癌と化学療法
Volume 34, Issue 7, 2007
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総説
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悪性リンパ腫のゲノム異常解析と臨床診断への応用
34巻7号(2007);View Description Hide DescriptionアレイCGH は(array-based comparative genomic hybridization=array CGH)癌のゲノムコピー数異常を高感度,高解像度で解析することを可能にした。われわれの確立したアレイCGH プラットフォームは,2,304個のBAC/PAC クローンで構成されており,その解像度は1.3メガベースである。この技術を応用することにより,リンパ腫における病型特徴的なゲノム異常やその標的遺伝子を見いだしつつある。本稿では,非ホジキン悪性リンパ腫(non hodgkin lymphoma)の約半数を占めるびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL), 濾胞性リンパ腫(follicularlymphoma:FL)と,本邦に特徴的にみられる成人T 細胞性白血病/リンパ腫(adult T cell lymphoma/leukemia:ATLL)のゲノム異常について主に報告する。びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)はABC タイプ(activated B cell type=活性化B 細胞;予後不良)とGCB(germinal center B cell=濾胞中心B 細胞,予後比較的良好)タイプに分けることができるが,ABC タイプではtrisomy3と18qの増幅,9p21欠損が特徴である。それに対してGCB DLBCL ではこれらのゲノム異常はみられず,2p15, 7q, 12qのゲノム増幅がみられる。特にABC タイプにおける9p21の欠損をもつDLBCL は極めて予後不良であり,最もアグレッシブなDLBCL である。濾胞性リンパ腫ではBCL2 転座の有無によってゲノム異常のパターンを比較すると,BCL2 転座をもたないグループに特徴的な染色体異常を見いだした(trisomy3)。ATLL の解析では急性型とリンパ腫型では,異なるゲノム異常パターンを示し,遺伝子異常のパターンもまた異なっていた。このように複数のサブタイプからなるリンパ腫から,サブタイプ特徴的なゲノム異常を見いだした。さらにこれらのゲノム異常の解析だけにとどまらず,われわれはリンパ腫に特徴的ないくつかの重要な遺伝子異常も見いだしている。たとえばマントル細胞リンパ腫(MCL)におけるBIM 遺伝子の欠損,DLBCL, バーキットリンパ(BL)におけるmicroRNA 17-92の過剰発現などである。診断への応用として,DLBCL とMCL, ABC タイプとGCB タイプのDLBCL を,ゲノム異常のパターンから識別できるアルゴリズムを確立しつつある。このアルゴリズムを用いて,DLBCL とMCL を89%の確率で,ABC タイプとGCBタイプを83%の確率で識別できた。識別に用いたBAC マーカーは両疾患あるいはサブタイプを特徴付ける遺伝子異常を含んでいた。これらの結果から,アレイCGH で得られたゲノムプロファイルを比較することによって診断への応用が可能であると考えられ,ゲノム異常の標的遺伝子は治療の分子標的となり得る。
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特集
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- 外科的治療と内科的治療の境界領域の討論・㈼
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4型胃癌の治療戦略—外科の立場から—
34巻7号(2007);View Description Hide Description4型胃癌の治療戦略について外科の立場から検討を加えた。近年,4型胃癌手術症例の切除率は増加してきているが,手術例数は減少してきている。5年生存率は全体で20%前後,治癒切除例では30%前後であった。当科で経験した4型胃癌症例を検討した結果,P 0, CY 0またはP 0, CY 1で他に癌の遺残がない場合は,拡大手術も視野に入れながら術前化学療法を含む集学的治療を行う。出血,狭窄,疼痛,低栄養などの切迫した症状を有する場合は,根治切除不能であっても全身状態が良好であれば緩和手術+術後化療を行う。P 2/P 3で通過障害がない症例に対しては化学療法を選択する。しかし,減量手術の是非についてはいまだに結論がでておらず,JCOG 外科グループで準備中のprospective RCT の結果を待ちたい。 -
4型胃癌に対する治療戦略—内科の立場から—
34巻7号(2007);View Description Hide Description4型胃癌の予後は他の進行胃癌と比較して不良であり,その理由として高率に腹膜転移を合併し腸閉塞や水腎症,閉塞性黄疸を来すことがあげられる。外科的切除はpalliativeにならざるを得ない場合も少なくなく,予後延長には全身化学療法が重要な位置を占める。S-1は未分化型腺癌に高い奏効率を示し,われわれのhistorical control studyでも,gastric linitis plasticaに対して従来の化学療法と比較して高い奏効率と予後の改善が得られている(奏効率:S-1/non S-157.9%/27.9%, p<0.01, MST:402日/213日,p<0.01)。S-1レジメンはまた術前化学療法や術後化学療法においても高い有効性を示す可能性があるが,その証明にはさらなる前向き研究が必要である。paclitaxelは同様に未分化型で奏効率が高く,腹膜播種への治療効果も期待されている。irinotecanは毒性が増強する可能性があるため,腸閉塞を合併した症例では投与すべきではない。ただし結腸直腸癌の化学療法では有効な薬剤を使い切ることが予後延長に寄与していることが示唆されており,腸閉塞が出現する前にirinotecanを使い切ってしまうことが4型胃癌患者の予後を延長する可能性がある。 -
膵癌—外科の立場から—
34巻7号(2007);View Description Hide Description膵癌の外科手術手技は完成されて長期間を経ているにも拘らず,その治療成績は一向に向上しておらず,平均的な治癒切除後5年生存率は15%前後である。拡大リンパ節郭清の効果は日本から発信されたが,欧米から発信されたRCT により,その臨床的有効性は否定された。放射線/化学療法の効果には賛否両論があったが,ゲムシタビンによる術後補助化学療法の有用性が明らかになったので,今後の集学的治療法の益々の発展を期待したい。 -
膵がん—内科の立場から—
34巻7号(2007);View Description Hide Description膵がんの切除率は約20%にすぎず,診断時すでに多くは切除不能である。近年,gemcitabine(GEM)による化学療法など切除不能膵がんに対する治療法は大きく進歩し,なお新たな治療開発が進められている。遠隔転移のない局所進展による切除不能例は膵がんの約30%を占める。画像上局所進行でも約1/3に遠隔転移を認め,有効な化学療法が必要である。現在化学放射線療法が標準治療とされるが,GEM 単独化学療法も同等の成績が示されてきている。今後,放射線療法の有効なタイミングや新しい化学放射線療法の確立が重要な課題である。初発膵がんの約50%は遠隔転移を有し,現在GEM 化学療法が行われている。しかしその予後は生存期間中央値(MST)が約6か月と依然不良である。欧米を中心に大規模比較試験が行われ,500例を超える試験によりGEM+erlotinibとGEM+capecitabine併用療法が有意な生存期間の延長を示している。わが国ではS-1単剤第II相試験で良好な成績が得られ,さらにGEM+S-1併用療法が期待されている。標準治療の確立のため大規模試験の早急な実施が必要である。一方,これら初回治療増悪後の2次治療の確立が重要な課題となっている。 -
限局性前立腺がんの治療法の選択—泌尿器科からみた境界領域—
34巻7号(2007);View Description Hide DescriptionPSA の導入により早期に診断される前立腺がんが増加した。限局性前立腺がんに対しては前立腺全摘術が最も信頼性の高い根治的な治療である。また,放射線療法も根治的治療である。同様に待機療法も適切に選択された症例に適応可能である。また,最近では内分泌療法の限局性前立腺がんあるいは局所進行性前立腺がんに対する有用性を示す報告もある。本稿では,限局性前立腺がんに対する種々の管理法についてまとめた。 - 外科的治療と内科的治療の境界領域の討論・ II
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前立腺癌—放射線科の立場から—
34巻7号(2007);View Description Hide Description前立腺癌について外科と放射線科の境界領域疾患の治療法について概説した。最新の放射線治療のオプションとしては,3DCRT, IMRT, 高線量率および低線量率組織内照射,陽子線および炭素線治療,定位放射線治療等がある。それらの治療成績はquality assuranceのしっかりした施設で治療を受ければ,治療後10年程度の期間は手術療法に劣らない成績がでることが期待されている。日本においては比較的容易に上記の治療にアクセスすることができ,また医療費も比較的安価で済む。前立腺癌の場合,リスク群別に標準治療が確立しつつあり,それに則った治療法を選択する必要がある。またそれぞれのリスク群においての治療法の選択には治癒率,有害事象,コスト,患者の背景因子,人生観等様々な因子が絡むので,選択肢について十分説明した上で総合的に判断できるよう,インフォームド・コンセントを取ることが重要である。 - 外科的治療と内科的治療の境界領域の討論・㈼
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卵巣癌—外科の立場から—
34巻7号(2007);View Description Hide Descriptiongynecologic oncologist からみた卵巣癌治療:卵巣癌治療は外科的手術療法と抗癌剤による化学療法が密接に連動する複合療法として行われる。初回手術療法により病期が決定され,さらに進行癌では腫瘍減量術(primary debulking surgery)が行われる。術後化学療法の効果と術後残存腫瘍径は相関する。近年は化学療法の間にinterval debulking surgeryを行い,より確実に腫瘍の切除をめざす治療アプローチが広く導入されている。PET などの画像診断の進歩に伴い,再発癌に対しても積極的な手術療法(secondary debulking surgery)が行われている。 -
卵巣癌—内科の立場から—
34巻7号(2007);View Description Hide Description卵巣癌は固形癌のなかでも化学療法が奏効しやすい癌腫であり,フローチャートに従い初回手術による診断とステージングの後にタキサン製剤+プラチナ製剤が初回化学療法の標準的治療として確立されている。再発後卵巣癌に対しては抗癌剤の有用性が限られており,目的はpalliationであるためにあくまでも患者のQOL を考慮した治療方針が必要となる。また実際の臨床では,初回手術の困難な例ではneoadjuvant chemotherapyの後にcytoreductive surgeryを行うこともしばしばあり,その意義については臨床試験の結果が待たれる。
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Current Organ Topics:頭頸部癌
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原著
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進行・再発乳癌に対するWeekly Paclitaxel投与の多施設共同第II相試験
34巻7号(2007);View Description Hide Description今回われわれは,進行・再発乳癌37例に対して,weekly paclitaxel(PTX)療法の有効性・安全性を検討した。投与法はPTX 60mg/m2を週1回6週間連続投与,2週間休薬とし,8週間を1コースとした。平均投与コースは2.1コースであり,平均投与回数は12.7回であった。成績はCR 2例,PR 11例,NC 13例,PD 9例,NE 2例であり,奏効率は35.1%であった。6か月以上維持した症例(long NC)は3例あり,NC 13例を含めた臨床的有用率は70.3%であった。生存期間中央値は733日,治療成功期間中央値は151日であった。grade3以上の重篤な有害事象としては白血球減少3例(8.1%),好中球減少3例(8.1%)のみであり,PTX 投与後の急性過敏性反応は認められなかった。進行・再発乳癌の治療においてはpalliationが最も重要な要素であることを考えれば,60mg/m2週1回6週間連続投与,2週間休薬も考慮に値する治療法と思われる。 -
Taxane(TX)耐性の再発・転移乳癌に対する治療レジメンの検討
34巻7号(2007);View Description Hide Description2001年1月より2006年5月の間,われわれが診療した再発転移乳癌(MBC)292例中246例にtaxane(TX:docetaxel または paclitaxel)が投与された。近年,TX が術前治療や術後補助療法に広く用いられつつあり,今後のMBC の予後改善のためにはTX 耐性例に対する有用なレジメンを求める必要がある。そこで自験例にてTX 耐性出現後に用いられたレジメンの奏効の有無をホルモン受容体(HR), HER 2/neu(HER 2)の発現有無別にretrospectiveに解析した。TX 耐性となった166例に延べ387レジメンが(HER 2陽性例ではtrastuzumab併用にて)実施された。10%以上の奏効率(PR・CR 例/評価可能全例)を示したレジメンはTX・capecitabine併用(11/61,18%),CPT-11(10/57,17.5%), vinorelbine(5/46,10.9%)の他にMFL-P(MTX, 5-FU, LV, CDDP の連続治療)12/47, 25.5%, DMpC(5'-DFUR, MPA, CPA 経口)5/16, 31.2%があり,後2者の高い奏効率と,ともにHR(−)・HER 2(−)例にても奏効例がみられる点が注目された。なお,HR(+), HER 2(+)いずれにおいてもTX 奏効例は無効例に比しての延命傾向がみられたが,TX 耐性後の治療反応性には差がなく,TX 自体の延命効果が推察された。 -
根治度C 胃癌に対するS-1の治療成績
34巻7号(2007);View Description Hide Description根治度C に終わった胃癌症例32例を対象にS-1を投与し,その臨床成績について検討した。S-1は原則として80mg/m2を28日間投与し,その後14日間休薬(4投2休)を1サイクルとして可能な限り繰り返した。単独遺残病変を有する症例は21例,複数遺残病変を有する症例は11例で,主な病変は腹膜播種25例,リンパ節7例,肝臓4例,肺2例であった。部位別の抗腫瘍効果はリンパ節が28.6%で,肝と肺は0%と奏効例がなく,腹膜播種については評価をしなかった。全体のMST は573日(95%信頼区間439〜707日)で1年生存率は62.3%, 2年生存率は40.3%, 3年生存率は28.2%であった。S-1を1年以上服用できた症例は14例あり,MST は897日(95%信頼区間255〜1,539日)であった。有害事象は90.6%に認めたが,grade 3以上の有害事象の発現は12.5%であった。S-1はその長期投与が長期生存に寄与している可能性が示唆され,特に腹膜播種症例に対して有用であると考えられた。 -
札幌月寒病院報告その1—進行膵癌に対する化学療法と化学放射線療法
34巻7号(2007);View Description Hide Description今日,進行膵癌の治療は困難を極めている。特に化学療法においては他の固形癌治療に比べて奏効率,生存期間ともに著しく悪くmedian survival time(MST)の改善にほとんど寄与できていない。われわれは2002年3月以降,5-FU, S-1, cisplatin(CDDP), paclitaxel(PTX)を用いた細胞周期を考慮した間欠投与のregimenでStageIV膵癌の治療を行い生存期間の延長を得ることができた。この治療によるStageIVa 4例とStageIVb 6例の計10例の成績をまとめた。2006年12月31日の時点で,奏効率50.0% ,1年生存率(1生率)60.0%, 2生率12.0%, MST 19か月であった。また非血液毒性はgrade 2以下で臨床的に問題とはならなかった。骨髄系有害事象はgrade 3以上8例と多かったが,grade 3以上となった項目のほとんどが白血球減少とヘモグロビン減少で,血小板減少はgrade 3以上が2例であった。そのため臨床的対処に困難はなかった。以上の結果において,1生率とMST はほぼ納得できる成績であるが2生率があまり改善されず,3生率がゼロであり,StageIV膵癌に対する化学療法単独の限界を感じ,放射線療法との併用による可能性を検討した。2003年1月からこのregimenと放射線療法の併用治療をStageIV膵癌20例(StageIVa 9例,StageIVb 11例)に対して行い,2005年5月の時点で奏効率35.0%, 1生率86.3%, 2生率64.0%を得ている。この成績は平均観察期間321日(38〜834日)といまだ治療途中の成績であるが,放射線療法の併用がStageIV膵癌の生存期間延長に寄与する可能性を示していると考えられた。 -
びまん浸潤型大腸癌におけるThymidylate Synthase,Thymidine Phosphorylase, Dihydropyrimidine Dehydrogenase,Orotate Phosphoribosyltransferase mRNA 発現
34巻7号(2007);View Description Hide Descriptionびまん浸潤型大腸癌の核酸代謝関連酵素発現についてはほとんど知られていない。今回,びまん浸潤型大腸癌10例と,腫瘍径と組織学的病期をマッチングさせた非びまん浸潤型大腸癌(対照群)20例の原発巣におけるthymidylate synthase(TS), thymidine phosphorylase(TP), dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD), orotate phosphoribosyltransferase(OPRT)mRNA 発現をDannenberg tumor profiling 法で半定量し,各酵素の発現量や各酵素発現量の間の関係について比較検討した。びまん浸潤型と対照群の間で,検討した4酵素のmRNA 発現に差は認めなかった。対照群ではTS・TP 間,TS・DPD 間,TP・DPD 間に正の相関を認めたが,びまん浸潤型では相関を認めなかった。評価可能病変を有し,5-FU 系抗癌剤を含む化学療法を受けた5例では,治療効果と4酵素のmRNA 発現との間に特徴的な関係を見いだせなかった。以上から,びまん浸潤型大腸癌の核酸代謝関連酵素発現に特徴的な所見は乏しく,5-FU 系抗癌剤の効果にもこれらの酵素発現の発現量は影響しない可能性が示唆された。 -
Oxaliplatin Plus 5-Fluorouracil/Leucovorin(FOLFOX-4) as Salvage Chemotherapy in Patients with Pretreated Colorectal Cancer
34巻7号(2007);View Description Hide Description【背景】大腸癌に対するFOLFOX-4療法の本邦における臨床試験は少なく,特に既治療例に対する有効性と安全性は確立されていない。【目的】既治療大腸癌症例に対するFOLFOX-4療法の有効性と安全性の検討【対象,方法】2005年4月からFOLFOX-4療法を開始された既治療例20例。3例は安全確認試験に登録され,残りの17例は初回から前治療を考慮し減量投与された。【結果】前治療数に関しては1が7例,2以上が13例。投与回数中央値は10(4-12)。奏効率20%, TTP 5か月。FOLFOX-4開始からの生存期間中央値は15.6か月,初回治療からは28.5か月であった。grade3/4の好中球減少は12例(60%)に,神経障害は11例に認めた(55%)。FOLFOX-4の後にirinotecanを主とする後療法を受けた症例において,奏効例は得られなかった。【結論】既治療例に対するFOLFOX-4療法は,TTP 5か月を得て生存期間延長に寄与していると考えられた。減量投与例が多いにもかかわらず,骨髄抑制は高度であった。今後分子標的剤との併用によりさらなる生存期間の延長が期待される。 -
CD 20陽性B 細胞性非ホジキンリンパ腫に対するDose-Dense,Dose-Intense化学療法およびRituximab化学療法併用による治療成績
34巻7号(2007);View Description Hide DescriptionCD 20陽性B 細胞性非ホジキンリンパ腫に対し,dose dense,dose intenseの化学療法プロトコールCHOEA-7(cyclophosphamide,deoxyrubicin,vincristine,etoposide1回投与および付加的Ara-C)にrituximabを併用したRCHOEA-7療法により優れた治療効果を認めたので報告する。 -
婦人科卵巣がん患者Weekly Paclitaxel Carboplatin併用化学療法(TC 療法)における医療費の比較
34巻7号(2007);View Description Hide Description2004年10月から2005年2月までの間,当院の婦人科で行われた入院化学療法において,「DPC での医療費と出来高払いの医療費の差」を算出し,DPC 導入による医療費の変化を求めた。また,対象患者が外来で化学療法を行ったと仮定し,「入院での患者負担額と外来での患者負担額」を算出し,外来で化学療法を行った場合の医療経済学的評価を行った。結果,対象患者は52名で,DPC で請求することで1.12倍の点数を請求することができた。また,外来での請求点数は入院よりも低く,患者のQOL の面からも外来で行ったほうが,安く快適に化学療法を行えると予想される。
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症例
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CPT-11+CDDP 併用療法と放射線併用療法が有効であった胃癌脳転移の2例
34巻7号(2007);View Description Hide DescriptionCPT-11+CDDP 併用療法と放射線併用療法が有効であった胃癌脳転移の2例について報告する。CPT-11+CDDP併用療法はday 1,day 15に各々60mg/m2,30mg/ m2を投与する28日で1コースである。症例1:63歳,男性。主訴は頭痛,脱力。現病歴は2003年3月,胃癌の診断で胃全摘D1郭清施行し,T3, Nx, P1, StageIVであった。S-1の術後化学療法を施行したが,2年2か月後,右肺上葉への転移を認めた。S-1+CDDP 併用療法に変更して治療を行ったが,治療効果はPD でweekly paclitaxel(PTX)の治療に変更した。その7か月後,主訴出現しCT にて多発脳転移の診断とした。全脳照射(計30Gy)とCPT-11+CDDP を行った。脳転移に対する治療効果はPR であった。症例2:78歳,男性。主訴は下肢脱力,ふらつき感。2003年11月,胃癌の診断で胃全摘脾合併切除,D2郭清施行し,T2(ss), N0, P0, Stage I B であった。術後1年4か月後に吻合部再発,肺転移を認めた。S-1, S-1+CDDP 併用療法,weekly PTX 施行したが,その1年後,主訴が出現しCT にて多発脳転移を認めた。CPT-11+CDDP 併用療法,Cyber Knifeを行った。結果脳転移に対する治療効果はPR であった。 -
CPT-11にて腫瘍が消失した胃癌肝転移の1例
34巻7号(2007);View Description Hide DescriptionCPT-11投与にてCR となり,2年経過した現在も腫瘍が消失している胃癌肝転移症例を経験したので報告する。症例は71歳,男性。既往歴に狭心症があり,1998年早期胃癌にて他施設で幽門側胃切除術を受ける。2003年秋より逆流症状が出現し同年10月当院を受診した。検査にて残胃癌の診断となる。術前画像診断にて肝後区域に径6cm の孤立性転移巣を認め,針生検にて残胃癌の肝転移と診断した。肝転移に対しては術後全身化学療法を行うことにし,同年11月残胃全摘術を施行した。術後3週目よりS-1の内服を開始し,計3クール後に評価したところ腫瘍は増大傾向にあった。そのためCPT-11に変更し計900mg 投与した。投与終了後の画像検査で肝転移巣は消失し,2年経過した現在も再発なく健在である。 -
Second-Line ChemotherapyとしてのWeekly Paclitaxel療法が奏効したS-1抵抗性術後再発胃癌の1例
34巻7号(2007);View Description Hide DescriptionS-1抵抗性術後再発胃癌に対してweekly paclitaxel(PTX)療法が奏効した1例を経験した。症例は63歳,男性。2005年2月下部進行胃癌にて幽門側胃切除術を施行し,S-1による術後化学療法を継続していた。2006年4月腹部膨満感が出現,精査にて腹部大動脈周囲リンパ節転移および腹膜播種による消化管通過障害と診断した。化学療法をweekly PTX 療法(60mg/m2/day, 3週投与1週休薬を1コース)に変更し,計3コース施行した。2コース目途中から自覚症状が改善し,腹部X 線で鏡面像の消失を認めた。3コース目終了時の腹部CT でリンパ節転移巣の著明な縮小と腹水の消失を認め,腫瘍マーカーは正常化した。有害事象はgrade 1の末梢神経障害およびgrade 2の白血球減少であった。現在まで転移・再発の徴候を認めない。本治療はS-1抵抗性術後再発胃癌に対するsecond-line chemotherapyとして,極めて有効かつ安全な方法であると考えられた。 -
Weekly Paclitaxel療法が奏効した腹膜播種を併う進行胃癌の1例
34巻7号(2007);View Description Hide Description症例は67歳,男性。癌性腹水貯留を伴う進行胃癌で化学療法を選択した。S-1,CDDP 併用療法を開始したが効果なく2クールで中止した。二次治療としてpaclitaxelの週1回投与を開始したところ腹水が減少しはじめ,6クール終了後に施行した上部消化管内視鏡検査で胃癌は縮小し,腹部CT では貯留腹水量が減少していた。腹膜播種を伴う進行胃癌に対し本治療は有効であると考えられた。 -
非切除進行胃癌に対しS-1単独投与によりQOL 良好な長期生存を得た1例
34巻7号(2007);View Description Hide Description症例は66歳,男性。上部消化管内視鏡にて胃前庭部に胃癌病変を認め,2003年4月15日に手術を施行したが膵頭部に浸潤を認め切除不能にて胃空腸吻合術のみ施行し,術後14日目よりS-1 100mg/day分2を4週投与,2週休薬を1クールとして開始した。自覚的な副作用は出現せず,術後2年6か月で腫瘍マーカーCA 19-9が上昇を示したため,その後他剤に変更したが術後3年経過してもなおquality of life(QOL)が損なわれず,癌による症状に悩まされることなく社会生活を送り,S-1単独投与による長期生存をなし得た。 -
胃癌乳腺転移の1例
34巻7号(2007);View Description Hide Description胃癌術後4年にて乳腺転移を発症した1例を経験した。症例は61歳,女性。2001年3月に胃癌にて幽門側胃切除術+Billroth I 法再建術を施行された。fT 4(mesocolon)N 2P 1H 0CY 0M 0, stageIV, 根治度C であった。術後,全身化学療法を施行した。2005年3月,右乳房に腫瘤出現,穿刺吸引細胞診にてsignet-ring cell carcinomaを認め,胃癌乳腺転移と診断した。胃癌乳腺転移の本邦報告例は自験例を含め25例であり若年者に多く,低分化型が多いといった特徴がみられた。転移経路としては血行性転移,腹壁を介したリンパ行性転移,胸管,腋窩リンパ節を介した逆行性リンパ行性転移が示唆されているが,本症例では腹直筋転移巣からのリンパ行性転移が考えられた。 -
5-FU, Docetaxel併用放射線療法に著効を示した頸部食道癌縦隔リンパ節再発の1例
34巻7号(2007);View Description Hide Description症例は70歳,女性。頸部食道癌術後9か月にリンパ節再発の胃管浸潤を来した。術後補助化学療法としてFP 療法を受けていたため,5-FU,docetaxel 併用放射線療法を行った。投与スケジュールは第1日にdocetaxel 10mg/m2, 第1〜5日に5-FU 250mg/m2を持続静注し,放射線照射2Gy/日を週5日,5週間施行した。治療終了後,胃管の癌性潰瘍病変は消失し,9か月後の現在もCR 持続中である。また,経過中に重篤な副作用を認めていない。5-FU, docetaxel 併用放射線療法は,再発食道癌に対する有用な治療法であることが示唆された。 -
3cm 超の肝硬変合併肝細胞癌に対しラジオ波焼灼療法+持続肝動注化学療法が奏効した3例
34巻7号(2007);View Description Hide Description症例1は71歳の女性で,C 型慢性肝炎による肝硬変にてfollow up中にS 3/S 4に径45mm の肝細胞癌(HCC)を認めた。chemo-lipiodolizationとラジオ波焼灼療法(RFA)を施行後,持続肝動注化学療法を施行した。AFP は正常化し,治療開始後3年1か月再発なく経過している。症例2は80歳の男性で,C 型慢性肝炎にてfollow up中にS 7に径60mm,S 2に径20mm のHCC を認めた。RFA 施行後に持続肝動注化学療法を施行し,治療開始後2年10か月再発なく経過している。症例3は67歳の男性で,C 型慢性肝炎による肝硬変にてfollow up中にS 6に径52mm のHCC を認めた。chemolipiodolizationとRFA を施行後,持続肝動注化学療法を施行した。肝外に突出する局所再発をRFA にてコントロールし,治療開始後約2年5か月の現在,再発の徴候はない。今回われわれは3cm 超の肝硬変合併肝細胞癌に対しRFA+持続肝動注化学療法が奏効した3例を経験したので報告する。 -
S-1単剤および肝動注化学療法が奏効している切除不能進行胆嚢癌の1例
34巻7号(2007);View Description Hide Description切除不能進行胆嚢癌は予後不良な疾患であり,標準的治療についてコンセンサスは得られていない。症例は53歳,女性。心窩部痛があり精査の結果,胆嚢癌 T2N0M(−)H1, stageIV b と診断した。S-1内服による全身化学療法とともに肝転移に対しepirubicin(EPI)およびmitomycin C(MMC)による肝動注化学療法を施行し,partial response(PR)の抗腫瘍効果が認められた。診断時より16か月経過した現在もPR を維持しており,quality of lifeを損なうことなく外来治療を継続している。 -
Second-Line Chemotherapy(Gemcitabine+S-1)が有効であった進行膵頭部癌の1例
34巻7号(2007);View Description Hide Description症例は63歳,男性。進行膵頭部癌(膵癌取扱い規約:T 4N 3M 0, StageIVb)に対し,バイパス術を施行した後firstline chemotherapyとしてgemcitabine(GEM)単独療法を,再燃後のsecond-line chemotherapyとしてGEM+S-1療法を施行した。指標としたCA 19-9のfirst-line施行前,施行後最小値,second-line施行前,施行後最小値はそれぞれ5,692U/mL, 70U/mL, 4,877U/mL, 562U/mL であり,いずれの治療も効果が認められた。全治療期間中grade3以上の有害事象は認められず,外来治療可能であり良好なQOL が得られたものと考える。 -
結腸癌術後に肝転移・傍大動脈リンパ節転移を認めFOLFOX 4レジメンが奏効した1例— 一般市中病院での抗癌剤ガイドラインについて—
34巻7号(2007);View Description Hide Description4種類の化学療法を使用しFOLFOX 4レジメンが奏効した1例。症例は62歳,女性。2004年6月にS 状結腸癌および転移性肝癌に対し,結腸切除術および肝部分切除術を施行した。当院における化学療法のガイドラインを患者に示し,10月から希望によりUFT/LV の経口投与を開始した。術後6か月のCT で,傍大動脈に1.8cm 大のリンパ節転移巣を認めた。FOLFIRI レジメンを3コース行ったが,同病巣径は不変であった。2005年6月に肝S 7に腫瘤が疑われS-1を開始した。9月には同肝病巣は2cm にまで増大し,転移巣と診断された。また,傍大動脈リンパ節も両側に出現かつ最大3cm 縦径と増大を認めた。FOLFOX 4レジメンを開始し,2コースで肝転移巣は縮小した。6コースで軽度副作用があり中止したが,術後18か月のCT で肝転移巣は消滅し,傍大動脈リンパ節は1.2cm に縮小した。術後再発の化学療法に関しては各医師の裁量が大きいのが現状であるが,本症例のようにガイドラインを患者に示すことで臨機応変にレジメンの変更ができ,よりよい informed consent が成り立つと考えられた。 -
Capecitabineによる重症手足症候群を発症した乳癌の1例
34巻7号(2007);View Description Hide Description症例は55歳,女性。2001年右乳癌にて乳房全摘術を行った。T3, N2, M0。n(26/33)。ER(−), PgR(−), 術後ACT 療法を施行した。2002年CEA 値が上昇しはじめweekly paclitaxel 療法,weekly docetaxel 療法を施行した。左腋窩転移を認め,放射線治療を施行した。2004年CEA 値は再上昇し,capecitabineを開始した。第2サイクル終了ごろより食欲低下,両手掌,両足底の有痛性発赤が出現し入院となる。白血球は最低700/mm2,血小板6,000/mm2まで低下し,G-CSFや血小板製剤を投与した。総ビリルビンも最高10.1mg/dL と上昇したが2週目ごろより骨髄抑制も改善し,黄疸も低下した。両手掌および両足底は全体に上皮が剥離し,びらんとなった。2週目ごろより手掌のびらん部が上皮化しはじめ,3週ごろより足底が上皮化しはじめ全身状態も改善した。CEA 値は92ng/mL から3.2ng/mL まで低下し,capecitabineを減量して再開し,2か月目に退院となった。結語:本症例はcapecitabineによる手足症候群などの副作用について十分説明し,その出現も自覚しながら継続してしまった。外来通院による化学療法を行う場合,患者と医療者側と密なる情報交換が必要と考える。 -
S-1が奏効した乳癌術後肺転移の1例
34巻7号(2007);View Description Hide DescriptionS-1が奏効した乳癌肺転移の1例を報告する。症例は60歳の女性で,2001年11月に手術を受け,2005年10月に再発した。ホルモン感受性がなかったことから化学療法を選択し,S-1 120mg/日(分2)で経口投与による治療を開始した。投与4コース目には腫瘍マーカーは基準値に復し,5コース終了時における胸部CT スキャンにおいて肺転移巣はすべて消失した。投与期間中の有害事象は軽度であった。S-1は良好な抗腫瘍効果と優れた忍容性により,転移・再発乳癌に対して有用な治療と考えられた。 -
再発乳癌に対する高用量Toremifeneと経口抗癌剤併用療法の使用経験
34巻7号(2007);View Description Hide Descriptionホルモン感受性陽性再発乳癌にtoremifene(TOR)120mg 単独の投与が認められているが,高用量での抗癌剤との併用において抗腫瘍効果を高める働きを有すことが報告されている。今回,静注抗癌剤に比して副作用が少ない経口抗癌剤との併用において,有効性を認めたので報告する。再発12例に対して,TOR 120mg 連日投与と経口抗癌剤(5'-DFUR+CPA, capecitabine, S-1)を併用投与した。PR 以上の奏効は5例(奏効率41.7%), SD を含むと7例(58.3%)で無増悪期間は5.8か月であった。有害事象は,1例に頭痛および口内炎を認めたがいずれも軽度であった。高用量TOR 使用は再発乳癌の内分泌療法だけではなく,化学療法の併用薬として期待できる療法と考える。
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