癌と化学療法
Volume 36, Issue 12, 2009
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特集【第30回癌免疫外科研究会,第31回日本癌局所療法研究会】
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温熱療法(ハイパーサーミア)による免疫療法増強のメカニズム
36巻12号(2009);View Description Hide Description温熱療法は単独で癌を制御するが,それよりも化学療法,放射線療法と併用することにより,より効果的に癌を制御する。今回,温熱療法を免疫療法と併用することにより,さらにその効果が著しく増強することを臨床例で示し,そのメカニズムを検討した。 -
免疫増強栄養剤Impactの食道癌術前内服による術後肺炎予防効果
36巻12号(2009);View Description Hide Description高侵襲手術である食道癌手術は術後合併症,特に術後肺炎の予防が重要である。われわれは,免疫増強栄養剤Impactの食道癌術前投与における術後肺炎予防効果をrandomized controlled trial(RCT)にて見いだしているが,連日の大量内服は実際的ではなく,その後は個人に応じた量のImpactを投与している。今回,実臨床に即した術前内服量でのImpactの食道癌術後肺炎予防効果を,右開胸開腹食道切除術65 例を対象にretrospective に検討した。術前放射線治療未施行47 例中,術前Impact内服22 例では術後肺炎の難治化は認めず,術前1 週間の内服量が2,250 mL 以上の13 例では術後肺炎はなかった。術後入院期間が30 日以上の12 例は,Impact量が1 例を除き2,000 mL 以下であった。食道癌術前1 週間に2,500 mL程度のImpactが内服されれば,術後肺炎とその難治化に対する予防と術後入院期間短縮に寄与する可能性が示唆された。 -
食道癌手術における栄養スクリーニングに関する検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description目的:食道癌手術における栄養スクリーニングの指標や肺機能検査のデータが,術後合併症の発生や術後在院日数に及ぼす影響を検討した。対象と方法:切除食道癌69 例を対象とし,年齢,DM 併存の有無,BMI,血清Alb 値,小野寺式栄養指数,% VC,FEV 1.0 % と合併症の発生頻度,術後在院日数(中央値,長期例の頻度)との関連を検討した。結果:術後合併症は,65 歳以上,% VC 80%未満で有意に高率であった。術後在院日数の中央値は,65 歳以上,FEV 1.0 % 70%未満で高く,BMI と関連した。さらに,長期例の頻度は65 歳以上で高率で,BMI とも関連した。結論:食道癌手術における術後合併症や術後在院日数は,栄養スクリーニングの指標である年齢やBMI とともに,肺機能にも大きく左右されることが確認できた。食道癌手術における術後合併症の回避には,肺機能検査も組み入れた栄養スクリーニング(年齢,BMI,% VC,FEV 1.0 %)が望ましいと考える。 -
肝内胆管癌に対する樹状細胞ワクチン─活性化リンパ球併用療法による免疫応答と臨床効果の検討─
36巻12号(2009);View Description Hide Description肝内胆管癌の予後は極めて不良であり,術後早期から再発するため,2000 年より樹状細胞ワクチン療法と活性化自己リンパ球療法の併用を術後補助療法として積極的に採用し,ワクチン療法施行中にDTH 反応陽性例と陰性例を認めること,陽性例においては良好な臨床効果を認めていることを報告してきた。今回,ワクチン療法による免疫応答と臨床効果の関連性を検討した。2000〜2005 年に当科にて切除された肝内胆管癌89 例中,免疫療法を施行した38 例を対象とし,DTH 反応陽性例(陽性群)と陰性例(陰性群)に分け,それぞれのリンパ球比率,制御性T 細胞比率の推移と無再発生存期間,累積生存期間などの臨床効果との関連を検討した。結果:ワクチン開始前と4 回投与後のリンパ球%の推移を検討すると,陽性群では2 倍の増加を認め,陰性群では1.7 倍にとどまった。また,両群でCD4 陽性細胞の減少とCD8 陽性細胞の増加を認めた。制御性T 細胞マーカーのFoxp3 陽性細胞は,陽性群では減少するのに対し,陰性群ではわずかに増加した。陽性群は陰性群に比し無再発生存と累積生存の延長を認めた。DTH 反応の有無によって臨床効果には大きな差を認め,DTH 反応陰性群ではリンパ球%の増加率は少なく,制御性T 細胞の増加が示唆された。これらが臨床効果の違いとして現れている可能性があると考えられた。 -
PSK の術前投与を行った消化器進行癌10 症例
36巻12号(2009);View Description Hide Description局所進行消化器癌患者に対し,術前2 週間のprotein-bound polysaccharide Kureha(PSK)投与を行った後,根治手術を施行した10 症例についての予後検討を行った。症例は2000 年9 月〜2001 年11 月までの間に,術前PSK 投与が行われた男性7 例,女性3 例,年齢49〜76 歳(平均年齢65.2 歳)。胃癌5 例(cStageII 4 例,cStageIIIa 1 例),大腸癌5 例(cStageIIIa 1 例,cStageIIIb 3 例,cStageIV 1 例)。進行胃癌の5 例中3 例,大腸癌5 例中4 例が5 年以上の生存が得られており,われわれの目標である周術期の宿主免疫能低下を抑える効果があるのではないかと考えた。 -
PSK とTGF-β 阻害剤の併用による癌宿主の免疫応答増強効果
36巻12号(2009);View Description Hide DescriptionTGF-β は抗腫瘍免疫において,中心的役割を担う樹状細胞(DC)や細胞傷害性T 細胞の活性化を抑制する。protein-bound polysaccharide K(PSK)は,キノコ系植物性多糖類より製造された抗腫瘍薬品である。今回われわれは,PSK とTGF-βR 阻害剤(SB-431542)の併用によるDC の機能に及ぼす影響について検討した。ヒト単球由来DC にPSK とSB-431542 を添加し,IL-12 産生,CD83 の発現,T 細胞増殖能について検討した。PSK 添加によりDC のCD83 発現,IL-12 産生が増加したが,TGF-β を添加することにより,このIL-12 産生は有意に抑制された。SB-431542 を加えることにより,IL-12 産生,CD83 発現が増強した。これらはまたDC のT 細胞増殖能も高めた。以上より,PSK はTGF-βR 阻害剤と併用することにより,DC の抗腫瘍サイトカイン産生を増強する効果を有し,癌宿主の免疫寛容を克服し得る可能性が示唆された。 -
食道癌細胞株に対するPSK 単剤および抗癌剤併用による増殖抑制効果
36巻12号(2009);View Description Hide DescriptionPSK は主として宿主免疫を介した抗腫瘍効果を示すが,癌細胞に対する直接作用についてはいまだ明らかでない。われわれはヒト食道癌細胞株KYSE170 とTE13 を用いて,PSK 単剤および抗癌剤併用での作用機序について検討した。食道癌細胞株にPSK(0〜1,000μg/mL)を添加し,72 時間培養後にWST-8 assay によるviability と,フローサイトメトリーによる細胞周期を検討した。次に,抗癌剤(5-FU,CDDP,DOC)に増殖抑制を示さない低濃度PSK(5 μg/mL)を併用し,WST-8 assay によるviability を検討した。PSK 単剤による濃度依存性の増殖抑制と,細胞周期解析ではsub-G1 とG2/M 期の増加を認め,PSK が食道癌細胞のアポトーシス誘導と細胞分裂阻害を示すことを確認した。また,低濃度PSK の併用は,5-FU およびDOC の抗腫瘍効果を増強した。 -
実地臨床におけるStageIII直腸癌に対するPSK 投与状況
36巻12号(2009);View Description Hide Description実地臨床で行われたStageIII直腸癌に対する術後補助化学療法におけるPSK の投与状況と効果について,retrospectiveに検討した。1997 年4 月〜2006 年3 月の間に,治癒切除が行われたStageIII直腸癌75 例を対象に5-FU 系抗癌剤とPSK の投与状況,予後因子について検討した。75 例中71 例(95%)に5-FU 系抗癌剤の投与が行われ,71 例中56 例(79%)にPSKが併用されていた。PSK 併用例のうち,UFT 単独投与例(n=33)の頻度はStage IIIa に多く,5-FU 系+LV 投与例(n=17)の頻度はStageIIIb に多かった(p<0.01)。単変量・多変量解析では,再発,無病生存期間,全生存期間のいずれにも影響を与える因子はStageIIIb(vs StageIIIa)のみであった。StageIII直腸癌に対する補助化学療法にPSK を併用する頻度は高かったが,Stage 亜分類とLV の選択性に偏りが大きく,PSK の効果を検証することはできなかった。今後,StageIIIa とStageIIIb を層別化したprospective randomized controlled trial を計画する必要があると思われる。 -
食道癌組織におけるIL-6/COX-2 発現と化学放射線療法奏効性および予後との関連
36巻12号(2009);View Description Hide Description癌間質反応の性質は,癌の進展および治療反応性と深く関連している可能性がある。今回,術前化学放射線療法(CRT)を施行したcT3/T4 食道癌の切除標本を用いてIL-6/COX-2 に対する免疫染色を行い,癌細胞および間質細胞におけるIL-6/COX-2 発現と奏効性および予後との関連を検討した。組織学的奏効性との関連では,非奏効群(Grade 1a)で奏効群(Grade 1b/2)に比べ癌細胞におけるCOX-2 発現が高い傾向,奏効群で非奏効群に比べ間質におけるIL-6 発現が高い傾向を認めた。予後との関連では,IL-6,COX-2 とも癌細胞における陽性例は陰性例に比べ予後不良の傾向を認めた。一方,間質におけるCOX-2 陽性例は陰性例と比べ予後不良の傾向を認めたのに対して,IL-6 陽性例は陰性例に比べ予後良好であった。癌細胞のみならず間質におけるIL-6/COX-2 発現がCRT 奏効性および予後と深く関連することを明らかにした。 -
実地医療における高齢者高度進行胃癌に対する化学療法の現況と問題点
36巻12号(2009);View Description Hide Description近年,当科で行われている高齢者胃癌に対する化学療法の諸問題点について検討した。切除不能胃癌を70 歳以上の高齢者群(n=28)と70 歳未満の対照群(n=46)に分け,化学療法の実行性,安全性,効果について比較検討した。両群間で化学療法の導入率に差はなく(93% vs 89%),両群ともS-1+cisplatinum(CDDP)が選択される頻度が高かった。S-1+CDDP 投与例に限って解析すると,統計学的有意差は認められなかったが,高齢者群のほうが投与コース(中央値)が1 コース少なく,grade 3 以上の有害事象が15%多く,二次治療への移行率が34%低く,生存期間中央値も5.2 か月短かった。さらに,高齢者群の半数以上にgrade 3 以上の有害事象を認めた。以上から,高齢者胃癌に対する一次治療として,S-1+CDDP療法を標準とすることには再考の余地がある。 -
mFOLFOX6 治療におけるアレルギーの発症状況および予後との関係
36巻12号(2009);View Description Hide Description切除不能・再発大腸癌に対し,一次治療としてmodified FOLFOX6(mFOLFOX6)を施行した155 例を対象にアレルギー発症状況やその後の予後について検討した。アレルギー反応は28 例(18.1%),44 回(2.9%)で発症し,初回発症時,grade 1 が9 例,grade 2 が17 例,grade 3 が2 例であり,mFOLFOX6 投与回数は中央値8.5 回(1〜25 回)であった。アレルギー発症群(n=28)は非発症群(n=127)よりmFOLFOX6 施行回数が多く(p=0.01),FOLFIRI 移行率も高かった(p<0.01)。FOLFIRI 移行例に限ると,両群間でFOLFIRI の奏効率,病勢制御率に差は認めなかったが,アレルギー発症群のほうがFOLFIRI 移行後の無増悪期間が長い傾向にあり(p=0.16),全生存期間が長かった(p=0.03)。mFOLFOX6 後の全生存期間もアレルギー発症例のほうが長かった(p=0.03)。一次治療mFOLFOX6 療法におけるアレルギー反応は,二次治療のFOLFIRI を含めて検討すると,予後不良因子にはならないことが示唆された。 -
多様な抗原性が示唆された高度進行胆嚢癌の1 経験例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は53 歳,女性。進行胆嚢癌の診断にて当院を受診。CT 検査にて多発リンパ節転移と動脈浸潤を認め,StageIVbの診断であったが,本人および家族の強い希望にて胆嚢病巣のみを切除し,術後免疫療法を施行した。術後,DUPAN-2 は6,800 U/mL まで上昇し,肝転移病巣が出現したが,tumor-lysate をパルスした樹状細胞ワクチンとS-1 の投与により,DUPAN-2 は980 U/mL に減少し,CT 検査にて肝転移巣の消失とリンパ節転移の縮小を認めた。しかし自己腫瘍抗原に代わって,MUC-1 ペプチドを使用してから徐々にCEA 値の上昇とリンパ節転移巣の増大を認め,術後約1 年で永眠された。DUPAN-2 の上昇は認めず,肝転移巣の増悪も認められなかった。腫瘍における抗原性の変化と転移巣間での抗原性の多様性がうかがえる症例と考えられた。 -
年齢からみた化学療法中のIndoleamine 2,3-Dioxygenase の変化について
36巻12号(2009);View Description Hide Description乳癌術後補助化学療法による生体への侵襲程度を,indoleamine 2, 3-dioxygenase(IDO)とimmunosuppressive acidic protein(IAP)の発現程度から検討した。15 症例に術後補助化学療法としてCEF を4 サイクル受けた後,paclitaxel(PTX)を4 サイクル施行した。化学療法施行前,CEF 施行後,PTX 施行後,全化学療法終了3 週間後に採血した。得られた血漿からhigh performance liquid chromatography(HPLC)を用いてtryptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定した。同時にIAP 値を測定した。若年者は化学療法施行中にIAP 値およびTrp/Kyn 値ともに変化はみられなかった。36 歳以上では化学療法施行中にIAP 値は上昇し,Trp/Kyn 値は上昇する傾向にあり,年代が高いほどその傾向は強かった。乳癌術後の補助化学療法による免疫学的ダメージは年齢に依存する可能性が示唆された。 -
Toremifene とPaclitaxel 併用による抗腫瘍効果増強の可能性について
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionpaclitaxel(PTX)使用時にtoremifene(TOR)を併用することで抗腫瘍効果が増強する否かを検討した。2002〜2008年までに当科で経験した原発性乳癌のうち,転移・再発を認めER,PgR,HER2 が陰性であり,治療にPTX を使用した14症例を対象とした。転移・再発時に患者本人の希望でPTX(80 mg/m2/3 週投薬1 週休薬)に加えてTOR を併用した群6 症例と,TOR を併用しなかった群8 症例について,奏効率,奏効期間,臨床的有用率にて検討を行った。治療効果の判定はRECIST に基づいて評価し,PTX 使用期間のみについて評価を行った。転移・再発からの観察期間の中央値は12.2 か月であった。奏効率には差を認めなかった。奏効期間は併用群が単独使用群に比べて有意に長く,臨床的有用率は併用群が単独使用群に比べて有意に高かった。TOR はPTX の奏効期間を延長する可能性が示唆された。 -
局所進行食道癌に対する5-FU/Nedaplatin(CDGP)による化学放射線療法
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionはじめに:切除不能進行食道癌に対する標準治療は,5-FU/cisplatin(CDDP)(FP 療法)による化学放射線療法(CRT)である。またnedaplatin(CDGP)は消化器毒性,腎毒性が少ないCDDP の誘導体である。今回,局所進行食道癌に対する5-FU/CDGP(FGP)によるCRT の臨床的効果,有害事象を報告する。対象:他臓器浸潤または3,4 群リンパ節転移陽性の局所進行食道癌患者65例。方法:化学療法; 5-FU 250 mg/body をdays 1〜21 に,CDGP 10 mg/body をdays 1〜5,8〜12,15〜19 に点滴投与した。放射線は41.4 Gy を化学療法と同時期に照射した。切除可能例は外科的治療を,切除不能例は20 Gy の追加照射を行った。結果:奏効率は71%。grade 3,4 の白血球,血小板減少は31%,30%。消化器,腎毒性は軽微で,治療関連死亡例もなし。追加切除25 例中,R0 手術は19 例。切除例の5 年生存率と生存期間中央値は27%,22.5 か月であった。結論:局所進行食道癌に対するFGP-CRT は高い奏効率と有害事象も容認できる優れた治療である。 -
腹膜転移を有する4 型胃癌の治療成績─腹腔鏡による診断と化学療法の効果─
36巻12号(2009);View Description Hide Description4 型進行胃癌に対して腹腔鏡検査(staging laparoscopy: st-lap)を実施し,P1 またはCY1[P(+)]症例に対して化学療法を実施してきたので,その成績について報告する。対象: 2002 年10 月〜2007 年12 月までにst-lap を行った4 型進行胃癌で,P0 かつCY0[P(−)]で手術を実施した7 例(手術群)とP(+)で化学療法を行った18 例(化学療法群)を対象とした。化学療法はS-1(80 mg/m2: days 1〜14)+PTX(120 mg/m2: day 1)の3 週間ごとを基本とした。結果: 5 コース後にPR の11 例(61%)と臨床症状の改善したSD 4 例の15 例にst-lap を実施しP(−)の11 例に手術を実施した。最終的にP(−)は8 例(44%)であった。化学療法群の手術例11 例と非手術例7 例の1 年,3 年生存率はそれぞれ82%,36%と57%,14%で有意差はなかったが手術例で良好であった。手術群と化学療法群の比較では1 年,2 年生存率は72%,39%と51%,34%と差は認められなかった。考察: 4 型進行胃癌に対しては,P(+)症例のみならずP(−)症例においても積極的な化学療法の必要性が示唆された。切除術の是非,治療レジメの選択などさらに検討が必要である。 -
大腸癌肝転移症例に対するFOLFOX を中心とした術前化学療法の成績
36巻12号(2009);View Description Hide Description大腸癌肝転移の肝切除例におけるFOLFOX,FOLFIRI 術前化学療法症例の治療成績を解析し,その有効性について検討した。対象は当科で術前化学療法としてFOLFOX,FOLFIRI を行った肝切除11 症例。術前化学療法のレジメンはFOLFOX 8 例,FOLFIRI 3 例であった。奏効率は45.5%でPR 5 例,SD 6 例であった。術前化学療法前のH 因子はH3 の2 例中1 例,H2 の3 例中2 例がダウンステージ可能であった。腫瘍縮小率は平均37.7%であった。肝切除前のICG R15 分値は平均13.7%であり,術中・術後合併症は認めなかった。平均観察期間は19.8 か月(8〜45 か月)であり,現在9 例が無再発生存中である。大腸癌肝転移に対するFOLFOX を中心とした術前化学療法は高い腫瘍縮小効果があり,また肝機能を十分に考慮した術式を選択すれば安全に肝切除が行えると考えられた。 -
下部直腸癌に対する術前化学放射線療法
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionわれわれは下部進行直腸癌に対し局所再発抑制と機能温存を目的とし,術前化学放射線療法(CRT)を施行している。今回,下部進行直腸癌16 例を対象に,化学療法としてtegafur/uracil/calcium folinate を用い放射線療法を併用した。CRTの2〜8 週間後,患側の側方郭清を併施した根治切除を行った。男女比は11:5(41〜75 歳),有害事象は軽微であり,耐容性は良好であった。RECIST 評価でCR/PR/SD/PD が0/11/5/0 例,治療前後のFDG-PET の集積性は全例で低下を認めた。手術術式はAPR 11 例,LAR 2 例,ハルトマン手術1 例であり,著効1 例に対し肛門括約筋部分温存手術(ISR)を施行し,全例R0 切除であった。組織学的効果では3 例にGrade 3 の効果を認めた。術後合併症として,骨盤死腔炎,創傷治癒遷延,深部静脈血栓などを認めた。以上より,直腸癌に対する術前CRT は抗腫瘍効果が高く認められ,肛門機能温存が可能な症例も認めた。放射線に特徴的な術後合併症には注意が必要であるが,本邦でも下部進行直腸癌に対する標準療法となり得る可能性がある。 -
胆管癌の術前放射線化学療法(NACRAC)による局所制御の可能性
36巻12号(2009);View Description Hide Description胆管癌は手術切除が有効な治療法であるが,胆管の解剖学的背景や癌の粘膜下進展浸潤傾向,減黄処置の必要性から癌の進展範囲の把握が困難で切除後再発も少なくない。われわれは,この胆管癌の特徴と切除例の検討から切除時に胆管切離断端・剥離面の癌遺残をなくすことが予後向上に寄与すると考え,術前の癌先進部の局所制御を目的にgemcitabine(GEM)を用いた術前放射線化学療法(NACRAC)の導入を計画した。pilot study で周術期を含めた安全性が示され,第I相試験でGEMの至適投与量を決定(600 mg/m2)した。現在,有効性と安全性を評価するための第II相試験を施行中である。抗腫瘍効果の病理検討と手術根治度の検討から,NACRAC が術前に画像では判別困難な胆管癌先進部の腫瘍進展を制御し,断端・剥離面の陰性化をもたらすことが期待され,これによる胆管癌の予後延長の可能性が考えられる。 -
局所進行非小細胞肺癌に対する術前化学放射線療法の意義と有効性の評価
36巻12号(2009);View Description Hide Description術前化学放射線療法後に手術を施行した非小細胞肺癌25 例を対象に,治療効果,副作用,手術術式,再発形式,予後など臨床的・病理学的検討を行った。臨床病期は,IIA 期1 例,IIB 期7 例,IIIA 期14 例,IIIB 期3 例で,組織型は腺癌12例,扁平上皮癌7 例,腺扁平上皮癌1 例,未分化非小細胞癌1 例,大細胞癌4 例であった。術前化学療法レジメンは,CDDP+DOC またはCBDCA+PTX を2 コースとして,24 例に放射線療法を併用し,44 Gy 22 例,60 Gy が2 例であった。25 例中16 例で2 コースの化学療法を完遂し,治療効果は,CR 0 例,PR 15 例,SD 9 例,PD 0 例,評価不能1 例であった。組織学的治療判定効果は,Ef-3: 3 例,Ef-2: 11 例,Ef-1: 7 例,Ef-0: 1 例,Ef 不明: 3 例であった。CRTx 後でdown stage は14 例であった。術式は葉切除20 例,二葉切除2 例,全摘術3 例であり,3 例に胸壁合併切除術,1 例に左房合併切除術,1 例に心膜合併切除術,3 例に気管支形成術を施行した。術後に問題となる副作用はみられず,手術関連死も認めなかった。予後は,肺門リンパ節再発死1 例,脳転移発症死3 例,肝転移発症死1 例,原因不明突然死1 例,担癌生存例1 例,無再発生存18 例であった。今回の術前化学放射線療法施行による重篤な合併症は認められず,安全に手術は可能であった。1 例を除いてローカルコントロールは良好であり,術前化学放射線療法は有効な治療法として期待できる。長期予後に関しては今後の検討が必要である。 -
胃癌同時性肝転移に対する切除症例の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description1977〜2006 年の間に当科で胃癌同時性肝転移に対し,根治度B の手術を施行した49 例を対象に外科的治療の意義について検討した。男女比は38:11,年齢中央値は70 歳(41〜81 歳)。原発巣の組織型は分化型/未分化型:26/23,T1/T2/T3/T4: 4/14/23/8,N0/N1/N2/N3: 4/15/18/12,胃全摘/幽門側胃切除/PD: 17/29/3 であった。肝転移数は1 個/2 個/3 個以上: 27/9/13,肝切除術式はHr0/HrS/Hr1/Hr2/Hr3: 37/1/6/4/1 であった。全症例のMST は663 日,5 年生存率は19.7%であった。当科の検討では,リンパ節転移がないか,N1 およびHr0 かHrS で切除できる症例で生存率に有意差を認めた。症例選択が重要であるが,根治術が可能な胃癌同時性肝転移症例に対し,肝切除も治療手段の一つとして考慮すべきである。 -
胃癌肝転移に対する肝動注化学療法の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description目的: 予後改善を目的とした肝動注療法を施行した胃癌肝転移例について検討した。対象: 1994 年12 月より経験した胃癌肝転移例のうち,制御不能な肝臓以外の他臓器転移を認めない11 例を対象とした。平均年齢69 歳,同時性転移3 例,異時性転移8 例であった。方法: 右大腿動脈より肝動脈にカテーテルを留置し,5-fluorouracil(5-FU)1,000 mg/day を2 週投与1 週休薬,もしくは5-FU 500 mg/day を週1 回毎週投与とした。結果: 抗腫瘍効果はCR 3 例,PR 7 例,PD 1 例であった。治療開始後の生存期間は8 〜 34 か月であった。化学療法の中止理由は,現疾患増悪7 例,カテーテルトラブル4 例であり,副作用による中止例は認めなかった。結語: 胃癌肝転移例に対する本法は外来通院治療が可能で副作用は軽度で,かつ治療効果も期待できる。肝転移以外が制御可能な症例においては積極的に施行すべきものと思われた。 -
肝切除前全身化学療法の安全性と効果─大腸癌肝転移症例での検討─
36巻12号(2009);View Description Hide Description切除可能な大腸癌肝転移症例における肝切除前全身化学療法の安全性および効果について検討した。肉眼的に癌の遺残を認めなかった65 例を対象とし,術前化学療法を行った22 例と行わなかった43 例との間で,安全性および治療開始後の生存期間を比較した。安全性の指標とした出血量,手術時間,術中輸血の有無,術後合併症の有無は両群間で有意差を認めなかった。一方,術前化学療法を行った22 例の治療開始後の生存期間は,化学療法を行わなかった43 例と比較して有意差を認めなかった。切除可能な大腸癌肝転移症例に対する肝切除前全身化学療法は安全に施行可能であったが,その効果についてはさらに検討する必要があると考えられた。 -
大腸癌肝転移切除術前に施行された化学療法による背景肝の病理組織学的肝障害度を予測する因子に関する検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description近年の化学療法の進歩に伴い,術前に全身化学療法を受けている症例に対する肝切除が増加しつつある。一方で,化学療法によって背景肝に肝障害が引き起こされることも報告されてきている。そこで,当科および関連施設で2004 年1 月〜2009 年5 月までの期間に施行された大腸癌肝転移切除例のうち,術前に化学療法が行われていた47 例を対象とし,背景肝の病理組織学的な類洞拡張および非アルコール性脂肪肝炎の程度について検討した。その結果,5-FU にirinotecan またはoxaliplatinを含むレジメンが施行された群において,5-FU 単独の群と比較して有意に類洞拡張の発生頻度が高かった。術前因子と肝障害度の関係では,女性またはbody mass index の高い症例において非アルコール性脂肪肝炎の発生頻度が高かった。術前に化学療法が施行された大腸癌肝転移に対する肝切除では,背景肝の肝障害に留意する必要があると考えられた。 -
mFOLFOX6 施行後に行った大腸癌肝転移肝切除例の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description実地臨床でmFOLFOX6 を施行した後に肝転移を切除した大腸癌7 例についてretrospective に検討した。mFOLFOX6導入理由は,切除不能肝転移2 例,肝外病変の存在あるいは疑い4 例,肝切除を患者が拒否1 例であった。mFOLFOX6 投与回数は平均12.7(10〜18)回で,2 例にはFOLFIRI も施行された。RECIST 分類による画像評価ではCR 2 例,PR 3 例,SD 2 例であった。切除された15 病変中6 病変が組織学的にgrade 3 に分類された。非癌部肝組織の病理組織学的検索では,grade 1 の類洞拡張を5 例に,FOLFIRI を併用した2 例にgrade 1 の脂肪肝炎を認めた。出血量,手術時間は同時期に術前化学療法せずに肝切除を行った17 例と同等であった。実地臨床でmFOLFOX6 施行後の肝切除のタイミングを決定することは容易ではないが,mFOLFOX6 が肝切除の安全性に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられた。 -
大腸癌同時性肝転移に対する肝動注化学療法の有用性に関する検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description大腸癌肝転移症例に対する肝動注化学療法の有用性を検討するため,同時性肝転移症例に対する肝動注化学療法の治療成績を検討した。過去12 年間に肝転移のみの非治癒切除因子を認め,術後に肝動注化学療法を行った症例は24 例(肝転移巣切除例8 例,肝転移巣非切除例16 例)であった。肝転移巣切除例8 例では,5 年以上の無再発生存を2 例に認め,生存期間中央値(MST)45 か月,平均生存期間53 か月,5 年生存率は44%であった。一方,肝転移巣非切除例16 例(H3: 11,H2: 3,H1: 2)では,CR 2 例,PR 10 例,SD 4 例であり,奏効率75%,治療効果別の予後には有意差が認められ,MST 25 か月,平均生存期間は38 か月であった。大腸癌同時性肝転移症例に対する肝動注化学療法の成績は良好であり,今後,有効な全身化学療法を併用することにより,治療成績はさらに向上するものと考えられた。 -
FOLFOX,FOLFIRI 療法でPD となった大腸癌肝転移に対する肝動脈内注入化学療法
36巻12号(2009);View Description Hide DescriptionFOLFOX,FOLFIRI 静注化学療法でPD となった大腸癌肝転移対して,cross over で5-FU,MMC の肝動脈内注入化学療法を行うと著しい抗腫瘍効果を得る例が多く,かなりの延命治療を得ることもある。 -
切除不能大腸癌肝転移症例における凝固療法併用肝切除の治療成績
36巻12号(2009);View Description Hide Description切除不能大腸癌肝転移症例に対する凝固療法の局所制御能を検討し,遠隔成績を両葉多発症例に限って切除単独症例と比較した。1994〜2006 年までに肝切除を施行した大腸癌肝転移138 例(肝切除単独96 例,肝切除+凝固療法27 例,凝固療法単独15 例)が対象。凝固療法後の治療部位再発は42 例中4 例(9.5%),88 病巣中5 病巣(5.7%)であり,局所制御能は94.3%と高率であった。両葉多発症例中の凝固療法群の平均転移個数は,肝切除単独群に比べ有意に多かった。両葉多発症例の遠隔成績では,治療後の肝無再発生存率は凝固療法例が肝切除単独例に比べ有意に低率であったが,生存率の差異は認めなかった。残肝再発および予後に関する多変量解析において凝固療法の有無は残肝再発因子,予後因子のいずれにも選択されなかった。大腸癌肝転移に対する凝固療法の局所制御能は良好であり,従来切除不能とされた両葉多発転移例に対し凝固療法を併用することで切除率および生存率の向上が期待される。 -
転移性肝癌に対する局所凝固療法の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description転移性肝癌治療の第一選択は手術であるが,近年マイクロ波凝固壊死療法(MCT)やラジオ波焼灼療法(RFA)といった熱凝固療法が発展しており治療が多様化している。今回われわれは転移性肝癌に対し開腹下に熱凝固療法単独治療,あるいは肝切除を併用して治療を行った19 例を対象とし検討した。肝予備能はいずれも良好で,8 例に熱凝固療法単独治療(RFA 6 例,MCT 2 例),11 例に肝切除との併用治療(RFA 5 例,MCT 6 例)を行った。熱凝固療法は39 病変に対し施行され,平均腫瘍径は13.7 mm,局所再発を8 病変(21%)に認めた。熱凝固療法施行群と肝切除単独群との比較において,腫瘍無再発生存率(DFS)と全生存率(OS)に差は認めなかった。転移性肝癌に対する治療は複数回にわたることも多く,肝切除と熱凝固療法との併用は切除療法単独と同等のDFS,OS が得られることより,残肝機能維持の観点からも熱凝固療法の併用は有用である。 -
食道癌の肝転移巣に対して化学放射線療法が著効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は78 歳,男性。前医で腹部食道扁平上皮癌StageIIIと噴門部腺癌StageIA と診断され,左開胸開腹下に腹部食道・噴門側胃切除術が施行されたが2 年後に肝転移を認め,当院で化学放射線療法(chemo-radiation therapy: CRT)を施行した。regimen はdocetaxel hydrate 30 mg/m2 をday 1,8,29,36 に静注し,S-1 60 mg/m2 をday 1〜14,day 29〜45 に内服した。放射線は1.8 Gy/25 fr(day 1〜21,day 29〜45)を照射した。病変は治療後1 か月に57%縮小,6 か月後に消失し,11 か月後もCR が持続している。食道癌肝転移へのCRT は有効性が期待できる。 -
食道癌術後の腹腔動脈周囲リンパ節転移,多発肝転移に対し放射線照射+肝動注化学療法が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は65 歳,女性。下部食道癌に対する食道亜全摘術後1 年目に多発肝転移と腹腔動脈周囲リンパ節転移を認めた。FP 療法が2 コース行われたが転移巣は増大した。そこで腹腔動脈周囲リンパ節に放射線照射,多発肝転移に対し肝動注療法を5 コース行ったところ,腹腔動脈周囲リンパ節転移は消失し肝転移巣は著明に縮小,血中SCC 値は6.1 ng/mL から0.7 ng/mL へと正常化した。肝動注3 コース目にgrade 3 の好中球減少を認めた以外は副作用なく経過した。しかし5 コース終了時に肝動脈の閉塞,側副血行形成による薬剤分布障害を認め,肝S3 に新規転移巣が出現したため肝動注化学療法を中止した。6週間の観察後S3 の新規転移巣は増大したが,既知の転移巣が消失したため切除を行った。術後2 か月,再発診断後10 か月が経過した現在新たな再発を認めていない。 -
Nedaplatin,Adriamycin,5-FU(NAF)併用化学療法が奏効(CR)したものの多発脳転移が制御できなかった再発食道癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳台,男性。2005 年3 月胸部食道癌(低分化型扁平上皮癌)と診断,食道亜全摘[Lt,pT3(pAd)pN3,pstageIII]術後補助化学療法(cisplatin: CDDP+5-FU 療法2 コース)を受けた。2006 年5 月に再発(右肺S1 と左鎖骨上リンパ節に転移)し,NAF 療法(nedaplatin 60 mg/m2: day 1,adriamycin 50 mg/m2: day 1,5-FU 700 mg/m2: day 1〜5)を9 コース実施,2007 年2 月CR とし終了した。5 月に頭痛精査の脳MRI にて左側頭葉に約5 cm の腫瘤を認め,切除術+術後全脳照射30 Gy を施行した。切除から5 か月後,異常行動にて新たな4 個の病変が判明,docetaxel+CDDP+5-FU 併用療法を2 コース実施したがPD となり,対症療法へ移行後3 か月で死亡された。肺やリンパ節の再燃はなく単独脳転移はまれだが,治療奏効時には脳転移への対策が必要であると考えられる。 -
化学放射線療法後の食道癌局所再発に対し光線力学療法が著効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は60 歳台,男性。嚥下困難を主訴に近医を受診した。上縦隔リンパ節転移を伴う3 型の進行食道癌を認め,T3N1M0,cStageIIIと診断した。手術は拒否されたため,化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)を行いCR を得た。その後のFDG-PET 検査で原発巣に淡いFDG 集積を認め,上部消化管内視鏡検査では,ルゴール不染帯から生検で扁平上皮癌が検出された。局所再発と診断し再度化学療法を施行したが,同病変は増大傾向であった。転移巣のコントロールは良好で,原発巣のみが表在性食道癌として再発していると判断したため,光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)を施行した。2 か月後にFDG-PET 検査と上部消化管内視鏡検査にて,局所再発・転移を疑う異常所見は認めず,局所再発に対しPDTが著効したと考えた。PDT は食道癌CRT 後の局所再発に対し,比較的安全で効果的な治療法と思われ,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
スキルス胃癌に対する腹腔内化学療法
36巻12号(2009);View Description Hide Description進行スキルス胃癌に対し,腹腔鏡による腹膜播種(P)の有無を診断し,腹腔洗浄細胞診(CY)を行った後,われわれは腹腔内化学療法と手術治療を加味した集学的治療を行ってきた。2002〜2005 年までは,CDDP の反復腹腔内投与(CDDP群,n=15)を,2006 年からはdocetaxel(DOC)の腹腔内投与とS-1 を併用した治療(DOC 群,n=9)を開始した。P やCY 陽性例は,CDDP 群12/15(80%),DOC 群8/9(89%)で,胃切除は,CDDP 群10/15(67%),DOC 群で5/9(56%)に施行された。CDDP 群,DOC 群ともに重篤な副作用は経験していない。CDDP 群は全例癌死したがDOC 群では4 例が健在で,全生存期間中央値は,CDDP 群10 か月,DOC 群22 か月とDOC 群の予後が良好であった(p=0.123)。以上より,DOC の腹腔内投与とS-1 を併用した治療は難治性のスキルス胃癌に対し有効な治療法であると考えられた。 -
Low-Dose CDDP の反復腹腔内投与により長期生存を得たP1CY1 胃癌症例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。TypeI+Type 0 IIc,T3 胃癌に対して手術に臨んだが,P1CY1 の結果であった。胃全摘術,D2郭清を施行した後にlow-dose CDDP の反復腹腔内投与とUFT の併用療法を,さらには5-FU/paclitaxel 併用療法を行った。また,癌性腹膜炎による腸閉塞に対して姑息手術を施行,経口摂取可能として外来化学療法を継続し,術後4 年1 か月の長期生存を得た。P1CY1 スキルス胃癌に対して原発巣切除後に,low-dose CDDP の反復腹腔内投与をはじめとして種々の化学療法レジメンを有効に用いることで,長期生存を得る可能性が示された。 -
集学的治療が奏効し長期生存を得られている再発胃癌(肝,リンパ節転移)の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。2000 年12 月,胃癌2 病変に対し胃全摘術を施行した(MU pT2(ss)pN1,f StageII,L pT2(mp)pN1,f StageII)。術後補助療法としてUFT(300 mg/day)の投与を行っていたが,術後1 年3 か月目に肝S6 に転移巣が出現しRFA を施行した。肝転移を認めたことからS-1 へ変更した。その後,RFA 治療部の再燃を来しRFA を行うも,コントロール不良のため初回治療から2 年6 か月目に肝後区域切除術を施行した。初回治療から5 年目(肝切除後2 年)に傍大動脈周囲リンパ節への転移が疑われた。その後はNC であったが難治性の口内炎が出現しため,5'-DFUR+PTX へ変更した。5'-DFUR+PTX を6 コースまで行い,PET-CT にて傍大動脈周囲リンパ節以外に転移巣を認めなかったことから,初回治療から6 年目に単発のリンパ節再発に対し4.5 Gy×8 回 計36 Gy の放射線治療を行った。放射線治療後5'-DFUR+PTX を5 コース行ったところでPET-CT にてNo.16 リンパ節転移部は縮小し,また新たな病変の出現を認めなかったため,2006 年8 月から休薬とした。以後,初回治療から8 年6 か月(再発から7 年4 か月)が経過した現在に至るまで再発は認めていない。 -
ESD 施行6 か月後に局所およびリンパ節再発を来した高齢者胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は81 歳,女性。高脂血症にて,かかりつけ医より貧血の精査目的に当院を紹介受診し,上部消化管内視鏡検査にて胃体中部小弯に15 mm 大のIIa+IIc 病変(生検ではtub2)を認めた。この時点での手術も考慮されたが,まずは診断も含めた胃内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術: ESD)の方針となり施行,病理組織診断にてsm2(por2>tub2),ly2,v2 であった。追加手術の必要性を説明したが,了承は得られず厳重経過観察となった。ESD 施行2 か月後の内視鏡所見では再発所見なく,生検においても悪性所見はみられなかった。しかしESD 施行6 か月後の内視鏡所見にて局所は2 型病変となっており,腹部造影CT では小弯側リンパ節の腫大がみられた。幽門側胃切除+D2 リンパ節郭清を施行し,最終病理診断はT2(ss)N2H0P0M0CY0,StageIIIA であった。補助化学療法は副作用が強く出現したために中断したが,手術から1 年6 か月経過した現時点で再発なく,外来にて経過観察中である。低侵襲な局所療法である内視鏡治療の適応拡大が提唱されて久しいが,粘膜下層への浸潤ある早期胃癌の治療方針,特に手術施行の有無は個々の症例について慎重に吟味する必要があることが再認識された。 -
術後肝転移,腹膜転移に対して肝動注,腹膜転移巣切除,全身化学療法が奏効した大腸癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description大腸癌術後多発肝転移に肝動注療法を施行しCR を得た後,続発した腹膜転移に対して,腹膜播種巣の切除とFOLFOX,FOLFIRI による全身化学療法を施行しCR を持続している若年者大腸癌症例を経験した。症例は33 歳,男性。急性虫垂炎穿孔性腹膜炎のために緊急手術を施行されたが,術中に盲腸癌とS 状結腸癌を発見され切除された。術後肝転移(H2)のために肝動注療法(HAI: 5-FU total 63 g)を施行し肝転移の消失をみたが,術後16 か月に吻合部再発と腹膜転移(P3)が発生した。直腸前方切除術と回腸上行結腸の切除術を施行し,可及的に転移巣を切除した。術後FOLFOX(9 コース),FOLFIRI(20 コース)による全身化学療法を施行した後,capecitabine 15 コースを持続し,無再発生存を4 年7 か月得ている。 -
術前FOLFOX 療法が著効し根治手術に寄与したと考えられる進行直腸癌の2 症例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例1 は54 歳,男性。血便を主訴とし,精査にて前立腺直接浸潤を伴う直腸癌と診断され,術前にFOLFOX4 を4コース施行した。原発巣の縮小を確認し(効果判定PR),根治手術を施行した。前立腺は温存することができ,病理検査にて外科的剥離面は陰性で,手術根治度はA と判定した。症例2 は49 歳,女性。生理不順を主訴とし,精査にて両側卵巣,傍大動脈リンパ節転移と子宮直接浸潤を伴う直腸癌と診断され,術前にFOLFOX4 を1 コース,mFOLFOX6 を6 コース(うち,bevacizumab 併用を5 コース)施行した。原発巣・両側卵巣転移巣が縮小,リンパ節腫大が消失し(効果判定PR),根治手術を施行した。病理検査にて外科的剥離面は陰性,術後のFDG-PET にて傍大動脈リンパ節の転移所見の消失を確認し,R0で手術根治度B と判定した。局所進行大腸癌に対する術前化学療法は,手術根治性や周囲臓器温存に寄与する可能性が示唆された。 -
直腸癌(T4N2M1)の局所制御とQOL 維持に化学放射線療法が有効であった1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は78 歳,男性。主訴は血便。多発性骨転移を伴う進行直腸癌,Rb,T4N2M1(bone)と診断。人工肛門回避の希望が強く局所制御として化学放射線療法を,全身化学療法として経口tegafur/uracil(UFT)/calcium folinate(Leucovorin: LV)を施行した。原発巣は著明に縮小し,血便,通過障害の消失を認めた。また,骨病変も縮小効果を認めた。以後,3 年間にわたり良好なQOL を維持できたが,局所腫瘍再燃を認めたので人工肛門造設術と再度の放射線照射を行い,初回治療から4 年後に永眠された。他臓器転移を伴う根治困難な直腸癌の初回治療としての化学放射線療法の有用性を考える上で興味深く,症例によってはQOL 維持の観点から有効な治療法の一つとなり得る可能性がある。 -
ストーマ造設先行と局所放射線照射が奏効し根治切除が可能となったエホバの証人の出血性進行直腸癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description66 歳,女性。下血および貧血を主訴に受診し,下部直腸癌と診断した。受診時,Hb 8.8 g/dL。腹部CT,骨盤MRI にて下部直腸に最大径43×45 mm 大の腫瘍を認めた。増血療法下に出血制御の目的で入院7 日目,S 状結腸に人工肛門を造設した。栄養状態および貧血の改善後,放射線化学療法(FOLFOX4: 1 cycle,骨盤内照射: 40 Gy)を施行し,腫瘍の縮小(縮小率75%)を得た。治療開始3 か月後に希釈式自己血輸血550 mL 下に腹会陰式直腸切断術を施行した。術中出血量570 mL,術直後最終Hb 値は7.5 g/dL であった。術後膣瘻を形成し,会陰創よりそう爬ドレナージを要した。病理所見はmoderatelydifferentiated adenocarcinoma,StageIIIa であった。術後2 年7 か月現在,無再発生存中であり,持続出血を有する進行直腸癌を担うエホバの証人に対し人工肛門を造設することで失血性貧血を改善し,術前放射線療法による腫瘍径縮小を得て,安全な根治術を施行し得た。 -
横行結腸癌の同時性肝転移に対するリザーバー肝動注療法にて動注用カテーテルが断裂し消化管出血を来した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description下行結腸癌,多発性肝転移の症例に対しGDA coil 法でリザーバー肝動注用カテーテルを留置し,CDDP+5-FU を用いた動注化学療法を施行した。開始より約5 か月経過した時点で,ほぼ腫瘍は縮小し外来にて経過観察となった。再発する可能性を考え,動注カテーテルは留置のまま経過観察を続けたが,約2 年3 か月経過した時点で肝内に再発した。再度動注化学療法を施行し,再度腫瘍は著明に縮小した。ところが吐血にて来院したため,緊急の上部消化管内視鏡を施行し,十二指腸球部に断裂したカテーテルの突出と同部よりの出血を認めた。このため,断裂したポート側カテーテルを血管造影下にコイルにて塞栓しながら,抜去後の動脈より出血しないように抜去した。本症例から,肝動注カテーテルが長期留置となると破損・逸脱などを考慮する必要性が示唆されたため,長期肝動注カテーテル留置における合併症について文献的考察を加え報告する。 -
肝動注化学療法後に発症した感染性仮性動脈瘤の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。発熱と黄疸により救急搬送された。腹部造影CT により膵頭部癌による閉塞性黄疸と診断し,PTBD による減黄後に膵頭部十二指腸切除術(PD-II: T3,N1,stageIII)を施行した。肝転移予防を目的として,術後6 週間目から5-FU 1,000 mg×6 日間の動注化学療法を行った。動注カテーテルは右大腿動脈から挿入し,化学療法終了まで1 週間留置した。カテーテル抜去後,5 日目に発熱およびカテーテル抜去部位の発赤を認め,CT により大腿動脈感染性仮性動脈瘤と診断した。抗生剤投与開始2 日目に穿刺部位から排膿,出血を認めたため,縫合止血,ドレナージ術を行った。感染が軽減した段階で,感染性仮性動脈瘤発症後2 週間目に外腸骨動脈-大腿動脈バイパス術(人工血管)を施行した。その後の経過は良好で,バイパス手術後5 週間目に退院となった。発症後は速やかに外科的ドレナージを行い,感染がコントロールできた時点でバイパス術を行うべきだと考えられた。 -
膵癌術後肝転移に対して5-FU 大量肝動注およびGemcitabine 併用療法が著効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description膵癌術後肝転移再発に対して5-FU 大量肝動注(WHF)およびgemcitabine(GEM)併用療法が著効した1 例を経験した。患者は65 歳,男性。膵頭部癌にて膵頭十二指腸切除術を施行。pT4,pN1,M0,fStageIVa にて,術後よりGEM 単剤による補助化学療法を施行した。術後6 か月の腹部造影CT 検査にて多発性肝転移が指摘されたため,WHF(1,000 mg/m2: 週1 回5 時間動注)およびGEM(1,000 mg: 週1 回30 分静注)を開始した。治療開始後8 か月の腹部造影CT で肝転移巣はすべて消失した。その後の再発に対しても化学療法,放射線治療を併施した集学的治療を行い,肝転移再発から28 か月,術後34 か月生存し得た。肝転移の制御は,膵癌治療成績向上のためには不可欠である。本症例では,肝転移巣の制御が良好であったため,肝再発後約28 か月の長期生存を得ることができたと考えられる。本治療は,肝転移巣に対する制御効果が極めて高く,切除不能症例および補助化学療法としての有用性も示唆された。 -
集学的治療を施行し長期生存を得た切除断端陽性胆管癌の3 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description今回われわれは切除断端陽性胆管癌に対して集学的治療を施行し,長期生存が得られた3 例を経験したので報告する。症例1: 58 歳,男性。中下部胆管癌に対してPPPD を施行。最終病理結果でHM 2 と診断された。術後に肝転移,吻合部再発を来し,RFA,全身化学療法,肝動注療法併用の放射線化学療法を施行したが,術後5 年10 か月後,胆管炎に伴う肝膿瘍を併発し永眠された。症例2: 72 歳,男性。上中部胆管癌に対して手術をするも,術中にDM 2,EM 2,HM 2 と診断され肝外胆管切除のみを施行。放射線療法,全身化学療法,肝動注療法を施行したが,術後2 年6 か月後に癌死された。症例3: 75 歳,男性。上中部胆管癌に対して手術を施行するも,術中にDM 2,EM 2,HM 2 と診断され肝外胆管切除のみを施行した。放射線化学療法,肝動注療法,全身化学療法を行ったが,術後3 年6 か月後に癌死された。 -
胆管癌術後肝転移に対するRFA 後に生じた挙上空腸穿孔に伴う胆汁性腹膜炎に対して各種IVR にて治療し得た1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳台,男性。2006 年8 月,下部胆管癌にて膵頭十二指腸切除術を施行(中分化型腺癌,pT3,pN1,H0,P0,M0,StageIII)後,他院にて温熱療法,活性化リンパ球,GEM,RFA,定位放射線治療,S-1,樹状細胞リザーバー動注療法を施行するも最大径17 mm 大の多発肝転移残存を認め,紹介受診。2008 年9 月にRFA を施行し良好に焼灼し得たが,術後2 時間後より腹痛が出現。造影CT にてS4 に近接する挙上空腸に造影不良域を認め,DIC-CT にて同部からの胆汁漏出を認め,空腸穿孔に伴う胆汁性腹膜炎と診断。同日より経皮的に肝床部,Douglas 窩,左右傍結腸溝にドレーンを留置。術病日 7 日目タール便排出と敗血症に伴う血圧低下があり,肝床部ドレーンを透視下に挙上空腸穿孔部を介して挙上空腸肛側へ誘導。臨床所見の改善は乏しく,14 日目に新たに経皮経肝的に膵と吻合された挙上空腸盲端側へドレーンを留置。各ドレーン排液減少後抜去,空腸盲端ドレーンのみを徐々にsize up。51 日目に16 Fr シースを挿入し,1 本のT-tube(先端は挙上空腸盲端側と肛側)留置に成功。胆汁膵液瘻は消失し退院となった。RFA に伴うまれな重篤合併症を各種IVR にてrecover し得た1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。 -
肝細胞癌に対する局所療法としての肝切除の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は76 歳,男性。慢性B 型肝炎患者。高血圧,心房細動で近医加療中に肝腫瘤を指摘され,当院に入院した。入院時の検査成績は軽度の肝障害を認め,肝障害はgrade B,腫瘍マーカーはAFP 12 ng/mL,PIVKA-II 10,169 mAU/mL であった。超音波検査にて肝内側区に径8 cm の低エコー腫瘤を認め,門脈造影検査で門脈右枝は伸展していたが,明らかな腫瘍塞栓は認めなかった。肝動脈造影検査で左右の肝動脈より栄養される径8 cm のhypervascular tumor とS5 に2 cm のsatellite nodule を認めた。CTHA では,内側区域から前区域にかけて強く濃染を認め,またS5 に径2 cm の濃染像を認めた。CTAP では,腫瘍部は門脈血流欠損域として認められた。肝細胞癌cT3,cN0,cM0,cStageIIIと診断した。宿主の肝機能が良好で肝切除が可能と判断し,手術を施行した。術後経過は良好で,術後3 週間で退院した。肝細胞癌は膨張性に発育するため,肝機能の良好な症例は積極的な肝切除により,根治的治療が可能と思われた。 -
肝細胞癌術後の腹膜播種というまれな再発に対し局所切除が奏効した症例
36巻12号(2009);View Description Hide Description肝細胞癌術後の腹膜播種再発を来した1 例を経験したので報告する。症例は58 歳,女性。健康診断の腹部超音波検査にて,肝左葉S3 に径4.5 cm 大の占拠性病変を指摘された。肝細胞癌の診断の下,2006 年5 月に肝左葉切除術を施行した。切除標本の病理診断は,中分化型肝細胞癌,eg,fc(−),sf(+),s0,vp1,vv0,va0,sm(−),n0,pT3N0M0 のfStageIIIであった。術後1 年11 か月目の採血にてPIVKA-IIが309 mAU/mL と上昇した。FDG-PET を施行したところ骨盤内に淡い集積を認めた。腹部造影CT 検査,超音波検査を行い骨盤内に腹水を伴う単発の腫瘤を認め再発が疑われた。治療方法につき患者と相談の上,局所療法として開腹手術を行うこととした。術中所見では,骨盤内に腹水を少量伴う被膜を有する腫瘤の他,小腸間膜に腹膜播種様の結節を3 か所認め,これらをすべて切除した。切除検体の病理組織診断は被膜を有する腫瘤,腹膜結節ともに肝細胞癌と一致し,肝細胞癌術後の腹膜播種との最終診断であった。肝細胞癌術後の腹膜播種は非常に珍しく,一般的に肝内再発が多く肝外再発は肺や骨,腔内臓器に認められることが多い。現在は術後経過観察としているが,今回の局所療法にて再々発の兆候なく術後経過良好である。 -
皮膚悪性腫瘍に対する局所制御の試み
36巻12号(2009);View Description Hide Description対象および方法: 2005 年から4 年間に皮膚悪性腫瘍と診断され,リンパ節郭清を必要とされた18 例に対してセンチネルリンパ節(SLN)生検とバックアップ郭清を行い妥当性の検討を行った。また,興味ある症例も呈示した。結果: 乳房外Paget's 3 例,メルケル細胞癌2 例,悪性黒色腫13 例であった。年齢は37〜73 歳,男女比は12:6 であった。原発部位は,外陰部3 例,大腿部1 例,上腕部3 例,指部2 例,趾部3 例,足底部3 例,背部3 例であった。SLN 同定率は13/18(72.2%)であった。下肢原発皮膚悪性腫瘍に対しては,SLN の同定率は100%であった。上肢・体幹原発皮膚悪性腫瘍ではSLN の同定は1 例のみあり,所属リンパ節およびリンパ流の再検討が必要と思われた。結語: 下肢原発皮膚悪性腫瘍については,色素法によるSLN の妥当性が有用であると考えられた。 -
癌局所制御としての高齢者乳癌に対する局所麻酔下腫瘍摘出術の功罪
36巻12号(2009);View Description Hide Description併存疾患をもつ高齢者乳癌に局所麻酔下腫瘍摘出術を行った後,急速にリンパ節転移,肺転移が進行した症例を経験した。症例は91 歳,女性。左乳房腫瘤に家族が気付き,当科を受診した。来院時,左乳房C 領域に直径3 cm の腫瘤を触知した。穿刺吸引細胞診ではClassV。針生検では浸潤性乳管癌,ER(+),PgR(+),HER2 score 3 の診断であった。全身検索の結果,T2,N0,M0,StageIIA の診断であった。腫瘤摘出術+ホルモン治療を家族が選択されたので局所麻酔下に腫瘍を摘出した。病理学的な切除断端は陰性であった。その後アロマターゼ阻害剤を投与して経過を観察していた。術後6 か月目の検査で肺転移と腋窩リンパ節転移を認めたため,アロマターゼ阻害剤の種類を変更して対応したが,転移巣が急速に増大し,術後8 か月で永眠した。局所麻酔による低侵襲な手術でも原発巣の切除後急速な転機をとることもあり,高齢者に対しては慎重に適応を決定すべきものと思われた。 -
進行性乳癌に対する動脈内注入化学療法著効例
36巻12号(2009);View Description Hide Description切除不能の進行性乳癌に対し,内胸動脈または鎖骨下動脈にカテーテルを挿入して動脈内注入化学療法(cyclophosphamide,epirubicin,adriamycin,5-FU)を行うと著しい抗腫瘍効果を得てdown staging に成功し,切除不能の乳癌が切除可能となることがある。 -
化学療法(CBDCA+PTX)と γ ナイフ治療によりpCR が得られた脳転移再発を伴う進行肺癌(多発癌)の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は61 歳,女性。対側肺に多発癌と考えられる腫瘤を有し,また両側縦隔リンパ節転移を伴う進行肺癌(扁平上皮癌)に対して化学療法(CBDCA+PTX)を施行した。原発巣とリンパ節転移に対して著効し,原発巣はpCR が得られた。術後7 か月目に単発性脳転移が出現,γ ナイフ治療が奏効し,脳転移巣もpCR が得られた。原発巣,脳転移巣のいずれも外科的切除によりpCR が確認され,γ ナイフ治療後3 年間再発を認めていない。 -
IFM,CDDP が奏効した後腹膜脱分化型脂肪肉腫の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は53 歳,男性。腹部膨満感を主訴に受診した。腹部は膨隆し,腹水貯留がみられCT にて後腹膜に多発する巨大腫瘤を認めた。後腹膜脂肪肉腫の診断にて腫瘍摘出術,小腸・S 状結腸合併切除術,人工肛門造設術を施行した。腫瘍は腹腔内に多発しており,暗赤色で易出血性の巨大な腫瘍のみを摘出し,黄色の腫瘍は切除不能のため残存した。病理組織学的に暗赤色の腫瘍は脱分化型脂肪肉腫であり,黄色の腫瘍は高分化型脂肪肉腫であった。術後1 か月で腹膜播種が増悪し,人工肛門部にも腹膜播種結節の浸潤を認め,多発性肝転移の出現を認めた。VAC療法(VCR 1.5 mg,ACD 0.5 mg,CPA 900 mg)を行うもPD であり,second-line としてweekly IFM(2 g)+CDDP(30 mg)を施行したところ,人工肛門に浸潤した腫瘍が縮小し,腹部膨満感が改善するなどQOL の改善も得られ,腹膜播種に対してPR と判定された。しかし肝転移は増大し,術後6 か月に永眠された。脱分化型脂肪肉腫に対するIFM+CDDP 療法の有用性が示唆された。 -
難治性精巣腫瘍に対するRFA の治療成績
36巻12号(2009);View Description Hide Description緒言: 近年,経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)の適応が拡大してきており,その有効性も確立されてきている。われわれは,化学療法後に残存する難治性精巣腫瘍の転移巣(何らかの理由で手術不適)に対してRFA を施行したので,その治療成績について報告する。対象と方法: 2000 年11 月〜2008 年12 月までの間に,京都府立医科大学泌尿器科において進行性・難治性精巣腫瘍に対してRFA を施行した19 例,42 病変を対象とした。肝転移腫瘍6 例(10 病変),肺転移腫瘍13 例(32 病変),年齢は中央値36 歳(20〜53),腫瘍径は中央値12 mm(2〜40)であった。治療機器は,Radionics 社製Cool-tip RF system(内部冷却式直針電極)を使用し,静脈麻酔または局所麻酔下で超音波あるいはCT ガイド下に経皮的に腫瘍部を穿刺し,焼灼した。治療効果は造影CT または造影MRI を施行し,腫瘍部の造影効果の有無で判定した。腫瘍部に造影効果の残存が認められた場合は,治療を繰り返し行った。結果: 現時点で評価可能症例は28 病変で,複数回治療を行った症例は9 病変であった。観察期間は中央値25 か月で,complete response(CR)と判定された症例は,RFA 施行前に腫瘍マーカーが陰性化していた群(根治的目的)では12 例中12 例(100%)であり,マーカー陽性のままRFA を施行した群(姑息的目的)では16 例中12 例(75%)であった。また,腫瘍径が30 mm 以下の群ではCR と判定された症例が24 例中24 例(100%),30 mm を超える群では4 例中0 例(0%)であった。合併症として気胸を認めたものが9 例,血胸が2 例あったが,ドレーン留置などで最終的には治癒しており,周辺臓器損傷などの合併症は認められなかった。結論: RFA は,進行性・難治性精巣腫瘍に対する救済療法として新たな選択肢になる可能性があると考えられる。 -
術前化学放射線療法が著効した肺尖部胸壁浸潤癌の1 切除例
36巻12号(2009);View Description Hide Description肺尖部胸壁浸潤癌に対して化学放射線療法後に手術を行い,長期無再発生存している症例を報告する。症例は50 歳台,男性。左上肢尺側のしびれと左肩甲背部痛の主訴で来院し,CT にて左肺尖部肺実質内から上方の胸壁に伸展し鎖骨上窩に及ぶ4 cm 大の腫瘤を認めた。cT3N0M0 肺尖部胸壁浸潤癌の診断で,術前治療として化学放射線療法を実施した。腫瘍は2 cm大に縮小し,上縦隔リンパ節のサンプリングを伴う肺・胸壁切除術を施行。術後補助療法は行わずCT で経過観察し,6 年経過して再発兆候なく健在であり,術前化学放射線療法の効果は著効であったと判断した。リンパ節転移を伴わない肺尖部胸壁浸潤癌に対する術前化学放射線療法と手術による集学的治療は有望と考えられる。 -
原発性肺癌の癌性胸膜炎に対する胸腔内Hypotonic Cisplatin 療法の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description癌性胸膜炎を伴う原発性肺癌5 例に対して,一瀬らが開発した胸腔内hypotonic cisplatin 療法を肺切除術の術中1 例,術後1 例,非切除3 例に施行した。50 μg/mL のcisplatin 蒸留水溶液を胸腔内に注入し,術中は10 分,病室では30 分間曝露後に排液した。有害事象は特にみられず。その後,胸膜播種主体型の2 例(切除例)で単剤化学療法を2 レジメン施行後にgefitinib を投与し,各々26 か月,69 か月で原病死。胸膜播種,胸水併存の1 例で2 剤併用を含む化学療法を5 レジメン施行し,41 か月で原病死。胸水主体型の2 例でgefitinib を投与し,1 例は21 か月PR を維持中,1 例は19 か月担癌生存中。5 例とも患側の胸水貯留は認めず。本法は癌性胸膜炎を伴う肺癌に対し,胸水貯留を抑える効果により呼吸困難などの症状改善が期待され,全身化学療法の円滑な実施のために有用である。 -
放射線治療ならびに外科切除で局所制御し得た膿胸関連リンパ腫の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。主訴は右背部から前胸部にかけての疼痛と発熱。21 歳時に肺結核にて人工気胸術を受けている。来院時の胸部単純CT で,以前からある右膿胸壁の一部に壁肥厚を認めた。当初,膿胸再燃と考え,肺剥皮術を行ったが,ドレナージ不良のために敗血症を併発,開窓術を行った。剥皮した組織より膿胸関連リンパ腫(pyothorax-associated lymphoma:PAL)と診断された。その後,全身状態は改善したが炎症反応が持続,3 か月で急激な腫瘍の増大を認め,胸部単純CT で肋骨浸潤が疑われた。まず40 Gy の放射線療法を行い,腫瘍の著明な縮小を得た後,右胸膜肺全摘術を行った。切除標本では腫瘍細胞は残存していなかった。術後補助化学療法は施行せず,5 年後に誤嚥により死亡するまで無再発であった。PAL は遠隔転移が少なく,局所進展の傾向が強い。本疾患には,化学療法・放射線療法・外科手術を組み合わせた局所制御を行うことが重要である。 -
胃癌および胃GIST 術後に発症した左鼠径部悪性リンパ腫の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。2005 年3 月,幽門前庭部の3 型胃癌と胃体上部の胃粘膜下腫瘍に対して幽門側胃切除術+D2 および胃部分切除術が施行された。病理組織の結果は胃癌がmoderately differentiated adenocarcinoma,ss,ow(−),aw(−),n1(+)で,f-StageII,根治度A,胃粘膜下腫瘍がGIST であった。術後にS-1の補助化学療法を開始したが,脳梗塞を発症したため中止となった。根治術後3 年4 か月目の腹部CT 検査にて左鼠径部リンパ節腫大を指摘され胃癌再発などが疑われたが,PET-CT 検査の結果,左鼠径部リンパ節のみの孤立性病変と診断された。2008 年9 月,左鼠径部リンパ節摘出術を施行した。病理組織の結果は小型リンパ球様細胞の結節状の増殖を認める濾胞性リンパ腫(grade 1)であった。現在,無再発にて経過観察中であるが,濾胞性リンパ腫の再発率は比較的高いため,慎重な定期観察が重要と考えられる。 -
進行直腸癌に対する放射線化学療法の効果の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description4 例の進行直腸癌に対してS-1(100 mg/day/body 4 週間内服)もしくは5-FU(500 mg/body 週1 回静脈投与)とleucovorin(100 mg/body)による放射線化学療法を施行した。治療効果は4 例ともPR であり,うち2 例は治療後に根治的手術が可能であった。2 例の組織学的効果はそれぞれGrade 2 とGrade 3 であった。予後については,経過観察期間は4 か月〜5 年3 か月で全例生存中である。有害事象についてはgrade 3 の好中球減少1 例,grade 3 の食欲不振が2 例であった。4 例中3 例は化学療法が奏効しにくいmucinous adenocarcinoma であることから,直腸癌に対するS-1 や5-FU による放射線化学療法の有用性が示唆された。 -
S-1 併用放射線療法により組織学的CR が得られた直腸癌骨盤内再発の1 切除例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は58 歳,男性。直腸癌(Ra,SE,N0,StageII)根治切除術後1 年2 か月のサーベイランスCT において,仙骨前面に20×15 mm 大の骨盤内局所再発を認めた。腫瘍はS3/4 前面を中心とし上縁はS2 にかかる部位であったため,術前に化学放射線療法を施行した。治療後1 か月のCT 検査とMRI 検査では,再発巣のわずかな縮小を認めるのみでcSD の判定であったが,MRI 拡散強調画像で著明に信号低下していることから,pCR の可能性も考えられた。手術待機中の継続治療としてirinotecan+S-1 療法を4 コース施行し,腹会陰式直腸切断術を施行した。病理組織診断では広範な線維化を認めるのみで,pCR と判断した。骨盤内局所再発に対しては外科的切除が最も根治性に優れていると考えるが,高位の骨盤後方あるいは骨盤側方に浸潤する再発は,剥離面に癌の遺残するリスクが高くなり,症例の選択が重要と考える。術前化学放射線療法は骨盤内再発の治癒切除率を向上させる可能性があり,またpCR も期待できることが示唆された。 -
放射線療法とS-1 内服により長期生存が得られている直腸癌骨盤内再発の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description切除不能再発直腸癌に対し,放射線療法およびS-1 内服による化学療法の併用にて良好なQOL を保っている症例を経験した。症例は51 歳,男性。直腸Rb の2 型癌に対し2005 年7 月4 日,ハルトマン手術を受けた。病理検索の結果,tub 2,pA,ly1,v1,pN0。術後補助化学療法としてUFT/LV 内服を開始するも肝機能障害が出現したため1 コースにて中止し,以後経過観察とされた。2006 年1 月,CT にて骨盤内再発を指摘。CA19-9 は3,200 U/mL と高値を呈していた。2006 年4 月10 日に再発巣切除目的で手術を行うも腫瘍浸潤高度にて切除不能であったため,術後に計56 Gy の放射線療法を行い,その後S-1 120 mg/day・4 週投与2 週休薬を開始した。CA19-9 は2007 年3 月には正常化。CT 上,骨盤内再発巣は長期SD を維持した。化学療法は計16 コースで中止し,以後経過観察としているが,2009 年6 月現在PS 0 であり腫瘍マーカーは正常範囲,CT 上も腫瘍の増大はみられていない。 -
他臓器浸潤直腸癌に術前化学放射線療法を施行した10 例の経験
36巻12号(2009);View Description Hide Description他臓器浸潤した直腸癌に対して術前化学放射線療法を施行した10 例の治療成績を検討した。放射線療法は総照射量を40〜50 Gy とし1 回照射量1.8〜2.0 Gy を20〜25 回に分割して週5 回照射した。化学療法は5-FU 500 mg/body/ day 持続静注4 例,UFT 300 mg/m2+Uzel 75 mg/body 内服2 例,S-1 80 mg/ m2 内服4 例であった。grade 2 以下の有害事象を3 例に認めたが,全例が治療を完遂した。化学放射線療法終了1 か月後の奏効率は60.0%(6 例)で,5 例で浸潤所見が消失した。7 例で他臓器合併切除されたが,8 例で根治度A またはB の手術が可能であった。組織学的には5 例で他臓器浸潤なく,このうち1 例は腫瘍の遺残を認めなかった。術後全例に縫合不全1 例を含む合併症を認めたが,いずれも保存的に改善した。根治度A の手術を施行し得た7 例中1 例に肝と局所再発,1 例に肝再発を認めたが,5 例は無再発生存中である。化学放射線治療は他臓器浸潤した直腸癌に対して安全に施行が可能で,切除率および予後の向上が期待された。 -
DWIBS を用いた下部直腸癌術前化学放射線療法の効果判定
36巻12号(2009);View Description Hide Description直腸癌術前化学放射線療法(CRT)の効果判定におけるMRI 拡散強調背景信号抑制画像(DWIBS)の有用性について検討した。対象は当科でCRT 後根治手術を施行した進行下部直腸癌12 例。化学療法は5-FU 350 mg/m2+l-LV 35 mg/ m2(第1・3・5 週,週5 日持続投与),放射線療法は1.8 Gy/回(第 1 〜 5 週,週5 日,計45 Gy/25 回)とし治療前と治療終了3 週後にDWIBS を撮像した。腫瘍部のapparent diffusion coefficient(ADC: 見かけの拡散係数,×10 −3 mm2/s)を計測し,組織学的奏効度と比較した。組織学的奏効度はGrade 3: 2 例,Grade 2: 5 例,Grade 1: 5 例であった。全例でCRT 後にADCの上昇を認めた(CRT 前 vs 後= 0.75±0.13×10 −3 mm2/s vs 1.23±0.26×10 −3 mm2/s,p<0.001)。CRT 後のADC は,Grade 3 で1.71±0.38×10 −3 mm2/s,Grade 2 で1.25±0.10×10 −3 mm2/s,Grade 1 で1.02±0.08×10 −3 mm2/s であり,治療効果が高いほど高値を示す傾向がみられた。CRT 後のADC にカットオフ値を設定することにより,DWIBS は直腸癌CRT 効果予測に有用となる可能性が示唆された。 -
盲腸癌術後出現した肝腫瘍,肺腫瘍に対し放射線治療が奏効している1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description患者は85 歳,男性。2003 年11 月,前医にて盲腸癌と総胆管結石に対して右半結腸切除術と胆嚢摘出術,胆管切開砕石術を施行。病期診断は,高分化腺癌,ss,ly2,v0,n(−),P0,H0,M(−),stageIIであった。術後補助化学療法は施行されず。2006 年3 月初め,腹痛,発熱が出現し,近医で胆管結石再発の診断を受け,当科に紹介入院。入院時,腹部CT,MRI 検査にて肝右葉S6 に径3 cm 大の腫瘍が同定された。患者は手術やRFA 治療を拒否したため,放射線治療(50 Gy/25 Fr)を施行した。肝腫瘍生検診断は,低分化のadenocarcinoma と診断された。照射前のCEA 35.47 ng/mL と高値であったが,その3 か月後には4.1 ng/mL と正常化し,画像上CR となった。2008 年5 月,咳嗽の訴えで右下肺に径2 cm の腫瘍を認め,これに対しても放射線治療(66 Gy/33 Fr)を施行。照射終了後,画像上CR となり,現在経過観察中。盲腸癌術後出現した肝腫瘍,肺腫瘍に対しての放射線治療が有用である可能性が示唆された。 -
直腸癌術後肺再発に対しCetuximab が著効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。直腸癌(StageIIIb)に対し,低位前方切除術が施行された。術後,肝,肺,脳,リンパ節転移を認めた。FOLFOX4 を26 サイクル,FOLFIRI を11 サイクル施行したが,肺転移が増悪し,cetuximab+irinotecan 併用療法を開始した。酸素吸入しながら車椅子で移動していたのが,海外でゴルフができるようになるまでにQOL が改善された。 -
Cetuximab 単独治療にてPR が得られた症例
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionはじめに: cetuximab 単独治療にてPR が得られた1 例を報告する。症例: 61 歳,女性。結腸癌術後多発肝転移に対し,1.irinotecan+S-1 療法にてPD。2.mFOLFOX6+bevacizumab ではPR であるが末梢神経症状grade 3 が出現し中止。3.FOLFIRI + bevacizumab ではSD であるが神経症状grade 3 が持続したため中止。4.5-FU 毎週肝動注+irinotecan 隔週全身投与でもSD であるが神経症状grade 3 が遷延。irinotecan 投与により神経症状の増悪がみられたため,cetuximab 単独治療したところPR を得て4 か月以上維持している。K-ras 遺伝子はwild-type であった。結語: PD または有害事象によりoxaliplatin やirinotecan が使用できない場合でも,cetuximab 単独投与は他の有害事象との相互作用が少なく,K-ras 遺伝子変異のない症例では効果が期待できる。 -
FOLFOX/FOLFIRI 療法にて組織学的CR が得られた大腸癌多発肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description直腸S 状部癌多発肝転移に対しFOLFOX/FOLFIRI 療法を施行した後,肝転移に対し肝切除を行い,組織学的にcomplete response(CR)が得られた症例を経験したので報告する。症例は40 歳台,女性。血便を主訴に受診した。精査にて直腸S 状部癌多発肝転移と診断し,直腸前方切除を施行した。術後FOLFOX4 療法を15 コース施行した。末梢神経障害のためFOLFIRI 療法へ変更し11コース施行した。肝転移は縮小し切除可能と判断した。原発巣切除より14 か月後に肝右葉およびS2 部分切除を施行した。病理診断では腫瘍はすべて変性壊死しており,組織学的CR と判断した。大腸癌肝転移において,FOLFOX/FOLFIRI 療法は切除不能例を切除可能とさせることで予後を改善する可能性があると考えられた。 -
mFOLFOX6 療法終了後,2 年以上CR が継続している直腸癌多発肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳台後半,男性。直腸癌Rb に対して2006 年1 月に他院で直腸低位前方切除術を施行し,病理診断はpA,pN1,H0,P0,StageIIIaであった。5 月,退院時のCT 検査にて転移性肝腫瘍が疑われ当院へ紹介となった。当院受診時のSPIO-MRI 検査でも肝臓に複数の病変を認め,腫瘍マーカーも高値であった。直腸癌の多発肝転移と診断し,5 月よりmFOLFOX6 療法を開始した。化学療法による有害事象は,grade 3 の下痢,grade 2 の悪心・嘔吐,末梢神経障害であった。6 コース終了後のSPIO-MRI 検査で腫瘍は認めず,腫瘍マーカーも基準値内となり,complete response(CR)と判定した。その後本人と相談の結果,化学療法を中止し定期的な検査を行っているが,2009 年2 月現在無再発生存中である。直腸癌多発肝転移に対してmFOLFOX6 療法を行い,化学療法終了後2 年6 か月にわたりCR 継続中である1 例を経験したので報告した。 -
集学的治療にて長期生存が得られている直腸癌術後肝・肺転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description直腸癌術後の肝・肺転移に対し,集学的治療によって原発巣切除から約7 年の長期生存が得られている1 例を経験したので報告する。症例は60 歳台,女性。2002 年5 月,直腸癌(Rb,pMp,pN1,sH0,sP0,fStageIIIa)に対して腹会陰式直腸切断術を施行した。2003 年2 月,多発肝転移が出現し,これらに対してラジオ波焼灼術を行ったが,4 月に再増大したため肝部分切除術を施行した。5 月には多発肺転移が出現し,化学療法を開始した。S-1 内服,CPT-11 単剤投与,FOLFOX6,5-FU 持続静注療法を施行し,最終的に腫瘍の増大を認めたため,2006 年9 月に外科的切除を行った。さらに2007 年3 月,肺に再々発を認め,9 月に外科的切除を行った。原発巣切除から約7 年,第2 回肺切除から約1 年9 か月経過した現在,新たな病変の出現はない。 -
mFOLFOX6+Bevacizumab 療法後に組織学的CR が得られた大腸癌肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は25 歳,男性。RS 直腸癌にて直腸高位前方切除術+D3 郭清術を施行。術後病理診断はpT3N1M0,pStageIIIa にて術後補助化学療法としてUzel/ UFT を経口投与。術後10 か月目に両葉に多発性肝転移を認めたため,CV ポートを造設してmFOLFOX6+bevacizumab 療法を開始した。5 コース施行したところ肝転移は縮小し,切除可能になったため,肝切除術(S6 切除術)を施行した。切除標本では大部分が壊死組織に占められ,癌遺残は認められなかった。化学療法組織学的効果判定はGrade 3(著効)であった。また,正常肝には線維化などの肝障害は認められなかった。 -
Bevacizumab 併用全身化学療法によって根治術が可能となった結腸癌切除不能肝転移症例
36巻12号(2009);View Description Hide Description近年,結腸直腸癌に対する全身化学療法の大幅な進展により奏効率が向上し,当初は切除不能とされた遠隔転移を有する結腸直腸癌においても転移巣の切除が可能となる症例が増加している。さらに根治的手術をし得た症例においては,予後の改善が明らかとなっている。抗ヒトVEGF モノクローナル抗体であるbevacizumab は,多剤併用全身化学療法であるFOLFOX 療法やFOLFIRI 療法と組み合わせて用いることで有意な抗腫瘍効果を発揮することが示されている。今回初診時,切除不能肝転移を有する結腸癌に対してbevacizumab 併用全身化学療法を術前投与することで,肝転移の縮小が得られ安全に根治術が可能となった2 例を経験したので報告する。 -
進行再発大腸癌に対する全身化学療法併用肝動注の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description2006 年4 月〜2008 年12 月までに当院で行われた,大腸癌肝転移に対する全身化学療法併用肝動注治療例5 例をretrospective に検討した。5 例のうちPS が悪く,肝動注をfirst-line として選択した例が2 例,third-line 以降に使用されたものが3 例であった。レジメンは肝動注(5-FU 毎週投与)のみから導入し,CPT-11 の全身投与を隔週で追加したものが3例,初回から併用したものが2 例であった。最良効果はPR 2 例,SD 2 例,NE 1 例であった。2 例が原病死し,3 例が現在も治療中である[観察期間578 日(407〜1,050 日)]。肝動注療法は副作用が少なく,FOLFOX などの標準的な全身化学療法が適応とならない症例に対しても使用できる。局所制御率が高いものの,肝以外の病巣の制御ができないことが短所であったが,全身化学療法と併用することにより生存期間の延長も期待される。結語: 全身化学療法併用肝動注は,全身状態不良例,標準的治療無効例においても効果が期待できる治療であり,その意義は大きいと考える。 -
一過性のカテーテル留置による反復短期大量肝動注療法
36巻12号(2009);View Description Hide Description今回われわれは,同時性肝転移ならびに膀胱浸潤のある進行性S 状結腸癌術後,異時性肺転移術後で再肝切除後の切除不能の肝転移再々発症例に対して,一過性のカテーテル留置による短期大量肝動注療法を繰り返すことで,2 年間良好なQOLを維持している症例を経験したので報告する。再々発時,グリソン本幹付近まで直接浸潤があり,手術不能と判断。全身化学療法を選択したが副作用により中断した。しかし,肝動脈が上腸間膜動脈から分岐する奇形で動注ポート埋め込みが不能であった。一過性の動注カテーテル留置なら可能と考え,筆者が考案した1 週間で6 g の5-FU を持続で注入する短期大量肝動注療法を繰り返すことで,肝転移をコントロールできないかと考えた。最初の肝動注から21 か月,延べ11 回の短期大量肝動注療法を施行して良好なコントロールができた(CEA: 15 から18 ng/mL へ,CA19-9: 48 から30 U/mL へ)。またこの期間,動注療法で入院している以外は仕事に従事していた。肝動注療法の一つとして,一過性にカテーテルを挿入して短期大量肝動注療法を続ける方法は治療の選択肢となり得ることが示唆された。 -
大腸癌多発肝転移に対し全身化学療法+肝動注療法が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は61 歳,男性。下痢と全身倦怠感を主訴に入院した。精査の結果,多発肝転移を伴うS 状結腸癌と診断し,S 状結腸切除術を施行した。術中所見は,S,2 型,105×78 mm,sSI(膀胱),sN0(0/22),sH3(Grade C),sP0,sM0,sStageIVで,病理組織学的検査結果はtub2,pSI(膀胱),ly0,v1,pN0(0/22),PM0,DM0,RM0 であった。術後,全身化学療法(CPT-11+UFT/LV)と肝動注療法の併用療法を15 コース行った。化学療法施行中に重篤な有害事象は認めなかった。抗腫瘍効果としてPR が得られたため,肝転移巣に対し根治手術を行った。肝切除後41 か月の間に明らかな転移・再発の所見を認めていない。大腸癌における切除不能多発肝転移に対する全身化学療法+肝動注療法は有用な治療法であることが示唆された。 -
多発肝転移による高度肝機能障害を合併した進行直腸癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は70 歳台,男性。切除不能多発肝転移による細胆管炎のため,高度肝機能障害を合併した直腸癌と診断した。全身状態,血液検査所見より,肝不全状態に移行する危険が高いと判断し,肝転移巣の直接効果が最も期待できる5-FU による肝動注療法を先行した。経過中,直腸癌による閉塞症状を認めたため,人工肛門造設術を施行した。肝動注療法13 回終了時,肝機能は正常化し,全身状態も安定したので直腸癌に対するHartmann 手術を施行し,術後FOLFOX による全身化学療法を行った。切除不能肝転移に対する標準治療は,最近では全身化学療法が第一選択となっているが,患者の全身状態によっては,予後を規定する肝転移を肝動注療法でまずcontrol することが必要な症例もある。 -
原発巣切除後にmFOLFOX6 を施行しCR を得た上行結腸癌同時性肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description同時性肝転移を認める上行結腸癌に対し結腸右半切除術を施行し,術後mFOLFOX6 にてCR が得られた症例を経験したので報告する。症例は79 歳,女性。右下腹部腫瘤,右下腹部痛を契機に上行結腸癌の診断となった。肝S3,S4 に3 個の肝転移を認めた。結腸右半切除術,D3 郭清を施行した。術後,mFOLFOX6 を施行し5 コース施行後にはCEA 8 ng/mL と正常域まで低下し,画像上PR となり9 コース後にCR となった。計12 コース施行後,FOLFIRI を3 コース施行した。現在はtegafur uracil/calcium folinate/Krestin(UFT/LV/PSK)内服にて経過観察をしているが無再発生存中である。 -
集学的治療を行い4 年経過した多発性肝転移,リンパ節再発を伴う横行結腸癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description患者は,発症時47 歳,男性。2005 年2 月に横行結腸癌による腸閉塞で来院。緊急手術で横行結腸切除術・結腸人工肛門造設術を施行した。その後,多発性肝転移が確認され,肝外側区域切除,残肝内の多発腫瘍に対しラジオ波焼灼療法(RFA)を施行し,S-1 投与を開始した。以後繰り返し再発してくる肝転移巣に対し,3 年間に計7 回のRFA を施行した。2008 年5 月,CT で多発性肝転移に加え上腸間膜動脈周囲リンパ節転移再発も認めるようになった。mFOLFOX6+bevacizumab による化学療法を開始し,11 月の時点で肝転移巣はほぼ消失し,上腸間膜周囲リンパ節転移巣も著明に縮小した。さらに2009 年2 月に腸間膜リンパ節転移に対し定位照射療法を施行した。現在,外来化学療法を継続しつつ経過観察中である。手術,RFA や定位照射などの局所療法と,mFOLFOX6 という全身療法を組み合わせた結果,発症後4 年を経過している症例で,根治切除不能の状態に対して癌の局所療法がQOL を保ったままの延命に寄与できたと考える。 -
門脈塞栓術と全身化学療法の併用により切除し得た下行結腸癌同時性両葉多発肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。腹痛,便潜血陽性を主訴に当院を受診。大腸内視鏡で下行結腸に亜全周性の2'型腫瘍を,腹部造影CT にて肝両葉に4 個の転移を認め,下行結腸癌同時性両葉多発肝転移の診断となった。初回手術として下行結腸切除術(D3 郭清)と術中門脈右枝塞栓術を施行。病理診断は中分化型管状腺癌,pSS,pN1 であった。術後mFOLFOX6 による全身化学療法を開始したが,8 コース終了時にgrade 3 の神経毒性が出現したためFOLFIRI に変更し,10 コース継続した。この間,肝転移巣はPR からSD で肝外転移を含め他病巣の出現なく,約7 週間の休薬期間をおき初回手術から11 か月後に肝拡大右葉切除を施行した。経過良好にて退院し術後10 か月現在,再発の徴候なく外来通院中である。大腸癌同時性両葉多発肝転移に対する治療において,門脈塞栓術と全身化学療法の併用が切除率の向上に寄与する可能性が示唆された。 -
マイクロ波凝固療法により5 年無再発生存中の肝硬変を合併した5 cm 超大腸癌肝転移の経験
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionはじめに: 出血傾向のために肝切除術からマイクロ波凝固療法(MCT)に術式変更し,長期生存中の肝硬変合併大型大腸癌肝転移例を報告する。症例: 54 歳,男性。2003 年10 月に直腸癌にてハルトマン手術を施行された。2004 年3 月に肝S7 に単発の肝腫瘍を認め,当科を紹介入院となった。非B 非C 型肝硬変があり,肝障害度B,ICG15 分停滞率54%と肝機能不良であった。血小板は7×10 4〜11×10 4/mm3,プロトロンビン活性値59%と低下していた。腫瘍は6.5 cm で肝部分切除の方針とした。術中生検では,腺癌肝転移との診断であった。結核性腹膜炎のため剥離面からのoozing のコントロールが困難であり,肝切除からMCT に術式を変更した。肝障害のため術後補助化学療法は施行しなかった。術後5 年の現在,無再発生存中である。考察: 5 cm を超える大腸癌肝転移であっても,肝表在性の場合にはMCT が根治治療になる可能性があると考え報告した。 -
ラジオ波焼灼術と肝動注化学療法の併用が奏効した転移性肝癌の2 症例
36巻12号(2009);View Description Hide Description転移性肝癌の治療は困難であり,局所療法と全身化学療法を組み合わせた集学的治療が必要である。外科切除以外で治療した2 症例を供覧する。症例1: 57 歳,男性。同時性肝転移を有する直腸癌で,2007 年11 月,低位前方切除,ラジオ波焼灼術(RFA),肝動注ポート挿入,胆摘を施行。肝動注化学療法とUFT/Uzel の全身化学療法を施行し,治療後約1 年であるが,残肝再発はない。症例2: 66 歳,男性。2006 年7 月に胸部食道癌と多発肝転移で,放射線化学療法(FP 療法+65 Gy)にて,原発巣はCR,肝転移はPR となった。2007 年5 月,開腹RFA,肝動注ポート挿入,胆摘を施行し,肝動注化学療法を開始。肝転移はCR になったが,肺門リンパ節転移が出現。2008 年4 月にnedaplatin+docetaxel 療法に変更した。治療後2 年7 か月であるが,原発巣,肝転移はCR,肺門リンパ節はPR である。 -
直腸カルチノイド多発性肝転移症例に対し肝切除術+マイクロ波凝固療法が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳台,女性。他院で肝腫瘍を指摘され,肝生検の結果,カルチノイドと診断された。精査加療目的で2007 年3 月当科外来に紹介受診となった。下部消化管内視鏡検査で,肛門縁より約10 cm に粘膜下腫瘍様の径10 mm の隆起性病変を認めた。直腸カルチノイド,多発肝転移の診断で手術を施行した。術中エコーで8 か所の肝転移巣を確認した。経肛門的直腸腫瘍切除術を施行後,肝切除術(S5/6 部分切除,S8 部分切除),マイクロ波凝固療法を施行した。原発巣の深達度はsm で脈管侵襲は認めなかった。術後2 年3 か月現在,無再発生存中である。直腸カルチノイドの多発性肝転移症例に対し,肝切除術とマイクロ波凝固療法を併用することは,有効な治療法の一つになると考えられた。 -
FOLFOX 療法施行後に切除した大腸癌術後肺転移の2 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description大腸癌術後肺転移にFOLFOX 療法後手術を施行し,病理診断にて薬物の組織学的効果を認めた2 例を経験したので報告する。症例1: 68 歳,男性。2003 年S 状結腸癌にてS 状結腸切除術(stageIIIA),2003〜2006 年に肝臓,左肺,頸部リンパ節転移出現し3 回手術,化学療法を施行。2006 年12 月,右肺転移出現しFOLFOX 計7 コース施行,画像効果: SD。2007 年 11 月,右肺S2 部分切除術を施行,病理診断: Grade 1b。症例2: 63 歳,女性。2000 年1 月,直腸癌にて前方切除術(stageII),2003 年3 月,右肺転移にて右肺S8 部分切除術,術後IFL 療法を施行。2005 年9 月,新たに右肺転移出現しFOLFOX 計4コース施行,肺転移: SD。2006 年4 月,右肺S10 部分切除術を施行,病理診断: Grade 1a。まとめ: FOLFOX 療法は大腸癌術後肺転移の術前投与にも適応があると思われた。 -
直腸癌術後リンパ節再発に対して外科的切除を施行した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description直腸癌術後6 か月目に大動脈周囲リンパ節に再発を来し,外科的切除を行った1 例を経験したので報告する。症例は63歳,女性。直腸癌に対して低位前方切除術およびD3 リンパ節郭清を施行。術後,補助化学療法としてfolinate /tegafur/uracil療法を6 か月施行した。術後6 か月目に腫瘍マーカーの上昇と,FDG-PET にて大動脈周囲リンパ節への再発を認めたためmFOLFOX6 療法を導入,37 コース施行。grade 3 の知覚障害のため患者の同意を得て,術後2 年9 か月目に再発巣の外科的切除を行った。術後8 か月,大動脈周囲に再発の徴候なく経過観察中である。 -
進行再発大腸癌に対するBevacizumab(BV)+ Modified FOLFOX6 の使用経験
36巻12号(2009);View Description Hide Description進行再発大腸癌に対して当院で行ったbevacizumab(BV)+ mFOLFOX6 療法施行16 例の治療効果,有害事象について評価を行った。治療対象病変は肝8 例,肺4 例,局所2 例,リンパ節2 例。治療効果は,response rate 46.6%,disease control rate 86.6%であった。2 例でPR となり肝切除を行った。有害事象は,infusion related reaction 1 例,腫瘍出血1 例,痔瘻1 例であった。本化学療法は,進行再発大腸癌に対し比較的安全に施行でき,有効な治療法の一つと考えられた。 -
高度進行右側結腸癌に対し切除後,化学療法を行い22 か月無再発生存中の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は45 歳,男性。上行結腸癌,横行結腸癌の二重癌で小腸浸潤と大動脈周囲リンパ節転移の診断で2007 年8 月,拡大右半結腸切除(小腸合併切除)+D3 郭清+大動脈周囲リンパ節郭清を施行した。術後は腹水が多く,また下痢もあり入院期間が延長したが9 月に退院した。病理結果: 盲腸癌,横行結腸癌の二重癌でそれぞれSI(小腸)・中分化腺癌,SS・高分化腺癌であった。大動脈周囲リンパ節は16a1 lat(5/5),16a2 lat(3/4),16b1 lat(4/5),16b1 int(2/2)とmassive な転移を認めた。組織型より盲腸癌からの転移であると考えられた。腹水細胞診は陽性(Cy1)であった。術後2 か月目よりFOLFOX4+BV を3 コース(蛋白尿のため中止),FOLFOX4 を3 コース,FOLFIRI を6 コース,IRIS を6 コース施行し2008 年9 月に終了とした。術後22 か月現在,画像上再発はなく,また腫瘍マーカーの上昇も認めていない。 -
腹膜播種,大動脈周囲リンパ節転移により水腎症を来したS 状結腸癌に対し抗癌剤治療が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。2008 年6 月大動脈周囲リンパ節転移,両側水腎,癌性腹水,播種P2 を伴うS 状結腸癌に対して人工肛門を造設した。術直後に腎不全を来したが,透析と脱水の改善で自然に軽快した。8 月中旬よりLV+5-FU 療法を開始,10 月下旬からbevacizumab(BV)+mFOLFOX6 療法を行った。2009 年2 月上旬に再開腹すると播種は消失していた。摘出したS 状結腸は病理検査で粘液癌であったが,ほとんどの腫瘍細胞は消失し,ごく一部にviable な腫瘍細胞が散見された。 -
進行横行結腸粘液癌に対し拡大郭清により局所コントロールが可能であった1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳,男性。進行横行結腸粘液癌に対し開腹下左半結腸切除術を行った。脾弯部の腫瘍が漿膜面へ露出し大網を巻き込んでいたため,胃大弯のリンパ節(胃大網リンパ節: No.204)を含めてのD3 郭清を行った。胃大網リンパ節にも転移を認め,fM1,fStageIVであった。補助化学療法としてmFOLFOX6 を施行したが,縦隔・肺門部リンパ節腫大を認めた。現在,FOLFIRI を行い,腹腔内を含めて他の再発所見なく経過している。進行横行結腸粘液癌に対して,胃大網リンパ節を含めた郭清を行い,局所のコントロールが可能であった症例を経験した。横行結腸癌における胃所属リンパ節郭清は,症例によっては必要と考えられる。 -
進行大腸癌に対して術前化学療法を併用し拡大手術により根治を得た1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。2008 年1 月,腹部腫瘤を認め近医を受診した。大腸内視鏡検査では上行結腸に1 型腫瘍を認め,生検で高分化型腺癌と診断された。腹部CT 検査で腫瘍背側にリンパ節転移と思われる巨大腫瘤を認めた。開腹術を施行したところ,リンパ節の上腸間膜静脈浸潤が高度で根治切除は困難と判断し,バイパス術のみ施行し化学療法を開始した。FOLFIRIを施行し腫瘍の縮小,腫瘍マーカーの低下を認めたが,消化器症状を主とする副作用のため化学療法をFOLFOX へ変更した。その後も副作用が強く,化学療法のみによる加療継続は困難と判断し,10 月に膵頭十二指腸切除術,結腸右半切除術,門脈合併切除,門脈再建術を施行した。術後8 か月経過し,無再発生存中である。 -
下部直腸癌の側方リンパ節は大きさから予測できるか─プレパラート標本からの検討─
36巻12号(2009);View Description Hide Description下部直腸癌患者における側方郭清の功罪を考えると,側方郭清の必要な症例を術前画像診断から絞り込むことができれば理想的である。側方リンパ節の大きさから下部直腸癌における側方リンパ節転移診断が可能か否かという点を検討するため,preliminary な検討を行った。17 個の側方リンパ節について摘出直後の長径,短径と,パラフィン包埋後の長径,短径を測定し,縮小率を求めた(検討1)。パラフィン包埋後の35 例,259 個の側方リンパ節について転移の有無と長径,短径との関係を検討した。パラフィン包埋後の平均縮小率は,長径56.8%,短径62.0%であった。長径,短径のいずれも転移陽性リンパ節のほうが転移陰性リンパ節より有意に大きかった(p<0.01)。ROC 曲線下面積は,短径のほうが長径より大きい傾向にあった(p=0.07)。短径のcut off 値を3.41 mm(生体では5.50 mm 相当)に設定すると,転移予測に関するsensitivity,specificity,accuracy は各々78.6%,83.7%,83.4%であった。以上から,側方リンパ節の短径の大きさを術前の画像診断で測定することは,側方郭清の候補を絞り込むことに有用である可能性が示唆された。 -
直腸癌骨盤内再発に対する治療(切除 vs 全身化学療法)
36巻12号(2009);View Description Hide Description新規抗癌剤が導入可能になった現在における直腸癌骨盤内再発に対する外科治療の問題点をretrospective に検討する。1997〜2008 年の間に,直腸癌骨盤内単独再発に対し,切除を行った9 例(切除群)と新規抗癌剤を含めた化学療法を行った5 例(化学療法群)について,背景因子や治療成績を比較した。手術群の術式は腹会陰式直腸切断術1 例,後方骨盤内臓全摘術4 例,骨盤内臓全摘術4 例で,仙骨合併切除は5 例に施行。化学療法群では,二次治療まで行ったのが4 例,三次治療まで行ったのが1 例。oxaliplatin 3 例,irinotecan 3 例,Leucovorin は5 例に投与された。年齢,性別,原発巣切除時のstage,再発までの期間などに関し,両群間で有意差を認めなかった。再発に対する治療後の生存期間も両群間に有意差は認めなかった(p=0.73)。新規抗癌剤の効果が期待できる現在では,外科治療でbenefit が得られる症例をいかに選別するかが重要と考えられる。 -
Bevacizumab+mFOLFOX6 療法が奏効した全身リンパ節転移を伴った肛門管癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description全身リンパ節,肺および骨転移を有する切除不能肛門印環細胞癌に対しベバシズマブ(bevacizumab: Bev)+mFOLFOX6療法を施行し,complete response(CR)が得られた1 例を経験した。症例は50 歳台,男性。腋窩および鼠径部の腫脹を主訴に近医を受診した。鼠径部リンパ節生検の結果,印環細胞癌の診断であり,原発巣を検索したところ肛門周囲にpagetoid spread を伴う肛門管癌と診断された。PET-CT 検査では,全身のリンパ節に集積を認め,肺や骨にも集積がみられた。そこで,Bev+mFOLFOX6 療法を開始したところ4コース終了時にはリンパ節は触知できなくなった。PET-CT 上も集積はなく,8コース目には腫瘍マーカーは正常範囲にまで低下し,CR が得られた。以後,13 コース投与した時点でgrade 3 の手足のしびれを認めたためBev+FOLFIRI 療法に変更した。全身転移を伴った予後不良と思われる肛門印環細胞癌であったが,Bev+mFOLFOX6 療法によって6 か月間のCR を得ることができた。 -
大腸癌原発巣,肝転移巣におけるDihydropyrimidine Dehydrogenase(DPD)発現─癌細胞内mRNA 発現と腫瘍組織中蛋白発現量の関係と5-FU 系抗癌剤の治療効果─
36巻12号(2009);View Description Hide Description目的: dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)は,5-fluorouracil(5-FU)の分解経路の律速酵素である。大腸癌のDPD 発現をmRNA レベルと蛋白レベルで解析し,その臨床的意義について考察した。対象・方法: 大腸癌原発巣(n=88)と同時性肝転移巣(n=15)のパラフィン包埋標本から,Danenberg tumor profiling 法で大腸癌細胞のDPD mRNA 発現を定量した。また,同一検体の新鮮凍結組織中のDPD 蛋白発現をenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法で定量した。結果: 原発巣,肝転移巣の各々のmRNA 発現と蛋白発現に相関はなかった。蛋白発現では肝転移巣のほうが原発巣より発現が高い傾向であったが(p=0.08),両者に相関は認めなかった。mRNA 発現では原発巣と肝転移巣の発現の間に相関はなかった。いずれの解析法でも原発巣と肝転移巣の発現の間に相関はなかった。また,いずれの解析法でもDPD 発現と5-FU(またはUFT)/Leucovorin 療法の効果との関連はなかった(n=18)。結語: 大腸癌のDPD の発現と5-FU 系抗癌剤の効果を検討する場合,mRNA レベルと蛋白発現レベルの乖離や,原発巣と肝転移巣の非相関性を考慮する必要がある。 -
大腸癌全身化学療法中,中心静脈ポート周囲に静脈血栓症を生じた2 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description中心静脈ポートよりの大腸癌外来化学療法中に,カテーテル周囲の静脈血栓症を生じた2 例を経験したので報告する。症例1: 68 歳,男性。直腸癌術後肝肺転移に対し,中心静脈ポートより全身点滴化学療法を施行中に顔面腫脹を認め,胸部造影CT にて中心静脈ポートカテーテルの先端付近より,上大静脈,右内頸静脈,右鎖骨下静脈に静脈血栓の形成を認めた。症例2: 53 歳,女性。直腸癌術後肺転移に対し,中心静脈ポートより全身化学療法を施行中に,左肩腫脹・疼痛を認め,CV ポート造影にて鎖骨下静脈閉塞と周囲静脈への造影剤の逆流が確認された。切除不能・再発大腸癌に対して,長期間CV ポートを留置し全身化学療法を行う場合には,静脈血栓症の可能性を念頭におく必要があると考えられた。 -
術前右大腿神経不全麻痺を伴った局所進行盲腸癌の1 切除例
36巻12号(2009);View Description Hide Description患者は60 歳台,男性。回盲部に可動性のまったくない成人手拳大の硬い腫瘤を触知した。右大腿部に引きつりと,触覚低下,大腿挙上困難を認めた。CT 検査では右腸骨筋に高度に浸潤し,腸骨と広く接した不整形の腫瘤を回盲部に認めたが,明らかな遠隔転移を認めず,通過障害の改善目的に開腹術を行った。腹膜播種は認めず,腸骨骨膜とともに腹横筋,腸骨筋を広く合併切除し,右大腿神経を長腰筋の一部とともに切除することで根治的に切除し得た。骨盤壁の欠損部については腸骨露出部,筋肉断端をアルゴンビームコアギュレーターで十分に凝固,止血を行い,有茎大網組織を充填した。病理組織像は中分化型腺癌,SI,N2,M0,P0,H0 でStageIIIb,RM0,顕微鏡的にも剥離面に癌細胞を認めず,R0,根治度A であった。大腸癌は局所の浸潤が高度であっても治癒切除が得られれば良好な予後が期待できることも多く,局所治療として手術の果たす役割は大きい。 -
大腸癌小脳転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description原発巣手術後,肝臓,肺への転移を認めたものの切除および化学療法にて胸腹部の癌制御は可能であったが,小脳への転移を認め治療中である横行結腸癌の1 症例を報告する。症例は71 歳,男性。2001 年横行結腸癌にて結腸部分切除術(横行結腸脾弯曲部)D2 切除術を施行した。中分化型腺癌,se,n1,ly1,v2,H0,P0,M0,stageIIIa であった。術後3 年目にS7 肝再発認め,肝部分切除術,術後4 年8 か月目に右肺S8 転移を認め部分切除術,さらに術後5 年11 か月目に左肺の舌区とS9 に転移を認め2 か所の部分切除術を同時に行った。左肺手術後はmFOLFOX6 療法を計12 回行い,手足のしびれ出現のためS-1+PSK に変更し約14 か月間胸腹部に再発なく経過していた。しかし,2008 年4 月ふらつきとめまいが出現し,頭部MRI 検査にて小脳転移と診断した。腫瘍部分切除術と放射線療法およびFOLFIRI 療法を行いながら脳転移診断後1 年,初回手術後8 年の現在,生存治療中である。 -
大腸癌脳転移12 症例の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description当科で1999〜2008 年の間に経験した大腸癌脳転移12 例の治療成績についてretrospective に検討した。年齢は33〜72歳(中央値64 歳)。男性8 例,女性4 例。原発部位は直腸8 例,結腸4 例。脳転移部位は大脳9 例,小脳4 例(重複含む)。全例異時性で,3 例が脳単独転移であった。原発巣手術から脳転移診断までの期間は,144〜2,062 日(中央値868 日)であった。単発性脳転移の3 例では転移巣摘出後に全脳照射,多発の7 例には全脳照射のみ,2 例にはmFOLFOX6 と全脳照射を行った。全体の50%生存期間は107 日であった。mFOLFOX6 +放射線治療を行った1 例では,脳・肺転移とも制御可能で,505 日間の生存が得られた。新規抗癌剤による脳転移以外の転移巣の長期制御が可能となった現在,脳転移巣をいかに制御するかが重要と考えられる。 -
直腸癌術後骨格筋転移を認めた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description癌の骨格筋転移は比較的まれであり,治療法の選択において確立されたものはない。今回,直腸癌術後の筋転移,肺転移に筋転移巣切除を施行した症例を経験したので報告する。症例は70 歳,男性。2007 年5 月に直腸癌に対し直腸切断術を施行。2008 年5 月,右大腿部に有痛性の腫瘤が出現し,生検にて直腸癌の再発と診断された。同時に肺の多発転移を認めたが,QOL を維持する目的にて6 月,右大腿部腫瘤摘出術を施行した。第2 回目手術後より化学療法を開始した。現在,再発より1 年が経過し肺転移巣は徐々に進行しているが,新たな骨格筋転移の出現はなく,外来にて加療中である。 -
リンパ節転移を伴った7 mm の直腸カルチノイド腫瘍の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は67 歳,男性。便潜血陽性を主訴に当院消化器科を受診し,下部内視鏡検査で直腸に7 mm 大の粘膜下腫瘍を指摘され,生検で直腸カルチノイドと診断された。画像検査で深達度はSM,リンパ節転移や遠隔転移は認めなかった。内視鏡治療の適応と判断し,endoscopic mucosal resection(EMR)を施行した。一括切除できたが,病理組織学的に深部断端陽性と診断されたため,外科的治療を追加した。腹腔鏡下低位前方切除,D1 リンパ節郭清を行った。病理組織学的検査では腫瘍の残存はなかったが,傍直腸リンパ節に転移を認めた。深達度がSM までで10 mm 以下の直腸カルチノイド腫瘍でもリンパ節転移を伴うことがあり,それを念頭においた治療方針が必要である。 -
腹膜播種を伴う進行婦人科癌に対する術前化学療法としてのPaclitaxel 腹腔内化学療法
36巻12号(2009);View Description Hide Description標準的手術によってoptimal surgery に到達できない進行婦人科癌13 症例に,術前化学療法(NAC)としてpaclitaxel(PTX)腹腔内投与を併用したpaclitaxel/carboplatin 療法(TC 療法)を行った。二期的腫瘍減量手術を実施した11 例のうち,手術終了時に1 cm 以上の残存病変が残ったものは1 例のみであり,残りの10 例では他臓器合併切除を要さずにoptimal surgery が達成された。開腹時に8 例は腹腔内に明らかな活動性病変を認めず,切除標本の病理組織学的検索では8 例でviable cell が全くない(3 例)か,ほとんどない(5 例)と判断された。治療に伴う有害事象は全身TC 療法とほぼ同等と考えられ,病状進行のため治療を中止した1 例以外は計画どおりに治療が遂行された。なお,今回の探索的検討ではPTX 115+80 mg/m2(全身投与+腹腔内投与),carboplatin AUC=4(全身投与)がより安全かつ有効なレジメンではないかと考えられた。 -
大腸癌卵巣転移症例の検討─他の腹膜転移症例と比較して─
36巻12号(2009);View Description Hide Description大腸癌卵巣転移例の治療成績と,卵巣転移が腹膜転移に分類されることの妥当性についてretrospective に検討した。1998〜2008 年までの間に,卵巣転移に対して手術を行った大腸癌16 例(卵巣転移群)を対象とした。同時期の卵巣転移を認めない腹膜転移症例に対して,手術を行った女性大腸癌22 例(対照群)を対照に背景因子,治療成績について比較検討した。卵巣転移群のほうが有意に年齢が低かったが(p<0.01),その他の臨床病理学的因子に有意差は認めなかった。卵巣転移群の50%生存期間(MST)は13.8 か月,対照群のMST 16.7 か月で,卵巣転移群の予後は対照群とほぼ同等であった(p=0.96)。卵巣転移群のうち卵巣転移のみ(P2)症例(n=9),対照群のP1(n=8),P3 症例(n=12)の3 年生存率は48.6%,46.9%,11.5%であった。以上から,大腸癌卵巣転移は腹膜転移に分類されるのは妥当であるが,P2 に分類されることには検討の余地があると考える。 -
長期生存を得た横行結腸印環細胞癌による異時性卵巣転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は43 歳,女性。下腹部痛を主訴に近医を受診。精査加療目的にて当院紹介となる。下部消化管内視鏡検査で横行結腸に全周性の癌を認めたため,手術加療目的にて入院となった。横行結腸切除術(Cur A)を施行。病理組織学的検査所見は横行結腸印環細胞癌で4 型,SS,ly3,v0,n1(+),StageIIIa と診断された。術後補助化学療法を勧めたが,精神的不安定にて化学療法を強く拒否された。術後定期的にfollow up を行っていたが,1 年6 か月後のCT 検査で左卵巣腫瘍を認め,卵巣転移の診断にて両側卵巣摘出術を施行。病理組織学的検査所見は,印環細胞癌で横行結腸癌の転移と診断した。前回と同様,術後化学療法を希望されず,無治療で経過follow up を行っていた。初回手術後,4 年10 か月後に腹膜転移によるイレウスにて入院,手術を行うも初回手術5 年後に原病死した。 -
切除不能S 状結腸癌,化学療法CR 後に発症した異時性卵巣転移の1 切除例
36巻12号(2009);View Description Hide Description今回われわれは,異時性S 状結腸癌卵巣転移1 切除例を経験したので報告する。症例は55 歳,女性。肝転移,傍大動脈リンパ節転移を認めるS 状結腸癌の診断にて手術を施行した。術後bevacizumab(BV)+mFOLFOX6 療法を施行し,complete response を得ていた。13 か月後,右卵巣腫瘍を認めた。子宮全摘術+両側付属器摘出術+大網切除術を施行した。病理組織検査にて転移性卵巣腫瘍と診断した。再手術後,BV+FOLFIRI 療法を施行した。再手術後6 か月経過し,再発は認めていない。 -
癌終末期の腸閉塞に対し酢酸オクトレオチド投与により症状改善がみられた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は35 歳,女性。卵巣癌再発による腸閉塞にて,酢酸オクトレオチドを300 μg/day にて施行したところ,イレウスチューブを入れることなく退院,在宅移行が可能であった。癌末期の腸閉塞に対する酢酸オクトレオチドの使用は症状をコントロールし,quality of life を改善する上で有用な治療法と考えられた。 -
腹部皮下膿瘍で発症し切除し得た横行結腸瘻合併尿膜管癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description患者は61 歳,女性。2009 年1 月,腹痛を主訴に受診した。CT にて下腹部腹壁から腹腔内に突出する10 cm 大の腫瘤を認め,皮下および腹腔内膿瘍を合併した悪性腫瘍を疑い,同日,試験開腹・皮下膿瘍ドレナージ行った。同時に行った膀胱鏡検査にて膀胱頂部に乳頭状腫瘤を認め,生検にて腺癌であり,尿膜管癌と診断した。遠隔転移を認めず,手術の方針となり,腹壁合併腫瘍切除,膀胱全摘,横行結腸合併切除術を施行しen bloc に腫瘍摘出が可能であった。摘出標本では横行結腸から腫瘍に至る内瘻の形成を認めた。尿膜管癌において消化管内瘻形成例の本邦報告例はない。まれな病態であるが,尿膜管癌の強い局所浸潤性によるものであるとすれば,本症例のように広範に浸潤を認める場合でも外科的切除が選択肢となり得ると考えた。 -
高度進行胃癌に対しS-1+CDDP 併用療法/S-1 単剤治療を施行し長期cCR が得られている1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。2004 年9 月,心窩部痛を認め,上部消化管内視鏡検査(GIS)を施行され,胃体上部後壁に3 型病変を指摘された。CT 検査では膵浸潤,傍大動脈リンパ節転移陽性であり,cT4N3M0,StageIVと診断した。S-1(120 mg/body day 1〜21)+CDDP(90 mg/body day 8)併用療法を開始し6 コース施行,cPR を得た。続いてS-1(120 mg/day,4週投与2 週休薬)単剤治療を12 コース施行した。手術を考慮したが,脳梗塞を発症したため約8 か月休薬した後,S-1 単剤治療を再開した。画像所見ではS-1 休薬前と比較して増大は認めておらず,休薬前にcCR が得られていて現在も継続されていると考えている。 -
長期PR が得られている非切除4 型進行胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は69 歳,女性。心窩部不快感を主訴に2006 年2 月当院を受診し,4 型進行胃癌の診断で手術を施行したが,腹膜播種陽性で試験開腹術に終わった。2006 年4 月からS-1 内服(100 mg/body,4 週投与2 週休薬)治療を開始し,3 コース終了後の胃内視鏡検査でPR と判定した。2007 年4 月からS-1+CDDP 療法に,2008 年3 月よりS-1 単独に戻し,7 月から再度S-1+CDDP 療法を行い,術後3 年経過したがPR を維持できている。S-1 を中心とした術後化学療法が奏効し,3 年以上の長期PR が得られている非切除4 型進行胃癌の1 例を報告した。 -
多剤併用化学療法にて長期生存が得られた切除不能進行胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。2004 年6 月,吐血にて救急搬送された。精査にて#13,#16 リンパ節の腫大を伴う胃癌,cT3,cN3,cM1(LYM),cStageIVと診断した。S-1 による化学療法を開始するも3 コースにてPD となった。2005 年3 月にCPT-11+CDDP 併用療法に変更後,リンパ節は縮小傾向を示し,計23 コース継続した。しかし2007 年4 月に原発巣の増大を認め,paclitaxel(PTX)+doxifluridine(5'-DFUR)併用療法に治療を変更した。リンパ節の縮小など効果を認め,計7 コース継続するも,その後病変は増大し,初診から4 年後の2008 年5 月に死亡した。 -
化学療法により長期生存を得た切除不能進行胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳台,男性。2006 年11 月に体重減少と嘔気を主訴に受診し,胃の未分化腺癌StageIVと診断。根治切除不能と考え化学療法を開始した。一次治療として5-FU 800 mg/m2/day(day 1〜5)+CDDP 80 mg/m2/day(day 2)の4 週毎投与を開始した。腫瘍縮小効果はPR,奏効期間は7 か月であった。2007 年8 月に胃空腸バイパス手術を施行。術後よりweekly PTX 90 mg/body を開始したが,4 コース終了後の評価はPD であったため,レジメンをS-1 50 mg/body(day 1〜14)+CPT-11 80 mg/body(day 1,15)に変更。9 コースの投与が可能であった。その後徐々に病状は悪化し,2009 年1 月原病死した。全生存期間は26.2 か月であった。 -
大動脈周囲リンパ節転移再発を来した進行胃癌に対しS-1 が奏効し長期生存が得られた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は66 歳,男性。55 歳時に上腹部痛を主訴に胃前庭部小弯の3 型胃癌と診断され,胃全摘術,D3 郭清,Roux-en Y 再建術を施行された。最終診断は,胃L 領域type 3,por 2,f-T2(ss)N2H0P0M0,f-StageIIIAであった。術後に5'-DFUR+PSK の術後補助化学療法を1 年6 か月間施行した。術後2 年目に腹部造影CT 検査で大動脈周囲リンパ節(No.16b1 lat)の腫大を認め,リンパ節再発と診断された。S-1 単剤内服療法(4 週投与2 週休薬)を合計10 コース施行したが,4 コース施行後には腹部CT 検査上,大動脈周囲リンパ節は消失し効果判定はCR と判断した。以後,無治療で経過観察中であるが,術後11 年を経過した現在も,画像上転移,再発を疑う所見を認めていない。 -
腹腔用ポートを用いた化学療法が奏効し3 年以上生存している腹膜播種を伴う進行胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は59 歳,男性。腹部腫瘤を主訴に来院。画像にて腹膜播種陽性胃癌と診断され,S-1/CDDP による化学療法を3コース施行し縮小効果を認めたため,幽門側胃切除,D2 郭清,胆摘,Billroth I 再建,腹腔内リザーバーを留置した。術後病理診断はSE ly1 v1 n2 CY1 P1,StageIV。術後外来でpaclitaxel 100 mg/body の腹腔内投与を開始し,最終的には25 回もの腹腔内投与を施行し得た。腹膜播種の予後は一般的には数か月と不良であり,標準的治療も確立されていないのが現状であるが,3 年以上の病勢コントロールが得られた腹膜播種病変を伴った進行胃癌症例を経験したので報告した。 -
化学療法およびステント留置により比較的長期間QOL を維持できた切除不能胃噴門部癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は66 歳,男性。嚥下時通過障害,腹部膨満感,体重減少を主訴に来院。上部消化管内視鏡検査で胃噴門部に5 型の進行癌,胃体上部前壁に早期胃癌,胸部下部食道に早期食道癌を認めた。CT 検査で多発性肝転移,腹膜播種,脾臓転移,傍大動脈リンパ節転移を認めたため切除不能胃癌と診断。腹水貯留による腹部膨満感に対し腹腔穿刺ドレージ,利尿剤投与,濃厚栄養流動食投与を行い栄養状態は改善し腹水減少。S-1+docetaxel による化学療法を行いPR が得られた。経口摂取可能となり外来通院にて化学療法を継続。治療開始6 か月後より再び腫瘍マーカーが上昇したためS-1+CDDP へ変更し,化学療法を継続。治療開始後8 か月目に食道胃接合部の狭窄が進行し,再入院となった。内視鏡下にバルーン拡張術を施行していたが治療効果一過性のため,十分なインフォームド・コンセントを行いステント留置を施行。経口摂取可能となり退院された。外来化学療法(weekly paclitaxel)を継続するも,肝転移増大,腹膜播種による腸閉塞を来し治療開始後11 か月で永眠された。腹膜播種を伴う胃癌の生存期間が通常3〜4 か月であることを考慮すると,本症例は癌性疼痛を伴うことなく最後まで経口摂取可能であり,化学療法とステント留置がQOL の維持に有効であったと考えられた。 -
徐放化Cisplatin の抗癌効果
36巻12号(2009);View Description Hide Description70%脱アセチル化キチン(DAC-70)を担体としてcisplatin 注射製剤(CDDP)を担持させ,組織接着能と徐放性を備えたCDDP 新剤形を試作した。組織接着力はex vivo で,CDDP の放出動態と放出されたCDDP の抗腫瘍能はそれぞれin vitro で検討した。新剤形の組織接着力は,臨床使用されているキシロカインゼリーよりも強力で,体温条件下(37℃)では室温条件下(25℃)のそれよりも強力であった。CDDP の放出は,担体の調製方法により異なった動態を示した。新剤形から放出されたCDDP は,変更以前のCDDP と同等の癌細胞増殖抑制能を示した。 -
S-1 療法,S-1/Paclitaxel 併用療法にて二度のCR を得た進行胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は76 歳,男性。2006 年7 月,噴門部進行胃癌のため,当院を紹介受診された。Type 3,cT4cN2M0, cStageIVであったため,S-1 化学療法を開始した。3 コース終了時に治療効果cCR と判定し,2008 年1 月まで18 か月間S-1 化学療法を継続,以後外来で経過観察となった。2008 年9 月にGIF 検査で胃前庭部にType 2 胃癌(tub1)を認めた。PET/CT 検査では,その他の部位の再発・転移病変は認めず,化学療法を再開することとなった。初回治療開始から2 年2 か月経過した時点でS-1/paclitaxel(PTX)併用療法を開始した。2009 年1 月,3 コース終了後のGIF/CT 検査でcCR と判定した。以後,現在に至るまで6 コース目を継続施行中であり,grade 3 以上の有害事象は認めていない。 -
S-1 が著効し組織学的にGrade 3 が確認された進行胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は58 歳,男性。膵十二指腸浸潤切除不能胃癌に対し,胃空腸吻合術の後,S-1(120 mg/body/day 4 週投薬2 週休薬)による化学療法を計5 コース施行した。PR と判定し幽門側胃切除を施行した。病理組織検査では原発巣は癌細胞をまったく認めず,リンパ節転移も陰性でGrade 3 と診断された。胃切除後4 年4 か月経過した現在まで無再発生存中である。 -
S-1 単独療法によりCR が得られた進行胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は61 歳,男性。主訴は易疲労感。胃噴門部直下から胃角上部小弯にかけて3 型腫瘍を認めた。生検結果は,低分化腺癌。造影CT では,胃周囲No.3 からNo.7 にかけてリンパ節腫大を認めN2 と診断した。胸腹水貯留,肺・肝転移は認めなかった。以上の所見より,T2N2H0P0M0,StageIIIAと診断し,S-1 単独療法120 mg/day を28 日間1 コース施行した。化学療法終了後約2 週間でD2 郭清を伴う胃全摘術,脾臓胆嚢合併切除術を施行した。術中所見は,T2N1H0P0CY0M0,StageIIであった。切除標本病理組織検査所見では,異型細胞の増生を認めずGrade 3 と診断。腎機能低下例,高齢者などでは進行胃癌に対する(術前)化学療法として,S-1 単独療法は有用で安全な方法の一つと考えられた。 -
化学療法後のSecond-Look Staging Laparoscopy にてCY が陰性化し根治手術し得たスキルス胃癌の3 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例1: 77 歳,女性。スキルス胃癌,c4T3N1H0M0P0CY1/stageIVに対し,S-1/docetaxel 併用療法を施行し,11コース施行後,胃壁の肥厚が改善した。症例2: 48 歳,女性。スキルス胃癌,c4T3N1H0M0P0CY1/stageIVに対しS-1/CDDP/paclitaxel 併用療法を施行し,5 コース施行後,胃壁の肥厚が改善した。症例3: 37 歳,男性。スキルス胃癌,c4T3N0H0M0P1CY1/stageIVに対しS-1/CDDP/paclitaxel 併用療法を施行し,5 コース施行後,胃壁の肥厚が改善した。全例,second-look staging laparoscopy を施行したところCY,P が陰性化していたため,胃全摘術を施行し根治手術をし得た。 -
S-1/CDDP/Lentinan 併用術前化学療法にて切除可能となった局所進行胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は61 歳,男性。食道浸潤進行胃癌,腹膜播種(T3N1P1H0,StageIV)の診断で,術前化学療法としてS-1/CDDP/Lentinan(LNT)併用化学療法を3 コース施行した(S-1 を80 mg/m2,CDDP 15 mg/m2,LNT 2 mg/body 週2 回を2 週間投与1 週間休薬)。down staging が得られたため手術を施行した。2008 年3 月胃全摘術,脾摘術,D2 リンパ節郭清,Roux-en Y 再建を施行した。手術所見では腹水および腹膜播種を認めず,腫瘍は漿膜浸潤を認めるも切除可能であった。病理組織学的効果判定ではGrade 1b であった。退院後同様の化学療法を6 か月施行した後,S-1 単剤を6 か月内服,現在術後1 年生存中である。 -
術前化学療法により根治的胸腔鏡下切除が可能となった胃癌術後両肺転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description胃癌術後両肺転移に対し化学療法を施行し,片側の転移巣が消失したため根治的肺切除が可能となった1 例を経験したので報告する。40 歳台,男性。2002 年1 月10 日,1 型食道胃接合部癌に対し,噴門側胃切除,D1+α 郭清,空腸間置術を施行。病理診断はpap,se,ly0,v0,n1(#3,1/9),stageIIIA,根治度B。術後5'-DFUR 800 mg/day を予防的に1 年間内服。2006 年2 月に左S6(3.8 cm),右S10(3 cm)に肺転移を確認し,S-1 内服(120 mg/day)を開始。4 コース施行後の2006 年9 月には右肺転移はほぼ瘢痕化したが,左肺転移が増大し,2007 年1 月よりS-1(100 mg/day 1〜21)+CPT-11(120 mg div day 1,15)を開始。6 コース施行し,いったん縮小傾向を認めるも,徐々に左肺転移巣が増大。右肺の病変は瘢痕化し,変化を認めなかったのでCR と判断。その他に病変を認めなかったため,2008 年8 月,胸腔鏡下左肺下葉切除術,ND1を施行した。病理診断は胃癌の肺転移で,リンパ節転移を認めなかった。2009 年5 月現在,胃癌術後7 年,肺転移が確認されてから3 年が経過したが無再発生存中である。 -
再発十二指腸癌に対しPaclitaxel 投与が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description再発十二指腸癌に対しpaclitaxel 投与が奏効した症例を経験した。症例は61 歳,女性。上腹部痛を主訴に近医を受診,上部内視鏡検査にて幽門部の胃癌と診断され,当院に紹介受診。幽門側胃切除術,D2 郭清を施行するも切除標本にて十二指腸癌と診断し,十二指腸球部追加切除,13a,13b,12a,p リンパ節郭清を追加した。その後,CEA 上昇および腹部CT にて大動脈周囲リンパ節および上腸間膜動脈周囲リンパ節の腫大を認め,十二指腸癌の再発と診断した。S-1 内服を開始するも下痢症状が強く,継続困難のためS-1 を減量し,CPT-11 併用投与した。しかしCEA 上昇,リンパ節増大を来し,paclitaxel投与を開始した。強い副作用を呈することなく,5 か月投与にてCEA の正常化,上腸間膜動脈周囲リンパ節の消失となった。paclitaxel は再発十二指腸癌に対し有用であることが示唆された。 -
胃癌術後肝転移に対して集学的治療により長期生存を得ている1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は72 歳,女性。66 歳時に2 型進行胃癌に対してD2 リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行,pT2N1M0,stageIIと診断した。術後補助化学療法は施行せず経過観察していたが,1 年7 か月時にCT 検査にて肝転移を認めたため,PTX+CPT-11 併用療法を開始した。6 コース終了後にはcCR となり,計23 コースまで施行。その後の肝転移再燃に対して,経動脈的化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization: TACE),ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA),手術の集学的治療を行った。現在S-1+CDDP 併用療法を施行しているが,術後6 年11 か月(肝転移再発後5 年4 か月)経過した現在cCR が得られている症例を経験したので報告する。 -
集学的治療にて長期生存した胃癌術後肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は74 歳,女性。2003 年,当院にて胃癌に対して幽門側胃切除術を施行(f-T3N0H0P0CY0M0,StageII)した。術後1 年2 か月で肝転移を認めたため,化学療法をseventh-line までRFA および肝動注療法も集学的に施行し,最終的に38か月の長期生存を得られた。肝転移に対する治療として,化学療法に加えてRFA や肝動注療法の局所療法も予後の延長を期待できる。 -
肝切除を含む集学的治療を行った胃癌異時性肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。2006 年6 月,胃前庭部前壁の2 型の胃癌に対し,幽門側胃切除術,D2 郭清を施行した(中分化型腺癌,T2,N0,H0,P0,M0,fStage IB)。術後補助化学療法としてUFT およびPSK を1 年間投与したが,術後1 年目の2007 年6 月,肝S6 に単発の転移を認めた。S-1 を2 コース施行し,転移巣はPR,新たな転移なく,2007 年11 月,肝後区域切除術を施行した。肝切除後S-1 をさらに5 コース施行したが,2008 年8 月,肝S8 に再転移を認め,S-1+CDDP を3コース施行した。転移巣は単発で2009 年1 月,開腹下ラジオ波焼灼療法(RFA)を施行した。胃切除後3 年,肝転移再発後2 年の現在,新たな転移なく経過観察中である。本症例は,胃癌異時性肝転移に対する集学的治療により長期生存の可能性が示唆され,肝切除,RFA ともに局所制御に有用な治療法と考えられた。 -
同時性肝転移に対して動注化学療法が著効したAFP 産生胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide DescriptionAFP 産生胃癌は,肝,リンパ節転移が多く予後不良であり,集学的治療にもかかわらず平均生存期間が1 年前後であるという報告が多い。今回AFP 産生胃癌の同時性肝転移に対し,動注化学療法が著効した1 例を経験したので報告する。症例は65 歳,女性。II型胃癌に対し幽門側胃切除を施行。L,type 2,5.5×2.4 cm,tub 2>por 1,pT2(MP),int,INF b,ly2,v1,pN1,pPM(−),pDM(−),pH1,stageIV。術前後のAFP 値は801.4 → 65.8 ng/mL と低下し,画像検査からAFP 産生胃癌,同時性肝転移(S4 単発)と診断。術後1 か月後より動注化学療法として5-FU+epirubicin+MMC(FEM)を開始するも,CT にて肝内に複数のnew lesion(S4,S5)出現のため術後4 か月後よりDSM 療法の方針とし,MMC 10 mg,DSM 300 mg 肝動注を施行した。dynamic CT にてS4,S5 の腫瘍ともに縮小し,術後5 か月目より肝動注化学療法FP 療法(CDDP 5 mg+5-FU 250 mg weekly)を開始し,14 か月間合計45 回施行した。治療の経過中肝転移はCR となり,腫瘍マーカーも正常化した。肝リザーバーからの造影にて肝動脈の狭小化と脾動脈への造影剤の流入を認めたため,動注は中止とした。その後,術後20 か月目よりS-1(100 mg/day: 4 投2 休)を開始し,3 コース目からは(50 mg/day: 4 投2 休)とし6コース目を施行中である。現在,術後2 年4 か月無再発生存中である。AFP 産生胃癌の肝転移に対して,動注化学療法が有効な治療となり得る可能性が示唆された。 -
S-1 単剤およびS-1+CDDP 併用化学療法により二期的に根治切除を施行した胃癌同時性肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は75 歳,男性。胃体中部小弯の3/4 周性3 型病変を近医にて指摘され,当科を受診。腹部CT にて肝S7 に12 mm大の肝転移を認めた。経口摂取不良の症状があり,幽門側胃切除術,D2 郭清を施行した。術後S-1 120 mg/day で4 週投与2 週休薬を3 コース施行。転移巣が22 mm と増大したため,S-1(120 mg/day,3 週投与2 週休薬)+CDDP(60 mg/m2,day8)を投与した。1 コース後のCT にて肝転移は26 mm と増大したが,胃切除術後半年にて,新たな他臓器転移や局所再発もなくコントロールされており,肝S7 部分切除術を施行した。術後経過は良好で,術後5 か月現在外来通院中である。StageIVであっても非治癒因子が肝転移のみであれば,標準手術と術後化学療法を組み合わせることで根治できる可能性が示唆された。 -
根治切除後5 年4 か月後に腎転移を来した胃扁平上皮癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。胃噴門部に2 型の腫瘍を認め,2000 年2 月に胃全摘術,脾摘術,D2 郭清,Roux-en Y 再建を施行した。病理結果は扁平上皮癌(squamous cell carcinoma),pT3(SE),pN0H0P0M0,ly2,v1,fStageIIであった。術後経過観察中,5 年4 か月目に左腎上極に約2 cm 大の腫瘤を認め,腹腔鏡下左腎摘出術を施行した。病理結果は転移性腎腫瘍であり,組織学的診断により胃扁平上皮癌の転移と診断した。胃扁平上皮癌は比較的まれな疾患であり,さらに,これも比較的まれな胃癌孤発性腎転移を来した症例を経験したので,文献的考察を含めて報告する。 -
長期にわたる多剤化学療法施行後にS-1 およびDocetaxel が奏効した進行再発胃癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description今回われわれは数種類の抗癌剤を使用後に再発した胃癌症例に,S-1 およびdocetaxel を併用投与して有効であった症例を経験した。症例は50 歳,男性。胃癌(tub 1,T3,N3,P0,H0,CYx,M0,StageIV)にて幽門側胃切除を施行。以後CDDP,Lentinan,5-FU,levofolinate calcium,UFT,paclitaxel,S-1,CPT-11,doxifluridine,docetaxel を順次投与。術後5 年目に出現した肺・リンパ節転移は一時CR となるも再度増大。術後7 年11 か月,左肝下面の再発巣が残胃へ直接浸潤し吐血。残胃全摘,Roux-en Y 再建術を施行。また,S-1(80 mg/day: day 1〜14)およびdocetaxel(50 mg/ day: day 1)の化学療法を開始(2 週投与1 週休薬)。2 コース施行後のCT にて転移巣の縮小が認められた。6 コース施行後CT にて転移巣は再度増大。初回手術より8 年8 か月で死亡した。 -
腹膜播種による閉塞性黄疸を伴う高度進行胃癌に対してIVR と化学療法が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。閉塞性黄疸により発症し緊急入院となった。上部消化管内視鏡によってECJ より胃体中部にわたる3 型腫瘍を認め,生検ではtub 2 を検出した。腹部CT では肝門部における胆管狭窄が描出され,注腸造影と腹腔鏡検査によって高度腹膜播種と診断した(cT3N1P1,cStageIV)。PTCD を行いメタリックステントを留置した後,S-1/CDDP 併用療法を開始した。腫瘍マーカーは漸減し,4 サイクル施行したところで画像上PR を得たものの,6 サイクル終了後に病巣の再燃を認めたため胆管内に再度ステントを挿入した。second-line としてweekly paclitaxel を選択したが満足すべき効果は得られず,初診より12 か月後に永眠された。腹膜播種による閉塞性黄疸を初発症状とした高度進行胃癌に対して,一時的にではあるが集学的治療が奏効したと考えられた。 -
胃癌の脊椎転移による脊髄麻痺に対し整形外科的手術が有効であった3 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description今回,胃癌の脊椎転移による脊髄麻痺に対して整形外科的手術が有効であった3 例を経験したので報告する。症例1 は75 歳,女性。胃全摘術後1 年4 か月にTh1 からTh3 の転移による下肢麻痺が出現した。麻痺出現翌日から放射線治療を施行したが,D からC に悪化した。そこで麻痺出現から8 日後に椎弓切除+後方固定術を施行したところ,C からD に改善した。症例2 は50 歳,男性。幽門側胃切除術後3 年8 か月に,Th2 の転移による下肢麻痺が出現した。麻痺出現から3 日後に椎弓切除+後方固定術と放射線治療を行い,麻痺はC からD へ改善した。症例3 は80 歳,男性。胃全摘術後5 年8 か月にTh3の転移による下肢麻痺が出現した。麻痺出現から7 時間後に椎弓切除+後方固定術と放射線治療を行い,麻痺はFrankel 分類のB からC へ改善した。胃癌の脊椎転移による脊髄麻痺が出現した場合,QOL 保持のための整形外科的手術は有用な治療オプションの一つと考えられた。 -
胃原発絨毛癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。食欲不振で2006 年5 月に当院を受診。腹部単純CT 検査で残胃背側に径9×7 cm の腫瘍を認め,上部消化管内視鏡検査では残胃後壁が圧排され,一部にcoagulation の付着および壊死様の軟らかい隆起組織を認めた。生検で低分化腺癌と診断され,胃全摘術(D2),膵体尾部切除術,脾摘術,横行結腸部分切除術を施行した。術後病理組織学的検査の結果,胃原発絨毛癌と診断された。術後45 病日に皮膚転移が出現し,術後60 病日に永眠された。胃原発絨毛癌は非常にまれな疾患であり,極めて予後不良である。今回われわれは,急速に進行した胃原発絨毛癌を経験したので報告する。 -
十二指腸原発GIST に対する局所切除・有茎小腸パッチの経験
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionはじめに: 本邦では,GIST 研究会のガイドラインに沿ったアルゴリズムが普及しているが,海外からのガイドラインなども参照しつつ対応しているのが現状である。今回,十二指腸原発のGIST を経験したので報告する。症例: 50 歳台,女性。CT,MRI: 膵頭部後外側に直径3.5 cm の造影効果のある腫瘍。EUS: 膵頭部後外側に接する直径3.5 cm の腫瘍。PET-CT: 十二指腸腫瘍に一致して集積。EUS-FNA: c-kit(+)。十二指腸原発GIST。手術: 開腹下に十二指腸局所切除・有茎小腸パッチを施行。考察: 十二指腸原発GIST は,悪性度を考慮して加療する必要がある。切除に伴う十二指腸欠損に対しては,種々の術式が報告されRoux-en Y 吻合の報告が多く,有茎小腸パッチの報告はまれである。本法は生理的な消化管通路を維持し,簡便な再建法であると考えられた。まとめ: 十二指腸原発GIST の診断と治療について文献的考察を加えて報告した。 -
GIST 局所再発,肝転移,縦隔胸膜転移に対し切除とImatinib で長期生存を得られた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description再発GIST の治療はimatinib が第一選択となるが,局所再発や切除可能な肝転移は手術も考慮される。直腸GIST 切除後に局所再発切除,肝転移切除,左縦隔胸膜転移切除,imatinib 内服にて7 年10 か月の長期生存を得られている症例を報告する。患者は60 歳台,男性。1999 年に未分化型食道癌手術を施行した際,直腸に3 cm の粘膜下腫瘍を指摘されていたが,経過観察していた。2001 年に腫瘍の増大と大量下血を認めMiles の手術を施行し,高リスク群GIST と診断した。2004 年にPET,CT で局所再発,肝転移を認め局所再発切除,肝切除を施行した。術後imatinib 300 mg/day を開始したが,副作用のため300 mg 隔日投与とし,休薬・再開を繰り返した。休薬中の2008 年5 月にCT で左縦隔に胸膜肥厚を認め,10 月のPETで転移を疑われ胸腔鏡下にて切除。imatinib が同量で再開したが,副作用のため200 mg 隔日投与となり,現在のところ再発を認めていない。再発GIST に対して,集学的治療で長期生存が得られる可能性がある。 -
Imatinib 長期内服切除不能GIST の急速増大に対して切除術にてQOL の改善が得られた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description3 年間imatinib 内服にてコントロール可能であった切除不能GIST の急速増大腹腔内出血例に対して,切除術にてQOLの改善を認めたので報告する。症例は68 歳,女性。2005 年,当院産婦人科にて骨盤部腫瘤に対して単純子宮全摘+両側付属器切除術を施行された。腸間膜に多数の腫瘤,大網播種,腹壁播種を認め,高リスク群GIST と診断された。術後imatinib 400 mg/day 内服にて3 年間SD であった。2008 年末に右下腹部腫瘤の急速増大を認め,この時点でsunitinib 37.5 mg/day の内服を試みるもgrade 3 の下痢と腫瘍の増大を認め入院した。腫瘍からの腹腔内出血も認め,IVR の効果はなくPS 3 と悪化した。出血がPS 悪化の主原因と考え,2009 年1 月に主病変切除術を行った。術後PS 1 まで改善し摂食可能となり,退院した。imatinib 内服を再開するも約2 か月後に再燃したが,この間QOL は良好で在宅療養可能であり,手術の意義があったと考えられた。 -
後腹膜原発の悪性線維性組織球症(MFH)の1 治験例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。便秘を主訴とし,2008 年7 月に当科外来を受診。左側腹部に手拳大の腫瘤を触知したため精査を施行した結果,後腹膜腫瘍と診断された。9 月に下行結腸切除合併腫瘍摘出術を施行。病理組織学的診断は後腹膜原発の悪性線維性組織球症(MFH)であった。術後経過は良好で補助療法は行わなかった。術後8 か月目に腹部CT 検査で局所再発所見を呈した。MFH は予後不良な疾患とされ,その治療法としては外科根治術が最も有効であるとされるが,一刻も早い化学療法をはじめとする効果的な治療法の確立が待望される。 -
CDDP 肝動注化学療法が有効であった門脈内腫瘍栓を伴う高度進行肝細胞癌の2 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description微粉末cisplatin(CDDP)を用いた肝動注化学療法(TAI)が奏効した門脈内腫瘍栓を伴う高度進行肝細胞癌(HCC)の2 例を報告する。症例1: 65 歳,男性。多発HCC に対し肝動脈化学塞栓療法(TACE)を5 回施行後,腫瘍は著明に増大し,Vp2 の門脈内腫瘍栓と総肝動脈周囲リンパ節転移が出現した。TACE 後の二次治療として微粉末CDDP を用いたTAI を計8 回施行し,HCC の縮小と門脈内腫瘍栓,転移リンパ節の縮小を認めPR と判定した。症例2: 72 歳,女性。単発のHCCに対しTACE を1 回施行後,Vp4 の門脈内腫瘍栓を伴いHCC は著明に増大した。微粉末CDDP を用いたTAI を施行後,HCC および門脈内腫瘍栓は著明に縮小しPR と判定した。高度進行・再発HCC に対するTACE 後の二次治療として,微粉末CDDP を用いたTAI は局所療法の有望な選択肢の一つと考えられ,予後の改善に寄与すると期待される。 -
糖原病I型に合併した肝細胞癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は55 歳,女性。1997 年に糖原病I型と診断され経過観察されていたが,2002 年3 月,腹部造影CT 検査にて肝臓S2 領域に早期濃染像を示す腫瘤を認め,肝細胞癌(HCC)と診断された。2002 年より同部位に対して計3 回の肝動脈塞栓化学療法(TACE)を施行したが,2008 年12 月に腹部造影CT を施行したところ肝S2 領域より肝外に突出し,脾臓上極に近接する軟部陰影を認めHCC 再発が疑われたため,2009 年1 月に肝S2 部分切除術を施行した。術後病理診断は,低分化型HCCであった。糖原病I型に合併したHCC は進行が遅く,多くは高〜中分化型といわれているために画像による長期的な定期検査により再発を早期に発見できると思われた。 -
ラジオ波焼灼療法実施後に総肝動脈周囲リンパ節転移が組織学的に判明した肝細胞癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。慢性B 型肝炎にて経過観察中,2007 年5 月に肝内多発病変が指摘され,TACE を実施。7 月にLipiodol 集積のないS8 病変に対して,ラジオ波焼灼術(RFA)を実施。同時期の消化管精査にて進行胃癌が判明し,小弯中心にリンパ節転移が存在。11 月に胃全摘術,脾臓合併切除,D2 郭清を実施。病理組織検索にて郭清リンパ節に胃癌転移を認める一方,総肝動脈周囲リンパ節(No.8a)に肝細胞癌の存在が確認された。近年,肝細胞癌に対する局所療法としてRFA が普及しているが,病態の悪化も報告されている。元来肝細胞癌のリンパ節転移はまれであるとされており,自験例のようにRFA がリンパ節転移の引き金となったことが十分推察される。 -
肝細胞癌に対する経皮的ラジオ波熱凝固療法施行後に胆道出血による閉塞性黄疸を認めた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。12 年前からC 型肝炎の診断にて当院内科で外来経過観察中の2006 年3 月,肝S7 に15 mm の肝細胞癌を指摘され,治療目的で外科に紹介受診となった。AFP 37.3 ng/mL,PIVKA-II 20 mAU/mL,GOT/GPT 84/ 52 IU/L,T-Bil 1.1 mg/dL,Alb 3.8 g/dL,Plt 8.9×10 4/μL,PT 11.8 秒(INR 1.28)<Child 分類A>。4 月に全身麻酔下で経皮的ラジオ波熱凝固療法(RFA)を施行した。術後5 日目に突然の腹痛とT-Bil 値の上昇(3.3 mg/ dL)を認めたため原因精査を行った結果,胆嚢内の緊満,術後ヘモグロビン値の減少やファーター乳頭からの黒色の排液を認めた。以上より,RFA施行後に発生した胆道出血による閉塞性黄疸と診断した。減黄処置も考慮したが,経過観察のみで症状は軽快し退院となった。RFA による胆道出血は発症頻度が少ないものの,それにより閉塞性黄疸を来し得ることもある。対応に苦慮するが,無治療のまま慎重に経過観察することも肝要である。 -
肝細胞癌副腎転移切除術後再発腫瘤に対してTACE 併用RFA を施行した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は80 歳台,男性。2003 年2 月,多発HCC に対して肝S5, S7, S8 切除術およびS2 にMCT を施行。StageIVa(T4,N0,M0)であった。7 月,CT にて径2 cm 大の右副腎腫瘍を認め,2005 年2 月に腫瘍径約5 cm 大と増大を認め,腫瘍マーカー(PIVKA-II)の上昇も認めたため,転移疑いにて4 月,一部正常副腎を残して右副腎腫瘍切除術を施行,病理組織診断にてHCC の転移と診断された。2008 年7 月,右後腹膜に径約3 cm 大の再発腫瘤を認め,PIVKA-IIも軽度上昇を認めたため,局所再発と考えられ,動脈塞栓術を施行。右下横隔動脈から分岐する右下副腎動脈およびその分枝血管から栄養される腫瘍濃染を認め,epirubicin 30 mg,Lipiodol 5 mL のemulsion を動注後,ジェルパート(1 mm 粒,30 mg)にて超選択的TACE施行後,CT ガイド下に右背部肋間アプローチにてRFA を施行。合併症なく良好な焼灼術を施行し得た。その後腫瘍マーカーは低下し,術後10 か月の現在も再発所見なく経過観察中である。TACE 併用RFA はHCC のみならず,副腎転移切除後局所再発に対しても安全で有用な低侵襲治療と考えられ,予後延長にも寄与する可能性が示唆された。 -
門脈内腫瘍栓を伴った混合型肝癌に対し集学的治療が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description門脈内腫瘍栓を伴った混合型肝癌(HCC-CC)に対する集学的治療の奏効例を報告する。症例は66 歳,男性。CT にて肝S3 から肝外へ突出し,左門脈に腫瘍栓を伴う腫瘤を指摘され,肝細胞癌(HCC,Vp3)と診断した。肝左葉切除術・門脈内腫瘍栓除去術を施行し,肉眼的根治術後にインターフェロン(IFN)併用5-FU 動注化学療法(FAIT)を行った。切除標本の病理診断は混合型肝癌であった。術後9 か月に腹腔内および頸部にリンパ節転移を認め,AFP・CEA 両者が上昇していたことから胆管細胞癌(CCC)成分の転移も考慮し,S-1 の投与を開始した。現在4 コース施行し,転移リンパ節の著明な縮小を認め治療を継続中である。HCC-CC ではHCC・CCC 両成分の再発・転移が考えられるため,術後補助療法として両方のコントロールが必要であると推察された。 -
肝動注リザーバーカテーテル留置自体によって腫瘍の大部分が壊死したと考えられた多発B 型肝細胞癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide DescriptionGDA コイル法による肝動脈リザーバーカテーテル留置後,カテーテル留置自体によって腫瘍の大部分が壊死したと考えられた多発肝細胞癌の1 例を経験したので報告する。症例は59 歳,男性。近医にてB 型慢性肝炎で通院中,多発肝細胞癌と診断され,当院紹介となった。肝S4 の80 mm 大の腫瘍をはじめ,多血性の肝細胞癌が両葉に多発していた。肝動注リザーバー化学療法を行うため,5 Fr 留置カテーテルをGDA コイル法で留置した。留置後から,腹痛を伴わない熱発および著明なALT 上昇を認めた。肝予備能も徐々に低下し動注化学療法は施行できなかった。留置3 週間後の造影CT では,動脈相で大部分の腫瘍が早期濃染を認めない腫瘍壊死の所見であった。カテーテル留置により肝への血流低下を来し,腫瘍壊死に至ったものと考えられた。 -
リンパ節転移陽性原発性肝癌術後リンパ節再発に対しUFT 投与により縮小を認めた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionリンパ節転移を有する原発性肝癌は予後不良とされている。術後リンパ節再発に対してUFT を投与し,効果を認めた症例を経験したので報告する。症例: 74 歳,男性。2007 年4 月に肝細胞癌の手術目的にて当科紹介となった。肝右葉に大きな腫瘍と大動脈周囲リンパ節腫大を認めた。5 月に肝右葉切除術,リンパ節摘出術を施行した。切除標本では混合型肝癌,3 個の大動脈周囲リンパ節転移を認めた。第5 病月のCT にて肝S3 と右副腎に再発を認めた。第6 病月にTAE,第8 病月に右副腎摘出術を施行した。第12 病月のCT にてIVC 右側にリンパ節腫大を認めた。同月よりUFT の内服を開始したところ腫瘍マーカーの低下を認め,第17 病月のCT で縮小を認めた。しかし第19 病月には腫瘍マーカーの再上昇を認めた。第21 病月にTAE を施行した。考察: リンパ節転移を有する混合型原発性肝癌に対し,UFT の投与により効果を認めた症例を経験した。 -
肝細胞癌術後の多発肺転移に対しS-1 が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は68 歳,男性。意識消失発作を契機に,肝外側区域の肝細胞癌(HCC)破裂と診断された。肝動脈塞栓術による止血後,精査にて直腸癌の同時性重複を認め,当科に紹介された。2005 年8 月,肝外側区域切除,S8 部分切除,胆嚢摘出,直腸前方切除,D3 郭清を施行した。2005 年12 月,残肝再発を来し,以降四度の肝動脈化学塞栓療法を施行した。また2006年5 月,AFP,PIVKA-IIの上昇とともに,CT にて両肺に多発する小結節像を認め,HCC の肺転移と診断した。2007 年2月,肺転移巣の増大を認め,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル剤(S-1)の投与を開始した。2 か月後,画像所見および腫瘍マーカーの著明な改善を認め,CR と判断した。肺再発後3 年が経過した現在も肝内外とも新病変なく経過中である。HCC 肝外転移に対する有効な治療法はいまだ確立していないが,本症例からS-1 の有効性が示唆された。今後,症例の蓄積による有効性の評価および検証が必要と考えられる。 -
Gd-EOB-DTPA 造影MRI 検査により診断し得た肝細胞癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。2005 年3 月の腹部造影CT 検査で,肝S8 に18 mm 大の内部に早期濃染像を示す腫瘍が認められたために当院内科に紹介された。AFP は軽度上昇していたが,腹部単純MRI 検査でも高濃度域を呈しており,肝血管腫と診断され,経過観察となった。しかし2008 年4 月の腹部造影CT 検査で,肝S8 の同腫瘍の近傍に16 mm 大の早期濃染を示す腫瘤を認め,門脈相でwash-out されていたために肝細胞癌(HCC)が疑われ,当科紹介となった。Gd-EOB-DTPA を用いたMRI 検査の肝細胞相で肝血管腫と考えられていた腫瘤は,低濃度域を呈し,単純MR 検査の結果と併せて考えると脂肪成分を含んだHCC が疑われ,新発生の腫瘤は高濃度域を呈し,胆汁排泄障害を伴ったHCC が疑われた。以上より,質的診断を含めて肝S8 部分切除術を施行した。切除標本には二つの腫瘍以外に両者に挟まれるように7 mm 大のHCC が認められた。前二者の腫瘍は高分化型HCC で,切除時に発見された腫瘍は中分化型HCC であった。本症例のようにGd-EOB-DTPA を用いたMRI 検査を加えることにより腫瘍の特徴の診断が可能であり,さらなる診断技術の向上が期待できると思われた。 -
肝・膵頭十二指腸切除術および術後インターフェロン併用動注化学療法により長期生存が得られた膵頭後部リンパ節転移,門脈内腫瘍栓を伴った進行肝細胞癌の1 切除例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は72 歳,男性。肝細胞癌(HCC)切除後再発に対する治療を目的として,当科紹介となった。腫瘍は肝S6/1 に存在しており,この腫瘍と接する形で膵頭後部にリンパ節転移を認めた。また主腫瘍から連続して,門脈本幹内に腫瘍栓を認めた。肝・膵頭十二指腸切除術(HPD)および門脈内腫瘍栓摘出術を施行した。切除標本の病理組織検査ではHCC,EdmonsonIV型,充実型,eg,fc(+),fc-inf(+),sf(+),s1,n1,vp4,vv0,va0,b0,p0,sm(−),pT4N1M0: StageIVaであった。退院後より術後補助療法としてインターフェロン併用肝動注化学療法を施行した。術後41 か月目に肝内再発を認め,ラジオ波焼灼療法を行った後,現在(術後66 か月目)まで無再発生存中である。リンパ節転移および門脈内腫瘍栓を伴った進行肝細胞癌のなかには,たとえHPD のような拡大手術を要する場合であっても,根治切除および術後残肝再発予防のインターフェロン併用動注化学療法を施行することで,長期生存が可能となる症例が存在すると考えられた。 -
肝原発腺扁平上皮癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。持続する胸部圧迫感を主訴に来院し,腹部CT にて肝右葉後区域に径10 cm 大の腫瘍を指摘された。腫瘍マーカーはCA19-9 のみが703 U/mL と高値であった。胆管細胞癌の診断にて,経皮経肝門脈塞栓術施行後,肝右葉切除,副腎合併切除,横隔膜と下大静脈の部分切除を行った。病理組織検査の結果,腺扁平上皮癌と診断された。術後肋骨転移に対し放射線治療を施行後,現在外来にてS-1/GEM による化学療法を施行中である。肝原発の腺扁平上皮癌は比較的まれな組織型であり局所再発やリンパ節転移が多いとされ,その予後は数か月程度と非常に悪い。術後の補助療法が必須と考えられるが確固たる治療方針は定まっておらず,今後症例の蓄積が望まれる。 -
長期無再発生存が得られている進行胆嚢癌の1 手術例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳,女性。上腹部不快感を主訴に近医を受診,胆嚢癌の疑いにて当科紹介となった。精査の結果,肝内浸潤および肝門部リンパ節腫大を伴う進行胆嚢癌と診断され,肝中央下区域切除,胆嚢胆管切除,リンパ節郭清,胆管空腸吻合術を施行した。総合的進行度はGfb circ,pT4N2H0P0M0,fStageIVbであった。術後はgemcitabine(GEM)800 mg/m2,3週投与2 週休薬による補助化学療法を計6 コース施行し,術後33 か月を経過した現在,腫瘍マーカーは陰性で無再発長期生存を得ている。 -
S-1 による化学療法が奏効した進行胆嚢癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description当科において手術不能の進行胆嚢癌に対して,S-1 内服が奏効した1 例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例は68 歳,男性。近医で黄疸を指摘され,当院を紹介された。2008 年4 月15 日のCT で胆嚢癌の肝門部,胆嚢床浸潤と診断され,治癒切除は困難と考えられた。4 月30 日からS-1 を120 mg/day 内服開始し,4 週内服2 週休薬とした。有害事象は認めなかった。9 月25 日のCT で胆嚢は萎縮し,胆嚢床近傍の肝実質に不整形の病変が認められるが,前回のCT に比べて著明に改善した。2009 年2 月13 日のCT で胆嚢床域の腫瘍はほぼ消失し,PR の効果が得られた。臨床第II相試験では,S-1 の胆道癌に対する化学療法単独奏効率は35%との報告があり,重篤な副作用はほとんど認められない。切除不能進行胆嚢癌に対して,S-1 内服治療は副作用も少なく外来で投与可能であり,有効な薬剤の一つとして期待できる。 -
胆管細胞癌に対するUFT,5-FU 静注術後補助化学療法(PMC 療法)
36巻12号(2009);View Description Hide Description胆管細胞癌治癒切除例に対してUFT,5-FU を静注するPMC 療法を術後補助化学療法として施行した12 例(A 群)と補助化学療法なしの8 例(B 群)とを比較検討した。PMC 投与方法はUFT-E 300 mg/day を連日内服させ5-FU 500 mg/body を週1 回点滴静注とし,再発がなければ1 年間の投与とした。PMC 施行例の5-FU 平均静注回数は33.2±17.06 回(6〜48 回)であり,A 群,B 群の生存期間中央値(MST)は78.9 か月,74.3 か月であった。A 群,B 群の5 年生存率は59.4%,59%(p=0.83),無再発生存率は37.5%,25%(p=0.95)であり,有意差は認めなかった。胆管細胞癌に対する術後補助化学療法としてのPMC 療法は現時点で明らかな予後延長,再発遅延を認めず,進行癌で有効性の報告があるgemcitabine やS-1などの他の抗癌剤による症例集積が必要である。 -
肝内胆管癌術後の残肝再発に対して複数回のラジオ波焼灼術が奏効した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description患者は67 歳,男性。肝内胆管癌の診断の下に肝拡大右葉切除術を施行した。術後,残肝再発を繰り返したが,ラジオ波焼灼術(RFA)を繰り返し施行して局所制御を行い,26 か月間にわたり良好なquality of life(QOL)を保っている。肝内胆管癌再発例に対して,RFA による局所制御が有効である可能性が示唆された。 -
膵癌根治切除術後に孤立性肝転移に対して肝切除を施行した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳,女性。2006 年11 月十二指腸浸潤を伴う膵頭部癌の診断で,12 月に門脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した。2007 年1 月より術後照射を施行し,2 月からgemcitabine による補助化学療法を併用した。7 コース終了後のCT で肝再発と肺再発を疑われたためS-1 による二次治療を開始したが,2 コース目にgrade 3 の嘔気・嘔吐が出現し,paclitaxel による三次治療に変更した。1 コース目に発熱性好中球減少症,敗血症性ショックを来し集中治療により救命を得た。その後の検査により肝および肺再発はCR と判断し,患者希望により無治療にて経過観察とした。2008 年9 月孤立性膵癌肝転移を認め,10 月に肝部分切除術を施行し,8 か月後に癌死した。膵癌根治切除術から21 か月後に孤立性肝転移を切除し,7 か月間の無再発生存が得られた1 例を経験したので報告する。 -
膵癌異時性肝転移に対し肝切除術を繰り返し比較的良好な経過を得られた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description膵癌の肝転移再発症例において肝切除術の適応は議論の分かれるところである。今回われわれは,膵体尾部癌術後に再発し化学療法が困難な異時性肝転移に対して繰り返し肝切除術を施行し生存を得られている症例を経験したので報告する。患者は71 歳,女性。2005 年5 月膵体尾部癌の診断で他院にて膵体尾部根治切除術を施行された。gemcitabine による全身補助化学療法を施行したが,間質性肺炎を併発し投薬を中止した。その後,2006 年10 月局所再発の疑いにて当科紹介となった。2007 年8 月,12 月,2008 年11 月にそれぞれ転移巣に対して肝部分切除術を施行した。2 回目までの肝切除後は腫瘍マーカーの低下を認めた。三度目の手術では肝内に多発転移が確認された。現在,緩和医療を行いつつ生存中である。膵癌の肝転移症例でも切除可能であれば手術により効果の得られる可能性があるが,慎重に手術適応を選ぶ必要があることが示唆された。 -
膵悪性腫瘍と鑑別困難であった膵内副脾に発生した類表皮嚢腫の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は42 歳,女性。増大傾向の膵嚢胞にて当院内科に紹介となる。超音波検査にて膵尾部に径25 mm 大の隔壁を有する被膜の厚い嚢胞性病変を認め,腹部造影CT 検査にて被膜と隔壁は濃染された。CA19-9: 102.0 U/mL と高値のため,上下部消化管内視鏡を施行されたが異常はなかった。外来にて経過観察されていたが,来院後2 か月のCA19-9 が147.3 U/mLと上昇傾向であったため,外科紹介となった。画像所見より典型的ではないが,粘液性嚢胞腺腫や内分泌腫瘍など悪性腫瘍に準じる腫瘍の可能性があり,膵尾部切除を施行。切除標本にて脾臓と同色の嚢胞病変を認め,内部には隔壁を形成していた。術後経過良好にて術後11 日目に退院となった。病理組織検査にて膵内副脾に生じた類表皮嚢腫と診断された。嚢胞内上皮はCA19-9 免疫染色陽性で,術後に血清CA19-9 は正常化し,類表皮嚢腫から産生されていたものと考えられた。 -
膵癌肝転移腹膜播種による多発腸閉塞に減量手術とGemcitabine 単独投与により予後改善を認めた1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は62 歳,女性。左下腹部の張り感を主訴に近医を受診,精査にて異常を認めず対処療法が行われていた。症状の悪化に伴い当科を受診。CT にて膵癌,脾浸潤,肝転移,腹膜播種と診断。手術適応なく化学療法を予定していた。入院精査中にイレウス症状が急速に増悪したため,緊急手術を施行した。膵尾部および肝の腫瘍,腹膜播種による重度の小腸狭窄と拡張,上行結腸・S 状結腸の狭窄を認め,膵体尾部切除,肝部分切除,胃部分切除,5 か所の小腸部分切除,右半結腸切除,S 状結腸切除を施行した。術後経過は良好でgemcitabine 療法を開始した。化学療法による副作用は軽度で,術後3 か月で腫瘍マーカーは正常化,術後8 か月で経腸栄養より離脱した。現在,術後20 か月経過生存中でPS 0 の状態が保たれている。腹膜播種による消化管閉塞に対して通過障害を除去し,十分な栄養管理と化学療法を併用したことが予後改善につながったと考えられた。 -
S-1+Gemcitabine 併用化学療法が著効し長期生存中の進行膵癌術後肝転移の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description再発・進行膵癌における化学療法は,gemcitabine 単独療法が標準治療であるが,S-1+gemcitabine 併用化学療法も第II相試験で良好な成績が報告されつつある。今回,S-1+gemcitabine 併用化学療法が著効し,長期生存中の進行膵癌術後肝転移の1 例を経験したので報告する。症例は59 歳(手術時),女性。膵頭部癌,cT4N0M0,stageIVa との診断で術前化学放射線療法(gemcitabine 800 mg/m2+RT 36 Gy)を施行後,2005 年11 月に膵頭十二指腸切除術を施行した。術後病理組織診断はpoorly differentiated adenocarcinoma,pT4N0M0,StageIVa であった。術後外来経過観察中であったが,2006 年10 月,肝S8/7 に径1 cm 大,単発の肝転移を認め,S-1+gemcitabine 併用化学療法を35 コース施行し(21 days/1 コース,S-180 mg/m2 day 1〜5,8〜12。gemcitabine 1,000 mg/m2 day 6,day 13),CR を得た。本症例においてS-1+gemcitabine 併用化学療法は,QOL を損なうことなく2 年もの長期の間安全に施行でき,肝転移のcontrol も良好であった。再発膵癌に対する化学療法は,術前にgemcitabine を用いた場合,薬剤耐性を考慮しS-1 との併用療法も有効である可能性が示唆された。 -
二次治療のS-1 が奏効した腹膜転移を有する膵癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は50 歳台,男性。腹部膨満と食欲不振にて当院を初診。初診時大量の腹水,腹膜転移を伴う膵体部癌と診断した。一次治療としてgemcitabine(GEM)1,000 mg/m2 を3 週投与1 週休薬,4 週1 コースで投与した。2 コースで腹水は消失,原発巣の縮小も得られpartial response(PR)と判定した。11 コース終了後,新たな腹膜結節の出現を認めた。time to progression(TTP)は11 か月であった。二次治療としてS-1 を選択した。腹膜結節の縮小を認めPR の効果が得られた。特に有害事象は認めず,TTP は6 か月であった。膵癌の一次治療としてはGEM が標準治療と考えられるが,二次治療の意義は明確ではない。S-1 は膵癌の一次治療における第II相試験で奏効率37.5%と報告されており,膵癌二次治療における有望な薬剤である。S-1 は二次治療としても,膵癌の生存期間の延長に寄与し得ると考えられた。ただし,経口摂取可能な段階で移行する必要があり,治療の切り替えのタイミングが重要である。 -
化学放射線療法により長期生存可能であった切除不能膵体部癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionわれわれはgemcitabine(GEM)併用の化学放射線療法および化学療法により,初診時から2 年5 か月生存し得た切除不能膵体部癌の1 例を経験したので報告する。症例は65 歳,女性。脾動脈および門脈本幹に浸潤する膵体部癌と診断され,GEM 800 mg/body/週の全身投与を併用した体外照射(1.8 Gy×30)を行った。退院後外来にてGEM 1,000 mg の投与(3週投与1 週休薬)を継続した。2008 年4 月ごろよりCT 上ダグラス窩に腹膜播種と思われる病変が出現し,2009 年4 月原病死した。膵体部癌は切除不能となる例が多く全身化学療法の導入がなされているが,治療成績はいまだ十分ではない。近年,GEM と放射線照射を併用することにより局所制御に有効であったとの報告もみられ,われわれの症例も播種巣の進展はみられるが,局所は十分な制御状態を維持可能であった。 -
動脈浸潤を伴うStageIVa 膵癌に対してGemcitabine を用いた化学放射線療法を施行し,根治切除可能となった1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。2006 年10 月心窩部痛を主訴に受診し,精査の結果,門脈,上腸間膜動脈(SMA)浸潤を伴うStageIVa の膵頭部癌と診断した。局所進行切除不能例であり,gemcitabine(GEM)を用いた加速多分割照射による化学放射線療法(CRT)を施行した。主腫瘍とSMA 浸潤部の縮小を認め,根治切除可能と判断し,2007 年5 月門脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した。開腹後,腫瘍はSMA に接する程度にまで縮小しており,剥離可能であった。術後の組織学的効果判定はGrade 2,剥離断端は陰性で,R0 の根治術を施行し得た。術後はGEM を用いた補助化学療法を施行し,2 年2 か月を無再発生存中である。局所進行切除不能膵癌に対して,GEM を用いた加速多分割照射によるCRT は,腫瘍のdown staging という意味においても有効な治療法である可能性が示唆された。 -
S-1+Gemcitabine による術前化学放射線療法を行った局所進行膵癌の1 切除例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は63 歳,女性。子宮体癌術後の定期的CT 検査で膵腫瘍を指摘された。精査にて上腸間膜静脈(SMV)に浸潤を有する大きさ2.5 cm の局所進行膵頭部癌(T4,N0,M0,cStageIVa)と診断し,術前化学放射線療法(S-1: 80 mg/m2/day×28 days,gemcitabine 200 mg/m2/day×6 fr,1 fr a week,三門原体照射: 1.8 Gy×28 Fr)を施行した。grade 3 の白血球減少と好中球減少が認められたが,治療日程の変更はなく治療完遂4 週後の効果判定では腫瘍は縮小しており,SMV との境界も明らかとなった。その2 週後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)(SMV 合併切除,D2)および術中放射線照射を施行した。術後経過は良好であり,術後19 日目に退院した。現在再発なく外来で補助化学療法を施行中である。 -
膵癌根治切除後リンパ節再発を放射線療法で制御し転移性脳腫瘍摘出術を施行した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description膵癌根治切除後の頸部,縦隔リンパ節再発を放射線療法で制御し,転移性脳腫瘍摘出術を施行した1 例を経験したので報告する。症例は64 歳,男性。膵体尾部癌で根治手術を施行した。術後診断は,通常型膵癌,T4N2M0,fStage IVb であった。gemcitabine を用いた術後補助化学療法を開始したが,grade 3 のアレルギー反応で中止となり,術後2 か月後よりS-1単剤療法(80 mg/m2,day 1〜28/42 days)に変更した。S-1 7コース施行後に造影CT 上,両鎖骨上,縦隔リンパ節再発を認め,放射線照射でPR を得た。しかし術後14 か月後に上肢のしびれと発語障害を発症し,MRI で20 mm 大の単発性脳転移を認めた。症状の急速な進行のため,開頭腫瘍摘出術を施行し術後に半脳照射を施行した。その後,QOL の著明な改善が認められ,脳内再発を認めず開頭手術後10 か月の現在も生存中である。 -
5-FU/CDGP+放射線併用療法による集学的治療にて長期生存を得たcT4 進行食道癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。2003 年12 月ごろより嚥下困難感を自覚し,当科受診となった。上部消化管内視鏡検査にて,胸部上中部食道に3 型進行食道癌と胃角部小弯に胃癌の合併を認めた。胸部CT 検査にて食道癌は左主気管支に浸潤を認め,食道癌: cT4(気管),N2(104R,106recR),M0,StageIVa,胃癌: cT2,N0,M0,StageIB の重複癌と診断した。2004 年1 月から5-FU/ CDGP+放射線併用療法を施行し,左気管支浸潤が消失し,down staging が得られたと考え,3 月,開胸開腹食道亜全摘術(D3 郭清),胃部分切除術,胸骨後経路胃管再建を施行した。病理検査結果では,食道癌は原発巣,リンパ節ともに消失(pCR)していた。術後はS-1 を1 年間内服したが,2 年目に胃管癌を認め追加切除術を行った。初回治療から約5 年2 か月間,無再発生存中である。5-FU+CDGP による集学的療法は,高度進行食道癌に対する有効な治療法の一つとして考えられ,文献的考察を加えて報告する。 -
食道,大腸重複癌に対してFOLFOX を用いた化学放射線療法を施行した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description食道癌に対する化学放射線療法はFP 療法が標準治療であるが,本症例は大腸癌を合併していたためFOLFOX を選択した。頸部から下部食道までT 字に計61.6 Gy 照射し,mFOLFOX6 を計3 コース施行した。mFOLFOX6 は,大腸癌への標準投与量の80%量(oxaliplatin 68 mg/m2,levofolinate calcium 160 mg/m2,bolus 5-FU 320 mg/m2,5-FU 1,920 mg/m2/46 hr)で開始したが,2 コース終了後grade 3 の白血球減少を認め1 週間の延期および70%への減量を行った。また放射線性食道炎による食事摂取不良も認めたが,その他大きな副作用を認めることなく治療完遂した。化学放射線療法後,食道気管支瘻を認めたものの,腫瘍マーカーを含め,画像上も腫瘍制御効果は十分得られたと考えられた。現在,食道癌に対するFOLFOX 療法の適用はないが,今後選択肢の一つになり得ると考えられ,日本でも臨床試験が計画されることが望まれる。 -
集学的治療後8 年目に再発を来した進行食道癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は77 歳,女性。1992 年2 月,進行食道癌に対し術前化学療法(FP 療法)を2 コース施行後,右開胸胸部食道亜全摘術を施行。病理組織学的診断はMt,mod.diff.sqcc,mp,n4(#2:1/13,#9:3/4),ly2,v0,stageIVa であった。術後補助療法としてFP 療法を2 コース施行し,以降は外来にて経過観察としていた。1999 年10 月,腹部CT にて腹腔動脈根部と右腎静脈周囲にリンパ節転移を認めたため,second-line chemotherapy としてnedaplatin+5-FU 療法を5 コース/24 週施行した。転移リンパ節は縮小し,治療効果判定はCR であった。その後,約6 か月の自宅療養期間が得られた。われわれは集学的治療後8 年目に再発し,その後も化学療法が著効して長期生存が得られた進行食道癌の1 例を経験した。 -
肺癌根治術後の胸部中部食道癌に対し縦隔鏡下食道切除術を施行した1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description肺癌右上葉切除術後の胸部食道癌に対し,非開胸による縦隔鏡下食道切除術を施行した症例を経験した。症例は70 歳,男性。右上葉の非小細胞肺癌T4N2M0,cStageIIIB に対し,術前放射線化学療法の後に右肺上葉切除術+縦隔リンパ節郭清を施行した。切除標本の病理所見ではpCR であり,以降肺癌の再発は認めなかったが,術後5 年目に上部消化管内視鏡検査にて胸部中部食道に食道癌T3N0M0,cStageII が認められた。術前化学療法(low- dose FP 療法)の後にPR となり,右開胸術の既往と低肺機能を考慮して非開胸縦隔鏡下食道切除術を施行した。術後左反回神経麻痺のために気管切開を要したが,その他に重篤な合併症はなし。なお,病理診断は高分化扁平上皮癌pT3(Ad),pN0,M0,pStageII,組織学的に剥離面における癌浸潤が一部認められた。術後局所再発を来したが11 か月目現在生存中である。肺癌術後の食道癌患者における治療上の課題は多いが,再開胸が困難な場合においては縦隔鏡下食道切除術は有効な外科的アプローチになり得ると考えられた。 -
食道癌内視鏡的切除後の局所再発に対して手術を行った1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description食道癌内視鏡的切除後の局所再発に対し,手術を施行した1 例を経験した。症例は66 歳,男性。定期受診の内視鏡検査で食道扁平上皮癌と診断され,精査にて全周性,T1a-EP もしくはLPM,内視鏡的切除の相対的適応の診断で,内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)を施行も分割切除となり,肉眼的には残存なしも,病理結果はsquamous cell carcinoma,moderately differentiated,T1a-LPM,HM 不明にて根治度B であった。その後,瘢痕狭窄を来し,内視鏡的バルーン拡張を繰り返したが約1 年後,局所再発も確認され手術を施行,最終診断はT3N2M0,StageIII であった。内視鏡的切除の適応拡大病変や相対的適応病変に対しては十分なインフォームド・コンセントの下,適切な治療方針の選択が重要であると考えられた。 -
集学的治療が奏効し長期間CR を維持している腹部大動脈周囲リンパ節転移を伴った進行食道癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は55 歳,男性。腹部大動脈周囲リンパ節転移を伴った胸部中部食道癌(cT3N4M1,stageIVb)と診断した。低用量nedaplatin/5-FU 療法を3 コース施行し,腹部大動脈周囲リンパ節転移は消失した。その後放射線治療を追加,原発巣と縦隔内リンパ節転移も消失しCR となった。6 か月の経過観察後,腫瘍マーカーの上昇を認めたため,docetaxel/nedaplatin併用療法を開始し,10 コースを施行した。腫瘍マーカーは低下し,CR を維持している。全経過をとおして有害事象は軽微であった。進行食道癌に対するnedaplatin を用いた併用療法は有害事象が少なく,有効な治療の一つであると考えられた。 -
遠隔転移を伴う食道癌に対する治療法の検討
36巻12号(2009);View Description Hide Descriptionわれわれは今回遠隔転移を有する進行食道癌に対し,化学療法,放射線治療,ラジオ波凝固療法および手術による集学的治療により長期生存を得た3 症例を経験した。再発確認後,最大3 年の生存を得ている。若干の文献的考察を加え検討した。 -
食道癌術後の転移再発病変に対するラジオ波焼灼療法症例についての検討
36巻12号(2009);View Description Hide Description今回われわれは,食道癌術後の再発または転移巣に対してCT あるいはエコーガイド下にラジオ波焼灼療法(RFA)を施行した症例を6 例経験したので報告する。症例は全例男性,年齢は55〜71 歳(中央値59 歳)。手術前進行度はStageI/II/III/IVa: 1 例/2 例/1 例/2 例,根治度は A/B/C: 3 例/2 例/1 例であった。RFA の対象とした再発転移病変は,挙上胃管大網転移 2 例,肺転移2 例,副腎転移1 例,肝転移が1 例であった。再発形式は,単発/多発: 4 例/2 例,再発までの期間は3〜121 か月(中央値12 か月)であった。同一病変に対するRFA の施行回数は,1 回3 例,2 回が3 例。画像上の治療効果はCR/PR/SD: 2 例/3 例/1 例であった。重篤な合併症は認めなかった。RFA は外科切除に比べ低侵襲かつ繰り返し施行できる利点があり,食道癌の転移再発病変に対する有効な局所療法である。 -
食道癌遠隔転移切除後に長期生存し得た1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は59 歳,男性。2005 年10 月に健診での上部消化管内視鏡検査にて胸部下部食道に進行癌を認めた。精査の後,11月上旬に右開胸開腹食道亜全摘,3 領域リンパ節郭清,胸骨後食道胃管吻合術を施行。病理組織学的検索ではpT3,ie(+),ly2,v2,pIM0,pN3,pStageIII であり,術後補助療法として全身化学療法(5-FU+CDDP: FP)を2 コース施行した。術後1 年6 か月に単発の肝転移を認め再度FP 療法を2 コース施行したが,PD のため肝S8 亜区域切除術を行った。その後DOC+CDGP の併用化学療法を5 コース施行するも食道癌手術より3 年2 か月後に残肝および腹腔リンパ節再発を来し,肝右葉切除,リンパ節郭清術を施行した。術後化学放射線療法を併用し,現在無再発生存中である。食道癌術後肝転移は多発性で予後不良であるが,外科的切除が予後の向上をもたらす場合もあり,今後症例を重ね外科的切除の適応を検討する必要があると思われた。 -
再発食道癌治療の変遷とその成績─PET-CT 導入で何が変わったか─
36巻12号(2009);View Description Hide DescriptionPET-CT 導入前後での再発食道癌治療の変遷と成績について報告した。PET-CT 導入前後で再発食道癌に対し,積極的治療を行った症例はそれぞれ,13 例(頸部リンパ節再発5 例,局所再発5 例,遠隔転移再発3 例)および21 例(頸部リンパ節再発4 例,局所再発10 例,遠隔転移再発7 例)であり,いずれの領域の再発においてもPET-CT 導入後の治療成績のほうが改善されている傾向を示していた。以上より,術後再発の早期発見にもPET-CT が有用である可能性が示唆された。さらに,再発症例であっても一領域の病変を早期に発見できれば根治を期待できる可能性が示唆された。 -
食道癌術後リンパ節再発診断におけるMRI 拡散強調像の有用性─ PET との比較─
36巻12号(2009);View Description Hide DescriptionDWIBS を用いた食道癌術後のリンパ節再発診断について,47 病変を対象としPET と比較検討した。DWIBS の感度,陽性的中度,正診率は95%,83%,81%であり,PET の97%,90%,87%と比較しほぼ同等の診断成績が得られた。しかし部位別の比較では,腹部領域や2 cm 未満の病変はPET が若干良好であった。ADC の比較では,再発リンパ節は食道癌原発巣との間に有意差はみられなかったが,原発巣手術時の転移リンパ節や正常食道との間に有意差がみられ,ADC cut-off 値を1.5 とすると100%で再発巣の分別が可能であった。初回手術時の転移リンパ節に比較し再発リンパ節では癌細胞密度が高く,組織内拡散が制限されるためADC がより低値となるものと推測された。DWIBS は食道癌術後サーベイランスに有用と考えられた。 -
S-1/Paclitaxel 療法が奏効した両側乳癌,転移性胃癌,癌性腹膜炎の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は46 歳,女性。両側乳房腫瘍と多量の腹水貯留を主訴に受診した。乳腺組織検査にて硬癌,腹水細胞診で異型細胞を認めた。癌性腹膜炎,多発リンパ節転移,多発骨転移を伴う両側乳癌と診断した。上部消化管内視鏡検査で広範囲に不整な胃粘膜を認め,組織検査にて乳癌の胃転移と診断した。S-1/paclitaxel 療法を施行したところ腫瘍はほとんど消失し,胃転移,腹水もほぼ消失した。 -
FEC 療法,PTX 療法の後S-1 療法が奏効しているStageIV 乳癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は34 歳,女性。約2 年前より右乳房の腫瘤を自覚するも放置。2005 年11 月,腫瘤からの出血を認め当科受診。右乳房に直径8 cm の腫瘤を認め,針生検でinvasive ductal carcinoma と診断された(ER 陽性,PgR 陽性,HER2: 1+)。画像上多発両肺転移,右腋窩・縦隔リンパ節転移,胸骨転移を認め,右乳癌(T4c,N3c,M1,StageIV)と診断した。FEC,PTX 療法を各4 コース施行し,その後は内分泌療法(TAM+leuprorelin acetate)を開始。評価はPR であった。しかし,2006 年9 月,腫瘍マーカーの上昇を認め,S-1 を併用投与した。2008 年12 月より腫瘍マーカーの再上昇を認めているが,画像上はSD でありS-1 投与を継続している。現在まで合計24 コースを施行し,約3 年5 か月にわたり増悪することなく,良好なQOLを保ちながら外来で経過観察をしている。anthracycline 系またはtaxane 系薬剤に耐性となった進行乳癌に対するS-1 投与は,患者の良好なQOL を考慮すると有用な治療法の一つと考えられた。 -
Anastrozole が著効した炎症性乳癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は61 歳,女性。左乳房の腫脹,発赤,浮腫を主訴に当院を受診,炎症性乳癌(T4dN0M0,StageIIIB)と診断した。術前化学療法(weekly paclitaxel: wPTX → FEC100)を開始したが,wPTX を2 回投与した時点で脳梗塞を発症したため化学療法を中止した。その後は,ホルモン療法に変更し,anastrozole(Arimidex)の内服を開始した。投与3 か月ごろより左乳房の腫脹,発赤,浮腫が軽減しはじめた。内服8 か月後には左乳房の腫脹,発赤,浮腫は消失し,MRI でも左乳腺の増強域のほとんどが消失したため,切除可能と判断し乳房切除,腋窩リンパ節郭清を施行した。 -
PST としてホルモン療法が著効した高齢者局所進行性乳癌の1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は83 歳,女性。胸部大動脈瘤で手術不能,高リスクと診断されたER 陽性,高齢者局所進行性乳癌(T4aN2M0,stageIIIb)に対しアロマターゼ阻害剤(aromatase inhibitor: AI)であるanastrozole の単独療法を行った。anastrozole 療法開始後1 か月で腫瘍の部分効果と1 年6 か月でMRI では腫瘍は消失した。3 年経過した現在もホルモン療法を継続し,遠隔転移なく経過良好である。本療法による副作用はなかった。ホルモン療法は手術困難なホルモンレセプター陽性の閉経後高齢者局所進行性乳癌に対し,極めて有用な治療の一つと考えられる。 -
皮膚潰瘍と出血を伴う若年者進行乳癌に対しPaclitaxel とToremifene 投与が有効であった1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description皮膚潰瘍と出血を伴ったStageIIIC 乳癌に対してpaclitaxel(PTX)とtoremifene(TOR)の投与を行って,切除可能となった若年者進行乳癌を経験した。症例は31 歳,女性。1 年6 か月前より右乳房腫瘤に気付くも放置していた。徐々に腫瘤の増大を認め,皮膚潰瘍から出血を認めたため当科を受診。右乳房には直径8 cm の腫瘤を触知した。腫瘍の一部は皮膚より露出しており出血を認めた。胸筋固定を認め,右腋窩,右鎖骨下に多数のリンパ節腫大を認めた。針生検では乳頭腺管癌の診断であり,ER(+),PgR(+),HER2 score 1 であった。右乳癌(T4bN3bM0,StageIIIC)の診断で,CEF を4 コース投与したところ出血は認めなくなった。その後PTX+TOR を4 コース投与したところ,腋窩,鎖骨下リンパ節の腫大は消失し,原発巣は2 cm に縮小した。胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術を施行。治療経過中重篤な副作用は認められず,手術時を除いてすべての治療が外来で行うことができたことから,良好なQOL が保てたと思われた。 -
切除により広範な皮膚欠損が予想された巨大な乳癌に対し術前化学療法を行った1 例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例は79 歳,女性。右乳房腫瘤を主訴に当科を受診し諸検査の結果,皮膚浸潤と大胸筋浸潤を伴った局所進行乳癌(T3N0M0,StageIIb)と診断した。切除により広範な皮膚欠損が予想され植皮も危惧されたため,腫瘍の縮小を期待し,術前化学療法として外来でFEC 療法を6 cycle 施行した。本療法ではgrade 2 の口内炎とgrade 3 の白血球減少を認めた。本療法6 cycle 施行後に腫瘍は約25%縮小し,腫瘍マーカーも減少した。一期的に閉創が可能と判断した時点で手術を施行した。手術は胸筋温存乳房切除(大胸筋浸潤部分のみ部分切除)およびLevel II までの腋窩リンパ節郭清を行った。閉創には難渋したが,BD 領域および腋窩の皮弁をスライドさせることで植皮を用いることなく閉創できた。病理学的検索では皮膚,大胸筋に腫瘍像(硬癌)を認めたが断端は陰性であり,リンパ節転移は認めなかった。術後経過は良好で皮弁壊死はなく術後17 日目に退院となった。退院後は外来で補助療法としてweekly paclitaxel を施行している。 -
甲状腺機能亢進症のコントロール中に局所出血をした進行乳癌の1 切除例
36巻12号(2009);View Description Hide Description症例: 55 歳,女性。2006 年ごろより右乳房腫瘤を触知した。徐々に増大傾向を認め,2008 年に疼痛も出現し当科を受診。精査にて乳癌の診断(T4b,N0,M0,stageIIIB)。一方で,3 月に甲状腺機能亢進症も指摘され内服加療を受けていたがコントロール不良であった。甲状腺機能正常化を待って手術を施行する予定であったが,2009 年1 月に乳癌局所より出血し,内服治療にて甲状腺機能をコントロールし,麻酔時間も短縮させ侵襲が過度にならないように注意しながら胸筋温存乳房手術および植皮術を施行した。コントロールされていない甲状腺機能亢進症患者の場合,全身麻酔などの大きな侵襲がかかる場合に心不全などを引き起こす可能性が高い。今回われわれは,甲状腺機能亢進症のコントロール中に出血を伴う局所進行乳癌に対して,一時的に甲状腺機能を安定化させて乳癌の手術を行うことができたので報告した。
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