Volume 34,
Issue 13,
2007
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総説
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癌と化学療法 34巻13号, 2167-2174 (2007);
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犬が飼い主の皮膚黒色腫のニオイをしきりに嗅いだという報告に触発されて,犬によるがん患者の呼気や尿の識別,さらにがんから発生するニオイ物質の研究へと発展し,このがんのニオイ物質である揮発性有機化合物(VOC)を感知する機器が完成されつつある。今後,良質で手軽なこの種のニオイ感知器が,速やかに使用できるようになることが望まれる。
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特集
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血液リンパ系腫瘍治療の進歩
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癌と化学療法 34巻13号, 2175-2179 (2007);
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急性骨髄性白血病(AML)の病態は多様であり,分子生物学的な検索によりその病態が解明されはじめている。予後良好な染色体をもつAML においてKIT 遺伝子異常は予後不良因子であることが知られている。染色体核型が正常なAMLにおいても,FLT3遺伝子の内部繰り返し重複(FLT3-ITD),NPM1遺伝子異常,CEBPA 遺伝子異常やMLL遺伝子部分重複などの多数の遺伝子異常が見いだされている。なかでもFLT3-ITD は予後不良因子として重要である。AML の分子病態の解明は分子標的薬の開発を可能にし,多くのAML に対する新規薬剤が登場してきた。このなかにはCD33 抗体結合抗腫瘍性抗生物質(gemtuzumab ozogamicin: GO),FLT3 阻害薬およびfarnesyl transferase 阻害剤などが含まれている。これらの薬剤は小規模な研究で有望であれば,大規模なphaseIII 試験により完全寛解導入と生存の延長に対して有用か否かが評価される。分子標的薬相互を併用することや既存の化学療法と組み合わせることで効果が増強される可能性がある。GO はこれらの薬剤のなかで最も期待されるものであり,大規模な無作為比較試験がいくつかの共同研究グループで行われており,寛解導入率と生存率を指標として評価されるであろう。近い将来にはAML は分子病態に基づいて分類され,治療されるであろう。
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癌と化学療法 34巻13号, 2180-2184 (2007);
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急性リンパ性白血病(ALL)の治療成績は,小児では長期生存が約80%に達しているが,成人ALLの長期生存は30%程度にとどまっている。再発が治療成績の低下に影響を及ぼし,70〜90%の寛解率が得られているにもかかわらず,満足な成績が得られていない。近年,分子標的治療薬を含め新規薬剤の開発が進み,特にBCR- ABL チロシンキナーゼ選択的阻害剤であるimatinib mesylate(IMA)が登場してから,最も予後不良とされてきたフィラデルフィア染色体(Ph)陽性ALL に対する治療法は大きく変わり,化学療法との併用により予後の改善が期待されている。しかし,IMAに抵抗性となり,再発する可能性を含めて長期的予後については不明であり,ドナーが存在する症例では造血幹細胞移植が選択される。Ph 陰性ALL に関して若年者のALL の場合には,小児で用いられているプロトコールにより治療効果の改善が認められていることから,強力な化学療法で長期生存が期待され,造血幹細胞移植は必ずしも必要ではなくなってきている。年長者のALL 症例に対しては,新規薬剤の開発を含めて,さらなる治療法の発展が期待される。
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癌と化学療法 34巻13号, 2185-2190 (2007);
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慢性骨髄性白血病に対するABLチロシンキナーゼ阻害薬imatinib治療において長期(5 年)成績,耐性機序,効果判定基準などの情報が蓄積され,日常診療において活用されるようになった。imatinib の至適用量,投与期間などについては今後の課題として残されている。さらにimatinib 耐性症例に対しても有効性を示す次世代チロシンキナーゼ阻害薬の開発も進み,一部では比較試験も行われ,imatinib 耐性時にはその変異の程度に応じた選択をする時代も近づいている。一方,造血幹細胞移植の適用については,imatinib 前治療はTRM には影響を与えないという報告が多いが,長期生存に与える影響については未解決の点も残る。
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癌と化学療法 34巻13号, 2191-2199 (2007);
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悪性リンパ腫の多くを占めるホジキンリンパ腫(HL),ろ胞性リンパ腫(FL),びまん性リンパ腫(DLBCL)に対しては,国際的な予後予測因子を考慮しつつ,最良の治療法を選択することが重要である。HL の治療においては,ABVD 療法を標準的治療として,治癒の可能性を追求しつつ,心毒性や二次癌などの晩期毒性を最小限に抑える二つのゴールをめざすことが必要であり,HL の進行度と国際予後因子に照らして至適な治療法が選ばれる。FL は経過は緩徐であるが,病期が限局している患者を除き,化学療法や放射線療法で治癒を得ることは難しい。しかし,B 細胞を標的とした抗CD20 モノクローナル抗体rituximab(RIT)の単独療法および抗がん薬との併用療法で,高い有効性が示され,今後はFL の治療成績の向上が期待できる。DLBCL の初期治療では,従来の標準的治療法のCHOP療法とRIT+CHOPの併用療法(R-CHOP療法)の比較試験の結果,R-CHOP 療法のより高い有用性が示され,R-CHOP 療法が標準的治療法となりつつある。CHOP 療法では予後不良とされた分子マーカー(BCL-2やBCL-6 など)のなかには,R-CHOP療法では予後に影響を与えないマーカーも認められる。予後不良の若年者DLBCL においては,より強度の高い併用化学療法(EPOCH)とRITの併用療法が有効である可能性が示唆されている。
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癌と化学療法 34巻13号, 2200-2216 (2007);
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多発性骨髄腫(MM)は2007 年時点では,治癒困難な造血器腫瘍に位置付けられている。治療対象となるMM に対する多剤併用療法は平均生存期間30 か月程度,主として若年者に施行されている自家末梢血幹細胞移植は平均生存期間55か月程度,移植片対骨髄腫効果が期待される同種移植は,骨髄非壊滅型前処置を用いても高率の移植関連死亡,晩期再発,GVHD等の諸問題のため,標準的治療になり得ていない。MMの難治性は,MMをtotal cell kill に至るほどの効果を示す薬剤がいまだ開発されていないことによることが根本である。この限界を突破するために,MM 細胞の細胞遺伝学的多様性や,造血間質との相互作用を含めた増殖様式の多様性,加えて合併症の多様性などが解析され,従来の治療とは異なった視点での新規治療が多数開発されるに至っている。すでに臨床で用いられているプロテアソーム阻害剤やサリドマイドの有用性は,直接的な抗骨髄腫細胞効果に加え,骨髄間質にも影響することが,不応性MMに対する有効性の機序の一つと考えられている。本稿では2007年時点でのMMに対する新規薬剤をreview させていただくこととする。
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原著
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癌と化学療法 34巻13号, 2237-2240 (2007);
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口腔扁平上皮癌15 例に対し,neo-adjuvant chemotherapy(NAC)としてテガフール・ギメラシル・オテラシル配合剤(S-1)とdocetaxel(DOC)併用療法を施行し,その治療効果および有害事象について検討した。対象症例は男性11 例,女性4 例の計15 例で,平均年齢は65.9歳であった。薬剤の投与法は,S-1 80 mg/body/day を14 日間連日経口投与した後,DOC を60 mg/m2で点滴静注した。臨床効果判定は,3 週間後に日本頭頸部癌学会「頭頸部癌取扱い規約(改訂第3 版)」の治療効果判定基準に準じて行い,CR 7 例,PR 2 例,NC 4 例,PD 2 例で奏効率は60%であった。病理組織学的効果判定では,大星,下里らの分類で,Grade㈵ 3 例,GradeII a 3 例,GradeII b 4 例,GradeIII 1 例,Grade IV b 3 例,Grade IV c 1例であった。grade 3 以上の有害事象を認めた症例は,白血球減少grade 3: 10 例とgrade 4: 2 例,食欲不振grade 3: 1 例,口内炎grade 3: 1 例であった。以上より,S-1とDOC 併用療法は口腔扁平上皮癌に対して比較的高い奏効率が期待でき,NACとして有用と考えられた。
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癌と化学療法 34巻13号, 2241-2244 (2007);
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目的:現在,胃癌の術前化学療法のベースとして経口剤であるS-1 が広く使用されているが,高度の幽門狭窄により経口投与が不可能な患者も一定の割合で存在する。今回それらの症例に対し,paclitaxel(PTX)+low-dose FP(5-FU+CDDP)による術前化学療法を施行してきたのでその治療成績を検討した。対象・方法:対象は幽門狭窄を伴う高度進行胃癌13 例で,治療法はPTX 40 mg/m2をday 1,8 にCDDP 6.5 mg/m2,5-FU 350 mg/m2をday 1〜8 に静脈内投与,2 週間休薬を1 コースとし,原則として2 コース施行後に手術を行った。成績:化学療法回数は中央値2(1〜3)回,男女比10: 3,年齢中央値64(49〜77)歳,化学療法効果はPR 5 例(38.4%),NC 7 例(53.8%),PD 1 例(7.7%)であった。全例に胃切除が施行され,治癒切除率は53.8%であった。化学療法前に診断的腹腔鏡検査を施行した7 例中,6 例にCY1 を認めていたが,4 例(66.6%)で陰性化していた。有害事象の出現は85%に認めたが,grade 3 以上のものは好中球減少2 例(15.4%)のみであった。遠隔成績は観察期間中央値346(211〜607)日,MST 405 日,1 年生存率55.6%であった。CYが陰性化した4 例中3 例は生存中であるが,1 例は脳転移再発で死亡した。まとめ: PTX+low-dose FP による術前化学療法は重篤な有害事象が少なく,CY 陰性化が高率にみられ,S-1投与不能症例に対する術前化学療法として期待できる治療法である。
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癌と化学療法 34巻13号, 2245-2248 (2007);
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目的: 進行・再発胃癌症例に対するsecondline chemotherapyとしてのCPT-11+CDDP併用療法について検討した。方法:対象は2001 年4 月から2006 年3 月までに5-FU 系抗癌剤投薬後のsecondline chemotherapy としてCPT-11+CDDP 療法を施行した進行・再発胃癌症例の22 例である。化学療法はCPT-11 80 mg/m2,CDDP 25 mg/m2隔週投与を基本として投薬し,初回以外は外来投与を原則とした。結果:奏効率,毒性,生存について検討した。奏効率は36.4%(CR 1例,PR 7 例)で,14例はSD,PD であった。全症例のTTP は5.3 か月,MSTは10.6 か月であった。Grade 3 以上の有害事象は白血球減少4 例(18.2%),血小板減少1 例(4.5%)で全例すぐに改善した。本療法は 5-FU 系抗癌剤抵抗性進行・再発胃癌症例に対するsecond line chemotherapy として有効であるものと考えた。結論: second line chemotherapyとしてbi-weekly CPT-11+CDDP 療法は有効で,5-FU系抗癌剤投薬後のsecond line chemotherapyとして考慮すべきと考えた。
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癌と化学療法 34巻13号, 2249-2253 (2007);
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フッ化ピリミジン(FU)系薬剤耐性の転移性結腸直腸癌に対するirinotecan hydrochloride(CPT-11),5-fluorouracil(5-FU),l-leucovorin(l-LV)併用療法(FOLFIRI)の有用性をretrospectiveに検討した。当院で2003年10月〜2005年11月までに治療を開始した全20例を対象とした。年齢中央値67(38〜75)歳,男性/女性: 12/8 例,PS 0/1: 12/8 例,結腸/直腸: 12/8 例,転移部位:リンパ節13例,肝12例,肺10例,腹膜4例(腹水2例)などであった。9例にはCPT-11 150mg/m2,l-LV 200 mg/m2を同時にそれぞれ90 分,120 分で点滴静注し,5-FU 400 mg/m2を急速静注後,5-FU 2,400 mg/m2を46 時間で持続点滴静注し,残りの11 例には全80%用量で投与された。2週を1 コースとして治療を行った。投与コース数中央値は7(1〜15)コースであった。抗腫瘍効果の評価(response evaluation criteria in solid tumors)が可能であった18例で,奏効率は28%,SD 以上の症例は61%であった。FOLFIRI投与中におけるgrade 3 以上の有害事象は,好中球減少が50%と最も多かった。非血液毒性はほとんどがgrade 2 以下であった。生存期間中央値は11 か月,1 年生存率は34%であった。FU 系薬剤抵抗性の転移性結腸直腸癌に対するFOLFIRI 治療は実地臨床において腫瘍進行の抑制をもたらし有用と考えられた。
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癌と化学療法 34巻13号, 2255-2258 (2007);
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がん性疼痛治療におけるオキシコドンの有用性はますます増してきているが,本邦においてはオキシコドン単一成分での注射薬は存在しない。現在,保険適応されている複方オキシコドン注射薬は複合剤であり,古書によればオキシコドンの鎮痛作用を増強する目的で塩酸ヒドロコタルニンが添加されたと記載されている。しかし,その作用についてはいまだ不明な部分も多く,オキシコドン徐放錠との変換比に関する報告はほとんど見当たらない。そこで今回,オキシコドン徐放錠との変換比を算出する目的で,オキシコドン製剤を使用し投与経路の変更を行ったがん性疼痛患者18 名について,変更前後における疼痛の変化と有害事象を調査した。検討の結果,変更前後で痛みの程度が同等となった投与量比は0.71±0.12(mean±SD)であり,変更前後における有害事象の変化は特に認められなかった。
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癌と化学療法 34巻13号, 2259-2262 (2007);
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産業医科大学病院では2005 年4 月に化学療法センターを開設した。過去1 年間の調剤件数は2,590 回であった。また,実際のレジメンごとの点滴時間と患者が望む外来化学療法の時間はほぼ一致していた。インシデントは3 件(0.12%)でアクシデントは未発生であった。薬剤師による疑義照会は74 件(2.6%),看護師による問い合わせは286 件(11.0%)であり,漸減していた。また,薬剤師による疑義照会の内容は看護師の問い合わせと異なっていた。専属スタッフによる疑義照会は他科に比べ少なかった。安全な外来化学療法体系の確立に向けて,セーフティー・マネジメントによるシステム構築は急務である。
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癌と化学療法 34巻13号, 2263-2266 (2007);
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目的: 在宅肝動注化学療法のインシデント発生状況を調査し,原因と考えられる点に改善を加え評価した。方法:サーベイランスから,5日間の持続肝動注化学療法用インフューザーポンプ装着患者における, 1.在宅インフューザーポンプ回路側孔のディスコネクションによる逆血, 2.ヒューバー針の自然抜去による出血,が改善可能なインシデントとしてあげられた。 1.に対しては,側孔の逸脱予防のために接続部にテガダームによる固定を追加した。また, 2.に対しては,シルキーポア(10×13 cm,吸収部4×6.5 cm)+フィクソムルストレッチによる2 方固定方法から全面固定型方法のドレッシング材IV3000(9×12 cm)+フィクソムルストレッチによる3 方固定に変更,さらに皮下脂肪の状態に合わせヒューバー針を22 G×3/4 in から20 G×1 inに変更した。結果・考察: 改善後に実施した治療72件に,インシデントの発生を認めていない。効果的であった点として,テガダームの接続部固定による回路のディスコネクション予防,および全面固定型のドレッシング材に変更したことによるヒューバー針固定の安定性の向上が考えられた。サーベイランス結果より今回の改善は有効と評価できる。今後,件数を重ねて評価し,さらなる改良を加えていきたい。
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癌と化学療法 34巻13号, 2267-2270 (2007);
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がん疼痛に対する薬物療法の主役は医療用麻薬である。近年,フェンタニル貼付剤,オキシコドン徐放錠が臨床使用できるようになり医療用麻薬の選択肢が増した。一方,医療機関側の緩和ケアに対する体制は十分であるとはいい難く,疼痛をはじめとする症状マネージメントは,がんの治療に携わる“治療医”が行わざるを得ないのが実状である。そこで,がん患者およびその家族を含む一般人500 名を対象に医療用麻薬に対する意識調査を実施した。その結果,がん疼痛に対してモルヒネが使用されていることを認知している割合は88%であったのに対し,モルヒネ以外の医療用麻薬が使用できることを認知している割合は20%であった。また,最も抵抗の少ない医療用麻薬の剤形は貼付剤であり,次いで経口剤であった。医療用麻薬の剤形を自分自身で選択したいとする割合は93%であった。
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症例
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癌と化学療法 34巻13号, 2275-2277 (2007);
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症例は60 歳,男性。腰痛と血痰にて来院した。胸部CTにて周辺halo を伴う多発性結節影を認め,骨シンチグラフィ,CT で骨盤,腰椎に多発性溶骨性病変を認めた。腸骨生検で血管肉腫と確定診断され,疼痛緩和目的の放射線治療とともに,paclitaxel(PTX)による化学療法を開始した。PTXは計6 コース施行したが4 コース終了後,肺転移巣はほとんど消失した。2か月後,胸膜播種による血胸と大腿骨転移にて再発し,docetaxel(DOC)週1 回投与を4 コース施行したが十分な効果は得られず,発見から約1 年で死亡した。
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癌と化学療法 34巻13号, 2279-2282 (2007);
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節外性病変を原発とするホジキンリンパ腫(HL)はまれである。今回,初診時肺に限局した,あるいは主病変としたHL の2 症例について報告する。経気管支的あるいはCT ガイド下肺生検の結果では,2 例とも肉芽腫病変が示唆された。最終的にはリンパ節生検にてそれぞれHL(混合細胞型,リンパ球豊富型)と診断された。HL肺病変の症状,臨床検査,画像検査には特異的な所見は認められず,診断には組織診が必要である。しかし経気管支的肺生検,経皮的肺生検などでは診断が得られない可能性がある。肺病変の病理診断にて非特異的炎症反応と診断された場合でも,HL を鑑別疾患に含める必要がある。
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癌と化学療法 34巻13号, 2283-2285 (2007);
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症例は60 代,男性。左主気管支浸潤食道癌(T4(左主気管支)N2M0,Stage IVa)に対し,根治的化学放射線療法(FP 療法,59.8 Gy)で奏効を得たものの食道気管支瘻を併発したため,経口摂取を目的にPostlethwait型細径胃管による食道バイパス術および空腸瘻造設術を施行した。患者は経口摂取可能となり退院した。その後生じた肺転移に対しtaxane 系抗癌剤を計23 回繰り返し2 年以上不変を維持,さらに生じた頸部傍食道リンパ節再発に対し追加照射を行った。高いQOLを維持しながら50 か月間生存した気道浸潤食道癌症例の治療経過を報告する。
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癌と化学療法 34巻13号, 2287-2290 (2007);
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食道癌術後後縦隔経路再建胃管癌5 例に対するS-1 を中心とする化学療法の治療成績を報告する。奏効率は2例/5例(40%)であり,平均生存期間は21 か月(中央値15 か月),現在3 例が生存中である。他臓器浸潤を伴った1 例,肝転移1 例を除く3 例は手術可能であったが患者側の意向で化学療法を行った。1 例はS-1+CDDP 療法2 コースによりCR となり,21 か月無再発生存中である。1例はS-1単独療法により15 か月PR を維持している。また1 例は内視鏡的治療,放射線治療,S-1 を中心とする化学療法により胃管癌発見から46 か月生存中である。再建胃管癌に対するS-1 を中心とする化学療法は有効であり,治療戦略の一つである。
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癌と化学療法 34巻13号, 2291-2295 (2007);
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Stage IV胃低分化型腺癌の2 症例に姑息的な胃全摘術後,複数の化学療法を逐次施行し,再燃を認めながらも長期生存を得ているので報告する。1例目は55 歳,男性。腹膜播種を伴い,胃全摘術を施行後MTX/5-FU 交代療法を5 か月,S-1 単独療法を4 年間,weekly PTX 療法を9 か月行い,現在外来でCPT-11単独療法を開始したところであり,腹膜再発に対しては手術治療を行いながら5 年8 か月の長期生存を得ている。2例目は60 歳,女性。胃全摘術時に膵・大動脈周囲,横行結腸間膜に浸潤した転移巣が遺残し,S-1 単独療法を1 年10 か月,MTX/5-FU 交代療法を9 か月,weekly PTX 療法を3か月外来で施行し現在に至り,2年11 か月の長期生存を得ている。
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癌と化学療法 34巻13号, 2297-2300 (2007);
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症例は60 歳,男性。体重減少,心窩部痛および黒色便にて当院を紹介され,高度の貧血のため入院となった。腫瘍マーカーはCA19-9が934 ng/mL と高値であった。胃X 線・内視鏡検査では,胃体部小弯から後壁に3 型進行胃癌(por2)を認めた。腹部CT では,胃周囲および腹部大動脈周囲リンパ節にも転移を認め,M,type 3,por2, cT3,cN3,cH0,cP0,cM0,cStageIVと診断した。術前化学療法(S-1+CDDP療法)を2クール行い,胃癌およびリンパ節の縮小を認めCA19-9 も76 ng/mL まで低下した。その後,幽門側胃切除術およびリンパ節郭清術(D2)を行った。手術標本および摘出リンパ節には線維化を認めるのみで癌細胞は消失し,組織学的CR が確認された。その後1 年間経過観察中再発を認めず,CA19-9 も24 ng/mL と正常範囲を維持している。
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癌と化学療法 34巻13号, 2301-2303 (2007);
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乳頭部癌術後に肺転移,リンパ節転移を発症した症例に対しS-1 単独療法を施行し,奏効した症例を経験したので報告する。症例は56 歳,女性。2003年10 月,乳頭部癌に対しPPPD が施行された。1年後の胸部単純X線検査で肺転移を指摘され,CT 検査で腹部リンパ節転移も指摘された。2003 年11 月よりS-1 による治療が開始された。治療効果はRECISTによりPR と判定された。有害事象として白血球減少,ヘモグロビン減少,口内炎が観察されたが軽度〜中等症であり,重篤な有害事象は観察されなかった。S-1投与開始12 か月後,生存中である。S-1は乳頭部癌に対し,有効かつ安全な薬剤である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 34巻13号, 2305-2307 (2007);
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胸腹水を伴う大腸癌再発症例にoxaliplatin/l-LV/5-FU 併用療法(FOLFOX 4療法)を行い,胸腹水の消失および腫瘍マーカーの陰性化を経験したので報告する。症例は58 歳,男性。2004 年9 月29 日S状結腸癌切除術を施行し,2006 年2 月に腹満感が出現,CEA 15 ng/mLに上昇し,腹側腹腔内に多数の小結節を認めたためにS 状結腸癌再発による癌性腹膜炎と診断し,FOLFOX 4 療法を施行した。治療前に134.9 ng/mL だったCEA は6 コース後に陰性化し,10 コース後には胸腹水の消失が認められた。本療法は腹膜播種を伴った再発大腸癌にも有用な治療法であると考えられた。
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癌と化学療法 34巻13号, 2309-2312 (2007);
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術前放射線化学療法にて原発巣の組織学的CR が得られた下部直腸進行癌の2 例を経験した。症例1 は74 歳,男性。下部直腸進行癌(Rb-Ra,2 型,cA,cN0,cH0,cP0,cM0,cStage II )と診断し,術前放射線化学療法(総線量45 Gy,5'-DFUR 800 mg/日×7 日×3 週)を施行した。放射線化学療法終了後30 日目に直腸低位前方切除術を施行した。病理組織では癌細胞は認められなかった。症例2は35歳,男性。下部直腸進行癌(Rb,2 型,cA,cN1,cH1,cP0,cM0,cStage IV )と診断し,術前放射線化学療法(総線量45 Gy,5-FU 500 mg/日×7 日×3 週,CDDP 10 mg/日×5 日×3 週)を施行した。放射線化学療法終了後28 日目に腹会陰式直腸切断術,肝部分切除術を施行した。病理組織では肝転移巣には高分化腺癌を認めたが,原発巣には癌細胞は認められなかった。
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癌と化学療法 34巻13号, 2313-2316 (2007);
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症例は64 歳,女性。2006 年8 月,進行S 状結腸癌および多発転移性肝腫瘍に対してS状結腸切除術および肝動注リザーバー留置術を施行(中分化型腺癌,stageIV)。術後UFT/CPT-11,5-FU,l-LV 肝動注併用療法(UFT 400 mg/body/dayを連日投与,CPT-11 100 mg/body,5-FU 750 mg/body,l-LV 300 mg/bodyの週1 回動注投与を8 週連続投与)を施行した。2か月後,転移性肝腫瘍の消失を認め,前記肝動注療法を4 週ごととし4 回追加投与した。6か月後の腹部CT でも転移性肝腫瘍は消失しており完全奏効と判断し,以後はUFT 内服のみとした。初回CPT-11 150 mg/body /week 投与でgrade 3 の悪心・嘔吐を認めたため以後100 mg/body/week に減量し,外来治療が可能であった。UFT 内服/CPT-11,5-FU,l-LV 肝動注併用療法は大腸癌多発肝転移に対し,外来投与が可能で有用な治療法であると思われた。
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癌と化学療法 34巻13号, 2317-2319 (2007);
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症例は51 歳,女性。便秘と血便を主訴に来院した。多量の腹水を認め,癌性腹膜炎を伴う直腸癌と診断し人工肛門造設術を施行したところ,組織結果から卵巣癌とその直腸転移と診断された。その後,paclitaxelとcarboplatinによる化学療法が著効し,初回手術8 か月後に子宮全摘術,付属器摘除術および直腸前方切除術を施行した。術後1 年6か月を経過して再発を認めていない。
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癌と化学療法 34巻13号, 2321-2323 (2007);
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症例は肺癌(左S1+2,腺癌,StageIV)の49 歳,男性。化学療法としてCDDP+weekly CPT-11を施行したが,PD のためVNR+GEM に変更した。VNR 投与直後にアナフィラキシーショックを発症した。VNR 投与中止後も原因不明の血圧低下と意識消失を繰り返したため精査となった。二度目のショック症状はピスタチオ摂取後であり,三度目以降は癌性疼痛増悪時であった。疼痛コントロールが良好となってからはショック症状を呈さなくなった。アナフィラキシーショックは二相性,遷延性の症状を呈することがある。本症例よりアナフィラキシーショック発症後患者は,誘因となる食物,薬物,疼痛によるストレスなどの刺激に対し注意が必要であると示唆された。
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特別寄稿
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癌と化学療法 34巻13号, 2325-2328 (2007);
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胃癌研究における今日の飛躍的な進歩に胃癌取扱い規約(以下,規約)が果たした功績は多大である。しかし,一方では根本的な矛盾点があり,今後の研究への妨げとなっていることも確かである。本稿ではその矛盾点を明らかにし,改訂に対する提案を行った。矛盾点は,1)郭清効果を加味したリンパ節gradingを行っていること,2)リンパ節gradingが占居部位別に変化し,かつ不連続であること,3)下部・中部胃癌では幽門側胃切除術での切除を想定したリンパ節gradingであること,4)占居部位におけるカテゴリー分類が改訂ごとに変動し,郭清範囲までもが変化すること,である。多くの人に受け入れられる規約とするためには,ルールとしての規約と治療指針としてのガイドラインを明確に分離することである。規約としては,国際標準のためにTNM 分類に準じること,リンパ節分類には連続性のある転移個数を採用することである。また,ガイドラインと協調した改訂を行い,術式別郭清度は解剖学的な深度を考慮して郭清範囲を固定化すべきと考える。
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Journal Club
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Source:
癌と化学療法 34巻13号, 2271-2271 (2007);
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Source:
癌と化学療法 34巻13号, 2296-2296 (2007);
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