Volume 33,
Issue 11,
2006
-
総説
-
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1547-1552 (2006);
View Description
Hide Description
胸腺腫は胸腺上皮細胞の腫瘍である。臨床的には比較的緩徐な発育を示し,浸潤,転移はまれである。治療は外科的切除が主体であるが,播種,進行例についてはその治療法については十分なコンセンサスがない。他の腫瘍にない胸腺腫の大きな特徴として,胸腺腫の腫瘍細胞は胸腺上皮細胞の機能を維持し,これにより腫瘍内で増殖分化する多数の未熟リンパ球が混在する。また,重症筋無力症などの自己免疫疾患を高率に合併する。実は自己免疫疾患の合併は胸腺腫の生物学的活性と因果関係がある。
-
特集
-
-
チーム医療で進める癌治療
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1553-1556 (2006);
View Description
Hide Description
患者中心の医療を実現するためには,わが国では特に新しい医療システムの導入が必要である。癌研究会有明病院では新しい医療システムが構築されている。新しいシステムは臓器別に内科と外科が,外来と入院患者を共有することと,カンファレンスを共同で開催することから成り立っている。そのカンファレンスの核となるのがCancer Boardである。本稿では消化器癌のCancer Boardを例にあげて,われわれの病院の新しいシステムを紹介する。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1557-1562 (2006);
View Description
Hide Description
外来でがん化学療法を安全・安楽に行うためには,患者と医療者が一つのチームになって治療をマネジメントしていかなければならない。これまで受け身で治療を受けることが多かった患者が,治療内容や起こり得る副作用,対処方法などを理解し,主体的に治療に取り組むことができるように介入していくことが必要である。リスクマネジメントや症状マネジメントを行う時は,患者のセルフケア能力を引きだし,患者がマネジメントに参加できるという意識をもてるようにする。また,専門職種の介入が必要な場合は,すぐにコンサルテーションし,問題を早期に解決できるように調整する。患者と各職種が,安全・安楽な治療を行うという統一した意識をもち,それぞれの役割を果たしていくことが重要である。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1563-1567 (2006);
View Description
Hide Description
医療制度改革の方向性に示された医療連携の要は,患者視点の重視と医療の一貫性・継続性の確保である。がん診療連携拠点病院の指定要件に記された「相談支援機能を有する部門」は医療連携のあり方を明確に方向付けている。中核病院における医療連携・患者支援部門の拡充とインターネット技術の導入に期待したい。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1568-1570 (2006);
View Description
Hide Description
クリニカルパスは治療の標準化,治療の質の向上さらに入院日数の短縮を目的に米国のマネージドケアのなかから生まれた。現在,わが国でも急速に普及している。癌治療においてもクリニカルパスを用いる施設は徐々に増加し,化学/放射線療法や手術などその領域は多岐にわたっている。当院ではクリニカルパス利用率は50%に達しており,癌治療におけるクリニカルパスの使用も年々増加してきている。これまでの当院での癌治療におけるクリニカルパスの取り組みを紹介する。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1571-1574 (2006);
View Description
Hide Description
情報技術IT の進歩は,がん診療に変化をもたらしている。インターネットが高速化することで,膨大な診療情報がリアルタイムに医療機関間で交換可能である。また,優れた医療情報に全世界的にインターネットを介してアクセス可能である。コンピュータ支援意思決定システムは,予防,早期発見,治療終末期医療とすべてのがん診療において,がん専門医の労働負荷を軽減しつつある。インターネットを介した大規模ながん患者登録は,国家的データベースの構築を可能とし,がん患者のphenotype,genotypeを明らかにすることで,安全で効率的な個別化医療の構築につながる可能性がある。オーダー・エントリー・システムと一体化した電子化カルテシステムに,安全情報や医療情報を直接,リアルタイムに組み込むことで,安全かつ効果的・効率的医療を提供することが可能である。インターネット・イントラネットの発達によるがん診療の効率化が進む一方で,無秩序ながん医療情報配信や,インターネット環境をもつ者ともたざる者の情報格差,医療チーム内でのコミュニケーションの低下などの問題も生まれている。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1575-1578 (2006);
View Description
Hide Description
がん専門薬剤師制度は,安全で確実ながん化学療法をサポートする臨床薬剤師を認定する制度である。がん専門薬剤師は,複雑化したプロトコールや,抗がん剤副作用の管理などを専門的な立場からサポートする。がん専門薬剤師の認定試験のハードルは高く,受験資格として高度な知識(学会認定薬剤師など)とがん化学療法の臨床経験を有することが必須条件となっている。2005年度にがん専門薬剤師41名が輩出されている。
-
原著
-
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1579-1582 (2006);
View Description
Hide Description
乳癌におけるPyNPase活性の臨床的意義を明らかにする目的で,臨床病理学的因子,血流動態および予後との関連性の検討を行った。2000年4月から2001年12月までの1年9か月の間に当科において乳腺腫瘤性病変に対してパワードプラ超音波検査(PDUS)にて最高血流速度(Vmax)を測定後,手術療法を行い病理組織診断のついた乳癌21症例を対象とした。PyNPase活性値は癌部で156.9±63.5U/mg(mean±SD), 正常部で19.0±18.1U/mg と癌部で有意に高値を示した(p<0.0001)。PyNPase活性値においてER・PgR・n因子・ly,v因子の陽性群と陰性群の間に有意差は認めなかったが,腫瘍径とVmaxに対しては正の相関を認めた(r=0.496,p=0.026 /r=0.498, p=0.021)。無再発生存率はPyNPase高値群が有意に低かった(p=0.048)が,累積生存率においては2群間に有意差を認めなかった。術後再発において,PyNPase活性値は多変量解析の結果,有意な危険因子であった(p=0.032)。乳癌においてPyNPase活性は,悪性度・増殖能・予後に関連がある可能性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1583-1587 (2006);
View Description
Hide Description
進行乳癌に対するepirubicin(EPI)とdocetaxel(DOC)併用術前化学療法の臨床効果および安全性を検討した。進行乳癌30症例に対して,day 1にEPI 40〜60mg/m2,DOC 50〜60mg/m2を点滴静注し,3週間を1コースとして,術前4コース施行した。評価可能な進行乳癌の62.1%にPR 以上の奏効を認めた。組織学的効果では,2例(8.3%)にpCR を認めた。薬剤投与量別での効果では,高用量群に高い効果を認めた。grade3以上の有害事象では白血球減少を29.4%に認め,倦怠感が5.8%であった。EPI-DOC 併用化学療法は,進行乳癌に対する術前化学療法として選択肢の一つとなり得る。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1589-1593 (2006);
View Description
Hide Description
目的:進行子宮体癌に対する術後doxorubicin(DXR)/cisplatin(CDDP)(AP)療法の認容性について検討した。方法:進行子宮体癌で初回に標準手術を施行し,年齢20〜80歳,PS 0〜2, 十分な骨髄,肝,腎,心機能をもつ患者を対象とした。DXR 60mg/m2とCDDP 50mg/m2をそれぞれday1に投与し,21日ごとに病状の進行や重篤な有害事象がみられない限り6コース施行した。有害事象はNCI-CTC Ver.3により判定した。結果:2004年4月から2005年12月まで15例に施行した。投与中止症例はなかった。2例に減量を要し9例に投与遅延を認めた。grade 3以上の有害事象を白血球減少7例(47%), 好中球減少10例(67%), 貧血4例(26%), 嘔吐1例(13%)に認めたが,いずれも可逆性であった。6コース終了後腎障害,心障害は認めなかった。結論:進行子宮体癌に対する術後DXR/CDDP(AP)療法は推奨用量のDXR60mg/m2とCDDP 50mg/m2で投与可能であり,有害事象も管理可能である。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1595-1602 (2006);
View Description
Hide Description
切除不能非小細胞肺癌患者の予後は極めて不良であるが1990年代の新規抗癌剤の開発に伴い,生存期間の延長が認められている。そこで当科における切除不能非小細胞肺癌長期生存症例の予後因子の検討をした。対象は1999年6月から2002年5月までに全経過が観察しえた切除不能非小細胞肺癌患者121例。そのうち2年以上生存が得られた15例(男性9例,女性6例)と生存が2年以下の106例について解析を行った。長期生存例においてはN 因子が小さいこと,血清蛋白値が高値であること,performance status(PS)が良好であること,治療として化学療法,放射線療法併用あるいはどちらかを選択されていることが有意な予後因子であった。多変量解析においては従来の報告と同様にN 因子が小さいこと,PS が良いこと,女性であることが予後因子であった。さらに治療を加えたことも有意差を認めた。これらの結果から切除不能非小細胞肺癌患者の治療において新規抗癌剤を含む適切な治療を考慮すべきであると示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1603-1609 (2006);
View Description
Hide Description
フッ化ピリミジン系抗癌剤は大腸癌において最も使用される抗癌剤であり,進行大腸癌においてはフッ化ピリミジン系抗癌剤に対する感受性が予後に大きな影響を与える。抗癌剤感受性試験CD-DST は微量の臨床検体でも試験が可能であり,臨床効果との高い相関性が報告されている。しかしながら全工程に約2週間を要し,また方法も複雑であり決して簡便な方法ではなく,さらにcontaminationにより検査が施行できない場合もある。OPRT, DPD, TS はその酵素活性が5-FU の抗腫瘍効果と相関する可能性が指摘されている。酵素活性はradioassay法により測定することが可能であり,十分な細胞量が採取されれば途中で検査が不可能になることはない。われわれはこれら3酵素の活性値を測定し,さらに5-FU に対するin vitro 感受性を検討して各酵素活性との相関関係を解析し,DPD がin vitro 感受性試験の結果と最も相関することを示した。さらにこれら3酵素の活性を測定することにより,in vitro 感受性試験における5-FU の効果をある程度予測できる可能性を示した。しかしながら,最もよく相関する条件においても重回帰分析における3酵素の活性値のCD-DST による細胞障害率への寄与率は0.61であり,5-FU の効果に影響を与える第4の因子の発見が望まれる。
-
症例
-
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1611-1614 (2006);
View Description
Hide Description
症例は43歳,男性。咳嗽と喀痰を主訴とし,胸部単純X 線およびCT にて,右肺門部に上大静脈を高度に圧排する約8×6cm 大の腫瘤陰影と縦隔リンパ節の腫大を認めた。気管支鏡下の生検にて低分化型腺癌(cT4N2M0, StageIIIB)と診断された。cisplatin(80mg/m2)+vinorelbine(25mg/m2)+mitomycin C(8mg/m2)の併用化学療法を2コースとcisplatin(80mg/m2)day 1, etoposide(100mg/m2)day 1〜3と同時に縦隔に30Gy, 右肺門部に15Gyの計45Gyの放射線照射を行い,cisplatin+vinorelbine+mitomycin C の併用化学療法をさらに1コース行った。右肺全摘除術を施行したところ,組織学的にcomplete response(CR)であった。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1615-1618 (2006);
View Description
Hide Description
症例は76歳,男性。喘鳴,血痰,湿性咳嗽,胸痛,嗄声を認め,2005年6月受診。胸部X 線写真,CT にて,左肺上葉の大動脈弓部に接した7.5×5cm の腫瘤と左肺上葉,右肺下葉内の複数結節陰影,さらに左胸水を認めた。気管支鏡下肺腫瘤生検にて扁平上皮癌と診断。臨床病期T4N2M1,stageIV期と判断された。TS-1 120mg/dayと十全大補湯7.5g/dayによる化学療法を開始した。grade2の白血球減少と両下肢にgrade1の皮疹を認めたため,TS-1を100mg/dayに減量。2週間投与1週間休薬,十全大補湯7.5g/day食前投与2週間投与を1コースとした。投与2週間ごろより胸痛,血痰が消失した。胸部CT にて胸水消失,腫瘤陰影の縮小傾向も認められた。有害事象はgrade 1の白血球減少と悪心を認めるのみであった。以後外来にて11か月間に同内容投薬を17コース継続できた。この間,患者のquality of life(QOL)は十分に保たれた。2006年5月胸部CT, PET 検査で腫瘤中心部の壊死と考える所見を認めた。また,肝外側区域に腫瘤陰影を確認した。TS-1は高齢者切除不能非小細胞肺癌に対する治療法として,1段階の減量投与または2週間投与1週休薬にて投与継続が可能となり,患者のQOL を保ちながら抗腫瘍効果を期待できる可能性があると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1619-1621 (2006);
View Description
Hide Description
62歳,女性。多発性骨転移を伴う非小細胞肺癌。CBDCA とGEM による併用化学療法を施行したが効果が得られなかったため,TS-1を100mg/day, 28日間連日内服14日間休薬を1コースとして開始した。TS-1開始後,原発巣ではPRが得られ,全身骨シンチグラフィにて異常集積の減少を認めた。現在もTS-1を外来通院にて内服継続中である。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1625-1628 (2006);
View Description
Hide Description
症例:60歳,男性。右肩痛・右上腕内側のしびれを主訴に近医受診。精査でPancoast腫瘍の診断の下,手術目的に当院紹介となった。胸部CT では右肺尖部に約5cm 大の腫瘤を認め,胸壁への浸潤を認めた。術前放射線化学療法CCRT(RT:40Gy/ 20Fr,cisplatin:CDDP+etoposide:ETP)を施行した後,右上葉切除術(ND 2a)+胸壁(第1〜3肋骨)・Th 1合併切除術を施行した。術後病理組織では,肋間筋・骨膜にかけて器質化が高度にみられたが生きている癌細胞は認められなかった(Ef.3)。術後化学療法を追加施行後退院となった。現在術後1年になるが再発は認めず外来経過観察中である。今後は新規抗癌剤も含めた最適な化学療法regimen決定のためのRCT が必要と思われるが,CCRT はPancoast 腫瘍に対する標準治療となる可能性がある。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1629-1632 (2006);
View Description
Hide Description
進行癌における癌性胸膜炎は,患者のquality of life(QOL)を損なうことがしばしばであるが,標準的な治療法は定まっていない。当科では,2002年より癌性胸膜炎患者7例に対し,低浸透圧cisplatin療法を施行した。2例で重篤な合併症(心筋梗塞,喀血)を認めたが,術後全例一時退院可能であった。治療後の中間生存期間は現在生存中の1例を含め346.7(96〜610)日間で,また全例で再ドレナージは不要であった。統計学的には有意差は認めないものの,非小細胞肺癌5例の生存期間は消化器癌2例のそれより長い傾向があった。本治療が肺癌癌性胸膜炎患者のQOL 改善に寄与する可能性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1633-1636 (2006);
View Description
Hide Description
患者は83歳,男性。腹痛と嘔吐を主訴に入院した。胃内視鏡検査,腹部CT 検査にて大動脈周囲リンパ節転移を伴う胃体下部の巨大な2型胃癌を認めた。幽門狭窄により経口摂取が不能であり,paclitaxel投与を行ったが嘔吐とリンパ節転移は改善しなかった。少量分割5-fluorouracil, levofolinate calcium, cis-platinum(FLP)療法をchronomodulationを応用し,夜間に施行した。重篤な副作用を認めることなく4サイクル終了後にpartial response(PR)を得て経口摂取が可能となり,5か月間PR を維持している。chronomodulationを併用した少量分割FLP 療法は高齢者においても有効であり,重篤な副作用を認めることなく安全に施行可能だった。本症例は,経口摂取不能な高齢者の高度進行胃癌へのchronomodulation併用少量分割FLP 療法の可能性を示唆すると思われた。さらなる臨床試験が期待される。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1637-1640 (2006);
View Description
Hide Description
症例は54歳,女性。U 領域のスキルス胃癌と診断され当科受診した。精査で中等量の腹水,両側水腎症を認め,腹水細胞診でclassⅤであったためweekly paclitaxel(PTX)療法を施行した。2コース終了時には腹水は完全消失し,両側とも水腎症はほぼ消失した。4コース終了時にも効果は持続していた。経過中,副作用はgrade 2の好中球減少とgrade1の脱毛を認めたのみで,外来で安全に施行可能であった。また,PTX の腹水中への移行を検討したところ,良好な移行性および持続性を示した。癌性腹水貯留患者に対してweekly PTX 療法は安全で有用な治療法の一つと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1641-1644 (2006);
View Description
Hide Description
患者は41歳,女性。腹部膨満感・不正性器出血を主訴に当院婦人科を受診。腹部CT および腹部超音波にて,両側卵巣腫瘍,大量腹水および両側胸水を認めた。上部内視鏡にて4型進行胃癌と診断され,当科に入院。MTX+5-FU+low-doseCDDP(MFP)による多剤併用化学療法を3コース施行したところ胸腹水の消失をみたため,手術(胃全摘出・膵尾部切除・リンパ節郭清および子宮単純全摘出・付属器切除術)を施行し退院。術後化学療法を繰り返し施行した。化学療法開始後1年8か月にリンパ節再発を認め,CPT-11+CDDP による化学療法に変更し,リンパ節の縮小が得られた。さらに9か月後にTS-1を導入し3コース施行。初回化学療法開始後2年10か月に腹痛,腰痛出現。骨シンチグラムにて骨転移を認めた。リンパ節腫大も認め,放射線および化学療法(CDDP+5-FU)を施行し軽快。再び腹部CT にてリンパ節腫大,多発性肝転移,腹水および右胸水を認め入院。CDDP 腹腔内投与を行ったが,状態悪化し死亡した。治療開始後,約3年4か月の長期生存が得られた。腹膜播種症例に対して,MFP 療法は期待できる化学療法の選択肢と考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1645-1648 (2006);
View Description
Hide Description
進行胃癌に対するTS-1/CDDP 併用療法が奏効し,手術し得た3例を経験したので報告する。症例1:No.16リンパ節腫大を伴う噴門部の4型進行胃癌,症例2:No.12リンパ節腫大により閉塞性黄疸を来した幽門部の3型胃癌,症例3:幽門部を中心とした4型の進行胃癌で膵臓への直接浸潤を強く疑った。3症例に対し術前化学療法を施行し,根治度B 以上の手術が可能となった。有害事象は2例にgrade 3の食欲不振を認めたが,いずれも有効な治療法になり得た。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1649-1652 (2006);
View Description
Hide Description
症例は50歳,男性。突然の上腹部痛を主訴に受診。腹部X 線撮影でfree airを認めたため,上部消化管穿孔を疑い緊急開腹術を施行した。胃角部前壁に約1cm の穿孔部を認め,その周囲は腫瘤様で後壁は膵と浸潤性に癒着しており悪性腫瘍が疑われたが,全身状態を考慮し大網充填術を施行した。術後の胃内視鏡検査で3型胃癌の診断を得,第28病日よりTS-1/CDDP 療法を開始した。3クール終了後,腫瘍の平坦化,壁硬化の改善を認めたため手術を施行した。開腹時,肝円索に結節を認め摘出,その他腹膜播種を疑わせる所見はなく,肝転移も認めなかった。根治術可能と判断し,幽門側胃切除術(D 2)を施行した。病理所見では癌病巣の一部の粘膜に印環細胞癌を認めるのみで,漿膜下層・筋層は線維組織に置換され,肝円索の結節も線維化しており癌細胞の消失が示唆された。術後2年3か月経過したが,再発の兆候は認めていない。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1653-1656 (2006);
View Description
Hide Description
症例は49歳,男性。膵鈎部に36×30mm の辺縁不整な腫瘤像を認め,上腸間膜動静脈への浸潤のため切除不能と診断し,十二指腸空腸バイパス術を施行した。バイパス術後gemcitabine(GEM)併用放射線治療を施行。その後,維持化学療法としてGEM を週1回1,000mg/m2(3週投与後,1週休薬を1クール)を顔面のほてりで中止するまで,15か月もの間計13クール継続可能であった。原発巣でPR が得られ,CA 19-9は16U/ml まで低下。さらにUFT, TS-1, GEM+cisplatinなどに変更したが,初診から3年7か月後に腹膜播種により死亡した。2年8か月もの間,社会復帰し良好なQOL を維持できた。切除不能膵癌に対する5-FU 主体の化学放射線療法の50%生存期間が10か月程度であることを考慮すると,GEM を主体とした化学放射線療法および化学療法が有効に作用したことが示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1657-1659 (2006);
View Description
Hide Description
症例は50歳,女性。主訴は上腹部違和感で来院し,骨転移を伴う肝内胆管癌と診断された。gemcitabine(GEM),5-FU 併用化学療法を1コース施行したがPD であり,GEM, cisplatin(CDDP)併用化学療法を2コース施行した。効果判定はSD であったがgrade4の白血球低下を認めた。肝動注リザーバー挿入の上,CDDP, levofolinate calcium(l-LV),5-FU の肝動注およびGEM 静脈内投与を2週ごとに施行した。動注開始6か月後の効果判定はPR であり,その後長期にわたりSD を維持することができた。切除不能肝内胆管癌に対し,本肝動注化学療法が有効な治療選択の一つになり得ると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1661-1664 (2006);
View Description
Hide Description
悪性腫瘍患者のおよそ15%が静脈血栓症を合併し,約1%が肺塞栓で死亡すると報告されている。今回われわれは,肺塞栓症にて発症した著明な腹膜播種を伴う十二指腸癌の症例に対し,heparinとwarfarinによる抗凝固療法を行い,その後TS-1とdocetaxelの併用療法を行い外来通院が可能でQOL 維持向上に効果的であったので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1665-1668 (2006);
View Description
Hide Description
症例は53歳,男性。鼠径ヘルニア術前の問診にて体重減少および便通異常を認めたため,消化管精査を施行したところ直腸癌多発肺転移と診断され,さらにイレウスを併発し,まず人工肛門造設術を施行した。その後全身状態は安定し,irinotecan, 5-fluorouracil, l-leucovorin(IFL)療法による術前化学療法を外来にて2コース施行した後,肺転移所見の消失および直腸腫瘍径の縮小を認めたためD 2リンパ節郭清を伴う低位前方切除術を施行し,根治度A であった。術前化学療法の病理組織学的評価は,Grade2であった。現在再発徴候を認めず,外来にてIFL 療法による補助化学療法を継続中である。また,本化学療法に伴う有害事象は認められなかった。本療法は,根治切除困難な直腸癌に対する術前化学療法として意義あるものと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1669-1671 (2006);
View Description
Hide Description
上行結腸癌術後肝転移の78歳,男性にcisplatin(CDDP)10mg, doxorubicin(DXR)20mg, 5-fluorouracil(5-FU)1,000mg の1回肝動注を行った後,TS-1 80mg/dayの14日間投薬14日間休薬にて継続治療したところ,17コース目で肝転移巣に対しPRが得られ,26コース終了後も9か月間にわたるPR の持続が証明された。大腸癌肝転移巣に対するTS-1投与が,高齢者やhigh risk 症例にもQOL を保ちつつ,高い抗腫瘍効果を有する可能性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1677-1680 (2006);
View Description
Hide Description
悪性リンパ腫の部分症として,天疱瘡を合併することがある。われわれは,濾胞性リンパ腫に合併した治療抵抗性の天疱瘡の症例を経験した。症例は36歳,男性。病期はIV期であった。2年前にリンパ腫を指摘され,1年間の初期治療の後再燃を来し,その際に口腔内アフタ病変,皮膚病変,眼瞼および眼球結膜病変を認め,口腔粘膜生検により病理学的に天疱瘡と診断された。初診時の免疫学的検査では異常は認められず,他の自己免疫疾患は否定的であった。経口で,prednisolone 40mg/dayの投与を開始し,一時的に効果を認めたが原病の進行に比して天疱瘡病変の増悪が速く,口腔内病変が気管支粘膜にも進行し重度の拘束性肺障害に至り呼吸不全で死亡した。本症例のように悪性疾患に関連した二次性天疱瘡でステロイド抵抗性の場合の予後は,原疾患よりも非常に悪く進行性である。
-
短報
-
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1681-1683 (2006);
View Description
Hide Description
-
COMMENTARY
-
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1685-1690 (2006);
View Description
Hide Description
CPT-11(一般名:塩酸イリノテカン,商品名:カンプト(株式会社ヤクルト本社),トポテシン(第一製薬株式会社))は,1994年に発売された。また,L-OHP(一般名:オキサリプラチン,商品名:エルプラット)は,優先審査による承認を受け,2005年4月に発売された。両剤とも,もともとはわが国において合成された抗がん剤である。CPT-11は発売当時,その効果以上に副作用が大きく取り上げられ,普及に多くの時間を費やした。一方でL-OHP は,国内での使用経験がないにもかかわらず,FOLFOX 法が承認用法になった。しかしながら,エルプラットは発売後1年間で多くの患者に対して使用されている。このように近年,欧米における標準的治療を速やかに医療現場へ導入するための規制面での変革がみられるようになり,また,わが国の一般社会においても抗がん剤治療に対する理解が深まってきた。最近,がん患者が標準的治療を希望し,規制当局と議論を行う姿が報道された。このような光景は10年前にはみられなかったことである。これらの患者の活動も,がん治療をめぐる状況の変化に大きな影響をもたらしたと考えられる。
-
連載講座
-
-
【外来化学療法】
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1692-1693 (2006);
View Description
Hide Description
-
【治験管理室訪問】
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1694-1695 (2006);
View Description
Hide Description
-
国際がん情報
-
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1697-1701 (2006);
View Description
Hide Description
-
Journal Club
-
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1622-1622 (2006);
View Description
Hide Description
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1672-1672 (2006);
View Description
Hide Description
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1673-1673 (2006);
View Description
Hide Description
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1684-1684 (2006);
View Description
Hide Description
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1691-1691 (2006);
View Description
Hide Description
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1696-1696 (2006);
View Description
Hide Description
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1702-1702 (2006);
View Description
Hide Description
-
用語解説
-
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1703-1703 (2006);
View Description
Hide Description
-
Source:
癌と化学療法 33巻11号, 1704-1704 (2006);
View Description
Hide Description