癌と化学療法
Volume 34, Issue 12, 2007
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特集【第28回癌免疫外科研究会,第29回日本癌局所療法研究会】
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活性化自己リンパ球移入療法と低用量化学療法の併用で長期生存中の大腸癌肺転移の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description活性化自己リンパ球移入療法と低用量化学療法の併用で長期生存中の高齢者大腸癌肺転移の1 例を報告する。症例は82歳,女性。1998 年S 状結腸癌でS 状結腸切除術,2001 年肝転移で肝右葉切除術,以後経過観察していた。2003 年11 月のCTで肺の左右両葉に結節が出現し,肺転移と診断。手術適応はなく高齢者であったため,活性化自己リンパ球移入療法にUFT+低用量CPT-11/CDDP 療法を併用した治療を開始した。治療開始後,画像上はSD であったがCEA はいったん正常化した。以後CEA は徐々に再上昇しCT では腫瘍の緩徐な増大をみたが,同療法を休薬期間を挟みながら30 か月間継続した。高齢者の大腸癌肺転移に対し,活性化自己リンパ球移入療法で宿主の免疫能を維持しつつUFT+低用量CPT-11/CDDP 療法を長期間継続し,3 年6 か月生存中の興味ある1 例を報告した。 -
抗癌剤投与に伴う血管内皮細胞上E-セレクチン発現亢進に対するシメチジンの効果
34巻12号(2007);View Description Hide Description癌に対する様々な抗癌剤治療が癌患者の生存期間の延長に寄与しているが,いまだ十分な結果を得るには至っていない。以前より当教室では,固形癌の血行性転移に接着分子であるE-セレクチンの発現が関与していることに着目し検討してきた。今回,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に5-FU を投与するとE-セレクチンの発現が亢進し,これをH2 受容体拮抗剤であるシメチジンが抑制することを認めた。 -
当院における樹状細胞腫瘍内局注療法の効果─ハイパーサーミアを併用して─
34巻12号(2007);View Description Hide Description当施設では,各悪性腫瘍に樹状細胞(DC)の腫瘍内局注療法を施行している。DC を腫瘍内に局注する前にハイパーサーミア(温熱療法)で前処置することにより,その効果は著しくよくなった。41 例中10 例に有効(PR または長期のNC)。そのうち2 例にCR 例を得た。このうちCR となった子宮頸癌症例では,局注した頸部のみならず腹腔内リンパ節もすべてCRとなった。PR となった唾液腺管癌と併せて報告する。 -
癌存在診断法としての食道癌・胃癌患者におけるCirculating DNA 断片定量解析の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description食道癌患者24 例,胃癌患者53 例を対象に末梢血中遊離DNA 断片の定量化を試み,その診断的価値および臨床的意義について検討した。長短二つの異なるDNA 断片の濃度測定解析を行い,食道癌・胃癌患者の両者において健常者に比較し有意に高い血漿DNA 断片濃度を示した。その傾向は食道癌でより顕著であり,また両担癌患者群ともに長い断片解析において健常者との間に顕著な差を認めた。臨床病理学的因子との比較検討では,食道癌において腫瘍径の大きいものに血漿DNA 濃度が高い傾向を認め,胃癌においては病期との間に相関を認めた。本解析手法は手技も極めて容易であり,食道癌・胃癌患者における担癌患者スクリーニングおよび再発早期診断目的の補助的な診断法として有用である可能性が示唆された。 -
進行・再発乳癌に対するTrastuzumab 単独開始例とTaxane 系抗癌剤併用開始例との比較
34巻12号(2007);View Description Hide Description進行・再発乳癌に対するtrastuzumab とtaxane 系抗癌剤の併用療法について,単独投与から開始し途中から併用投与に変更した群と,併用投与で開始した群に分けて検討を行い,どちらが有用であるかを探索した。単独投与開始群は6 例,併用投与開始群は12 例であった。単独投与開始群の奏効率は33.3%であった。併用投与に切り替えた後の奏効率は83.3%と改善した。奏効期間の中央値は6.8 か月であった。併用投与開始群の奏効率は83.3%,奏効期間の中央値は7.5 か月であった。両群ともに化学療法開始前の血中IAP 値と開始後の血中IAP 値には差を認めなかった。trastuzumab とtaxane 系抗癌剤の併用療法は進行・再発乳癌に高い治療効果を示した。単独投与から併用投与に変更した後も高い奏効率を示したことから,単独投与から開始してもよいと考えられた。また治療経過中の血中IAP 値が両群ともに変化がなかったことから,免疫学的にも安全に施行できるものと思われた。 -
Hedgehog シグナルを利用した癌分子標的治療
34巻12号(2007);View Description Hide DescriptionHedgehog(Hh)シグナルが活性化し様々な癌の発生・進展に関与していることが明らかにされつつある。特に,近年Hh シグナルの関与が明らかになった膵癌・乳癌などはリガンド依存性にHh シグナルが活性化していた。この発見は,これらの癌細胞が細胞外シグナル伝達により制御できる可能性を示しており,Hh シグナル制御が新たな分子治療標的の候補となっている。今回,われわれはHh シグナル上の因子を標的とした抗体治療をめざしており,その現状を報告する。 -
CXCR4 発現ヌードマウス可移植ヒト胃癌株の樹立とAMD 3100 による抗腫瘍効果の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description目的: CXCR4 は癌の転移と播種において中心的な役割を担う。今回,CXCR4 発現胃癌株を樹立し,その治療モデルを作製,in vivo 系における有用性を検討した。方法: 胃癌患者の腫瘍より摘出した組織片をBALB/C(nu/nu)ヌードマウスに移植した。継代可能な腫瘍の増殖を認め,株化に成功した。さらに,ヌードマウス可移植ヒト胃癌株のCXCR4 受容体を確認した。腫瘍株を移植したヌードマウスにCXCR4 受容体の阻害物質であるAMD 3100 を投与し,抗腫瘍効果を検討した。成績と考察:AMD 3100 投与後に腫瘍を計測したところcontrol群に比較して27.6%の縮小率が得られ,有意差を認めた(p<0.02)。CXCR4 発現ヌードマウス可移植ヒト胃癌株の樹立はAMD 3100 を用いた治療モデルの可能性を検討する上で重要である。 -
ペプチドパルス樹状細胞療法におけるモニタリングとしてのCTL Assay,DTH の検証
34巻12号(2007);View Description Hide Descriptionわれわれの施設で行われているCEA652(9)を用いたpeptide-pulsed DC 皮下接種療法を施行された症例(HLA2402で血清CEA 高値例)のCTL assay とDTH のmonitoring としての検証を行った。10 例中1 例(10%)でSD であり,1 クール(3 回投与)終了後の患者末梢血におけるCTL assay ではCTL precursor のinduction は10 症例中3例に認められ,DTH反応は2例陽転化を認めた。SD の症例はCTL induction およびDTH の陽転化がともに認められた。PD の9 症例のなかでは3 例の患者に血清CEA 値の低下がみられた。今回の検証のみではCTL assay,DTH がmonitoring に有用であるかは断定できないが,CEA652(9)に関しては陽転化を認めた症例に臨床的な反応が多くみられる可能性が示唆された。 -
腹膜播種性胃癌に対する術前化学療法の導入効果と今後の課題
34巻12号(2007);View Description Hide Description胃癌腹膜播種は診断治療とも困難な病態であり,これまで臨床研究の対象とはならなかった。われわれは,画像診断にて非治癒因子がない漿膜浸潤胃癌に対し腹腔洗浄液診断を行い,CY1 症例に術前化学療法を行う臨床研究を行ってきた。結果は,術前化学療法とその後の手術は安全に施行でき,術前化学療法により腹膜因子CY,P が陰性化した症例の予後は良好であった。しかし,陰性下症例も多くが腹膜播種再発にて予後不良であり,さらなる腹膜病変の制御をめざし,新たなプロトコールを施行中であり,その有効性が期待される。 -
腹膜播種に対する腹膜切除の治療成績
34巻12号(2007);View Description Hide Description腹膜偽粘液腫(PMP)34例,腹膜播種を伴う虫垂癌(AC)44例,大腸癌(CRC)24例,胃癌(GC)136 例,小腸癌(SBC)8 例,腹膜中皮腫(PM)9 例に手術が行われ,peritonectomy を125 例に,通常の減量手術が130 例に施行された。播種が完全切除された(CC-0)例はPMP 16 例(48%),AC 16 例(36%),CRC 18 例(75%),GC 59 例(44%),SBC 2 例(25%),PM 2 例(22%)であった。通常の手術手技では130 例中28 例(21%)しかCC-0 はなかったが,peritonectomy では125例中85例(68%)で完全切除ができた。腹膜播種スコア(PCI)13 以下で全例CC-0 ができた。PMP,AC,CRC ではPCI 14 以上でも19 例(36%)が完全切除可能であった。完全切除ができない理由は,小腸間膜の広範な播種がみられた時であった。5 年生存率はPMP 37%,AC 29%,CRC 11%,GC 8%,SBC 33%であった。PMP,AC,CRC,GC のCC-0 では5 年生存率はそれぞれ100%,87%,15%,15%であった。多変量解析したところ,有意な予後良好因子は完全切除と年齢65 歳以下であった。以上より,腹膜播種の外科治療にperitonectomy を導入することで完全切除率が上がり,予後が改善される可能性がある。PMP,AC,CRC はperitonectomy の適応疾患で,PMP は化学療法が効かないので絶対的適応である。GC ではPCI 13 以下がperitonectomy の適応となる。 -
胃癌腹膜播種に対する化学療法併用細胞免疫療法についての検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description高度進行再発胃癌,特に腹膜播種症例に対する標準治療法はいまだ確立されておらず,予後も極めて不良である。標準的化学療法の抗腫瘍作用と免疫担当細胞による腫瘍拒絶作用とは異なり,理論的には両者併用することでそれぞれの抗腫瘍細胞機序が発揮され,相乗(加)的効果が得られると考えられる。これまでわれわれは,抗癌剤による標準的化学療法と自己活性化リンパ球(CTL)による細胞免疫療法を併用する治療を試験的に行ってきた。今回,胃癌腹膜播種例に対し,化学療法のみ施行例と化学療法無効後に細胞免疫療法施行例および化学療法とCTL 併用症例について,その臨床効果や生存率さらに腹水サイトカイン産生などの局所免疫状態に及ぼす影響を比較し,両者の相互的な補助効果の有無について検討する。 -
胃癌腹膜播種に対する治療戦略
34巻12号(2007);View Description Hide Description高度進行胃癌に対しSL を施行したP0CY1 38例,P1 3例,P2 8例,P3 36例を対象とし腹膜播種に対する治療戦略を考察した。P0CY1,P1 41例: NAC 施行31例,NAC 未施行(手術群)10例で,NAC 群の奏効率は29%,20例(65%)が胃切除時にCY0 であった。全41例の5年生存割合は15%で,NAC 群の遠隔成績は手術群より良好であった(p<0.05)。P2,P3 44例: 狭窄や出血で7例に切除を先行した。全44例の2年生存割合は9%であった。P0CY1,P1 に対するNAC は高率にCY を陰性化するが癌の制御としては課題が残る。P2,P3 症例には減量手術を避け,PS が保たれた早い段階で化学療法を導入することで良好な成績が得られた。今後は,腹腔内化学療法を含めた集学的治療の開発が急務である。 -
大腸癌腹腔洗浄細胞診の意義と腹膜播種の予防
34巻12号(2007);View Description Hide Description大腸癌開腹時に洗浄細胞診を施行した745例を対象とした。細胞診陽性率は49/745例(6.6%)であった。P0 症例の腹膜再発は陽性例12/22 例(54.5%),陰性例8/682 例(1.3%)で,陽性症例は有意に多く認められた(p<0.0001)。P0 症例の5 年生存率は,細胞診陽性例38.2%,陰性例89.4%で,陽性例は有意に予後不良であった(p<0.0001)。腹膜再発予防のため,細胞診陽性例に閉腹後MMC 20 mg/生食500mL を注入した。P0細胞診陽性症例の腹膜再発は,MMC 投与例では3/11例(27.3%),非投与例では9/11 例(81.8%)であり,投与症例は有意に腹膜再発が減少した。また,5 年生存率はMMC投与例63.6%,MMC 非投与群10.0%であり有意に予後を改善した(p=0.022)。開腹時洗浄細胞診を施行すること,細胞診陽性例に対しMMC を腹腔内投与することは,腹膜再発,予後予測・改善に重要である。 -
胃癌腹膜播種に対するS-1 併用Docetaxel 腹腔内投与の多施設第 I/II 相臨床試験
34巻12号(2007);View Description Hide Description胃癌腹膜播種に対するS-1 併用docetaxel(DOC)腹腔内投与の多施設第 I/II 相臨床試験の概要を紹介する。対象は腹腔鏡あるいは開腹にて腹膜播種と診断された胃癌症例であるが,高度腹水例は除外した。phase I ではS-1 80 mg/m2,day1〜14,q4w,DOC 35〜50 mg/m2(level 1〜4),day 1,day 15,q4w におけるDLT,MTD,RD を,phase II ではphase I で決定した投与量における2 コースの治療完遂率をプライマリーエンドポイントとした。セカンダリーエンドポイントはともに腹膜播種に対する奏効率である。2 コース終了後,腹水の減少と細胞診の陰性化あるいは腹腔鏡検査により50%以上の播種巣の縮小・消失が確認され,初回診断時とともに客観的評価に耐え得る証拠写真が撮影された場合に効果ありとする判定基準を設けた。以上の臨床試験は,胃癌腹膜播種研究会のメンバー14 施設で進行中である。 -
腹腔内化学療法は漿膜浸潤胃癌の再発形式を変化させるか
34巻12号(2007);View Description Hide Description組織学的に漿膜浸潤(+),(pT3(SE),pT4(SEI)症例)で,肉眼的に癌遺残(−),(根治度B およびCY1 症例)の胃癌手術症例で手術時に腹腔ポート留置し,術後adjuvant 化学療法としてMTX-5-FU 腹腔内化学療法を施行した42 例を対象とした。再発例24 例(再発死亡例22 例,再発生存例2 例)のうち,腹膜再発17例(71%)で,本腹腔内化学療法は再発形式には影響を及ぼしていないと考えられた。Stage 別では,Stage II,IIIA の再発形式は全例腹膜再発を示し,Stage III B,IV の再発形式の約6 割が腹膜再発であった。予後の面からは,再発例24 例中,術後3 年以上生存例9 例(38%),術後5 年以上生存例5 例(21%)と長期の生存が得られた症例が認められた。腹腔内化学療法は漿膜浸潤(+)胃癌の再発形式に大きな影響を及ぼさないが,生存期間を延長する可能性が示唆された。 -
大腸癌腹膜播種再発に伴う腸閉塞に対する切除術の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description大腸癌の腹膜播種再発に対しては有効な治療法がなく,腸閉塞を合併するとQOL の低下が著しく治療に難渋することが多い。そこで症状を軽減する緩和療法を目的として,手術療法が選択されるが無理な手術療法は症状を悪化する可能性がある。大腸癌の腹膜播種が原因で,腸閉塞を併発した症例は1995 年から2005 年までに16 例認め,そのうち手術を施行した症例は7 例で,9 例は保存的に治療していた。生存期間の中央値は全16 例で98 日,手術を施行した症例で235 日,保存的治療を施行した症例は67 日であった。術後200 日以上生存した症例が4 例で,術前検査で腹水を認めず播種巣をすべて切除した症例であった。術後のQOL が改善した症例は2 例で,3 例はQOL が明らかに悪化した。術前に腹水を認めた症例やバイパス術や小腸瘻を造設した症例は,QOL や予後を悪化する可能性があり,手術適応には慎重でなければならない。 -
洗浄細胞診陽性4 型胃癌に対する治療戦略─洗浄細胞診の変化からみた治療方針の決定─
34巻12号(2007);View Description Hide Description4 型胃癌は高頻度に腹膜播種を来し,手術のみでは予後の改善は困難である。今回われわれは,洗浄細胞診(CY)陽性4 型胃癌に対し化学療法後,手術を施行した症例を検討し,CY の変化からみた治療方針の決定について考察した。対象はCY 陽性の4 型胃癌で,化学療法後,手術を施行した6 例。6 例中3 例(50%)は手術時にCY が陰性化していた。CY 非陰性化の3 例のうち1 例は術後補助化学療法中に陰性化した。CY 陰性化4 例の予後は中央値で1,487 日(966〜2,354日)と比較的良好であった。一方,CY 非陰性化の2 例の予後は193 日,395 日と不良であった。術前化学療法により,CY が陰性化した症例の予後は比較的良好であり,腹腔鏡検査による評価の重要性が示唆された。これらの症例は外科的治療による根治切除をめざすが,非陰性化例は予後が不良であることから,可能ならレジメンを変えての化学療法継続がよいと考えられる。 -
腹腔内洗浄・Cisplatin 投与を施行した腹膜偽粘液腫の5 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description減量手術と腹腔内洗浄・cisplatin(CDDP)投与を行った腹膜偽粘液腫5 例に対し検討した。原発巣は膵臓1 例,虫垂4 例,組織型は高分化腺癌1 例,印環細胞癌4 例であった。全例に原発巣および腹腔内粘液結節の可及的除去が行われ,生理食塩水と5%ブドウ糖液あるいは低分子デキストランにて腹腔内を洗浄し,術中または術中・術後にCDDP が腹腔内投与された(総投与量100〜400 mg/body)。消息不明に1 例を除いた4 例では,1 年以内に腹水の貯留は認めなかった。減量手術やCDDP による腹腔内化学療法を含む集学的治療は,腹膜偽粘液腫の短期QOL を改善するといえる。 -
高度進行胃癌に対するコンタクト内視鏡を用いた診断的腹腔鏡の有用性
34巻12号(2007);View Description Hide Description高度進行胃癌に対する新しい腹腔鏡診断方法として,コンタクト内視鏡の有用性を検討した。術前に画像診断上,腹膜播種を否定できない高度進行胃癌25 例に対して全身麻酔下にてコンタクト内視鏡(Micro-Laryngoscope,Karl Storz 社,Germany)を用いた診断的腹腔鏡を施行した。腹腔内にカメラ用と鉗子用の計2 個のポートを挿入して通常観察を行い,漿膜浸潤陽性部および腹膜播種巣を確認した。同部に1%メチレンブルーを散布した後,コンタクト内視鏡を接触させ150 倍にて観察した。全例で漿膜浸潤部に1%メチレンブルーにて濃青色に染まる不揃いな大型の核を認め,癌細胞と診断した。また,播種巣を疑った大網の白色結節にも同様の所見が観察され癌細胞陽性と判断し,生検でも播種巣と診断された。漿膜浸潤の有無や微小転移巣の診断には拡大微細観察が可能なコンタクト内視鏡が有用となる可能性がある。 -
肝動注化学療法終了後のカテーテル抜去症例の検討
34巻12号(2007);View Description Hide DescriptionW スパイラル(WS)カテーテルを用いて肝動注化学療法を行った後に抜去した25 症例について合併症を中心に検討した。透視下で操作を行い,全例で容易に抜去できた。血栓・塞栓症や術後の感染は認めなかったが,1 例で出血を合併した。抜去したカテーテル表面の電顕像ではフィブリン網の形成はなく,3 か月目の3D-CT による肝動脈の評価では3.3 Fr カテーテル使用例で13 例中12 例で肝動脈の開存性が保たれていた。出血合併症例は5 時間圧迫したが止血が得られず,緊急止血手術(局所麻酔下で頭尾側をクランプし,直接縫合2 針)を要した。刺入部が鼠径靱帯直下で周囲組織が硬化しており,圧迫が十分にできなかった可能性が考えられた。抜去可能なWS カテーテルを用いて動注終了後に抜去するのは理にかなった方法であるが,抜去後の止血には細心の注意を払う必要がある。 -
T4 食道癌に対する術前化学放射線療法・食道切除および異時性肺転移切除を施行した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description切除不能T4 食道癌を術前化学放射線後に切除し,かつ異時性肺転移巣を切除した症例を経験した。59 歳,女性,Mt-Ut に7cm のT4(左主気管支浸潤)食道癌で,2004 年1 月から2 月に放射線化学療法(5-FU/CDDP+放射線30 Gy)を施行。食道狭窄強く,経口摂取不良となり中心静脈栄養管理を行った。栄養状態が改善し,画像上downstaging され切除可能と判断し,3 月22 日右開胸開腹食道亜全摘,胃管による頸部食道再建を施行した。術後合併症なく経過良好であった。病理組織学的所見ではviable な癌細胞の残存はなかった。術後外来観察中に異時性肺転移(右肺S6,単発,8 mm)を認め,2005 年8 月肺転移巣切除を施行した。現在もcancer free の状態で通院観察中である。 -
S-1+CDDP 併用療法にてCR を得た食道癌多発肺転移の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description目的:食道癌に対する放射化学療法の有用性に関する報告は多く,特に5-FU+CDDP 併用療法は治癒をめざせる治療法であることが示唆される。しかしながら術後の補助療法中に遠隔転移を来した場合には治療に難渋する。今回,食道癌術後の5-FU+CDDP の併用療法中に発症した多発肺転移に対し,5-FU のprodrug であるS-1 に変更後CR を得た症例を経験したので報告する。症例: 71 歳,男性。健康診断の内視鏡にて門歯から27〜30 cm に1 型腫瘍を指摘。精査にて食道癌: Ut 1 型,T2-T3,N2,M0,IM0 の術前診断にて右開胸開腹食道亜全摘術,胸骨後再建施行。病理診断は,中分化型扁平上皮癌pT1b(sm),pN1(106-rec R),pStage II であった。術後5-FU+CDDP(day 1〜5,5-FU 500 mg,CDDP 10 mg/body)を開始。 3 クール終了後に多発肺転移が出現したため,S-1+CDDP(S-1 day 1〜14,CDDP 5 mg/body day 1〜5,8〜12)を2 クール施行。化学療法後のCT にて肺転移は消失しCR と判断した。その後S-1 単剤で内服を継続中であったが,骨転移を来し放射線治療を施行した。現在対症療法中であるが,肺転移に関しては再発を認めていない。考察: 食道癌に対するS-1+CDDP併用療法は,NAC や手術不能例に対する報告例が多いが,再発,遠隔転移症例でも本療法が有用であることが示唆された。 -
胃癌術後吻合部再発に対するS-1+CDDP 療法の長期継続により良好な局所コントロールが得られた1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は55 歳,女性。4 型胃癌に対して根治切除術が施行された。術後4 年目の上部消化管内視鏡検査で吻合部再発が認められたため,S-1 + CDDP 療法が開始された。薬剤投与中の有害事象は,grade 2 の白血球減少,grade 3 の食欲低下であり,S-1,CDDP の減量と在宅中心静脈栄養を併用し,薬剤投与継続を可能とした。再発後3 年経過した現在,その他の遠隔転移は認めず,良好な局所コントロールが維持されている。 -
肝細胞癌副腎転移に対する集学的治療
34巻12号(2007);View Description Hide Description副腎転移を伴う肝細胞癌は他部位転移を伴うことが高率であり,その予後は不良である。1999 年以降,肝細胞癌副腎転移に対して集学的治療を行った7 症例の予後と治療の有用性を検討した。外科的治療例が4 例,RT 例が3 例であった。すべて男性で平均年齢は72 歳,肝細胞癌の初回治療から副腎転移までの期間は平均46 か月(1〜95 か月)であった。肝内病変のコントロールが得られ,副腎以外の転移を認めない症例では,切除可能と判断した時点で手術を行った。副腎転移に対する治療後の平均生存期間は,外科的治療例で23 か月(7〜54 か月)と,比較的良好な予後が得られた。RT 例では,平均15 か月(5〜30 か月)の副腎転移の無増悪期間が得られた。肝原発巣のコントロールが良好な副腎転移症例では積極的に集学的治療を行うことが予後の向上につながる可能性がある。 -
大腸癌肝転移動注療法後他臓器転移し全身・動注交替療法を施行した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は72 歳,女性。同時性肝転移を伴う大腸癌に対し,回盲部切除術後にLeucovorin/5-FU(LV/5-FU)動注療法を施行した。4 か月後肝転移は著明に縮小したが,右肺野に肺転移を疑う小結節が出現した。そこで,CPT-11/CDDP の全身化学療法と肝動注の交替療法を施行した。その後,肝転移巣と肺転移巣はともに消失し,現在まで再燃を認めていない。以上,大腸癌肝転移動注療法後の他臓器転移に対し,全身・動注交替療法が長期奏効中の1 例を報告する。 -
CRT 後の胸水,心嚢水貯留に難渋している食道・胃重複癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。2002 年11 月に近医にて食道癌,胃癌を指摘され当院紹介された。食道癌は多発でありcStage II,胃癌も多発であり cStage IA と診断した。QOL を考慮し,食道癌に対するCRT を先行し,続いて胃全摘術を施行した。食道癌はCR であったが,補助化学療法としてFP 療法を合計14 コース施行した。CRT 後10 か月目に心嚢水貯留を認め,心嚢水ドレナージを施行,利尿剤投与を続けて現在に至っている。19 か月目には胸水が出現したが,胸水ドレナージを貯留の程度に応じて左右ともに数回施行,OK-432 注入を併用しコントロールできている。食道・胃重複癌症例に対する治療法として過大な侵襲である食道切除術を避けCRT を選択し,CR を得たにもかかわらず,放射線の晩期毒性である胸水,心嚢水貯留に難渋している。CRT 後の長期生存例では晩期毒性にも注意が必要である。 -
進行食道癌における化学放射線治療後食道切除の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description進行食道癌に対する化学放射線治療(CRT)後の食道切除の意義について検討する。1994 年から2006 年8 月までに経験した115 症例のうち,初回にCRT(放射線単独を含む)を施行後,食道切除を追加した14 例と,CRT を継続した33 例について生存率を比較し,CRT 後切除群の手術成績を検討した。CRT 後切除/CRT 単独群の2 年生存率は45.5%/10.4%,MST は486 日/242 日で,CRT 後切除群の生存成績が有意に良好であった。CRT 後切除例では,治癒切除(7 例)と非治癒切除(5 例)の1 年生存率は83.3%/20.0%,MST が2,055 日/273 日であった。治癒切除かつgrade 3 の2 例に長期無再発生存を認めた。術後合併症や在院死は手術単独群と比較して有意差は認めなかった。進行食道癌においてCRT 後の奏効症例では,食道切除の追加は有用であると思われた。 -
食道狭窄に対して気管用Stent の留置によりQOL の確保が可能であった化学放射線療法後食道癌局所再燃の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description根治放射線照射後に局所再燃,通過障害を来した食道癌に対して気管用stent を留置し良好なQOL の確保が可能であった1 例を経験した。症例は62 歳,男性。食道小細胞癌に対して化学療法,化学放射線療法を行った後局所再燃により通過障害を来した。バルーン拡張の治療効果が不十分となったために気管気管支用stent 14 mm non-covered を留置した。留置後流動物の摂取が可能となった。食道stent は,放射線照射後の症例では拡張力の強さゆえに穿孔などの合併症を来すことは少なくない。今回,内径の小さい気管用stent を用いることで重篤な合併症を来すことなく通過障害の改善が可能であった。今後,食道用細径covered type stent の開発が望まれる。 -
食道癌術後縦隔内再発後OK-432 局注にて2 年3 か月生存した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は85 歳,男性。3 年前に食道癌 T3N2M0,Stage III にて非開胸食道抜去術・後縦隔胃管再建術施行,その後肺転移が出現し局所に63 Gy の放射線照射しCR を維持している。その後外来経過観察中であった。つかえ感が出現し,精査施行した。食道癌術後縦隔内リンパ節再発・胃管浸潤と診断した。保存的に経過観察していたが6 か月後,胃管完全狭窄・経口摂取不能にて緊急入院となった。内視鏡的OK-432 局注(10 KE)療法および拡張術を施行した。治療は1 か月ごとに数日間の入院加療で施行した。治療は計8 回施行され,経過中全粥程度の経口摂取は可能であり,自宅療養可能であった。最終的には放射線療法による晩期有害事象で死亡したが,縦隔内再発後の治療経過中に局所の増大は軽度で遠隔転移は認めず,再発後2年3 か月生存した。治療関連有害事象も微熱の出現のみで安全に施行可能であった。 -
全身・局所治療を組み合わせCR を得た食道癌術後再発症例の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は58 歳,男性。Ae,2 型食道癌術後2 年2 か月後の唆声を伴う縦隔リンパ節再発症例である。広範囲の再発を念頭に置き,全身化学療法で治療を開始した。新病変の出現がないことを確認してより強い局所制御作用を期待し,docetaxel(DOC)併用の化学放射線療法を施行した。次に外来で投与可能なregimen としてbi-weekly DOC 療法を施行した。6 コースでCR となり,12 コースで治療終了。以後経過観察を継続中であるが,6 か月間CR を継続中である。上部消化管内視鏡検査では左声帯の萎縮は残るものの,唆声の著明な改善を認めている。食道癌術後再発症例の予後は不良であり,その再発形式も様々である。治療に際しては,それぞれの症例に合わせた治療計画が必要である。 -
食道癌術後に発症した胆管癌に対し肝動注化学療法が著効した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description67 歳,男性。2003 年当院にて食道癌に対し食道亜全術を施行。その後他院にて,術後経過観察中の2005 年12 月に肝左葉の全域を占める長径125 mm の胆管癌を認めた。CT にて腫瘍は肝表面に露出,腹水も認め,また胃管への浸潤も疑われた。本人は化学療法を希望された。12 月22 日肝動脈カテーテル留置およびリザーバー埋め込み術を施行した。肝動注化学療法として,CDDP 10 mg,levofolinate calcium 150 mg,5-FU 250 mg を施行した。既往としてC 型慢性肝炎があり,WBC低値のため副作用の軽減を目的に夜間持続投与とした。2006 年9 月のCT にて腫瘍は54 mm にまで縮小を認めた。切除不能胆管癌に対し,副作用も少ない夜間肝動注化学療法が有効であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。 -
非切除および再発胆管癌の化学放射線療法の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description非切除および再発胆管癌で化学放射線療法を施行した症例の検討を行った。対象: 2005 年4 月から2007 年3 月までの非切除および再発胆管癌症例である。方法: 経皮経肝胆道ドレナージで減黄し,チューブ内瘻化された状態で体外照射および胆管腔内照射に5-FU,gemcitabine を併用薬剤として用いた。結果: 症例は非切除胆管癌3 例および再発胆管癌2 例であった。治療の副作用は4 例に軽度の好中球減少症を認め,合併症は1 例に消化管出血を認めた。PSC 合併例では繰り返す胆管炎の再燃がみられた。平均生存期間は非切除胆管癌13.7 か月,再発胆管癌17 か月であった。非切除胆管癌で1 例が原病死,再発胆管癌では1 例が原病死で1 例が出血性ショックで亡くなった。非切除胆管癌の2 例は腫瘍マーカーが再上昇してきているが,現在生存中である。まとめ: 非切除および再発胆管癌症例5 例に化学放射線療法を行い,良好な結果が得られた。 -
切除不能肝門部胆管癌に対して肝動注化学療法と放射線照射により奏効を得て長期生存している1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は 79 歳,女性 2002 年11 月胃癌のため幽門側胃切除術を施行した。T1N0H0P0M0 でfStage IA であった。術後経過観察中2003 年11 月腹部CT にて肝門部に腫瘤を認め,左葉肝内胆管の拡張を認めた。左肝管から右肝管,総肝管へ浸潤し,左門脈は閉塞し右門脈の狭小化を認めた。右肝動脈に浸潤を認め切除不能と診断し,リザーバーポートを留置した。5-FU 1,000 mg/body/week×8 回肝動注化学療法を行い,同時に40 Gy 放射線照射を行い,さらに20 Gy 追加照射を行った。3 か月後のCT 検査では腫瘍の縮小がみられ,7 か月後にはほぼ腫瘍は消失した。以後増大はみられず3 年6 か月を経過している。 -
ステント,PTEG で外来化学療法が可能となった進行膵癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は52 歳,男性。イレウスにて入院。癌性腹膜炎による十二指腸水平脚狭窄,上行・脾弯曲部結腸狭窄を合併した進行膵体尾部癌と診断された。PTEG にて消化管減圧を行いながら各狭窄部にはステントを留置し,最終的にはPTEG 経腸栄養と経口摂取の併用が可能となった。gemcitabine,S-1,CPT-11 による化学療法も可能となり約8 か月後にステントの追加挿入を要したが,9 か月後の現在も外来で化学療法を継続できている。癌性腹膜炎を呈する切除不能の進行膵癌による悪性消化管狭窄とイレウスの症状緩和にはステントとPTEG の併用は非常に有用であることが示唆された。 -
術中照射後,腹腔内出血にて死亡した切除不能膵頭部癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は56 歳,男性。2006 年2 月に全身倦怠感を主訴に近医を受診。精査の結果,膵頭部癌(Stage IVa)と診断されるも放置。黄疸,皮膚そう痒感が出現し,7 月に東京女子医科大学附属病院を受診。閉塞性黄疸(T-Bil 25 mg/dL)が進み,9月にENBD を施行し,胆管ステントを留置。10 月に抗癌剤治療目的に当院転院。11 月にS-1,gemcitabine による治療を行うも12 月に十二指腸狭窄による嘔吐が出現。12 月18 日胃空腸吻合および術中照射(12 MeV,20 Gy)を施行した。術後は背部痛の軽減など臨床症状の改善がみられたが,2007 年1 月29 日,出血性ショックにて死亡された。剖検では膵尾部に壊死性膵炎があり,脾動脈からの腹腔内出血が直接の死因であった。膵癌は十二指腸,総胆管と後腹膜腔に浸潤し,大動脈周囲リンパ節転移を認めた。 -
非切除膵癌に対する経皮内視鏡的胃瘻腸瘻造設(PEG-J)の使用経験
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。黄疸にて近医入院。膵癌と診断され手術を予定されていたが,減黄が進まず当科転院。PTCD 造影にて胆管は完全閉塞し,内視鏡にて十二指腸は腫瘍浸潤により狭窄。CT にて膵頭部腫瘤と多発性肝転移を認め,緩和的治療を行った。黄疸に対しPTCD の内瘻化後,メタリックステントを留置。十二指腸狭窄に対して経皮内視鏡的胃瘻腸瘻造設(PEG-J)を行い,経腸栄養を開始した。転院後約2 か月で膵癌の進行などで亡くなったが,PEG-J は経腸栄養に使用する一方,減圧胃瘻として水分摂取を可能とし,QOL 改善に大きく貢献した。 -
Gemcitabine(GEM)併用放射線化学療法が有効であった膵癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は68 歳,男性。腹痛と背部痛を主訴に近医受診。膵体尾部癌(9×6 cm)の多発肝転移(cT4N×M1,stage IVb)の診断にて化学療法目的で受診。DUPAN-2 15,800 U/mL,PS は0。外来でGEM 1,000 mg×3 回(計 3,000mg)と radiation (RT) 3 Gy×15 days(計45 Gy)を施行。Hb 7.7 g/dL(grade 3)とPlt 7.9×10 4/μL(grade 2)の血液毒性を認めたが,DUPAN-2 は4,590 U/mL まで低下,腹部CT 検査でもNC。その後S-1(100 mg/day 1〜5,8〜12)+GEM(1,000mg,day 6,13)を2 週間投与後1 週間休薬のメニューで継続。途中,WBC が1,610/μL(grade 3)を認め,隔週ごとのメニューに変更。GEM+S-1 投与7 か月後の腹部CT 検査では,原発巣は7×5 cm とコントロールされている。 -
膵癌に対するGemcitabine による局所動注化学療法の効果の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description手術適応外もしくは手術を選択されなかった膵癌症例に対して,膵周囲動脈塞栓後にgemcitabine による局所動注療法を施行した。画像による効果判定はPR 1 例,SD 1 例,PD 2 例であった。生存期間は7 か月と予後の改善効果は認めなかった。全例に癌性疼痛の軽減効果を認め,腫瘍熱の消失や摂食量の増加効果など症状緩和効果が認められた。副作用として3 例にgrade 1 の骨髄抑制が認められた。癌に伴う症状緩和効果は高率に得られるものの,予後の改善を得るためには併用療法の付加などの検討が必要である。 -
鼠径ヘルニア嚢転移を来した上行結腸癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description鼠径ヘルニアおよび悪性腫瘍はそれぞれが高頻度でみられるにもかかわらず,鼠径ヘルニア嚢に悪性腫瘍が存在する頻度は少ない。今回われわれは,上行結腸癌が右鼠径ヘルニアに転移した症例を経験したので報告する。症例は60 歳台前半の男性。上行結腸癌術後1 年8 か月を経過し,右鼠径部の腫脹を認めた。右鼠径ヘルニアの診断にて手術を施行した。ヘルニア先端に約3 cm 大の腫瘤が精索に浸潤していたため,悪性疾患を疑い,右睾丸とともに精索と腫瘤を切除し,Bassini 法にて補強した。上行結腸癌と同様の腺癌を認め,上行結腸癌の鼠径ヘルニア嚢転移と診断した。その後の全身精査では他に転移巣を認めず,単発性鼠径ヘルニア転移と考えられた。進行大腸癌においては鼠径ヘルニア転移が生じることを念頭に置き,診療に当たるべきであると考えられた。 -
術前に鑑別を要した原発性肺癌および大腸癌の重複癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は59 歳,女性。S 状結腸癌,肺転移の診断にてS 状結腸癌術後S-1 による化学療法を施行した。転移と考えられた腫瘤は縮小し,肺部分切除を施行した。迅速病理診断にて原発性肺癌であった。 -
術後長期生存した下大静脈腫瘍栓併存肝細胞癌とS 状結腸癌の重複癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。C 型肝炎による肝硬変にて経過観察中に肝腫瘍を指摘され,当院紹介受診。精査にて下大静脈腫瘍栓(Vv3)を伴う肝細胞癌(HCC)の診断。大腸内視鏡検査にてS 状結腸癌を同時に認め,重複癌の診断となった。肝S8亜区域切除術,下大静脈腫瘍栓摘除およびS 状結腸切除術施行。病理結果は中分化型HCC,Vp1,Vv3,中分化型S 状結腸癌,ss,n1 であった。術後3 年10 か月,肺転移出現し,胸腔鏡下肺部分切除施行。術後4 年11 か月,残肝S3,S6 に再発を認め,肝動脈化学塞栓療法を施行した。術後6 年6 か月,食道静脈瘤破裂により死亡した。本症例はVv3 の高度進行肝細胞癌と結腸癌の重複癌症例であったが,積極的外科切除とその後の集学的治療により長期生存を得られた。肝細胞癌Vv3 症例に対しては外科的切除および術後の集学的治療により,長期生存を期待し得ると考えられた。 -
放射線療法によりComplete Response が得られた高齢者肛門管扁平上皮癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description放射線治療単独でcomplete response が得られた高齢者肛門管扁平上皮癌の1 例を報告する。症例は86 歳,男性。排便時出血と肛門痛を主訴に近医受診。大腸内視鏡検査で歯状線直上に約1/3 周性の1 型腫瘍を認めた。生検で高分化型扁平上皮癌と診断され,精査加療目的で紹介入院。治療前のSCC は8.4 ng/mL と高値を示していた。腹部骨盤MRI では所属リンパ節,側方リンパ節の腫大や遠隔転移は認めなかった。本人・家族が手術と化学療法を希望しなかったため,放射線療法単独治療を選択した。1 日1 回2 Gy の照射を週に5 回,総線量60 Gy の骨盤内照射を施行した。放射線照射後の大腸内視鏡検査では,発赤を認めるのみで明らかな腫瘍を認めず,生検で癌細胞は認められなかった。治療開始3 か月後の骨盤CT 検査でも腫瘍は描出されず,CR と判定した。その後約3 年経過した現在,SCC の若干の上昇を認めるが,画像上再発の所見は認められていない。 -
大腸癌肺転移に対するラジオ波焼灼療法
34巻12号(2007);View Description Hide Description大腸癌肺転移に対してラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)を施行した2 症例を経験した。症例1: 70 歳,男性。直腸癌(a2,n2,P0,H0,M0,Stage IIIb)に対して手術施行11 か月後に肺転移(左S10,径10 mm)を認めた。全身化学療法を開始するも,好中球減少が強く中止となった。手術17 か月後,肺転移に対してRFA を施行した。合併症は認められなかった。現在,RFA 施行20 か月後,肺再発を認めていない。症例2: 65 歳,男性。S 状結腸癌(ss,n2,P0,H0,M0,Stage IIIb)に対して手術施行10 か月後に肺転移(3 か所: 右S5 径5 mm,左S8 径8 mm,左S9 径10 mm)を認めた。全身化学療法を開始するも,薬疹・全身倦怠感が強く中止となった。手術15 か月後,肺転移(3 か所)に対してRFA を施行した。軽度の気胸を認めたが保存的に改善した。現在,RFA 3 か月後,肺再発を認めていない。肺転移に対するRFA は,長期予後に関しては現在のところ明らかでないが,低侵襲で安全に繰り返し施行できる治療であり,大腸癌肺転移に対する治療の一つの選択肢となると考えられる。 -
新規抗癌剤投与により切除可能となった同時性多発肝・肺転移の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は63 歳,女性。S 状結腸癌および同時性多発肝転移・両葉多発肺転移の診断にて,S 状結腸切除後にCPT-11+S-1 を3 コース施行したところ,肝および肺病変に対してはPR の効果判定となり,拡大右肝切除および中肝静脈合併切除を施行した。肝切除後に2 コースを追加施行し,左肺上葉切除を施行した。初回手術より33か月が経過した2007 年7 月現在,残肝再発を認めずに生存中である。近年の新規抗癌剤による全身化学療法の進歩は,切除不能進行大腸癌多発性肝転移や肝外転移を切除可能になし得ることがあり,進行大腸癌の予後改善に寄与し得ると考えられた。 -
大腸癌同時性肝転移における肝所属リンパ節の大きさと転移
34巻12号(2007);View Description Hide Description背景・目的: 大腸癌肝転移の肝所属リンパ節(HN)転移の大きさについてretrospective に検討した。対象・方法: 1997年4 月から2006 年12 月の間に原発巣の切除が行われ,肝転移以外に非治癒因子がなくHN のサンプリングあるいは郭清が行われた大腸癌同時性肝転移のうち,プレパラート標本上からリンパ節の最大割面が評価可能であった55 例,163 個のリンパ節を対象に転移と大きさの関係を検討した。結果: 転移陽性リンパ節(n=35)は陰性リンパ節(n=128)より長径,短経とも有意に大きかった(p<0.01)。転移を長径から予測するROC 曲線下面積は0.69 で,長径のcutoff 値を7 mm とした場合のsensitivity,specificity,accuracy は各々62.9%, 60.9%,61.4%であった。結論: 大きさから大腸癌肝転移のHN 転移を絞り込むのは困難であることが示唆された。 -
切除不能大腸癌肝転移に対するカンプトDSM 動注療法の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description目的: 切除不能大腸癌肝転移症例に対して当科で施行している動注療法(カンプトDSM 動注療法)について検討したので報告する。対象・結果: 27 例の患者に対してカンプトDSM 動注療法を47 回行った。治療前後の腫瘍マーカーを比較し,CPT-11 の活性代謝物であるSN-38 の血中濃度を測定した。SN-38 の血中濃度はCPT-11のピークより1 時間遅れて上昇しており,カンプトの薬理特徴を生かした投与法と考えられた。腫瘍マーカーは全例において改善を認めた。27 例中9 例において動注治療後に肝切除を施行し得た。奏効率は59%。3 年生存率は20%だった。結語: DSM 併用のカンプト動注療法が抗腫瘍効果に関与することが示唆された。同治療により手術適応症例を拡大できる可能性が示唆され,他臓器転移がなければ全身化学療法と同様にfirst-line の治療法として選択し得ると思われた。 -
化学療法および放射線療法が奏効した進行大腸癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。発熱と心窩部痛を契機に精査したところ,同時性の肝,骨,リンパ節転移を伴ったS 状結腸癌と診断された。原発巣は切除せず,5-FU による肝動注化学療法とCPT-11 による全身化学療法の併用療法を施行した。肝およびリンパ節の転移巣は著明に縮小し,原発巣に対しては著効が得られた。しかし,治療開始から1 年目に骨転移巣の増大と新病変の出現がみられ,放射線療法を追加した。現在,治療開始から3 年経過しているが良好な結果を得ている。 -
腹膜播種切除後に化学療法併用にて長期生存が得られている大腸癌2 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description大腸癌術後腹膜播種再発によりイレウス症状を呈した2 例に,手術切除および術後化学療法を併用して,比較的長期間QOL を保ったまま経過している2 症例を経験した。症例1 は62 歳,男性。下行結腸癌術後2 年で腹膜播種による小腸腫瘍が出現し,切除術施行。術後化学療法としてFOLFIRI を11 か月,その後FOLFOX を6か月施行。肝転移,局所再発を認めるが,QOL を保ったまま現在も化学療法中である。症例2 は72 歳,女性。S 状結腸癌術後3 年で腹膜播種再発によるイレウスとなり切除術施行。さらにその3 年6 か月後に再び腹膜播種が出現し,再切除術施行。以後6 か月FOLFOX による化学療法を施行しているが,再発転移を認めていない。播種性の再発でも消化管閉塞部位を限定できた場合は,手術治療が有効な選択肢の一つになり得ると考えられた。 -
mFOLFOX6 療法を含む集学的治療が奏効した虫垂原発腹膜偽粘液腫の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description虫垂原発腹膜偽粘液腫に対し,mFOLFOX6 療法を含む集学的治療が奏効したと考えられる1 例を経験したので報告する。症例は45 歳,男性。虫垂癌あるいは盲腸癌による癌性腹膜炎と診断。mFOLFOX6 療法を7 回施行したところ,腹水と血清CEA およびCA19-9 の著明な低下を認めた。開腹所見は,虫垂癌による腹膜偽粘液腫で結腸右半切除,大網切除とともに粘液結節の可及的除去を行い,術中5%グルコース10,000 mL で腹腔内を洗浄した。第7,14 病日に低分子dextran 3,000mL,cisplatin 80 mg による腹腔内化学療法を施行した。術後2 か月からmFOLFOX6 療法を再開,合計28 回施行した術後12 か月の現在,明らかな再発の徴候を認めていない。 -
化学放射線療法でComplete Response が得られた肛門管扁平上皮癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description肛門管扁平上皮癌に対し,化学放射線療法でCR が得られた1 例を経験したので報告する。症例は54 歳,女性。肛門管扁平上皮癌T2N0M0 stage II に対し,内腸骨動脈領域を含めた計60 Gy の骨盤内照射にtegafur/uracil/Leucovorin の経口投与を併用した。治療開始3 か月後のCT 検査と4 か月後の大腸内視鏡検査で腫瘍は消失し,9 か月後のMRI 検査でも腫瘍の消失は持続していたため,CR と判定した。11 か月後のPET-CT で原発巣へのFDG の集積は認められなかったが,右仙骨,左恥骨,大動脈周囲リンパ節に集積が認められ,骨・リンパ節再発と診断した。再発リンパ節に対し,57.5 Gy の外照射を行い,5-fluorouracil/cisplatin 療法を現在施行中である。肛門管扁平上皮癌に対する化学放射線療法を行うに当たっては,遠隔転移の対策が必要であると思われた。 -
高齢者に対してS-1+CPT-11 療法が奏効した再発直腸癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description80 歳台の女性。下血と肛門痛を主訴に来院。下部直腸〜肛門管にかかる直腸癌と診断した。術前のCT で鼠径リンパ節転移を認めた。腹会陰式直腸切断術を施行し,根治切除可能であった。病理学的所見では,低分化型腺癌,pT2(MP),pN2であった。術後補助化学療法は希望しなかった。術後6 か月目のCT で傍大動脈リンパ節再発を認めた。十分なインフォームド・コンセントの下,S-1+CPT-11(IRIS)療法を施行することとした。レジメンは4 週を1 クールとし,常用量のS-1 を2 週投与2 週休薬,CPT-11 100 mg/m2 をday 1,15 に投与した。grade 2 の白血球・好中球減少とgrade 2 の下痢,grade 1の脱毛を認めた。PR の効果が得られ,現在10 クール終了時点でPR を維持している。外来率は100%。IRIS 療法は認容性が高く,簡便なレジメンで高齢者の切除不能・再発大腸癌に対する有望なレジメンである。今後,高齢者を対象とした第 II 相試験で安全性と有効性を確認する必要がある。 -
広汎な大動脈周囲リンパ節転移を伴うS 状結腸癌の長期生存の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description今回われわれは,広汎な大動脈周囲リンパ節転移を伴うS 状結腸癌術後8 年間無再発生存,9 年目の縦隔リンパ節再発に対する治癒切除という極めてまれな症例を経験したので報告する。患者は63 歳,男性。S 状結腸癌に対しS 状結腸切除術およびD3+216 番リンパ節郭清術を施行した(Cur B)。病理診断はtype 2,moderately differentiated adenocarcinoma,ss,ly2,v2,n4(total 30/64,216 番18/39),Stage IV であった。術後6 か月目の腹部CT にてリンパ節再発を疑われUFT 300mg/day を開始したが,その後のフォローアップCT で再発は否定的であったため,術後4 年目にUFT を中止した。術後8年間無再発生存で経過したが9 年目に縦隔リンパ節再発を認めたため,胸腔鏡下縦隔リンパ節摘出術を施行した。病理診断は中分化腺癌であり,S 状結腸癌の転移と考えられた。 -
全身状態不良(PS 3)大腸癌多発肝転移に対して肝動注+CPT-11 療法が著効した1 症例
34巻12号(2007);View Description Hide Description肝動注療法は,全身状態不良の症例に対しても行える局所化学療法の一つである。全身状態が不良であったが,肝動注にてPS 1 となり,その後CPT-11 による全身化学療法の併用が著効した1 例を経験したので報告する。症例は59 歳,男性。2006年4 月初旬に当院を受診。RS に全周性の大腸癌およびCT にて多発肝転移を認め,原発巣切除後全身化学療法の方針としたが,術後患者が化学療法を拒否。代替療法を受けた後,8 月末全身倦怠感を自覚し受診。CT にて肝転移巣の増大が著しく,肺転移,腹水もあり。PS 3 であり全身化学療法不可と判断し,肝動注療法を選択。3 回終了後,全身状態が改善したためCPT-11 の全身投与も併用。その後PR となり,12 か月を経てもPR を維持している。肝転移によりPS が悪化した症例に対して,まず肝動注にて全身状態を好転させることにより,全身化学療法を可能とさせることができると考えられた。 -
乳癌術後に局所感染を起こし敗血症を呈した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例: 77 歳,女性。2004 年11 月に右乳癌の診断にて胸筋温存乳房切除術および腋窩リンパ節郭清術(level I)を施行。術後,合併症もなく軽快していたが,術後10 日目夜に突然の39℃の発熱および大量の下痢が出現。保存的療法を施行するも軽快せず,11 日目朝には呼吸困難,尿量低下を認め,低酸素血症,脱水症によるショックの診断で救命処置を開始した。細菌培養結果では挿入していたJ-バックドレーンより,MRSA および緑膿菌を認め,抗生物質投与・エンドトキシン吸着および血液透析を行った。まとめ: 乳癌は体表手術の一つであり,比較的感染などを起こしても重篤になることは少ない。しかし,術後合併症であるseroma を予防するためや,皮弁の血流を維持する目的で閉鎖式ドレーンを挿入することが多い。それゆえに,一度,逆行性に感染を起こすと発見が遅れるばかりか,重篤になることもあり得る。 -
集学的治療とS-1 投与により良好なQOL が得られた進行乳癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は59 歳,女性。2 年前より右乳房腫瘤に気付くも放置していたが徐々に増大を認め,出血を認めたため当科を受診した。右乳房には直径8 cm の腫瘤を触知した。腫瘍は露出しており出血を認めた。また,腹部の皮膚にも転移と思われる発赤を認めた。超音波検査で右乳房全体を占める腫瘍を認めた。腋窩・胸骨傍・鎖骨上リンパ節は多数腫大していた。胸部,腹部,頭部には転移を認めなかった。針生検では乳頭腺管癌の診断であり,ER(−),PgR(−),HER2 score 0 であった。腹部皮膚の細胞診はClass V であった。右乳癌(Stage IV)の診断で,CEF 療法を6 クール施行したところ原発巣は縮小し,出血はコントロールされた。皮膚転移巣に対して放射線療法(20 Gy)を施行したところ消失した。続いてdocetaxel を開始するも継続困難であったため,S-1 の投与を1 年間継続した。経過中,重篤な副作用を認めず治療を中断することなく1 年半が経過しており,外来通院のみで良好なQOL が保たれている。 -
癌性胸膜炎合併非小細胞肺癌に対する気管支動脈内抗癌剤注入療法(BAI)の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description対象: 過去5 年間に癌性胸膜炎を有するhigh-risk の肺癌で,気管支動脈内抗癌剤注入療法(BAI)を行った6 例。方法: BAI は悪性胸水コントロール後CDDP(40〜50 mg/m2)+CPT-11(40〜50 mg/m2)の2 剤を注入し治療効果,副作用,緩和効果,予後を検討した。結果: 画像上効果は全例SD。grade 2 以上の副作用は食欲不振を1 例に認めた。緩和効果は胸部の有症状5 例中4 例に認めた。BAI 後の予後は3〜7 か月死亡5 例,24 か月生存1 例,死因は癌性胸膜炎+肺原発巣,肺転移巣悪化4 例,肺原発巣悪化1 例であった。悪性胸水再貯留は胸膜癒着術未施行の1 例に認めた。24 か月生存の1 例ではBAIで主病巣に高濃度の薬剤注入が可能であり,後に全身化学療法を追加した。考案: 癌性胸膜炎を有するhigh-risk 肺癌のBAIは胸部症状の改善に有効であり,胸膜癒着術,全身化学療法と併せて長期生存に寄与する可能性が示された。 -
血液透析中肺小細胞癌に対するCarboplatin+CPT-11 化学療法の経験
34巻12号(2007);View Description Hide Description慢性腎不全治療中に発見されたPS 不良の進展型肺小細胞癌に対し,carboplatin 100 mg/body(AUC 3.0,day 1),CPT-11 30 mg/m2(day 1,15)を点滴静注し,2 時間後透析を行うという方法で化学療法を施行,経時的に両薬剤の血中濃度を測定した。pharmacokinetic study の結果はtotal-platinum とCPT-11 の代謝産物のSN-38が高い体内貯留性を示した。副作用はgrade 3 の骨髄抑制が現れたが,臨床的に腫瘍マーカーの低下とADL 向上の効果を認めた。維持透析患者の進展型肺小細胞癌に対する化学療法の方法として本法は有用と判断したが,選択薬剤,至適投与量,透析施行時期については今後症例を集積して検討すべきと思われた。 -
穿孔した転移性小腸腫瘍の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Descriptionfree air を契機に診断された肺癌の小腸転移穿孔の1 症例を報告する。左肺腺癌の全身多発転移で入院中に腹痛が出現。画像検査でfree air を認め,消化管穿孔と診断した。保存的に治療したが改善がなく緊急腹腔鏡を行ったところ,空腸起始部に穿孔を認め小腸切除を行ったが,呼吸不全により術後5 日目に死亡した。切除標本の病理学的検索では中央に穿孔を伴う転移性の腫瘍を認め,肺癌の転移と診断された。肺癌の小腸転移は病状の進行例に多く,その予後は不良である。進行は胃癌症例に生じた急性腹症の診療に当たっては消化管転移の穿孔も念頭に置くべきである。 -
多発肝細胞癌に対する局所凝固療法と肝切除術の併用療法
34巻12号(2007);View Description Hide Description多発肝細胞癌では,主腫瘍に対する肝切除と衛星結節に対する局所凝固療法(LAT)の併施が必要な場合がある。腫瘍が複数個で画像上脈管浸襲陰性の開腹肝切除63 例について,肝切除単独群27 例と肝切除+LAT 群36 例の比較を行った。両群の年齢,性別,BMI,肝炎ウイルス,肝障害度,腫瘍個数,主腫瘍径,最大の衛星結節径に有意差を認めなかった。肝切除術式は肝切除単独群で葉切除以上11 例,亜区域〜区域切除12 例,部分切除4 例。肝切除+LAT 群は葉切除以上8 例,亜区域〜区域切除17 例,部分切除11 例であった。両群の術中出血量,輸血,無再発生存,累積生存に有意差を認めなかった。切除肝重量は,肝切除+LAT 群が有意に軽量で(p=0.003),手術時間は有意に短かった(p=0.009)。肝切除とLAT を併施することにより,多発肝細胞癌症例における肝切除の適応拡大が可能である。 -
肝細胞癌の経皮的治療後の腹腔内および穿刺経路播種に対する外科的切除の有効性
34巻12号(2007);View Description Hide Description肝細胞癌に対する経皮的肝生検や経皮的エタノール注入療法(PEIT)やマイクロターゼ,ラジオ波凝固療法(RFA)は広く普及しているが,これら経皮的治療のまれな合併症として,腫瘍の腹腔内播種(peritoneal seeding)や穿刺経路播種(needle- tract implantation)が報告されている。しかしながら,その治療法や成績に関しては一定の見解が得られていない。今回われわれは,肝細胞癌に対する経皮的治療後の腹腔内および穿刺経路播種に対し外科的切除を施行した4 例について報告する。4 例の平均年齢は65 歳,全例男性であった。経皮的治療内容は,PEIT 2 例,RFA 1 例,肝生検が1 例であった。再発形式は,腹腔内播種2 例,穿刺経路播種が2 例であった。全例に外科的切除を施行し,4 例中3 例は局所に再発を認めなかった。腹腔内播種の1 例に播種性再々発を認めたが,放射線治療により,腫瘍の増大を認めていない。以上により,腹腔内および穿刺経路播種に対する外科的切除は局所制御に有効な治療法と考えられた。 -
尾状葉肝細胞癌の多彩な転移に対し集学的治療が奏効した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description患者は61 歳,男性。検査成績ではHBs-Ag が陽性,ICG R 15 8%,PT 103%で,臨床病期は I であった。腫瘍は肝paracaval portion を基部としS6-S7 に及ぶ直径10 cm の肝外発育型の肝細胞癌で下大静脈前面を取り囲んでいた。後区域を含めた尾状葉全切除により腫瘍は完全に摘出されたが,術9 か月後にはS8 の残肝再発,15 か月後には右肺下葉転移,20 か月後には左肺転移を来し,再発に対して合計3 回の転移巣切除を行った。その後も再び血清AFP 値が漸増し,25 か月後のGaシンチで縦隔リンパ節再発と診断され,放射線治療により転移リンパ節は消失したが,治療開始46 か月後に脳転移を来し死亡した。尾状葉肝細胞癌の治療成績向上には,Ga シンチを用いた再発の部位診断と,外科的切除と放射線照射を組み込んだ集学的治療が重要と思われた。 -
Doxorubicin/IFN-β 併用化学療法と肝切除術により長期生存し得た右心房内腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は58 歳,男性。B 型肝炎,多量飲酒歴あり。2005 年4 月疲労感などを主訴に近医を受診し,精査にて進行肝細胞癌と診断され当院へ紹介。7 月精査加療目的で入院した。画像上,肝後区域の主腫瘍と肝部下大静脈から右心房内に至る腫瘍栓を認めた。入院時より胸部圧迫感や下腿浮腫などが出現,血清総ビリルビン値(T- Bil)は2.2 mg/dL と上昇し,腫瘍進展による肝不全徴候を認めた。doxorubicin/IFN-β 併用化学療法の施行により,画像上の抗腫瘍効果はNC であったものの,症状の改善とT-Bil の正常化を認めたことより,10 月肝拡大後区域切除,右心房内・下大静脈内腫瘍栓摘出術を施行した。術後経過は特に問題なく退院し,最終的に遠隔転移により癌死したが,初回治療より13 か月の長期生存を得た。以上よりdoxorubicin/IFN-β 併用化学療法は,進行肝細胞癌に対して集学的治療の有用な選択肢の一つとなり得ると思われた。 -
尾状葉単発肝細胞癌に対する肝切除術─尾状葉肝細胞癌は予後不良か─
34巻12号(2007);View Description Hide Descriptionはじめに: 尾状葉単発肝細胞癌と他部位の単発肝細胞癌の短期および長期成績を比較し,尾状葉という解剖学的位置が治療成績に与える影響を検討した。対象と方法: 1999 年から2005 年までに肝切除術を行った単発肝細胞癌97 例中,尾状葉単発肝細胞癌7 例(7.2%)と他部位の90 例を対象とした。結果: 合併症頻度は尾状葉57%,他部位20%と尾状葉で有意に高かった(p<0.05)。累積生存率は尾状葉群の3 年,5 年が各々83.3%,83.3%に対して,他部位が各々89%,85.4%であった(p=0.95)。累積無再発生存率は尾状葉群の3 年,5 年が各々51.4%,51.4%で,他部位群が各々59.4%,45.5%であった(p=0.89)。考察: 尾状葉単発肝細胞癌に対する肝切除術は,他部位と変わらない良好な長期成績が得られる。 -
肝細胞癌に合併した著明な肝動脈門脈シャントに対するシャント塞栓療法
34巻12号(2007);View Description Hide Description肝細胞癌(HCC)に伴う著明な肝動脈門脈シャント(A-P シャント)に対して,コイルによるシャント塞栓を行った3 症例を報告する。症例1: 56 歳,男性。門脈本幹に及ぶ腫瘍栓(Vp4)を有するHCC で,A-P シャントによる門脈圧亢進から,食道静脈瘤,コントロール不良な腹水,間欠的腹痛発作を認めた。症例2: 51 歳,男性。副腎転移,肺転移を伴う肝右葉のHCC で,A-P シャントによる食道静脈瘤,腹水貯留,腹痛を認めた。症例3: 68 歳,女性。自己免疫性肝炎の経過中に発症したHCC に対して肝切除術を行い,術後半年で肝内多発再発を来した。A-P シャントによって腫瘍の栄養動脈を同定できず,TACE は困難であった。コイルによるシャント塞栓後,症例1,2 では食道静脈瘤軽快,腹水減少,腹痛改善を認めた。症例3 では,シャント塞栓によって腫瘍の栄養血管を同定でき,TACE が可能となった。本法は,A-P シャントに伴う諸症状の緩和とHCC に対する治療の継続に有用である。 -
切除不能進行・再発肝細胞癌に対する経橈骨動脈的肝動脈塞栓術
34巻12号(2007);View Description Hide Description切除不能の進行・再発肝細胞癌(HCC)に対する橈骨動脈(transradial angiography: TRA)からの肝動脈塞栓術(TAE)の治療成績と有用性を検証した。TRA でTAE を施行したHCC 385 例(1999 年7 月〜2007 年3 月)の治療成績を評価するため,大腿動脈(TFA)より施行した150 例(1997 年4 月〜1999 年6 月)を対照としてTAE の完遂率,所要時間,治療成績,合併症を比較した。TAE の完遂率,所要時間に差を認めなかったが,TRA はマイクロカテーテルの併用頻度が低かった(p<0.0001)。TAE の効果をLipiodol の集積率と累積生存率で比較すると,2 群で差を認めなかった。合併症はTRA で穿刺部の疼痛が29 例(7.6%)みられ,TFA で出血性の合併症が多かった。TRA の利点は止血が容易で検査後の可動制限がないことであった。本法はTFA と比較して低侵襲で治療成績も同等であることから,今後普及する可能性のある治療法と考えられる。 -
胆道内腫瘍栓で再発した原発巣不明 Icteric Type Hepatocellular Carcinoma の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。2004 年11 月,総胆管内腫瘍栓による閉塞性黄疸で発症した原発巣不明肝細胞癌(HCC)に対し,肝外胆管切除,胆管内腫瘍栓摘出,胆管空腸吻合術を施行した。1 年1 か月後,腹部造影CT 検査にて挙上空腸内に5 cm 大の腫瘤を認めHCC 再発と診断した。腹部CT,超音波,腹部血管造影で肝内原発巣は不明であった。2006 年1 月,挙上空腸脚内腫瘍栓摘出術を施行した。2 か月後,再び空腸内腫瘍栓を認めた。肝門部S4 に10 mm 大の腫瘤像を認めたため,2 回にわたり肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行したところ著効しCR を得た。その後2007 年5 月まで再発の徴候を認めていない。これまで報告されている原発巣不明 icteric type HCC の再発形式は肝内転移のみで,再度原発巣不明の胆管内腫瘍栓で再発した症例の報告はない。本症例は原発巣および腫瘍栓に対するTACE が著効し,現在まで再発を認めていない。 -
One Shot 肝動注化学療法が著効を示した高度進行肝細胞癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は61 歳,男性。血液検査にてHCV 抗体陽性,AFP 49,560 ng/mL と高値を示した。精査にて下大静脈・門脈腫瘍栓(Vv4,Vp4)および多発性肺転移を伴う高度進行肝細胞癌と診断し,根治的治療は不可能と判断した。姑息的治療として肝腫瘍の破裂を防ぐ目的でTAE を予定した。しかし血管造影では右肝動脈がfeeding artery の一部となり,門脈右後区域枝が腫瘍栓にて完全閉塞しており,肝予備能(Child- Pugh C,ICG R 15 36%)からTAE を断念,epirubicin 40 mg のone shot 肝動注のみ施行した。その後外来にて経過観察となったが,特別な治療なしで全身状態は緩徐に改善した。肝動注から1 年10か月後の現在,AFP 15.4 ng/mL と良好な値を示し,すべての腫瘍はほぼ消失している。高度進行肝細胞癌に対し,one shot 肝動注化学療法が著効を示した1 例を経験したので報告した。その要因として抗癌剤感受性腫瘍であった可能性に加え,悪性腫瘍の自然退縮の関与が推測された。 -
肝内胆管癌に対する肝切除およびラジオ波焼灼療法による反復局所制御
34巻12号(2007);View Description Hide Description肝内胆管癌の肝内再発,再々発,再々々発,再々々々発に対して再切除・再々切除,ラジオ波焼灼療法,再々々切除を施行し,50 か月にわたり良好なquality of life(QOL)を保つことができた69 歳,男性の症例を経験した。本例は同時性重複癌として食道癌にも手術を施行し,無再発で経過している。 -
S-1 不応再発胃癌にCPT-11+CDDP 併用療法が著効した3 症例
34巻12号(2007);View Description Hide DescriptionS-1 不応再発胃癌の二次療法として,irinotecan(CPT-11 60 mg/m2)+cisplatin(CDDP 30 mg/m2)併用療法(2 週間隔投与)を施行し著効した3 症例を報告する。症例1: 3 型胃噴門部癌にて胃全摘脾合併切除術を施行(T3,N2,H0,P0,CY0,por 1,Stage IIIB)。術後4 か月で腹部CT 検査にて大動脈周囲リンパ節の再発を認め,S-1 を開始したがPD となり,CPT-11+CDDP 療法を11 コース施行してCRin が得られた。症例2: 4 型胃噴門部癌にて胃全摘脾合併切除,胆嚢摘出術を施行(T3,N3,H0,P0,CY1,tub 1,Stage IV)。術後6 週後よりS-1 を開始したが,腹壁再発を認め中止し,CPT-11+CDDP 併用療法を24 コース施行後にCR となった。症例3: 3 型幽門前庭部癌にて幽門側胃切除術,胆嚢摘出術を施行した(T2,N1,H0,P0,CY0,tub 2,Stage II)。術後10 か月に腹部CT 検査にて大動脈周囲リンパ節の腫大を認め,S-1+paclitaxel(PTX)併用療法を2 コース施行したがPD となり,CPT-11+CDDP 併用療法を8 コース施行しCR となった。 -
S-1+CPT-11 併用療法が著効した非切除胃癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は70 歳,女性。2004 年9 月に3 型胃癌に対し,腹腔鏡下進行度診断術を施行した。腹膜播種,腹腔洗浄細胞診陽性でT3N2M0H0P1CY1,stage IV と診断し,S-1+CPT-11 併用療法を開始した。2 コース終了後の腹部CT 検査で原発巣の縮小率は50%であり,PR と判定した。14 コース終了後の腹部CT 検査でCR と判定した。上部消化管内視鏡を施行したところCR と判断し,生検結果もGroup I であった。全一次治療中のPS は0 であった。有害事象として,grade 3 の好中球減少,grade 2 の下痢,grade 1 の全身倦怠感を認めた。しかし,22 コース終了後に左鎖骨上リンパ節転移の増大と腹腔内リンパ節転移の増大を認めたため,PD と判定した。TTP は827 日で,外来治療率は99%であった。二次治療としてpaclitaxel 単剤治療を開始したが2 コース終了後にPD と判定し,2007 年4 月に原病死した。 -
三次治療のS-1+CPT-11 併用療法でCR となったS-1 治療抵抗性の胃癌術後多発性肺転移の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例: 78 歳,女性。胃癌に対し2003 年3 月に根治手術を施行した。2004 年10 月に多発性肺転移を認め,一次治療,S-1(80 mg/m2,4 週投薬2 週休薬)を開始したが,3 コース後にPD 判定で終了した。2005 年4 月より二次治療,paclitaxel(80 mg/ m2,days 1,8,15/28 days)を開始し6 月にPR となったが,9 月にPD となり同月より三次治療,S-1+CPT-11(S-1: 80 mg/m2,day 1〜21,CPT-11: 80 mg/m2,days1,15/35 days)を開始した。grade 2 以上の有害事象を認めず,10コース後の2006 年9 月にCR となった。患者の希望によりその後化学療法を中止したが,2007 年7 月現在無再発生存中である。結語: 高齢者の胃癌に対して,三次治療のS-1+CPT-11 併用療法により多発性肺転移がCR になった症例を経験したので報告した。 -
長期間(3 年半)にわたり胃癌の形態変化を観察し得た1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。主訴は胃部不快感。全身倦怠感にて当院内科受診。上部消化管内視鏡検査にて胃角部に活動性潰瘍を認めた。抗潰瘍薬投与1 か月後,潰瘍に治癒傾向はあるものの,無構造な局面と不整な隆起局面が存在。生検組織から中分化型管状腺癌が認められた。患者側の社会的背景も手伝って手術拒否。途中からS-1 内服開始。その後半年ごとに経過観察実施。外来担当医による精力的な説得も虚しく3 年が経過。当初0-IIc が浸潤潰瘍型に変化し,初回診断から3 年半経過し手術は実施されたが,T3(SE)H0P1M0,Stage IV。S-1 は胃癌治療における第一選択となる薬剤ではあるが,早期胃癌の状況下での安易な選択は厳に戒めなければならない。また,経過観察中に効果なき場合は他の薬剤に積極的に切り替えることも必要である。本症例のような臨床経過にて胃癌の形態変化を長期間観察し得たのはまれと考えられ,報告する。 -
五次治療にてPR 継続中の進行胃癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は48 歳,男性。2005 年3 月残胃全摘術後,腹腔洗浄細胞診陽性に対して一次治療としてS-1 を開始した。2 コース後,頸部リンパ節転移が出現し,二次治療としてpaclitaxel 単剤治療を施行した。8 コース後,Virchow リンパ節転移が出現し,三次治療としてS-1/CPT-11 併用療法,四次治療としてDOC/CPT-11 併用療法を施行したがPD となった。2006 年11 月より五次治療としてCPT-11/CDDP 併用療法(CPT-11 60 mg/m2,CDDP 30 mg/m2,day 1,15/28 days)を開始した。2 コース終了後PR と判定し,2007 年6 月現在もPR を継続している。本療法中,血液毒性は認めず,grade 2 以上の非血液毒性も認めなかった。本療法は複数の薬剤による治療歴のある進行・再発胃癌症例に対しても有用である可能性が示唆された。 -
S-1+昇圧肝動注療法が著効した胃癌肝転移の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description今回われわれは,胃癌肝転移に対してS-1 に加えて昇圧肝動注療法が著効した症例を経験したので報告する。症例は50 歳,男性。胃癌に対して幽門側胃切除,D2 を施行された。病期はpT2(SS)N1H0P0M0CY0,pStage II であった。術後,補助化学療法としてS-1(100 mg/日)の内服を3 コース施行後のCT 検査で肝S6 に約2 cm のSOL が認められ,肝転移と診断された。その他に明らかな再発,転移は認められず, S-1 に加えてangiotensin II とmitomycin C を用いた昇圧肝動注療法が開始された。3 コース後のCT 検査で肝転移巣は完全消失しCR と判定された。肝転移の出現から1 年経過した現在もCRを維持し,他病変の出現も認められていない。 -
胃癌・同時性多発肝転移に肝動注療法を行い両腫瘍の縮小を認めた1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は68 歳,女性。胃癌・同時性多発肝転移に対し手術は行わず,左右肝動脈にCPT-11 とMMC にDSM を加えた肝動脈塞栓療法を行い,その後5-FU とCDDP の肝動注療法を施行した。動注療法後,胃癌と肝転移の著明な縮小と腫瘍マーカーの著明な減少を認めPR と診断した。5-FU とCDDP を使用した動注療法を13 回行った時点で,腫瘍マーカーの再上昇を認めたため再びCPT-11・MMC・DSM を使用した肝動注塞栓療法を行い,その後,5-FU とCDDP の動注療法を14回施行した。治療開始後15 か月経過しているが,腫瘍マーカーの軽度の変動は認めるもののPR は継続中で,外来化学療法を継続中である。 -
長期生存を得ている胃癌術後肝転移症例の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。1999 年8 月に胃癌にて幽門側胃切除術,D2 郭清,Billroth I 法再建術を施行した。2002 年11 月に残胃癌(tub 2)および肝転移を認めたため残胃全摘術,肝部分切除術を施行した。病理所見より残胃および肝転移は初回胃癌の異時性転移と考えられた。2006 年3 月肝S7 に3 cm 大の新規の肝転移巣を認めたため,4 月よりS-1(day 1〜21)+CDDP 20 mg/m2(day 1,8,15)q5w を開始した。現在11 コースまで施行しているが,新規肝転移の出現はなくSD 継続中である。 -
肝転移による黄疸を伴う進行胃癌に対し化学療法が奏効した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description54 歳,男性。タール便を主訴に2006 年10 月に他院に入院し,精査の結果胃体中部から幽門前庭部にかけての3 型進行胃癌,多発リンパ節転移,癌性腹膜炎,多発肝転移とそれに伴う黄疸(T-Bil 3.3 mg/dL)を認めた。10 月27 日当院に紹介された。来院時,performance status(PS)4 であった。全身管理を行いながら10 月27 日一次治療としてS-1,CPT-11併用療法を開始した。1 コース終了時,黄疸は消失しPS 2 へ改善した。2 コース目を施行し退院となった。しかし,2007 年1 月4 日熱発したため再入院となり,癌性腹膜炎と原発巣の増悪を認めた。再度全身管理を行いながら二次治療としてpaclitaxel 単剤療法を開始した。2 コース終了時には腹水消失,肝転移・リンパ節転移の縮小を認めた。退院し,2007 年6 月現在,外来にて化学療法を継続している。 -
S-1+CDDP 療法によりDIC から離脱し得た胃癌播種性骨髄癌症の2 例
34巻12号(2007);View Description Hide DescriptionDIC を伴う胃癌播種性骨髄癌症2 例に対し,S-1+CDDP 療法を行った。2 例ともにDIC から離脱し,約1 年の予後を得た。S-1+CDDP 療法は胃癌播種性骨髄癌症に有効な治療法と考えられ,DIC を伴うような重篤な病状であっても積極的な化学療法を行う意義はあると思われた。 -
胃癌術後腹壁転移に対して化学療法を施行した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description胃癌の腹壁転移はまれである,胃癌術後の多発腹壁転移に対して化学療法を施行した症例を報告する。症例は68 歳,女性。2003 年2 月に幽門側胃切除術施行。腫瘍は3 型・低分化型腺癌,pT3(se,INF γ,ly1,v0),pN1,sH0,sP0,pCY0 ; fStage IIIA であった。術後S-1 の内服を半年間続けた。2005 年7 月になり前腹壁に発赤を伴う多発結節が出現,生検にて胃癌の転移と診断。CT にて腫瘤は腹壁内の結節で,他の再発巣は認めなかった。同年8 月よりIRIS(S-1: 3 週内服2 週休薬/CPT-11: day 1,15 に点滴静注)による全身化学療法を2006 年11 月まで16 か月間・14 コース施行した。腹壁の腫瘤は,正中創・側腹部・右前胸部・会陰部などに発現したが,他の遠隔転移は認めなかった。同年末より急速に腹壁の腫瘤が増大し,CT にて癌性腹膜炎と診断。paclitaxel のweekly 投与に切り替えたが,2007 年5 月に死亡した。 -
十二指腸癌からの持続出血に対する経カテーテル的動脈塞栓術が奏効した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は70 歳台,女性。既往歴としてS 状結腸癌に対するS 状結腸切除術,肝転移に対する肝左葉外側区域切除術および肝動注カテーテル留置術,肺転移に対する右肺S1 区域切除術,肝転移に対するラジオ波焼灼術がある。経過中発熱と貧血を認め,上部消化管内視鏡にて十二指腸下降脚に出血を伴う隆起性病変を認め,生検にて十二指腸腺癌と診断された。肝膿瘍の既往があり,膵頭十二指腸切除術は不能で持続出血に対する内視鏡的止血術にて制御困難なため,前上膵十二指腸動脈からの経カテーテル的動脈塞栓術施行後,止血に成功した。塞栓術後外来化学療法(mFOLFOX6)にて腫瘍は縮小し,現在も経過観察中である。経カテーテル的動脈塞栓術は,手術不能な十二指腸癌からの持続出血に対する有用な治療法の一つと考えられた。 -
十二指腸原発GIST 術後にImatinib Mesylate(Glivec)耐性の大網再発腫瘍を認め外科切除し得た1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description緒言: われわれは十二指腸原発GIST 術後の多発性肝転移に対しimatinib mesylate(Glivec)が著効するも,その後巨大な腹膜再発を認め,これを外科切除し得た1 例を経験したので報告する。症例: 41 歳,男性。2004 年十二指腸原発GIST に対して膵頭十二指腸切除術を施行された。術後3 か月目に多発性肝転移を認めた。imatinib(400 mg/body/day)の投与にてCT 上転移巣は完全に消失し,治療効果はCR と判断された。その後 imatinib 投与を継続し経過観察されていた。2006 年6 月ごろより右側腹部に手拳大の腫瘤を生じ,急激に増大した。諸検査にてGIST 腹膜再発と考えられた。8 月,GIST 腹膜再発腫瘍切除術を施行。再発腫瘍は小児頭大で大網由来と考えられた。結語: imatinib による初期治療が有効であっても,その後耐性を生じる例が多数報告されている。imatinib 無効例におけるsecond-line 治療は新規分子標的薬,RF,TAE などが組み合わされているがその効果は十分ではない。本症例のように,imatinib 耐性を生じた巨大な再発GIST が切除可能である場合もあり,積極的な外科療法も治療選択の一つとして念頭に置くべきであると考えられた。 -
化学放射線療法(DOC+RT)によりClinical CR が得られた耐術不能噴門部進行胃癌の1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は76 歳,男性。2003 年6 月体重減少と嚥下時違和感を主訴に来院し,上部消化管内視鏡検査にて食道胃接合部直下胃噴門部の早期癌 0-IIc,tub 1 と診断された。未破裂脳動脈瘤,特発性心室細動を合併していたため耐術不能と判断し,定期的に内視鏡にて経過観察を行うこととした。2006 年8 月嚥下時違和感が増悪,上部消化管内視鏡検査にて噴門部に固有筋層への浸潤が疑われる2 型病変を認めた。11 月より化学放射線療法(weekly DOC div 20 mg/m2×5 weeks,RT 1.8 Gy/day×5 days/week×5 weeks)を施行した。治療は完遂できたが,grade 3 の下痢,grade 2 の腎機能障害および食道カンジダ症を認めた。治療終了直後の上部内視鏡検査では腫瘍の周堤は平低化していた。治療後1 か月の上部消化管内視鏡検査では腫瘍は消失し,粘膜面に軽度の発赤を残すのみとなった。さらに,治療後2 か月の上部消化管内視鏡検査においても同様に腫瘍は消失していた。ワーファリン服用中のため生検は施行しなかったが,clinical CR と判定し経過観察中である。胃癌に対してDOC 併用化学放射線療法は有効な治療手段になり得る可能性が示唆された。 -
バイパス術と化学療法にて長期生存中の進行胃癌の3 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例1: 2004 年4 月に手術(T4(膵),N2,P0,CY0)。S-1+DOC(40 mg/m2/day 1: 3 w)を23 コース。second-line としてCPT-11 を10 コース施行。病変はPD であるが生存中(36 か月)。症例2: 2004 年11 月に手術(T4(膵),N3,P0,CY0)。S-1 を2 コース,PTX(120 mg/m2/day 1: 3 w)を9 コース,続いてCPT-11(125 mg/m2/day 1: 2 w)を15コース施行。PS 低下にて現在は化学療法なし(29 か月)。症例3: 2005年8月に腹腔鏡検査(st-lap)でCY1。S-1+PTX(120 mg/m2/day 1: 3 w)を5 コース施行。second-look st-lap はCY0 であったので2005 年12 月に手術。P1,T4(膵)でBP 術施行。S-1+PTX 継続。18 コース施行後,現在CPT-11 によるsecond-line 治療中(20 か月)。まとめ: BP 術とS-1 を含む化学療法にて長期生存中の症例を報告した。BP 術では,経口摂取の回復によるQOL の向上とS-1 を用いた化学療法の早期の開始が重要である。 -
早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection: ESD)の短期治療成績
34巻12号(2007);View Description Hide Description早期胃癌に対するESD の短期治療成績を腫瘍径20 mm を基準に検討した。対象はESD を施行した早期胃癌54 例,56病変で,腫瘍径21 mm 以上の17 病変(拡大群),20 mm 以下39 病変(適応群)に大別した。両群について背景因子と短期治療成績を検討した。背景因子に差を認めなかったが拡大群の施術時間は長時間で術後在院日数は長期間であった。一方,一括切除率,合併症,根治度に差はなく今後手技の向上により,腫瘍径21 mm 以上の症例に対してもESD の適応が可能と考えられ,その治療成績向上にいっそう努力したい。 -
外科的胃粘膜下層切除術の検討
34巻12号(2007);View Description Hide Description胃粘膜内癌,特にEMR困難例を中心に外科的粘膜下層切除術(surgical submucosal resection: SSR)を積極的に行ってきた。今回,SSR 症例 212 例について手術成績,再発例について検討した。結果: 平均手術時間93±36 分,平均術後在院日数11±4 日。摘出標本の深達度は深達度M 155 例,SM 55 例,PM 2 例であった。212 例中14 例(6.6%)が断端陽性と判定され,6 例が追加治療,7 例が経過観察中。1 例がSSR 後4 年目に肝,リンパ節再発にて原病死となった。術後平均観察期間5.7±3.1 年で,断端陰性例からの再発例は認めないが,10 例に異時性の発生,3 例に同時性多発の見逃しを認め,それぞれ追加治療された。結語: SSR は内視鏡治療と外科的胃切除との間を埋めるminimally invasive surgery としての有用な選択肢の一つである。 -
局所停留性,徐放性を付与した新剤形Cisplatin
34巻12号(2007);View Description Hide Description水溶性cisplatin(CDDP)と5-fluorouracil(5-FU)を,DDS の概念に基づいて剤形変更して局所停留能と薬物放出動態を基礎的に調べ,薬物放出メカニズムを検討した。担体は,2 種類の70%脱アセチル化キチンを使用,停留能はヒト大腸粘膜との間に生じる接着力をex vivo で測定,評価した。薬物放出動態はin vitro で検討した。新剤形はいずれも粘性流動体に調製した。接着力は37℃では25℃のそれに比較してより強力であった。CDDP の放出速度は担体によって異なり,5-FU は初期放出が顕著であった。新剤形の薬物放出速度は,剤形の微細構造と担体・薬物間の結合力に規定されることがうかがわれた。 -
鼠径部難治性リンパ漏に対しリンパ管造影にて治癒した1 例
34巻12号(2007);View Description Hide Description症例は80 歳台,女性。2002 年5 月,肛門管癌に対し腹会陰式直腸切断術,両側側方郭清・鼠径リンパ節摘出術を施行。病理組織診断は por, a2, n3, P0, H3,stage IV,cur C で両側側方リンパ節と鼠径リンパ節に多数の転移を認めた。術後肝動注(5-FU 1,250 mg/body,15 回)を施行し,肝転移巣はCR となった。2003年6月,左鼠径リンパ節腫大(2 cm 大)が出現し,CEA も上昇(79.5 ng/mL)してきた。精査の結果,他部位に再発を認めず,7 月左鼠径リンパ節摘出術を施行。術後,ドレーンより1 日約150 mL の排液を認めた。圧迫などの保存的治療を行ったが改善を認めず,術後48 日目にリンパ管造影を施行。左足背のリンパ管よりLipiodol を注入すると鼠径部に向かう3 本のリンパ管を認め,鼠径部にて多量の漏出を認めた。施行後7日でリンパ漏は消失した。施行後,下肢の浮腫が出現したが軽微であった。難治性リンパ漏に対する Lipiodol によるリンパ管造影は,漏出部位同定に有用であり治療法にもなり得る。
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