癌と化学療法
Volume 33, Issue 12, 2006
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特集【第27回癌免疫外科研究会,第28回日本癌局所療法研究会】
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Tissue Array法を用いた肺癌組織におけるHLA クラス I 抗原とHLA-G 抗原の発現異常に関する検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description肺癌におけるクラス I 抗原の発現異常とその臨床的意義を明らかにするためβ2-microglobulin(β2M)の発現とHLA-Gの発現をTissue array法にて検討した。対象は教室にて切除施行した非小細胞肺癌105例である。免疫組織学的検討はTissue array法(spot size 2mm)を用い, 染色率50%以上を発現陽性として検討した。染色陽性率はβ2M が41.7%, HLA-Gが55.2%であった。性別, 年齢, 組織型, 分化度といった臨床病理学的因子との関連についてはβ2M の発現と腫瘍径, リンパ節転移, 病期において関連を認めた。生存解析ではβ2M の発現と無再発生存期間において逆相関を認めた。HLA-G の発現と生存率の間には関連を認めなかった。非小細胞肺癌においてHLA クラス I 抗原の発現低下が免疫学的逃避機構を介して再発にかかわっている可能性が示唆された。NK 細胞の攻撃からの逃避機構の一つと考えられるHLA-G の発現の非小細胞肺癌における臨床的意義についてはさらに検討を要するものと考えられた。 -
末梢血液中のMethylation解析による食道癌存在診断
33巻12号(2006);View Description Hide Description食道癌患者の末梢血を用いたMS-PCR 法による解析をp16, E-cadherin, RARβ各遺伝子について行い, 従来の腫瘍マーカーやCEAを用いたRT-PCR 法の解析と比較検討した。対象は食道癌術前患者30名とした。MS-PCR 法で11例(37%)に少なくとも一つの異常を検出した。またRT-PCR 法では, 11例(37%)に陽性を認めた。これらの結果と従来の腫瘍マーカーには相関は認めなかった。MS-PCR 法およびRT-PCR 法は食道癌患者のスクリーニングやモニタリングの相補的なマーカーとして有用である可能性が示唆された。 -
末梢血を用いたRT-PCR 法, MSP 法による胃癌術後患者の再発早期診断の有用性
33巻12号(2006);View Description Hide Description術後胃癌患者25例の末梢血液を用いて, 血中遊離癌細胞の検出(RT-PCR 法)および末梢血清遊離DNA 断片を用いたp16, E-cadherin, RARβ, CDH4遺伝子のpromoter領域hypermethylationの検出(MSP 法)を行い, それらの結果と臨床経過とを比較検討した。RT-PCR 解析で2例の異常を認め, MSP 解析で計7例にいずれか一つ以上の遺伝子にpromoter領域hypermethylationを検出し得た。フォロー期間中に再発を認めた10例においてRT-PCR 解析で1例, MSP 解析で4例の異常が認められた。また, 1例においてMSP 法での異常の検出が画像上再発巣の出現に先立って認められた。これらPCR法を用いた諸手法は, 従来の腫瘍マーカーと相補的な癌存在診断の一手法として, 胃癌術後再発早期発見に応用できる可能性が示唆された。 -
口腔癌患者におけるBcl-2/Bax 遺伝子発現と治療効果
33巻12号(2006);View Description Hide Description口腔癌患者におけるBcl-2/Bax 遺伝子発現と治療効果との関連性を検討した。口腔癌患者由来末梢血単核球のBcl-2/Bax 遺伝子発現比率と治療効果ならびに生存率との間に有意な相関関係を認めた。Bcl-2/Bax 比と免疫療法剤OK-432によるIFN-γおよびNK 活性誘導との間にも統計学的に有意な相関が認められた。口腔癌の末梢血におけるBcl-2/Bax 遺伝子発現が有用な予後因子となり得ることが強く示唆された。 -
担癌マウスにおけるLentinanとミセラピストの抗腫瘍効果について
33巻12号(2006);View Description Hide DescriptionLentinan(LNT)とミセラピスト(MME)は医薬品と食品の違いこそあれ, いずれもシイタケから精製されたβ-グルカンである。われわれはこの同じ成分とされる製品の単独投与による抗腫瘍効果, 免疫賦活作用機序について担癌マウス(B10.D2マウスにS908D2腫瘍細胞を移植した)で検討した。その結果, LNT 群で腫瘍の発育が有意に抑制された。ex vivo の腫瘍細胞傷害試験は, LNT 群において抗CD8抗体で脾細胞を処理すると腫瘍細胞の傷害活性が有意に減弱した。またLNT 群のエフェクターフェーズでは抗CD8抗体と補体で, さらにインダクションフェーズでは抗CD4抗体と補体で脾細胞を処理すると腫瘍細胞傷害活性が有意に減弱した。延命効果については, コントロールと比較してLNT 群で有意に延長を認めた。LNT の腹腔内投与では, CD8陽性細胞が腫瘍細胞の発育を抑制していると考えられたが, この細胞の活性に特異的なCD4陽性細胞の関与が示唆された。これに対してMME の経口投与では, 細胞活性が明確ではなかった。 -
大腸癌治癒切除後のCimetidine投与は再発後の生存に影響するか
33巻12号(2006);View Description Hide Description大腸癌治癒切除例の術後cimetidine投与で生存率が向上することが報告されている。今回, 大腸癌治癒切除後のcimetidine投与が再発後の生存に影響するか解析したので報告する。1996年1月から2000年12月まで当科で治癒切除手術を施行したDukes B, C 大腸癌172例のうち, 再発を認めた29例:cimetidine投与(投与群)14例, cimetidine非投与(非投与群)15例を対象とした。初発再発部位は投与群では肝7例, 腹膜播種1例, 局所2例, 吻合部3例, その他1例, 非投与群では肝7例, 肺3例, リンパ節1例, 局所4例であった。再発治療は投与群で治癒切除6例, 化学療法8例, 非投与群で各5例, 8例であった。両群の再発時からのMST は投与群43.3か月,非投与群23.3か月で差は認めなかった(p=0.2923)。再発巣の治癒切除後の健存率, 生存率は投与群各66.7%, 100%, 非投与群40.0%, 60%で統計学的な有意差はなかった(各p=0.3551, p=0.1010)が投与群で良好な成績であった。大腸癌治癒切除後のcimetidine投与は, 再発巣切除後の生存に寄与する可能性はあるものの, 今回の検討では再発後の生存への影響は認めなかった。 -
食道癌術後の縦隔内転移腫瘍に対して免疫治療を試みた1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description大網は多数のマクロファージやリンパ球で構成されたリンパ組織を豊富に含んだ組織であり, 腹腔内における感染防御において重要な役割を担っている。一方, 播種性転移の好発部位となることも知られている。われわれは60歳の男性において食道癌術後の後, 縦隔経路再建胃管の大網内再発と縦隔リンパ節再発というまれなケースを経験した。大網再発巣は放射線化学療法での制御も不可能であり, 気管に対して急速に増大していたため, 局所治療としてCTガイド下にRFA を施行した。われわれは, RFA 焼灼による腫瘍抗原の遊離と大網におけるマクロファージをはじめとする抗原提示細胞による抗原捕捉により, 抗腫瘍細胞性免疫応答の作動を期待した。これらが促進されるよう, OK-432の皮下投与による全身免疫療法を行った。RFA は大網再発巣に対し広範囲の壊死をもたらし, 十分な治療効果があった。しかしながら, OK-432投与によりRFA の前後で末梢血リンパ球数の上昇が認められ, 全身免疫反応の活性があったにもかかわらず, 縦隔リンパ節転移巣の縮小は認められなかった。 -
ナイーブ樹状細胞腫瘍内注入癌ワクチン療法前にRadiofrequency Ablationを施行することによる腫瘍局所免疫学的逃避克服の可能性
33巻12号(2006);View Description Hide Descriptionわれわれはマウス腫瘍モデルを用いて, 樹状細胞(DC)腫瘍内注入ワクチン療法, そして注入前に癌治療の一つである光線力学的治療を併用することにより, 良好な全身性抗腫瘍効果を経験し報告した(Clin Cancer Res, 2006)。腫瘍局所は,腫瘍由来免疫抑制サイトカインにより免疫学的逃避の環境にあると考えられている。従来の抗癌治療後にDCを腫瘍内に直接注入する癌ワクチン療法のメカニズムは, 1.抗癌治療により癌細胞を破壊し癌抗原の放出, 2.腫瘍内に十分量の未成熟DCを注入, 3.生体内での未成熟DCによる腫瘍抗原の獲得, 4.腫瘍壊死由来の炎症性サイトカインによるDCの成熟, 活性化, 5.活性化DC の所属リンパ節への移動と免疫獲得である。注入前に従来の抗癌治療を併用することにより, 腫瘍局所の免疫学的逃避環境を破壊し, DC ワクチン療法による免疫獲得の促進を可能にすると考えられる。今回われわれは, radiofrequency ablation(RFA)をDC 腫瘍内注入ワクチン療法に併用し, 主に上記4, 5のメカニズムの解明を試みた。 -
細胞免疫療法に温熱療法を併用して著効を示した症例
33巻12号(2006);View Description Hide Description免疫細胞療法に温熱療法を併用することにより, 著効を示した症例を認めたので報告する。1例は原発不明癌の転移性骨盤腫瘍で温熱療法と活性化リンパ球にて著効した。もう1例は, 大腸癌の頸部, 腹部への多発リンパ節転移で未熟樹状細胞と活性化リンパ球に温熱療法を併用して完治した。 -
Glypican-3(GPC3)を標的とした免疫療法の有用性の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description肝細胞癌は治療後も高頻度に再発を繰り返すため予後不良な癌であり, 発癌予防や治療後の再発予防のために有効な治療法の確立が望まれる。GPC3は肝細胞癌に高発現し, 正常組織にはほとんど発現しないため, 腫瘍免疫のターゲットとして理想的な癌特異的抗原である。今回最も抗腫瘍活性が高く, 自己免疫現象を誘導しないHLA-A2もしくはHLA-A24拘束性CTL エピトープペプチドを同定し, GPC3をターゲットとした肝癌に対する免疫療法の有用性を検討した。HLA-A2エピトープペプチドに関しては, HLA-A2トランスジェニックマウスを用いて最も効果的にCTLを誘導できるものを決定し, さらにHLA-A2+ もしくはHLA-A24+ 患者におけるCTL 誘導の有無を検討した。それぞれの肝癌患者末梢血単核細胞からGPC3特異的ヒトCTLが半数以上の症例で誘導可能であった。GPC3はウイルス性肝硬変患者の発癌予防や術後再発予防における免疫療法のターゲットとして期待される。 -
高度進行・再発大腸癌に対するペプチドワクチンとUFT/UZEL の併用療法に関する第 I 相臨床試験
33巻12号(2006);View Description Hide Description高度進行・再発大腸癌を対象としてテーラーメード癌ペプチドワクチンとUFT/UZELの併用療法を行い, その安全性と有効性について評価を行った。2005年7月より2006年5月までに8例の患者が登録された。患者末梢血の免疫反応に応じて選択した最大4種類のペプチドワクチンを1回/週で皮下投与し, 同時にUFT(300mg/m2/日), UZEL(75mg/日)の内服を4週投薬1週休薬で行い, 5週間を1クールとしている。有害事象として, ワクチン投与部硬結, 白血球減少, トランスアミナーゼ上昇や高ビリルビン血症などの肝機能障害を認めた。2クール終了後の臨床評価では, SD 5例, PD 3例であった。UFT/UZEL の内服にペプチドワクチンを加えた本療法は安全に施行でき, 免疫評価の結果からUFT/UZELが本免疫療法を阻害するものではないと考えられた。 -
前立腺癌の治療抵抗性の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description癌細胞の増殖能は非常に強く, 宿主の免疫反応や抗癌剤治療に対して抵抗性を示す。今回われわれは, 根治的前立腺摘出術を施行した前治療を受けていない前立腺癌患者10例に対し, human leukocyte antigen(HLA)クラス I , multi-drug resistance 1(MDR 1), androgen receptor(AR)の発現を検討した。前立腺癌細胞におけるHLA クラス I , MDR 1, ARの発現率は平均でそれぞれ41, 35, 74%だった。さらに, 個々の症例でHLA クラス I , MDR 1の二重染色を行った。HLAクラス I(+)/MDR(+), HLA クラス I(+)/MDR(−), HLA クラス I (−)/MDR(+), HLA クラス I(−)/MDR(−)のそれぞれの比率は平均で13, 29, 22, 38%であった。同様にHLA クラス I , AR で二重染色を施行したところ2例の症例を除き(HLA クラス I(−)/AR(+)の癌細胞が優位であった)同様な結果が得られた。これらの結果, 未治療の前立腺癌細胞においても幅広い遺伝子の変異により, 宿主免疫能からの回避や抗癌剤治療やホルモン療法に対する治療抵抗性を獲得していることが示された。 -
腹膜原発性腺癌の病理学的検討とCDDP+TS-1療法について
33巻12号(2006);View Description Hide Description腹膜原発性腺癌の2例に対して, CDDP+TS-1療法を行い良好な治療効果を得た2例に関して病理学的特徴・臨床経過と治療法に関する検討を行った。本疾患に対する治療効果は組織型に依存すると思われるが, 腹膜原発性腺癌の場合は腹膜播種があってもCDDP+TS-1療法などの全身化学療法によって治療効果が望める可能性が示唆された。 -
Oncolytic Adenovirusと抗癌剤併用による抗腫瘍効果
33巻12号(2006);View Description Hide Description近年, 感染細胞における自己複製により殺細胞効果を示すoncolytic virusの癌治療への応用が注目されている。抗癌剤併用によるoncolytic virusの効果増強についての基礎検討を行った。ヒト胃癌細胞株MKN45(CEA 陽性)およびMKN74(CEA 陰性)を用い, CEA 陽性細胞選択的なウイルス増殖を可能とするoncolytic adenovirus(AdCEAp/Rep)を感染させ,その殺細胞効果を評価した。また, 5-FU 併用による殺細胞効果の増強について検討した。AdCEAp/Repは, MKN74に対して殺細胞効果を示さなかったものの, MKN45に対して濃度依存性の殺細胞効果を示した。また,5-FUをウイルス感染の3日目の添加により, 殺細胞効果の増強が得られた。AdCEAp/Repは, CEA 陽性胃癌細胞選択的な殺細胞効果を示し, 5-FU 併用により殺細胞効果の増強が得られることを明らかにした。 -
大腸癌肝転移切除後の予防的肝動注療法—QOL を考慮した合理的な治療方法—
33巻12号(2006);View Description Hide Description合理的でQOL を考慮した予防的肝動注化学療法の確立を目的として, 簡便な週1回投与法の有用性についての無作為比較試験と抜去可能なW スパイラルカテーテルの有用性についてのretrospectiveな検討を行った。5-FU 1,500mg を週1回5時間で投与する肝動注を8週間施行し, 総投与量が同じ持続動注と比較したが, 持続投与に劣らない再発予防効果が確認され, 有害事象も軽微であった。コイル固定が不要なW スパイラルカテーテルを使用して動注終了後に抜去したが, 合併症はなく, 3D-CT では肝動脈の良好な開存が確認された。予防動注の実施に際しては, その有用性と限界を十分に把握した上でQOLの面にも配慮した合理的な方法をとるべきであると思われる。 -
切除不能進行胃癌に対するバイパス手術の有効性
33巻12号(2006);View Description Hide DescriptionQOLの改善を目的とした切除不能進行胃癌に対する姑息的手術である胃空腸吻合術の有効性について, 胃空腸吻合群(GJ群)13例と単開腹群(S 群)14例で検討した。両群間に有効率, 平均生存期間, 在宅期間, 在宅比率で差を認めなかった。GJ群で狭窄の強い症例には胃空腸吻合術が有効な可能性が高いと考えられた。胃癌化学療法の成績は向上しており, 集学的治療の一つとして胃空腸吻合術も対象を限定すれば有用であると考えられる。 -
上腸間膜動静脈浸潤膵頭部癌切除による癌性疼痛消失の経験
33巻12号(2006);View Description Hide Description49歳, 女性。腹部の激痛にて近医受診し, 上腸間膜動静脈に浸潤する6cm 大の膵頭部癌と診断された。化学療法およびオピオイド治療が開始されたが骨髄抑制や高度の嘔気, 便秘から治療の継続が困難となり, 膵頭一括切除術目的に当院転院となった。骨髄抑制の改善をみた後に膵頭一括切除術を施行したところ, 疼痛が消失しオピオイド治療から開放された。膵頭一括切除術は, 進行膵癌に対して癌性疼痛改善効果も期待できると考えられた。 -
肝細胞癌の孤立性左副腎転移に対する腹腔鏡下副腎腫瘍摘出術の経験
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は70歳代, 男性。既往歴は脳出血, 右半身麻痺, 右横隔膜麻痺。現病歴はC 型肝炎, 肝硬変で通院中肝細胞癌を指摘され, 3年前より計4回のTAE を施行していた。今回CT 検査で左副腎に4×3.5cm の腫瘍を指摘, 肝細胞癌からの副腎転移と診断される。TAE により原発巣がコントロールされていること, 多臓器に転移を認めず孤立性であること, 周囲への浸潤を認めないこと, 大きさが10cm 以下であることから2006年3月腹腔鏡下副腎腫瘍摘出術を施行した。翌日より車椅子で離床, 2日目より食事を開始, 9日目に退院となった。病理組織診断は中分化型肝細胞癌の左副腎転移であった。ハイリスク症例に対して適応基準を厳守すれば, 腹腔鏡下での転移性腫瘍摘出術はQOL を考慮した癌局所療法として有用な低侵襲治療法になり得ると考えられた。 -
下大静脈腫瘍栓(Vv3)を伴う進行肝細胞癌に対して放射線・肝動注化学療法を施行しQOL が改善した1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は81歳, 男性。近医で肝腫瘤を指摘され当科紹介となった。肝右葉の径約8cmの肝細胞癌に対して, 拡大肝右葉切除術を予定し門脈塞栓術を施行した。しかし,手術待機中の短期間で下大静脈腫瘍栓(Vv3)を認めるまで進展し, 進行肝細胞癌と診断した。患者のQOL を考慮し放射線・肝動注化学療法を選択した。下大静脈の腫瘍栓に対して放射線療法を施行し, 外来で動注化学療法(5-FU 1,000mg/週)を施行した。治療開始8コース後には, 腫瘍はSD であるが腫瘍マーカーは低下した。有害事象はgrade1程度で軽微であった。その後, 再度腫瘍マーカーの上昇を認め, 腫瘍はPR で下大静脈腫瘍栓は消失したが, PET で右大腿骨に再発病変を認めた。今後, 局所の放射線療法を予定している。高齢患者の進行肝細胞癌症例では,QOLを考慮して治療法を選択すべきであり, 放射線・肝動注化学療法は有用であったと思われた。 -
気管・気管支悪性腫瘍に対する気管支内視鏡による局所治療の現状
33巻12号(2006);View Description Hide Description気管・気管支悪性腫瘍に対して気管支内視鏡治療を施行した38症例について検討した。気管支内視鏡下でエタノール局所注入療法は13例, 半導体レーザー治療は19例, ステント治療は9例に施行されていた。各治療法とも比較的簡便な処置であり, 呼吸困難などの自覚症状の改善に有効と考えられた。 -
腹腔内細胞診陽性胃癌に対する術前化学療法の意義
33巻12号(2006);View Description Hide Description診断的腹腔鏡検査(SL)にて腹膜転移陰性(P0)および腹腔細胞診陽性(CY1)と診断された前治療のない高度進行胃癌34例を対象とし, P0CY1症例に対する術前化学療法(NAC)の意義につき検討した。9例はSL 直後に手術を施行し(手術群), 25例にNAC を施行した(NAC 群)。NAC の治療効果はCR 0例, PR 6例, NC 15例, PD 4例(奏効率24%)であり, 23例に胃切除を施行した(切除率92%)。18例(78%)で胃切除時にCY が陰性化し, 17例(74%)に根治切除がなされた。遠隔成績では手術群とNAC 群の間に有意な差は認めないが, NAC 群のMST が820日と手術群の439日より延長していた。この17例中5例(29%)が再発し, 部位は腹膜1例, 肝1例, 脳1例, 局所+腹膜1例, No.16リンパ節+腹膜1例であった。P0CY1症例に対するNACは高率にCY を陰性化させ, 根治切除率を向上させる。しかし, 予後の改善に寄与しているとはいい難く, 術後のintensive chemotherapyが必要と思われる。 -
卵巣原発腹膜偽粘液腫に対してPeritonectomyで完全切除できた1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は64歳, 女性。腹部膨満を認め近医受診し, 諸検査にて卵巣腫瘍, 腹膜偽粘液腫と診断し開腹手術施行。術中所見で, 血性黄色の粘液6,000ml, 10cm 大の破裂した右卵巣腫瘍, 子宮筋腫を認め, 術中迅速病理検査にて, mucinous cyst adenoma pseudomyxoma peritoneiと診断され, 単純子宮全摘・両側卵巣切除と低分子デキストランによる腹腔内洗浄を施行。その後の当院にて, 腹膜偽粘液腫に対して, 両側横隔膜部の腹膜切除・肝被膜切除, Douglas窩から膀胱部の腹膜切除, 脾臓摘出・大網切除を施行した。術後の経過は順調で, 腹膜偽粘液腫の再発は認めなかった。 -
乳癌肝転移長期(5年)生存例の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description乳癌肝転移例の予後は不良とされているが, 今回11例の自験5年生存例(転移診断時年齢35〜76歳)につき長期生存に寄与する因子を求めた。標準的治療とされる全身的化学療法のみで治療された例はなく, 全例にOK-432前投与肝動注養子免疫療法(以下, OK-AIT)が実施され, 他の局所療法として5例に肝切除, 2例に肝動注化学療法が併施されていた。11例中8例は初発肝転移例(初再発巣に肝を含む例), 3例は続発肝転移例(他部位再発に続発する肝転移)であり, 5年経過したAIT 実施全例128例中初発肝転移, 続発肝転移の5年生存率は各11.8%, 5%であった。ホルモン受容体(HR)は4例不明,6例陽性にて1例のみHR(−)かつHER2(+)であった。肝転移の予後, AIT の適応とHR, HER2の関連を知る目的で2001年以後の肝転移自験139例につき解析した。初発肝転移51例の50%生存期間(MST)は31か月, 5年生存率25%と予後は改善しており, 特にHR(+)HER2(−)例のMST 50か月(n=18)がHR(−)HER2(−)例の予後不良(MST 6か月, n=2)と対照的で注目された。なお, HER2(+)例のMST は27か月(n=31)であった。続発肝転移88例のMSTは11か月, 5年生存率は6%と限界があったが, MST はHR(+)HER2(−)>HER2(+)>HR(−)HER2(−)にて(各17, 13, 4か月)にて初発例と同傾向であった。ちなみにOK-AIT の奏効率は初発52%, 続発34%間に有意差はなかったが, HR(+), HR(−)間に有意差(p=0.0041)あり, HR(+)例52%, HR(−)例12%であった。なお, 過去の症例中, 初発肝転移例に肝切除, OK-AIT を併施した18例では5例に同時他部位転移があったものの56%の5年生存率が得られ,肝転移例を一律に予後不良と断ずるのは誤りと考えられた。 -
リザーバー肝動注用カテーテルの十二指腸球部逸脱の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description直腸癌, 多発肝転移の患者に対し, GDA coil法で肝動注リザーバーを留置し, 動注化学療法を開始した。肝動注後, 心窩部痛, 下血あり, 上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部への肝動注カテーテルの露出とそれに伴う潰瘍形成を認めた。PPIにて治療を行い, 逸脱したカテーテルはそのまま放置した。肝動注療法中止後, 肝転移巣は急激に増大, 肝不全に陥り死亡した。肝動注カテーテルの消化管逸脱は比較的まれな合併症である。対処法は経過観察することが多く, 次いで手術的除去, 内視鏡的カテーテル部分切除なども行われている。逸脱の原因とし, カテーテルによる十二指腸壁の外側からの圧排・穿破, GDA coil法で留置したカテーテル側孔位置の不備などによる高濃度抗癌剤への暴露などが関与していると推測されている。肝動注症例の増加と予後の改善による治療の長期化に伴い, 同様な症例を多く経験する可能性が予想される。 -
晩期癌栄養・代謝療法における肝動注ポート治療
33巻12号(2006);View Description Hide Description晩期癌治療の一環として, 肝両葉病巣症例2例に対し持続肝動注ポート療法を実施し, 直腸癌・同時性肝多発転移例では治療2か月後に病巣の消失を認め, また, 肝切除後・残肝再発肝細胞癌では約1年6か月で正常化し, 現時点で症例1は10か月, 症例2は11年半を経過しているが, 両症例ともcomplete response(CR)となっている。ともに化学療法当初より, 無塩, 動物性蛋白・脂肪制限, 胚芽成分ならびに大量の野菜や果物摂取を指導したもので, 良好な経過の一因と考えられる。その要因の分析を行い文献的にも考察する。 -
肝切除と全身化学療法により長期生存中の大腸癌多発肝転移の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は50歳, 男性。2002年10月, 前医にてS 状結腸癌および肝転移に対しS 状結腸切除術と肝部分切除術が施行された。術後は5'-DFUR による補助化学療法が施行されたが単発肝転移を認め, 2005年1月肝部分切除術が施行された。2005年5月に多発肝転移(9個)と縦隔リンパ節転移を認め当科紹介となった。FOLFOX4による全身化学療法を開始したところ, 肝転移巣は縮小率61%とPR が得られた。縦隔リンパ節はNC であったため, 8コース終了後, 胸腔鏡下リンパ節摘除術を施行した。10コース終了後の2006年1月, 新病変の出現がないため肝部分切除術とラジオ波熱凝固療法(RFA)を施行した。その後腫瘍マーカーは正常化した。治療経過中, 重篤な有害事象, 合併症なく経過した。初回治療から42か月経過後の現在, 再発の徴候なく生存中である。大腸癌術後の遠隔転移に対して, 化学療法と手術を組み合わせた集学的治療により, QOLを損なうことなく長期予後を得られる可能性がある。 -
長期生存が得られた多発肝転移を伴う他臓器浸潤大腸癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description今回われわれは, 他臓器浸潤および多発肝転移を伴う大腸癌に対して一期的肝切除術と他臓器合併局所切除術を施行し,術後5年半無再発生存した1例を経験したので報告する。症例は50歳代, 男性。検診にて便潜血陽性を指摘され精査目的で当院紹介受診となった。下部内視鏡検査にて盲腸に全周性の2型病変を認め, 生検で中分化型腺癌と診断した。腹部造影CT 検査では肝右葉の多発転移を認め, 盲腸の腫瘍は周囲組織に浸潤し一塊になっていた。多発肝転移を伴う他臓器浸潤盲腸癌と診断したが完全切除可能と判断し, 右半結腸切除術(回腸・後腹膜合併切除), 肝右葉切除術を施行した。術後補助肝動注療法を5-FU 1,500mg/週を8クール施行した。術後5年半経過するが現在も無再発生存中である。本症例のような長期生存症例もあるが, Stage IV, 局所進行大腸癌に対し拡大切除を施行する際は, 術後のQOL と手術侵襲の大きさを考慮して手術適応を決定する必要があると考える。 -
5-FU+l-LV 肝動注療法が奏効した大腸癌肝転移の2症例
33巻12号(2006);View Description Hide Description5-FU weekly high-dose(1,250mg/body)動注療法(以下, WHF 療法)を施行しSD であった大腸癌肝転移2症例に対し, 5-FU+l-LV 肝動注療法(5-FU 750mg, l-LV 50mg, weekly)を施行しCR を得たので報告する。症例1:71歳, 男性。直腸癌に対する低位前方切除後6か月で多発肝転移を認めた。WHF 療法を9回施行したがSD であった。その後5-FU+l-LV 肝動注療法を計10回施行し, 肝転移はCR となった。症例2:65歳, 男性。多発肝転移を伴う直腸癌およびS 状結腸癌に対し低位前方切除術を施行した。WHF 療法を7回施行したがSD であった。5-FU+l-LV 肝動注療法を15回施行し, 肝転移はCR となった。以上の2例においては, 肝転移巣の葉酸の枯渇が5-FU の抗腫瘍効果を制限していたと考えた。 -
直腸癌術後局所再発に対して高線量率組織内照射が奏効した1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description患者は55歳, 女性。2002年11月, 下部直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行。腫瘍は径2.3cmの2型, 組織型はwell, 進行度はmp, n3(+), P0, H0, M(−), stage IIIbであった。術後補助療法として5'-DFUR 800mg を約1年間投与した。2003年12月ごろより会陰部痛が出現し, 2004年3月, 骨盤MRIにて会陰部に3cm 大の腫瘤を認め, 生検にて腺癌との診断を得て局所再発と診断した。全身化学療法(CPT-11 230mg, 5'-DFUR 800mg)を2クール施行, 再発巣はPDと判断した。次に, 高線量率組織内照射54Gy/9Fr/5日間を施行した。2004年9月に施行した骨盤MRIでは, 再発巣はPR,CEA は最大9.3ng/ml から1.0ng/ml に低下した。高線量率組織内照射後, 画像上はNCを維持し, 会陰部痛も消失, CEAは正常範囲でコントロールできている。切除困難な直腸癌局所再発例に対し, 高線量率組織内照射は有用である可能性が示唆された。 -
高度進行肝細胞癌の静脈系腫瘍塞栓に対する放射線療法
33巻12号(2006);View Description Hide Description肝細胞癌の治療中に生じた静脈系腫瘍塞栓に対して, 放射線療法(リニアック)を施行し,その効果ならびに予後を検討した。平均年齢70歳,男性2例,女性1例。症例1:66歳, 男性。感染症なしの巨大肝細胞癌に対して門脈塞栓術施行後,体外循環下に肝切除。残肝再発, 肺転移に対してTAE 2回施行後, 呼吸困難出現, 左肝静脈より右心房に至る腫瘍塞栓を確認。肝動注療法ならびにTAE を施行するも症状改善がみられず, 放射線療法を40Gy施行。腫瘍が縮小し呼吸困難が消失し退院となった。5か月後肺炎にて死亡。症例2:74歳, 女性。C 型肝炎。多発のHCCで発見。TAEの後, 肝切除とMCT を施行。再発に対してTAE 3回とRF 施行後左乳癌発見時, 左肝静脈より下大静脈に至る腫瘍塞栓を確認。乳癌を手術, TAE 後放射線療法を48Gy腫瘍塞栓に施行。縮小をみる。4か月後肝不全ならびに肺水腫にて死亡するも腫瘍の増大はなし。症例3:79歳, 男性。多発のHCCで発見。TAEにて効果のない箇所を肝切除。再発に対してTAE 2回, RFA, MCT の際, 右心室に孤立性腫瘍栓を確認。放射線療法を50Gy行う。腫瘍の縮小あり, その後門脈腫瘍栓の出現, 肺転移, 骨転移, 大腸癌の合併があるも現在生存中である。肝細胞癌静脈系の腫瘍塞栓の制御には放射線療法が有用となる可能性が示唆された。 -
Degradable Starch Microspheres(DSM)併用肝動脈化学塞栓療法(DSM-TACE)が著効した門脈腫瘍塞栓を伴うび漫浸潤型肝細胞癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は80歳, 男性。門脈腫瘍塞栓を伴うび漫浸潤型肝細胞癌であった。DSM を用いた肝動脈化学塞栓療法(DSM-TACE)を繰り返し施行し, 原発巣および門脈腫瘍塞栓が著明に改善した。DSM-TACE は門脈腫瘍塞栓などにより, 従来のLipiodolなどを用いた肝動脈塞栓療法(TAE)が禁忌とされている高度進行肝細胞癌に対する新しい治療法となる可能性が示唆された。 -
肝細胞癌非切除例における経皮経肝門脈塞栓術の転移抑制効果
33巻12号(2006);View Description Hide Description肝切除を施行しなかった肝細胞癌(HCC)3例の臨床経過において, 経皮経肝門脈塞栓術(PTPE)が極めて有効であったので報告する。3例とも肝右葉にHCC を認め, 経動脈的化学塞栓療法(TACE)を行った後, 肝切除を前提として門脈右枝または門脈右後枝に対してPTPE を施行した。しかし, 本人が手術を希望されない, 残肝の肥大が不十分であるなどの理由で肝切除は行わなかった。全症例において原発巣はTACEでのコントロールが可能であった。経過中に新病巣の出現を認めたが,すべてPTPEを行った区域内であり, その他の区域には新病巣を認めていない。PTPEにより腫瘍細胞の経門脈的散布が防止され, 肝内の腫瘍のコントロールが良好となった可能性が考えられる。切除不能症例に対しても, 腫瘍が限局している場合には積極的にPTPE を行うことが予後の改善につながる。 -
再発, 進行胃癌に対しての大動脈内化学療法(MTX-CDDP-5-FU Double Modulation Therapy)静脈内投与との比較
33巻12号(2006);View Description Hide Description再発, 進行胃癌患者26例に, 大腿動脈からTh9のレベルに大動脈カテーテル先端をおき, 大動脈内化学療法(MTX-CDDP-5-FU double modulation therapy:IA)を行った。同薬剤, 同用量の化学療法を静脈投与(IV)で行った21例と比較検討した。奏効率はIA 群39%, IV 群50%で差は認められなかった。平均生存期間はIA 群221.2±32.8日, IV 群305.7±70.6日で, 累積生存率にも差がなかった。後腹膜リンパ節転移例を抽出し, 両群間の比較を行ったが, 奏効率はIA 群41%,IV 群では55%であり, 累積生存率においても両群に差が認められなかった。以前の薬物動態の検討では, IA がIV に比較して高濃度の薬剤が腹腔内臓器に到達していることが確かめらていたが, 臨床効果では両群に差は認められなかった。特に差がでることが期待される後腹膜リンパ節転移においても差が認められなかった。 -
The Diagnostic Value of PET-CT for Peritoneal Dissemination of Abdominal Malignancies
33巻12号(2006);View Description Hide Description -
Peritonectomyによる腹膜偽粘液腫の治療成績
33巻12号(2006);View Description Hide Description腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei:PMP)37例の外科治療成績について報告する。手術が行われた28例のうち6例が腫瘍の完全切除が施行され, 腹膜切除法により3例が完全切除できた。13例は不完全切除+腹水ドレナージ, 9例は腹水のドレナージ・洗浄のみを行った。完全切除ができた例のPeritoneal Carcinomatosis Index(PCI)は20以下であった。完全切除例の予後は良好であったが, 固形腫瘍が遺残した例では生存率は不良であった。このようにPMP では切除の完全性, PCI スコアなどを考慮し, 固形粘液部の完全切除と腹膜に付着した遊離がん細胞の洗浄を行うことが肝要である。 -
他臓器浸潤を認めるStage IV 大腸癌症例の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description術後3年以上経過した他臓器浸潤Stage IV 大腸癌症例について検討し, 外科的切除の有用性について検討した。1995年から2003年4月までに当院で大腸切除術を施行した他臓器浸潤Stage IV 大腸癌症例は19例で, 転移部位に対しても完全切除を施行した症例は11例(57.8%)であった。19例の3年生存率は21.1%で, 転移巣に対しても切除術を施行した11例の3年生存率は36.7%であった。切除不能であった8例には3年生存症例は認めず, 生存期間の中央値は8.5か月であった。予後規定因の多変量解析を行った結果, 転移巣の切除の有無のみが独立因子として残った。他臓器浸潤Stage IV 大腸癌症例に対する治療法は転移巣も含めて切除することが重要である。しかし転移巣非切除症例の予後は不良で, 転移巣非切除症例に対する手術適応は慎重に検討する必要がある。 -
直腸癌局所再発治療の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description当院で経験した直腸癌局所再発症例54例を基に再発治療の適応について検討した。局所再発率は11.2%であった。局所再発治療後の生存率は全体で5年生存率20.3%であった。治癒切除(n=23):3年74%, 非治癒切除(n=11):3年21.8%,非切除(n=20):3年0%で有意に治癒切除の予後が良好であった。臨床病理学的因子について解析した結果, ew(−)と再発時CEA 値10未満が予後因子であった。切除症例34例の平均手術時間は334.2分, 平均出血量は1,977ml であった。また,何らかの術後合併症が18例に認められた。放射線化学療法については, 予後の延長は望めず対症療法としての効果が期待された。直腸癌局所再発に対する治療は外科的な治癒切除が最も成績がよく, 非治癒切除症例では予後の改善は望めず合併症の確立も高かった。治療法決定には, 治癒切除を行うための慎重な術前評価が必要であると考える。 -
大腸癌同時性多発肝転移(H3)症例における肝所属リンパ節転移状況
33巻12号(2006);View Description Hide Description目的:大腸癌切除不能肝転移に対する肝動注療法は, 原則的に肝外病変がないことが前提となる。今回, 大腸癌同時性多発肝転移(H3)の肝外病変として, 肝所属リンパ節(HN)の転移状況について検討した。対象・方法:原発巣に対し, D2, D3郭清を伴う切除が行われた大腸癌同時性多発肝転移(H3)のうち, HN のサンプリングあるいは郭清が行われた33例のHN転移状況と臨床病理学的諸因子との関連を検討した。結果:全体で9例(27%)にHN 転移を認めた。9例の内訳は, 少なくとも総肝動脈〜固有肝動脈に沿った部位のみに転移を認めたものが3例, その他の部位のみに転移を認めたものが3例, いずれの領域にも転移を認めたものが3例であった。HN 陽性例のほうが原発巣のリンパ節転移の陽性率が高く(p=0.08), 陰性例よりCEA(p=0.02), CA19-9(p=0.05)が高かったが, その他の臨床病理学的諸因子については差を認めなかった。結語:大腸癌同時性多発肝転移に対する治療選択に当たってはHN 転移の頻度に留意し, 慎重な態度が必要である。 -
切除不能大腸癌肝転移に対するLow-Dose Leucovorin/5-FU 動注療法の治療成績
33巻12号(2006);View Description Hide Description肝外病変のない切除不能大腸癌肝転移に対する, low-dose Leucovorin/5-FU(LV/5-FU)動注療法の治療成績と有害事象を検討した。対象は1994〜2003年までに, 肝外病変のない切除不能大腸癌肝転移でLV/5-FU 動注療法を2クール以上施行した22例。投与方法はl-leucovorin(l-LV)25mg/bodyと5-FU 500mg/bodyのone shot 肝動注を5日間連日投与または週1回投与を5回で1クールとした。22例の50%生存期間(MST)は24.5か月, 奏効度CR 1例, PR 6例, NC 9例, PD 6例で奏効率31.8%であった。CR ・PR 例, NC 例, PD 例のMST は各33.5か月, 28.2か月, 9.5か月で, CR ・PR 例, NC 例で良好であった(p=0.002)。有害事象は12例(54.5%)にみられた。grade3以上は3例(13.6%)で, 全例休薬のみで回復し投与を中止した症例はなかった。切除不能大腸癌肝転移に対する肝動注化学療法として, LV/5-FU 動注療法は重篤な有害事象も少なく安全で, 有用な治療法と考えられる。 -
大腸癌肝転移における肝動注療法の効果と血漿中VEGF, Soluble Flt-1の関係
33巻12号(2006);View Description Hide Description血漿中VEGF, 可溶性Flt-1(sFlt-1)値の臨床的意義を明らかにするため, 大腸癌肝転移に対する肝動注施行患者のこれらの測定値の推移について検討した。肝動注を施行した大腸癌肝転移症例19例を対象に肝動注中の血清CEA, CA19-9,血漿VEGF, sFlt-1を測定した。これら測定値間の相関, doubling time(DT)の相関と画像上の治療効果とを検討した。VEGFはCEA, CA19-9と有意な相関はなく, DT も相関はなかった。sFlt-1はCEA と有意な正の相関があり, DT もCEA と有意な相関があったが, CA19-9とは関係はなかった。VEGF 値の変化は高率に画像上の効果と一致していた。一方, sFlt-1はPRと一致して減少したものはなかったが, 高率にPD と一致して上昇していた。以上から, 肝転移が縮小してもsFlt-1の低下に反映されないか, あるいはsFlt-1の半減期がかなり長い可能性が示唆された。 -
大腸癌肝転移切除後補助療法としての肝動注の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description大腸癌肝転移切除後補助化学療法として肝動注が有用性であるか否かを検討した。対象は大腸癌肝転移切除後に補助化学療法を施行した25例で, 肝動注を施行した群(肝動注群)が17例, 全身化学療法を施行した群(全身化学療法群)が8例であった。両群の再発形式および予後を比較検討した。患者背景に差は認めなかった。肝動注群は全身化学療法群に比べ, 肝内再発率は低く肝外再発率は高かったが, ともに有意差を認めなかった。さらに, 肝動注群と全身化学療法群の1, 3, 5年累積生存率の比較ではそれぞれ94, 72, 49%と100, 100, 50%であり(p=0.29), 肝動注による生存期間の延長は認めなかった。今回の検討で肝動注単独の補助化学療法では有用性が認められず, 肝外再発を防ぐために全身化学療法を併用する必要性が示唆された。 -
門脈内腫瘍栓と多発肝内転移を伴う進行癌に対する減量肝切除術とIFN-α併用化学療法—Preliminary Study—
33巻12号(2006);View Description Hide Description最近, われわれは難治性進行肝細胞癌に対してIFN-α併用化学療法(以下, FAIT)の有用性について報告してきた。本論文では, このような進行肝細胞癌症例に対し, 減量肝切除術施行後, 残存肝病巣に対してFAIT を施行した15例の成績について報告する。対象は, 片葉の主腫瘍と多発肝内病変に門脈内腫瘍栓(Vp4)を伴う肝細胞癌15例。主病変に対する減量肝切除と残存肝病巣に対するFAIT を施行した。5-FU は300mg/m2/日, 2週間投与・2週間休薬の4週間を1クールとしてカテーテルより持続動注した。同時にIFN-αを5×10 6単位/回, 3回/週, 4週間を通じて皮下投与した。15例全例において,術後FAIT を2クール以上完遂し得た。肝内病巣に対する治療効果は, CR 4例, PR 2例の計6例(40.0%)において有効であった。全15例の1年, 3年生存率は48%, 21%であった。以上の結果, FAIT は門脈内腫瘍栓と全肝多発病変を認める進行肝細胞癌症例に対して, 減量肝切除とともに施行することにより, 一定の予後改善効果を認めた。今後は治療前有効症例の選別が重要課題となる。 -
Destructive Effect of Percutaneous Hydrochloric Acid Injection Therapy for Liver Cancer—A Preliminary Experimental and Clinical Study—
33巻12号(2006);View Description Hide Description目的:塩酸とエタノールおよび酢酸の組織凝固と抗腫瘍作用の比較を検討する。CT が介する経皮的塩酸注入療法の原位破壊作用とその安全性を評価する。方法:胃液と10%希塩酸がin vitro におけるがん細胞系に対するIC50を測定する。in vitroとin vivo において塩酸のブタの肝臓に対する凝固性壊死の範囲を観察する。6mol/l 塩酸溶液(HAS6)のブタの肝臓と筋肉に対する凝固作用を50%酢酸と無水エタノールと比較する。肝がん30例中38病変に対して, CT が介する経皮的塩酸注入療法を応用する。原位破壊率, CT による評価, 組織病理学的検討, 生存率および副作用を観察する。結果:培養がん細胞系に対する胃液と10%希塩酸のIC50は, ほぼ同等で約0.05〜0.07%である。1ml の1.5〜12mol/l の塩酸を肝組織に注射した結果,凝固される範囲は直径18.3〜53.4mmであった。球状の白灰色の凝固範囲は正常組織と境界がはっきりした。6mol/l 塩酸溶液は比較的大きい病変に凝固作用を発揮し, これは無水エタノールの作用の15倍に相当し, 50%酢酸の作用の5倍に相当した。局部注射の常用量では毒性が示さなかった。臨床には, 経皮的塩酸注入療法73回実施し, CT では治療24時間以後, 低密度やガス状空洞, 造影剤にenhanceされないことが認められた。PET や生検およびAFP 測定などにより, 完全壊死と破壊率が観察された。1年, 2年, 3年生存率は100, 90と85%, 9例と2例は長期生存率で, それぞれ3年と4年を経過した。治療による心臓, 肝腎臓機能の異変が認められなかった。主なる副作用は軽い疼痛, 微熱であった。結論:6mol/l 塩酸溶液(HAS6)は, 内生性蛋白質凝固剤として, がん組織凝固作用において50%酢酸と無水エタノール注入より優れている。CT が介する経皮的塩酸注入療法は優れた組織破壊作用を示し, 将来50%酢酸と無水エタノールの代わりに腫瘍の低侵襲的な経皮的治療法として, 安全的でコントロールしやすく毒性のないものである。 -
当科における胸腔鏡下ラジオ波凝固療法手技の特徴
33巻12号(2006);View Description Hide Description肝腫瘍に対するラジオ波焼灼療法はアプローチにおいて使い分けが必要である。特に横隔膜下の腫瘍は経皮経路のみでは穿刺治療が困難な症例が少なくない。当科では, 2000年1月より横隔膜下肝表面の腫瘍48例に対して胸腔鏡下での直達的RFA を行った。対象症例は肝細胞癌(HCC)43例, 腺腫様過形成1例, 転移性肝癌4例であり, 肝細胞癌43例のStage分類は, I/II/III(22/17/4), liver damageの分類は, A/B/C(23/20/0)であった。手術平均時間は237分で平均出血は29.0ml,平均腫瘍径は2.6cmで凝固の平均回数は4.5回であった。鏡視下操作と横隔膜切開による直達的RFA が可能であった症例は27症例(56%)であった。また, 胸腔鏡操作のみ可能で横隔膜下の癒着により横隔膜切開が困難であった症例が15例, 胸腔鏡操作が困難であり開胸となった症例が6例あった。胸腔内癒着は22例, 腹腔内癒着は16例に認められ, 手術, PEIT, TACEなどの先行治療と関係していると考えられた。術後の平均在院日数は9.7日で腹腔鏡下RFA と有意差なく, この間の大きな合併症は特になかった。胸腔鏡下RFA の特徴は横隔膜下肝表面に対して直視下の治療が行え, 確実な治療が期待できる一方,胸腔内癒着, 腹腔内癒着の2種類が関与し, 操作野が制限されることがあげられ, 先行治療を有する症例では注意を要する。 -
脳転移を有する肺癌に対する気管支動脈内抗癌剤注入療法(BAI)の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description対象:過去5年間に肺癌脳転移のhigh risk 症例に対し, 原発巣制御の目的で気管支動脈内抗癌剤注入療法(BAI)を行った7例。方法:BAIは脳転移の治療後3か月以内にCDDP(40〜80mg/m2)+CPT-11(40〜60mg/m2)の2剤をone shotで注入し治療効果, 副作用, QOL, 予後を検討した。結果:画像上効果は全例SD。grade2以上の副作用を認めなかった。臨床的に全例で呼吸器症状(咳嗽, 労作時呼吸困難, 血痰)の消失軽減を認め, QOLは向上した。予後は6例で脳転移治療後3〜30か月死亡, 生存期間中央値12か月, 死因は脳転移再燃3例, 肺原発巣悪化1例, 肺原発巣・脳転移とも悪化2例であった。予後と原発巣の関連ではcStage上T, N 因子の進行している症例で予後不良であった。考案:肺癌脳転移に対するBAIはQOL向上において有効であり, T, N 因子の進行していないhigh risk 症例では積極的に施行するべきと考えられた。 -
切除不能局所進行膵臓癌に対する低用量Gemcitabine併用放射線化学療法の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description目的:切除不能局所進行膵臓癌に対する低用量gemcitabine併用放射線化学療法の検討。方法:対象は切除不能局所進行膵臓癌症例9例。非切除例はバイパス手術と術中照射(8〜10cm コーン使用, 20〜25Gy)実施。術後体外照射は合計50Gyを週5回×5週間に分割照射。体外照射実施期間中, gemcitabineを40mg/m2を投与。結果:gemcitabineは週1回投与で7例中2例にgrade3の白血球減少症が出現。腫瘍マーカーの平均減少率はCA19-9が60.1%, DUPAN-2が52.6%。CT 画像では腫瘍の縮小は認められたが, 完全消失に至らず。平均生存期間は10か月。再発形式は腹膜再発が3例。再発時期は平均7か月目。考察:低用量gemcitabine併用放射線化学療法は局所制御に寄与する可能性はあるが, 著しい生存期間の延長には結び付かず。腹膜再発が予後を左右すると考えられた。 -
キトサンを利用したCis-Platinum 局所投与の試み
33巻12号(2006);View Description Hide Descriptioncis-platinum(CDDP)を標的部位に停留させて局所で徐放させる剤形開発を試みている。薬物担体として, 70%脱アセチル化キチン(DAC-70), キトサンを使用。CDDP を担持させて新剤形とした。停留性は, ヒト大腸粘膜に対する接着力をex vivo で測定して評価。徐放性は, 新剤形をmedium 中でincubateし, 経時的にin vitro で放出動態を検討した。新剤形の形状は粘性の流体とした。ヒト大腸粘膜との接着力は, 37℃の場合, 25℃に比較して高値を示した。PBS 溶液中37℃でincubateした場合, 6時間で総担持量の10%が放出され, 72時間まではわずかに増加した。lysozyme添加mediumでは, 6時間20%,72時間までの放出もわずかな増加にとどまった。DAC-70をCDDPの担体とした場合, ヒト粘膜組織に対する停留性は良好と判断された。一方, CDDP 放出は極めて遅く徐放化製剤として臨床に利用するには, 担体としたキチンの分解性の検討が必要と考えられた。 -
化学療法および化学放射線療法が奏効した食道小細胞癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description食道小細胞癌は各種治療によっても早期に再発を来す予後不良な疾患である。今回われわれは, 両側上縦隔転移を伴った食道小細胞癌に対してCPT-11, CDDP 併用による化学療法を行った1例を経験した。症例は62歳, 男性。食物通過障害を契機に食道小細胞癌と診断された。上縦隔リンパ節転移を伴うことからCPT-11, CDDP 併用療法を2クール施行し病変の縮小を認め退院した。その後3クール追加したが, 2005年11月右頸部リンパ節再燃を来しdocetaxel 15mg weekly投与併用放射線療法を施行し, 現在に至るまで良好に経過している。食道小細胞癌は肺小細胞癌と組織学的類似性から肺に準じた集学的治療が行われてきた。今回用いたCPT-11, CDDP 併用療法は肺小細胞癌において有意に良好な生存期間を得られた方法であり, 食道小細胞癌に対しても有効な資料方法であった。 -
QOL を考慮し局所療法を施行した食道, 胃, 口腔, 肺4重複癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description患者は86歳, 男性。2003年7月に右顎下部腫瘤, タール便で当院紹介された。内視鏡およびCT 検査により, 右頬粘膜癌+右頸部リンパ節転移, 胃癌2病変, 右肺上葉に肺癌を疑う腫瘤影を指摘された。まず, 頬粘膜癌に対する手術を施行した。その後, 食道表在癌を指摘された。術後体力低下が著しく高齢であることから, 食道癌に対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR), 胃癌に対してはEMR+アルゴンプラズマ焼灼術(APC)を施行した。肺癌に関しては対症療法のみとした。18か月後, 肺癌により死亡したが経過中のQOLは良好で, 頬粘膜癌, 食道癌の再発は認めず胃癌に関しては症状なくcontrol可能であった。本症例のように多臓器にわたる重複癌の治療では種々の因子が絡むため, 治療法の選択に苦慮することが多い。高齢者の場合では, 症例に応じてQOL を重んじた治療法を選択することが妥当だと考える。 -
Imatinib MesilateによるNeoadjuvant 療法が奏効し安全な外科的切除が施行できた胃GIST の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description腫瘍サイズが大きく膵への直接浸潤を伴う胃GIST に対し, imatinib mesilate(imatinib)によるneoadjuvant 療法を施行し, 安全な切除が施行できた1例を経験したので報告する。症例:65歳, 男性。現病歴:健診にて腹部腫瘤を指摘され, 2005年9月当院初診。画像検査所見:上部消化管内視鏡検査;胃体中部大弯後壁に粘膜下腫瘍を認めた。生検結果はGIST であった。腹部造影CT 検査;膵浸潤を疑う長径13cmの腫瘤を認めた。治療後経過:切除可能ながらも手術リスクが高いと考え, 2005年11月1日からimatinibによるneoadjuvant 療法を開始した。顔面の浮腫と眩暈のため休薬を要した期間もあったが(相対薬剤強度:87.5%), 3か月後の腹部造影CT で, 縮小率35.6%, 周囲臓器への直接浸潤も消失したため, 安全な外科的切除が施行できると判断し, 2006年3月6日に胃局所切除術を施行した。術後経過は順調で, 術後9日目に退院となった。退院後3か月経過した現在, 無再発生存中である。 -
胃癌に合併した扁平隆起型十二指腸腺腫内癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description十二指腸腺腫はまれな疾患であり, そのなかでも扁平に隆起した型の腺腫は少ない。今回, 胃癌に合併した扁平隆起型十二指腸腺腫内癌の1例を経験した。58歳, 男性。胃癌を指摘され当院を受診。上部消化管内視鏡では, 胃癌の他に十二指腸下行脚にも長径約6cmの扁平な隆起性病変を認めた。生検はgroup 3であり, 胃癌, 十二指腸腺腫の診断で幽門側胃切除および十二指腸分節切除を行った。病理所見は, 胃癌は低分化型腺癌, sm1 n0, 十二指腸腫瘍は絨毛状に発育し一部に癌化を認め,高分化型腺癌, 深達度mであった。十二指腸腺腫では, 生検で腺腫と診断されても癌が合併する可能性があり, 病巣全体を切除することが望ましい。扁平隆起型十二指腸腺腫に対して, 内視鏡的切除が可能な場合は第一選択となるが, それが困難な場合は外科的局所切除が必要であり, その際, 分節切除はよい選択肢の一つとなり得る。 -
T4胃癌症例に対するPalliative Surgeryの延長としての切除先行・術後化学療法によるQOL と予後改善の試み
33巻12号(2006);View Description Hide Description局所進行胃癌に対してpalliative gastrectomyは出血や通過障害の症状緩和に有効であるが, 予後改善にはつながらない。今回われわれは出血や通過障害の症状を有するT4胃癌患者に対して, palliative gastrectomyの延長として浸潤臓器合併切除と術後化学療法を行うことがQOLや予後改善につながるかどうか検討した。2003年から2005年までに藤崎病院外科にて出血や通過障害の症状をもつT4胃癌症例6例に対し複数臓器合併切除が行われた。浸潤臓器は膵臓が5例, 横行結腸と胆嚢が1例であった。浸潤臓器を完全に切除したのが5例, 遺残があったのが1例であり, 4例が病理組織検査で切除断端陰性であった。縫合不全は1例もなかった。いずれも術後経口摂取良好だった。入院中から3例が化学療法を開始した(TS-1+CDDP)。退院後5例においてTS-1内服が行われた。4例において1年以上にわたりPS が0〜1が保たれた。2例は社会復帰を果たした。生存日数中央値は>419.5日であった。出血あるいは通過障害を来したT4胃癌患者に対しpalliative gastrectomyの延長として可及的切除を行い, 術後化学療法を追加することによりQOL と予後の改善に貢献する可能性があると考えられた。 -
A Case Report — The Marked Response to Gemcitabine Combined with Irinotecan and Low-Dose Cisplatin Chemotherapy for Advanced Gastric Cancer with Multiple Liver Metastases
33巻12号(2006);View Description Hide Description多発肝転移を伴った3型進行胃癌に対してgemcitabine, cisplatinおよびirinotecanを用いた化学療法を施行したところ, 肝転移に対して著効したので報告する。症例は69 歳, 男性。検診胃X 線検査で異常を指摘され, 近医を受診。多発肝転移を伴う切除不能胃癌と診断され, 当院にてgemcitabine(800 mg/body), cisplatin(25 mg/body)およびirinotecan(60mg/body)による化学療法を施行した。3コースにて肝転移の著明な縮小ならびにリンパ節転移の縮小を認めた。初回のみ入院治療で, 以降外来にて特に副作用を認めず, 現在までに12コース施行し, QOL を損ねることなくPR を維持できている。gemcitabineは, 他の抗癌剤との併用にて相乗効果を示すことが種々の消化器癌において報告されており, 自験例からも切除不能進行胃癌にも有効である可能性が示唆された。 -
治療拒否の対応に苦慮しながらも化学療法とステントで良好なQOL を得た胃癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は57歳, 男性。10年来精神障害とアルコール依存症で精神科に入退院を繰り返していた。2004年5月, 精査のため当科紹介され, L 領域前壁の2型の胃癌, T2(SS), N2, 進行度はstage IIIAと診断した。治療方針は手術を前提としたTS-1+CDDP による術前化学療法とした。しかしその後, 手術は受け入れず2005年1月まで合計7クール施行し, 約8か月間にわたってPR を維持し得た。その後治療をすべて拒否し, 同年7月に腫瘍の再燃による幽門狭窄を来すまで受診しなかった。本人の希望を考慮し8月に内視鏡下に胃瘻を造設, 胃瘻から幽門狭窄部にステントを留置し経口摂取可能とした。以後死亡するまでの3か月間, 良好なQOL を得ることができた。ステント留置は, 治療方針の多様化に対応するための有効な処置の一つとなると考えられた。 -
加齢による腎機能低下を考慮したTS-1単剤の減量投与が有効かつ安全であった進行胃癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description加齢による腎機能低下症例に対し, 2段階減量によるTS-1単剤投与が有効であった進行胃癌の1例を経験したので報告する。症例は75歳, 女性。多発肝転移を伴うstage IV 胃癌に対し, TS-1を1次治療として開始した。投与量は推定クレアチニン・クリアランス(Ccr)値が38ml/minであったため, 2段階減量の50mg/day, 4週投薬2週休薬を1コースとした。2コース終了時には腫瘍縮小が認められ, 治療開始から1年4か月を経過し, 現在(2006年5月)12コース目を施行中であるが, PS は0, 腫瘍マーカーも正常で肝転移巣は縮小率90%以上の有効性を継続している。治療期間中に血液毒性, またgrade3以上の非血液毒性は認めず, 相対薬剤強度は100%であった。年齢とCcr値は負の相関を示すため, 高齢者胃癌に対するTS-1治療において, 推定Ccr値からの減量投与開始を考慮することは重要であると考えられた。 -
TS-1+CDDP 療法不応後のTS-1+Docetaxel療法により切除可能となった切除不能胃癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は60歳代, 男性。心窩部痛にて当院初診した。上部消化管内視鏡検査で前庭部後壁に進行胃癌を認めた。腹部CTにて傍大動脈リンパ節転移を認めた。根治切除不能であるため, 術前化学療法を施行した。TS-1+low-dose CDDP 療法を施行したが, 1クール終了時点で奏効が得られず治療を終了した。second-lineとして, TS-1+docetaxel療法を施行した。レジメンは, 80mg/m2のTS-1を2週投与2週休薬とし, docetaxel 25mg/m2をday1, 8, 15に投与し, 1クールを4週とした。3クール後の効果判定はpartial responseであった。有害事象としてgrade2の白血球減少とgrade3の好中球減少を認めた。根治切除可能と判断し, 幽門側胃切除(D2郭清+傍大動脈リンパ節郭清)を施行した。組織学的効果判定ではGrade2。治療開始から20か月無再発生存中である。TS-1+CDDP 療法不応後のsecond-lineとしてTS-1+docetaxel療法も有望な治療である。 -
切除不能胃癌に対してTS-1+CDDP 療法により切除可能となった2例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例1:30歳, 男性。食欲不振, 吐血を認め精査にてスキルス胃癌と診断。腹腔鏡下生検を施行しGroup V であり, T3N3P1H0M1, Stage IV の術前診断であった。TS-1+CDDP 療法による術前化学療法(NAC)を3クール施行。内視鏡検査および画像検査にて著明な腫瘍縮小効果を認め, 胃全摘術, 小腸切除, 胆嚢摘出術施行。病理所見ではtype4, por2, pT3(ss), ly1, v0, pN0, pM1(胆嚢, 小腸), pStage IV であった。症例2:55歳, 男性。心窩部痛を認め精査にてスキルス胃癌と診断。T3N1P1H0M0, Stage IIIA の術前診断であった。手術施行するも切除不能にて胃空腸吻合施行。TS-1+CDDPを3クール施行。内視鏡検査および画像検査にて著明な腫瘍縮小効果を認め, 幽門側胃切除を施行。病理所見ではtype4, por2, pT3(ss), ly2, v1, pN1, p1, pStage IV であった。切除不能胃癌の予後は不良であり, 確立した治療指針はないが, TS-1+CDDP 療法により手術可能になる症例もあり, 延命効果も期待され有用な治療法と考えられた。 -
TS-1単剤治療抵抗性の癌性腹水がTS-1+Paclitaxel併用療法により完全消失した胃癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は38歳, 女性。胃体中部から上部小弯中心の2型胃癌(低分化型腺癌)に対し, 胃全摘, Roux-en Y 再建術を施行した(fT3N1M0H0P0CY1, Stage IV)。術後にCY1に対してTS-1単剤治療(80mg/m2/day, 4週投薬2週休薬)を開始したが, 2コース終了後に著明な癌性腹水の出現とCA19-9の上昇を認めたため, PD と判定した。二次治療としてTS-1+paclitaxel併用療法(TS-1 80mg/m2/day:day1〜14, paclitaxel 50mg/m2:day1, 8, 1コースは21日間)を開始したところ, 5コース終了時には癌性腹水は完全消失し, CA19-9も正常化した。その後約2年間, 合計29コース施行したが食道-空腸吻合部の局所再発を認めたため, 外科的切除術を施行した。その際CY は0であり, 初回手術から3年8か月を経過した現在,無再発生存中である。 -
乳癌肝転移のコントロールに対してラジオ波焼灼療法(RFA)を行った2例
33巻12号(2006);View Description Hide Descriptionわれわれは, 生命期間の延長をめざして行った乳癌肝転移におけるラジオ波焼灼療法(RFA)の局所治療を2例に行ったので報告する。症例1:50歳, 女性。2002年12月, 左乳癌(stage IIIa)に対して乳房切除術を受けた。2004年4月に多発性肝転移, 左鎖骨上リンパ節転移, 多発性骨転移が出現, paclitaxel+trastuzumabのweekly療法を16回行い, 肝転移巣の著明な縮小を認めた。さらに続けたところ肝転移巣が再び増大傾向を示したため, RFA とdocetaxelによる肝動注療法に変更し肝転移巣のコントロールに努めた。肝転移出現から約20か月後病変が急速に進行し死亡した。症例2:65歳, 女性。1984年に左乳癌(stage IIA)に対して乳房切除術を受け, 術後外来通院中, 遠隔転移は経過を通じて認められなかった。2005年3月に他院で肝機能異常を指摘されたのをきっかけに, 当院にて精査を行い乳癌による多発性肝転移および骨転移と診断した。2005年5月に肝転移巣に対して, 抗癌剤治療を希望しないためRFA を施行した。2回目のRFA を施行後は, 約10か月経過した現在, 肝臓内に新たな転移巣は出現していない。 -
胆管ステントが著効した乳癌肝転移に伴って出現した閉塞性黄疸の2例
33巻12号(2006);View Description Hide Description黄疸を呈する乳癌肝転移は予後不良であり, ほとんどは積極的な治療は行われていない。しかし, 今回われわれは, 局所療法として胆管ステントを挿入することでQOLの向上を得たので報告する。症例1:63歳, 女性。左乳癌にて, 1989年1月に胸筋温存乳房切除術および腋窩リンパ節を施行。以後, 化学療法およびホルモン療法を継続。術後16年目に肝機能障害を認め, T-Bil 5.5mg/dl と上昇した。多発性肝転移と肝内胆管の拡張を認めた。胆管ステントを留置し, 減黄処置を施行した。挿入後3か月経過したがT-Bil の上昇は認めなかった。症例2:49歳, 女性。右乳癌の診断にて, 2000年6月に乳房温存切除術施行。2005年10月に肝実質性転移を認め, 肝内胆管の拡張を認めたため胆道ステントを挿入した。まとめ:乳癌肝転移に伴って出現した閉塞性黄疸に胆道ステント留置がQOL を向上させることが示唆された。 -
ガンマナイフ治療により脳転移に対して良好なコントロールが得られている再発乳癌の2例
33巻12号(2006);View Description Hide Description脳転移に対してガンマナイフ治療により良好なコントロールが得られている再発乳癌の2例を報告する。症例1は50歳,女性。1993年9月に右乳癌にて胸筋温存乳房切除術を施行した。2000年6月に多発性肝転移にて再発。肝動注化学療法を含めたCEF 療法の後, 拡大肝右葉切除術を施行した。その後, 右癌性胸膜炎にて胸膜癒着術を, 転移性卵巣腫瘍の捻転にて子宮全摘+両側付属器切除術を施行した。2005年4月, MRI にて右中脳に径1cm の脳転移を認め, ガンマナイフ治療を施行した。全身治療はweekly paclitaxel療法からcapecitabineに変更, 現在, 外来通院治療を継続している。症例2は56歳, 女性。2002年11月に右乳癌にて全乳腺切除術, 腋窩リンパ節郭清術を施行した。2004年10月に頭蓋底転移にて再発, ガンマナイフ治療を施行した。全身治療はanastrozoleに加えてweekly paclitaxel療法を導入した。上記2例ともに2006年3月現在, 脳転移巣の増大は認められず, 良好なコントロールが得られている。 -
髄膜転移・眼窩転移を呈し集学的治療が奏効した進行両側乳癌
33巻12号(2006);View Description Hide Description乳癌の髄膜転移は脳実質転移に比べて頻度は低い。両側乳癌に併発し, 髄膜転移を呈した進行乳癌の1例を経験した。症例は51歳, 女性。両側乳房腫瘤を主訴に来院し, 精査したところ, 両側乳癌, 右側胸膜転移, 髄膜播種, 右眼窩転移(T4bN3cM1, Stage IV)の診断であった。trastuzumabの投与を開始し, 右眼窩転移に対して放射線療法(20Gy)と髄膜転移に全脳照射(30Gy)を施行した。終了後, aromatase inhibitorの投与を開始。trastuzumab 9回が終了した時点で眼瞼は完全に閉じるようになったが, 両側乳癌の腫瘍径に変化はなかった。髄膜転移部に画像診断上変化はなかったが, 頭痛の症状は消失した。1年後の原発巣の針生検でHER2 score(1+)となったため, paclitaxelに変更したが腫瘍マーカーの再上昇を認めたためTS-1に変更した。経過中grade2の好中球減少を認めたが, 他に重篤な副作用を認めず治療を中断することなく1年半が経過しており, 良好なQOL が保たれている。 -
局所再発切除後5年間無再発生存中の臀部悪性線維性組織球腫の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は67歳, 女性。1995年左臀部の腫瘤を自覚し増大傾向を認めたため当科を受診した。受診時のCT にて臀部の皮下軟部組織に大きさ約8cm の腫瘤を認め, 直腸を右へ圧排する内部が不均一な腫瘤を認めた。増大傾向から軟部悪性腫瘍を疑い, 12月腫瘤摘出術を施行した。大きさは13×10×8cm であり, 内部は不均一で表面は被膜で覆われていた。病理学的にはmalignant fibrous histiocytoma(MFH)と診断された。1996年9月に左臀部と会陰部に各1個腫瘤を触知し, MFH の再発を疑い, 11月再度腫瘤摘出術を行った。病理診断ではMFH の再発であった。その後も定期的に経過観察を行い, 2000年12月に再び左臀部に腫瘤を認め増大傾向を示し, 2001年1月に腫瘤摘出術を行い, 病理検査でMFH の再発と診断された。2001年の手術以後, 約5年の無再発生存中である。 -
子宮癌再発に伴う難治性腹水に対しダブルデンバーシャント留置が有効であった1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例:59歳, 女性。2000年2月, 子宮癌の診断にて子宮付属器摘出術を施行。2004年11月, 子宮癌再発に伴う難治性腹水の診断となった。12月28日に右鎖骨下静脈に流入するルートで腹腔-静脈シャント(Denver Biomedical)を留置し, 腹水が減少した。2005年1月20日, 再び腹水が増悪, 腹腔側シャントチューブ閉塞の診断にて同チューブを交換し, 腹水貯留の改善をみた。しかし3月28日, 再々度腹水の増悪を来し, 精査にてシャントチューブを中心とした隔壁形成によると思われる左側腹水貯留と診断し, 新たに左鎖骨下静脈に流入するルートで腹腔-静脈シャントを追加留置し, 4月29日軽快退院となった。その後に明らかな合併症や腹水の増悪は認めなかったが, 同年11月28日, 現病死となった。まとめ:今回われわれは, 腹腔内に隔壁を有する難治性腹水症例に対し, 左右鎖骨下静脈に流入する2本の腹腔-静脈シャントを留置して著明な腹水の改善をみた症例を経験したので報告した。 -
門脈腫瘍栓を伴った肝細胞癌に対し積極的な集学的治療を行った結果 予後の改善が得られたと考えられる4例
33巻12号(2006);View Description Hide Description当科では門脈腫瘍栓を伴った肝細胞癌に対し, 手術を含め積極的に集学的治療を行っている。その結果, 予後の改善が得られたと考えられる4例を経験したので報告する。症例1:門脈左枝の腫瘍栓, 外側区域中心の腫瘍に対し, 肝動注, 放射線治療を施行。一度は縮小したが門脈右枝内に腫瘍栓を認めるようになったため, TAI, 手術を施行し, 門脈腫瘍栓診断後約9か月後に永眠。症例2:肝右葉の腫瘍, 門脈右枝腫瘍栓に対し手術を施行。残肝腫瘍に対しTAI, TAEを施行。門脈腫瘍栓診断後約12か月後に永眠。症例3:前区域中心の腫瘍, 門脈右枝腫瘍栓に対し手術施行。その後, TAI, TAE, PMCT を施行。門脈腫瘍栓診断後2年9か月経過しているが単発の再発あるも生存中。症例4:後区域中心の腫瘍, 門脈右枝腫瘍栓に対し手術を施行。再発あり, 肝動注, TAE, 放射線治療を施行。門脈腫瘍栓診断後約1年8か月経過しているが無再発にて生存中である。 -
肝動注化学療法が奏効し良好なQOL が得られている難治性進行肝細胞癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例73歳, 男性。HCV, HBV 陽性。他院にて肝細胞癌に対して肝切除術を2回, 再発にTAE を計4回施行されTAE が無効となり, 全身倦怠感も現れたために当科紹介となった。肝機能はChild分類A, AFPは6,737ng/ml。腹部CT検査で肝右葉を中心に多発病巣と左副腎転移を認めた。肝動注ポートを挿入後, 5-FU 750mg+CDDP 10mg を2週間に1回のペースで6回施行。腹部CT 検査での評価はNC, AFP は794ng/ml まで低下し, 本人の症状も著明に改善した。その後,AFP 1,454ng/ml と再上昇を認めたため, EPI 40mg(隔週の肝動注)+UFT-E 300mg(4週間内服後1週間休み)に変更した。食欲低下grade2の非血液毒性を認めたが, 化学療法の中断と経口栄養剤の投与で症状軽快。現在, AFPは54ng/ml まで低下し, 肝動注化学療法開始後約1年を経過するが腫瘍の増大を認めず, 良好なQOL が保たれている。 -
門脈内腫瘍栓(Vp2)を伴う肝細胞癌に対しTACE を施行しCR が得られた1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description門脈内腫瘍栓(Vp2)を伴う肝細胞癌に対し, 経肝動脈的化学塞栓療法(TACE)を施行し, complete response(CR)が得られた後2年4か月無再発生存中の1例を経験したので報告する。症例は67歳, 男性。肝S5の門脈枝P5より後区域枝に至る門脈内腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対して, 選択的にTACE を施行した。TACE 後腫瘍マーカーは正常化し, 門脈内腫瘍栓は退縮した。また, 肝S5亜区域の肝梗塞を認めた。以後, 同部位に腫瘍の再発を認めず, 初回TACE 後2年4か月経過した現在まで生存中である。本症例は, 門脈内腫瘍栓を伴う区域に対する動脈塞栓による肝血流の完全な低下のため, TACEが著効したと考えられた。このように, 肝予備能がある程度保持されていれば塞栓領域の限局した門脈内腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対するTACE は, 治療の選択肢の一つになると思われた。 -
内科的局所治療後に腹腔内播種性再発を来した肝細胞癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は73歳, 男性。68歳時に, 肝S7に径4.0cm 大の肝細胞癌にて肝後区域切除術施行。72歳時, 肝尾状葉右側に径3.2cm 大の腫瘍性病変を指摘され, 経皮的エタノール注入療法(PEIT)および肝動脈塞栓術(TAE)を施行されるが, 効果不十分のため当院紹介受診となった。腹部CT 検査では肝尾状葉に径3.2cm 大の腫瘍性病変を認め, 造影早期相にて濃染像を呈し, 平衡相にて低吸収域を呈する。また, その頭側に腫瘍と接するように径1.5cm 大の不整形の早期濃染像を認めたため, 肝細胞癌再発と診断し手術を施行した。手術所見では肝尾状葉および下大静脈と接する腫瘍を二つ認め, そのうちの一つは肝尾状葉および下大静脈ともに剥離可能で独立して存在し, 病理組織学的にリンパ節構造を認めず肝細胞癌の腹膜播種と診断した。内科的局所治療の適応に際しては, その局在を十分に考慮した治療方針の決定が必要であると考えられた。 -
肝細胞癌術後リンパ節転移再発に対しリンパ節摘出術を施行した1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は60歳代, 男性。C 型肝炎の経過観察中にAFP(1,104ng/ml)上昇を契機に肝S3のHCC(単発, 44mm)を指摘され, 肝外側区域部分切除術施行。組織学的診断は中分化型肝細胞癌〔fc(+), fc-inf(+), sf(+), s0, vp0, vv0, va0, b0, im0, sm(−), T2N0M0, Stage II, Cur A2〕であった。術後いったんAFP 値は正常化したが, 術後9か月目に再度上昇(11,293ng/ml)。精査にて腹腔内リンパ節転移が指摘された。肝内および他臓器転移を認めなかったため孤立性のリンパ節再発と診断し, リンパ節摘出術を施行した。現在, AFP 値は正常化し, 初回肝切除より30か月(リンパ節摘出術より19か月)無担癌で生存中である。異時性のリンパ節再発に対する外科的摘出術は, 予後の改善に寄与する可能性が示唆された。しかし, さらなる症例の蓄積が必要である。 -
集学的治療により42か月の無再発生存が得られているリンパ節転移陽性混合型肝癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description混合型肝癌はまれなタイプの肝癌である。リンパ節転移陽性混合型肝癌の予後は極めて不良だが, 集学的治療にて長期生存が得られた症例を経験したので報告する。症例は52歳, 男性。2002年11月, 9cm 大の肝腫瘍を指摘された。CT, MRIから胆管細胞癌を第一に考えたが, 肝動脈化学塞栓療法(TACE)後のCT で部分的にLipiodolの集積を認め, AFP の上昇もあり混合型肝癌と診断した。2003年1月, リンパ節郭清を伴う肝右3区域切除術を行った。腫瘍の大部分は胆管細胞癌成分であったが, 一部が免疫組織染色でAFP 陽性, CK7陽性, CK19陽性を示す混合型肝癌であった。12番, 13番リンパ節に転移を認めた。補助療法としてCDDP, 5-FU を用いた全身化学療法を2クールと放射線療法(50Gy)を追加した。経過中, CEAの軽度上昇を認め, TS-1の内服を24か月行っている。術後3年半経過後も無再発生存中である。 -
放射線療法, 化学療法による集学的治療にて長期生存を得ている進行肝内胆管癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は56歳, 男性。2002年1月, 肝前区域を主座とする径7cmの腫瘍を指摘され, 当科にて肝中央二区域切除術を施行した。病理診断は脈管浸潤を伴う中分化型肝内胆管癌(ICC)で, 術後に補助肝動注化学療法を行った。同年12月, 第12胸椎, 左腸骨に骨転移を認め放射線療法30Gyを施行し, bisphosphonateの点滴静注を開始した。2003年5月, 多発する肝内再発を認め肝動脈化学塞栓療法を2回行い, 5か所の経皮的ラジオ波凝固療法を追加施行した。2003年9月, 肺転移を認めたためTS-1の内服を開始した。肝切除術より4年6か月を経過した現在, 新たな肝内再発は認めず, 肺転移, 骨転移ともにコントロール良好でPS 0にて外来通院中である。ICC に対する肝切除術以外の有効な治療法は確立されていないが, 集学的治療が予後を延長させる可能性が示唆された。 -
胆管ステント留置および漢方薬内服のみで良好なQOL が得られた進行肝門部胆管癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description進行肝門部胆管癌の予後は不良で, 体表からの胆管チューブ留置が必要となる。胆管ステントは黄疸と胆管炎を軽減し,胆管チューブも不要となるためQOL 向上に有用である。今回われわれは, 切除不能肝門部胆管癌と診断され内視鏡的に胆管ステントを留置し, 外来通院のみで比較的長期間良好な経過をたどっている1例を経験した。症例は65歳, 男性。2005年9月に黄疸にて近医受診。エコーで肝内胆管の拡張が認められ当院紹介入院。CT にて肝門部胆管癌と診断。血管造影では門脈が完全閉塞し手術不能と判断された。ERCP, EST 施行後, 内視鏡的にメタリックステントを留置。採血データは改善し摂食良好で退院。他院より漢方薬処方が開始された。ステント挿入より10か月経過した現在も, CT や採血上は腫瘍マーカー以外に著変なく外来経過観察中である。 -
胆管癌に対しNon-Covered Stent 留置後Rapid Obstructionを認めCovered Stent 再留置にてQOL の改善を得た1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は73歳, 男性。黄疸を主訴に当科入院した。dynamic CT で総胆管内に乳頭状腫瘍を認めた。胆管造影では,Bm〜Bsに4.5cm にわたる陰影欠損を認め, 経皮経肝胆道鏡では総胆管内腔を占める乳頭状の腫瘍を認めた。生検結果は poorly differentiated adenocarcinomaであった。上中部胆管癌の診断にて手術を施行したが, 腫瘍による動脈, 門脈浸潤が高度で切除不能とした。術後8日目にnon-covered stentを留置するも翌日の造影でstent 内に腫瘍の突出を認め, 術後14日目にstent 内にcovered stent を再留置した。stent 再挿入後は再狭窄を認めず術後17日目に退院した。胆管内乳頭状腫瘍に対しては, non-covered stent では早期のstent 再閉塞を来す可能性があり, covered stentの留置が有効であると考えられた。 -
肝動注化学療法と全身化学療法の併用療法により著効が得られた切除不能大腸癌肝転移の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は69歳, 男性。切除不能な多発性肝転移を伴ったS 状結腸癌に対して, S 状結腸切除術を施行した。原発巣の病理組織学的診断では未分化癌であった。術後, 5-FU による肝動注化学療法とCPT-11による全身化学療法の併用療法にて, 肝転移巣のcomplete response(CR)が得られた。術後23か月経過した現在, 再発徴候はみられていない。本療法は, 切除不能大腸癌肝転移に対する化学療法の一つの選択肢になると考えられた。 -
肝動注化学療法用リザーバーポート留置部位に発生した大腿動脈仮性動脈瘤の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は73歳, 男性。盲腸癌異時性肝転移のため2005年11月肝S5部分切除を施行され, 同年12月右大腿動脈への補助化学療法肝動注用リザーバーポート埋め込み術および肝動注化学療法が行われた。2006年1月に右鼠径部と右下腿の腫脹を来し, リザーバーポート留置部の血腫および深部静脈血栓症が疑われたため入院となった。右下腿の腫脹は安静のみで数日後に軽快したが, リザーバーポート部の血腫が増大したため血腫除去と縫合止血を行い, 圧迫止血を1週間続けたが造影CT 検査で右大腿動脈の仮性動脈瘤が判明し, その切迫破裂が疑われたために血管外科専門病院に搬送後緊急手術が施行された。術中造影で総大腿動脈の2.5cm の仮性動脈瘤を認め, カテーテル挿入部に約1cm の亀裂が認められ一次縫合閉鎖が行われた。肝動注療法中, 仮性動脈瘤が疑われれば迅速な診断と治療が必要である。 -
直腸癌骨盤内局所再発に対する放射線治療と動注化学療法の有用性
33巻12号(2006);View Description Hide Description直腸癌骨盤内再発を来した3例に対して, 放射線療法, 5-FU, levofolinate calciumによる骨盤内動注化学療法を施行した。画像による効果判定はPR 1例, MR 1例, NC 1例であった。3例とも骨盤内再発に伴う疼痛や下血などの症状は消失した。副作用として1例に一過性の腰神経叢麻痺と陰部皮膚炎が認められたが, 保存的に改善した。根治性は手術に劣るが治療による侵襲も少なく一定のQOL の維持も可能であり, 手術不適応症例や高齢者の再発治療, 症状緩和の面からも優れた治療の選択肢であると考えられた。 -
異時性大腸癌肺転移症例に対する術前CPT-11/5'-DFUR 併用療法の検討
33巻12号(2006);View Description Hide Description異時性大腸癌肺転移症例に対する治療について施設間に差があり, 統一したコンセンサスが得られていない。しかし, 根治的な切除手術がなされた症例については良好な予後を期待できるとされている。それに対し, 非切除症例の予後は極めて不良である。原発手術から厳重な経過観察により早期発見に努めることが大切だが, 加えて再発病巣の発見から手術までの期間の転移病巣のコントロールが重要となり, 安全で有効な抗癌剤治療が求められる。そのため, 大腸癌術後の多発性の切除不能肺転移症例に対し, CPT-11/5'-DFUR 併用療法を施行し, 安全かつ良好な経過にて切除可能となった症例を経験した。 -
集学的治療にて長期生存中の大腸癌肝転移の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例は46歳, 男性。2000年1月, 膀胱浸潤を伴うS 状結腸癌に対して, S 状結腸切除術および膀胱部分切除術を施行した。病期はpT2, pN0, sP0, sH0, sM0, Stage II で定期的に外来followされていた。術後1年2か月目に肝転移を生じたため肝部分切除術(S4, S5)を施行, 以後計4回の肝切除術(最終的には拡大右葉切除術)を繰り返した。しかし, 2005年1月には切除不能と判断しラジオ波焼灼術となった。この間, 化学療法として5'-DFUR の内服, 5-FU/l-LV 療法(RPMI 法),TS-1の内服を随時施行した。2006年1月, 左肝門部胆管部の肝再発にて閉塞性黄疸を生じたため胆道ステントを留置した。現在, 抗癌剤治療としてFOLFOX4およびFOLFIRIを施行し経過観察中である。 -
盲腸癌の腋窩リンパ節転移が疑われたアポクリン腺癌の1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description患者は69歳, 男性。2年前より左腋窩に腫瘤を自覚していたが放置していた。左腋窩腫瘤は細胞診でmetastatic adenocarcinomaと診断された。原発巣検索のためにFDG-PET を施行したところ, 左腋窩に淡い集積と回盲部に強い集積を認めた。精査にて盲腸癌, 左腋窩リンパ節転移と診断し, 回盲部切除および左腋窩腫瘤摘出術を施行した。病理組織および免疫組織学的精査を施行したところ, 腋窩腫瘤は盲腸癌と組織像がまったく異なっており, 転移は否定的で皮膚原発のアポクリン腺癌と診断した。 -
外科的切除により長期生存中の大腸癌遠隔転移再発の2例
33巻12号(2006);View Description Hide Description大腸癌では肺・肝が最も頻度の高い転移臓器であり, 転移の進行が患者の予後を左右する。遺残なく切除可能であれば,肝・肺転移の治療の第一選択は外科的切除である。しかし, 切除後の長期生存例は少ない。われわれは, 転移巣切除術後10年以上無再発生存中の2例を経験したので報告する。 -
脾静脈内腫瘍塞栓・膵転移を伴ったS 状結腸癌の1切除例
33巻12号(2006);View Description Hide Description大腸癌において, 静脈内に腫瘍塞栓を形成する進展形式は非常にまれである。われわれは下腸間膜静脈から脾静脈内に腫瘍塞栓, さらに膵転移を伴ったS 状結腸癌を経験したので報告する。症例は63歳, 女性。下痢, 便秘を繰り返し来院。左下腹部に手拳大の腫瘤を触知, 精査にてS 状結腸癌と診断し手術施行。CEA 値は20.1ng/ml, CA19-9値は8.9U/ml であった。開腹時, 肝転移・腹膜播種は認めず。リンパ節はIMA 根部まで腫大し一塊となり, 傍大動脈リンパ節も腫大していた。腫瘍塞栓は下腸間膜静脈から脾静脈にまで認め, 先端は一部門脈にまで至っていた。さらに膵体部に腫瘤を触知した。S 状結腸切除, 膵体尾部・脾臓合併切除を行い, 門脈・上腸間膜静脈をクランプの後, 脾静脈を切離し腫瘍塞栓を除去した。組織型は中分化型腺癌, INFβ, se, ly1, v3, LN 253転移陽性, LN 16b2も転移陽性であった。脾静脈内の塞栓・膵腫瘤も同様の組織型あった。術後UFT/UZEL を投与し2年間無再発で経過している。 -
10年後に再発した肛門管癌に対して放射線化学療法を施行しQOL が得られた1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description症例:80歳代, 男性。1994年6月に肛門管癌と診断され, 腹会陰式直腸切断術施行。病理結果はP0, H0, n(−), A1, stage II, ly0, v0, adenocarcinoma associated with anal fistulaであった。約10年間再発などを認めていなかったが, 2004年10月左鼠径部の腫脹および疼痛を認めた。鼠径リンパ節生検を施行し, 異型性の強い腫瘍細胞の胞巣を認めadenocarcinomaの転移と診断された。肛門管癌の再発と診断し, 2005年2月より放射線療法(2Gy/day, 計50Gy照射)とその1か月後にUFT(300mg/day)の内服を開始した。骨盤内および左鼠径部のリンパ節は縮小し, 疼痛も認めなくなりQOLも改善した。約1年経過した現在, CT にて大動脈周囲のリンパ節腫大を認めているが腫瘍マーカーの増加を認めず, 良好なQOLが保たれている。 -
肝転移を伴う非切除直腸癌症例に対し放射線化学療法が奏効した1例
33巻12号(2006);View Description Hide Description切除不能肝転移を伴う下部直腸癌に対し放射線化学療法を行うことにより, 直腸原発巣の良好な局所コントロールができ, 全身化学療法としての5-FU/l-LV 療法によって, 肝転移巣の腫瘍縮小効果が得られた。その後, CPT-11/5'-DFUR, TS-1/ CDDP, FOLFOX4と多剤併用化学療法を行い, 21か月の生存期間が得られた。治療のほとんどの期間を外来通院で行うことにより, 患者はQOL を低下させず, 最後まで日常生活を送ることができた。
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