Volume 36,
Issue 10,
2009
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総説
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癌と化学療法 36巻10号, 1597-1601 (2009);
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欧米で死生学が盛んに話題に上るようになったのは,1970 年ごろからのことである。大きな推進力になったのはホスピス運動だ。医療の領域で死にゆく人たちをどうケアすればよいのかが,正面から問われるようになった。ホスピスケアや緩和ケアの主要な対象はがん患者だから,がん治療と死生学は深い因縁をもつ間柄である。死生学の興隆は,近代医療の限界を自覚するところから始まった。がん治療において,死を前にして苦しむ患者の「ケア」は欠かせぬ構成要素だ。しかし,現代医療は生物医学的な「治療」に圧倒的な重点をおく方向で発展してきた。患者の側の心理的な,ひいてはスピリチュアルなニーズにも気を配るような医療の在り方が求められている。現代の医療や医学教育においては,死にゆく人間にとって身体的にだけではなく,心理的にも社会的にもスピリチュアルな意味においても,よき生とは何であるかを学ぶ死生学的な視点を取り入れることが不可欠になってきている。
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特集
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神経内分泌腫瘍に対する治療戦略
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癌と化学療法 36巻10号, 1602-1605 (2009);
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神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor)は神経内分泌への分化を有する腫瘍と定義される。神経内分泌への分化に関して従来はGrimelius 染色などの組織化学的検索か電子顕微鏡で神経内分泌顆粒他を同定することなどで樹立されてきたが,現在ではクロモグラニンA などの神経内分泌マーカーを免疫組織化学的に確認することで検討されてきている。神経内分泌腫瘍はカルチノイド腫瘍という概念があったために今まで少なからぬ混乱がみられたことは否めないが,現在では主にKi67/MIB1の標識率で検討した細胞増殖,組織学的分化,浸潤の程度などで高分化型神経内分泌腫瘍,高分化型神経内分泌癌,低分化型神経内分泌癌の三つに分類されている。これらのWHO 分類により患者の術後の治療方針を規範していることから,神経内分泌腫瘍の患者の診断,治療に従事している者が確実に理解していることが求められる。
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癌と化学療法 36巻10号, 1606-1610 (2009);
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消化管神経内分泌腫瘍には良性のものから悪性のものを含んでいる。WHO 分類が組織像や臨床所見に基づいたものであるのに対し,ENETS は予後予測を目的として,悪性度分類とTNM による病期分類を提唱している。消化管神経内分泌腫瘍の唯一の根治療法は腫瘍の完全切除である。低悪性度で病期が早期の場合にはESD や局所切除でも十分であるが,神経内分泌癌の場合にはリンパ節郭清を伴う治癒切除を行うことが勧められる。肝転移巣についても,完全切除できれば予後は大きく改善される。腫瘍が治癒切除できない場合には,etoposide+cisplatin/carboplatinなどの化学療法が施行される。somatostatin analogue であるoctreotide やpasireotide はホルモン症状の緩和と腫瘍増殖抑制の両方に効果があると報告されている。現在も新規薬剤や治療法の組み合わせが開発されつつあり,さらなる神経内分泌腫瘍治療の進展が期待される。
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癌と化学療法 36巻10号, 1611-1618 (2009);
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膵内分泌腫瘍は膵腫瘍全体の1〜2%,剖検例の0.4〜1.5%に相当し,近年では増加傾向を示している。2004 年に改訂されたWHO 診断基準では膵内分泌腫瘍は腫瘍が産生するホルモン種および生物学的悪性度によって分類された。診断にはホルモンマーカーやUS,CT など一般的な画像検査に加え,11C-5-http をtracer に用いたPET scan やオクトレオチドシンチ,SACI test,術中US など,様々なmodalityが用いられている。耐術能があり,根治可能と考えられる限り基本的に外科切除が治療の第一選択であるが,切除やIVR の適応がない高分化内分泌腫瘍(癌)では症状緩和や病態安定化の目的でソマトスタチンアナログが汎用されている。化学療法としては,高分化内分泌癌には5-FU,streptozotocin,doxorubicin,dacarbazineなどが,低分化内分泌癌(小細胞癌)にはcisplatin,etoposideなどが多く用いられる。今日ではチロシンキナーゼ阻害剤,抗VEGF 抗体,mTOR 阻害剤などの分子標的治療を用いた多くの臨床試験が行われており,今後に期待される。
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癌と化学療法 36巻10号, 1619-1622 (2009);
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肺の神経内分泌癌はtypical carcinoid(TC),atypical carcinoid(ATC),large cell neuroendocrine carcinoma(LCNEC),small cell carcinoma(SCLC)の四つに分類されている。TC,ATC に対する治療は外科的切除である。LCNECでは標準治療は定まっていないが,I期,II期が手術+術後補助化学療法,III期が化学放射線療法,IV期は化学療法が行われている。SCLC は化学療法が治療の主体であり,限局性SCLC は同時化学放射線療法,進展型は化学療法が標準治療である。LCNEC,SCLC の化学療法としては,cisplatin+irinotecan あるいはcisplatin+etoposide が用いられることが多い。SCLC はI期のみが手術適応で,術後補助化学療法が必要である。
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癌と化学療法 36巻10号, 1623-1626 (2009);
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副腎に発生する代表的な神経内分泌腫瘍である褐色細胞腫の治療戦略について概説した。外科的切除が治療の基本であり,10 cm 以上の大きな褐色細胞腫,悪性や一部の異所性褐色細胞腫を除いて腹腔鏡手術が可能なものが多い。遺伝性両側副腎褐色細胞腫では副腎皮質機能を温存した腹腔鏡下両側副腎手術も選択肢の一つである。切除不能な悪性褐色細胞腫ではCVD による化学療法を行う。131 I-MIBG が集積するものでは内照射療法も治療効果が得られる期待があるが,国内では施行できる施設が限定されていることと手続きの煩雑さや費用が高額であることに課題がある。
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癌と化学療法 36巻10号, 1627-1631 (2009);
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甲状腺における神経内分泌腫瘍は,神経堤から発生するC 細胞を発生母体とした甲状腺髄様癌がそれにあたる。甲状腺髄様癌は甲状腺悪性腫瘍のなかでも比較的まれである。カルシトニンを分泌し,血中カルシトニン値は鋭敏で特異的な腫瘍マーカーであり,診断に役立つ。散発性(非遺伝性)と遺伝性があり,遺伝性は多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia; MEN)2A型,MEN2B型,家族性甲状腺髄様癌(familial medullary thyroid cancer; FMTC)の3 型があり,RET遺伝子が責任遺伝子である。散発性,遺伝性ともに外科治療が第一選択となる。散発性か遺伝性かで甲状腺切除範囲が変わってくることと,遺伝性については予防的な外科治療が可能でありRET遺伝子の特定のエクソンの変異の有無を検査し,変異位置による病型をある程度予測し,正しい治療戦略を立て,適切に治療することが重要である。
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原著
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癌と化学療法 36巻10号, 1653-1656 (2009);
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目的: 局所進行III期切除不能非小細胞肺癌に対するcarboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX)と胸部放射線(TRT)同時併用療法の臨床的効果を後ろ向きに検討した。対象と方法: 2000 年1 月〜2008 年3 月までにCBDCA+PTX とTRT 同時併用療法を行ったPS 0〜1の局所進行III期切除不能非小細胞肺癌38 例。CBDCA(AUC 1-2)とPTX(20〜40 mg/m2)を週1 回,6 週間投与し,放射線照射は第1 日より1日1〜2 回,週5 回施行した。また,可能な症例には化学放射線療法終了後に地固め療法として,CBDCA(AUC 5-6,第1 日)+weekly PTX(70〜80 mg/m2,第1,8,15 日)を2 コース追加施行した。結果:患者背景は男/女: 31/7,年齢中央値59(39〜76)歳,IIIA/IIIB: 10/28,Ad/Sq/AdSq/Un: 17/17/2/2 であった。化学療法の投与回数中央値は6 回で放射線照射線量の中央値は63 Gy であった。奏効率78.9%(PR 30,SD 5,PD 3),MST 24.7か月,TTP 8.1か月で,grade 3 以上の有害事象の発現率は,白血球減少5.2%,好中球減少5.2%で,貧血,血小板減少は認めなかった。grade 3 以上の非血液毒性では食道炎2.6%,放射線肺臓炎5.2%であり,放射線肺臓炎の1 例は治療関連死した。結論: CBDCA+PTX と放射線同時併用療法の治療効果は良好で,肺臓炎の対応に注意すれば副作用は比較的軽微であることから,III期の切除不能進行非小細胞肺癌に対する有効な治療選択肢となると考えられた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1657-1661 (2009);
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切除不能進行膵癌に対するgemcitabine(GEM)+S-1 およびGEM+UFT 併用化学療法の治療成績を後ろ向きに評価し,併用療法の安全性と有効性について検討した。対象は切除不能膵癌94 例で,GEM単剤群63 例,UFT/GEM群22 例,S-1/GEM群9 例である。生存期間中央値はそれぞれ8.7,7.3,23.3 か月,1 年生存率は29.5,36.4,85.7%で,奏効率は11.1,10.0,22.2%とS-1/GEM群で良好であった。有害事象は,S-1/GEM 群でgrade 3 以上の白血球数減少が55.6%,grade 3 以上の消化器毒性が44.4%と多いものの重篤な毒性は認めなかった。さらに,KPS,Stage 別の解析においてS-1/GEM 群ではStageIVb であってもKPS 良好例の治療成績は良好であった。S-1/GEM 併用化学療法はKPS 良好例において安全で,比較的良好な治療成績が得られており,期待できる投与法と考えられた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1663-1666 (2009);
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最近,S-1単剤およびS-1+cisplatin(CDDP)の併用療法の治療効果が報告され,胃癌に対する化学療法の有用性が示されてきた。一方,docetaxel などタキサン系薬剤の効果も報告されつつあり,外来でも投与可能であるという利便性も指摘されている。今回われわれは,S-1とdocetaxelとの併用療法を行い,その治療効果,安全性について検討した。初回投与例35 例を対象とし,S-1 80 mg/m2/日2 週間連続内服投与後,1 週間休薬とdocetaxel 40 mg/ m2のday 1 静脈内投与を1コースとして投与した。MSTは300日で,奏効率は42.9%であった。grade 3 以上の血液学的毒性などは認められたが,全例治療継続は可能であった。以上より,本療法は治療効果,安全性そして患者の利便性という観点からも極めて有用であると考えられた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1667-1670 (2009);
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目的:進行再発大腸癌症例におけるsecond/third-line therapy としてのS-1 の有用性を検討した。対象・方法: 2003 年12 月〜2006 年4 月までに5-FU 系ベースの併用化学療法を前治療として施行後にPD を認め,S-1(初回投与量80 mg/m2)による治療を行った進行再発大腸癌19 症例について,その有用性を検討した。対象は前治療より1 か月以上経過し,S-1 適正使用基準に準じる症例とした。結果:年齢の中央値65(45〜75)歳,PS 0/1/2: 10/6/3,前治療期間の内訳はsecond/third-line: 12/7 であった。S-1の治療期間中央値は141 日,S-1治療によるPR/SD/PD 症例はそれぞれ2,7,6例であり,奏効率は13.3%,病勢制御率は60.0%であった。無増悪生存期間,全生存期間中央値はそれぞれ5.4,13.9か月であった。治療ライン別に効果をみると,特にsecond-line にてS-1 が投与された症例において,奏効率20%,全生存期間中央値が13.9か月と1 年を超える良好な成績を示した。有害事象発現率は58%(11/19),主な副作用は好中球減少31.6%(6/19),白血球減少21.1%(4/19)であり,いずれもgrade 2 以下と軽微であった。結語:進行再発大腸癌症例におけるsecond/third-line therapyとしてのS-1は予後に寄与する可能性が考えられた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1671-1675 (2009);
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Epirubicin(75 mg/m2),5-fluorouracil(500 mg/m2)およびcyclophosphamide(500 mg/m2)(FEC75),ならびにdocetaxel(75 mg/m2)およびcyclophosphamide(600 mg/m2)(TC)療法の安全性を評価した。FEC75あるいはTC 療法を施行された,それぞれ6 名あるいは9 名の患者を対象とした。FEC75 およびTC 療法の白血球数および好中球数のnadir は,それぞれ化学療法施行11〜15 日後および8〜11 日後であった。一方,単球数および網状赤血球数のnadirは,それぞれ8〜11日後および4〜8 日後であった。このように,血液毒性を評価するためのパラメータの推移はタイムラグがあり,かつレジメンごとに異なっていることが示唆された。また,血液毒性の程度を予測できることも考えられた。TC 療法を施行された2 名の患者において発熱性好中球減少が認められたが,ニューキノロン剤の投与により軽快し,granulocyte colony-stimulating factorの投与は必要としなかった。また,顕著な非血液毒性はみられず,ほぼすべての化学療法が予定どおり施行できた。本結果より,FEC75およびTC 療法は安全に施行できると考えられた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1677-1681 (2009);
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今回われわれはestrogen receptor(ER),progesterone receptor(PgR),human epidermal growth factor receptor 2(HER 2)発現が解析された乳癌症例243 例中,トリプルネガティブ症例を27 例(11%)経験した。35歳未満の若年者トリプルネガティブ乳癌症例は5 例(平均年齢29 歳),35 歳以上のトリプルネガティブ乳癌症例は22 例(平均年齢66 歳)であった。若年者トリプルネガティブ乳癌5 例中4 例は,種々の化学療法の効果もなく早期に再発を来し,うち3 例は術後14 か月以内に死亡した。統計解析にても若年者トリプルネガティブ乳癌は無病生存率,全生存率ともに35 歳以上のトリプルネガティブ乳癌および若年者非トリプルネガティブ乳癌と比較して有意に予後不良であった。さらにトリプルネガティブ乳癌症例のなかで,EGFR 発現陽性もしくはCK 5/6 発現陽性で規定されたbasal-like 型について検討した。35 歳以上のトリプルネガティブ乳癌症例で,予後不良といわれるbasal-like型の比率は67%(21 例中14 例)であったのに対し,若年者トリプルネガティブ乳癌では,全例(5例中5 例)がbasal-like型であった。以上より,若年者トリプルネガティブ乳癌の生物学的悪性度が極めて高いことが示唆された。
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癌と化学療法 36巻10号, 1683-1689 (2009);
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現時点で日本には純粋なオキシコドン注はなく複方オキシコドン注(商品名パビナール)が1920 年代より発売されている。複方オキシコドン注には非麻薬性の阿片アルカロイドである塩酸ヒドロコタルニンが添加されており,皮下注が可能である。また,日本では内服オキシコドン製剤の消費量が増加して本剤が注目されているにもかかわらず,複方オキシコドン注の臨床報告はまれである。一方,われわれの施設では複方オキシコドン注持続皮下注を用いたがん性疼痛治療を過去4年間積極的に行ってきた。よってわれわれは本剤の持続皮下注における有効性と安全性について評価し報告する。初回投与例は97例。鎮痛効果をNumeric Rating Scale(0=無痛から10=最悪の痛み)にて追跡評価した。導入時: 6.8±2.8 と比較し1 週後: 2.4±2.5,2 週後: 1.7±1.9,最終観察日:2.3±2.6とすべて有意に低下していた(p<0.001)。また導入前後1 週間の評価で,肝腎機能,悪心・嘔吐,便秘,意識レベルに有意の変化はなかった。処方期間は平均18.0±15.5(1〜78)日,導入理由は経口オキシコドン製剤からの切り替えが61.9%と最も多かった。管理困難な有害事象は7.2%(せん妄,便秘,悪心・嘔吐,眩暈,局所皮膚障害)あり,すべて導入開始16 日以内の発生であり,フェンタニル注またはモルヒネ注への切り替えが行われた。また内服オキシコドン製剤への切り替えは換算比率1.43 で増減調節を要せず(n=35),持続皮下注を用いれば複方オキシコドン注は純粋なオキシコドン注とみなし得ると思われた。さらなる調査を要するものの,がん疼痛治療において複方オキシコドン注の持続皮下投与は有用かつ安全であると考えられる。
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癌と化学療法 36巻10号, 1691-1696 (2009);
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抗がん剤治療に伴う悪心・嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting; CINV)は患者にとって精神的,肉体的負担が大きな副作用の一つである。場合によっては,QOL の低下や治療中止を余儀なくされるため,適切な支持療法を行うことが重要とされている。近年,抗がん剤治療に伴う悪心・嘔吐に有効とされる5-HT3受容体拮抗薬やNK1 受容体拮抗薬の開発,ASCO,NCCN,MASCCなど海外で設定された制吐療法ガイドラインにより,CINV は適切な悪心・嘔吐対策を行うことにより軽減可能となってきた。先に記したガイドラインでは,主に薬剤による悪心・嘔吐リスク分類と発現時期分類に応じて使用薬剤と投与量が推奨されている。これらのガイドラインを有効に利用し,適切な悪心・嘔吐対策を行うためには患者の正確な悪心・嘔吐情報,特に急性あるいは遅延性の情報を得る必要がある。2004年にMASCCは,急性および遅延性の悪心・嘔吐を簡便に評価するツールとしてMASCC Antiemesis Tool(MAT)を開発した。しかし,海外ではその有用性は検討されているものの,日本ではMATを使用した報告がほとんどない。そこで,その有用性をプロスペクティブに検討した。評価対象はFEC 療法にて外来治療を行った乳がん患者15 名(29〜73 歳,年齢中央値58 歳)28 シートとした。その結果,MAT により簡便に悪心・嘔吐予防策が不十分な患者を見いだすことができた。また,悪心スケールの経時的変化から,対策が不十分な悪心・嘔吐が急性か,遅延性かを同時に判断することができ,より発現時期に応じた対策が可能となった。11段階にスケール化する質問項目については,患者に不慣れであったが,丁寧に説明することで理解を得ることができた。以上のことから,MATの使用は支持療法評価に有用であること,ひいては治療完遂に寄与できることが示唆された。
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癌と化学療法 36巻10号, 1697-1702 (2009);
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mFOLFOX6 療法は切除不能・再発大腸がんに対する標準化学療法として推奨されているレジメンの一つである。われわれは2005 年8 月〜2006年12 月までの間に,mFOLFOX6 療法が施行された大腸がん患者124 人のカルテより有害事象の発現頻度および重症度をレトロスペクティブに調査した。治療コースの中央値は9(範囲: 1〜28)回であった。grade 3 以上の各有害事象の発現頻度は白血球減少16%,好中球減少40%,ヘモグロビン減少11%,血小板減少7%,発熱性好中球減少7%,悪心3%,嘔吐2%,食欲不振2%,下痢4%,疲労7%であった。過敏反応の発現頻度は全grade で35%であり,grade 3/4 を4%に認めた。その発現コース中央値は6(範囲: 1〜21)コースであった。末梢神経障害の発現頻度は全gradeで74%,grade 3は6%であり,発現コースの中央値は11(範囲: 6〜16)コース終了後であった。本調査で明らかとなった各有害事象の発現頻度は,海外におけるFOLFOX6 療法とほぼ同等か少ない傾向であった。mFOLFOX6療法は日本人進行再発大腸がんに対する治療として認容可能なレジメンであると考えられる。患者への情報提供とセルフケアの向上を目的に,本調査の結果に基づいて各有害事象の発現頻度を改め,末梢神経障害や過敏反応の発現リスクが高い時期と症状を記載するなど,患者用説明文書を改訂した。今後も実地診療に即した情報を提供することが重要であると考える。
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癌と化学療法 36巻10号, 1703-1706 (2009);
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日本独自の診断群分類であるDiagnosis Procedure Combination(DPC)に基づく包括支払方式は,急性期入院医療の支払い方式として定着しつつある。病院がDPC に基づく支払いを受けるためには,DPC データと呼ばれる全国的に標準化された形式の電子データを作成する必要がある。DPC データには,カルテ情報やレセプト情報といった診療情報が網羅的に記されている。われわれは,DPCデータの診療情報という側面に着目し,がん治療に関する各種情報の抽出を試みた。本論文では,弊社の開発したDPC データ分析システム「girasol(ヒラソル)」を用いてDPC データを分析することにより,全国および大阪府における非小細胞肺がん治療の実態を明らかにした。さらに,大阪府内の病院における非小細胞肺がんのレジメンおよび治療プロトコルは,大きく異なることを見いだしたのでこれを報告する。
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症例
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癌と化学療法 36巻10号, 1707-1709 (2009);
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S-1 はtegafur に2 種類のmodulator を配合した経口抗癌剤である。優れた抗腫瘍作用をもち,経口抗癌剤であるという利便性から胃癌をはじめとした消化管癌,頭頸部癌,肺癌,乳癌に多く使われている。症例1: 52歳,男性。喉頭扁平上皮癌,T3N2cM0 の診断。concurrent chemoradiotherapy(CCRT)を行った後,原発巣の残存を認めUFT 400 mg/日,分2,連日投与による補助化学療法を行ったが,肺転移が見つかりS-1 投与(120 mg/日,分2,4 週間投与2 週間休薬)を開始した。2 コース終了後には原発巣,肺転移巣ともに消失,S-1 投与を継続にし7 年以上のcomplete response(CR)が得られている。症例2: 76 歳,男性。下咽頭扁平上皮癌,T3N2bM0 の診断。CCRTを行いCR を得,UFT 300 mg/日,分3,連日投与による補助化学療法を行ったが頸部リンパ節に再発を認めたため,S-1 投与(100 mg/日,分2,2 週間投与1 週間休薬)に変更したところ,2コース終了後にリンパ節転移巣は消失した。その後grade 3 の副作用が出現したためUFT 300 mg/日,分3,連日投与に変更して1 年間投与し,5年以上のCR が得られた。S-1 は本2 症例のような頭頸部癌一次治療後の残存,手術不能例,転移例において有用である経口抗癌剤であると考えられた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1711-1714 (2009);
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症例は76 歳,女性。胸部CT にて右肺下葉の浸潤影を指摘され,経気管支肺生検にて肺MALTリンパ腫と診断された。外来経過観察されていたが,診断の8 か月後に呼吸困難が出現しrituximab とcladribine による化学療法を4 コース施行され,部分寛解を得た。しかし,化学療法の14 か月後に多発性の肺野病変とDIC 徴候を認め,骨髄検査にて小細胞肺癌とその全身転移と診断された。carboplatin とetoposide にて化学療法を施行するも治療が継続困難となり死亡された。肺MALTリンパ腫と小細胞肺癌の併発を認めたまれな症例であり報告する。
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癌と化学療法 36巻10号, 1721-1724 (2009);
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既治療非小細胞肺癌に対するS-1の有効性はいまだ明らかにされていない。われわれは,五次治療でのS-1 単剤化学療法が奏効した非小細胞肺癌症例を2 例経験したので報告する。症例1 は75 歳,男性。原発性肺腺癌(cT1N3M0,stageIIIB)に対しcisplatin(CDDP)+vinorelbine(VNR),docetaxel(DOC),gemcitabine(GEM)+VNR 併用療法,amrubicin(AMR)で治療したがいずれも無効となった。五次治療としてS-1 で治療したところ部分奏効し,血清CEA値も低下した。現在7 コース目を終了したが,安定を保っており治療継続中である。症例2 は65 歳,女性。原発性肺腺癌の術後再発に対し,GEM+VNR 併用療法,carboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX)併用療法,DOC,gefitinibで治療したが,いずれも無効となった。五次治療としてS-1 で治療したところ部分奏効し,7 コース継続した。S-1 によるgrade 3 以上の副作用として症例1 では貧血を,症例2 では血清アミラーゼ値の上昇を認めたが,治療によるQOLの低下はみられなかった。今後,既治療非小細胞肺癌症例に対する治療選択肢としてのS-1 単剤化学療法の検討が必要と考える。
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癌と化学療法 36巻10号, 1725-1727 (2009);
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今回われわれは,S-1/CPT-11 療法が奏効した直腸癌術後の肺転移症例を経験したので報告する。63歳,男性の直腸癌症例に対して,直腸切断術を施行した。術後20 か月で両側肺に転移を認めた。そのため3 週間を1 コースとして,S-1 100 mg/body(day 1〜14),CPT-11 120 mg/body(day 1)を投与した。8コース終了後にCR を得て,20 コース終了まで,12 か月にわたりCR を維持した。この治療法は重度の有害事象もなく簡便で,経済的負担も軽く,有用な治療法であると考えられた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1729-1731 (2009);
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症例は55 歳,男性。多発脳転移を伴う肺腺癌の患者。2006年12 月に肺腺癌,脳転移と診断され,以後carboplatin+paclitaxel,carboplatin+gemcitabine により治療を行ってきたが,脳転移の増悪のため2008 年2 月に入院となった。入院後,全脳照射に加えerlotinibの投与で脳転移はほぼ消失,原発巣および肺内転移巣も著明な縮小・消失がみられ,併用による副作用はみられなかった。今回の併用療法は腫瘍に対して相乗効果が期待されるが,安全性に関しては今後さらなる臨床的検討を要する。
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癌と化学療法 36巻10号, 1733-1736 (2009);
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症例は54 歳,男性。2004 年7 月,膵体尾部癌に対して膵体尾部切除術を施行した。摘出標本の病理組織学検査で断端陽性と判断,術後gemcitabine(GEM 1,000 mg/m2,3 週連続投与1 週休薬)を10 コース施行し経過観察中であった。2006 年2 月に局所再発が出現,GEM 単独化学療法を施行し1 年9 か月間継続したが,2007 年11 月に局所再発病変の増大と右肺転移の出現を認めた。S-1/GEM併用療法(S-1 60 mg/m2/day,days 1〜14まで連続服用,2 週間休薬,GEM 1,000 mg/m2,days 8,15 に投与)に変更し,11 コース施行後のPET-CTにて再発・転移病変へのFDG 集積が消失した。全治療期間中にgrade 3 以上の有害事象は認められず,2009 年1 月現在,外来で治療継続中である。
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癌と化学療法 36巻10号, 1737-1739 (2009);
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症例は55 歳,男性。2007 年8 月,右頸部に無痛性の硬い腫瘤を触知し,近医を受診した。上部消化管内視鏡検査で食道癌と診断され,精査加療目的に当科紹介となった。内視鏡検査所見では切歯から31 cm の高さに1/4 周性の辺縁不整な隆起性病変を認めた。生検では壊死組織のみで悪性所見は得られなかったが,頸部腫瘤からの細胞診で小細胞型未分化癌と診断された。PET-CTでは右頸部と食道に集積を認め,CTでは右鎖骨上リンパ節が 5cm に腫大していた。以上から食道小細胞型未分化癌,Mt,T2,N3,M0,StageIIIと診断し,同時化学放射線療法(high-dose FP と60 Gy の放射線照射)を開始した。3 日目から右鎖骨上リンパ節が著明に縮小し,11月の内視鏡検査所見で腫瘍は瘢痕化しており,生検でも癌は検出されなかった。PET-CT でも集積を認めず,CR と判定した。2008年10 月現在も無再発生存中である。
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癌と化学療法 36巻10号, 1741-1744 (2009);
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切除不能腹膜播種陽性胃癌に対し,S-1/CDDP,S-1/paclitaxel(PTX),S-1/PTX/irinotecanと新規抗癌剤を併用し,長期生存が得られた症例を報告する。症例は63 歳,男性。2003 年11 月20 日から切除不能腹膜播種陽性胃癌に対し,S-1/cisplatin(CDDP)療法(S-1 120 mg/day 3 週投与2週休薬,CDDP 60 mg/m2 day 8)を3 コース行い腹水は消失した。2004 年3 月22 日に開腹手術を行ったが根治術不能であり回腸横行結腸吻合,横行結腸下行結腸吻合を行った。sT3,N0,H0,P1,CY1,M1(PLE),sStageIVであった。術後外来でS-1/PTX療法(S-1 100 mg/day 2 週投与1 週休薬,PTX 60 mg/m2 を全身投与および20 mg/m2を腹腔内投与2 週投与1 週休薬)を16 コース行った。2005 年2 月のCT にて腹水が貯留したため6 月よりirinotecan(50 mg /m2 day 1)を追加し,腹水がコントロール可能となりさらに外来で20 コース施行できた。治療中の血液毒性はすべてgrade 2 以下であった。減量手術をすることなくQOL を保ちながら3 年の長期生存を得ることができた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1745-1748 (2009);
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症例は59 歳,男性。2005 年2 月,胃癌の同時性肝転移の診断で胃全摘術,3 月に肝後区域部分切除術を施行し,2 か所の転移巣を切除した。病理組織診断では原発巣・肝転移巣ともに中分化型腺癌であり,最終診断は[M,Type 3,pT2(SS),pN1,pH1,sP0,sM0,fStageIV]であった。4月下旬より,S-1 による術後補助化学療法を開始したが,4 コース後のCTで多発肝転移を認めたため,first-lineとしてS-1+paclitaxel(PTX)併用療法[S-1 80 mg /m2/day(day 1〜14),PTX 120 mg/m2/day(day 1,15),4 週間1 コース]を開始した。RECISTによる治療効果判定では,3 コース後にPR となり,5コース目まで持続して奏効が得られた。6コース目から増大傾向となり,7コース目でPD となった。second-lineとして,S-1+CPT-11 併用療法[S-1 80 mg/m2/day(day 1〜21),CPT-11 80 mg/m2/day(day 1,15),5 週間1 コース]を6 コース,third-line としてS-1+cisplatin(CDDP)併用療法を行った。画像上の奏効は得られなかったが,この間もperformance status PS)0 を保ちつつ外来での治療を継続できた。third-line途中で全身状態が悪化したため,best supportive care へ移行した。予後は初診より約2 年3か月であり,経過中はgrade 4 以上の重篤な有害事象はみられなかった。今回われわれは,予後不良な同時性胃癌肝転移切除後のS-1 投与中に生じた残肝再発に対し,S-1 と他剤の逐次併用を継続し,2 年以上の生存が得られた1 例を経験したので報告した。
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癌と化学療法 36巻10号, 1749-1751 (2009);
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症例は70 歳,男性。傍大動脈リンパ節転移を認める進行胃癌に対して,S-1 120 mg/bodyを1〜7,15〜21 日目に内服,docetaxel(DOC)40 mg/body を1,15 日目に点滴静注する1 コース4 週間のbiweekly S-1+DOC 併用療法を施行した。2コース終了後のCT画像で腫瘍は著明に縮小し,傍大動脈リンパ節は消失しpartial response(PR)と診断した。有害事象として,grade 3 の貧血を認めたのみで,輸血で対応可能であった。全経過を通じて外来化学療法が可能であり,治療開始2 年以上経過し20 コース終了した現在,同一レジメンでPR を維持している。われわれが行っているbiweekly S-1+DOC 併用療法は,高度進行胃癌に対して外来で安全に施行できるレジメンと考えられたので報告した。
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癌と化学療法 36巻10号, 1753-1755 (2009);
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症例は66 歳,女性。主訴は皮膚黄染および全身倦怠感。2005 年4 月ごろより全身倦怠感があり近医を受診し,皮膚の黄染を指摘された。T-Bilが13.4 mg/dL と高値を示し,精査で肝門部胆管癌を疑われた。5月に当科紹介受診となった。PTCD からの造影では左右肝管は分断され,肝門部から上部胆管に高度の狭窄を認めた。腹部CT では肝門部胆管から上部胆管に閉塞・高度狭小化を認め,狭小化部に一致して腫瘤を認めた。2005 年6 月切除予定で手術を施行したが,大動脈周囲リンパ節転移を認め十二指腸浸潤もあり非切除とし閉腹した。術後は肝門部および大動脈リンパ節周囲に放射線照射およびgemcitabine による化学療法を開始した。放射線終了後,原発巣および転移リンパ節は著明な縮小を認めた。腫瘍マーカーも手術後にCA19-9 が高値を示していたが,放射線療法終了後には正常範囲となった。治療後11 か月で腹膜再発を来したが,20か月の長期生存が得られた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1757-1760 (2009);
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症例は78 歳,男性。減黄処置が困難な切除不能胆管癌(cStageIVb)にて入院した。gemcitabine hydrochloride(GEM)を2 コース施行後に咳と呼吸困難が出現し,薬剤性間質性肺炎(interstitial pneumonia: IP)と診断した。ステロイドパルス療法を2 回施行しIP は治癒した。その後S-1 へ変更して現在も投与中であり,黄疸は軽減消失している。胆管癌へのGEM 投与によるIP は報告がなく,薬剤性IPはまれだが致死的となり得るため,本症例は示唆に富むと考え報告する。
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癌と化学療法 36巻10号, 1761-1763 (2009);
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症例は57 歳,男性。以前より慢性C 型肝炎を指摘されていたが,約5 年間放置されていた。腹部超音波検査で肝内に多数の占拠性病変を認めたため精査加療目的で当院に入院した。精査の結果,骨転移,肺転移を伴うstageIVB進行肝細胞癌と診断した。十分なインフォームド・コンセントの後,S-1+PEG-IFN 併用による全身化学療法を2007 年6 月26 日より行った。S-1(80 mg/日)2 週投与1 週休薬,PEG-IFN はPEG-IFNα-2a(180 μg)を週1 回投与の割合で3 週を1 コースとした。治療開始5 コース終了後の評価で肝腫瘍は著明に縮小しており,また肺転移も縮小し,化学療法による治療効果が画像上認められていた。経過は良好で2008 年1 月29 日より全身化学療法を中止した。その後も増悪なく,10 月現在順調に経過している。S-1+PEG-IFN併用化学療法は,今後進行肝細胞癌に対し全身化学療法の一つの選択肢として可能性のある治療法と考え,若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 36巻10号, 1765-1768 (2009);
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症例は69 歳,男性。直腸癌術後肝転移に対し,S-1+CPT-11,放射線治療,UFT/LV の前治療の後,FOLFOX,FOLFIRI 療法を施行したがPD となり,FOLFIRI+bevacizumab(BV)併用療法を施行した。併用療法後,速やかな腫瘍マーカーの低下,FDG-PET 上の急速な集積の低下がみられた。また重篤な副作用はなく,QOL も著明に改善した。FOLFOX/FOLFIRI療法に抵抗性となった後もBV の投与を検討する意義があることを示唆する症例と思われた。
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癌と化学療法 36巻10号, 1769-1772 (2009);
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症例は75 歳,女性。1999年に他院で小腸腫瘍の切除を受け,gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断された。2006 年1 月血液検査にて肝機能の異常を指摘され当院消化器科にて精査を施行,肝転移を指摘された。肝右葉から内側区域に至る巨大な転移巣があり切除困難と思われたが,2回の肝動脈塞栓術とimatinib mesylate 400 mg/日の投与および経皮経肝門脈塞栓術を施行することにより肝転移は著明に縮小し,6 月拡大右葉切除により根治手術を施行し得た。病理組織学的検査では肝転移巣は広汎に壊死に陥っていたが島状に腫瘍組織の残存が認められた。2007 年3 月に残肝再発に対しラジオ波焼灼療法を施行した。現在無再発で経過観察中である。
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癌と化学療法 36巻10号, 1690-1690 (2009);
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癌と化学療法 36巻10号, 1710-1710 (2009);
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癌と化学療法 36巻10号, 1715-1715 (2009);
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