癌と化学療法
Volume 34, Issue 3, 2007
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総説
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DNA 修復と抗癌剤感受性
34巻3号(2007);View Description Hide Descriptionいわゆる抗癌剤の多くは,昨今の分子標的治療薬と異なり,その作用点や作用の分子機序が明らかでないものが多い。しかし,ビンカアルカロドおよびタキサン系以外の抗癌剤はすべてDNA 代謝にはたらきかける「DNA 代謝阻害剤」とみなすことができる。これらに対する細胞の感受性は,DNA 代謝の諸活性,とりわけDNA 修復のそれに大きく依存していることは想像に難くない。ところが,これまでDNA 修復の諸活性が抗癌剤感受性因子として注目されることは少なかった。最近漸く,DNA ミスマッチ修復(DNA mismatch repair:MMR)の多剤感受性因子としての意義が注目されるようになった。MMR 活性は現在,フッ化ピリミジン,プラチナ製剤,トポイソメラーゼ阻害剤など主要な抗癌剤の感受性因子とみなされているが,いずれの薬剤についても,その分子機序の詳細は明らかではない。とくに,フッ化ピリミジンとMMR との関係は,5-fluorouracil(5-FU)を基本とした術後補助化学療法を施された大腸癌症例におけるMMR 異常の有無と患者予後の差としてとらえようと試みられているが,MMR 異常を検索する解析手法の問題から,相次ぐ報告の結論は二転三転としている。ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair:NER)についても,プラチナ製剤の重要な感受性因子であることが予想されるが,最近この複雑な修復系を構成する一蛋白質,ERCC 1の発現状態がcisplatin(CDDP)の感受性を左右することが報告され注目されはじめている。DNA 修復の諸活性を,抗癌剤感受性因子として真に有用なものとするためには,さらなる基礎研究と正確な解析技術に支援された臨床研究が求められている。
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特集
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- 高齢者癌薬物療法の進歩
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造血器腫瘍
34巻3号(2007);View Description Hide Description高齢者造血器腫瘍の最近の治療は,若年者の治療と同様の進歩がみられる。急性前骨髄球性白血病には,all-transretinoic acidとアントラサイクリンの併用療法は標準的初期治療法であり,これ以外の急性骨髄性白血病では,種々の併用化学療法が試みられているが,成績の向上は少ない。CD 33モノクローナル抗体を標的として開発されたgemtuzumab ozogamicinは,高齢者急性骨髄性白血病に対して単独療法あるいは既存の抗白血病薬との併用療法で有効性が示され,期待が寄せられる。高齢者におけるPhiladelphia染色体陽性白血病の急性リンパ性白血病(ALL)と慢性骨髄性白血病(CML)にはBCR-ABL チロシンキナーゼ阻害薬のimatinib mesylateは外せない治療薬となった。高齢者リンパ腫のうちび漫性大細胞B リンパ腫ではCHOP 療法の強度を増した治療法もあるが,rituximabとCHOP 療法の併用療法がCHOP 療法を上回るGELA グループの治療成績が示されR-CHOP は推奨される治療法となった。濾胞性リンパ腫においてもrituximabを含む併用療法の有用性が示されている。多発性骨髄腫では,65歳まではmelphalanを主体とした大量化学療法+自家造血幹細胞移植療法を考慮した治療戦略が打ち出されている。 -
肺癌
34巻3号(2007);View Description Hide Description高齢社会に突入している現在,肺癌患者における高齢者の割合は増え続けており,通常の臨床試験に適格性のない高齢者肺癌患者に適したレジメンを構築してゆくことが必要である。そこで,高齢者の非小細胞肺癌,小細胞肺癌に対する第II/III相試験が世界中で施行されており,高齢者進行非小細胞肺癌に対しては,単剤の化学療法としてdocetaxel, vinorelbineが強く推奨される。最近,CPT-11単剤療法に関しても第 I/II相試験が施行され,gefitinib, TS-1も高齢者にとって有望な薬剤であると考えられる。再発高齢者進行非小細胞肺癌においてはpemetrexed単剤投与が高齢者にとって忍容性があるというサブセット解析がされている。プラチナベースの化学療法ではいくつかの高齢者に対するサブセット解析があり,weekly cisplatinとweekly docetaxelの併用療法とweekly docetaxelとの比較第III相試験(JCOG 0207)が現在進行中である。高齢者小細胞肺癌に関しては単剤による化学療法は現在推奨されず,carboplatin+etoposideのような併用療法が推奨されている。現在carboplatin+etoposideとamrubicinの第III相試験が進行中である。今後,これらの臨床試験から高齢者肺癌患者のよりよい生存延長に寄与する薬剤が選択されることを期待する。 -
乳癌
34巻3号(2007);View Description Hide Description近年の乳癌患者の増加と人口の高齢化が相まって高齢者乳癌患者に薬物療法を行う機会が増加した。治療戦略を立てる際には,年齢と全身のリスクを評価し,ホルモン感受性がある場合はホルモン療法を優先することが原則である。高齢者であるという理由で化学療法を避けるのではなく,併存疾患の有無と平均余命からリスクとベネフィットを評価し,適応を十分吟味して行うべきである。trastuzumabに代表される分子標的薬剤は重篤な副作用は少なく,今後はこれらの薬剤を含めて侵襲の少ない治療法をどのように治療に組み込んでいくかが課題である。 -
高齢者大腸癌の化学療法
34巻3号(2007);View Description Hide Description現在,日本においても高齢者の大腸癌患者は増えている。以前は,抗癌剤治療は年齢のみで不適格とされることも多かったが,新規薬剤の開発や支持療法の進歩などによって,PS のよい高齢者には治療を施すことが増えてきた。術後補助化学療法においては,UFT/LV の安全性と有効性が認められており,今後はoxaliplatinやbevacizumabの使用が期待される。また進行・再発大腸癌においては,海外でFOLFOX 4療法の高齢者における安全性と有効性が認められており,bevacizumabも安全かつ有効であると思われ,若年者同様,新規薬剤の使用が期待されるところである。今後は高齢者における新規薬剤の認容性や有効性を評価する必要があり,また超高齢者(80〜85歳以上)においても可能であるかどうか検討を続ける必要がある。また,経済的側面からも考えていく必要があるだろう。 -
前立腺癌に対する薬物療法—特に高齢者High-Risk 患者に対する対応を中心に—
34巻3号(2007);View Description Hide Description今回われわれは,高齢者前立腺癌に対する保存的全身薬物療法について総括する。前立腺癌に対する薬物療法として, 1.内分泌治療, 2.抗癌剤治療, 3.その他の薬剤治療に分類できる。 1.内分泌治療の標準的治療は,medicalもしくはsurgicalに低アンドロゲン状態を形成し,それに付加的に抗アンドロゲン剤の内服を併用するcombined androgen blockade(CAB)である。高齢者においては臓器予備能が低く,ホルモン治療の副作用の軽減が図られるべきである。副作用の軽減を目的として,抗アンドロゲン剤単独療法,間欠療法,待機療法,delayed-CAB 療法(LH-RH agonist 抗アンドロゲン剤を経時的に使用)などの選択もある。抗アンドロゲン治療耐性の患者に対して,エストロゲン剤であるestramustineが投与されることもある。 2.最近抗癌剤治療としてdocetaxelによる生存の延長が確認され化学療法が次の治療として考えられる。化学療法の適切な開始時期,適切な投与量,適切な投与間隔,投与スケジュール,docetaxel単独か,estramustine, steroid,bisphosphonateと併用するのかまだ結論がでていない。当施設においてはdocetaxel, estramustine併用を間欠投与で行い,良好な耐容性かつ生活の質も長期に保たれていることを確認している。 3.その他の薬剤として,steroid, bisphosphonateなどがQOL 維持のため考慮される。前立腺癌に対する治療オプションを列記し,それぞれの治療による期待できる効果,高齢者に使用時の考慮すべき内容を各項目別に示した。
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原著
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乳癌術後補助化学療法におけるDocetaxel+Cyclophosphamide(TC)療法の安全性
34巻3号(2007);View Description Hide Description本邦における乳癌術後補助療法としてのdocetaxel(60mg/m2)+cyclophosphamide(600mg/m2)療法の安全性を検討した。愛媛乳癌TC 療法研究会では乳癌術後補助療法におけるTC 療法のコース数(4コース対8コース)の違いによる効果の違いを比較する臨床研究を開始した。2004年5月から2005年2月までに登録された8例(4コース群4例,8コース群4例)を対象に副作用を調査した。grade3または4の白血球数減少症や好中球数減少症が,それぞれ50%(4/8)と63%(5/8)の症例にみられた。発熱性好中球数減少症はみられなかった。grade 3または4の非血液学的副作用はみられなかったが,grade 2の脱毛,口内炎,皮膚障害,浮腫がそれぞれ100%(8/8), 25%(2/8), 25%(2/8),13%(1/8)の症例にみられた。総じてTC 療法は安全に実施された。また,すべての抗癌剤はスケジュールどおりに投与された。これらの予備的な検討結果から,TC 療法は本邦においても乳癌術後補助化学療法として安全に実行され得ると思われた。 -
進行再発大腸癌に対するCPT-11/5-FU/l-LV 療法の有効性の検討
34巻3号(2007);View Description Hide Description過去2年6か月間に3クール以上CPT-11/5-FU/l-Leucovorin療法を施行した進行再発大腸癌14例の治療結果や有害性をまとめ,有効性と安全性の検討を行った。14例の背景は平均年齢65(49〜79)歳。男性8例,女性6例で,原発部位は結腸10例,直腸4例。組織型は高分化腺癌1例,中分化腺癌12例,不明1例であった。手術時に同時性転移であった症例は9例,再発による異時性転移症例は5例であった。再発転移部位は,肝転移4例,肺転移5例,肝・肺転移1例,肺・リンパ節転移1例,リンパ節転移2例,局所再発1例。全例初回治療(first-line)として行った。平均施行回数は7.7回であった。奏効率は21.4%, 平均奏効期間は8.1か月であった。本療法が無効となった後は,他の薬剤によるsecond-line以降の治療を行った結果,全治療における平均奏効期間は14.8か月,平均生存期間は18.6か月であった。grade3以上の有害事象は,下痢2例,悪心・嘔吐3例,白血球減少3例。投与量の減量を余儀なくされた症例は1例のみであった。当院は導入時の1クール目以外は1泊入院を基本としており,入院延長を認めた症例は投与量の減量を余儀なくされた症例以外には認めなかった。本療法は進行再発大腸癌に対し初回治療として有効な化学療法と考えられた。 -
整形外科領域における大量癌化学療法に対する5-HT3受容体拮抗剤の効果比較
34巻3号(2007);View Description Hide Description5-HT3receptor拮抗剤であるgranisetron(GRA), ondansetron(OND), ramosetron(RAM)の3剤の効果を直接比較したデータがないことから,今回これら3剤の制吐効果を比較検討した。当院整形外科病棟にて原発性骨軟部悪性腫瘍に対し,術前・術後に全身化学療法を受け,GRA, OND, RAM のいずれかが投与された入院患者13名に,化学療法第1日目から6日目までの嘔吐回数などを調査用紙に記入してもらい,多変量解析の一つであるPLS(partial least squares)法を用い,嘔気の程度と嘔吐回数について3剤の効果および化学療法剤との関連性を解析した。さらに,Welchのt検定を用いて制吐効果を比較検討した。PLS 解析の結果より,嘔気に関しては,化学療法剤ではcisplatin(CDDP)の寄与率が高く,制吐剤ではRAM の抑制効果が他の制吐剤に比べて高い傾向が示唆された。嘔吐回数に関しては,化学療法剤ではdoxorubicin(ADM), CDDP の寄与率が高く,制吐剤では同様にRAM の抑制効果が高い傾向が示唆された。また,化学療法の種類別では,ADM+CDDP 併用群とifosfamide単独投与群で有意差はみられなかったものの,嘔気・嘔吐回数とも他の2剤に比べRAM の抑制効果が高い傾向が示された。 -
TS-1/ホリナートカルシウム併用療法の有用性—低葉酸飼料飼育ヌードマウス皮下移植ヒト腫瘍モデルを用いた基礎的検討—
34巻3号(2007);View Description Hide DescriptionTS-1とホリナートカルシウム(LV)による併用療法の有用性を,低葉酸飼料で飼育したヌードマウス皮下移植ヒト腫瘍モデルを用いて検討した。低葉酸飼料飼育マウスモデルにおける腫瘍組織内還元型葉酸量は通常飼料飼育条件に比べて低く,ヒト大腸癌組織と同程度であった。また,LV 投与による腫瘍組織内還元型葉酸量の変動は通常飼料飼育条件では軽微であったのに対し,低葉酸飼料飼育条件では2倍以上の上昇が認められ,LV 併用によるTS-1の効果増強作用は通常飼料飼育条件に比べ,低葉酸飼料飼育条件のほうがより明確であった。低葉酸飼料飼育条件においてLV 併用による抗腫瘍効果増強が明確であるのは,腫瘍組織内還元型葉酸量の変動が通常飼料飼育条件に比べて大きいことが要因と考えられた。これらのことからマウス低葉酸飼料飼育モデルはLV などの葉酸製剤の評価に適したモデルであることが示唆された。この低葉酸飼料飼育ヌードマウス皮下移植ヒト腫瘍モデルにおいて,TS-1/LV 併用はTS-1単独あるいはUFT/LV 併用よりも高い抗腫瘍効果を示したことから,大腸癌患者に対してさらに有用性の高い治療法になるものと期待された。
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症例
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TS-1が有効であった再発食道癌の1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は80歳,男性。2002年10月にstageIVa(T 2N 4M 0)食道癌と診断。nedaplatin(CDGP)/5-fluorouracil(5-FU)併用療法を6コース,放射線治療(total60Gy)を施行。食道傍リンパ節再発を認め,CDGP/vindesine療法を2コース終了。原発巣はcomplete response(CR), リンパ節はpartial response(PR)となっていたが,2004年12月に食道傍リンパ節(7cm 腫大)の再発を認めた。高齢で軽度の腎障害,認知症を認めていたため,TS-1 100mg/body/day(3週投与2週休薬)単独による治療を選択した。grade3の血液毒性,grade1の非血液毒性を認めた。計6コース施行しCR となった。治療前に高値であったSCC は4.7ng/mL から0.9ng/mL まで低下した。治療開始1年6か月後,現在経過観察中に再発は認めていない。 -
TS-1,CDDP,Docetaxelによる術前化学療法が有効であった胃原発腺扁平上皮癌の1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は66歳,男性。上部消化管内視鏡にて3型進行胃癌を認め,生検にて腺癌と診断。切除困難と考え,TS-1, CDDP,docetaxelによる術前化学療法を2course施行。化学療法によるdownstaging 後,胃全摘+膵体尾部合併切除術を施行。T 3,N 1のStageIIIA で病理組織学的には扁平上皮成分が大半を占める腺扁平上皮癌であった。手術後TS-1, docetaxelとTS-1による術後化学療法を施行中で,術後13か月間,再発なく加療中である。TS-1, CDDP, docetaxelによる抗癌剤治療はintensiveであるが,適切な管理下に施行すれば有効な治療で進行胃癌に期待される術前化学療法と考えられた。 -
TS-1単独療法にてCR を得られた高齢者進行胃癌の1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は80歳,男性。コーヒー残渣様嘔吐にて来院。胃角部に3型胃癌,小弯リンパ節腫脹を認め,T2N1H0P0M0,stagIIの進行胃癌と診断。手術加療の説明をしたが,高齢・糖尿病・気管支喘息の合併を理由に手術を拒否し化学療法を選択した。TS-1 80mg/day(4週投与2週休薬)の単独療法を開始した。1クールでPR を示し,5クールで内視鏡的にCR を得た。その後も継続し,14クール後,内視鏡上およびCT 上もCR を維持している。今後,高齢化社会が進むにつれ高齢者で合併症を有する進行胃癌患者が増加すると思われ,安全で外来治療が可能なTS-1単独療法は有用な治療法の一つと思われた。 -
進行再発胃癌に対するBi-Weekly Docetaxel,5'-DFUR 併用化学療法の経験
34巻3号(2007);View Description Hide Description昨今,進行再発胃癌に対する化学療法は奏効率が高く,安全性に優れた新規薬剤の登場により大きく変わりつつある。現状では,FU 系(たとえばTS-1など), taxane系薬剤,CPT-11, そしてCDDP がkey drug であり,これらを単剤あるいは併用で使用していくのが一般的である。これにより,third-lineあるいはfourth-lineの治療へ移行する例も増加しており生存期間の延長,QOL の向上が期待されている。今回,これらの抗癌剤治療に抵抗性を示した進行再発胃癌5症例に対し,2次,3次,4次,6次治療として併用効果が期待されるbi-weekly docetaxel, 5'-DFUR 併用化学療法を施行した。5症例のうち,3症例にMR とNC を認め,6か月,6か月,4か月の増殖制御効果を認めた。治療開始時のperformance statusは1が2例,2が3例であったが,治療継続中断となる有害事象もなく全例外来にて治療可能であった。5例中3例において,本治療が最終治療となったが,本治療開始後209日,246日,157日間生存しており,bi-weekly docetaxel, 5'-DFUR 併用化学療法はsecond-line以降の治療として有用な選択肢の一つとなり得ることが示唆された。 -
脱毛を強く拒否した進行再発乳癌症例に対し高用量ToremifeneとCapecitabineの併用投与が有効であった1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は36歳,女性。2002年4月ごろより右乳房腫瘤を自覚し,6月に他医を受診,右乳癌の疑いにて当科に紹介される。右腋窩リンパ節転移,右乳房に皮膚転移が確認され,7月11日の手術(Bt+Ax)後,tamoxifen(TAM)投与を開始し,その後,CEF 療法,5'-DFUR にて経過観察していたが,通院,服薬のコンプライアンスが悪いことも要因の一つとして2004年4月骨転移にて再発,paclitaxelなどの化学療法を施行後,2004年10月15日よりdocetaxel (DOC)にcapecitabineとtoremifene(TOR)の高用量(120mg/day)を併用した。その後,本症例が脱毛を強く拒否したためcapecitabineと高用量TOR の2剤併用投与のみを継続,一時期capecitabineによるものと思われるhand-foot syndromeのため休薬期間をおいたが,vitamin B6の投与で改善し,その後は服薬のコンプライアンスも良好で,2005年10月現在,諸検査上新たな転移巣は発見されていない。これらより,anthracycline系薬剤,taxane系薬剤を投与できない患者に対してcapecitabineと高用量TOR の2剤併用療法は有効な手段となり得ると思われた。 -
OK-432とMitomycin C の心嚢腔投与が著効した乳癌の癌性心膜炎による心タンポナーデの1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は40歳,女性。右乳癌に対しオーチンクロスを施行。術後,多発肺転移にて再発し化学療法を施行後,外来にてフォローされていた。激しい咳嗽と呼吸苦が出現し,多発肺転移の増悪および胸水貯留を認め入院となった。入院後,全身化学療法としてCAF を3クール,その後CMF に変更し治療を継続していたところ呼吸困難,起坐呼吸が出現し心タンポナーデの診断となった。超音波ガイド下に心嚢穿刺を行い,血性心嚢液350mL(Hct 23%)を除去した。心嚢液の細胞診ではclassVで乳癌の癌性心膜炎による心タンポナーデと診断した。心嚢液は再貯留し局所治療も必要と考え,OK-432 10KE,mitomycin C 10mg を注入した。その後心嚢液の貯留を認めず,胸部X 線写真にて心陰影縮小。症状は改善し退院となった。初回手術より6年後,心タンポナーデ発症より11か月後,肺転移の増悪から呼吸不全にて永眠された。死亡直前の心エコー検査では心嚢液の貯留は認めなかった。 -
術後再発に対してFP 療法(5-FU/UFT/TS-1+CDDP)が奏効した乳腺扁平上皮癌の1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は42歳,女性。左乳房腫瘤を主訴に当院を受診。触診,マンモグラフィ,超音波検査,穿刺吸引細胞診を施行,左乳腺扁平上皮癌と診断された。乳房切除術を施行し,補助化学療法としてDOC による化学療法とホルモン療法を行っていたが,術後4か月で再発(皮膚転移,肝転移)を認めた。そこでFP 療法(5-FU/UFT/TS-1+CDDP)を行ったところ奏効し,PR 10か月,NC 7か月を得ることができた。術後2年9か月経過し生存中である。乳癌の組織型として扁平上皮癌は比較的頻度が低くまれであり,かつ乳癌に対して投与されることが少ないCDDP を加えた化学療法が奏効した症例を経験した。乳腺扁平上皮癌に対する化学療法としてFP 療法は選択肢の一つとなり得ることが示唆された。 -
高用量Toremifeneが奏効した化学療法無効,Anastrozole抵抗性の多発肝転移を伴う進行乳癌の1例
34巻3号(2007);View Description Hide Descriptionanthracycline系およびtaxane系抗癌剤の治療効果が十分でなく,アロマターゼ阻害剤に抵抗性を示した多発肝転移を伴う進行乳癌に対して,高用量toremifeneが奏効した症例を経験したので報告する。肝機能障害を伴う多発肝転移のため,EC 療法を2コース施行するも肝転移巣の縮小は認めず,腹水の出現によりpaclitaxelを毎週投与に変更した。肝転移巣は縮小傾向を認めたが,白血球減少や貧血さらにはステロイドによる血糖コントロール不良のため化学療法を中止した。閉経状態かつホルモン受容体陽性のため,内分泌治療としてアロマターゼ阻害剤の服用を開始したが転移巣が増大したため,高用量toremifene 120mg/dayに変更した。投与開始後肝機能は正常化し,CT 上も肝転移巣は縮小し,また乳房腫瘍は消失した。toremifene内服開始後6か月経過しているが治療継続中である。 -
高齢(75歳以上)の乳癌患者に対するDocetaxelの効果と安全性
34巻3号(2007);View Description Hide Description高齢(75歳以上)の乳癌患者に対するdocetaxel(DOC)の効果と安全性を検討した。対象は,1997年9月から2003年6月の間にDOC を投与された75歳以上の進行ならびに再発乳癌患者5例であった。60mg/m2のDOC が3週間ごとに投与された。DOC に対する過敏性反応や浮腫などを予防するための前投薬は行われなかった。投与回数は5〜16回(中央値12回), relative dose intensity(RDI)は80〜100%(中央値95%)であった。全例において部分効果が得られ,奏効率は100%であった。部分効果に至るまでの時間は21〜50日(中央値21日), 治療が無効となるまでの時間は5〜22か月(中央値12か月), 生存期間は6〜38か月(継続中)(中央値23か月)であった。副作用のgradeと頻度は以下のようであった。grade3の白血球数減少80%, grade 1のヘモグロビン減少20%, grade 2の肝障害20%, grade 2の悪心20%, grade 2の食欲不振40%, grade2以上の浮腫40%, grade2の脱毛が100%であった。以上の結果からDOC は高齢の乳癌患者に対する有用な抗癌剤であると考えられた。 -
Neoadjuvant療法としてCarboplatin+Weekly Paclitaxel併用療法が有効であった子宮体癌Clear Cell Carcinomaの1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は62歳,女性。両側肺にび漫性の転移を認める子宮体癌StageIV b期の診断の下に,neoadjuvant 療法(NAC)としてcarboplatin(CBDCA)+weekly paclitaxel(PTX)併用療法を施行した。投与方法はCBDCA をAUC 5でday1に投与,PTX 70mg/m2,day 1, 8, 15に投与し,1週間の休薬期間をおいて周期的に投与を行った。NAC 3コース終了後には子宮自体も縮小し,肺のび漫性の転移巣も消失したため手術を施行した。術後の病理で子宮明細胞腺癌と診断された。子宮明細胞腺癌は頻度も少なく,いまだ有効な化学療法は確立されていないが,今回の症例からCBDCA+weekly PTX 併用療法も有用であると思われた。 -
Irinotecan+CDDP が著効した再発性卵巣癌の1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は78歳。2002年10月ごろから腹部膨満感があり,近医を受診したところ腹水を指摘され当院へ紹介される。試験開腹を行ったところstageIIIcの卵巣癌と診断し,docetaxelとcarboplatinからなるDJ 療法を6クール行うがPD であり,weekly paclitaxel療法を24クール実施した。その後外来で経過観察中に腫瘍マーカーの再上昇がみられ,再びweekly paclitaxel療法を行うが効果がみられず,PD と判断した。その後,作用機序の異なるCPT-11+CDDP 療法を施行し4クール施行後にはCA 125が正常化し,6クール施行後,現在のところ明らかな再発病変を指摘されていない。CPT-11+CDDP療法は,治療に難渋するプラチナ製剤,taxane製剤抵抗性の再発卵巣癌に対して有用である可能性が示唆された。 -
Weekly Paclitaxel療法にて治療効果が認められた後腹膜原発脂肪肉腫の1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description症例は58歳,女性。2004年3月,巨大な後腹膜原発脂肪肉腫に対し,腫瘍切除術+横行結腸,脾,左腎合併切除術を施行した。7月に骨盤内右側および左上腹部に再発を認め,腫瘍切除術を施行した。9月のCT 検査にて右下腹部,肝左葉前面,左上腹部,胃背側など多発再発巣を腹腔内に認めた。10月よりmesna, doxorubicin, ifosfamide, dacarbazine(MAID)療法を1クール施行するも効果判定はPD であり,下大静脈の圧排による両下肢の浮腫を来した。11月よりweekly paclitaxel(100mg/m2, day1, 3週連続4週ごと)を開始した。CT 検査による効果判定はNC であったが,下大静脈が開存し,両下肢の浮腫は改善を認めた。2005年8月に全身状態が悪化するまで化学療法を施行し,9月に死亡退院となった。今回,脂肪肉腫再発の患者に対しweekly paclitaxel療法を施行し症状が緩和され,QOL を改善させることができた。脂肪肉腫に対するweekly paclitaxel療法の有用性の可能性が示唆された。 -
指状嵌入細胞肉腫/腫瘍の1例
34巻3号(2007);View Description Hide Description極めてまれである指状嵌入細胞肉腫/腫瘍症例を報告する。症例は52歳,男性。2002年1月発熱を主訴に来院した。理学所見で右腋窩の無痛性リンパ節腫脹および肝脾腫を認めた。CT 検査では,右腋窩,縦隔,腹部傍大動脈,両側腸骨領域,鼠径部のリンパ節腫脹および肝脾腫が検出された。血液検査では肝機能異常に加え,血清可溶性IL-2受容体,フェリチンの上昇を認めた。同年2月に右腋窩のリンパ節生検を施行。円形あるいは卵円形の核と豊富な細胞質を有する中〜大型細胞のび漫性増生を認めた。また,紡錘形細胞やホジキン細胞様の巨細胞もみられた。免疫組織検査で,腫瘍細胞はS-100, CD 68,CD 45ROを発現し,CD 1, CD 3, CD 15, CD 20, CD 21, CD 23, FDC, DRC, p80は陰性であった。組織像,免疫組織染色の結果は指状嵌入細胞肉腫/腫瘍に合致する所見であった。2月よりcyclophosphamide/doxorubicin/vincristine/prednisone(CHOP)療法が施行された。しかし,真菌性肺炎を併発し化学療法開始1か月後に呼吸不全のため永眠された。
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連載講座
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