Volume 36,
Issue 13,
2009
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総説
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癌と化学療法 36巻13号, 2495-2501 (2009);
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本稿では更新された内容を中心に,固形がんの新効果判定規準:改訂RECIST ガイドライン(version 1.1)を概説する。
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癌と化学療法 36巻13号, 2502-2507 (2009);
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肺癌のTNM 病期分類は世界肺癌学会IASLC で改訂案が作成され,TNM 病期分類の維持/改訂を行っているUICCとAJCC へ,それらが送られ承認が得られた。それぞれの団体から,2009 年中に新しい第7 版が刊行される予定である。IASLC は,この改訂案をまとめるために,staging project として世界各国から10 万件以上のデータを集積してデータベースを構築し,これを基にsimulation,validation を行って予後的にバランスのとれたT,N,M カテゴリーの策定とstage groupingを行ったのである。今回の改訂内容の特徴として,T分類の細分化,副病変の取扱法の変更,新しいリンパ節マップの作成,stage groupingの見直し,などがあげられる。2010年より運用が予定されている。
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特集
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PET はどれだけがんの診断と治療に貢献しているか
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癌と化学療法 36巻13号, 2508-2515 (2009);
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食道癌に対する治療成績が向上するに伴い,個々の症例ごとに適切な診断を行いステージングすることが重要である。食道癌に対するPET-CT 検査は2006 年4 月より保険適応となり,PET保有施設も増加し,その有用性が報告されている。本稿では,従来のconventionalな診断方法をreviewし,当院で行っているPET-CTについて検討を行った。癌深達度に関しては,SM2以深の症例の80%以上の検出が可能である。リンパ節転移に関しては,sensitivity 66.7%,specificity 93.5%であった。遠隔転移診断に関しては骨転移,肝転移においては検出率が高いことが報告されているが,肺転移に関してはCT 画像を参考にし,慎重に診断すべきである。術前化学放射線療法の効果判定に関しては,PET-CT は有用な検査方法になる可能性が示唆された。また,術後follow up に関してもPET 検査は有用である可能性がある。今後,さらなる検討を行いたいと考えている。
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癌と化学療法 36巻13号, 2516-2520 (2009);
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目的:膵癌におけるFDG-PET の有用性を,主病巣と主病巣以外へのFDG の集積に分けて検討した。方法:対象はFDG-PET を行った98 人の膵癌患者であり,主病巣に関してはSUVmax 値と臨床病理学的因子・予後を比較検討し,主病巣以外に関しては集積箇所とその悪性頻度を検討した。結果:主病巣へのFDG の集積に関して,SUVmax はTNM 分類のT 因子,腫瘍径,CA19-9 との間に有意な相関を認めた(それぞれp=0.003,0.001,0.002)。また,SUVmax 7.5 未満はSUVmax 7.5 以上に比べ有意に生存期間の延長を認めた(p=0.03)。一方,58 例(59%)の患者に主病巣以外に集積を認めた。同集積部位としてはリンパ節が44%であり,臓器への集積として,肝臓へ11 例,肺10 例,腫瘍以外の膵臓に9 例,甲状腺7 例,腹壁3 例,結腸2 例,胆嚢2 例,骨1 例であった。それらのうち悪性の頻度をみると,肝は100%,肺50%,主病巣以外の膵臓0%,甲状腺29%,腹壁67%,結腸50%,胆嚢50%,骨0%であった。結論: FDG-PET は膵癌の予後予測と,遠隔転移や他の悪性疾患の指摘に有用なモダリティであり,適切な治療選択を行うのに非常に有用である。
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癌と化学療法 36巻13号, 2521-2525 (2009);
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PET/CT 検査は大腸癌診療において他のモダリティーと比較して,高い感度および特異度を有し,今後も重要な役割が期待されている。しかし費用の問題もあり,より効率的な利用が求められている。大腸癌原発巣の進行度診断においては腫瘍の存在診断が可能であるが,腫瘍深達度や周囲への広がりを評価することは十分ではない。リンパ節転移診断は,遠位リンパ節においてより感度が良好であった。特に近位リンパ節の感度が低い理由として,原発巣に近接するため判別が困難であることがあげられる。肝転移診断はメタアナリシスの報告から高い感度および特異度が示され,CT 検査やMRI検査より優れていた。肺転移診断は早期においては肺転移巣が小さく検出は困難であるため,早期の肺転移診断は胸部CT検査を参考にすべきであった。局所再発診断は一般に術後瘢痕と再発の鑑別は困難であることが多いが,質的診断が可能なPET/CT 検査における有効性は高かった。治療効果判定においてもエビデンスが多くだされている。
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癌と化学療法 36巻13号, 2526-2531 (2009);
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目的: PET/CT の初発乳癌のステージングと術前化学療法の効果予測への有用性について検討する。方法:初発乳癌にて術前ステージング目的にPET/CT を施行した114 例(116病変)について術前診断と術後の病理組織学的結果を比較検討した。また術前化学療法を施行した20 例について開始前と4 コース,8 コース後にPET/CT を行い,SUVmaxやその変化率(bSUV)を化学療法後の病理学的効果判定と比較した。結果:原発巣の検出感度は80.7%で,特に腫瘍10 mm 以下(66.7%),低核異型度(61.3%),非浸潤性乳管癌(50%)が感度低下の要因であった。腋窩リンパ節転移診断の感度は51.9%,特異度95.3%であり,特に10 mm 未満の小さなリンパ節では感度29.4%と低値であり,微小転移の検出は不能であった。術前化学療法の効果判定では,4 コース終了後のbSUV のcut-off 値を91.9%に設定してpathological CR 判定予測を行うと感度80%,特異度78.6%と有意な関連性を認めた(p=0.038)。結語: PET /CT は初発乳癌における原発巣の同定,腋窩リンパ節転移診断には限界があるが,術前化学療法の早期効果判定には有用な検査である。
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癌と化学療法 36巻13号, 2532-2536 (2009);
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FDG-PET は悪性リンパ腫の病期診断,治療効果判定,治療後のサーベイランスとして広く用いられている画像検査である。古くは理学所見,骨髄検査で評価されていたAnn Arbor 病期診断は近年までCT,Ga シンチを併用して行われていた。しかし,現在では精度の高いFDG-PET が一般臨床においても用いられている。放射線治療の併用が必要な限局期リンパ腫の病期診断には特に有益である。FDG-PET も万能ではなく,撮影時には組織型による集積の違いや,偽陰性,偽陽性も考慮しなくてはならない。ホジキンリンパ腫とびまん性大細胞型リンパ腫を対象にしてFDG-PET に関する多くの臨床試験が行われている。FDG-PET,免疫組織学的検査,フローサイトメトリーを評価に加えた新しい悪性リンパ腫治療効果判定規準が作成された。これにより,臨床試験間での病期,治療効果判定のばらつきをできるだけ少なくすることができ,悪性リンパ腫治療の比較検討が可能となった。また,新薬の開発においてもバイオマーカーとしてのPET の役割も期待されている。
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癌と化学療法 36巻13号, 2537-2541 (2009);
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PET(特にFDG-PET/CT)の放射線治療における有用性が注目されている。放射線治療の標的体積決定においてPET を応用することによって(通常のCT 画像による放射線治療計画に比較して),肉眼的標的体積(GTV)を適切に決定できる可能性が示唆され,肺癌,頭頸部癌,悪性リンパ腫などではすでに有用性が報告されている。肺癌,頭頸部癌などの標的輪郭の描出時には,SUV の最大値の40〜50%を使用している報告が多い。ただし,現在のPETの空間分解能,感度,特異度などは,放射線治療計画への応用においてはまだ必ずしも十分とはいえず,GTVと臨床的標的体積(CTV)の相違を明確には区別できないこともある。その他にも,治療前の病期診断(治療方針決定)における有用性がよく知られ,肺癌,リンパ腫などでよく行われている。さらに治療効果判定への利用も期待されているが,保険適応上の問題もあり,注意が必要である。
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癌と化学療法 36巻13号, 2542-2546 (2009);
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18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET)は,近年急速に臨床現場での導入が進んでいる検査である。FDG-PETの有用性としては I.癌の早期発見, II.腫瘍の良悪の鑑別, III.腫瘍の拡がり,遠隔転移,重複癌の評価・検索, IV.原発不明頸部癌の原発検索, V.頭頸部癌の治療効果の評価があげられている。なかでも頭頸部癌の遠隔転移,重複癌,原発不明頸部癌の原発発見については特に有用性が高い。形態をみていた従来の画像検査との最大の違いは糖代謝を画像としてみているところにあり,頭頸部癌臓器温存治療後の治療効果判定に関しても有用性が期待できる。一方,炎症性疾患,耳下腺腫瘍,重複癌としての食道癌の診断などに関して限界があることを認識しなくてはならない。
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原著
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癌と化学療法 36巻13号, 2561-2564 (2009);
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再建手術が進歩し遊離皮弁を用いることで,進行舌癌に対しても切除範囲を大きくできるようになり予後は向上した。しかし術後の嚥下,咀嚼機能に関してはまだ満足いくものではないと考えられる。その点で当科では器官および機能温存の観点から進行癌に対し,化学放射線同時併用療法を行っている。また,比較的小さい腫瘍であっても発生部位により切除が困難な場合があり,この場合にも同治療を行っている。今回われわれは2002 年4 月〜2008 年10 月までに当科でS-1,nedaplatin/放射線同時併用療法(以下SN 療法)を行った舌癌10 例について検討したので報告する。SN 療法のcomplete response(CR)率は60.0%(10 例中6 例)であった。結果として5 年疾患特異的生存率はStageIIが50.0%,StageIIIが75.0%,StageIVが75.0%であった。
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癌と化学療法 36巻13号, 2565-2569 (2009);
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高齢者人口の増加に伴い,高齢者肺癌の治療も注目されている。生活の質(quality of life: QOL)を維持しつつ外来化学療法へ移行することは重要であるため,信頼性の証明された調査票を用いてQOL を客観的に測定し,因子解析を行うことを目的として本臨床研究を行った。一次治療としてのvinorelbine 単独療法を行った後のPS 0〜1 の高齢非小細胞肺癌患者8 名(71〜90歳,平均77.2歳)に対してgemcitabine(GEM)単剤療法を行い,入院から外来への移行に伴うQOL 変化を厚生省栗原班「がん薬物療法におけるQOL 調査票」を用いて検討した。overall QOL score および各因子いずれも低下することなく入院から外来への移行が可能であることが明らかとなり,GEM 単剤療法の高齢非小細胞肺癌患者の外来化学療法における有用性がQOL の観点から示された。
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癌と化学療法 36巻13号, 2571-2577 (2009);
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1991年に山城は剖検2,099例中の分化型胃癌120 例について,その面積を縦軸に,その大きさの順を横軸にとって両対数で,一つの曲線を得た。また,16 年間に自然経過を追跡できた33 例の胃癌について,その発育様式を検討した。今回その曲線を成長モデルとして,その追跡例の胃癌の成長速度について,その逆数の意味をもつtime-step ratioを計算した。するとtime-step ratioの数値の分布は0.2,0.4,0.8,1.6,3.2 を中心とする五つのグループに明瞭に分かれた。このことは胃癌の成長速度を2 倍にあるいは1/2 倍にする因子(整数個)の存在を思わせる。
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癌と化学療法 36巻13号, 2579-2582 (2009);
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はじめに:初回切除不能大腸癌肝転移に対する化学療法後の肝切除術の成績はこれまで多数報告されているが,肝切除可能か不能かの判断は施設によってかなり異なるものと推察される。しかし,「大腸癌取扱い規約」(第7 版)での肝転移 H3が初回切除不能であることは異論のないものと考えられる。今回われわれは肝転移 H3(Grade C)の初回切除不能症例に対して術前化学療法後肝切除術の成績を,両葉多発性肝転移初回切除症例(両葉分布であり腫瘍数3 個以上)と比較検討した。対象と方法: 1994〜2007 年までに当院消化器外科において同時性初回切除不能大腸癌肝転移があり,初発大腸癌切除された11 症例を対象とした。術前化学療法はJ-IFL 3 例,mFOLFOX6 施行が8 例であった。対照群は大腸癌肝転移診断時に切除可能(両葉分布であり腫瘍数3 個以上)であった16 症例とした。結果:初回切除不能大腸癌肝転移11 症例の化学療法前全例 H3/Grade C であった。化学療法施行回数中央値6 サイクル(4〜10サイクル,mean±SD: 6±2 サイクル)であった。抗腫瘍効果は全例partial response でありH1 2 例,H2 9 例となり,down grade は11 例中6 例に認めた。切除可能16 症例はH1 6 例,H2 8 例,H3 2 例であり,Grade A 4 例,B 6 例,C 6 例であった。2群間での比較検討では出血量,輸血有無,肝切除術式には差を認めず。術後合併症は初回切除群が有意に多かった。腫瘍径,腫瘍数,切除断端癌浸潤有無は差を認めず。術後2 年以内早期再発,無再発および累積生存率においても両群で差を認めなかった。まとめ:初回切除不能大腸癌肝転移に対して術前化学療法後切除可能となった症例の生存率は,診断時に切除可能であった症例の切除成績と同等であった。今後は,初回切除不能大腸癌肝転移症例の予後向上のためには,術前化学療法とともに術後も残肝再発予防として全身化学療法を繰り返し行わなければならないと考えられた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2583-2586 (2009);
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再発卵巣癌に対して推奨される一定の化学療法はなく,臨床の場においてレジメンの選択に苦慮することが多い。われわれはtaxane を含む前化学療法が施行された再発卵巣癌に対してirinotecan(CPT-11)+cisplatin(CDDP)療法(以下CPT-P)を施行し,その有用性を後方視的に検討した。症例は14 症例で治療効果はCR 2 例,PR 2 例,SD 3 例,PD 7 例であり,奏効率は28.5%,全奏効期間は中央値5.5 か月であった。CPT-P 療法は再発卵巣癌患者に対して有用なレジメンである可能性が示唆された。
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癌と化学療法 36巻13号, 2587-2592 (2009);
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目的: 近年,悪性腫瘍の骨転移や多発性骨髄腫の治療に用いられるビスフォスフォネート(以下BP)注射剤の重篤な有害事象として,顎骨壊死(bisphosphonate related osteonecrosis of the jaw: BRONJ)が注目されている。本研究ではBRONJ の現状を把握する目的で臨床的検討を行った。対象: 2006 年7 月〜2008 年10 月までの2 年3 か月間にBP 注射剤投与に関連して当科を受診した36 例を対象とした。結果: BP 剤投与前顎骨精査依頼は12 例で,BP 剤投与患者24 例であった。BP投与患者7 例にBRONJ が認められ,17 例は発症しなかった。7例はBP 剤投与中に抜歯や急性歯性感染症を契機にBRONJ を発症していた。BP 投与前およびBRONJ を発症していない患者に対する歯性感染症の原因除去治療は新たなBRONJ の発生を予防した。結論: BRONJ は通常の骨髄炎の治療に反応せず,極めて難治性であることが最大の問題点である。したがって,現状ではBRONJ 発症予防に重点を置いた対応が最も効果的であり,医科と歯科の良好な連携が必要であると考えられた。また,BRONJ の治療は抗生剤を主とした保存的アプローチが患者のQOLの維持や向上につながると考えられた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2593-2598 (2009);
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2006年Leveyらにより糸球体濾過量(GFR)を算出するための推定式,modified diet in renal disease(MDRD)式が提唱された。今回,MDRD式によるcarboplatin(CBDCA)予測投与量と従来のクレアチニンクリアランス(Ccr)推定式による予測投与量とを比較し,実際の投与量と副作用発現状況を調査した。CBDCA 併用化学療法が行われた患者101 例を対象とし,GFR 推定値に基づく予測投与量はCcr 推定値に基づく予測投与量より16%低く算出した。65 歳未満,女性,肥満係数(BMI)≧25で差が大きかった。副作用発現状況は肺がん患者で血小板減少が著明であった。血小板減少の要因として,男性,血清クレアチニン≧0.6 mg/dL,GFR<50 mL/min/1.73 m2,gemcitabine併用であった。以上のことより,MDRD 式は腎機能低下症例に有用なツールと思われる。また,腎機能以外の各要因も考慮した上で投与設計したほうがよいのではないかと思われた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2599-2603 (2009);
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オピオイドローテーション(モルヒネ徐放錠からマトリックスタイプのフェンタニル貼付剤(以下,フェンタニルMT 貼付剤)またはオキシコドン徐放錠へのローテーション)の薬剤経済学的分析を行った。判断樹によるシミュレーションモデルを作成し,費用対効果分析を行った。なお,分析は支払い者の立場により行った。その結果,患者1 人当たりの費用対効果比はフェンタニルMT貼付剤で22,539円,オキシコドン徐放錠で23,630 円となり,フェンタニルMT 貼付剤へ切り替えたほうが費用対効果に優れる結果となった。しかしながら,感度分析を行った結果,その確実性は得られなかった。以上の結果より,薬価はオキシコドン徐放錠のほうが安価だが,レスキューや副作用の予防・治療に用いる費用を考慮して分析を行った場合,フェンタニルMT貼付剤を用いたほうがより経済的である可能性が示唆された。
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症例
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癌と化学療法 36巻13号, 2607-2610 (2009);
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症例は69 歳,女性。頭痛を主訴に近医を受診し,頭部CT 検査にて脳腫瘍を認め当院紹介となった。精査の結果,左肺癌,多発性転移性脳腫瘍と診断し,最初にガンマナイフ療法を行った。その後,carboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX)による化学療法を5 コース施行し,原発・転移巣ともに縮小効果を認めた。化学療法に伴う倦怠感,末梢神経障害がしだいに強くなり,継続治療が困難となったため,gefitinib 単剤療法へ変更した。投与開始約1 か月後に頭部,顔面を中心にgrade 3 の座瘡様皮疹が出現したためいったん休薬後,隔日投与で再開した。その後,皮膚障害も認容範囲となり,隔日投与1 年以上が経過し原発・転移巣の増大を認めず,PS 0 を維持しながら生存中である。化学療法後のgefitinib隔日投与は,抗腫瘍効果を有しながら副作用の軽減を図れる有用な投与方法の一つと考えられた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2611-2614 (2009);
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症例は70 歳,男性。2004 年に右肺上葉に異常陰影を認め胸腔鏡下で部分切除し,迅速病理診断でpoorly differentiated squamous cell carcinomaであったことから,右上葉切除,2 群リンパ節郭清を行った。最終的な病理診断はpT1N0M0,stage㈵A,2.5×1.7 cmであった。その後3 か月おきに外来で経過観察を行っていたところ,2007 年4 月に右下葉に結節影を認めた。患者自身の判断で他院にて48 Gy の放射線療法を施行し,その結果結節影は消失した。しかし2008 年3 月に両側肺野,縦隔リンパ節の多発転移をCT で認めた。6〜7月にdocetaxel 60 mg/m2(90 mg/body),cisplatin 80 mg/m2(120mg/body)の化学療法を1 コースずつ施行した。8 月のCT による効果判定では,stable disease であった。adverse reaction grade 3 の白血球減少,悪心,倦怠感を認めたため9 月,80%に量を減らして,docetaxel 70 mg/ body,cisplatin 100 mg/bodyで化学療法を施行,骨髄抑制をgrade 4 まで認め治療方針を変更し,S-1 60 mg,朝・夕内服を11 月より開始した。骨髄抑制があったことから3 週間投与2 週間休薬のregimen を2 コース実施した。12 月末の胸部CT でcomplete response(CR)を得られた。副作用として投与終了後10 日目にWBC 3.0×10 3/μL(neutrocyte 48.8%),Hb 7.1 g/dLと骨髄抑制を認めた。その後,tegafur/uracil 600 mg,朝・夕分服で補助療法を行い,CRを得て100 日間無増悪期間を経ている。
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癌と化学療法 36巻13号, 2615-2617 (2009);
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症例は74 歳,女性で非喫煙者。2004年に原発性肺腺癌のstageIV(cT3N2M1)と診断された。carboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX)による化学療法7 コース後に二次治療としてgefitinibの内服を行い,経過良好であった。内服開始3 年後に増大したため,三次治療としてdocetaxel(DOC)の投与を行ったが,その経過中に癌性髄膜症を併発した。gefitinibの再投与を試みたところ原発巣は増大傾向であるが,癌性髄膜症は改善しQOL の改善が得られ外来通院中である。EGFR 遺伝子変異については,初診時の肺組織,髄液細胞,再発後の肺組織でいずれもexon 19 のE746-A750 欠失変異が認められ,変化は認められなかった。gefitinibで効果が得られた症例に関しては,休薬後に再投与を考慮してもよいと思われた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2619-2622 (2009);
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症例は42 歳,女性。右乳房腫瘤を主訴に受診。針生検の結果,乳腺原発性扁平上皮癌と診断された。術前化学療法は,5-fluorouracil: 5-FU+epirubicin: EPI+cyclophosphamide: CPA(FEC),paclitaxel(PTX),vinorelbine(VNR),5-FU+nedaplatin(254-S)の投与を順次実施したが,臨床的効果はprogressive disease(PD)であったため手術を施行した。術後,局所再発,肺転移を生じたため術後化学療法としてcarboplatin(CBDCA)+etoposide(VP-16)を投与したが,奏効せず手術3 か月後に永眠された。乳腺扁平上皮癌の治療は一般的に通常の乳癌に準じて治療が行われるが,化学療法に抵抗性を示す可能性が通常の乳癌に比べ高い。したがって術前化学療法は慎重に施行し,早期の手術を考慮することが重要であると考えられた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2623-2625 (2009);
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56 歳,女性。1992 年7 月(40歳時)に左乳癌(浸潤性乳管癌,pT1aN0M0,pStageI)のため,近医で乳房温存手術と術後照射(60 Gy)を施行され,tamoxifen(TAM)内服を開始された。1994 年1 月(42歳時)以降は当院でfollow upされ,途中1998 年6 月(46歳時)には対側乳房DCISで乳管腺葉区域切除術を受け,1999 年8 月(47歳時)までTAM内服は継続された。しかし,2006 年6 月(54歳時)に骨転移,左副腎転移,胸膜播種および広範な肝転移を認め乳癌再発と診断され,肝転移巣の針生検ではER(+),PgR(+),HER2(1+)であった。AC療法4 コースを先行するも転移巣の縮小効果はなく,second-lineとしてletrozoleを投与開始したところ,肝転移巣は一時PR となった。しかし,その後肝転移巣以外の増悪傾向を認めたので,順次exemestane,TAM,medroxyprogesterone acetateおよび現在の高用量toremifeneへの変更で増悪は抑えられ,外来通院を継続できている。一般に乳癌の広範な肝転移などvisceral crisis に該当する状態では腫瘍縮小による症状改善を期待して化学療法が推奨されるが,本症例では無病再発期間が長く,HR陽性,HER2陰性の閉経後再発乳癌ではホルモン療法が有効となる症例もあることが示唆された。
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癌と化学療法 36巻13号, 2627-2630 (2009);
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症例は55 歳,女性。2003 年8 月,左浸潤性乳管癌(硬癌)の診断で左乳房全摘+腋窩リンパ節郭清を施行。術後に胸骨転移が判明し,最終病期T1bN1M1,stageIV,ER(+),PgR(+),HER2(−)の転移性乳癌の診断に至った。薬物全身療法としてアロマターゼ阻害剤(anastrozole)の服用と骨吸収抑制剤(pamidronate)の投与を開始したが,約1 年で中断。さらにその約1 年後に検査目的で外来再診となった。自覚症状なし,PS 0。精査にて腫瘍マーカーの異常高値と胸骨,脊柱の多発性骨転移を認めたため,2005 年9 月より全身化学内分泌療法cyclophosphamide,doxorubicin+5-FU+medroxyprogesterone acetate(CAF+MPA)を開始した。4コース終了後cyclophosphamide+5-FU(CF)+anastrozoleの服用としたが腫瘍マーカーの上昇を認め,第二次化学内分泌療法としてpaclitaxel(PTX)+anastrozole を投与した。以後第三次療法としてS-1+anastrozole 服用を約1 年半継続した。再度腫瘍マーカーの上昇を認めたため,2008 年1 月より第四次療法としてdocetaxel(DOC)+高用量toremifene(TOR 120 mg/日)を計10 コース施行した。有害事象として左前腕静脈血栓症(grade 2)が認められたが対症療法にて軽快した。骨シンチグラフィの転移巣への集積像は改善傾向で,腫瘍マーカーはいずれも基準値付近まで低下しており,現在常用量TOR(40 mg/日)服用にて経過観察中である。多発性骨転移を伴う転移性乳癌の薬物全身療法としてDOC+高用量TOR(120 mg/日)は有効な選択肢となり得ると思われた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2631-2635 (2009);
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患者は60 歳,女性。右乳癌,病期はStageII,ER 陽性,PgR 陽性,HER2(2+),FISH(−)と診断,術前化学療法としてEC 療法およびdocetaxel(DOC)単剤療法を施行後,右乳房切除術+右腋窩郭清を施行。術後補助療法としてexemestane を投与したが,右胸壁に局所再発を認めたため腫瘤切除術を施行。術後は薬剤をtoremifene に変更した。再手術から2 年後の2007 年12 月にCEA の上昇を認め,PET で右胸壁の局所再発,右腋窩リンパ節および肝臓への転移再発と診断された。本症例は,局所再発時の病理検査ではER 陽性,PgR 陰性,HER2(3+)であり,vinorelbine/trastuzumabの併用療法を開始した。5 コース施行した時点で,PET およびCT による画像診断で転移巣のいずれもが消失し,臨床的CR を得た。vinorelbine/trastuzumab 併用療法は,HER2陽性再発乳癌に対して有用な治療方法であると考えられた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2637-2639 (2009);
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52 歳,男性。多発リンパ節転移を伴う進行胃癌として2004 年4 月よりS-1/ docetaxel 併用化学療法を開始。10 コース施行の2005 年1 月の時点で,内視鏡検査では潰瘍の瘢痕化および生検での腫瘍細胞陰性化がみられ,16 コース施行の7月にはCT 検査上でのリンパ節転移巣の消失が確認された。2006 年3 月まで計26 コースを施行し,以後無治療経過観察中である。治療開始より約5 年の現在,無再発生存中である。本療法は進行・再発胃癌に対する治療として高度の有害事象も少なく,患者のQOLを保ちつつ高い抗腫瘍効果を有する治療であることが示唆された。
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癌と化学療法 36巻13号, 2641-2644 (2009);
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胃内分泌細胞癌はまれな組織型であり,悪性度が高く予後が不良であることが知られている。われわれは,術後転移再発症例に対してFU 剤(5-FU/UFT)とirinotecan(CPT-11)を使用し,転移巣の縮小を認め術後3 年8 か月と比較的長期生存した症例を経験したので報告する。症例は69 歳,男性。貧血を主訴に受診した。上部消化管内視鏡検査にて胃体部小弯にBorrmann 2 型の腫瘍を認め,生検にて未分化型腺癌と診断された。遠隔転移を認めず,胃全摘術を施行した。病理組織検査で胃内分泌細胞癌と診断した。術後7 か月にて肝後区域に転移巣と門脈内腫瘍栓による再発を認めたため,5-FU+CPT-11 療法を開始,3 か月後のCT にて肝転移巣の著明な縮小と門脈内腫瘍栓の消失を認めた。以後12 か月間の奏効(PR)期間が得られた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2645-2648 (2009);
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腫瘍サイズが大きく,胃全摘術膵体尾部脾合併切除が必要と考えられた胃GISTに対し,imatinib mesilate(imatinib)による術前化学療法を施行し,著明な腫瘍縮小が図られ縮小手術が可能となった症例を経験したので報告する。症例は46歳,男性。検診にて貧血を指摘され2007 年8 月当院を受診した。胃噴門部から胃体上部にかけて粘膜下病変とそれに連続する出血を伴う巨大な潰瘍性病変を認め,生検にてc-kit 陽性GIST の診断となった。腹部CT にて胃体部後壁から連続した辺縁不整な長径9 cm の腫瘤を認め膵浸潤の可能性が示唆されたため,治癒切除には胃全摘出および膵体尾部脾合併切除が必要であり,また手術リスクが高いと考えられたため,imatinib による術前化学療法を施行することとした。8 月より投与開始,1 か月で腫瘍は61%縮小し,3 か月後もPR を維持,腫瘍の安全な切除が可能と判断し,2008 年1 月噴門側胃切除術を施行した。術後経過は良好で,術後1 年を経過した現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 36巻13号, 2649-2651 (2009);
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胃癌に対する新規抗癌剤が登場し長期に生存する症例が増加したことにより,今まで比較的まれであると考えられていた病態を経験する機会が増加する傾向にある。今回われわれは胃癌化学療法中に癌性髄膜炎を発症し,急速な意識障害を呈し死亡した2 症例を経験したので報告する。症例1: 60 歳,女性。二次化学療法中に頭痛および構音障害を認めMRI 検査にて癌性髄膜炎が疑われ,腰椎穿刺にて髄液中に癌細胞を認めた。意識障害が進行し痙攣発作を認め,約2 週間後に死亡した。症例2: 67 歳,男性。胃癌にて胃全摘術を施行し,術後補助化学療法中であったが全身倦怠感,食欲不振を認め緊急入院した。入院翌日に急激な意識障害を認め,癌性髄膜炎と診断した。意識障害が進行し約2 週間後に死亡した。胃癌による癌性髄膜炎は比較的まれではあるが非常に急速に進行し死亡する例が多く,化学療法中に急激に倦怠感,意識障害を伴う症例では念頭に置くべき病態である。
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癌と化学療法 36巻13号, 2653-2655 (2009);
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症例は33 歳,男性。胃癌術後(StageIIIB)にDICと多発性骨転移を発症して受診された。胃癌播種性骨髄癌症と考え,S-1+CDDP併用療法(S-1 80 mg/m2, po, day 1〜21 and CDDP 60 mg/m2, iv, day 8)を施行したところDICと骨痛の改善が得られ退院可能となり,約6 か月の生存が得られた。胃癌播種性骨髄癌症に対してDIC を合併していてもS-1+CDDP併用療法は有用であると思われた。
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癌と化学療法 36巻13号, 2657-2659 (2009);
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背景:肺癌に対するラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)は局所制御療法として治療選択の一つになりつつあるが,ほとんどがCT ガイド下によるもので,エコーガイド下RFA の報告は少ない。症例: 80 歳,男性。2004年に肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)にてtranscatheter arterial embolization(TAE)とRFA が施行された。2007 年CT にて右肺下葉に3.3 cmの結節を認め,針生検でHCC の肺転移と診断し,CT ガイド下RFA を施行した。3か月後の造影CT では同病変の増大を認めた。再治療として超音波造影剤(ソナゾイド)を用いてエコーガイド下RFAを行った。ソナゾイドによってnecrosis 部位とviability を有する部位は明瞭に識別することができ,選択的なRFA が可能であった。結論: ソナゾイドは肝癌に対するエコーガイド下RFAに使用され,有用性が評価されている。われわれが検索し得たかぎり,肺癌に対するエコーガイド下RFAの際に使用した例は,自験例が本邦初である。
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癌と化学療法 36巻13号, 2661-2663 (2009);
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症例は83 歳,男性。下部胆管癌に対し,膵頭十二指腸切除術を施行。術後2 年経過時にCA19-9 値の上昇(962.7 U/mL)と腹部造影CT 上腹腔内リンパ節腫脹を認めた。下部胆管癌の再発と診断し,経口フッ化ピリミジン系抗癌剤S-1 単独療法を開始した。2 コース終了時腹部造影CT 上リンパ節腫脹は消失,CA19-9 値は正常化し,完全奏効(complete response:CR)を示した。治療開始より2 年2 か月CR を維持し,長期CR の持続により治療を中止した。高齢であり副作用の発現が懸念されたが,grade 3以上の有害事象は認められなかった。
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癌と化学療法 36巻13号, 2665-2668 (2009);
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症例は64 歳,女性。S 状結腸癌術後の肝・肺転移に対しS-1 の経口投与に続きmFOLFOX6 療法(fluorouracil/Leucovorin+oxaliplatin)を施行した。12コース終了後PD となったため,FOLFIRI(fluorouracil/Leucovorin+CPT-11)+bevacizumab 療法に変更した。2 コース終了後白血球減少があり,G-CSF 投与にて経過観察していたが2 日後に39℃台の発熱と著明な乾性咳嗽を認め入院となった。胸部X 線,CT にて両側肺野にびまん性のすりガラス状陰影を認め,化学療法による薬剤性間質性肺炎が考えられ鑑別診断としてニューモシスチス肺炎があげられた。prednisolone 50 mg/日とsulfamethoxazole/trimethoprim(ST 合剤)の投与を開始したが軽快せず,ステロイドパルス療法を施行した。呼吸状態は多少改善したが画像所見はほぼ同様であった。入院後約9 週間の経過で在宅酸素療法を導入して退院となった。FOLFIRI+bevacizumab療法後の間質性肺炎の発症はまれであるが進行・再発大腸癌に対する主な治療レジメンの一つであり,今後症例数が増加する可能性もある。全身化学療法を施行中の患者に呼吸器症状が出現した場合は常に間質性肺炎の可能性を考慮する必要がある。
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癌と化学療法 36巻13号, 2669-2672 (2009);
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症例は42 歳,女性。2004 年9 月直腸癌(Ra, type 2),肝転移の診断で初診。術前診断はT2N1H2であった。肝転移巣はS4/8 に98 mm であり,肝静脈浸潤を認め切除不能であった。術前S-1 80 mg/日を14 日間投与後,原発巣に対して直腸低位前方切除術を施行し,病理組織診断は中分化腺癌,SS,N1,stageIV,組織学的効果はGrade 1a であった。術後肝転移巣の縮小を認め,S-1 への感受性が示唆されたため,S-1 による化学療法を2 コース追加施行した。肝転移巣は36%の縮小を認め,肝静脈浸潤も解除されたため,2005 年1 月肝中央二区域切除術を施行した。病理組織診断は中分化腺癌,組織学的効果はGrade 1a であった。術後48 か月経過した現在無再発生存中である。術前S-1 投与による組織学的効果Grade 1aで,直腸癌同時性肝転移に奏効した1 例を経験したので報告する。
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Journal Club
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癌と化学療法 36巻13号, 2618-2618 (2009);
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癌と化学療法 36巻13号, 2626-2626 (2009);
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癌と化学療法 36巻13号, 2636-2636 (2009);
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用語解説
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Source:
癌と化学療法 36巻13号, 2640-2640 (2009);
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