Volume 33,
Issue 10,
2006
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総説
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癌と化学療法 33巻10号, 1373-1379 (2006);
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癌分子標的治療薬の開発が急速に進み,現在までに一部の癌腫ではその標準治療の一翼を担うようになった。これらの薬剤は当初予想されたものとは異なる臨床効果,副作用,耐性化が明らかとなり,分子標的の検証や至適投与方法の決定などが臨床的な問題となっている。これらの問題点を解決する手段として,臨床検体によるpharmacodynamics, pharmacogenomics の手法を用いたPOP(proof of principle)研究が必須となり,同時に新規のバイオマーカーの探索が行われている。一方,高額な開発費,医療費が新たな問題として議論されている。
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特集
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皮膚科悪性腫瘍の治療の進歩
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癌と化学療法 33巻10号, 1380-1385 (2006);
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本邦における発生頻度増加の対象となる皮膚悪性腫瘍は有棘細胞癌,基底細胞癌,悪性黒色腫である。また,日光角化症も癌前駆症ないし早期病変として参考資料とした。全国アンケート(94施設)により最も発生頻度の高いものは基底細胞癌であり,全悪性腫瘍の50%近くを占めている。次いで有棘細胞癌の31%, 悪性黒色腫の21%である。また,各腫瘍の年度別発生数は増加しているが,その増加率をみると1987年の発生数と2001年の発生数の比較増加率は基底細胞癌で約1.5倍,有棘細胞癌や悪性黒色腫では1.7倍となっている。これらの増加因子について,厚生労働省がん研究助成金による皮膚悪性腫瘍研究班の依頼施設(19〜22施設)により,1987年からの詳細なる統計調査から増加因子を検討した。これらによると多くの因子があげられたが,最も重要な因子は紫外線であると結論した。
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癌と化学療法 33巻10号, 1386-1391 (2006);
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メラノーマは悪性度が高く,治療抵抗性の難治な腫瘍として知られる。本腫瘍に関しては近年,TNM 分類,病期分類の根本的改定,欧米各国からのevidence-based medicineに則った診療ガイドラインの提案など,大きな動きがみられる。従来,広範切除が強調されていた本腫瘍原発巣の切除マージンについては,多数のランダム化比較試験の結果に基づいて,縮小手術の方向性が定着した。このことは,センチネルリンパ節生検の導入と併せて,患者のQOL 保持に大きく寄与している。術後補助療法に関してはinterferon-αの大量,長期投与の意義が検討されている。進行期患者に対する化学療法,生物療法に今のところ大きな効果は期待できないが,免疫療法,分子標的療法を含めて,いくつかの興味深い動きがみられている。
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癌と化学療法 33巻10号, 1392-1397 (2006);
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有棘細胞癌は代表的な皮膚悪性腫瘍の一つであり,最近は紫外線照射の影響もあって,発生数は増加傾向にある。わが国における有棘細胞癌の5年生存率は85〜80%程度で良好であるが,特に原発腫瘍の神経周囲浸潤と所属リンパ節転移が予後不良因子である。治療の中心は外科療法で,十分な手術が望まれるが,近年,他の多くの癌種と同様,センチネルリンパ節生検を導入し,所属リンパ節への微小転移の早期発見の試みもなされつつある。治療成績向上のために,新規抗癌剤の開発を含め系統的な治療指針の確立が必要である。
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癌と化学療法 33巻10号, 1398-1403 (2006);
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基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)は最も罹患率の高い皮膚癌であり,転移は非常にまれであるが局所侵襲性が大きいという生物学的特性を有する。その診断においては非侵襲的な検査法としてdermoscopyが近年導入され,臨床診断精度の向上に寄与している。BCC の治療は外科的切除が第一選択であるが,欧米では免疫調節薬であるimiquimodの外用療法やphotodynamic therapyといった非外科的治療に関する臨床試験が盛んに行われており,それらは本邦にも導入されつつある。欧米においては,EBM のプロセスに則ったBCC 診療ガイドラインがすでに整備されているが,その臨床的事項や医療制度の違いから本邦独自のガイドラインの必要性が求められており,現在作成作業が進行中である。
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癌と化学療法 33巻10号, 1404-1407 (2006);
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乳房外パジェット病の治療は転移の有無によって大きく異なる。大部分を占める表皮内病変のみの例では術前に腫瘍の拡がりを正確に把握し,切除マージンを小さくすることが重要である。手術療法が困難な例では放射線やPDT などの手術以外の治療も選択肢の一つとなる。一方,転移を伴う例では多剤併用化学療法に有効例がみられるものの生命予後を改善することは困難であり,分子標的治療薬やホルモン療法といった新しい治療法が期待されている。
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原著
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癌と化学療法 33巻10号, 1411-1415 (2006);
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HER 2過剰発現を呈する進行乳癌症例21例に対し,docetaxel 70mg/m2を3週間隔とtrastuzumab初回投与4mg/kg, 2回目以降は2mg/kg を1週間隔の併用療法を行い,3週を1コースとして4コース投与後手術を行うこととし,組織学的効果,抗腫瘍効果,乳房温存術施行率および安全性を検討した。手術を終了している19例中,組織学的効果は21%,抗腫瘍効果は,CR 5例,PR 12例,SD 2例,PD 0例の90%であった。grade3以上の有害事象として白血球減少が48%,好中球減少が67%,ヘモグロビン減少が5%,発熱性好中球減少が10%であった。その他のgrade3以上の非血液毒性は発現しなかった。docetaxelとtrastuzumabの併用療法は海外試験の組織学的効果と遜色ない結果が得られた。また,高い抗腫瘍効果を示し,副作用も重篤なものは認められず忍容可能であったことから,今後の進行乳癌の治療の一つとして期待される。
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癌と化学療法 33巻10号, 1417-1422 (2006);
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リンパ節転移陽性乳癌に対する術後補助化学療法としてのadriamycin plus cyclophosphamide(AC)followed by weekly paclitaxel(wT)療法の忍容性を一般の中小病院を含む多施設共同研究にて検証した。AC は初回投与量40mg/m2,400mg/m2(A40C400群33例)もしくは50mg/m2, 500mg/m2(A50C500群14例)で開始し,3週ごとに4コース行った。副作用などを考慮し,主治医の判断にて2コース目以降からはAC の投与量の増量を可能とした。両群ともにAC 終了3週間後にpaclitaxelを80mg/m2 1時間点滴静注。1週間ごとに3回投与し1週間は休薬した。4コース(12回投与)まで行った。AC の毒性はA50C500群でgrade 3〜4の好中球減少の発現率が42.9%と高値であったが発熱性好中球減少は1例も認めなかった。wT の毒性も軽微で,すべてgrade3以下であった。治療完遂率はA40C400群で87.9%,A50C500群で85.7%であった。相対用量強度の平均値はA40C400群のAC が98.8%, wT が90.7%, A50C500群のAC が91.3%, wT が89.2%であった。本療法は癌治療を専門とする中核病院でなくとも外来にて安全に行える治療法であると考えられた。
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癌と化学療法 33巻10号, 1423-1429 (2006);
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近畿地区51施設において,リンパ節転移陽性乳癌に対する術後補助療法として,cyclophosphamide(CPA)+adriamycin(ADM)+5-fluorouracil(5-FU)(CAF 療法)とuracil-tegafur(UFT)+tamoxifen(TAM)(UFT+TAM療法)との比較試験を行った。対象はStage I, II, IIIa かつリンパ節転移4個以上の乳癌で,乳房切除術が行われた症例とした。術後4週以内から,CAF群にはCPA 100mg:1〜14日投薬,15〜28日休薬,ADM 20mg/m2:1日,8日,5-FU 300mg/m2:1日,8日を6サイクル,UFT+TAM 群にはUFT 400mg/日およびTAM 20mg/日が3年間投与された。1991年9月から1995年2月までの登録期間に,CAF 群,UFT+TAM 群ともに82例が登録された。5年生存率は,CAF 群66.2%, UFT+TAM 群82.1%(p=0.04, logrank test), 5年無再発生存率は,CAF 群46.3%, UFT+TAM 群61.8%(p=0.07, logrank test)でUFT+TAM 群が良好であった。また,有害事象に関しては白血球減少,食欲不振,悪心・嘔吐,全身倦怠,脱毛の発現頻度がCAF 群に比べUFT+TAM群で低かった。UFT+TAM 長期投与の有用性が示唆され,高齢者など標準的化学療法が施行できない症例の治療選択肢になり得ると考えられた。
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癌と化学療法 33巻10号, 1431-1435 (2006);
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当科においてcapecitabineの投与を行った進行・再発乳癌29例を対象に治療効果について検討した。患者背景:年齢41〜89歳(中央値57歳)。進行乳癌5例,再発乳癌24例。PS≦2:18例,3≦:11例。ER and/or PgR 陽性率86%。多臓器転移22例,骨転移22例,リンパ節転移12例,皮膚転移11例,肺転移10例。化学療法既治療例93%,内分泌療法既治療例90%。治療効果:CR 1例,PR 5例,long SD 5例,SD 10例,PD 8例で,奏効率20.7%, clinical benefit rate 37.9%。TTP は1〜15か月(中央値4か月), 生存期間は2〜23か月(中央値12か月)。奏効例,long SD 例は無効例に比しTTP,生存期間とも有意に延長した。また,6か月以上のTTP を認めた症例では有意に生存期間が良好であった。TTP に及ぼす因子として,clinical benefit(ありvsなし),PS(≦2vs 3≦)が独立した有意な因子であった。capecitabineは6か月以上の長期にわたり治療継続可能な症例において生存期間の延長が期待される。
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癌と化学療法 33巻10号, 1437-1440 (2006);
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手術不能進行非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)症例に対する2次治療以降の抗癌化学療法におけるgefitinib(GEF)の有用性の検討を行った。病理学的確定診断を得た手術不能進行NSCLC で,2次治療以上の抗癌化学療法を施行した症例70例(全例日本人:GEF 群33例,非GEF 群37例)を対象とした。2次治療の抗癌化学療法開始後でみたGEF 群の生存曲線は,MST 527日,1年生存率59%, 2年生存率26%であり,非GEF 群のMST 175日,1年生存率21%,2年生存率16%に比較し,有意に生存期間が延長していた(HR=1.93, 95%信頼区間(CI)1.15〜3.53,p=0.014)。当院での限られた臨床経験ではあるが,GEF 群は非喫煙者,女性,腺癌が多く含まれているものの,非GEF 群より生存期間が有意に延長していた。GEFは,手術不能進行NSCLC の生存期間を改善し得る抗癌化学療法薬であることが示唆された。
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癌と化学療法 33巻10号, 1441-1444 (2006);
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進行直腸癌に対して様々な集学的治療が試みられ,特に術前の放射線化学療法(CRT)の効果が報告されている。A 2以深またはN 1直腸癌と診断し,局所制御を目的としたCRT を行った連続76例のうち,術前死亡2例,手術拒否2例を除いた72例に手術を行い,病理組織学的効果について検討した。CRT は骨盤内照射45Gy,5'-deoxy-5-fluorouridine(doxifluridine,5'-DFUR)800mg/dayの内服または5-fluorouracil(5-FU)3,500〜4,500mg/week の持続静注を施行した。病理学的効果は大腸癌取扱い規約に準じてGrade 0よりGrade 3に分類した。切除した摘出標本の病理組織学的検索からはGrade0は認めず,Grade1a, 1b, 2, 3はそれぞれ25.0%,38.9%, 27.8%, 2.8%に認めた。Grade1b以上の効果をresponseありとした場合の奏効率は75.0%であった。術後の全生存率は1,3,5年でそれぞれ90.7%,73.9%,61.6%であった。術前診断と比し35.8%にdownstageを認めた。downstage群の5年生存率は90.9%でdownstageのない群(50.1%)に比し有意に良好であった(p=0.0416)。進行直腸癌に対するCRT はresponseが良好でdownstageが期待でき,局所制御に有用な方法と思われた。術前病期診断の精度の向上による適切な症例の選択が重要である。直腸癌の術式の標準化に加え,大規模臨床試験によるCRT の日本人における有用性の再評価も不可欠である。
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癌と化学療法 33巻10号, 1445-1452 (2006);
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進行卵巣癌の初回標準化学療法はplatinum 製剤,taxane化合物の併用療法とされている。しかし,5年生存率は依然として40%以下であり,70〜80%の症例に再発が認められており,再発例に対するsecond-line化学療法は確立されているとはいえない。今回,再発・不応上皮性卵巣癌に対してweekly paclitaxel(TXL)+carboplatin(CBDCA)併用化学療法のphase㈵ studyを実施した。対象は組織学的に上皮性卵巣悪性腫瘍の確定診断が得られている症例で,初回化学療法後の再発・不応症例でTXL60〜100mg/m2までdose escalationを行い,一方CBDCA はAUC=2で固定とした。投与スケジュールはTXL 投与前に規定の前投薬を実施し,TXL, CBDCA の順にともに1時間以上かけて静脈投与した。これをday1, 8, 15日に投与し4週間を1コースとした。適格例14例中の血液毒性はgrade4の出現は認めなかったが,白血球減少,好中球減少とも発生し白血球減少はstep 4, step 5の全例がgarde 3であった。血小板減少症はgrade 2が1例のみと低率であった。非血液毒性は末梢神経障害,関節痛・筋肉痛を認めるがgrade3以上の発現は認められなかった。評価可能対象症例12例の効果判定は奏効率41.7%(5/12)であった。また,TXL 80mg 以上の症例奏効率は66.7%(4/6)であった。
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症例
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癌と化学療法 33巻10号, 1453-1456 (2006);
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今回われわれは下肢不自由な73歳,高齢女性の両側乳癌症例に対し,capecitabine(2,400mg/day21日間投与7日間休薬)とtrastuzumab(2mg/kg weekly)同時併用を施行した。肺転移に対し著効(CR)を認め,CEA は46.4ng/mlより0.6ng/ml と正常化した。腫瘍からの出血のコントロールのために左乳房切除術を施行したが,薬剤による有害事象は認められなかった。capecitabineとtrastuzumabとの併用療法は,高いQOL を維持できる療法として期待される。
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癌と化学療法 33巻10号, 1457-1460 (2006);
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症例は74歳,男性。右上腹部痛があり精査の結果,3型胃癌が判明した。非治癒因子として第3群リンパ節転移陽性(N 3), 肝転移陽性(H 1)が認められたため,治癒切除は困難と判断し減量手術を前提にTS-1/CPT-11併用による術前化学療法を行った。partial response(PR)の腫瘍縮小効果が認められ,幽門側胃切除術(D 0,根治度C)を施行した。術後化学療法はTS-1, paclitaxelを用いて,2年3か月もの長期生存が得られ,quality of life(QOL)を損なうことなく外来での治療を継続している。減量手術は現段階においてエビデンスは得られていないが,術前および術後化学療法と併用する治療戦略は進行胃癌治療の一つの選択肢になり得ると考えられ報告する。
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癌と化学療法 33巻10号, 1461-1463 (2006);
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65歳,男性。3型進行胃癌に対し幽門側胃切除術を施行した。大動脈周囲リンパ節への転移を認め,fT 2N 3P 0H 0M 1(LYM)CY 0, StageIV, 根治度C であった。術後TS-1の投与を行ったが,10か月後に転移リンパ節の増大があり,PD と判断した。二次化学療法として,paclitaxel (PTX)/doxifluridine(5'-DFUR)併用化学療法を開始した。PTX 80mg/m2でday1, 8に投与,5'-DFUR は600mg/m2/dayの14日間連日投与,7日間の休薬を行い,21日間を1コースとした。2コース終了時に病変の縮小を認め,以後7コース継続し病変はPR であった。副作用は特に認めず,現在投与終了から1年経過し,無治療で経過観察中であるが再燃の徴候は認めていない。PTX/5'-DFUR 併用化学療法は,進行胃癌に対する有望な治療法の一つになる可能性があると考えられた。
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癌と化学療法 33巻10号, 1465-1468 (2006);
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症例:75歳,男性。2004年6月吐血で入院。胃内視鏡で噴門部直下から前庭部まで小弯側を中心に2/3周を占める3型胃癌で,肝臓両葉に径5cm の複数の転移巣を認め,切除不能と判断しTS-1/CDDP 療法を開始した。4コースの時点で原発巣は1/3周,肝転移巣は径1.5cm まで縮小。投与開始4か月後胃切除,肝転移巣は焼灼した。術後15か月無再発生存中である。TS-1/CDDP の有効例を経験したので報告した。
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癌と化学療法 33巻10号, 1469-1471 (2006);
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遠隔転移を伴う進行大腸癌症例に対しtegafur/uracil(UFT)にfolinate(Leucovorin:LV)を併用するtegafur/uracil/folinate(UFT/LV)療法を施行し,有効であった2例を報告する。UFT は体表面積が1.20m2未満:300mg/日,1.20m2以上1.70m2未満:400mg/日,1.70m2以上:500mg/日,LV は75mg/日を1日3回に分けて,8時間ごとに経口投与した。28日間連日経口投与し,7日間休薬して1クールとした。この治療を病変が増悪しないかぎり,患者が中止を希望するか重篤な副作用がみられるまで繰り返し行った。症例1:79歳,男性。S 状結腸癌手術後の肺転移でperformance status(PS)は3であった。2クール終了後に肺転移病変の50%以上の縮小が得られた。症例2:61歳,男性。下行結腸癌手術後の肝転移であった。2クール終了後に肝転移病変の50%以上の縮小と腫瘍マーカーの改善を認め,8クール終了後にさらなる改善を認めた。本療法による重篤な副作用はみられず,PS が不良な患者にも有効で安全な治療法であることが推測された。
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癌と化学療法 33巻10号, 1473-1475 (2006);
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症例は56歳,男性。1999年7月腹痛を主訴に当院を受診。注腸透視で直腸(Rs)に長径5cm の全周性狭窄を伴う2型腫瘍を認め,CT で肝両葉に7個の多発性転移を認めた。同年8月に低位前方切除術,肝外側区域切除術ならびに尾状葉を含む肝部分切除術を施行した。術後2か月目のCT でS 6に再発腫瘍2個を認め,肝動注化学療法(ADM 30mg+5-FU 1,000mg+MMC 16mg)を2000年7月まで合計6回施行した。2000年10月のCT でCR と判断し,以後UFT 内服を(5年)継続した。肝動注終了後5年経過した2005年10月のCT でも再発の所見はなく,現在,補助療法なしに経過観察中である。H 3であっても,大腸癌多発性肝転移に対して,積極的な切除と術後肝動注を組み合わせる治療戦略は有効であると考えられた。
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癌と化学療法 33巻10号, 1481-1483 (2006);
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44歳,男性。RaRbの進行直腸癌でCT, MRI にて膀胱,精嚢への浸潤および直腸傍リンパ節(251)転移を認め,臨床病期はStageⅢa(Ai(膀胱,精嚢), N 1, M 0)と診断し,術前放射線化学療法を施行した。レジメンは放射線30Gy,UFT+LV(28日投与1週休薬)を投与した。照射終了後,PR(60%縮小)が得られ,骨盤内臓全摘術を施行した。病理組織学所見は高分化腺癌,Ai(腹膜), n(−), ly0, v 0, StageⅢa,膀胱,精嚢,前立腺への癌浸潤は認めず組織学的効果判定Grade2であった。局所進行下部直腸癌に対する術前放射線化学療法は有効な治療法であり,特に本レジメンは副作用がなく,外来通院可能であり患者のQOL によいレジメンであった。
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癌と化学療法 33巻10号, 1485-1488 (2006);
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症例は67歳,女性。2004年5月に直腸癌,肝転移にて他院で低位前方切除術のみが行われた。術後2か月目に腫瘍マーカーの上昇とともに,肝病巣の増大を認め当院に入院となった。CT 画像上肝S8中心に45×35mm の肝転移を認めた。2004年7月にdegradable starch microspheres(DSM)にirinotecan(CPT-11)とmitomycin C(MMC)を加えた塞栓療法を行い,続いて5-FU 1,500mg 週1回の動注療法を34回施行した。経過中腫瘍マーカーは急激に正常化し,2005年4月に施行した画像検査にて肝腫瘍は縮小し,石灰化巣となっていたため,この時点で治療を中止し経過観察を行うこととした。治療中止後12か月経過観察した現在再発所見を認めない。CPT-11, MMC をDSM に混ぜて動注する治療は,大腸癌肝転移の治療法として考慮すべきと思われる。
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癌と化学療法 33巻10号, 1489-1492 (2006);
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症例は68歳の女性で,鎖骨上窩リンパ節生検で原発不明腺癌と診断,呼吸困難と咳嗽の増悪のため当科に入院となった。多発肺転移,悪性胸水と診断された。血清CA19-9, DUPAN-2の著増から,膵癌に準じた治療を行うこととした。gemcitabineの単剤投与を開始したところ,症状の改善,腫瘍マーカーの低下,肺転移とリンパ節の縮小,胸水の消失を認めた。10サイクル後に治療を終了したが,臨床的増悪が2か月後に認められた。gemcitabineによる再治療が開始され,再度良好な効果を得た。gemcitabine単剤投与は,原発不明腺癌治療の一つの候補になり得ると考えられた。
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癌と化学療法 33巻10号, 1493-1495 (2006);
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下頸部・縦隔のリンパ節転移(LNM)で発見された原発不明扁平上皮癌(Sq-CUPS)の1例(70歳,女性)を経験した。この領域のLNM を示す原発不明癌(CUPS)は,多くが肺癌に準じて治療され,本症例でもcarboplatin, paclitaxel併用化学療法を4コース行った。下頸部・縦隔LNM を伴うSq-CUPS は予後不良だが,本症例は化学療法に加え逐次放射線療法を行った。PR で退院し,発症後2年半の経過で再発はない。
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癌と化学療法 33巻10号, 1497-1500 (2006);
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症例は53歳の女性。再発卵巣癌(clear cell adenocarcinoma)に対してirinotecan(CPT-11)とcisplatin(CDDP)の併用による化学療法とステロイドを投与中に腹部膨満を訴え,CT でfree airを認め腸管穿孔の診断となった。全身状態が不良であったため,緊急手術を施行せず,腹腔ドレナージと穿孔部を閉鎖すべくイレウスチューブを挿入し保存的に加療した。経口摂取を再開できたが,1か月半後に癌死した。ドレナージによる保存的加療はQOL を維持し,経口摂取を継続する上で有効な治療法であった。
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癌と化学療法 33巻10号, 1501-1504 (2006);
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われわれは非切除肝内胆管癌に対し,gemcitabine(GEM)と経口抗癌剤を用いて外来化学療法を行い,QOL を維持しながら1年余りの生存を得られた症例を経験したので報告する。症例:45歳,男性。腹部膨満と全身倦怠感を主訴に来院した。腹部CT 検査では左葉原発の肝内胆管癌,両葉にわたる多発性肝転移と診断した。血清CA 19-9およびCEA は高値を示していた。切除不能肝内胆管癌の診断でGEM 1,000mg/週を3週投与1週休薬と5'-DFUR 600mg/日の連日内服をプロトコールとする化学療法を開始した。化学療法は,最初の1コースを除いて外来通院で行った。4コース終了後の腹部CT 検査では原発巣および多数の肝転移巣は消失し,血清 CA 19-9は正常値まで低下していた。そして自覚症状の著明な改善とともに,職場(建設業)に復帰することも可能となった。患者は非切除肝内胆管癌と最初に診断されてから13か月間のほとんどを外来通院で化学療法を行い,良好なQOL を維持し職場に復帰することができた。GEM と経口抗癌剤の組み合わせは非切除胆道癌に対する有効なpalliative chemotherapyになり得る可能性があると考えられた。
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癌と化学療法 33巻10号, 1505-1509 (2006);
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切除および放射線療法の適応がない,頸部リンパ節または肝に転移を認めた進行膵癌患者2例に対し,経口フッ化ピリミジン系抗癌剤S-1の単剤投与を行い,転移巣に対して高い抗腫瘍効果を示した。いずれも,S-1の進行膵癌患者に対する有効性と安全性を検討した後期臨床第II相試験で奏効を得た症例であり,4コースまでの抗腫瘍効果は,頸部リンパ節転移例(症例1)では総合評価PR, 肝転移例(症例2)でも総合評価PR の優れた抗腫瘍効果を認めた。2症例ともgrade 3以上の有害事象は認められず,症例1ではgrade 2のヘモグロビン減少,口内炎,嘔吐,疲労が発現したが,その他はいずれも軽微であった。遠隔転移を認める切除不能の進行性膵癌に対し,S-1は全身化学療法として有効かつ忍容性に優れ,利便性の高い経口投与であることから,長期在宅治療において重視すべきQOL の改善や維持という要求に応える有用な薬剤と考えられた。
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癌と化学療法 33巻10号, 1511-1514 (2006);
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切除不能で放射線療法の適応のない進行膵癌患者に,経口フッ化ピリミジン(FP)系抗癌剤S-1を投与して,その有効性と安全性を検討した後期臨床第II相試験にて奏効した1症例を報告した。4コースまでの抗腫瘍効果は,評価部位(肝)CR, 総合評価PR と優れた判定を得た。特に治療前の,1. 18.7×15.4mm, 2. 16.2×14.6mmの2か所の肝転移巣はともに消失し,S-1の転移巣に対する強力な抗腫瘍効果を認めた。有害事象については,grade3〜4の副作用を認めず,その他はいずれも軽微であった。以上の成績から,S-1は進行膵癌に有効かつ忍容性に優れた薬剤であると考えられた。
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癌と化学療法 33巻10号, 1515-1519 (2006);
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遠隔転移を有する進行膵癌患者に対して,経口フッ化ピリミジン系抗癌剤S-1の単剤投与を行い,著明な腫瘍縮小効果を示した2例を報告した。この2例は,進行膵癌患者に対するS-1の前期臨床第II相試験で有効(固形がん化学療法直接効果判定基準)と判定された症例で,肝転移を有する例(症例1)は治療前と比較して最大18.6%まで縮小,肺転移を有する例(症例2)は最大13.1%まで縮小と,いずれの症例でも優れた腫瘍縮小効果が認められた。症例1においてgrade 3の食欲不振,ヘモグロビン減少などの有害反応が認められたが,その他はいずれの有害反応も軽微であり,外来治療が可能であった。S-1は遠隔転移を有する進行膵癌に対して優れた抗腫瘍効果と忍容性を有しており,経口剤という利便性からも外来治療にも有用と考えられた。
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Source:
癌と化学療法 33巻10号, 1521-1523 (2006);
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肝転移を有する進行膵癌患者に経口フッ化ピリミジン系抗癌剤のS-1を投与し,優れた抗腫瘍効果を認めた1例を経験した。本症例は,「進行膵癌患者におけるS-1の後期臨床第II相試験」の登録症例で4コースまでの抗腫瘍効果は,測定可能病変である肝転移巣はPR, 評価可能病変の原発巣はNC, 総合評価はPR 判定であった。副作用については好中球数減少(grade3)を認めたが,その他はいずれも軽微であった。S-1は後期臨床第II相試験の治療成績から進行膵癌の全身化学療法において有効かつ忍容性に優れ,さらに経口投与である利便性から今後期待される薬剤である。
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短報
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Source:
癌と化学療法 33巻10号, 1525-1527 (2006);
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連載講座
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【外来化学療法】
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Source:
癌と化学療法 33巻10号, 1528-1529 (2006);
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Source:
癌と化学療法 33巻10号, 1530-1531 (2006);
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【治験管理室訪問】
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癌と化学療法 33巻10号, 1533-1535 (2006);
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Source:
癌と化学療法 33巻10号, 1536-1537 (2006);
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Journal Club
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Source:
癌と化学療法 33巻10号, 1408-1408 (2006);
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Source:
癌と化学療法 33巻10号, 1480-1480 (2006);
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癌と化学療法 33巻10号, 1484-1484 (2006);
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Source:
癌と化学療法 33巻10号, 1532-1532 (2006);
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