癌と化学療法
Volume 34, Issue 2, 2007
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総説
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DNA メチル化と癌
34巻2号(2007);View Description Hide Description増殖抑制遺伝子は,しばしばプロモーター領域の異常なDNA メチル化によって不活性化される。ヒストン脱アセチル化酵素やヒストンメチル化酵素は,このメチル化DNA と相互作用することによってヒストンを修飾し,不活性型のヒストン修飾パターン(不活性型ヒストンコード)を形成し得る。すなわち,メチル化DNA と不活性型ヒストンコードは遺伝子不活性化プロセスにおいて相乗的に作用すると考えられる。結果として,エピジェネティクに異常を来した染色体構造ができ上がり,癌の特質の一つとなる。癌細胞において相当数の遺伝子の発現が質的,量的に異常となるのは周知の事実であり,DNAメチル化に関連したエピジェネティクな変化がこの広範な変異に深く関与していると考えられる。残念ながら,異常DNA メチル化を引き起こす機序はほとんどわかっていないが,メチル化されていないDNA に新規にメチル基を導入することのできるde novo DNA メチル基転移酵素(DNMT)が重要と考えられている。ヒトではDNMT3A とDNMT3B がこのde novo DNMT に相当する。シチジンヌクレオシドのアナログを癌細胞に添加した際には,DNMT の機能が阻害されてDNAの脱メチル化が生じ,遺伝子が再活性化されることが知られている。今後のテーマとしてDNA メチル化の分子的な機構解析と,メチル化阻害剤の開発が注目を集めるであろう。
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特集
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- 小児がん治療の最近の進歩
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急性リンパ性白血病
34巻2号(2007);View Description Hide Description本邦における小児急性リンパ性白血病(ALL)の治療成績は四つの臨床研究グループ(CCLSG, TCCSG, KYCCSG,JACLS)のリスク分類に基づく層別化治療を含んだ臨床研究により目覚ましく進歩し,各グループとも1990年代後半の臨床研究における5年無病生存率は80%近くとなっている。2003年に結成された日本小児白血病・リンパ腫研究グループ(Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group: JPLSG)はわが国の小児癌の主要な研究グループであるCCLSG/JACLS/KYCCSG /TCCSG がすべて参加する形で構成され,活発な活動を展開してきている。ALL のなかでも特に難治性で希少疾患である成熟B 細胞性ALL, 乳児ALL とフィラデルフィア染色体陽性ALL の3疾患に関してすでにJPLSG の全国共通臨床研究が開始され,診断・治療の標準化が図られてきている。また,小児がん白血病研究グループ(CCLSG)ではALL 2004protocolにおいて,初発時データと第13週の微小腫瘍残存(MRD)に基づいた2段階の層別化による治療プロトコールが開始されている。2005年3月にJPLSG/ALL 委員会が結成,わが国における小児ALL 共同研究の必要性が討議され,新規治療薬であるnelarabineを組み込んだT 細胞性ALL 治療の共同研究の可能性についての検討が始められている。 -
急性骨髄性白血病
34巻2号(2007);View Description Hide Description日本における小児AML の発生頻度は年間100万人に10人程度であるが,欧米では5〜9人程度である。欧米における小児AML の長期生存は50%程度である。小児AML では予後因子の解析により,予後因子に基づいた分類がなされている。t(15;17), inv(16), t(8;21)は予後良好因子であり,monosomy7,monosomy5,del(5q)などは予後不良因子である。染色体分析による予後因子とは別に,FLT 3/ITD は極めて予後不良な因子であることが同定された。AML の臨床試験は,治療強度を高めた化学療法と造血幹細胞移植で構成されている。APL はATRA を用いた分化誘導療法に優れた感受性をもつため,他のAML とは別治療がなされるようになっている。Down症候群に合併したAML は,他の小児AML に比べて治療感受性が高い。小児ANLL 共通プロトコールANLL 91は当時の臨床試験のなかでも優れた成果を上げた。QOL を考慮し,リスクによる層別化を導入した臨床研究AML 99が,小児AML 治療共同研究グループによって実施された。AML 99の3年生存率は79%である。生物学的特性と寛解導入療法反応性に基づくリスク別層別化の有効性と安全性を評価するために,小児白血病・リンパ腫研究グループJPLSG による小児AML の多施設共同第 II 相臨床試験が行われている。 -
悪性リンパ腫
34巻2号(2007);View Description Hide Description小児非ホジキンリンパ腫の治療成績は臨床試験の積み重ねにより向上し,欧米の研究グループから70〜90%の長期生存率が報告されている。一方,国内ではようやく臨床試験の基盤整備が行われた段階である。本稿では,小児非ホジキンリンパ腫に対する治療の最近の進歩を病型ごとに概説する。 -
神経芽腫—難治希少疾患への挑戦—
34巻2号(2007);View Description Hide Description小児固形腫瘍の代表である神経芽腫は,希少疾患でもある。小児慢性特定疾患の制度に基づき,国内であればどの地域でも標準以上の診療を提供できるようにという課題を抱えながら研究実績を重ねてきた日本の経緯と,診療施設を集約化した欧米での経緯とでは,あまりにも土台が違う。しかし異なる背景を踏まえながら,お互いの成果を提供し合った結果,日本でも欧米でも低リスク群は80%以上,高リスク群は40%前後の無増悪生存率が達成された。今後の主な課題は高リスク群の治療成績向上である。集学的治療の強化と副作用の回避・軽減という一見相反する課題を同時に達成すべく,種々の工夫がなされている。 -
ユーイング肉腫
34巻2号(2007);View Description Hide Descriptionユーイング肉腫は小児や若年者の骨に発生する腫瘍としては2番目に多い骨原発性悪性腫瘍である。近年の分子生物学の進歩によってprimitive neuroectodermal tumor(PNET)などの類縁疾患においてEWS-FLI 1などの共通の染色体転座を有することが明らかになり,これらの疾患はユーイング肉腫ファミリー腫瘍Ewing sarcoma family tumor(ESFT)と一連の疾患として認識されるようになっている。多剤併用化学療法が確立する以前には,生存率は10%程度と予後は極めて不良であった。現在では,欧米各国または国際的な共同研究の結果,多剤併用化学療法,放射線療法,外科手術療法を組み合わせた集学的治療により約60%の限局性ESFT 患者は治癒を得られるようになっている。現在の限局性ESFT に対する標準治療はヨーロッパではvincristine+actinomycin D+cyclophosphamide+doxorubicin(VACD), 北米ではvincristine+cyclophosphamide+doxorubicin+ifosfamide+etoposide(VDC-IE)と考えられている。一方,転移性ESFT の予後は5年生存率で10〜30%と不良なままである。EURO-E.W.I.N.G.99などの国際的臨床試験が,限局性ESFT のみならず転移性ESFTの治療成績向上をめざして進行中である。また,国内でもJapan Ewing Sarcoma Study Group(JESS)による限局性ESFT への第 II 相臨床試験,もしくは新規薬剤も含めた複数の臨床試験が進行中であり,結果が待たれる。 -
横紋筋肉腫
34巻2号(2007);View Description Hide Description横紋筋肉腫は,小児で最も頻度の高い悪性軟部組織腫瘍である。集学的に治療による多施設共同臨床試験により,その生存率(特に「低リスク群」の多くを占める局在病変)は,1970年の約25%から2001年の70%以上へと目覚ましく改善した。横紋筋肉腫の治療には,予後因子の組み合わせからなる病期の評価,細胞遺伝学的解析を含む病理組織診断,発生部位ごとの外科的治療方針と化学治療,放射線治療のタイミングよい組み合わせが必要である。わが国では,これまで横紋筋肉腫についての疫学的データは限られ,すべての病期を含む全国的グループ・スタディはなされていなかった。日本外科学会の登録データや筆者らが行った後方視的調査によると,わが国では「低リスク群」の予後さえ良好とはいえない状況であった。そこでわれわれは,2004年に日本横紋筋肉腫研究グループ(JRSG)を設立し,わが国においても横紋筋肉腫患者に対する標準治療の確立をめざし,全国的臨床試験を行っている。 -
小児における造血細胞移植
34巻2号(2007);View Description Hide Description幹細胞ソースの多様化,移植前処置の多様化などが移植可能症例を拡大する一方で,新しい分子標的療法の開発や化学療法の進歩により,小児の移植対象疾患は大きく変わりつつある。少子化からも移植症例数は減少しているが,その反面,小児造血細胞移植は全体的により高度になる傾向がある。臍帯血移植や骨髄非破壊的前処置などは比較的新しい移植の方法である。臍帯血移植では,生着不全が問題となるが移植細胞数を確保することが重要である。また,血液悪性腫瘍患者での再発率の高さに対しては,HLA 不適合移植ドナーを選択することが一つの解決策となる。小児における骨髄非破壊的前処置による移植(RIT)は,晩期障害を軽減する目的で考慮されているが,現在のところ考えるべき課題が多い。成長障害や二次がんなどの晩期障害も,成人の移植以上に重要な問題である。 -
小児がんの予後に関連する分子生物学的マーカーと分子標的治療
34巻2号(2007);View Description Hide Description近年の分子遺伝学の進歩により,予後を推定する分子生物学的マーカーが多数見いだされ,治療の層別化にも用いられるようになった。従来は小児がんは造血幹細胞移植を含む集学的治療により成績の向上がみられたが,このような集学的治療にもかかわらず,難治,再発例が存在し,それ以上の成績の向上は望めない状態であった。近年,急性前骨髄球性白血病に対して全トランス型レチノイン酸や慢性骨髄性白血病のimatinib, B 細胞悪性リンパ腫に対するrituximabなどの分子標的療法が続々と臨床応用され,治療成績の著しい向上がみられている。さらにチロシンキナーゼ阻害薬,ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬,メチル化阻害薬,ヒストン脱アセチル化阻害薬などの分子標的治療薬が臨床に用いられている。小児がんに対しても,これらの白血病に対する分子標的療法に加え,神経芽腫や骨軟部肉腫に対してチロシンキナーゼ阻害剤を中心として分子標的治療が開始されている。本稿では,小児がんにおける予後に関連する分子生物学的マーカーと最近の分子標的療法について概説する。
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原著
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進行・再発大腸癌に対するModified FOLFOX 6療法における5-FU 持続投与量についての臨床第 I 相試験
34巻2号(2007);View Description Hide Description手術不能進行・再発大腸癌に対して,欧米ではoxaliplatin(L-OHP)を用いた併用療法(FOLFOX レジメン)が標準的治療になりつつある。本邦で用いられているmodified(m)FOLFOX 6療法における5-FU の46時間持続静注の最大耐用量(MTD)および推奨投与量(RD)を決定するために臨床第㈵相試験を行った。day1にL-OHP と l-Leucovorin(l-LV)の2時間点滴静注を同時に行い,5-FU を急速静注した後に46時間かけて5-FU の持続点滴静注を行った。L-OHP は85mg/m2, l-LV は200mg/m2, 静注する5-FU は400mg/m2に投与量を固定し,2週間を1コースとして計2コース行った。46時間持続点滴する5-FU の量は400mg/m2ずつ増量して(レベル1:1,600mg/m2, レベル2:2,000mg/m2, レベル3:2,400mg/m2, レベル4: 2,800mg /m2), 用量規制毒性(DLT)の発現状況を確認した。13例が登録され,男性/女性=7/6,performance status0/1/2=2/4/7, 平均年齢64歳(範囲55〜75歳)であった。レベル4に登録した2例にgrade3の易疲労感,1例に食思不振が出現し,1週間以上治療の開始が遅れたのでレベル4をMTD と判断し,レベル3をRD と決定した。現在,臨床第 II 相試験を行い,その有効性と安全性を確認するために症例集積中である。 -
進行再発結腸直腸癌に対するModified FOLFIRI療法の有用性
34巻2号(2007);View Description Hide Description進行再発結腸直腸癌に対しmodified FOLFIRI療法を施行し,その有効性と安全性を検討した。症例は37〜76歳(中央値61)の男性21例,女性8例の計29例。原発部位は結腸19例,直腸10例。前治療あり/なし,18/11, 投与コース数は2〜16回(中央値10.0)であった。CPT-11の用量は本邦における承認用量内の100〜150mg/m2として施行した。治療効果はCR 3例,PR 8例,SD 12例で,奏効率は37.9%(11/29)であった。有害事象としては,grade 4の血液毒性は白血球減少を2例に,好中球減少を7例に,ヘモグロビン減少を1例に認めた。grade3/4の非血液毒性は,発熱性好中球減少を4例,食欲不振,疲労を3例,悪心,下痢,間質性肺炎を各1例に認めた。2例で投与を中止したが,その他はいずれもG-CSF投与や休薬などにて次コースも投与可能であった。以上より,modified FOLFIRI 療法は特に好中球減少に留意すれば忍容性は高く,外来においても継続投与可能で,CPT-11を本邦承認用量内の100〜150mg/m2投与としても従来の180mg/m2における報告とほぼ同等の良好な結果が得られた。 -
A Prospective Study of Whether Radiation Pneumonitis Is Influenced by Low-Dose Irradiated Lung Volume in Primary Lung Cancer with Chronic Pulmonary Disease
34巻2号(2007);View Description Hide Description慢性呼吸器疾患を伴った肺癌症例でDVH 解析を用いて,V20(20Gy照射された体積の両肺に対する割合)意義を前向き試験で検討したので報告する。遠隔転移を伴わない原発性肺癌症例を対象とし,非小細胞肺癌には60Gy,小細胞肺癌には54Gy照射することとした。2004年5月〜10月までの間に21例の症例が登録された。これらのうち4例が慢性呼吸器疾患を伴い(study arm), 17例は慢性呼吸器疾患を伴わない症例(control arm)であった。study arm では4例中2例に,control arm では17例中3例で症候性の肺臓炎(NCI-CTCAE ver.3.0)が生じた。症候性の肺臓炎の生じたstudy arm 症例ではV20の中央値は14.0%であったが,生じなかった症例では5.9%であった。control arm では症候性肺臓炎が生じた症例と生じなかった症例のV20の中央値は14.2%と15.1%であった。慢性呼吸器疾患を伴った肺癌根治照射後の症候性放射線肺臓炎の影響因子としてV20はかなり低値(15%程度)でも意義をもつ可能性が示唆された。
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症例
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四次治療としてのCisplatin+Gemcitabine併用化学療法により初めて奏効を得た進行肺大細胞癌の1例
34巻2号(2007);View Description Hide Description症例:56歳,男性。乾性咳嗽,右頸部腫瘤を自覚したため当院を受診した。胸部X 線にて左下肺野に腫瘤性陰影を認めた。経気管支肺生検および頸部リンパ節生検により進行肺大細胞癌と診断した。一次治療として,carboplatin+vinorelbine,二次治療としてdocetaxel, 三次治療としてTS-1+cisplatinによる3レジメンの化学療法を行ったが,右頸部腫瘤の増大を認めた。このため四次治療として,cisplatin(80mg/m2, day 1)+gemcitabine(800mg/m2, day 1, 8)による化学療法を開始した。4サイクル終了時点で左肺の原発巣,右頸部腫瘤ともに著明な縮小を認め,PR と判断した。結論:われわれは,四次治療としてのcisplatin+gemcitabine併用化学療法が奏効した進行非小細胞肺癌の1例を経験した。PS が良好である症例に対する三次治療以降の化学療法に関しては,今後検討すべき課題であるといえる。 -
TS-1が奏効した抗癌剤多剤抵抗性非小細胞肺癌の1例
34巻2号(2007);View Description Hide Description症例は72歳,男性。労作時息切れを主訴に来院し,胸部単純写真で右胸水貯留を認め精査の結果,悪性胸水を伴う右S 10b原発肺腺癌(cT 4N 0M 0, Stage III B)と診断した。CBDCA+gemcitabine, docetaxel, gefitinib, vinorelbineなどの全身化学療法を施行したが再発を認めたため,fifth-lineとしてTS-1 120mg/日(80mg/m2/日)単剤を28日間投与,14日間休薬のスケジュールにて投与し,抗腫瘍効果はPR であった。血液毒性,非血液毒性ともに特記すべき副作用は認めなかった。本症例のような多剤抗癌剤に治療抵抗性を示す非小細胞肺癌に対しても,TS-1単剤投与が有効である可能性が考えられた。 -
Effective Combination Chemotherapy of Carboplatin and Paclitaxel in the Treatment of a Recurrent Small-Cell Lung Cancer Patient
34巻2号(2007);View Description Hide Description肺小細胞癌は化学療法に感受性があるが,多数の症例は再発し予後不良である。そして,再発症例は化学療法を要する。そこでわれわれは,再発した肺小細胞癌に対してcarboplatinとpaclitaxelが有効であった1例を経験したので報告する。症例は58歳,男性で肺小細胞癌と診断されてからcisplatinとetoposideの4コースと放射線同時併用を施行し,CR となった。しかし9か月後に肺内転移にて再発し,cisplatinとirinotecanを行い,さらに,その病変に対して外科的切除を施行した。しかし多発肺内転移,胸膜播種の再発所見を認めたため,amrubicinを投与した。PR となり経過良好であったが胸膜播種病変が再増悪し,背部痛を訴えたためnogitecanを開始するも改善傾向はなかった。そのため,carboplatinとpaclitaxelを開始しPR を認め,合計3サイクル施行した。以後も経過は良好であり初回治療から42か月経過するが,現在も生存中である。本症例においてはcarboplatinとpaclitaxelは再発症例に対して有効であると思われた。 -
下大静脈内腫瘍栓合併肝細胞癌術後の多発肺転移に対し5-FU/Mitoxantrone/ CDDP併用療法が奏効した1例
34巻2号(2007);View Description Hide Description症例は,B 型慢性肝炎の既往を有する58歳,男性。下大静脈内腫瘍栓を有する肝細胞癌の診断で,肝中央2区域切除術と下大静脈内腫瘍栓の摘出術を施行された。しかし,術後早期に多発肺転移を指摘され,5-FU, mitoxantroneとCDDPからなる化学療法(FMP 療法)を2クール投与された。CT 上,肺野の多発陰影はすべて消失し,α-fetoproteinは正常化した。FMP 療法は遠隔転移を伴う肝細胞癌に有効であった。 -
肺転移を伴った進行肝細胞癌に対しTS-1投与を試みた8症例の検討
34巻2号(2007);View Description Hide Description現在,肝細胞癌肺転移における全身化学療法の有効性は明らかではない。今回われわれは,肺転移を伴った進行肝細胞癌に対してTS-1を投与し,その効果を検討したので報告する。2004年1月から2005年10月に肺転移を伴った進行肝細胞癌に対し,TS-1を投与した8例を対象とした。TS-1投与は80mg/m2/dayの28日間投与14日間休薬を基本とした。Child-Pugh分類は全症例A であった。肝内病変合併例は8例中6例で,そのうち3例がコントロール不良であった。TS-1投与期間中央値は2.5コースで,無増悪期間中央値79.5日(range29〜225), 全生存期間中央値257日(95% CI;191〜323)であった。画像上PR 以上の有効例は認めなかったが,2例に腫瘍マーカーの減少を認めた。その2例の治療標的臓器は肺のみが1例,肺と肝が1例であった。2例における無増悪期間は155日と225日,生存期間は377日と259日であった。有害事象としてはgrade 2の白血球,血小板減少で休薬となった1例以外に著明なものを認めず,全例外来にて施行可能であった。今後さらに症例を重ね,検討を加えることで本研究が肺転移を伴った進行肝細胞癌に対する全身化学療法を考慮する際のEBM の端緒になり得ることを期待する。 -
Imatinib Mesilate(Glivec)が著効した再発食道GIST の1例
34巻2号(2007);View Description Hide Description症例は68歳,男性。1995年8月,食道粘膜下腫瘍により核出術を施行したが2年後に局所再発を来したため,1997年11月,中下部食道切除,胸腔内食道胃管吻合術を行った。その後経過観察中多発肝転移が出現し,2001年3月,肝部分切除を行った。しかし,術後約12か月後に多発リンパ節,残肝,膵,皮下に再発が発見された。切除不能と診断し,2004年7月よりimatinib mesilate400mg/dayの内服を開始した。内服後約2か月で再発巣がすべて液状に変化し,皮下腫瘍は著明な縮小をみた。FDG-PET では集積がまったくみられずCR と判定した。現在も内服を継続しており新たな病巣の出現はなく,液状変化した各再発巣のサイズも徐々に縮小する傾向にある。 -
TS-1およびDocetaxelの併用療法が奏効した肝転移を伴う進行胃癌の1例
34巻2号(2007);View Description Hide Description症例は70歳,男性。肝転移を伴う進行胃癌および呼吸機能低下により胃切除術を施行できなかった。docetaxelは40mg/m2を1時間以上かけて投与,3週間を1サイクルとし,TS-1は80mg/m2/dayで朝夕2分服,2週投与1週休薬を1サイクルとする併用療法を行った。6サイクルの併用療法後,肝転移および進行胃癌は消失した。その後TS-1の内服治療を継続しているが,3年間再発を認めていない。TS-1およびdocetaxel併用療法は本症例で非常に高い効果を示し,安全に行うことができた。 -
TS-1/CDDP 併用療法が奏効し多発性肝転移について2年以上CR が得られた進行胃癌の1例
34巻2号(2007);View Description Hide Descriptionはじめに:近年進行胃癌に対するTS-1/CDDP 併用療法の高い奏効率が報告されている。今回,多発性肝転移のある出血性進行胃癌に対し,胃全摘術施行。術後TS-1/CDDP 併用療法を施行し肝転移についてはCR となった症例を経験した。症例:症例は59歳,女性。胃体部上部の4型の胃癌にて入院となった。精査にて多発性肝転移(S 2, S 5, S 7)およびリンパ節転移を認めた。腫瘍からの出血を認めていたため,胃全摘術を施行し術後に化学療法の方針とした。手術所見はMLU,4型,16.0×14.0cm, sT 3(SE), sH 1(両葉多発), CY 0であり,病理所見ではpor1,pT2(SS),pN 1(+)[23/38],int, INFβ, ly3, v 1であった。術後にTS-1/CDDP 併用療法を行った。投与方法はTS-1を80mg/day(分2)を21日間連続投与その後14日休薬,day8にCDDP 70mg 投与を1コースとして4コース行った。3コース終了時に多発性肝転移は消失した。またCA19-9が術前370U/mL に正常化した。有害事象は白血球減少,血小板減少ともにgrade2であった。術後再発の兆候なく2年9か月経過現在,外来経過観察中である。結語:化学療法が奏効し肝転移が消失し,2年以上CR が経過した症例を経験した。TS-1/CDDP は術前化学療法のみならず進行胃癌術後に対しても有効な治療法と考えられた。 -
低用量TS-1が著効し原発巣を切除し得た進行胃癌の1例
34巻2号(2007);View Description Hide Description切除不能進行胃癌に対し低用量TS-1が著効し,切除し得た症例を経験した。症例は72歳,女性。腹水,右水腎症を伴い切除不能と判断された4型StageIV胃癌であった。TS-1 80mg/body/day分2の4週投与2週休薬の予定で経口投与を開始したが口内炎による体重減少を認め,3週後にはさらに低用量の60mg/body/day分3の連日投与へ変更した。TS-1減量後口内炎は軽快し,3か月後には腹水の消失,右水腎症の改善を認め,4か月後に胃全摘出術を施行した。原発巣は粘膜に癌細胞の遺残を認めるのみで,大網および小網の瘢痕化組織には癌細胞はみられず,散在性に線維性結合織の増生が認められた。術後2週間でTS-1の投与を再開した。しかし,退院後3か月で腹水貯留および上腹部への皮膚転移を認め,術後9か月で死亡した。以上,極めて低用量のTS-1継続投与により著明な腫瘍縮小が得られた進行胃癌を経験した。 -
TS-1をベースとした併用化学療法により長期生存を可能にした進行胃癌の1例
34巻2号(2007);View Description Hide Description症例は58歳,女性。手術所見で腹膜播種,腹腔細胞診陽性の根治手術不能胃癌であった。術後13日目よりTS-1 80mg/body/day(4投2休)の化学療法を施行したが,grade1の骨髄抑制を認めたためTS-1を80mg/body/day(2投4休)に変更し,合計23コースを施行した。16コース終了後の効果判定ではPR であったが,21コースごろよりCA 19-9の再上昇を認め,TS-1に加えCDDP 25mg/body/day(day 1, 8, 15)を併用し3コース施行した。しかし,CA 19-9の低下はなくCDDP をdocetaxel 50mg/body /day(day1)に変更した。CA 19-9は正常値まで低下し,画像上にも転移の兆候なく経過している。現在,治療開始から4年3か月を経過するがPS は0であり,有害事象はみられず外来通院中である。 -
胃癌腹膜播種再発に対しThird-LineとしてDoxifluridine/Paclitaxel併用療法が奏効した1例
34巻2号(2007);View Description Hide Description症例は50歳,男性。2000年10月に進行胃癌で脾臓合併胃全摘術を施行され,術後2年間補助化学療法を受けていた。2005年6月,腹膜播種再発が判明し,first-lineとしてTS-1/CPT-11による化学療法を開始した。不全イレウスとなったため2クールで中止し,second-lineとしてCPT-11/CDDP に変更したが腹水の増加を認めたため,PD と判断して3クールで中止した。third-lineとしてdoxifluridine(5'-DFUR)/paclitaxel(PTX)を選択した。3クール終了後の腹部CT では,腹水の著明な減少を認めた。5'-DFUR/PTX は再度の腹水増加を来すまで合計8クール施行して,全奏効期間は197日間であり,その間良好なQOL が得られた。胃癌腹膜播種再発に対し5'-DFUR /PTX 併用療法は,QOL の改善や治療効果においてsecond-line以降の有望な治療法として期待される。 -
再発を繰り返した悪性髄膜腫の1例—薬剤耐性遺伝子発現を基にした化学療法の検討—
34巻2号(2007);View Description Hide Description悪性髄膜腫の再発例において,残存腫瘍に化学療法と放射線治療を併用した症例を報告する。患者は43歳,女性。傍矢状静脈洞髄膜腫に対し腫瘍摘出術を施行するも,2年間で2回再発した。組織診断は退形成性髄膜腫であった。3回目の手術後,残存した腫瘍に対し化学療法と放射線治療(局所照射)を施行した。その後3年6か月間,腫瘍の再増大はみられていない。抗癌剤として,mitoxantrone(MIT)とhydroxyureaを使用した。手術摘出標本を用いてRT-PCR 法により薬剤耐性遺伝子(MDR 1, MGMT, MRP 1, MRP 2, ABCG 2, DNA topoisomerase IIα)検索を行い,ABCG 2のみ発現はみられなかったことよりMIT を選択した。悪性髄膜腫など再発を繰り返す髄膜腫において,薬剤耐性遺伝子などを検索することでより有効な化学療法,いわゆる“テーラーメード”治療が期待できると考えられた。 -
PaclitaxelによるHypersensitivity Reactionsに対して減感作療法が成功した1例
34巻2号(2007);View Description Hide Descriptionpaclitaxel(PTX)のhypersensitivity reactions(HSRs)経験患者に対し,本投与に先立ち低濃度のPTX を投与し,HSRsを抑えることができた1症例を経験したので報告する。症例は56歳,女性。右乳癌に対し,2004年10月 PTX 120mg/body/week, 3週投与1週休薬を1クールと設定し,化学療法を開始したが,1クール3回目(day15)に呼吸苦,顔面紅潮などのHSRs症状を呈したため,治療を中止した。しかし,患者が治療継続を強く希望したため,本投与前に低濃度PTX(2mg/100mL/30min)投与を行う減感作療法を施行した。その後軽度のHSRsを発症することがあったが,さらに低濃度(1mg/100mL/30min)から投与することにより発症をみることはなかった。化学療法を3クール終了し,2005年2月根治手術を施行し,pathological complete responseを得ることができた。PTX の低濃度投与による減感作療法は,HSRsの予防に有効な方法であると考えられた。
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第一回抗悪性腫瘍薬開発フォーラム「日本における抗がん剤の臨床開発」欧米からの周回遅れを挽回するために
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イントロダクション「フォーラムの目指すところ:未承認薬へのアクセスを例に」
34巻2号(2007);View Description Hide Description抗悪性腫瘍薬開発フォーラムの設立の最も大きな目的は,周回遅れと批判されている日本の抗悪性腫瘍薬の臨床開発の振興を産・官・学の三者での活発な意見交換により実現することにあります。そして,第一部では,臨床開発の影の部分である未承認薬へのアクセス問題を取り上げると共に,例外的使用(compassionate use)という制度の日本への導入の必要性を説きたいと思います。 -
米国におけるExpanded Access Program の現状—悪性中皮腫に対するアリムタTMのプログラム—
34巻2号(2007);View Description Hide Description米国では臨床試験の終了後,新薬承認までの期間に,重篤で生命予後が不良でその他の選択肢がない患者が新規薬剤の治療を受けるとともに臨床的有用性や重篤な有害事象の評価を行うプログラムとしてExpanded Access Program がある。イーライリリー社では本プログラムにもとづきアリムタTMの承認までに約1200人の悪性胸膜・腹膜中皮腫患者に薬剤を無償で提供し,臨床的有用性と有害事象の評価をおこなった。日本がこうしたプログラムに参加するためには薬剤提供やプログラムを運用するシステム整備が必要である。アメリカ合衆国(US)におけるExpanded Access Program(日本ではCompassionate useと表現されることが多い)の内容を紹介するとともにイーライリリー社が悪性中皮腫患者に対してUSならびにUS 外の国で行ったアリムタTMのExpanded Access Program について紹介したい。 -
欧州におけるコンパショネートユース制度
34巻2号(2007);View Description Hide Description欧州には,一部の特別な患者さんを治療するために使用する未承認薬を入手する制度として,「コンパショネートユース制度」がある。その一般的原則はEC 規則で定められているが,実際の制度は各国の所管であり国毎に異なる。実際の制度はNominative及びCohort とよばれる2つのタイプに分類される。Nominativeは,患者さん一人一人をベースにした制度で,Named Patient Supply,Individual Patient Supply, Nominative Importationsなどの名前で呼ばれており,EU 25か国全てが何らかの形でこのタイプの制度をもっている。Cohort は,特定の医療機関における複数の患者さんのための制度で,EU の中では10か国だけがこの制度をもっている。すなわち,この10か国は2つのタイプの制度をどちらも有していることになる。コンパショネートユース制度は,基本的に患者さんを救済するための制度であり,重篤あるいは生命の危険を伴う疾患で,代替医薬品がない場合に限られる。当然のことながら,入手した医薬品は治療医師の責任の下で使用されなければならない。また,その未承認医薬品を提供する企業は,公平かつ公正に分配するとともに,治療医師に正確な情報提供を的確に行い,品質上の責任をもたなければならない。現在,日本における「個人輸入」の制度がいろいろな問題を引き起こしており,適切な「コンパショネートユース制度」の確立が必要になってきているものと思われる。 -
イントロダクション「今なぜ,国際共同治験か?」
34巻2号(2007);View Description Hide Description昨年,我々は日本で最初に開発されたにもかかわらず欧米諸国に大幅に遅れてオキサリプラチンを承認した。抗がん剤におけるドラッグ・ラグの問題は,大変深刻で,これを何とか解消したいと規制側も企業側も今や必死で考えている。問題点やその原因について衆知を集めて解明し,解消してゆくために産学官が一堂に会するフォーラムを作ることに誰もが賛成したのである。第一回の会合では,欧米やアジア近隣諸国との国際共同試験により世界同時開発を目指そうとする近年の動きについて,様々な角度から議論を行い,抗がん剤の臨床開発について,欧米からの周回遅れの状況から我が国が早期に脱却できる道を探りたいと考える。 -
今,何故,国際共同治験なのか?—企業の立場から—
34巻2号(2007);View Description Hide Description日本の臨床開発を取り巻く環境上の問題として,高額な臨床試験コスト,煩雑で多大な労力を必要とする治験手続き,長い“White Space”, 遅い症例集積のスピードなどが挙げられる。従って,日本一国で大規模臨床試験を治験として行うことは極めて困難な状況である。また,2005年11月のガイドラインの改訂により,海外の第 III 相試験成績を承認申請のための評価資料として使用することが可能となったことを受け,治験の空洞化が進むのではないかという懸念は払拭できない。このような状況を打開する有効策は,多国籍共同試験へ参画することであろう。しかし,アジア諸国,欧米では多国籍共同試験の豊富な前例と経験を持っている一方で,実態としては日本が時代の潮流に乗り遅れているだけであって,韓国,中国などアジア諸国は日本と歩調を合わせる必要は特にないことを認識しなければならない。従って,国際共同試験に参画しノウハウを蓄積する一方,臨床開発の初期からアジア諸国とスクラムを組んでネットワークを構築し,臨床試験グループの形成・育成を経て,やがては欧州や米国などに並ぶような臨床エビデンス創出の拠点の一つにグレードアップしていくことを提言したい。 -
「国際共同治験への参画」:医者の立場から
34巻2号(2007);View Description Hide Descriptionわが国での新規抗癌剤開発治験は海外から大きな遅れをとり,結果として有効新薬導入の遅れにつながっている。その原因としては,規制当局,製薬企業,施設・研究者側のすべてに存在する。すでに規制案件の改正により,消化器癌領域では徐々に海外からの遅れは是正されつつあり,様々な障壁をクリアした上ですでに2つの国際共同治験への参加・登録も開始。その後も複数の国際共同治験が計画されている。さらに,胃癌を標的とした新規薬剤では世界的にも早い段階での第㈵相試験を日韓共同で計画中である。わが国の新薬開発の遅れを解消し,日本発のエビデンス構築に向け新しい局面を迎えている。 -
学の立場から—イマチニブ耐性CML に対する新規Bcr-Abl/Lynチロシンキナーゼ阻害剤の開発を例にあげて—
34巻2号(2007);View Description Hide DescriptionAbl特異的チロシンキナーゼ阻害剤メシル酸イマチニブ(グリベック,I M)は,臨床導入後わずか数年で慢性骨髄性白血病治療の第 1 選択薬となった。しかし,このきわめて優れた分子標的薬においてすら,耐性の出現などいくつかの問題が明らかとなってきた。われわれは I M より有効な薬剤となりうる新規チロシンキナーゼ阻害剤の開発に取り組み,ユニークな作用を示して I M 耐性を克服できる INNO-406(NS-187)というBcr-Abl/Lyn同時阻害剤を見出し,2006年7月より米国で臨床試験を開始した。臨床開発のゴールは,より有効で,より安全なあたらしい薬剤を患者さんの手元に一刻も早く届けることにあり,国内,国外を問わない。開発のスピードも重要な要素である。INNO-406(NS-187)の開発経緯について概説するとともに,わが国における抗悪性腫瘍薬開発の隘路についても言及したい。 -
審査・治験相談の立場から
34巻2号(2007);View Description Hide Description抗悪性腫瘍剤の開発は欧米主導で行われているといわざるを得ず,国外に比べ新薬の国内臨床開発の遅れや国内医療への薬剤の供給遅れ(ドラックラグ)は大きな問題となっている。医薬品の有効性及び安全性の審査を行う視点から,当該状況についての原因や解決して行く方策等について考察した。ドラックラグの生じる原因は,欧米に比べ国内での臨床開発のスタートの遅れや国内臨床試験の実施基盤整備の遅れが関係していると考えられる。当該状況下では,国際共同試験に積極的に参加し経験を積むこと,国内臨床試験基盤を作り上げていくこと及び適切な製造販売後体制の構築は,解決のための必要な事項であると考える。新薬の国際臨床開発でのより早期の国内着手が最も重要なことと考える。 -
国際共同治験の実行:コメディカルの立場から
34巻2号(2007);View Description Hide Description国際共同治験をサポートするコメディカルには複数の職種が存在し,各々が専門性を生かした支援業務を実施しているが,このレビューでは臨床研究コーディネーター(CRC)の視点から考える。まず,これまでに国際共同治験に係わったことのあるCRC(4施設8名)に国際共同治験の問題点について質問した結果を紹介する。次に,国際共同治験を実施するうえで基礎となるようなコメディカルを対象とした教育の現状について報告し,最後にコメディカルの立場から今後の国際共同治験に望むことを整理する。特に強調したいのは以下の3点である。1) CRC を含むコメディカルの意見をオープンに共有できる体制づくりの重要性,2) 国際共同治験のサポートに関する調査研究をコメディカル自身が進めていくことの必要性,3) 治験準備期にCRCの視点でプロトコルをレビューできるような体制への期待。現場CRC の声を聞いて予測される問題点への対応を事前に検討しておくことが,国際共同治験のスピードアップと質向上につながるものと考える。 -
統計・データマネージメントの立場から
34巻2号(2007);View Description Hide Description1998年のICHE 5によって国内申請パッケージに海外データを活用する途が開け,ブリッジングに関する議論が盛んに行われた。しかし,統計的な検討に関しては不十分であった。ここでは,われわれの提案:分布の重なりを評価するためのoverlap係数とグローバルデータベースから国内患者集団に類似したサブグループを傾向スコアによりマッチングする方法,を含め,類似性を検討するための統計手法についてレビューする。R. Puzdurの“Best bridging is no bridging”に現れているように,開発をさらに加速するため,現在ではブリッジングよりも国際共同治験がより好まれるアプローチとなっている。このための日本からの症例数の決定方法として,見かけ上異質な治療効果が得られる(逆転が起きる)確率を10-20%程度に抑える,という方法論を提案する。最後に国際共同治験の要因について,研究者のインセンティブとデータ管理の観点も交え議論する。 -
国際共同治験への参画—医療機関として—
34巻2号(2007);View Description Hide Description日本の抗悪性腫瘍薬開発においても国際共同治験の話題が増えてきた。医療現場には解決べき多くの問題があり,インフラ整備は最重要課題である。また,早期開発も重要で,われわれは第Ⅰ相試験におけるクオリティとスピードを維持している。 -
大学医学部腫瘍内科医から見た国際共同治験
34巻2号(2007);View Description Hide Description国際共同治験への積極的参加は,世界的規模で実施される新薬開発に日本が貢献するためだけでなく,日本国内における新薬開発が世界から孤立しないためにも重要な取り組みである。大学医学部腫瘍内科に在籍する腫瘍内科医の立場から,日本における国際共同治験について考察した。また,肺癌領域における唯一の国際共同治験であるIDEAL 1の経験から,現在の日本の研究者,医療機関,製薬企業,規制当局に求められている課題について考察した。 -
国際共同治験への参画—実行面の課題—企業の立場から
34巻2号(2007);View Description Hide Descriptionアストラゼネカ株式会社では過去に抗癌剤の開発において,国際臨床試験に6試験参画している。これらの経験から得られてきた実効面での課題を企業の立場から紹介したい。また,欧米・他アジア諸国と比較した場合の相違点や,改善努力すべき点,世界同時に患者様に良い製品を届けるために将来に向けての提案を紹介したい。 -
国際共同治験への参画—実行(外資系企業の立場から)
34巻2号(2007);View Description Hide Description欧米からの周回遅れを挽回する手段として,国際共同治験の活用が求められている。日本の治験実施の質の高さを活かし,かつ症例登録のスピードやコストの面でもアジアの諸国との競争力をつけることで開発拠点としての日本のプレゼンスを高めていく必要がある。治験依頼者としては,立案段階から日本の開発部門が積極的に関与すること,EDC 等の治験管理システムの導入のための医療機関へのIT 環境整備のサポート等への取り組みが重要となる。医療機関には,治験のための医師の時間確保,CRC の増員,英語書類の受け入れや書式等の統一等による事務手続きの簡素化に取り組んでいただきたい。規制当局には,国際共同治験を実施する上で,国内外の規制要件の違いの解消を期待する。さらに,多忙な日常診療に加えて,治験が大きな負荷となっているという現状を解消するため,国による医療機関の体制整備が,治験促進支援にもつながるものと考える。 -
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