Volume 36,
Issue 11,
2009
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総説
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癌と化学療法 36巻11号, 1781-1787 (2009);
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担癌症例における静脈血栓塞栓症の発症率や再発率が,非癌症例と比較して高率であることが示されており,癌と血栓症との関連性が注目されている。癌の浸潤や転移にかかわるMET 癌遺伝子が,PAI-1 やCOX-2 の発現誘導を介して血栓症の発症にかかわることが示され,癌と血栓症との関連が分子レベルで明らかにされつつある。血管内膜癌症においてアネキシン2 の高発現に起因する顕著な低フィブリノゲン血症と致死的な出血傾向を来す病態は,固形癌の浸潤および転移と凝固線溶系との関連性を把握する上で興味深い。癌患者における血栓症の発症には,腫瘍細胞が産生する組織因子などの凝固惹起物質のみならず,活性化白血球などから産生される炎症性サイトカインによる内皮障害や,抗腫瘍薬など様々な因子が複雑に関与する。組織型やbody mass indexなどと新規分子マーカーを組み合わせたスコアリングシステムの導入なども癌患者における血栓症進展のリスク評価を行う上で有効となるであろう。入院中および周術期における癌患者の血栓症予防には,低分子量ヘパリンもしくは未分画ヘパリンが有効であるが,外来癌患者における抗凝固療法はサリドマイドなどをキードラッグとした多発性骨髄腫の化学療法施行例に限定すべきであると思われる。
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特集
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陽子線治療の現状と限界
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癌と化学療法 36巻11号, 1788-1790 (2009);
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陽子線治療とは水素の原子核である陽子を光速近くまで加速することにより“がん”組織を障害する放射線治療である。陽子線治療と従来の放射線治療との最も大きな違いは体内での線量分布の違いである。X 線は体表面近くで線量が最大になり,徐々に線量が減少するのに対し,粒子線は止まる直前に高い線量を体内に落とす特徴があるため,がんに高い線量を与えることができ,より高い効果と同時に正常組織に対する障害をできるだけ低くして治療することができる。さらにDNA に対する傷害作用も直接作用が主であり,より高い抗腫瘍効果が期待される。脳腫瘍,頭頸部癌,肺癌,食道癌,肝臓癌,前立腺癌,直腸癌骨盤内再発例など多くの“がん”が対象になり,頭打ちとなっている進行例の治療成績の改善に期待される。
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癌と化学療法 36巻11号, 1791-1794 (2009);
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兵庫県立粒子線医療センターは「ひょうご対がん戦略」のリーディングプロジェクトとして計画され,9 年を経て2001 年5 月に開院した。最も大きな特徴は世界で初めて陽子線と炭素イオン線の両者を使用できることである。2009 年3 月末までに2,639名に粒子線治療を行った。対象疾患は前立腺がん,頭頸部腫瘍,肝がん,肺がん,骨軟部腫瘍の順に多く,これらの5 大疾患だけで87%を占める。線種の内訳は陽子線2,122名(80%),炭素イオン線517 名(20%)であった。治療成績は手術療法を凌駕しており,切らずに直すがん治療が実現しつつある。現時点の粒子線治療の問題点は陽子線と炭素イオン線の使い分けがはっきりしないこと,装置が大がかりで普及の障害になっていることである。われわれは日本原子力開発機構と共同でレーザー駆動陽子線治療装置の開発,臨床適用をめざしている。
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癌と化学療法 36巻11号, 1795-1800 (2009);
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重粒子線治療は,体内での優れた線量集中性と高い生物効果を特徴とする新しい放射線療法であり,適切な治療法が確立すれば放射線治療の適応疾患のすべてにおいて,通常放射線治療よりも良好な結果が期待できる。放射線医学総合研究所(以下,放医研)では重粒子線の一つである炭素イオン線(以下,炭素線)を用いて1994 年から様々な部位の悪性腫瘍を対象として臨床試験を開始し,着実にその有効性と安全性を報告してきた。結果的に多くの疾患で適切な治療法が確立され,その有用性を示すことができ,適応も拡大されつつある。2009 年2 月までに治療した症例数は4,504症例に達した。初期臨床試験により炭素線治療の有効性が確認された肺癌,肝臓病などでは,より進んだ治療法の確立のため,炭素線治療の生物学的特性を生かして短期小分割照射法の確立をめざし,肝臓では2 回照射法がすでに確立している。肺癌では4 回照射はすでに確立しており,さらに1 回照射法の確立をめざして臨床試験を継続している。また,従来のX線治療の適応とはなりにくい骨軟部の肉腫や頭頸部の悪性黒色腫などの放射線抵抗性腫瘍に対しても良好な成績を得ることに成功した。手術以外に有効な局所治療が存在しなかったこれらの腫瘍で,非侵襲的で高い効果をもつ治療法を確立できたことで,治療法の選択肢の拡大を実現した。現状の重粒子線治療はようやく臨床的有用性の第一段階を示したにすぎない治療であり,今後さらに大きな可能性を残していると考えられる。この可能性が広く認識されるように,安全性および有用性を明らかにすべく研究を継続中である。
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癌と化学療法 36巻11号, 1801-1805 (2009);
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高度先進医療(後に先進医療)として実施されてきた粒子線治療も,その治療例数は約9,000名となり,一定の評価ができる時期となった。法的に未整備だった装置の薬事申請,診療放射線技師法,医療法も整備された。今後施設数はさらに増えると予想され,ようやく保険収載の道が開けてきたと思われる。一方で海外の一流紙では特に陽子線治療に対する批判とその批判に対する反論が繰り返されており,ようやく米国NCI は陽子線治療の臨床試験をサポートする状況となったが,国内では公的研究費が少ない状況が続いている。
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癌と化学療法 36巻11号, 1806-1812 (2009);
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陽子線治療は荷電粒子線による悪性腫瘍に対する放射線治療の一つであり,シンクロトロン加速器や回転ガントリー照射システムなど大規模な装置を利用する先進医療である。陽子線は通常の放射線治療で利用する高エネルギーX 線と比較して,線量分布の形成において有利な物理特性,すなわち荷電粒子線に特有のブラッグピークをもつので,限局した標的体積への均一な高線量の投与が容易に可能であり,その結果として局所制御率の向上と正常組織障害の低減が期待される。陽子線治療の主な適応は前立腺癌・肝癌・非小細胞肺癌・頭頸部悪性腫瘍の早期症例または局所進行症例に対する根治治療である。さらに正常組織・器官への低レベルの放射線によっても,成長障害などの影響を受けやすい小児腫瘍や合併症を有する手術不能な高齢者症例にも陽子線治療のベネフィットがあると考えられる。現在,一部の疾患に対する保険収載が検討されている。本稿では静岡がんセンターにおいて開始から約5年を経た陽子線治療の経験を含め,陽子線治療の現状を述べる。
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Current Organ Topics:大腸癌
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癌と化学療法 36巻11号, 1813-1813 (2009);
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癌と化学療法 36巻11号, 1814-1818 (2009);
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癌と化学療法 36巻11号, 1819-1821 (2009);
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癌と化学療法 36巻11号, 1822-1825 (2009);
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癌と化学療法 36巻11号, 1826-1828 (2009);
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原著
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癌と化学療法 36巻11号, 1829-1831 (2009);
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S-1/CDDP 併用化学療法は多くの施設で施行されているが,CDDP投与時は入院治療となっているのが現状である。15例に行ったS-1/CDDP 併用化学療法のうち,8 例で外来投与が可能であった。全例,腎障害もみられなかった。外来化学療法がエビデンスに基づいたレジメンで安全に施行できれば,患者にはQOL の改善をもたらし,医療経済的にもメリットは大きい。S-1/CDDP 療法の外来施行は適切な患者指導の下に可能と考えられた。
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癌と化学療法 36巻11号, 1833-1837 (2009);
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われわれは進行・再発胃癌に対しS-1とCPT-11併用化学療法を行い,その臨床的有用性について検討した。対象は組織学的に胃癌と確認された切除不能または非治癒切除および術後再発胃癌症例で,PS 0〜2 の13 例。S-1は80〜120 mg/dayを21 日間連日経口投与,CPT-11はday 1,15 に60 mg/m2を投与した。2001年11 月〜2004 年2 月までに13 例が登録され,年齢中央値は65 歳,PS 0: 1 例,PS 1: 3 例,PS 2: 9 例であった。全症例の結果はPR 5 例で,奏効率は38%であり,生存期間中央値(MST)は259日であった。副作用はPS 0〜1 症例よりもPS 2 症例に多かった。また,PS 0〜1 症例とPS 2 症例の平均投与コース数は両者に有意差を認め,抗癌剤に対する認容性に差があることが考えられた。胃癌を含めた消化器癌に関してPS 2 症例には抗癌剤の投与量や投与期間を加減する必要があると思われる。当レジメンは今後進行・再発胃癌の二次治療以降での使用が検討される。
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癌と化学療法 36巻11号, 1839-1843 (2009);
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進展型小細胞肺癌において,化学療法による骨髄抑制が予後因子であるか検討した。1995 年11 月〜2007 年12 月にcisplatin かcarboplatin とetoposide またはirinotecan 併用療法を行った進展型小細胞肺癌患者91 人を対象とし,後ろ向きに検討した。治療期間中の好中球減少,貧血,血小板減少の最低値がgrade 0〜2 の群とgrade 3〜4 の群に分け,生存期間,無増悪期間について解析した。単変量解析では,好中球減少がgrade 3〜4 群のほうが生存期間,無増悪期間が有意に延長した。貧血と血小板減少は生存期間,無増悪期間に関与しなかった。他にperformance status(PS),治療前のlactate dehydrogenase値,neuron-specific enolase値が予後因子であった。多変量解析では,PSのみが独立した予後因子であった。進展型小細胞肺癌において,化学療法中の骨髄抑制は予後因子ではなかった。
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癌と化学療法 36巻11号, 1845-1849 (2009);
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当院で1987 年11 月〜2003 年7 月までに骨髄破壊的前処置により行った同種造血幹細胞移植のうち,血清学的HLA一座不一致血縁者間移植(不一致移植)14 例を対象とし,HLA一致同胞間移植(一致移植)142 例およびHLA一致非血縁者間移植(非血縁移植)78 例と比較検討した。不一致移植においてII度あるいはIII度以上の急性GVHD の累積発症率は一致移植と比較し有意に高かったが,非血縁移植との差は認めなかった。全身型慢性GVHD の発症率はドナー別で差はみられなかった。不一致移植,一致移植,非血縁移植の5 年生存率はそれぞれ42.8%,55.6%,44.3%であった。生存に関する多変量解析では,移植時の疾患リスクと重症急性GVHD が有意な危険因子であった。移植ドナー別に急性GVHD の生存に対する影響をみると,一致移植および非血縁移植では有意な危険因子であったが,不一致移植では影響しなかった。そのためHLA 一座不一致血縁者からの移植は,HLA一致非血縁者間移植と同等の治療成績が得られることが確認された。
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癌と化学療法 36巻11号, 1851-1856 (2009);
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パクリタキセル注「NK」は,タキソール注射液と同一有効成分を同量含有したジェネリック医薬品である。今回,臨床使用実態下における両剤の安全性について比較検討した。その結果,乳癌術後補助療法において両剤間の安全性に大きな差異は認められなかった。
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癌と化学療法 36巻11号, 1857-1861 (2009);
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薬物代謝酵素P-450(P-450)の活性の個人差は,薬物体内動態を決定し,薬物の効果や副作用に影響を及ぼす。現在,臨床でのP-450活性の予測には,グルカリン酸(GA)の尿排泄量などが間接的に活性を反映し,その指標となる可能性が提言されているが,確立された方法はない。抗癌剤であるパクリタキセル(PTX)はP-450 で代謝される。PTX 投与時に尿中GA 値を用いてP-450 活性を予測し,個別のPTX の血中濃度の推測が可能になれば,効果や副作用の発現予想の有力な情報源となる。そこで誘導が示唆されている抗てんかん剤服用患者と健常人の尿中GA 値を測定し,尿中GA 値がP-450活性の指標になる可能性を検討した。次に尿中GA 値とPTX の血中濃度との関連性を検索し,尿中GA 値と血中濃度下時間面積(AUC)の関係から薬物動態の予測の可能性を考察した。抗てんかん剤服用患者16 例と健常人24 例の尿中GA 値を比較した場合,尿中[(GA/Cr)×10]値の平均値±S.D. はそれぞれ0.19μg/mL±0.07,0.98μg/mL±0.91であり,抗てんかん剤服用患者の尿中GA 値が,健常人に比べ有意に高値であった。PTX 投与患者8 例のAUC と尿中GA 値の関係は,尿中GA 値が低値である症例において,AUC が大きくなる傾向を示した。以上の結果をふまえ,非侵襲で簡便な採尿により尿中GA 値を測定することによりP-450 活性を予測しPTX の血中濃度を推測できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 36巻11号, 1863-1870 (2009);
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アンドロゲン依存性および分化度の異なる培養ヒト前立腺癌細胞株を用い,ドセタキセルの細胞増殖阻害作用と前立腺特異抗原(PSA)産生阻害作用との相関性について検討した。各細胞(LNCaP,DU145,PC-3)をドセタキセルを含む培地で72時間培養した後,生細胞数と培地中のPSA 濃度を測定した。細胞核クロマチンの形態変化,DNA断片化,TUNEL assay およびAnnexin V assay により,ドセタキセルのアポトーシス誘導作用についても検討した。ドセタキセルは,いずれの細胞株に対しても濃度に依存した増殖阻害作用を示し,50%阻害濃度(IC50)は0.90〜4.2 nM であった。IC50値を基準としたドセタキセルの細胞増殖阻害活性は,パクリタキセルと同程度,塩酸ミトキサントロン,リン酸エストラムスチンナトリウムおよびシスプラチンより強かった。また,ドセタキセルで処理した細胞では,細胞周期がG2/M 期に収束し,クロマチン凝集やDNA 断片化などアポトーシスに特徴的な形態変化が観察された。ドセタキセルの細胞増殖阻害作用とPSA 産生阻害作用との間には良好な直線性が認められた。以上の結果から,ドセタキセルは各種ヒト前立腺癌細胞株に対し殺細胞作用を示すこと,その作用に相関してPSA 産生も抑制されることが示唆され,PSA は臨床においてもドセタキセルの腫瘍縮小効果を反映するマーカーとして有用であると考えられた。
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癌と化学療法 36巻11号, 1871-1876 (2009);
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外来化学療法を施行されているがん患者において,味覚障害を訴える患者を多く経験する。今回われわれは,外来化学療法施行がん患者における味覚障害の発現状況について調査した。その結果,全体では45.95%(34 例/74 例)に味覚障害が発現していた。5-FU含有レジメン,taxane系含有レジメンに分類するとそれぞれ59.0%(23 例/39 例),60.0%(9 例/15 例)に味覚障害が発現していた。さらに,味覚障害が食欲に影響を及ぼしているかを調査した。5-FU含有レジメン(39.1%)およびtaxane系含有レジメン(44.4%)ともに多くの患者で味覚障害が食欲の低下をもたらしていた。5-FU含有レジメン施行がん患者で,味覚障害が食欲に影響を与えていたのはFOLFOX/ FOLFIRI 療法を施行していた患者であった。味の変化に関して,苦味以外は鈍感になると訴える患者が多かった。味の強度においては変化に差がなかった。今回の調査により高用量5-FU を使用するレジメン,taxane系含有レジメンでは,強い味覚障害が高頻度に発生していることが明らかとなった。
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症例
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癌と化学療法 36巻11号, 1877-1880 (2009);
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症例は55 歳,男性。腹部CT 検査上,腹膜播種,膵臓の浸潤と腹水が認められ,切除不能進行胃癌の診断でS-1 とpaclitaxel(PTX)による化学療法を施行した。S-1 120 mg/day(2 週投与,2 週休薬)とPTX 90 mg/body(day 1,8,15)を1 コースとし,計15 コース施行した。15 コース終了後のCT 検査では腹水が消失し,画像上腹膜播種も消失,腫瘍マーカーも低下していたが,幽門狭窄症状が強いため幽門側胃切除術,D1 郭清を行った。術中所見として腹膜播種部はすべて瘢痕化しており,膵臓への浸潤も認めなかった。長期の併用化学療法を行い,重大な副作用なく切除できた症例を経験したため今回報告した。
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癌と化学療法 36巻11号, 1881-1884 (2009);
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症例は64 歳,男性。2006 年9 月に上部消化管造影,内視鏡検査で胃体下部〜幽門前庭部小弯に2 型腫瘍を指摘され,当院消化器内科へ紹介。内視鏡下病理組織生検では低分化線癌で,CT にて腹部大動脈周囲リンパ節腫大(16b1 lat)を認めcT3 N3 M0 P0,cStageIV治癒切除不能進行胃癌の診断で化学療法が施行された。S-1 120 mg/day を2 週投与2 週休薬,CDDP はday 8 に60 mg/m2,N(16b1 lat)は3 コース目で消失,10 コース施行後主病巣増大のためsecond-line としてpaclitaxel(PTX)80 mg/m2をday 1,8,15 に投与したが12 コース目の内視鏡検査では腫瘍増大となり,2008 年6 月third-line としてCPT-11 100 mg/m2をday 1,8,15,22 に2 コース施行した。施行後に食物通過障害が出現,内視鏡検査にて潰瘍底はきれいになり周堤は平坦化しているが,幽門狭窄を認め主病巣PR,手術適応有無について外科紹介となった。開腹所見はsT2 N1 P0 CY(−)H0,sStageIIで幽門側胃切除術,D2郭清,Billroth I 再建を施行した。病理組織学的診断では原発巣,リンパ節ともに癌細胞は認めず,薬物療法の効果としてはGrade 3 が得られた。
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癌と化学療法 36巻11号, 1885-1888 (2009);
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症例は51 歳,男性。1999 年7 月初診。内視鏡検査にて胃体中部小弯にtype 3 腫瘍を認め,腹部CT にて多発肝転移を認める他,血清AFP値91.0 ng/mLと高値で,免疫組織染色にてAFP 産生胃癌と診断された。8月よりFLEP 療法を開始,2 コース施行後血清AFP値は正常化,肝転移も消失,原発巣も縮小し潰瘍病変となり組織学的にも癌の消失を確認した。以後外来通院化学療法の希望により,S-1 にて補助療法を継続した。2000 年4 月,肝転移再発はないが原発巣に再びIIc 様病変を認めた。FLEP療法を2 コース追加したが癌の消失を認めず,2001 年6 月胃全摘術を施行。遠隔転移はなく,病理組織でpor 1,ss,ly2,v1,n(1+),StageIIの所見であった。術後7 年経過した現在無再発生存中である。FLEP療法でCRが得られ,原発巣の再発で胃全摘後無再発生存中のAFP産生胃癌を経験した。
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癌と化学療法 36巻11号, 1889-1891 (2009);
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症例は36 歳,男性。胸部X 線で多発性の結節性陰影を指摘され,2004 年2 月当科を受診。精査の結果stageIVの肺腺癌と診断された。治療は,第1〜5 レジメンとしてcarboplatin(CBDCA)+docetaxel(DOC)を5 コース,CBDCA+gemcitabine(GEM)を3 コース,GEMを3 コース,gefitinib を6 週間,GEMを6 コース行った。しかし腫瘍が進行したために,第6 レジメンとして2006 年5 月よりS-1(120 mg/day,2 週投薬1 週休薬)を単独投与したところ,重篤な副作用を認めず比較的長期にわたって抗腫瘍効果が得られた。S-1 単剤投与は,複数のレジメンによる既治療後の進行性の非小細胞肺癌に対しても比較的安全に投与が可能であり,かつ長期の病勢のコントロールが期待できると考えられた。
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癌と化学療法 36巻11号, 1893-1896 (2009);
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切除不能の胆管細胞癌に対してgemcitabine(GEM)/cisplatin(CDDP)併用療法が著効した2 例を経験したので報告する。症例1 は70 歳,女性。近医にて黄疸を指摘され当院に紹介受診となり,同日緊急入院となった。PTCDを挿入し,入院8 日目に試験開腹を行ったが,周囲臓器への浸潤が高度で切除不可能と判断し,そのまま閉腹した。術後PTCD より胆管ステントを挿入し,GEM(1,000 mg/m2 1 日目,8日目),CDDP(70 mg/m2 1 日目),1 週休薬を開始した。4コース施行したところで血小板減少を認めたため,GEM 800 mg/ m2,CDDP 50 mg/m2に減量した。7 コース施行後のCT において腫瘍の著明な縮小を認め,腫瘍マーカーも正常値化した。症例2 は61 歳,女性。黄疸を主訴に来院となった。下部胆管癌の診断であったが,血管造影時のCT にて肝S6に転移を認め,治癒切除不能と判断し,ステント挿入後,化学療法を施行することになった。GEM(1,000 mg/m2 1 日目,8 日目),CDDP(70 mg/m2 1 日目),1 週休薬を開始した。4コース施行したところで血小板減少と倦怠感が出現したため,GEM 800 mg/m2,CDDP 50 mg/m2に減量,さらにday 1,15 にGEMを投与し,その後1 週休薬するというように休薬期間を延ばしてさらに3 コース施行した。その結果,腫瘍マーカーは正常値まで下がり,肝S6 の転移巣はその存在が判別困難な状態まで改善した。GEM/CDDP 併用療法は切除不能の胆管癌患者のQOL を改善するのみでなく,術前化学療法としての可能性を示唆するものであった。
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癌と化学療法 36巻11号, 1897-1900 (2009);
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症例は59 歳,男性。膵頭部癌の診断にて手術施行となるも,術中所見にて肝転移巣が確認されたために根治的切除を断念した。術後の病理組織学的精査にて膵神経内分泌細胞癌と診断されたために小細胞肺癌の標準的治療に準じてCDDP+CPT-11 を3 コース施行したところ,再肝転移巣の出現は認められず,原発巣も増悪傾向を認めないため,4 か月後に二期的に膵頭十二指腸切除を施行し得た。初回手術より20 か月が経過した2009 年3 月現在,無再発生存中である。神経内分泌腫瘍は全身化学療法が奏効することもあり,本症例のように遠隔転移を有していても治癒切除が可能となる場合もあり得ると考えられた。
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癌と化学療法 36巻11号, 1901-1903 (2009);
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症例は73 歳,女性。上行結腸癌の診断で結腸右半切除術を施行した。術後病理診断はStageIIであった。術後補助化学療法としてuracil/tegafur(UFT)+folinate(Uzel)内服療法を開始した2 週間後より,食思不振と全身倦怠感を主訴に来院した。血液生化学検査でAST,ALTおよびALP の著明な上昇を認め,grade 3 の肝障害と診断し緊急入院となった。薬物性肝障害と判断しUFT+Uzel 内服の中止,および肝庇護剤を投与した。その後,経過とともに血液検査所見は改善し18 病日に退院となった。本症例は薬物リンパ球幼弱化刺激試験などの結果から,UFT に起因したアレルギー性による肝細胞障害型の薬物性肝障害と診断した。
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癌と化学療法 36巻11号, 1905-1906 (2009);
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閉経前進行乳癌症例に対し,術前後補助化学療法の後にLH-RH アナログとtamoxifen の併用によるホルモン療法を行っていたところ,術後47 か月目に対側腋窩リンパ節転移が出現した。リンパ節の摘出生検にてホルモン受容体の発現を確認した後,二次ホルモン療法としてLH-RH アナログとアロマターゼ阻害薬の投与を行った。二次ホルモン療法開始後16か月の現在,新たな転移巣の出現はなく,高いQOLを保ち良好に経過している。
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癌と化学療法 36巻11号, 1907-1910 (2009);
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症例は78 歳,女性。持続する腹痛と下痢のため入院した。CT検査および大腸内視鏡検査にて十二指腸下行脚に浸潤する巨大腫瘍が認められ,生検の結果中分化型腺癌の診断となった。術前化学療法としてS-1 80 mg/body をday 1〜29 に内服し,CPT-11 100 mg/bodyをday 1,8,15,22 に静脈投与した。37℃台の熱発とgrade 2 の食欲不振および下痢を認めたが,重篤な副作用を認めなかった。術前内視鏡検査およびCT 検査にて腫瘍の著明な縮小を認め,十二指腸浸潤は不明瞭となった。右半結腸切除術,十二指腸楔状切除術を施行した。切除検体では瘢痕収縮した上行結腸の小範囲粘膜下から固有筋層に腫瘍の残存を認めたが,リンパ節転移を認めなかった。退院後はUFT 300 mg/ day を2 年間内服した。術後3 年10 か月現在再発徴候なく生存中である。
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癌と化学療法 36巻11号, 1911-1914 (2009);
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症例は78 歳,女性。2005 年4 月,大動脈周囲リンパ節転移,右腸骨動脈領域リンパ節転移,左鼠径部リンパ節転移を伴う進行直腸癌(P)に対して腹会陰式直腸切断術を施行した。病理組織学的検査結果は,中分化型腺癌,粘膜から外膜深部にまで浸潤,先進部の分化度は低分化,リンパ節転移陽性(No. 251:7/28,No.252:0/6,No.253:0/4,No.216:3/10,No.292lt:1/2)であった。術後2 週目のCT で大動脈周囲リンパ節転移,右腸骨動脈領域リンパ節転移の増大傾向が認められ,術後化学療法としてS-1(100 mg/day,2 週投与1 週休薬)+CPT-11(120 mg/m2,day 1 に投与)を3 週間1 コースとして開始した。しかしながら退院後に生じたgrade 2 の食欲不振を機に本人の強い希望がありS-1+CPT-11 療法は中止した。そこで6 月からS-1(100 mg/day,2 週投与1 週休薬)単独で開始,さらに1 週投与1 週休薬のレジメに変更して治療継続が可能であった。術後1 年目のCT で対象病変は消失し,術後3 年8 か月を迎えいまだに無再発で経過中である。S-1 の1 週投与1 週休薬療法が奏効しlong CR を得ることができた。切除不能進行再発大腸癌に対しては標準治療を行うのが原則であるが,あらゆる事情で投与できない症例への対策としてS-1 単独療法は選択肢になり得ると考えられた。さらにS-1 単独療法に関する臨床試験を早急に行い,その有効性を明らかにするべきだと考えている。
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癌と化学療法 36巻11号, 1919-1922 (2009);
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症例は77 歳,女性。1998 年7 月に上行結腸癌に対して原発巣切除。病理診断はtub 2,pSS,ly1,v0,pN1(1/7),StageIIIa であった。8 年後の2006 年10 月の腹部CT 検査にて大動脈周囲のリンパ節腫脹を指摘された。PET 検査にて腹部大動脈周囲と左鎖骨上窩(Virchow)のリンパ節に高度集積を認めた。この間,腫瘍マーカーCEA,CA19-9 の値は正常域であった。上部・下部消化管内視鏡検査でも明らかな悪性病変は認められなかった。半年間の経過観察の後,リンパ腫を疑い2007 年5 月に開腹下リンパ節生検を施行した。病理結果はmetastatic adenocarcinoma の所見であった。結腸癌のリンパ節再発と判断し,術後UFT/LV の内服化学療法を施行した。9コース後のPET 検査では,Virchowと腹部大動脈周囲のリンパ節集積は消失していた。化学療法開始20 か月後のPET 検査でも,有意なリンパ節の腫脹は認められず,UFT/LV療法は高齢者に対しての治療効果が期待できる治療法と考えられた。
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癌と化学療法 36巻11号, 1923-1925 (2009);
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肛門管癌の左鼠径リンパ節転移に対してS-1+CDDP 併用放射線化学療法が奏効した1 例を経験したので報告する。症例は76 歳,女性。2006 年2 月近医にて肛門腫瘤を切除され,肛門管癌と診断された。本人は追加切除を希望しなかった。2007 年8 月左鼠径部の腫脹および疼痛を認めた。リンパ節生検にて扁平上皮癌を認めリンパ節転移と診断された。左鼠径部リンパ節転移に対して放射線化学療法を施行した。化学療法はS-1(80 mg/body)内服とCDDP(5 mg/body)の点滴を1 週間に5 日投与2 日休薬とし4 週間施行した。放射線は2 Gy/day×25 回(合計50 Gy)を施行した。12月のCT にて左鼠径部リンパ節は著明に縮小していた。放射線化学療法後1 年間S-1 のみ内服を継続した(80 mg/body,2 週間連日内服,2 週間休薬)。1 年後のCT にてリンパ節腫大は消失し,PET-CT によるFDG の取り込みもなくCR と判断された。S-1+CDDP を併用した放射線化学療法は肛門管癌のリンパ節転移に有効であると考えられた。
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癌と化学療法 36巻11号, 1927-1929 (2009);
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症例は60 歳,男性。便潜血陽性を指摘され当院を受診した。下部消化管内視鏡検査にて回盲弁から回腸末端にかけて腫瘍を認めた。上部消化管内視鏡検査,ダブルバルーン小腸内視鏡検査も施行したが,他部位に腫瘍性病変を認めなかった。腫瘍生検の結果は中分化型腺癌であった。腹部CT 検査では肝に多発性腫瘤を認め,肝転移と考えられた。以上より原発性小腸癌,肝転移と診断した。回腸末端に強い狭窄を認めたため回盲部切除術を施行した。術後,肝転移に対してmFOLFOX6 による化学療法を開始した。5コース終了後の腹部CT 検査で肝転移巣は著明に縮小し,効果判定はPR であった。また,腫瘍マーカー(CA19-9)も1,100 U/mLから36 U/mL まで低下し正常化した。原発性小腸癌に対し化学療法が著効した貴重な1 例と考えられた。
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癌と化学療法 36巻11号, 1931-1934 (2009);
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症例は54 歳,女性。2008 年1 月ごろより右大腿部内側に発熱,疼痛などの随伴症状を有さない腫脹を自覚した。近医皮膚科の受診にて丹毒との診断を受け治療を施行されるも改善傾向を認めぬまま,8月に当院整形外科を受診。皮下軟部腫瘍の疑いにて8 月26 日,生検および免疫染色を施行。Grade 2 相当のfollicular lymphoma(FL)に矛盾しない所見を認めた。9月2 日施行のPET-CT では,右鼠径部腫大リンパ節に異常集積を認め,軽度腫脹を有する右外腸骨リンパ節にも異常集積を認めたものの,その他の異常集積を認めなかった(図1a,b)。若年であることや急速な病勢の進行を鑑み,rituximabを併用したcyclophosphamide,adriamycin,vincristine,prednisolone: CHOP(R-CHOP)療法に加え,領域放射線治療を施行。11月26 日(R-CHOP 療法3コース施行後)に施行したPET-CT 上,CRを得るに至った。併せて根治性の向上目的にて,さらにrituximab単独療法2 コースに加え,30Gyの領域放射線照射(involved field radiotherapy: IFRT)を施行した。現在のところ長径2 cm,短径1 cm の瘢痕結節を残すものの無症状であり,performance status は0 にて月1 回の外来通院にて継続フォロー中である。
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癌診療レポート
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癌と化学療法 36巻11号, 1935-1939 (2009);
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弘前大学医学部附属病院における外来化学療法室の患者満足度調査を過去の調査と比較することによって,治療件数増やスタッフの専門性向上,レジメン審査制度の導入といった治療環境の変化が患者満足度に及ぼす影響を調査した。その結果,プライバシーへの配慮や待ち時間,落ち着いて治療が受けられるかという治療環境に対する満足は,おおむね過去に準じて維持されていたが,治療件数の増加に伴い面談時間が短縮された結果,患者指導に対する評価はやや低下していた。患者満足度という視点で,外来化学療法業務を評価することは有用であると思われた。
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Journal Club
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癌と化学療法 36巻11号, 1862-1862 (2009);
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癌と化学療法 36巻11号, 1892-1892 (2009);
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癌と化学療法 36巻11号, 1904-1904 (2009);
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癌と化学療法 36巻11号, 1915-1915 (2009);
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癌と化学療法 36巻11号, 1926-1926 (2009);
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用語解説
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癌と化学療法 36巻11号, 1930-1930 (2009);
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