癌と化学療法
Volume 34, Issue 9, 2007
Volumes & issues:
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総説
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癌に対する遺伝子療法の現状—臨床応用はどこまで進んだか—
34巻9号(2007);View Description Hide Description特定の遺伝子またはそれを組み込んだベクターを用いて,その蛋白を生体内で一定期間持続的に発現・作用させて治療する“遺伝子治療”。従来の治療法に比べて,より簡便な処置で標的分子特異的な作用が得られることから,患者に対する侵襲や負担,副作用が低減されることも期待されている。ベンチサイドからは優れた抗腫瘍効果が日々多数報告されており,悪性腫瘍,特に既存の治療法では臨床効果が極めて低い癌種に対する新たな治療法として有望視されている。その反面,第III相試験まで進み,最終的に医薬機構から承認されて市場にでる遺伝子治療薬はいまだに少ないことから,その治療戦略が疑問視され,臨床開発状況が全般的に認識されない場合も少なくない。では,どのような分子が標的とされ,どの段階までその臨床研究は進められているのか。ここでは,現在行われている癌遺伝子治療の臨床試験を網羅的に紹介する。
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特集
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- 癌における画像診断の進歩
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肺癌における画像診断の進歩
34巻9号(2007);View Description Hide Description肺癌診療においてCT 装置の普及やマルチスライスCT の登場により,これを柱とした画像診断が発達してきている。CT を利用した肺癌検診では多くの早期の肺癌が発見されている。最近,FDG-PET は原発巣,リンパ節転移,遠隔転移の評価などに利用され,肺癌診断の上で重要な役割を果たしている。また,診断精度の向上を目的としてコンピュータ支援診断の導入,MR 装置や撮像法の発達から胸部MRIを肺癌診断に利用した試みも行われてきている。本稿では肺癌における画像診断の現況について概説する。 -
乳癌における画像診断の進歩
34巻9号(2007);View Description Hide Description乳癌の画像診断の進歩は,各種モダリティ装置の進化はもちろんのこと,温存療法の普及と無縁ではない。腫瘍の範囲を部分的に切除するという治療の選択肢ができたことで,乳癌の術前画像診断の重要性が増し,MRI などによる術前進展範囲の診断法が急速に進歩した。また近年検診による乳癌早期発見の必要性が広く認識されることにより,マンモグラフィや超音波といった従来からの画像診断法もさらに広く普及していく方向にあり,それに伴ってガイドラインの作成など検査法,診断法の標準化が進められている。 -
肝悪性腫瘍における画像診断の進歩
34巻9号(2007);View Description Hide DescriptionCT, MRI の進歩は著しい。CT ではMDCT が登場し,時間分解能,空間分解能が飛躍的に向上した。肝細胞癌の検出にはダイナミック検査が有用であるが,MDCT の進歩とともに撮影タイミングの最適化がなされ,高い診断能を示している。Z 軸方向の空間分解能が向上したおかげで質の高いCTA や多断面像(MPR 像)の作成が可能となり,肝細胞癌や胆管細胞癌などの肝悪性腫瘍の術前検査の評価に用いられている。MRI では高速撮像法により呼吸停止下での撮影が可能となった。SPIOは網内系に取り込まれる肝特異性造影剤であり,SPIO造影MRI は肝転移の検出に非常に有用である。また,パラレルイメージングの進歩により腹部領域でも拡散強調像が臨床応用され,肝転移の検出に有用と報告されている。最近,日本でもPET-CT が普及となり,肝転移の評価が行われている。 -
胆膵悪性腫瘍における画像診断の進歩
34巻9号(2007);View Description Hide DescriptionマルチスライスCT の検出器の多列化は,等方性ボクセルを可能とし,理想的な三次元画像が容易に得られるようなった。高画質のCTA やMPR は胆膵疾患の診断に有用であり,curved-MPR 像は胆膵悪性腫瘍の診断能を向上させた。MRI では三次元データ収集法がルーチン撮像法となり,三次元ダイナミックスタディや三次元MRCP が胆膵疾患の診断にもたらす効果は大きい。拡散強調像も胆膵領域に臨床応用可能となり,膵癌などの診断にその有用性が期待されている。 -
泌尿器系悪性腫瘍における画像診断の進歩
34巻9号(2007);View Description Hide Description画像診断は様々な新技術,検査方法が出現,進歩し,臨床面での有用性や利用方法が検討されている。泌尿器系悪性腫瘍の画像診断では簡便性,安全性から経腹超音波検査がscreening 的に受け入れられているが空間分解能に問題があり,造影超音波やdoppler超音波に期待がもたれている。腎,上部尿路系では時間,空間分解能の高さ,装置の普及数からMDCT(multidetector-row CT)が最も利用されている。しかし,造影剤の問題でMRIとの選択方法が検討されている。膀胱でもMDCT の有用性が報告されているが組織コントラストの高さから深達度診断ではMRI が利用されている。前立腺癌ではMRI の拡散強調画像(diffusion-weighted image:DWI)やMRS(MR spectroscopy)の有用性が報告されている。18FFDG-PET(positron emission tomography)/CT は核種が尿路に排泄されるため,原発巣の評価は不十分であるが,転移の診断に有用とされる。 -
婦人科系悪性腫瘍における画像診断の進歩
34巻9号(2007);View Description Hide Description女性骨盤領域の画像診断において,MRI はその優れた組織コントラストにより極めて有効な画像診断法として活用されている。従来は,T 1・ T 2強調画像を用いた診断が中心であったが,近年撮像技術の発展により躯幹部においても拡散強調画像の良好な画像が得られるようになり,活用されはじめている。悪性腫瘍においてその有用性が認識されつつあり,特に播種やリンパ節転移の診断には高い感度を示すが,特異度や組織学的な良悪の鑑別能は低い可能性があり,従来のT 1強調画像およびT 2強調画像の所見を含めて総合的に診断する必要がある。
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Current Organ Topics:食道・胃癌
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原著
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中・下咽頭癌に対するCDDP+5-FU またはCDGP+5-FU による化学放射線療法の治療成績
34巻9号(2007);View Description Hide Description2001年1月〜2006年4月にcisplatin(CDDP)+5-fluorouracil(5-FU)またはnedaplatin(CDGP)+5-FU による化学放射線療法を行った中・下咽頭癌28例の治療成績を分析した。臨床病期別症例数は II期2例,III期5例,IVa期19例,IVb期2例であった。放射線治療の総線量は60〜73.8(中央値66)Gyで,照射期間は41〜57(中央値47)日であった。化学療法は5-FU 700mg/m2:day1〜5,CDDP(またはCDGP)70mg/m2: day4を照射期間中2クール行うことを原則とした。生存例の経過観察期間は8〜64(中央値26)か月であった。grade3以上の急性期有害事象の発現率は,白血球減少29%,貧血21%,血小板減少7%,粘膜炎43%,悪心・嘔吐14%であった。重篤な晩期有害事象は認められなかった。原発巣に対する治療効果は,CR 24例(86%),PR 4例(14%)で,2年局所制御率は87%, 2年生存率は72%であった。CDDP+5-FU またはCDGP+5-FU による化学放射線療法は進行中・下咽頭癌に対して有効な治療法であると思われた。 -
非小細胞肺癌術後の補助化学療法としてのWeekly Paclitaxel+Weekly Carboplatin併用療法の安全性に対する検討
34巻9号(2007);View Description Hide Description非小細胞肺癌の補助化学療法については近年様々な比較試験が報告されており,ここ数年はポジティブな結果が多い。これを受けて日本の各施設でも,術後の補助化学療法には積極的な施設が増えてきた。当院では非小細胞肺癌術後の補助化学療法としてweekly paclitaxel(PTX)+weekly carboplatin(CBDCA)併用療法を行っており,今回施行した13例について,その安全性をretrospectiveに検討した。PTX は70〜80mg/m2を1時間かけて点滴静注し,その後にCBDCA をAUC=2とし1時間かけて点滴静注した。これを1, 8, 15日目に行い22日目を休薬として2〜4コース実施した。初回のみ入院にて行い,以後外来にて投与した。薬剤投与後2日目に間質性肺炎を併発した1例を除き,その他の症例では予定回数を完遂できた。非血液毒性では,末梢神経障害3例,悪心2例,全身倦怠感6例,口内炎2例,脱毛を11例に認めた。血液学的毒性については,白血球減少を10例に認めたが,そのうち発熱性およびgrade 3以上は1例も認めなかった。また,ヘモグロビン低下10例,血小板減少を2例に認めたが,いずれも軽度でgrade3以上のものは認めず,外来にて十分コントロール可能であった。非小細胞肺癌術後の補助化学療法としてweekly PTX+ weekly CBDCA は外来にて安全に投与でき,忍容性に優れていると思われた。 -
非小細胞肺癌に対するVinorelbine単独療法の外来移行に伴うQOL 変化
34巻9号(2007);View Description Hide Description近年急速に入院から外来化学療法への移行が進んでいる。日常生活や社会生活を行いつつ生活の質(quality of life:QOL)を維持,向上することは外来化学療法の主たる目的の一つである。今回われわれは信頼性の証明された調査票を用いてQOL を客観的に測定し,その因子を解析することを目的として本臨床研究を行った。PS 0〜1の非小細胞肺癌患者10名(68〜90歳,平均78.0歳)に対してvinorelbine単独療法を行い,入院から外来への移行に伴うQOL 変化を厚生省栗原班「がん薬物療法におけるQOL 調査票」を用いて検討した。因子分析で「活動性」,「身体状況」,「社会性」を低下させることなく入院から外来への移行が可能であること,「精神・心理状況」に関連する項目は外来移行に伴い改善することが明らかとなり,QOL の観点からみた外来化学療法の利点がより明確に示された。 -
札幌月寒病院報告その3—進行胃癌(腹膜播種,癌性腹膜炎)に対する化学療法(IntFP・wkPTX regimen)
34巻9号(2007);View Description Hide Description進行・再発胃癌に対する化学療法は適応承認薬も多く,種々の併用療法が可能であり,最近では癌腫の縮小をしばしば認めるようになったが,完全治癒の達成は現状では極めて困難である。進行胃癌に対する化学療法の意義ある仕事は,対症療法,best supportive care(BSC)群に比較して化学療法群でmedian survival time(MST)を延長させたことである。日本および欧米の成績をまとめると,化学療法による進行胃癌のMST は約7〜12か月であるが,腹膜播種を伴う症例群でのMST は約5〜6か月と極めて予後が悪い。われわれは1996年10月以降,5-FU の24時間持続点滴静注(CIV)の隔日(月,水,金)投与またはS-1隔日(月,水,金)投与に少量cisplatin(CDDP)投与を併用したintermittent FP(IntFP)療法により,StageIV胃癌の治療を実施しMST の延長を認めている。また2002年3月からは IntFP 療法に weekly paclitaxel(wkPTX)毎週1回投与,3週投薬1週休薬を併用したIntFP・wkPTX 療法を開始している。今回は腹膜播種を伴う胃癌9症例(癌性腹膜炎4症例を含む)に対してIntFP・wkPTX 療法を実施した。その結果,MST 14か月,1年生存率(1生率)55.6%, 2生率は27.8%と過去の成績に比べて2倍以上のMST の改善が認められた。血液学的有害事象はgrade 3以上が4例(44.4%)と多かったが,その内訳は白血球減少3例とヘモグロビン減少3例(重複あり)で,血小板減少は全例がgrade1以下で臨床的対処に困難はなく,また非血液毒性はすべてgrade2以下であり長期の継続治療が可能であった。今回の成績は症例数が少なく,さらなる検討を要するが,本療法は腹膜播種を合併する進行胃癌の生存期間の延長に寄与する可能性が高いと考えられた。 -
大腸癌における術前血清CEA およびCA 19-9測定の意義についての検討
34巻9号(2007);View Description Hide Descriptionはじめに:腫瘍マーカーの測定は各種癌診療において簡便で頻用されている。当院大腸癌における術前血清CEA,CA 19-9測定の意義について検討した。方法:大腸癌586例について術前CEA およびCA 19-9を測定し,それぞれの基準値をcut-off値として,それより低値の群(group A), 高値の群(group B)に分類し予後を検討した。結果:各マーカーは進行度が進むにつれ基準値以上を示す傾向があり,group A はgroup B より有意に生存期間が良好であった。Dukes分類の検討では,CEA はDukes A, B, C でgroup A がB より有意に生存期間が良好であった。CA 19-9はDukes C, D でgroupA がB より有意に生存期間が良好であった。再発例の検討では,CEA,CA 19-9ともにgroup A およびB ともに再発時には初回手術時よりも有意に基準値以上を示した。Dukes A における補助化学療法の検討(5-FU containing regimen)では未施行例においてCEA のgroup B でのみ有意に予後が悪かった。結語:大腸癌における術前血清CEA, CA 19-9の測定は,予後予測に有用であり,特にCEA はDukes A におけるhigh risk groupの予測に有用である可能性を示唆した。 -
FOLFOX 4療法の副作用集計データに基づく患者向け説明書の作成
34巻9号(2007);View Description Hide Description癌研有明病院で2005年4月から10月までのFOLFOX 4療法で治療した123名の副作用を電子カルテにてレトロスペクティブに調査した。その結果,血液毒性(52.8%), 慢性運動神経障害(16.2%), アレルギー(15.4%)であった。初回導入治療では,食欲不振(60.1%), 嘔吐(19.5%), 急性末梢神経障害(33.3%)であった。そこで,服薬指導の標準化と患者の知識を深めるために患者向け説明書を作成した。患者向け説明書が薬学的ケアに貢献すると考えられる。 -
進行肝細胞癌に対する小粒子リピオドールエマルジョンを用いたリザーバー動注化学療法の有用性
34巻9号(2007);View Description Hide Description肝動脈にリザーバーを設置した上で小粒子化リピオドールエマルジョンによる動注化学療法を施行,その治療効果を検討した。対象は進行・再発肝細胞癌症例21例,界面活性剤としてレシチンを加えたリピオドールエマルジョン2mL とdoxorubicin hydrochloride 10mg を用い,外来にて2週間に一度動注を施行した。奏効率は治療開始後6か月で38.1%であった。平均生存期間は18.1か月であった。対象全症例において重篤な有害事象は認めず,施行期間におけるカテーテル閉塞は2例にみられた。通院回数が少なく,QOL を保ちながら比較的高い治療効果が得られるので,本療法は他の治療適応とならない高度進行・多発の肝細胞癌に対して有効な治療法の一つになり得ると考えられた。 -
婦人科悪性腫瘍に対する傍大動脈リンパ節郭清術の安全性の検討
34巻9号(2007);View Description Hide Description婦人科悪性腫瘍において,子宮体癌・卵巣癌では傍大動脈リンパ節は所属リンパ節であり,その郭清術は基本術式に含まれるが,患者への手術侵襲は大きい。そこで傍大動脈リンパ節郭清術の安全性を調べるため,当院にて傍大動脈リンパ節郭清術を行った215例について,手術時間,術中出血量,術中損傷部位,術後創部感染と離開,術後イレウス発症率につき後方視的に検討した。手術時間は平均364分であり,術中大量出血は下大静脈,腎静脈損傷によるものが多く,Kocherの十二指腸授動術を行うことにより出血量を減少させることができた。術後イレウスは13.3%に発症したが,ほとんどが7日以内に保存的治療により軽快した。創部離開,ドレーン感染の発症率は10%未満であった。 -
当院における子宮頸癌に対するConcurrent Chemoradiation Therapyの現状
34巻9号(2007);View Description Hide Description当院における進行子宮頸癌に対するconcurrent chemoradiation therapy(CCR)の現状について検討した。対象は根治的放射線療法を施行した14例で,進行期はIIa 1例,IIb 3例,IIIa 1例,IIIb 9例で,子宮頸部の腫瘍径は直径1.5〜8.0cm であった。放射線療法と同時にcisplatin(CDDP)70mg/m2を3週間ごと2〜3コース併用した。CCR が完遂できた12例の腫瘍縮小効果は,CR 7例,PR 2例,SD 3例で奏効率は75%であった。子宮頸部の組織診,細胞診で,CCR 終了直後にviable cellの消失した症例は10例,83.3%であった。副作用はgrade 3の白血球減少症,血色素低下,下痢であった。中止例は2例で,CDDP 投与直後の急性腎不全1例と,発熱および食欲不振の1例であった。生存率に関しては観察期間が十分でないこともあるがCCR の有意な有効性は示されていない。傍大動脈リンパ節腫大例におけるCCR の奏効率は低く生存率も不良であった。bulkyな子宮頸癌に対してCCR の一次効果はある程度得られたが,長期的予後に関しては今後の課題と思われる。 -
がん性疼痛患者におけるオキシコドン徐放錠の薬物動態についての検討
34巻9号(2007);View Description Hide Description現在,オキシコドン徐放錠に関しての情報が統一されておらず,特に吸収過程に関する薬物動態の報告は少なく,がん性疼痛患者における薬物動態は十分に検討されていないのが現状である。そこで今回,オキシコドン徐放錠(オキシコンチン)を使用したがん疼痛患者7名における体内薬物動態について,非線形最小二乗法プログラム(MULTI)を用い検討を行った。その結果,薬物動態パラメータは,CL/F:45.6±22.0L/hr(mean±SD), Vd/F:473.0±196.7L, t1/2:7.2±6.2時間,kel:0.103±0.034, kal:1.082±0.604, lag time:0.99±0.40時間と算出された。また血中濃度推移では,投与直前から投与後1時間にかけてほとんど血中濃度は上昇しておらず,投与後1時間以降に急激に血中濃度の上昇が観察された。今回の結果より,がん性疼痛患者におけるオキシコドン徐放錠の薬物体内動態が明らかとなり,特に吸収過程においてlag timeは約1時間と算出され,MS コンチン錠よりも若干短いもののほぼ同程度であることが確認された。
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症例
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S-1投与が奏効した口腔扁平上皮癌の1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description76歳,女性。右側下顎前歯部から小臼歯部に深い潰瘍を伴う下顎歯肉癌T2N0M0, StageII(扁平上皮癌)と診断された。2002年12月26日入院し,S-1を100mg/日にて4週投与,2週休薬を1クールとして投与を開始した。投与7日目より下顎歯肉原発巣の著明な縮小が認められ,1クール終了時には肉眼的に腫瘍は認められなかった。2クール終了時の生検では腫瘍細胞を認めず,腫瘍マーカーはSCC が2.13ng/mL から0.68ng/mL まで低下した。その後UFT を300mg/日で継続投与し,外来にて経過観察中であるが治療開始後50か月現在,再発兆候を認めていない。 -
S-1/CDDP 併用療法にてCR が得られた再発食道癌の1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description食道癌術後の傍胃管リンパ節再発に対しS-1/CDDP 併用療法を行い,CR が得られた症例を経験した。S-1 80mg/m2/dayをday1〜21に連日経腸栄養チューブより脱カプセル化して注入し,CDDP はday8に60mg/m2/dayを2時間点滴静注とした。2コース終了後傍胃管リンパ節再発巣は消失し,CT 上もCR と判定された。加療後約10か月経過し,無再発生存中である。 -
P, CY 因子によるStageIV胃癌に対し術後化学療法(S-1or UFT)を施行し5年以上の長期生存が得られた2例
34巻9号(2007);View Description Hide DescriptionP, CY 因子によるStageIV胃癌に対し,術後化学療法を施行し5年以上の長期生存が得られた2例を経験したので報告する。症例1:59歳,男性。2001年7月胃癌にて幽門側胃切除術を施行した。病理組織診断はmucinous adenocarcinoma,3型,pT 3(SE), pN 1, sH 0, sP 0, sCY 1, sM 0, fStageIVであった。術後S-1 100mg/day2週投与1週休薬で1年11か月投与し,術後5年2か月の現在,無再発健存中である。症例2:68歳,女性。2002年1月胃癌にて胃全摘術を施行した。病理組織診断はpoorly differentiated adenocarcinoma, 3型,pT 3(SE), pN 2, sH 0, pP 1, pCY 0, sM 0, fStageIV。同年2月S-1 100mg/day開始するも副作用(口内炎,手足皮膚反応,脱毛)のため中止した。UFT(テガフール200mg/day)内服へ変更し1年9か月投与,術後5年の現在,無再発健存中である。 -
切除不能進行胃癌に対するFifth-Line化学療法としてmFOLFOX 6療法が奏効した1例
34巻9号(2007);View Description Hide DescriptionNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)胃癌診療ガイドライン2006年第1版によると切除不能進行胃癌に対する化学療法としては5-FU/Leucovorin(LV), 5-FU-based, cisplatin(CDDP)-based, oxaliplatin(L-OHP)-based, taxane-based, irinotecan(CPT-11)-based, ECF が推奨されている。今回,われわれは前治療としてtaxane,CDDP,CPT-11を投与後にoxaliplatin-based化学療法であるmFOLFOX 6療法を施行し,奏効した切除不能進行胃癌症例を経験したので報告する。症例は73歳,男性。切除不能進行胃癌に対してdocetaxel/CDDP/S-1療法,CPT-11/CDDP 療法,weekly paclitaxel療法,MTX/5-FU 時間差療法を施行するもPD となった。胃癌に対して有効とされる5-FU-based, CDDP-based, taxanebased,CPT-11-basedをすべて使用したため,国内で承認されている有効な薬剤はないと考えられた。未承認ではあるが,oxaliplatin-basedの化学療法は切除不能進行胃癌に対して有効であることが報告されていることから患者への十分な説明と同意,東札幌病院IRB の承認を得た上でmFOLFOX 6療法を施行した。2コース終了後の効果判定ではPR であった。oxaliplatin-based化学療法はCDDP 前治療歴のある胃癌症例に対して期待できる治療法であると考えられた。 -
CPT-11/S-1術前化学療法が奏効し根治切除し得た進行胃癌の1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description進行胃癌に対する確立された補助化学療法はいまだに存在しない。今回われわれは,大型3型進行胃癌に対しCPT-11/S-1の併用による術前化学療法を施行し,リンパ節転移巣に著効,根治切除可能であった1例を経験したので報告する。症例は69歳,女性。食道浸潤を伴う胃体部小弯の3型進行胃癌であり,CT にて噴門部胃壁の著明な肥厚およびNo.3リンパ節の腫大を認めcT 3, cN 1, cM 0, cStageIIIA と診断された。CPT-11/S-1併用による術前化学療法を2コース施行した。2コース後のCT にて胃壁肥厚の改善,No.3リンパ節腫大の縮小を認めた。手術所見では明らかなリンパ節腫大は認めず,胃全摘術,脾臓摘出術,胆嚢摘出術,D 2郭清を施行した。病理診断は,pT 2(MP), pN 1, pStageIIであり,化学療法の効果判定はGrade2であった。術後経過は良好であり,退院後S-1投与を開始し術後8か月を経過した現在,明らかな再発は認めていない。CPT-11/S-1併用術前化学療法は比較的安全に施行可能で,downstaging や腫瘍のviability低下により根治性が向上し,術後生存期間の延長が期待できる治療法であると考えられた。 -
原発性十二指腸癌術後の肝内再発に対してS-1+Docetaxelの併用が有効であった1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description70歳,男性。腹痛にて受診。内視鏡にて十二指腸球部後壁に潰瘍病変を認めた。生検にて腺癌と診断され,膵頭十二指腸切除を行った。術後病理は十二指腸癌,膵の圧排浸潤を認めた。術後3か月後腹部CT にて肝S 3に30mm と15mm,S 7に15mm の多発肝転移を認めた。全身化学療法S-1(2週投与1週休薬), docetaxel(3週ごと)の併用を開始した。3クール目には腫瘍の縮小傾向を認め,その後も増大することなく経過し,他病死する術後3年目まで局所再発も認めなかった。S-1, docetaxelの併用は食道癌をはじめ,進行・再発胃癌に対する化学療法として有効性があることは知られている。十二指腸癌は比較的まれで有効とされる化学療法は確立されていないが,S-1+docetaxelの併用は有効である可能性が示唆された。 -
肝動注療法および全身化学療法にて切除可能となった大腸癌肝転移の1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description症例は70歳,男性。横行結腸癌,多発性肝転移と診断した。原発巣による狭窄症状があったことより,横行結腸切除術を施行。肝転移に対しては肝動注,全身化学療法FOLFOX 4を施行した。肝転移は縮小し単発となったので13か月後に手術可能となり,肝切除術を施行した。肝動注,全身化学療法により切除可能となった横行結腸癌,多発性肝転移症例を経験したので報告する。 -
StageIV胆管癌術後にS-1/CDDP 併用療法が奏効した1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description症例は70歳,男性。2000年11月前医にて下部胆管癌と診断され,膵頭十二指腸切除術が施行された。術後3年4か月後に左頸部および腹腔内リンパ節腫脹を認めた。生検を施行し,病理組織学的に胆管癌の転移との診断を得た。2004年4月よりS-1 120mg/body day 1〜14とCDDP 20mg/body day 14経静脈的投与を開始し有害事象なく外来にて安全に施行され,29か月の生存を得ることができた。S-1/CDDP 併用療法は胆嚢,胆管癌において,今後有用な治療法になり得ると思われた。 -
放射線動注化学療法後S-1単独治療にて18か月良好なQOL で外来治療中の癌性腹膜炎を伴った切除不能進行膵癌の1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description症例は57歳,女性。膵体部に37×30mm の腫瘤像を認め,門脈浸潤,動脈浸潤,リンパ節転移を伴っており,切除不能局所進行膵癌(StageIVb)と診断し,gemcitabine(GEM)動注放射線療法(50Gy/25Fr)を施行。PR の診断にてGEM動注化学療法の外来治療へ移行。3か月後,著明に腹水貯留,細胞診にて腺癌を認め癌性腹膜炎の診断。腹水コントロール目的にMMC, CDDP などの腹腔内投与に加えS-1治療開始。消化器症状の有害事象にて,50mg/day持続投与に減量し外来治療へ移行。その後60mg/dayまで増量し,18か月有害事象をまったく認めず良好なQOL を維持し外来治療継続中である。初診後29か月の長期生存を継続中であり,切除不能癌性腹膜炎合併膵癌にS-1減量継続投与の有用性が示唆された。 -
Cisplatin/Docetaxel+同時性放射線照射が奏効し根治手術を施行し得たstageIIIA 非小細胞肺癌の1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description症例は47歳,男性。健診で右肺異常陰影を指摘され当院受診。胸部CT およびFDG-PET 検査にて右上葉に3.6cm大の腫瘤影および上〜中縦隔リンパ節腫大を認めた。気管支鏡下生検結果は肺腺癌であり,臨床病期cT2N2M0, stageIIIAと診断された。術前化学放射線療法として,CDDP 40mg/m2(day1, 8)+DOC 40mg/m2(day1, 8)を2コース+concurrent RT 2Gy/day, total 46Gyを施行した。治療後の胸部CT にて原発巣の縮小がみられ,上〜中縦隔のリンパ節はPET 検査上,FDG の集積がほぼ消失していた。有害事象としてはgrade2までの血液毒性および放射性皮膚炎がみられた。化学放射線療法終了後1か月を経て,右肺上葉切除,リンパ節郭清ND 2aを施行した。病理組織検査にてpT1N1M0, stageIIA と診断され,術前化学放射線療法によりdown-staging が得られたと考えられた。CDDP/DOC+同時性放射線照射は効果的なneo-adjuvant therapyであることが示唆された。 -
Primary Systemic TherapyでpCR が得られた乳癌の1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description症例は39歳,女性。左乳房の腫脹に気付き,近医で乳腺炎の診断を受け抗生剤を投与されていた。軽快しないため当科を初診した。受診時,左乳房全体が硬く腫脹し,明らかな同側腋窩リンパ節腫脹を認めた。同部の針生検検査で充実腺管癌の診断であった。左乳癌T4N2M0, stageIIIB と診断しprimary systemic therapyとしてFEC 100を4コース,3wpaclitaxelを4回コース施行後,左乳房切除術および腋窩リンパ節郭清を行った。摘出標本の病理所見では明らかな癌細胞の遺残はなく効果判定はgrade 3, pathological CR(以下,pCR)と判定,リンパ節転移も消失していた。 -
Trastuzumab+Weekly Paclitaxelで30か月間CR を維持している乳癌肝転移の1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description患者:55歳,女性。1998年2月(48歳時)に,皮膚浸潤を伴う右乳癌に対し胸筋合併乳房切除術,腹直筋皮弁術を施行した。経過:2003年11月MRIで肝S 3, S 5に転移巣の出現を認め,trastuzumab+weekly paclitaxelを開始した。治療開始後,転移巣は速やかに縮小し2004年4月には病変を指摘できなくなり,完全奏効(complete response:CR)と判断した。術後8年8か月が経過した現在,明らかな再発所見および化学療法の副作用を認めることなく外来通院中である。考察:進行再発乳癌症例に対して化学療法を施行しCR を得られた場合,化学療法をいつ中止するべきか明確な基準はない。今回,HER 2陽性乳癌肝転移に対してtrastuzumab+weekly paclitaxel 投与を行い,長期CR を得られた症例を経験した。こうした症例では,どのタイミングで化学療法を中止すべきなのか若干の文献的考察を加えて報告する。 -
Carboplatinの急性過敏反応発症後にCisplatinを用いた脱感作療法でプラチナを再投与し得た卵巣癌3症例
34巻9号(2007);View Description Hide Description卵巣癌の標準化学療法はpaclitaxel/carboplatin併用療法である。このregimenは初回治療はもとより,症例によっては再発時にも用いられる。そのため,投与回数が重なった時にcarboplatinの急性過敏症反応を起こすことがある。最近,われわれはcarboplatinによる急性過敏症反応を3症例経験した。症状は頻脈,胸部苦悶感,呼吸困難などであった。そのような症例に対しcisplatinを用いた脱感作療法を行ったところ,全例にプラチナ製剤の再投与が可能であった。この方法は安全で,プラチナ感受性のある症例には有用であると考えられたので報告する。 -
Rituximab併用CHOP 療法におけるLamivudine予防投与終了後にHBV 再活性化を認めたDiffuse Large B-cell Lymphoma
34巻9号(2007);View Description Hide Description症例は59歳,女性。2004年7月よりdiffuse large B-cell lymphomaに対して,R-CHOP を開始し,計8コース終了した。初診時検査で無症候性HBV キャリアーと判明したため,化学療法開始と同時にlamivudine(LAM)の予防投与を開始した。HBV-DNA 量は徐々に減少し,同年12月には検出感度以下となった。R-CHOP 終了後3か月間LAM を継続し,計約1年間の予防投与を終了した。LAM 投与終了2か月後,著明な全身倦怠感を自覚し外来を受診。顕著な肝機能異常,HBV-DNA 量の増加を認め,HBV reactivationによる急性肝炎と診断され緊急入院。直ちにLAM を再開し,interferon-βの併用療法を開始した。治療後肝機能は改善し,HBV-DNA も検出感度以下となった。現在もLAM 投与を継続し経過観察中である。 -
血液腫瘍患者における嘔気予防としての経口Tropisetron Hydrochlorideの使用経験
34巻9号(2007);View Description Hide Description化学療法後に生じる悪心・嘔吐予防としての5-HT3拮抗剤の有効性はすでに確立しており,注射薬は頻用されている。今回われわれは経口剤の有効性を検討するため,血液腫瘍患者21例に対してtropisetron hydrochlorideを化学療法前に投与した。17例でまったく悪心・嘔吐が認められなかった。臨床検査値でも異常はみられず,安全で有効な薬剤であることが確認された。経口剤は注射剤より安価であり,在宅で服用も可能であることから外来化学療法にも適した薬剤といえる。 -
Granisetron(カイトリル)によるアナフィラキシーショックの1例
34巻9号(2007);View Description Hide Description症例は60歳台の男性で,甲状腺乳頭癌の再発に対して数回にわたり手術を受けていた。2006年になり再発腫瘤が気道浸潤を来し手術適応はないと判断し,抗悪性腫瘍剤による治療を開始した。前投薬にステロイド剤およびgranisetronを投与し,続いてpaclitaxelの投与を開始した直後にアナフィラキシーショックを来した。その時点ではpaclitaxelによるアレルギーと考えられた。1週間後に他の抗悪性腫瘍剤による治療を行う予定として前回と同様の前投薬投与を行ったところ,抗悪性腫瘍剤を使用する前にアナフィラキシーショックを来した。薬剤性アレルギーの可能性が非常に高く,原因薬剤はgranisetronであると判断した。本剤によるアナフィラキシーショックの文献報告例は海外を含めても1例もなかった。非常にまれな症例を経験したので報告する。
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特別寄稿
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Journal Club
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用語解説
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