Volume 34,
Issue 10,
2007
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総説
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癌と化学療法 34巻10号, 1527-1534 (2007);
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マイクロアレイの出現により,がんの網羅的遺伝子解析が可能となった。遺伝プロファイルを得ることにより,がんの個別化治療,遺伝子レベルでの病理診断が可能となりつつある一方で,その得られたデータの解析方法は発展途上にある。がん臨床におけるのマイクロアレイの現状と展望を解説する。
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特集
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Neoadjuvant Therapyの適応と効用・㈵
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癌と化学療法 34巻10号, 1535-1537 (2007);
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頭頸部癌治療におけるneoadjuvant chemotherapy(NAC)には一般にCDDP+5-FUのPF 療法が用いられていたが,その有効性はいまだ一定の見解を得ていない。現在のところ化学療法が生存率や臓器温存率に寄与するのは放射線治療との併用療法のみとされている。TXT の頭頸部癌への適応が認められ,TXTを併用した様々な報告がなされているが,現時点では化学放射線併用療法の代用になるものではなく,今後のさらなる検討が望まれる。
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癌と化学療法 34巻10号, 1538-1542 (2007);
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I B-III A 期の局所限局型非小細胞肺癌に対する術前化学療法は,1990 年代前半に有効中止された二つの小規模臨床第III相試験の結果から,標準的治療の一つと考えられた。しかし,その後行われた臨床試験では,統計学的な有意差をもってその有効性は証明されていない。加えて,これらの試験を含むmeta-analysis ではoverall のhazard ratio は0.88(95% CI: 0.76-1.01)であり,術前化学療法の有用性はmarginal な結果であった。N2-IIIA期非小細胞肺癌に対して放射線化学療法に,より局所の制御を高める手術療法を付加する意義があるかないかを問う米国のINT 0139 試験では,無再発生存期間では手術群が優れているものの,両群間の生存期間に差がなかった。現時点では,非小細胞肺癌に対する術前治療は実地医療で推奨するだけの根拠に乏しく,試験治療すなわち臨床試験ベースでの検討を依然進めていくべきである。
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癌と化学療法 34巻10号, 1543-1548 (2007);
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切除可能食道癌に対して治療効果を高める方法として,術後化学療法,術前化学療法,術前化学放射線療法などの試みがされてきた。術前化学療法については定まったものではなかった。しかし,日本で行われたJCOG9907の結果,5-FU/CDDP 療法2 コースを術前に行うほうが,術後に行うよりもより生存に寄与するとの報告があり,食道扁平上皮癌に対するエビデンスとして注目される。術前化学放射線療法については,試験ごとに結果が異なり一定の評価がなかったが,メタアナリシスやCALGB 9781の結果により,米国では術前化学放射線療法を行う,いわゆる trimodality therapy が標準的となっている。組織型や術式の異なる日本において同様の効果が望めるのかは,今後の検討が必要であり,DNA マイクロアレイやプロテオミクスなどによる治療効果予測などが試みられている。
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癌と化学療法 34巻10号, 1549-1552 (2007);
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neoadjuvant chemotherapyの概念は日本語で「術前」と訳されることからも明らかなように,化学療法後に手術が計画されていることが必要である。NAC の理論的根拠とデメリット,胃癌におけるNAC の適応,NAC の実際を概説する。現時点では,胃癌におけるNAC の有用性を証明した成績はないが,JCOG で進められている初めてのRCT である0501trialの成績を待って次のstrategyに進むことが考えられる。
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癌と化学療法 34巻10号, 1553-1556 (2007);
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局所進行直腸癌の治療では,全生存率の向上のみならず,独特の再発形式である局所再発のコントロールが重要な課題である。全直腸間膜切除術(TME: total mesorectal excision)は局所再発率の低下をもたらした標準手術として,全世界で受けられている。米国のNIH はp-stageIIおよびIIIの直腸癌の標準治療として「切除+術後化学放射線療法」を1990 年から推奨している。しかし,本邦では欧米に比べて手術単独での局所再発率が低いために,補助放射線療法の大規模臨床試験はほとんど行われなかった。本邦ではTMEを対照とした多施設共同無作為比較試験が進行中であり,報告が待たれる。このような国内外の現状を踏まえて,局所進行直腸癌に対する補助化学放射線療法に関する現状を文献的考察を加えて述べる。
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原著
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癌と化学療法 34巻10号, 1581-1587 (2007);
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5-fluorouracilのリン酸化による活性化酵素であるorotate phosphoribosyltransferase(OPRT)は,S-1 に対する感受性を決定する因子として注目されている。胃癌切除症例97 例を対象とし,胃癌組織(n=97),正常胃粘膜(n=65)におけるOPRT 値を測定し,TS,DPD 値との関連,ならびに術前化学療法のこれらの酵素値に対する影響について検討した。胃癌組織,正常胃粘膜におけるOPRT 蛋白量はそれぞれ5.4±3.6,3.9±4.7 ng/mg proteinであり,胃癌組織におけるOPRT値は正常胃粘膜における値に比較し有意に高値であった(p<0.05)。OPRT 値はTS,DPD値とは相関性は認めず,また同一症例における癌組織,正常胃粘膜のOPRT 値には相関性は認めなかった。術前化学療法施行症例と非施行症例におけるOPRT 値には差を認めなかった。以上より,胃癌組織中におけるOPRT 活性は正常胃粘膜における値に比較して有意に高値であり,癌組織において選択的にフッ化ピリミジン系薬剤のリン酸化による活性化が起こっているものと考えられ,OPRT 値は術前化学療法施行により変化しないと考えられた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1589-1594 (2007);
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今日の早期胃癌治療の一次選択肢は内視鏡手術も含めた手術である。しかし,身体的条件や精神的条件などにより手術が適応とならない症例がある。その場合には有害事象が少なく効果的な化学療法が二次的に選択される。この時に選択される化学療法として,どのようなregimen がよいかはいまだ確定されてはいない。われわれは10 例の早期胃癌患者に対して intermittent F・low-dose P(IntFP)療法を用いて治療を行った。それを retrospective に検討すると,奏効率は100%(CR 8 例,PR 2 例)で,癌による死亡例はなく,他病死4 例を除いた5 年生存率(5 生率)は100%であった。10症例中再発は1 例であり,病理学的CR で退院後7 か月に再発して,IntFP 療法の再治療で再び病理学的CR となり2006 年12 月31日の時点で66 か月無再発で生存している。血液学的有害事象はヘモグロビン減少と白血球減少においてgrade 3が各1 例にみられた以外はgrade 2 以下であり,非血液学的有害事象はすべてgrade 2以下であった。IntFP 療法は手術が適応とならない早期胃癌症例で,病理学的CRが得られ長期生存が期待できる有害事象の少ないregimenと考えられる。
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癌と化学療法 34巻10号, 1603-1607 (2007);
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Purpose: To determine the activity and toxicity of combined 24-hour infusion of paclitaxel with carboplatin in advanced non-small cell lung cancer. Patients and Methods: Eligibility required measurable disease; stage IIIB with malignant pleural effusion or stage IV disease, with a performance status(PS)of ECOG 0-2. Chemotherapy consisted of 24 hours continuous infusion of paclitaxel at 135 mg/m2 on day 1, followed by carboplatin(AUC=6)on day 2.Treatment was repeated at 3-week intervals for a total of 6 cycles. Results: Thirty-nine patients were enrolled. Twenty six patients were male and 13 female, with a median age of 57 years(range, 38 to 72). Six patients(15%)had stage IIIB and 33(85%)had stage IV. PS 0-1/2 was 67%/33%. A total of 131 cycles was administered and the median number of cycles was 4(range, 2-6). Grade 3-4 neutropenia, grade 3-4 leukopenia and grade 3 anemia occurred in 3%, 3% and23%, respectively. One patient(3%)developed febrile neutropenia. Grade 3 diarrhea occurred in 3 patients(8%). Other non-hematologic toxicities were mild including mucositis and skin rash. The overall response rate was 15%. Median survival was 8 months(range 6-9.5 months)and 1-year survival rate was 20%. Conclusions: The combined 24-hour infusion of paclitaxel(Intaxel)with carboplatin is a feasible and well-tolerated regimen in the treatment of advancedNSCLC patients. Key words: paclitaxel, carboplatin, non-small cell lung cancer(Received Fed. 19, 2007/Accepted Mar. 23, 2007)
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癌と化学療法 34巻10号, 1609-1615 (2007);
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乳癌周術期のintensive な化学療法施行の際に,治療効果を最大限に期するための工夫が各施設にて行われている。FEC+docetaxelの術前化学療法の臨床試験(JBCRG01)参加施設のsupportive care の工夫を施設間で共有することを目的にアンケート調査を実施した。化学療法を安全に遂行するには悪心・嘔吐や浮腫,発熱性好中球減少症などの有害事象に対する適切なsupportive care が重要である。それには医師のみでなく,癌薬物療法に詳しい看護師や薬剤師をはじめとする医療スタッフのかかわり,外来化学療法センターなどのハード面の整備,家族の支えなどが重要なポイントであることがアンケート調査から判明した。本グループのように多施設臨床試験を遂行することで施設間の情報交換も進む。今回のアンケートで得られた工夫が十分に行われていれば,anthracycline 系ならびにtaxane 系薬物療法は,外来ベースで管理可能な薬物療法であると考えられた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1617-1621 (2007);
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高齢者の急性骨髄性白血病(AML)寛解導入におけるanthracycline 3日間とcytarabine 7日間(3 & 7 療法)の治療成績と安全性を,当院の65 歳以上80 歳未満の患者について後方視的に検討した。治療はcytarabine 100 mg/m2を7日間持続点滴し,年齢に応じて減量したanthracycline を 3日間 1時間点滴投与した。また地固め療法は原則 1 コース施行した。6 年間に来院した50 名の高齢者de novo AMLのうち,80 歳以上,M3,Ph1陽性例を除く24 名に3 & 7療法を施行し,効果と安全性を評価した。完全寛解(CR)率は45.8%,治療関連致死率は12.5%であり,全生存期間(OS)中央値は11.2 か月,CR 症例の無イベント生存期間とOS の中央値は各々9.4,21.6 か月であった。欧米の大規模研究と同等の結果であり,高齢者であってもanthracyclineの減量のみで3 & 7療法が積極的に実施可能と考えられる。
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癌と化学療法 34巻10号, 1623-1627 (2007);
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濾胞性リンパ腫の治療戦略はいまだ定まっていないのが実情である。そこでわれわれは2005年1月〜2006年12月の間に8例の濾胞性リンパ腫症例に施行したrituximabとcladribine 併用(RC)療法を検討した。年齢中央値57(42〜73)歳。男性4 例,女性4 例。1 例に前治療歴あり。follicular lymphoma international prognostic indexではlow-risk群4例,intermediate-risk群3例,high-risk群が1 例であった。観察期間中央値は36(22〜90)週。rituximabは375mg/m2を第1 日目に,cladribineは0.1 mg/kgを第1〜5日目に2 時間で点滴投与した。治療コース数は中央値5(3〜8)コース。治療間隔は中央値7(3〜26)週。効果は治療中症例も含めCR 5 例,PR 2 例で奏効率87.5%であった。grade 3 の好中球減少を4例に認めたが,G-CSFを併用した例はなかった。血小板減少や貧血は認めなかった。治療終了後,帯状ヘルペスを1 例に合併した。RC療法は非常に安全で良好な短期治療効果を示した。
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癌と化学療法 34巻10号, 1629-1632 (2007);
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当院でサルベージ化学療法を施行した治療抵抗性・再発性の悪性リンパ腫患者を対象に,ESHAP レジメンとACESレジメンの有用性について後ろ向き比較した。対象症例の疾患内訳は,ホジキンリンパ腫 6例,濾胞性リンパ腫 7例,びまん性大細胞型リンパ腫 16例の計 29例であった。ESHAP療法を受けた症例は 19例で年齢の中央値が49(31.72)歳,初発時の臨床病期 stageI〜II/III/IVが5/8/6 であった。ACES療法を受けた症例は10 例で年齢の中央値が54(22〜65)歳,病期は 1/1/8であった。奏効割合はそれぞれ68%(13/19)と40%(4/10),全生存率は31.3%と34.3%であった。血液毒性は両治療群で同様で,腎毒性はそれぞれ52%(10/19)と0%(0/10)であった。ACESレジメンではESHAPに比較して寛解割合が低いものの腎機能を温存でき,比較的高齢者における自家移植に有利な可能性がある。
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癌と化学療法 34巻10号, 1633-1636 (2007);
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化学療法に感受性のある多発性骨髄腫の治療には,melphalan大量療法(HDM)を用いた自家末梢血幹細胞移植(自家移植)が有効である。HDM の治療は粘膜障害が強いことが知られている。HDMによる前処置毒性を,ICEレジメンを対象にして比較検討した。2003年4月1日〜2004年12月31日までに当院で自家移植を受けた多発性骨髄腫18例,悪性リンパ腫9例を対象とし,それぞれmelphalan200mg/m2(MEL200), ICE療法を施行した。患者1人1病日当たりの消化器症状発現率はMEL200 療法では0.93,ICE 療法では0.95 と差がなかった。grade 3 以上の消化器症状は,それぞれ0.08 と0.12 でMEL200 のほうがやや少なかった(p=0.07)。血液毒性には差がなかった。HDM では栄養関連毒性の頻度はICE療法と比較して程度が軽く,栄養管理が行いやすい可能性が考えられた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1637-1642 (2007);
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弘前大学医学部附属病院では外来化学療法室を設置し,がん化学療法の外来化を支援している。診療科横断的にがん化学療法を応需する結果,その制吐療法は慣習的かつ多様であるため標準化が望まれる。そこで,当院の制吐剤の使用状況が国際的ガイドラインに準拠しているか調査し,医療経済学的考察を加えた。中等度催吐性の抗がん剤を含む治療に対する制吐療法において,推奨されるステロイドの代わりに,不必要とされる5-HT3系制吐剤が頻用される傾向が認められた。高価な5-HT3系制吐剤と有効かつ安価なステロイド使用を適正化することにより,患者にとって悪心・嘔吐と経済的負担療法の軽減が可能と思われた。
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症例
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癌と化学療法 34巻10号, 1643-1646 (2007);
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症例は75 歳,男性。高度リンパ節転移を伴う進行胃癌に対し,術前化学療法としてdocetaxel/S-1 併用療法を施行した。投与方法はdocetaxel 60 mg/body(day 1),S-1 120 mg/body(day 1〜14)を1 クールとして3 週間ごとに施行した。2 クール終了時の効果は,胃の主病変とリンパ節腫脹ともに著明に縮小した。本症例に対して,胃全摘術,胆摘D2+No. 16リンパ節郭清を施行した。病理組織学的所見は主病巣とリンパ節には腫瘍細胞の残存は認められず,効果はGrade 3(pCR)が得られ,根治度A となった。docetaxel/S-1 併用療法は,高度リンパ節転移などで治癒切除が困難と考えられる症例の術前化学療法として有用であると考えられたので報告した。
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癌と化学療法 34巻10号, 1647-1650 (2007);
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症例1 は43 歳,女性。進行胃癌,癌性腹膜炎に対する二次治療としてdocetaxel(DOC)/高用量5-FU(HDFU)療法を行い不応となった後,weekly paclitaxel(PTX)にて約3 か月間奏効した。症例2 は51 歳,女性。進行胃癌術後再発,癌性腹膜炎に対する二次治療としてDOC/HDFU 療法の後,PTX が約9 か月間奏効した。DOC,PTX はともに胃癌に対するsalvage 治療としての有用性が証明されている。taxane 系薬剤である両者間の交叉耐性は不完全であり,胃癌,癌性腹膜炎に対し選択できる薬剤が限られるなかで,2剤を連続して使用できることは意義があると考えられた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1651-1654 (2007);
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症例は47 歳,男性。上部内視鏡検査にて食道浸潤を伴うBorrmann 4 型の胃噴門部癌が認められ,病理組織検査にて低分化型腺癌と診断された。CT 像上,大動脈浸潤が疑われたため切除不能と判断した。通過障害を伴っていたため,まずmetalic stentを留置した後,S-1 100 mg/bodyを2 週投与し,days 1,15 にpaclitaxel(PTX)120 mg/bodyを点滴投与する2 週投与2 週休薬法にて4 サイクル施行した。腫瘍は著明に縮小し,左開胸開腹下にD1+a のリンパ節郭清を伴う胃全摘術,下部食道切除術が可能となった。通過障害を伴う際にはバイパス術または姑息切除術を行うことがある。本症例はステント留置により,QOLの改善がみられた後にS-1を用いた化学療法が奏効したことによる切除可能例であった。ただし,化学療法後の切除術を考慮すると,食道の切除範囲を広げないようステントはできるだけ腫瘍口側縁近くに留置することに注意が必要と思われた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1655-1657 (2007);
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症例は64 歳,男性。主訴は食欲不振と上腹部腫瘤。上部消化管内視鏡にて幽門前庭部に全周性の2 型腫瘍による狭窄を認め,生検上tub 2 であった。CT 上多発性肝転移を認めた。CEA 値は21.8 ng/mL と高値であった。2002年12月胃空腸吻合術を施行し,T4,N2,H1,P0,CY1,M0,StageIVであった。術後経口摂取が可能となり,2003年1月からS-1投与(2 週投与1 週休薬)を開始した。CEA値は正常化し,CT 上PR が得られた。S-1は計19 コース施行。二次化学療法として2004年3月からweekly paclitaxel 治療を施行した。三次化学療法として9 月からCPT-11/CDDP biweekly 治療を施行した。幽門狭窄合併切除不能胃癌に対し胃空腸吻合術を行い経口路を確保した上でS-1 療法を行うことにより,外来通院が可能となりQOL の向上が得られた。また,二次,三次化学療法を行うことにより,多発性肝転移を伴っているにもかかわらず2 年以上の長期生存が得られた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1659-1661 (2007);
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症例は58 歳,男性。2000年8月胆石症・急性胆嚢炎・胃粘膜下腫瘍の診断にて開腹胆嚢摘出術,胃楔状切除術を施行した。病理診断にて胆嚢炎,胃高分化型腺癌(進達度SE)と診断されたが,再手術および化学療法を本人が拒否,外来通院経過観察となった。その後腫瘍マーカーの上昇を認め,2001年8月画像上残胃癌腹膜再発と診断し,入院精査およびFP療法を開始した。退院後は経口フッ化ピリミジン(FP)系抗癌剤S-1 を投与した。腫瘍マーカーは徐々に低下し,2002年6月腹膜再発がCR となり他に転移巣を認めなかった。重篤な有害事象もなくCR が維持され,約3年半内服を継続した。2004年2月にS-1 内服中止後,約2年半無再発で経過している。再発胃癌に対するfirst-line chemotherapy としてのS-1の有効性が改めて示されたが,長期CR 例における投与中止時期は今後の課題となろう。
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癌と化学療法 34巻10号, 1663-1666 (2007);
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現在,進行・再発大腸癌に対する化学療法としてFOLFIRI およびFOLFOX は世界的な標準レジメとなっている。今回,直腸癌術後の肝転移例に対し,FOLFIRI 療法によるCR 導入と維持の後,QOL を勘案しUFT に変更後約11か月にもかかわらずCR を維持している症例を経験した。症例は41 歳,女性。2005年5月6日直腸癌(SS P0H0N3M1(No. 216):StageIV)に対し,低位前方切除術(D2,根治度C)を施行。術後bolus 5-FU/l-LV療法にて一時CR となったが2 サイクル終了後に肝転移を来し,10月11日よりFOLFIRI療法を開始した。4サイクル終了後にCR となり,さらに4 サイクルを追加した。副作用などから本人の意向を踏まえ,いったんFOLFIRI を中止し,2006年3月27日よりUFT 500mg/日に変更している。FOLFIRI 最終投与から約11 か月現在,CR を維持している。
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癌と化学療法 34巻10号, 1667-1669 (2007);
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症例は61 歳,男性。下血,体重減少を主訴に来院し,骨盤内多臓器浸潤を伴う進行直腸癌と診断された。一期的な治癒切除は困難と考え,狭窄解除のための人工肛門を造設した後にS-1 とCPT-11 の併用療法を行った。S-1 120 mg/body/day の経口投与を2 週間投与2 週間休薬に加え,CPT-11 120 mg/body/day をday 1,day 15 に点滴静注するレジメンで7コース施行したところ腫瘍の明らかな縮小と周囲への浸潤の消失を認めたため,根治目的の直腸切断術を行った。切除標本の病理検査では,線維化した瘢痕組織内の一部に変性した癌細胞を認めるのみであった。リンパ節に転移は認めなかった。今回の症例は,S-1/CPT-11 併用療法のneoadjuvant chemotherapy としての効果および安全性を期待させる貴重な症例であると考えられる。
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癌と化学療法 34巻10号, 1671-1674 (2007);
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症例は62 歳の男性。2001年9月膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行した。2002年7月に単発の肝転移再発が出現,局所再発およびリンパ節や他臓器転移,腹膜播種は認めなかった。化学療法を施行し1 年間NC を保ったが,その後腫瘍が増大,他に再発部位を認めなかったことから2004年2月肝部分切除術を施行した。切除時も肝転移は単発のままであった。2004年5月肺に多発性転移が出現,同年12 月癌性胸膜炎で死亡したが残肝再発は認めなかった。
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癌と化学療法 34巻10号, 1675-1678 (2007);
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われわれは肝門部胆管癌術後,腹膜播種再発の症例に対して5-FU,ADM,MMC,GEMなどを用いて腹腔内投与と経口および経静脈的全身投与による抗癌剤治療を併用し,腹膜播種再発から約3 年の期間,主に外来通院でPS 0〜1 を維持しながら生存し得た症例を経験したので報告する。症例: 61 歳,女性。肝門部胆管癌Stage IV Aの診断で肝S4,S5 切除,術中および術後電子線照射を施行,その後再発なく経過していたが18 か月目に腹部膨満を主訴に来院した。腹部CT 検査では横行結腸間膜に限局する腫瘤像を認めた。腫瘤摘出術を試みたが腹膜播種を認めたため,腹腔内投与カテーテルを留置し手術終了した。その後5-FU,ADM,MMCの腹腔内投与を4 回施行し,さらに経口および経静脈的全身投与を併用しながら約3 年の期間,腹水による極度の腹部膨満や消化管狭窄を来さず外来通院可能であった。患者は,胆管癌術後腹膜播種性転移と診断されてからほぼ36 か月間良好なQOLを維持することができた。腹腔内抗癌剤投与は,これまで治療対象とならなかった腹膜播種症例に対して有効なpalliative chemotherapyになり得る可能性があると考えられた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1679-1682 (2007);
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肝転移,腹部リンパ節転移を有する胆嚢癌患者に対して,経口フッ化ピリミジン系抗癌剤S-1 の単剤投与を行い,完全奏効を認めた1例を経験した。症例は「進行胆道癌患者に対するS-1 の後期臨床第II相試験」への登録例である。測定可能病変である原発巣(胆嚢),腹部リンパ節,肝転移巣は2 コース終了までに部分奏効(PR)を示し,5 コース以降,完全奏効(CR)と判定された。18コース(2年4か月)治療を継続し,長期CR の持続により治療を中止した。治療中止後も無治療で経過観察中であり,現在1年8か月CR が継続,治療開始から3年2か月無増悪生存中である。grade 2 の食欲不振,下痢,手足・皮膚反応,味覚異常を認めたが,grade 3 以上の有害事象は認めず,外来治療が可能であった。S-1は進行胆道癌に対し有効かつ忍容性に優れた薬剤であると考えられた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1683-1687 (2007);
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primary chemotherapy を施行しpCR が得られた症例は予後良好であり,現在高いpCR 率を得るために様々なregimenが試みられている。今回われわれはprimary chemotherapy としてtrastuzumab を併用し,奏効した2 例を経験したので報告する。症例1 は43 歳,女性。左D 領域に径33 mmの乳癌(ER(-),PgR(-),HER2 3+(IHC))および腋窩・鎖骨下・鎖骨上に複数のリンパ節転移を認めた。EC 療法を6 コース,続いてweekly paclitaxel 療法+trastuzumab を4コース施行し局所はPR が得られたが,脳転移が出現したため切除を断念した。以後化学療法は施行せず,脳転移巣に対してγ-knife を3 回施行した。8か月後,髄膜癌症出現,MTX+Ara-C髄注を行うも全身状態が悪化し死亡した。局所に関してはCR が得られていた。症例2 は41 歳,女性。右CD 領域に径39 mmの乳癌(ER(-),PgR(-),HER2 3+(IHC)),腋窩に2 個のリンパ節転移を認めた。primary chemotherapy としてFEC 療法を6 コース ,続いてweekly paclitaxel 療法+trastuzumab を4 コース施行しPR が得られた。手術を予定するも患者が美容を重視し化学療法の継続を強く希望されたため,trastuzumab の投与を継続した。12回投与後,超音波上,腫瘍の増大傾向を認めたため,vinorelbineを併用するも,2 コース投与終了時に腫瘍が増大したため,Bp+Ax施行,現在無再発生存中である。
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癌と化学療法 34巻10号, 1689-1691 (2007);
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症例は68 歳,女性。1999年2月に左乳癌の診断で左乳房部分切除・腋窩郭清施行され,硬癌,T2N1,ER陽性,PR陽性であった。術後補助療法として,tamoxifen 内服と温存乳房に放射線外照射を施行された。2005年2月に息切れと右股関節痛を自覚 ,乳癌再発(癌性胸水,骨転移)と診断した。anastrozole内服,pamidronate disodium点滴,右大腿骨に放射線外照射施行し,胸腔にOK-432 を注入した。2005年11月に全身倦怠感と食思不振を訴え,CT で多発肝転移を認めた。anastrozole を中止し,capecitabine 2,400 mg/day 3 週投与1 週休薬を1 コースとして開始し,medroxyprogesterone acetate(MPA)600 mg/day の連日投与を併用した。4コース終了時のCT で肝転移は著明に縮小し,12 コース終了後も部分奏効を維持している。治療中の副作用は体重増加(grade 1)のみであった。capecitabine+MPA 併用療法は抗腫瘍効果とQOL の面から有用と考えられた。
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癌と化学療法 34巻10号, 1693-1695 (2007);
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症例は73 歳,女性。13年前,肺,骨,リンパ節転移を伴う右進行乳癌(T4,N3,M1,StageIV)に対して,化学療法,放射線療法,内分泌療法により5 年後には完全奏効(pCR)が得られた。さらに5 年間内分泌療法を行い治療中止したところ腫瘍マーカーの上昇を認め,その2 年後にはFDG-PET/CT により右腋窩局所再発,右卵巣転移と診断された。右腋窩局所再発腫瘍切除術と第三世代aromatase inhibitor(AI)の投与を行ったところ,腫瘍マーカーの著明な低下と卵巣転移腫瘍へのFDG 集積の減弱が認められ,治療効果が確認された。13 年間の長期経過をたどったStage IV進行非手術乳癌に対して,AI剤の投与が有効であった1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 34巻10号, 1697-1700 (2007);
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高齢者の転移性乳癌患者に対して,capecitabineとcyclophosphamideの併用療法(XC療法)を行い,臨床的完全奏効(CR)を得た1 例を経験したので報告する。症例は78 歳,女性。76歳時に左乳癌(DC 領域)にてAuchincloss手術施行(硬癌,pT1c(2.0 cm),n(1/10),ly3,v1,ER(-),PgR(-),HER2: score 1)。術後1 年半目に左鎖骨上リンパ節,左胸筋間リンパ節および縦隔リンパ節に転移を認め,初回化学療法としてXC 療法を開始した。8 コース目にCR となり,現在も外来通院にて19 コース目投与中で9 か月間CR が持続している。本療法は副作用の発現も軽微でQOL の低下を来すことなく,その臨床効果を確認できたことから転移性乳癌のfirst-line治療における選択肢の一つになり得ると考えられる。
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癌と化学療法 34巻10号, 1701-1703 (2007);
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非喫煙者の82 歳,女性。1997年,前医でCT 検診発見肺癌に対し根治手術を受けた。2004年3月,乾性咳嗽,体動時呼吸困難感を主訴に来院。精査の結果,手術6年後の肺腺癌局所再発と診断した。縦隔へ放射線照射(総計60 Gy)後,gefitinib 2 週連日投与後隔日投与へ移行し外来治療とした。腫瘍マーカーはCYFRA が3.8 ng/mL へ増加するも以後減少し,気管分岐部リンパ節最長径の縮小率は36%に至り,部分奏効と確定した。発疹の出現以外に有害事象を認めず,術後9年2か月,gefitinib投与開始後2年5か月,85 歳4か月でPS 0,QOL は良好である。PS良好な高齢者の術後再発肺癌の治療選択として,gefitinib隔日投与が有用となる症例である。
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癌と化学療法 34巻10号, 1705-1708 (2007);
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症例は58 歳,男性。術前化学療法として,paclitaxelとcisplatinの併用療法を行った後に胃全摘術が施行された。術後補助療法として同併用療法を再開した。6か月間の術後補助化学療法の後に再発を認めなかったが,患者は経口剤による治療の継続を希望した。2006年11月9日に初回S-1 50 mg(1 日量100 mg)の内服を行った。内服50 分後の安静時に突然の胸部絞扼感を自覚し,その後悪心と冷汗が出現した。胸痛は1 時間続いたが,当院受診時には消失していた。冠動脈造影において,右冠動脈に50%の偏心性狭窄を認めたものの,心筋虚血を起こし得る器質的冠動脈病変を認めなかった。123IBMIPP心筋シンチグラフィにおいて後壁に集積低下を認め,1 か月後には正常に回復したため一過性の心筋虚血の診断となった。S-1に関連した冠攣縮が疑われたためS-1は中止し,現在化学療法を行わず経過観察中である。
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癌と化学療法 34巻10号, 1709-1712 (2007);
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血液透析療法を施行している直腸肛門部悪性黒色腫の肝転移患者に対する化学療法を経験した。症例は61 歳の男性。慢性腎不全の治療中,肛門部出血を主訴に当院を受診した。歯状線上に隆起性病変を触知し,生検で悪性黒色腫と診断された。慢性腎不全合併のため術前に血液透析の導入を行い,腹会陰式直腸切断術を施行した。術後2年6か月後にCT で多発性肝転移を認めたため,3 回/週の血液透析を継続しつつdacarbazine(DTIC)単剤による化学療法を開始した。DTIC 100mg,5日間連続投与を1 コースとし,4 週間ごとに繰り返した。3コース終了時点で新たに肺転移を認めたが,肝転移はSDであった。12コース終了時点で多発性肝転移巣はSDを維持していたが,肺病変は進行した。その後呼吸不全を来し,初回手術から約4年,肝転移再発から1年7か月で死亡した。化学療法期間中,有害事象は認めなかった。慢性腎不全患者に対するDTIC 投与は,透析を併用することで安全に行える有用な治療法と思われた。
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Journal Club
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Source:
癌と化学療法 34巻10号, 1601-1601 (2007);
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癌と化学療法 34巻10号, 1628-1628 (2007);
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癌と化学療法 34巻10号, 1658-1658 (2007);
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用語解説
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Source:
癌と化学療法 34巻10号, 1704-1704 (2007);
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書評
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Source:
癌と化学療法 34巻10号, 1713-1713 (2007);
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