Volume 34,
Issue 11,
2007
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総説
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癌と化学療法 34巻11号, 1721-1729 (2007);
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最近白血病だけではなく,固形癌においても少数の幹細胞の性質を有する細胞集団が存在すると考えられるようになってきた。これらの細胞は自己複製能,多分化能と腫瘍の形成,維持能を示す。癌幹細胞の起源は正常幹細胞,あるいは前駆細胞,骨髄由来細胞が考えられている。固形癌において癌幹細胞を分離することは依然として困難であるが,現在癌幹細胞を分離,同定するために三つの方法が行われている。表面マーカーによるもの,特殊な条件で培養する方法(浮遊細胞塊),FACS によりside population 細胞を同定することである。現時点で癌幹細胞の定義を満たすゴールドスタンダードな解析法は動物モデルで継代できることであろう。癌幹細胞は疾患の再発や転移のもととなり,放射線や従来の抗癌剤に抵抗性を示すと考えられている。また,幹細胞ニッチは癌幹細胞の維持に重要な役割を果たしている。癌幹細胞を標的とした有望な治療が考えられており,抗体療法,シグナル阻害剤,放射線や薬剤耐性の克服,分化誘導療法があげられる。さらに興味深い治療としてニッチを標的とした治療が考慮されるかもしれない。
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特集
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Neoadjuvant Therapyの適応と効用・II
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癌と化学療法 34巻11号, 1730-1734 (2007);
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乳癌術前化学療法は,anthracycline 系抗癌剤とtaxane 系抗癌剤との併用により治療効果を上げており,さらにはtrastuzumab をはじめとする分子標的治療薬の登場により治療効果の向上が期待されている。術前化学療法の主目的は,腫瘍縮小・温存率の向上,治療効果の確認とその結果に基づく治療戦略の構築,生物材料を用いた研究による新しい治療法の開発である。近年は特に,遺伝子学的アプローチによるバイオマーカーの探索,あるいは治療早期の反応性に基づく治療戦略の構築などにより,術前化学療法にもtailoringが求められてきている。今回われわれは,乳癌術前化学療法の概要を最近の動向も含めまとめた。
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癌と化学療法 34巻11号, 1735-1739 (2007);
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進行卵巣癌に対する現在の標準治療は,初回腫瘍縮小手術(PDS)と術後化学療法である。PDS で残存腫瘍 1cm 未満のoptimal surgery が達成できれば予後の改善が期待できるが,残念ながら一般的には進行卵巣癌の約40%程度にしか達成することができない。元々,術前化学療法(NAC)は明らかに切除不能な症例や,全身状態不良な症例に対して標準治療の代わりとして行われてきた。NAC+腫瘍縮小手術(IDS)と標準治療の比較を行ったretrospective studyでは,明らかにNAC 群のなかに進行例や全身状態不良例が含まれているのに,ほぼ同等の生存率が示された。この良好な成績を基に,NAC療法の対象は明らかに切除不能な腫瘍をもたない症例,全身状態良好な症例も含めた進行癌症例に拡大され,EORTC(The European Organization for Research and Treatment of Cancer)やJCOG(The Japan Clinical Oncology Group)などで現在,卵巣癌,卵管癌,腹膜癌などのミューラー管原発の進行癌を対象とした第III相比較試験が行われている。これらのprospective studyにより,進行卵巣癌に対するNAC療法の役割が明らかとなることが期待される。
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癌と化学療法 34巻11号, 1740-1744 (2007);
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限局性前立腺癌の標準的治療は,前立腺全摘術や放射線治療(外照射および小線源治療)であるが,いわゆるhigh risk 症例では高い再発率が問題となる。したがって,根治治療前にneoadjuvant therapy として内分泌治療を施行し,治療成績を向上させようとする多くの臨床試験試がなされてきた。複数の前向き試験により,外照射ではneoadjuvant内分泌治療により,局所再発や遠隔転移の出現が減少し,さらに非再発率,疾患特異生存率,全生存率が向上することが示された。一方,前立腺全摘術前のneoadjuvant内分泌治療は,切除標本での病理学的効果(pT3以上,切除断端陽性,リンパ節転移陽性が有意に減少する)を認めるが,PSA再発率,全生存率は改善されないと考えられてきた。しかしneoadjuvant内分泌治療の期間を3 か月から6〜8か月に延長することにより切除断端陽性はさらに減少し,さらに術後の再発率が改善される可能性も示唆されている。今後の研究で,neoadjuvant内分泌治療を,どのような症例に対し,いつ開始し,どの程度の期間継続すべきかを明らかにする必要がある。最近はdocetaxel を使用したneoadjuvant 化学療法の大規模臨床試験も開始されており結果の報告が待たれる。
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癌と化学療法 34巻11号, 1745-1749 (2007);
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膀胱全摘術は筋層浸潤性膀胱癌に対する標準的治療である。膀胱癌は抗癌剤に感受性があり,集学的治療が行われるべき疾患である。neoadjuvant 療法は,膀胱全摘術が可能なT2 からT4aの筋層浸潤性膀胱癌患者の予後を改善することを目標としている。cisplatin を含む併用化学療法によるneoadjuvant 療法のメタアナリシスでは,生存率で5%の改善が報告されている。neoadjuvant 療法が著効した例では膀胱温存が可能である。現在の目標は,さらに有効なレジメンの開発と治療効果を予測する方法の開発にある。
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癌と化学療法 34巻11号, 1750-1754 (2007);
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原発性悪性骨腫瘍は,組織型により化学療法の効果が異なる。骨肉腫やEwing肉腫を手術療法のみで治療すると,その予後は極めて悪い。しかし,これらの腫瘍は化学療法が有効であり,補助化学療法により生命予後が改善した。今日では,骨肉腫やEwing 肉腫や骨悪性線維性組織球腫などの高悪性度の骨腫瘍に対して,術前化学療法を含む補助化学療法が行われる。術前化学療法の目的は,遠隔転移の予防と原発腫瘍の縮小と抗悪性腫瘍薬の効果判定である。原発腫瘍が縮小すれば局所再発のない切除が容易になり,患肢温存や機能温存が可能となる。術前化学療法の効果判定は術後化学療法の薬剤選択に有用である。通常は数種類の薬剤が用いられ,種々のプロトコールや臨床成績が報告されている。骨肉腫にはadriamycin,ifosfamide,cisplatin,methotrexate,vincristine などが用いられ,Ewing 肉腫にはvincristine,adriamycin,cyclophosphamide,ifosfamide,actinomycin-D,etoposideなどが用いられる。一方,軟骨肉腫は化学療法抵抗性であり,補助化学療法が行われることはまれである。傍骨性骨肉腫や中心性分化型骨肉腫などの低悪性度の骨腫瘍は手術療法のみで治癒するため,化学療法は行われない。術前化学療法の効果を増強するために,動注化学療法やカフェイン併用化学療法,温熱局所灌流療法などの試みがなされ,優れた臨床成績が報告されている。
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Current Organ Topics:大腸癌
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癌と化学療法 34巻11号, 1755-1755 (2007);
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癌と化学療法 34巻11号, 1756-1763 (2007);
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癌と化学療法 34巻11号, 1764-1767 (2007);
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癌と化学療法 34巻11号, 1768-1770 (2007);
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癌と化学療法 34巻11号, 1771-1776 (2007);
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原著
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癌と化学療法 34巻11号, 1777-1781 (2007);
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Nedaplatin(CDGP)は腎毒性を軽減したcisplatin 誘導体であり,近年頭頸部癌治療にも有用性が報告されている。今回,StageIII・IVの口腔扁平上皮癌一次症例16 例に対して,CDGP と5-FU を併用した超選択的動注化学放射線同時併用療法を施行し,その臨床効果および組織学的効果,有害事象について検討した。臨床効果として16 例中CR 11 例,PR 4 例で,奏効率93.8%であった。組織学的効果では,大星・下里分類で,grade I: 3 例,grade II b: 1 例,grade III: 2 例,gradeIV: 10 例であり,奏効率81.2%であった。有害事象としては,grade 2 以上の白血球減少が11 例,血小板減少が8 例に認められた。またgrade 2 以上の粘膜炎は13 例に認められた。overall survival rate は2 年4 か月で86.2%であり,1 例は腫瘍死で,1 例は他病死であった。5-FU 先行投与によるCDGP 超選択的動注化学療法と放射線同時併用は,口腔進展癌一次症例に対して,臨床効果・組織学的効果より有用性が示唆された。
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癌と化学療法 34巻11号, 1789-1792 (2007);
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既治療肺癌に対してamrubicin hydrochloride(AMR)の効果が期待されているが,実地臨床での有害事象の調査報告はまだ少ない。今回,AMR単剤治療の1 コース目を入院で行った肺癌患者27 名の有害事象を,服薬指導記録を経時的に作成することにより調査した。血液毒性は好中球減少が主体で,治療開始より9〜21(中央値14)日で最低値に達し,14〜27(中央値20)日で回復した。また,7 例の発熱性好中球減少が認められた。grade 2 以上の非血液毒性としては,食欲不振,便秘,倦怠感,悪心・嘔吐,肺毒性が観察された。開発時の成績に比較して便秘は高頻度にみられ,悪心・嘔吐は予防的制吐療法実施により軽度にとどまった。これらの結果を踏まえた患者用説明書を作成し,現在使用中である。
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癌と化学療法 34巻11号, 1793-1798 (2007);
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1992年5 月〜2005 年4 月までの間に当院血液科に入院し,以下の治療を受けた57名の急性骨髄性白血病患者について解析した。A 群: enocitabine,daunorubicin,6-mercaptopurine riboside,prednisoloneを組み合わせたBHAC-DMPによる寛解導入療法,再度BHAC-DMP またはidarubicin(IDR)+cytarabine(Ara-C)による地固め療法1,prednisolone,Ara-C,mitoxantrone,etoposide を組み合わせたPAME による地固め療法2,さらにPAME による後期強化療法。B 群: IDR+Ara-C による寛解導入療法,PAME による地固め療法1,大量Ara-C+mitoxantrone による地固め療法2。C 群(acute promyelocytic leukemia: APL): all-trans retinoic acid(ATRA)による寛解導入療法,BHAC-DMPまたはIDR+Ara-C による地固め療法1,PAMEによる地固め療法2。完全寛解率はA群77%,B 群76%,C 群71%であった。完全寛解となった症例の5 年無再発生存率はA群35%,B 群49%,C 群70%であった。骨髄抑制が強く好中球減少期間が遷延したが,無菌室管理,抗菌薬,granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)製剤などにより感染症のコントロールは可能であった。地固め療法を強化することで短期間で治療を終了し,患者のquality of life(QOL)向上に寄与することが可能と思われた。
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癌と化学療法 34巻11号, 1799-1805 (2007);
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癌性髄膜炎の治療としては,methotrexate(MTX)単独あるいはcytarabine(Ara-C)との併用による週2〜3 回の髄腔内投与が一般的であるが,欧米ではリンパ腫や白血病由来のものに対してはAra-Cの徐放剤が使用されている。今回,本邦で初めて固形腫瘍由来の癌性髄膜炎に対するNS-101(DepoFoam封入Ara-C 徐放剤: DepoCyt TM)の髄腔内投与時の薬物動態および忍容性から,推奨投与量を推定するとともにその効果を検討し,欧米人のそれと比較した。選択基準に合致した髄膜癌腫症9 人に対して,脳室内留置Ommaya systemを通じて25または50 mgを2週に1回を1サイクルとして,計2サイクル施行した。投与後の脳室および腰部髄液(CSF)の経時的検査と薬物濃度の測定,神経学的検査,画像検査および種々の臨床検査にて効果と有害事象発現の有無を観察した。結果は,1. 50 mg 髄腔内投与後,CSF 中遊離Ara-C 濃度は2週間にわたり推定有効濃度以上に維持され,薬物動態に欧米人と明確な差は認めなかった。2. CRMにより50 mgまで髄腔内投与した時の忍容性が確認され,MTDは50 mgと推定された。3. 50 mg投与にて細胞学的奏効(CR)が1人,少なくとも一方の採取経路でCSF細胞診が陰性化した患者が4 人認められ,また,神経学的症状の改善(3 人)または悪化を認めない患者(1人)が認められた。結論として,NS-101の髄膜癌腫症(固形腫瘍由来)に対する有効性が示唆され,推奨投与量は欧米における承認用量と同じ50 mg と推定された。次相においてさらに有効性と安全性の検証を行う。
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癌と化学療法 34巻11号, 1807-1813 (2007);
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【目的】食道癌患者における化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)のレジメンについて薬剤経済的な評価を行いレジメン選択の指標とするため,5-fluorouracil(5-FU)+cisplatin(CDDP)およびnedaplatin(CDGP)を含む治療について比較検討した。【方法】1995〜2004 年までの間に昭和大学病院消化器内科に入院し,5-FU+白金製剤(CDDP またはCDGP)+放射線療法からなるCRT(以下CDDP 群またはCDGP 群)を施行した食道癌患者108 例(CDDP 群72 例,CDGP群36 例)を対象とした。両群ともに男性が多く,組織学的にはほとんどが扁平上皮癌であった。CRT 施行後の臨床的な経過を示すマルコフモデルを作成し,獲得生存年(life year gained: LYG)をアウトカムとして,費用効果比(cost per effectiveness ratio: CER)および増分費用効果比(incremental cost effectiveness ratio: ICER)を求めた。モデルの臨床効果および費用は後ろ向きに調査し,費用は医療機関の立場から直接医療費のみを算出した。さらに,モデルの頑堅性を確認するため感度分析を行った。【結果】LYGはCDDP 群で18.23年,CDGP 群で16.31 年であった。CERはCDDP 群で270,373 円/LYG,CDGP 群で406,264円/LYG であり,ICER は-883,999円/LYGであった。また感度分析において各種パラメータを大きく変化させても分析結果が逆転することはなく,モデルの頑堅性が示された。【考察】CDDP 群はCDGP 群と比較して少ない費用でLYG を延長することができ,より費用効果に優れたレジメンであると考えられた。
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癌と化学療法 34巻11号, 1815-1818 (2007);
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癌性腹水を伴った胃癌に対してS-1とpaclitaxel(PTX)の併用療法を行い,その臨床成績について検討したので報告する。対象は胃癌癌性腹水陽性8 例で,治療方法はS-1 の内服を2 週間継続して行い,PTX をS-1 投与の1 日目と8 日目に行うbiweekly投与で行った。治療結果は37.5%(3/8)に画像上腹水の消失を確認し,胃癌主病巣に対しては50%(4/8)のPR であった。治療の回数は平均15 コースで,発生した全有害事象は87.5%(7/8)であった。血液毒性は75.0%(6/8)で,grade 3,4は37.5%(3/8)であった。非血液毒性は,75.0%(6/8)に確認されたが,grade 3,4は認めなかった。historical control ではあるが,従来の治療(コントロール群,n=24)とS-1 とPTX 治療(S-1+PTX 群,n=8)の治療成績について生存率の比較検討を行った。S-1+PTX群のMSTは413 日で1 年生存率は62.5%,2 年生存率は37.5%であり,最長生存例は1,148 日である。S-1+PTX 群はコントロール群に比べ生存率は良好であった(p<0.001)。癌性腹水を伴った胃癌に対してS-1とPTX 治療は重要な治療法の一つと考えられるので報告した。
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癌と化学療法 34巻11号, 1819-1825 (2007);
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実地医療において進行(切除不能・根治度C)・術後再発胃癌に対する治療は,地域性や予後的制約などから大規模臨床試験に参加できずに文献上あるいは自らの奏効例に基づき適宜選択施行されてきたことが多いのではないかと思われる。そのような現状においてもS-1 以降の新規抗癌剤を用いた化学療法は良好なQOL を保ちつつ予後を改善してきている実感がある。2001 年1 月〜2005年12 月の期間の46 例(進行(切除不能・根治度C)28 例,術後再発18 例)を対象に検討した。化学療法施行群27例(1 年生存率52.5%,2 年生存率31.5%,3 年生存率19.5%,MST=344日)は化学療法非施行群19 例(1年生存率10.5%,MST=102日)に対して有意に生存期間が延長していた(p<0.0001)。また化学療法施行群27 例をPS別でみると,PS 0(n=5)症例とPS 1(n=8)症例間には有意差が認められなかったが,PS 0,PS 1 症例はPS 2(n=12)症例に対してそれぞれ有意に生存期間が延長していた(p<0.05,p<0.001)。さらに2 年以上の長期生存例6 例は化学療法施行群の1 年未満生存10 例に対して有意に生存期間における在院期間の割合が小さかった。このことは化学療法が生存延長への寄与に加えて良好なQOL を維持していたことを示し,標準治療が確立されていない現時点においても有効な治療法と考えられた。今後,大規模臨床試験の結果を踏まえた標準治療が確立されれば,再発・進行胃癌治療において一層の良好なQOL を維持した予後の改善が期待できると考えられた。
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癌と化学療法 34巻11号, 1827-1831 (2007);
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近年,新規抗癌剤の開発・臨床応用により胃癌治療成績の向上が示唆され,腹膜播種例でも同様である。今回,retrospectiveに当院の腹膜播種例の治療成績を検討し,その有効治療法について考察した。1989 年より抗癌剤感受性試験;MTT assay に基づく補助化学療法の選択を腹膜播種例にも行い,適応薬剤投与群の予後改善が確認された。また,1999 年より導入されたS-1による術後補助化学療法や,2002年以降に開始された初回治療としてのS-1/CDDP 療法が,腹膜播種例においても導入され良好な成績が示された。胃癌腹膜播種例に対する有効化学療法の選択やS-1 など新規抗癌剤の導入により治療成績の改善傾向が示された。胃癌腹膜播種の克服には,より一層の研究を要するであろう。
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癌と化学療法 34巻11号, 1833-1836 (2007);
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進行再発大腸癌に対するFOLFOX 療法は約50%前後の高い奏効率が報告され,第一選択の治療法の一つとされている。今回,われわれは高齢者進行再発大腸癌患者に対するm-FOLFOX6療法の治療成績および有害事象について検討した。【対象および方法】当教室でm-FOLFOX6 療法を施行した進行再発大腸癌患者39 例を対象とした。このうち,m-FOLFOX6 療法開始時に70 歳以上であった症例は10 例であった。同時期に行った非高齢者群と治療成績,有害事象について比較検討した。【結果】39例全体における奏効率は23.1%(9/39)であったが,高齢者と非高齢者との間に差はみられなかった。また有害事象についても両群間に差は認められなかった。【まとめ】m-FOLFOX6 療法は高齢者進行再発大腸癌患者に対しても非高齢者と同様に有用であり,有害事象も重篤なものはなく,許容範囲と思われた。
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症例
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癌と化学療法 34巻11号, 1837-1839 (2007);
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進行頭頸部癌の局所切除不能例や巨大な頸部リンパ節転移病変をもつ症例の予後は不良である。そこで進行歯肉癌手術不能症例に対して予後の改善を目的としてS-1を用い,化学療法併用放射線療法を行った。その結果,腫瘍が著明に縮小し,余命の延長が可能となったので報告した。これはいわゆるtumor dormancy state を継続できたためと考えられた。今回われわれは,進行頭頸部癌に対する化学療法併用放射線療法でQOL 向上の観点から有効な1 症例を報告した。
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癌と化学療法 34巻11号, 1841-1843 (2007);
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症例は70歳,女性。肺癌にて手術を施行。高分化型腺癌,pT2N0M0,Stage I B であった。当時当院で施行していた術後補助療法を予定したが,食欲不振のため途中で中止となった。手術6 年後,血性CEA の上昇,胸部CT にて右胸膜播種,右胸水を認め,肺癌再発と診断した。抗癌剤治療を勧めたが本人が拒否したため,外来にて経過観察を行った。1 年後gefitinibを内服したところ,1 か月後にはCEAは正常化し,胸部CT 上も完全寛解となった。現在gefitinib投与後約4 年以上経過しているが,再発の兆候なく生存中である。
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癌と化学療法 34巻11号, 1845-1848 (2007);
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FEC90 投与中にDIC を来した症例を報告する。症例は55 歳,女性。腰痛を主訴に受診した。左乳房に10×10 cm 大の腫瘍を認め,骨シンチグラフィで多発骨転移を認めた。FEC90を開始したが3 クール目を投与する前にDICを発症した。DICはFOY,ヘパリンで軽快した。DIC の原因として腫瘍崩壊症候群の可能性を考えている。化学療法中の副作用の一つとして発熱性好中球減少症が強調されるが,リンパ球数の減少にも注意を払う必要がある。
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癌と化学療法 34巻11号, 1849-1852 (2007);
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症例は61 歳,男性。初発症状は上大静脈症候群。心エコー,CT およびMRI にて右心房腫瘍が明らかとなった。胸骨正中切開・心膜縦切開下に手術を施行し,右心房の前壁に鶏卵大の腫瘍を認めた。腫瘍の浸潤は心外膜,右室壁,上大静脈に及び,摘出不能であったため直視下生検と人工血管による左腕頭静脈-右心房バイパスグラフト術を実施した。病理組織学的に血管肉腫と診断され,頭皮や顔面の血管肉腫に対する有効性が報告されていたdocetaxel による化学療法を同意を得て術後17 日目より施行した。本剤30 mg/m2 毎週1 回3 週間投与,1 週休薬を1 コースとして開始し,1 コース後より明らかな腫瘍縮小効果を認め,5 コースまで投与した。本剤による主な有害事象は,5 コース後にみられたgrade 3 の好中球減少とgrade 1〜2 の全身倦怠感であった。8 か月の休薬後本剤の投与を再開して4 コース投与後までPR を維持したが,本剤に耐性となり肝転移を認めた。その後に投与したpaclitaxel,IL-2 製剤およびCPT-11は奏効せず,docetaxelの初回投与から927日目(初診から2年7か月後)に,原発巣からの出血による心タンポナーデのため死亡した。心臓血管肉腫はまれな疾患であり確立された治療法はないが,本疾患の治療においてはdocetaxelの投与を考慮すべきである。
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癌と化学療法 34巻11号, 1853-1856 (2007);
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症例は72 歳,男性。胃内視鏡検査で噴門直下から胃上部小弯を中心に3 型病変を認め,生検で充実性低分化腺癌と診断された。腹部CT 検査では胃小弯側を中心に胃壁と周囲のリンパ節とが一塊となった腫瘤を認めた。腹腔鏡検査にて,腹腔内に多数の小結節を認め,組織学的に癌の転移と判明した。cT3N2M0H0P1CY1,cStageIVと診断し,術前治療としてS-1 100 mg/day とCDDP 100 mg/body の併用による化学療法を開始した。3 コース施行後,原発巣および転移リンパ節の著明な縮小を認めたため,胃全摘術,脾摘術,D2郭清を施行した。腹膜転移の消失および腹腔洗浄細胞診の陰性化を認め,病理結果は,P0,CY0,pm,ly0,v0,n0,stageI b,化学療法の組織学的治療効果判定はGrade 2 であった。治療開始後1 年10 か月現在,再発なく健存中である。S-1/CDDP 併用術前化学療法は,腹膜播種を伴う高度進行胃癌に対する有用な治療法の一つと思われた。
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癌と化学療法 34巻11号, 1857-1859 (2007);
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症例は70 歳,男性。2000 年8 月12 日,幽門部進行胃癌にて幽門側胃切除,リンパ節郭清を施行(por 1,pT3N1H0P0M0,Stage IIIA)。術後化学療法としてtegafur(600 mg/day)を6 か月間経口投与し,その後再発なく定期的に経過観察していた。2005年4 月食欲低下および左腹部痛を主訴に来院。上部消化管内視鏡および腹部CT にて,残胃に浸潤した胃癌傍大動脈リンパ節再発と診断し,全身化学療法としてS-1 60 mg×2/day(2週投薬,1週休薬)を施行した。2か月後の腹部CT で再発リンパ節は著明に縮小していた。治療開始から21 か月経過した現在,S-1 を継続投与中であるが,入院を必要とするような有害事象はなく,画像上再発病変は指摘されていない。以上より,S-1 は比較的安全に長期継続投与が可能であり,再発胃癌に対するfirst-lineとして有用であることが示唆された。
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癌と化学療法 34巻11号, 1861-1864 (2007);
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症例は55 歳,男性。進行胃癌に対し,米国にて胃全摘術を施行(T3N0M0,stageII)された。帰国後に腸閉塞,両側水腎症,腹水貯留が出現し腹膜播種再発と診断された。paclitaxel,5-FU 併用化学療法を4 コース施行し,腸閉塞,水腎症改善,腹水は消失した。その後S-1 単独療法へ変更し経過は良好であった。5 コース施行後,横行結腸閉塞にて再発し,人工肛門造設した後,paclitaxel,S-1併用化学療法を施行した。その後13か月悪化せず経過し社会復帰も可能であったが,初回再発から2年半後に死亡した。胃癌腹膜播種再発にpaclitaxel,5-FU併用化学療法が有効な症例であった。
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癌と化学療法 34巻11号, 1865-1868 (2007);
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症例は68 歳,男性。体重減少と心窩部痛を主訴に他院を受診し胃体部全周の4 型胃癌と診断され,2003 年2 月手術を施行された。術中腹水細胞診が陽性であったため,胃切除は施行されなかった。当院転院後,S-1/CPT-11 による化学療法を行った。S-1 を1 日100mg 分2 にて2 週間連続投与し,CPT-11 は90 mg を1 日目と8 日目に投与,これを1 クールとした。計7 クールを施行したところ腫瘍は肉眼上消失し,2004 年1 月再手術を施行した。術中洗浄細胞診が陰性であったため,胃全摘術を施行した。切除胃の病理学的所見では,腫瘍細胞は固有筋層から漿膜下に散在性に存在し,リンパ節への転移はみられなかった。化学療法による組織学的効果はGrade 2 であった。患者は術後S-1 内服を継続し,2007 年1 月現在,4 年無再発生存中である。CY 陽性のstage IV胃癌に対しては,S-1 をkey-drug にした化学療法を施行後,効果があった場合に外科的切除を追加し,根治できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 34巻11号, 1869-1872 (2007);
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症例は72 歳,男性。食欲不振,体重減少を主訴に精査,幽門狭窄を呈した胃癌(幽門前庭部,全周性,2 型)の診断で当科入院,胃管挿入,胃洗浄を行い開腹術を施行,病変はsT3,sN2,sP1,sH0,sM1(No. 14a のリンパ節転移から上腸間膜動脈,膵臓に浸潤),stage IVで根治切除不能と判断,胃空腸吻合術(前結腸経路,Braun吻合付加)を施行。術後S-1/80〜100 mg/day×28 日×2 コース施行,GTF で主病変の著明な縮小を認めた(PR)。3 コース後,多発性肝転移を指摘,PTX 80 mg/body/ week×3週投与(1週休薬)を2 コース行うも,画像上PDの判定で原病死された。術後生存期間は9か月,経口摂取可能期間は7.5か月,在宅通院期間は5 か月であった。全経過を通じて,化学療法によると考えられる副作用はなかった。根治切除不能幽門狭窄を症状呈する胃癌に対し,バイパス手術後S-1 投与を行うことは経口摂取期間,在宅期間および予後の延長に寄与する可能性がある。
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癌と化学療法 34巻11号, 1873-1875 (2007);
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症例は54 歳,男性。2003年11 月より上腹部痛と食欲不振が出現したため近医を受診し,総胆管拡張・胆嚢腫大・膵腫瘤を指摘され12 月10 日に当科へ紹介入院となった。入院時より黄疸を認め,入院後精査にて膵頭部から体部までを占める膵癌と診断し12月25 日に開腹術を施行した。術中所見では,膵癌は周囲組織に高度に浸潤しており,大動脈周囲リンパ節の転移を認めたため切除不能と判断し,減黄目的の総肝管空腸吻合術を施行した。術後は外来でのgemcitabine 投与が著効し,術後2 年11 か月間黄疸の出現なく生存した。
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癌と化学療法 34巻11号, 1877-1879 (2007);
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直腸癌術後肺転移に対してFOLFOX4 療法により,腫瘍マーカーの正常化と肺転移の消失を認めた症例を経験した。症例は62 歳,女性。進行直腸癌で低位前方切除術を施行した。術後1 か月目からUFT とfolinate の投与を開始するも,投与2 か月目には腫瘍マーカーの上昇が認められ,CT 検査で両側肺転移が確認された。FOLFOX4療法を開始し,4コース終了後に腫瘍マーカーの正常化を認め,10コース終了後に肺転移の消失が認められた。なお好中球減少と下痢のため,3コース目より減量し治療継続を行った。この療法は大腸癌の肺転移制御に有効であると考えられた。
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癌と化学療法 34巻11号, 1881-1883 (2007);
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近年,AML に対する新たな治療方法として,腫瘍細胞特異的に発現する抗原を標的とした薬剤の開発が急速に進んでおり,これらの抗体療法は白血病細胞に特異的に殺細胞作用を有し,有用な白血病治療薬になり得ると期待されている。それらのなかで,gemtuzumab ozogamicin(GO)は急性骨髄性白血病細胞の90%以上に発現するCD33 抗原を標的とし,強力な抗腫瘍性抗生物質であるcalicheamicin を結合することにより,優れた白血病細胞特異性と抗白血病効果を発揮する薬剤と考えられている。しかし再発難治例などの従来の抗癌剤に対して,多剤耐性を獲得した白血病細胞に対しては同様にGO に対しても耐性を示すという報告もある。今回われわれは,高齢者再発AML 症例に対してGO 単剤治療が奏効し,長期間寛解を維持している症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 34巻11号, 1885-1888 (2007);
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症例は78 歳,女性。汎血球減少症,脾腫のため入院となった。骨髄穿刺標本では,hairy cell を有核細胞の11.6%に認め,それらは酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)染色陽性で,CD2,CD11c,CD19,CD20,sIgD,CD25,CD103,κ鎖が陽性であった。腹部造影CT では,脾腫および脾内に早期濃染像を呈する多発性の結節影を認めたことより,hairy cell leukemia(HCL)と診断した。治療としてcladribine 0.09 mg/kg/day の7 日間持続点滴による化学療法を施行,治療開始約3 か月後に部分寛解となった。HCL の治療はcladribine などのプリン誘導体が第一選択薬となっている。CladribineはHCL に対し高い奏効率を認め,本例のように高齢者に対しても安全に使用可能であった。重症感染症や二次発癌に注意し,再発も含め厳重に経過観察する必要がある。
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Journal Club
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癌と化学療法 34巻11号, 1784-1784 (2007);
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癌と化学療法 34巻11号, 1787-1787 (2007);
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癌と化学療法 34巻11号, 1840-1840 (2007);
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用語解説
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癌と化学療法 34巻11号, 1843-1843 (2007);
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癌と化学療法 34巻11号, 1844-1844 (2007);
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