水を伴ったStageIV胃癌と判明した。TS-1 100mg/body/日(3週投薬2週休薬), CDDP 60mg/body(第8日)を1サイクルとする化学療法を3サイクル施行した。腹水の消失,卵巣腫瘍径の縮小などの抗腫瘍効果を認め,胃全摘術,回盲部切除術,胆嚢摘出術および広汎子宮全摘術を施行した。洗浄細胞診は陰性であった。化学療法の組織学的効果はGrade2であった。術後TS-1を再開,現在17サイクル目であるが,術後2年8か月を経て再燃は認めていない。TS-1/CDDP 併用療法は胃癌に対して高い奏効率が報告されており,本症例も著効例であった。今後,長期にわたる安全で効果的なTS-1およびCDDP の投与法も検討していきたい。 -
膵癌膵全摘後の多発性肝転移に対しGemcitabineとUFT 併用療法が奏効した1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description症例は69歳,男性。2002年3月膵体部癌の診断で膵全摘を実施した。術後2か月目に多発性肝転移,腹腔内再発およびCA19-9の上昇を認めた。GEM+UFT 療法を外来で実施。投与法はGEM 1,000mg/body/biweeklyに加えUFT 300mgを連日投与した。投与3か月後にCT 上肝転移は著明に縮小し,CA19-9も低下した。患者は経過中の大部分を自宅で過ごせ,通常に就業もでき患者のQOL は維持できた。有害事象は一過性の白血球低下(grade2)のみであった。その後,2003年8月(再発後15か月)に腹膜播種で死亡した。今回の経験から,GEM+UFT 療法は膵癌術後肝転移の治療に有効であると考えられた。 -
切除不能肝・大動脈周囲リンパ節転移巣を伴った大腸癌に対し原発巣切除後にTS-1/CPT-11併用療法が有効であった1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description症例は66歳,男性。前医で下行結腸ポリープの内視鏡的摘出術を行い,腺腫内癌・断端陽性であった。4年間未治療であったが,下腹部痛が出現し,精査にて下行結腸癌,多発肝転移,大動脈周囲リンパ節転移と診断した。左結腸切除術を施行した。病理検査で中分化型腺癌,stageIVであった。術後5-FU/LV 療法を開始したが,3クール後に高度の食欲不振が出現したため中止した。TS-1 100mg/dayに変更したが,再び食欲不振が出現し1週間で中止となった。TS-1を80mg/dayと減量し3週連日投与1週休薬で経口投与し,irinotecan(CPT-11)65mg/m2をday1,15に点滴投与した。4週を1クールとして10クールを外来で1年間繰り返した。治療後,大動脈周囲リンパ節腫脹は著明に縮小した。経過中grade2以上の有害事象は認めなかった。TS-1/CPT-11療法は,外来で安全に継続でき,今後進行・再発大腸癌に対する有用な外来化学療法になり得ると思われた。 -
TS-1が著効した直腸癌多発肝転移の1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description症例は63歳,女性。8か月前より排便後疼痛を自覚,しだいに便秘,腹部膨満感出現したため近医受診,直腸癌を疑われ精査加療目的で当科を受診した。精査の結果,多発肝転移を伴う下部直腸癌と診断した。術前CEA 70.0ng/ml, CA19-9>5,000 U/ml と異常高値であった。癌による狭窄が強いため腸閉塞予防目的で低位前方切除のみ施行し,肝転移に対して術後34日目より外来でTS-1 100mg/dayを4週投与2週休薬を1コースとして開始した。1コース終了後CEA 3.3ng/ml,CA19-9 15U/ml と著明に減少し正常範囲になった。grade2の下痢のため3コース目からTS-1を80mg/dayに減量した。5コース終了後,CEA 4.0ng/ml, CA19-9 4U/ml と正常範囲を維持し,CT 検査では肝転移は著明に縮小した。現在も良好なQOL を保ちながら外来で治療継続中である。 -
術前放射線化学療法にて組織学的CR が得られた他臓器浸潤直腸癌の1治験例
33巻9号(2006);View Description Hide Description症例は49歳の男性。近医で穿孔性直腸癌の診断にて腹腔内ドレナージ術と人工肛門造設術を行い,腫瘍の切除を目的に紹介入院となった。腹部CT 検査所見で前立腺と仙骨への腫瘍の浸潤が疑われたため,1日2Gy, 1週間に5回,合計50Gyの後方1門の放射線照射と隔日のCDDP 10mg+5-FU 500mg の投与を行ったところ腫瘍が縮小したため,手術を施行した。術中に仙骨と膀胱への腫瘍の浸潤が疑われ,骨盤内臓全摘術を行った。切除標本上,腫瘍は完全消失し,組織学的にGrade 3と評価された。術後5年6か月を経過した現在,直腸癌の再発は認められない。高度進行直腸癌症例のなかには放射線化学療法に高感受性の症例が存在する。術前の放射線化学療法は腫瘍局所の制御に有用と考えられた。 -
低用量CPT-11+5'-DFUR 併用療法により長期PR が得られた直腸癌局所再発の1例
33巻9号(2006);View Description Hide Description症例は68歳,男性。2001年5月,腹会陰式直腸切断術を施行。病理診断は高分化型腺癌,a 2, n 1(+), H 0, P 0,M(−), stageIIIa。外来経過観察中の2002年2月に局所再発を認めた。同年3月から低用量CPT-11+5'-DFUR の併用療法を開始した。CPT-11 80mg/bodyを隔週で静脈内投与し,5'-DFUR 800mg/bodyをday3〜7で経口投与した。開始直後から好中球減少がみられたため,CPT-11を60mg/bodyへ減量して継続した。開始から4か月後,CEA は正常化し治療を一時終了した。一時終了から3か月後再びCEA の上昇がみられたため,同レジメンで治療を再開した。治療再開から6か月後,CEAは再び正常化し,CTで腫瘍は著明に縮小していた(PR)。以後5'-DFUR 800mg/body経口投与のみに治療を変更した。現在PR から2年以上経過しているが,腫瘍の増大および他部位の再発は認めていない。 -
中心静脈栄養カテーテルの感染を契機に発見された広範な血栓性静脈炎の2例
33巻9号(2006);View Description Hide Descriptionがん患者は,時に中心静脈カテーテル(CVC)管理下で化学療法治療を受けるが,その血液学的・免疫学的な状態から,カテーテルに関連した血栓症および感染症の大きなリスクを有している。近年,CVC 関連感染症に続発する血栓症が注目されており,その予防対策はがんの化学療法を安全に行う上で必須である。われわれは,CVC 関連感染性血栓症を併発した2例について,その経過と原因について後ろ向きに検討した。いずれの症例においても,悪性リンパ腫の化学療法後に好中球減少性発熱を認め,菌血症の徴候を認めた。その後,カテーテル挿入部周囲の圧痛を伴う皮下腫脹を来し,画像検査で内頸静脈を中心とした広範な血栓症が確認された。いずれの症例の血栓も広範であり,血栓内部に空洞を認めた。対側の鎖骨下静脈には壁在血栓は認めず,カテーテルに関連してまず血栓が形成され,カテーテル感染に至ったことが示唆された。
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連載講座
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- 【外来化学療法】
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- 【治験管理室訪問】
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NTT 東日本関東病院 治験管理室・治験センター—第 I 相試験から製造販売後臨床試験までの創薬・育薬の一元化—
33巻9号(2006);View Description Hide Description
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新薬の紹介
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進行胆道癌に対してGemcitabineが有効である
33巻9号(2006);View Description Hide Descriptiongemcitabineは日本イーライリリー社によってわが国に導入されたnucleoside系抗癌剤であり,すでに非小細胞肺癌と膵癌治療薬として承認され,使用されてきた。最近実施された進行胆道癌に対して本剤単独の有効性と安全性が確認され,gemcitabineは進行胆道癌治療薬としても承認されるに至った。このような難治性癌に有効な薬物が登場したことの意義は誠に大きいと考えられる。
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Journal Club
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用語解説
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