癌と化学療法
Volume 37, Issue 1, 2010
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総説
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がん治療にかかわる医師の教育
37巻1号(2010);View Description Hide Descriptionがん研究の大幅な進展,がん治療の著明な進化,がん患者数の急速な増加に伴い,がん治療の専門医(がん治療医)の養成は本邦における危急的課題となっている。以前よりその重要性は認識されてはいたものの,本邦では診療科別講座制の下に医師や研究者の育成が行われてきたため,がんに特化した専門医制度の構築はなかなか前に進まなかった。がん治療は今や実に多彩な相からなる。受療者やその家族はすべての治療相において最善の治療を求めることから,内科,放射線,外科といった各領域の専門医よりなるがん治療チームなくしてこれに対応することはできない。日に日に増大するがん治療のエキスパート養成に対する要望は,国家的レベルでの養成システムの構築を促し,また一刻も早いがん治療医の充足を求める声は,その基盤整備に資する,第一段階の資格認定制度,すなわち全診療科に共通するがん治療の知識・技術を習得した医師,「がん治療認定医」という本邦独自の養成・認定制度を生んだ。腫瘍内科医,放射線腫瘍医,緩和医療専門医などのサブスペシャリティの養成システムの構築も急速に進んでいる。しかしながら,それらの養成制度の間には研修開始可能時期,研究期間をはじめとする資格取得要件に大きな開きがある。本邦のがん治療医の養成に関し,その特殊事情や現状を踏まえ,めざすべきゴール,そこに達するための効率的アプローチについて私見を述べる。
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特集
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- 炎症・感染とがん
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間質性肺炎と肺癌
37巻1号(2010);View Description Hide Description間質性肺炎とは200 種以上の疾患の総称であり,原因不明のものは特発性間質性肺炎(IIP: idiopathic interstitial pneumonia)と呼ばれている。特発性肺線維症(IPF: idiopathic pulmonary fibrosis)は,IIPの約半数を占める最も代表的な疾患であるが,極めて予後不良の疾患である。IIP,特にIPF では肺癌の合併頻度は,高頻度であることが知られている。IPF における発癌機構に関しては,IPF における極めて長期にわたり繰り返される刺激により,連続的な肺胞上皮傷害と過剰な組織のリモデリングに至る過程で,様々な遺伝子異常が重なり合って誘導されることが発癌にかかわると推察されている。われわれは血液中に循環抗原として存在する肺癌関連抗原を探求する目的で,肺癌細胞に対して反応特異性の高い多数のモノクローナル抗体を作製する過程で,間質性肺炎に比較的特異度の高い血清バイオマーカーであるKL-6 という物質を発見した。KL-6 にはMUC1 ムチンに属する分子量200 kd 以上の高分子量糖蛋白抗原である。血清中のKL-6 値は,多くの間質性肺炎において高率に異常高値を呈するが,肺癌,乳癌,膵癌では進行すると50%前後の症例が異常値を示すことに注意する必要がある。さらに,ヒトの血清中にKL-6 と反応する抗KL-6 自己抗体が存在し,その減少の程度と患者の予後が反比例することも明らかにした。また,われわれはKL-6/MUC1高発現癌細胞のKL-6/MUC1発現を抑制することにより,癌細胞の増殖を抑制することが可能であること,KL-6/MUC1抗体はKL-6/MUC1発現癌細胞のLAK細胞感受性を亢進させることも明らかにしている。間質性肺炎,特にIPF と肺癌の合併に関して概説したが,いまだ不明な点は多い。今後は,臨床像のみならず分子レベルからも解明することが重要である。 -
ヒトT 細胞白血病ウイルス1 型による発がん機構
37巻1号(2010);View Description Hide DescriptionヒトT 細胞白血病ウイルス1 型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであり,長い潜伏期間の後に一部のキャリアにATL を惹起する。これまでの研究からtax 遺伝子が発がんに重要であると考えられてきたが,ATL 細胞の解析から約半数のATL 症例ではTax を発現していないことが明らかとなった。その機序として,1.5'側long terminal repeat(LTR)の欠失,2.5'側LTR のメチル化,3.tax遺伝子の遺伝的変化が同定された。しかし,われわれはHTLV-1 bZIP factor(HBZ)遺伝子をコードする領域と3'側LTR がすべてのATL 症例で保存されていることを見いだした。HBZ遺伝子はすべてのATL症例で発現しており,その発現はATL細胞の増殖を促進した。HBZ はc-Jun,JunB,JunD,p65 など様々な宿主因子と相互作用して細胞機能を修飾している。HBZ 遺伝子がすべてのATL 症例で発現し増殖を促進するということから,HBZ遺伝子がATL細胞の増殖に必須のウイルス遺伝子であることが示唆される。 -
肝細胞がんの発がん機構
37巻1号(2010);View Description Hide Description肝細胞がんは世界第三のがん死亡原因の位置を占める。肝細胞がんのほとんどはB 型肝炎ウイルスもしくはC 型肝炎ウイルス感染に伴う慢性肝炎,肝硬変を背景に発症する。肝発がんのメカニズムとしてはウイルス蛋白そのものに加えて,繰り返す壊死,炎症,再生過程を背景にジェネティック,エピジェネティック,ジェノミックな遺伝子異常が蓄積され,前がん病変から高分化型肝がん,進行肝がんへ進行していくと考えられている。この過程においては様々な遺伝子・蛋白発現の異常が報告されているが,全体像についてはいまだ不明な点が多く残されている。近年,それぞれの遺伝子,蛋白異常に対する特異的な阻害剤や中和抗体などの開発が進んでおり,各々の作用メカニズムに基づいた,肝細胞がんに対する新しい治療ストラテジーの確立が進められている。 -
子宮頸がんの発がん機構
37巻1号(2010);View Description Hide Description子宮頸がんは全世界で毎年約50 万人が罹患しその半数以上が死亡し,女性のがんによる死亡原因の第2 位に位置する。先進国での子宮頸がん発生率は検診の普及により減少傾向にあるが,国内では初交年齢の若年化に伴い20 代,30 代での急激な増加を認めている。子宮頸がんの90%以上は,16,18 型をはじめとする高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によるとされる。HPVは性行為などで生じた粘膜の傷を介して扁平上皮層の基底細胞に感染し,ウイルスDNAは感染基底細胞の核内エピゾームとして維持される。感染細胞が最終分化を開始すると,E6 によるp53 の分解とE7 によるRbの不活化を介して,細胞のDNA 合成能を再活性化することによりHPV ゲノムの複製が始まる。ウイルス粒子の増殖により宿主細胞は死滅するが,まれにHPV ゲノムが宿主染色体へ組み込まれると,E6,E7の恒常的な過剰発現により,E6,E7がん蛋白の諸機能を介してがん化に必要な多くのステップをクリアし,悪性形質を獲得すると考えられる。がん化にはE6,E7 の発現のみでは不十分であることも知られており,さらにがん遺伝子・がん抑制遺伝子異常の蓄積が必要である。本稿では,高リスク型HPVによる子宮頸がんの発がん分子機構に関する現在の知見について概説する。 -
H.pylori感染からの胃がん発生機構
37巻1号(2010);View Description Hide DescriptionH.pylori(Helicobacter pylori)菌の持続感染により生じた慢性胃炎が,胃がんの発生母地として極めて重要な役割を果たしていることが,多くの疫学的なデータや前向き臨床試験により明らかにされている。H.pylori感染による胃発がんの仕組みはまだまだ不明な点が多く残されている。しかしながら,これまでの研究成果からは感染した菌が胃上皮細胞にもたらす直接の作用と,H.pylori感染により胃上皮細胞に不可逆的に生じ蓄積していく遺伝子変化の二つに分けてとらえると,その分子機構が理解しやすい。H.pylori の直接の作用としては,CagA 蛋白などの菌体成分が胃上皮細胞に注入されることにより,細胞の増殖シグナル伝達系の異常や胃粘膜組織構造の破綻などが引き起こされる。一方,H.pylori感染とそれに伴う慢性炎症に反応して胃上皮細胞には,DNAへの変異導入活性をもつAID(activation-induced cytidine deaminase)の発現を介した遺伝子配列そのものの異常(ジェネティックな変化)や,DNAメチル化の変化(エピジェネティックな異常)が生成・蓄積していくことがわかってきた。これらの作用の総和による終末像として,H.pylori感染した胃粘膜に胃がん細胞の発生をみるものと推定される。
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Current Organ Topics:泌尿器系腫瘍 泌尿器科領域臨床試験のトピックス
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原著
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進行非小細胞肺がんに対するCarboplatin+Paclitaxel療法における一次および二次治療の安全性比較評価
37巻1号(2010);View Description Hide Description進行非小細胞肺がんに対し,一次治療(first-line)にcisplatin(CDDP)+vinorelbine(VNR)療法,二次治療(second-line)にcarboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX)療法を施行した14 例と,first-lineにCBDCA+PTX 療法を施行した21例について血液毒性の発現状況を比較検討した。血小板減少の発現率はsecond-line とfirst-line においてそれぞれ78.6%と42.9%であり有意差が認められた(p=0.0364)。grade 3 以上の好中球減少については,second-line とfirst-line でそれぞれ71.4%と52.4%であり,second-lineにおいてその発現率が高い傾向が認められた。また,first-line でCDDP+VNR 療法を施行し,クレアチニン値が正常範囲内でも25%以上上昇した場合,second-line のCBDCA+PTX 療法でgrade 3 以上の好中球減少が1 コース目に有意(p=0.016)に発現した。したがって,CDDP+VNR 療法後にCBDCA+PTX 療法を施行する場合,重篤な血液毒性を回避するためには,CDDP+VNR 療法施行時からクレアチニン値の変動率を含めた腎機能について注意し,CBDCA+PTX 療法の投与量設定時には減量を考慮することも一つの方法であると考えられる。 -
Vinorelbineを含む化学療法の効果—転移性および再発乳癌を対象とした65症例のレトロスペクティブな解析—
37巻1号(2010);View Description Hide Description対象: 2002 年5 月〜2006 年11 月までの乳癌症例のうちステージIVもしくは再発症例でvinorelbine(VNR)単独もしくは併用治療を行い評価可能であった65 例を対象とした。方法: VNR 単独(A 群),trastuzumab 併用(B 群),MMVC(mitomycin C, methotrexate, VNR, cyclophosphamide)療法(C群)に分類した。結果: A 群33 例,B 群15 例,C 群17 例であった。前治療歴で3 レジメン以上はA群69.7%,B 群66.7%,C 群82.4%であった。CR: 0 例。PR: A 群6 例,B群5例,C 群2 例であった。全奏効率はA群18.2%,B 群33.3%,C 群11.8%であった。また臨床学的有用率はA群24.2%,B群46.7%,C 群23.5%であった。A,B,C 群の全生存期間の中央値は267,522,275 日であった。考察: vinorelbineを含む化学療法は,進行再発乳癌治療の新たな選択肢の一つと考えられ,高い奏効率や奏効期間を得るためにはより早期での使用を検討する必要がある。 -
腋窩リンパ節転移陰性乳がんに対する術後補助化学療法としてのDocetaxelとCyclophosphamideの忍容性および安全性—JECBC04試験—
37巻1号(2010);View Description Hide Description海外の臨床試験成績から,docetaxel+cyclophosphamide(TC)の4 コース投与は乳がんの術後補助化学療法として有効と考えられるが,国内での使用経験は十分ではない。このためTC の忍容性および安全性を評価する目的で多施設共同臨床試験を実施した。対象は原発乳がんの根治術が施行され,腋窩リンパ節転移陰性の女性とした。docetaxel およびcyclophosphamideの用量はそれぞれ75 および600 mg/m2(いずれも点滴静注)とし,3 週間隔で4 コース投与した。主要評価項目は試験治療を4 コース完遂した患者の割合とした。2006年10 月〜2007年11 月にかけて本試験には39 名の患者が組み入れられ32 名を評価した。7 名は試験治療が手順どおりに投与されなかったため除外した。試験治療の完遂割合は96.9%(31/32)で,1 名は過敏性反応のために試験治療を中止した。実投与量の平均値はdocetaxel が73.2 mg/m2,cyclophosphamideが588.3 mg/m2で,計画した投与量のそれぞれ96.1,95.7%であった。grade 3/4 の有害事象は白血球,好中球/顆粒球,発熱性好中球減少などで,投与中止を必要としたものはなかった。以上から,non-anthracycline レジメンのTC は乳がんの術後標準治療の一つになり得ると考えられた。 -
進行再発乳癌における緩和的化学療法の役割と抗がん治療から緩和ケアへの移行状況
37巻1号(2010);View Description Hide Description当院で死亡した進行再発乳癌患者30 例を対象にして,緩和的化学療法の役割と抗がん治療から緩和医療への移行状況を検討した。その結果,化学療法のレジメン数が4 以上の群はレジメン数3 以下の群に比較して生存期間が長く,鎮痛剤開始時期も遅かった。また,乳癌治療における中心的薬剤であるアンスラサイクリン,タキサンの両方を使用した症例で生存期間の延長が認められた。骨転移の有無は生存期間には影響せず,骨転移を有する症例で最終入院期間が長かった。進行再発乳癌の平均的経過は診断から500日目で鎮痛剤が開始となり,760 日目で最終入院となっていた。死亡の約29 日前に最後の化学療法が行われ,生存期間の中央値は811日であった。再発から死亡までの期間の94%は外来治療であり,再発の早期より外来患者の身体的,精神的サポートを行っていくことが重要であると考えられる。 -
進行頸部食道癌における先行化学療法(Induction Chemotherapy)+化学放射線療法の有用性
37巻1号(2010);View Description Hide Description進行頸部食道癌では根治性と喉頭機能温存の両面に留意する必要があり,治療に苦慮することが多い。近年,chemoradiation therapy(CRT)施行前に化学療法を施行するinduction chemotherapy(ICT)の有用性が報告されている。今回,FAP療法を2〜4コース施行後,low-dose FP を用いたCRT を施行した進行頸部食道癌8 例(2003〜2006年)を対象として,retrospectiveにその効果・予後について検討した。治療効果はICTのみでPR 5 例,SD 1 例,PD 2 例,CRT を加えるとCR 5 例,PD 3 例であり,1 年生存率は62.5%であった。grade 3 以上の有害事象はICTでは白血球減少1 例のみであり,CRT では食欲不振3 例,放射線性食道炎2 例,晩期毒性として放射線性肺臓炎1 例であり,8 例中7 例でCRT を完遂できた。ICT+CRT 治療においてFAP 奏効例は全例長期CR が得られたが,FAP 非奏効例ではCRT の治療効果も乏しかった。進行頸部食道癌においてICT+CRT 療法は重篤な有害事象がなく安全に施行でき,ICT の治療結果が最終的な治療効果の予測因子となり得ると示唆されたことから有用性が高いと考えられる。 -
当科における切除不能進行胃癌に対するS-1単独あるいはS-1を含む併用化学療法の成績
37巻1号(2010);View Description Hide Description胃癌多発国であるわが国における切除不能進行・再発胃癌に対してはJCOG9912 やSPIRITS 試験の結果を踏まえ,S-1 単独療法もしくはS-1+CDDP 療法が標準的な化学療法とされている。今回,2003〜2008 年における当科の切除不能進行胃癌症例(76例)に対する化学療法の後ろ向き検討を行った。その結果,S-1 を含む一次治療が66 例(86.8%)に施行されており,全症例,S-1/PTX 療法,S-1/CPT-11療法,S-1/CDDP 療法のMSTはそれぞれ309,289,339,411 日であり,S-1/CPT-11 療法がS-1/PTX 療法に比してMSTの有意の延長を認めた(p<0.01)。PS(0,1,2)ごとに比較すると,MSTはそれぞれ361,289,161日であり,PS が不良となるほどMSTが短縮していたが統計学的に有意ではなかった。組織型(分化型,未分化型)に分けて検討すると,分化型の群が未分化型の群よりもMSTは有意に延長していた(p<0.05)。今後は無作為化比較試験などにより,より有効な胃癌の化学療法の確立と普及が望まれる。 -
当科における切除不能進行大腸癌および再発大腸癌に対するBevacizumabの使用経験
37巻1号(2010);View Description Hide Descriptionbevacizumab は本邦で進行・再発大腸癌に対し2007 年4 月より投与が可能になった。今回,当科で使用した症例を対象に評価を行った。対象: 2007 年4 月〜2009 年2 月までにbevacizumab を投与した進行・再発大腸癌症例は23 例で,有害事象と無増悪期間(time to progression: TTP)で評価を行った。結果:平均年齢は60 歳で進行例が14 例,再発例が9例であった。bevacizumab と併用した化学療法はFOLFOX 14 例,FOLFIRI 8 例,IFL 1 例であった。grade 3 以上の有害事象として下血の症例を1 例認めた。無増悪期間の平均は108 日であり,併用したmFOLFOX6 群とFOLFIRI 群の比較では無増悪期間に差はなかった。mFOLFOX6 群では初回治療から用いた群が,途中からbevacizumab を上乗せした群よりも無増悪期間が有意に延長していた。一方,FOLFIRI 群では差はなかった。まとめ:今回の報告例による有害事象では1 例で下血を認めたが安全に使用できた。また,併用に関してはmFOLFOX6 とFOLFIRI に差はなく,mFOLFOX6 併用では初回治療から用いたほうが良好な成績が得られた。 -
地域病院における高齢者大腸癌に対する化学療法—地域癌診療の問題点—
37巻1号(2010);View Description Hide Description奈良社会保険病院において2005 年1 月〜2008 年9 月まで,70 歳以上の大腸癌患者に対して術後補助症例18 例,切除不能症例10 例に化学療法を施行した。術後補助症例においてstageIIIa 以上の適応症例は33 例で,施行率は55%(18/33),完遂率は72%(13/18)であった。切除不能症例では一次治療としてFOLFOX/FOLFIRI(±bevacizumab)が選択され,奏効率は50%であった。有害事象はやや多い傾向はあるものの,生存率は若年者と差はみられなかった。合併症を多く有する高齢者に対する化学療法は若年者より注意を要する。高齢者医療を担う小規模な地域病院単独でも標準的な癌化学療法を施行する体制を作ることは可能であるが,人的・物的資源の限られたなかで医療レベルを維持するためには,癌診療拠点病院や診療所と新たな協力関係を築く必要がある。 -
外来化学療法患者の栄養素・食品群摂取量に関する実態調査
37巻1号(2010);View Description Hide Description外来化学療法患者の栄養素・食品群摂取量の実態をとらえ,外来化学療法における栄養サポートの課題を明らかにすることを目的とした。2007 年6 月25 日〜7 月13 日の3 週間に,兵庫県立西宮病院外来治療室においてがん化学療法を施行した患者54 名に対し,栄養素・食品摂取量把握のための食物摂取頻度調査(Food Frequency Questionnaire Based on Food Groups: FFQg: エクセル栄養君FFQgVer. 2)を実施した。有効回答数50 名,有効回答率92.6%であった。疾患別の内訳は乳がん14 名,大腸がん13 名,胃がん6 名,膵臓がん9 名,その他(リンパ腫3 名,腎がん1 名,十二指腸がん1 名,前立腺がん1 名,胆嚢がん1 名,肝臓がん1 名,本文ではまとめてその他と記す)8 名であった。各群のbody mass index(BMI,mean±SD)は乳がん22.3±3.1 kg/m2,大腸がん21.3±2.6 kg/m2,胃がん17.9±2.0 kg/m2,膵臓がん18.0±1.2 kg/m2,その他22.6±1.8 kg/m2であり,胃がんと膵臓がん患者が乳がん,大腸がん,その他の患者に比べ有意にBMIが低い結果であった。一方,各群の標準体重当たりのエネルギー摂取量(mean±SD)は乳がん31.4±5.3 kcal,大腸がん27.7±5.6 kcal,胃がん34.2±10.3 kcal,膵臓がん29.1±5.0 kcal,その他26.8±6.4 kcal であり,有意な差は認められなかった。結果から,外来化学療法患者の経口摂取量は,がん腫を問わず確保されていた。しかし,胃がんと膵臓がんの患者では,標準体重を維持できるだけの摂取をしているにもかかわらずBMI が低値であった。したがって外来化学療法患者において,定期的な栄養アセスメントと切除部位もしくは罹患部位を念頭においた栄養サポートが必要であると考えられた。 -
Rituximab併用化学療法における液性免疫能の変化および帯状疱疹(H.zoster)の発症頻度について
37巻1号(2010);View Description Hide Descriptionrituximab はヒト-マウスキメラ型抗CD20 モノクローナル抗体で,補体依存性細胞障害作用や抗体依存性細胞介在性細胞障害作用により抗腫瘍効果を発揮する。rituximab 併用化学療法では経過中に免疫グロブリンの低下が観察され,少なからぬ頻度で帯状疱疹(Herpes(H)zoster)をはじめとするウイルス再活性化が生じることが知られているが,多数例での検討結果の報告はない。rituximab 併用化学療法における免疫抑制状態を評価するため,2004 年4 月〜2008 年3 月までの4年間にrituximabを併用した化学療法を実施したB 細胞リンパ腫の初回治療205 例について治療前,治療経過中および治療後の免疫グロブリン値の変動と,ウイルス再活性化の指標としてH.zoster の発症頻度について検討した。経時的に血清IgG 値が測定可能であった89 例では,治療開始時に比し終了時の血清IgG 値は中央値−41.1%で,治療終了時に58 例が正常値以下,22例が前値の50%以下に低下した。205例のうち17 例(8.3%)にH.zoster を発症した。H.zoster発症例と非発症例の間には治療前後の血清IgG 値の変化率に有意差はなかった。rituximab 併用化学療法では比較的高度で遷延する液性免疫能低下が観察され,治療に際しては感染対策にも配慮が必要である。
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症例
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閉塞隅角緑内障患者におけるパクリタキセル治療時の過敏症対策としてフェキソフェナジン使用の検討—乳がん症例を対象とした—
37巻1号(2010);View Description Hide Descriptionパクリタキセル(PTX)は,乳がんの治療における重要な薬剤の一つである。しかしながら副作用として,血圧降下,呼吸困難感を伴う重篤な過敏症が高頻度で生じる問題点がある。その対策として,ジフェンヒドラミン,ラニチジン(もしくはファモチジン),デキサメタゾンの前投与が添付文書で義務付けられている。ところが閉塞隅角緑内障患者では,これら3 剤のうちジフェンヒドラミンは緑内障発作を誘発する可能性があるため投与が難しい。そこで,2007 年4 月〜2008 年3 月において閉塞隅角緑内障を合併する乳がん患者2 名を対象に,フェキソフェナジンを用いた過敏症対策の方法を検討した。2 名中2 名とも全コースにおいて過敏症は観察されず,緑内障発作も観察されなかった。 -
5-Fluorouracil+Epirubicin+Cyclophosphamide(FEC)療法後に術前内分泌療法が奏効した閉経前StageIV乳癌の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は33 歳,女性。左乳房のしこりを主訴に当院を受診した。精査の結果は,胸骨転移を伴う浸潤性乳管癌で,T2N0M1(OSS),StageIV,ホルモン受容体陽性,HER2 陰性と診断した。primary systemic chemotherapyとしてFEC療法を4 コース施行し,効果は部分奏効(PR)であった。その後はgoserelinとtamoxifen併用による内分泌療法に変更した。内分泌療法の効果はFEC 療法と遜色なくPR であった。内分泌療法を13 か月施行後に乳房部分切除術を施行した。術後は左乳房と胸骨に放射線治療を施行した。現在,評価可能病変はなく内分泌療法を継続している。術前内分泌療法は抗腫瘍効果,quality of life の両面から有効であった。 -
Trastuzumab併用の術前化学内分泌療法が奏効し非切除とした乳癌2 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例1 は40 歳,女性。左乳房腫瘤を主訴に当院を受診した。浸潤性乳管癌,T2N0M0,StageIIA,ER−,PR−,HER2 score 3+と診断した。primary systemic chemotherapy として,5-fluorouracil+epirubicin+cyclophosphamide(FEC)療法を6 コース施行,次いでweekly paclitaxel(PTX)+trastuzumab療法を3 コース施行し完全奏効(CR)となった。primary systemic chemotherapy 後は左乳房に放射線治療を施行した。CR判定後21 か月で,局所再発はないものの肝転移,骨転移を認めた。転移再発後は,capecitabine とtrastuzumab を併用で治療し部分奏効(PR)である。症例2 は26歳,女性。右乳房腫瘤を主訴に当院を受診した。浸潤性小葉癌,T2N0M0,StageIIA,ER+,PR−,HER2 score 2+と診断した。primary systemic chemotherapyとして,FEC 療法を4 コース施行,次いでdocetaxel+trastuzumab療法を6 コース施行しCR となった。次いでweekly PTX+trastuzumab療法を4 コース施行後,右乳房に放射線治療を施行した。15か月CR を維持している。 -
放射線療法,S-1が奏効しQOL が改善した胸壁,皮膚浸潤肺癌の1例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。左胸壁の出血を伴う腫瘤を形成した対側肺転移を伴うPS不良の高度進行肺癌に対し,疼痛に対してoxycodoneの内服療法,局所に対して放射線療法,全身化学療法としてS-1 の内服療法を併用した。良好な局所コントロール(near CR)とPS の改善を認め,外来通院治療が可能となった。積極的な疼痛緩和治療によりPSの改善が得られたことにより患者の治療意欲が向上し,結果的にquality of life(QOL)の改善だけでなく,延命効果も得られた。 -
SIADH を合併した食道小細胞癌の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description輸液付加により著明な低ナトリウム血症を生じSIADH の合併を疑った食道原発小細胞癌の1 例を報告する。症例は63 歳,男性。上部内視鏡検査にて中部食道に潰瘍浸潤型病変を認めた。生検組織診にてsmall cell carcinoma と診断。腹部CT 検査にて腹腔動脈周囲リンパ節腫大を認めたためneoadjuvant chemotherapy としてFP 療法(5-FU 750 mg/day,72時間持続点滴+CDDP 100 mg/day 1)を施行,prehydration直後より著明な低ナトリウム血症を生じ,抗癌剤投与中は補正にもかかわらずNa 117 mEq/Lにまで減少した。転移病巣の縮小,症状の改善を待って手術を施行した。切除標本の病理組織診では,多くの細胞はCD56,NSE,synaptophysin陽性であったが,ADHは証明できなかった。本症例では原発巣切除により低ナトリウム血症の消失,再発により症状再燃が認められ,臨床的にSIADH合併食道小細胞癌と診断した。 -
S-1が奏効した膵腺房細胞癌多発肝転移の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は65 歳,男性。膵腺房細胞癌に対して胃全摘,膵体尾部切除,脾摘,横行結腸部分切除後1 年目に,多発肝転移を認めた。S-1を開始したところ腫瘍は縮小,減少し,また副作用も軽微で34 か月継続した。術後4 年目に転移巣が増大し疼痛を伴うようになった。肝転移は右葉に限局し肝外転移巣を認めなかったため,肝右葉切除を施行した。肝切除後8 か月に腹膜播種,多発肺転移で緩和医療に移行した。膵腺房細胞癌はまれな疾患で悪性度も高いため,化学療法の報告は少ない。今回S-1による化学療法が奏効し,長期にわたり多発肝転移がコントロール可能であった症例を経験したので報告する。 -
S-1による胃癌術後補助化学療法中にDihydropyrimidine Dehydrogenase(DPD)欠損症が疑われた1例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は70 歳,女性。胃体上部胃癌に対して胃全摘術,脾臓合併切除+D2 郭清を施行,臨床診断ではstageIIであった。術後経過は良好で,術後4 週間目よりS-1による補助化学療法を開始,開始後8 日間異常がないことから退院,在宅療養とした。投与開始後14 日目より下痢と嘔吐を認めたが,S-1 を継続服用していた。S-1 開始21 日目で当院受診,白血球減少(grade 4),血小板減少(grade 3),脱水症(grade 4)から再入院,治療開始するが奏効せず,S-1 投与開始4 週目に肺水腫,多臓器不全により死亡された。Dannenberg Tumor Profile法により肝臓のDPDのmRNA発現量を測定したところ,発現量は著明に減弱しており,先天的なDPD活性低下からS-1 の代謝障害が推察された。 -
簡易懸濁法によるS-1投与とCDDP 併用療法を施行した狭窄を伴う4 型胃癌の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description進行再発胃癌の化学療法はS-1が中心となっているが,内服薬であるため狭窄を伴う場合には投与が困難となる。今回われわれは,切除不能な胃癌に対し簡易懸濁法でS-1 を投与しQOL が改善した症例を経験したので報告する。症例は65歳,女性。下部食道の狭窄のため飲水も困難な状態となり当センターに紹介された。精査の結果,食道に浸潤を伴う4 型の進行胃癌と診断した。6 Fr の経管栄養チューブを挿入可能であったため簡易懸濁法によりS-1 を崩壊懸濁し,この懸濁液を経管栄養チューブから注入した。S-1 100 mg/body(day 1〜21)とCDDP 80 mg/body(day 8)との併用療法を施行し1 コース施行後,三分粥を摂取可能となった。3 コース施行すると全粥摂取まで回復し外来通院が可能となった。経口摂取困難な狭窄を伴う高度進行胃癌症例に対する簡易懸濁法によるS-1 投与は有効な方法の一つであると考えられた。 -
S-1+CPT-11併用療法で長期CR が得られている切除不能胃癌の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。胃前庭部小弯に2 型癌があり,総肝動脈および固有肝動脈に接する最大径50 mm のリンパ節転移を認めた。根治切除を試みたが固有肝動脈および左肝動脈へリンパ節転移は浸潤しており,切除困難で生検のみ行い胃癌のリンパ節転移であることを確認した。術後S-1+CPT-11 併用化学療法を施行した。2コース後の上部消化管内視鏡検査と腹部CT で腫瘍は縮小,6 コース後のCT 検査でリンパ節転移巣は最大径25 mm(縮小率50%)となった。10コース後にはリンパ節は描出されず,内視鏡検査では原発巣は瘢痕となり生検でも癌が検出されず,ともに完全奏効(CR)と判断した。患者の希望で手術は行わずに同レジメンで抗癌剤治療を続行した。2年間CR が維持できた時点で化学療法を中止した。しかしその後も再発はなく,CRが8年間維持されている。 -
術後化学療法(PTX+S-1)が奏効し長期の生存を得ている胃癌多発肝転移症例の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。食欲不振,倦怠感,黒色便にて近医より当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査で進行胃癌を指摘。CT 検査にて肝腫瘍と診断された。肝病巣は根治切除が可能ではないかと考え手術を施行したが,術前診断より予想外に多発性転移がみられた。このため肝腫瘍生検にとどめ,胃全摘術とD1+No.7 リンパ節の郭清のみ行った。病理検査にて肝転移と断定された。退院後外来にて,paclitaxel(PTX)90 mg/body day 1,8 投与,S-1 120 mg/body 2 週内服1週休薬の投与法にて開始した。現在42 コース継続しているが,CT 上明らかな転移巣の縮小・消失がみられ,再発徴候はみられていない。新規抗癌剤の適応とともに良好な成績が報告されているが,なかでもPTX は腹膜移行がよく腹膜播種症例に対し優れた治療効果を有すると報告されており,肝転移症例に対しても効果が高いという報告がある。またQOLを保ちながら長期にわたっての投与が可能である。本症例については約3 年半の長期にわたって投与が施行され,重大な副作用は発症していない。 -
S-1+Docetaxel併用投与によりそれぞれ癌性腹水,Virchowリンパ節転移が消失した進行・再発胃癌の2 症例
37巻1号(2010);View Description Hide Description今回われわれは進行・再発胃癌の2 症例にS-1+docetaxel(DOC)併用療法を投与し,奏効した2 例を報告する。症例1 は43 歳,女性。4型進行胃癌に対し胃全摘術を施行し,その1 年6か月後に多量の腹水貯留が出現した。胃癌癌性腹膜炎と診断され,化学療法の投与を開始した。症例2 は53 歳,男性。Virchow 転移を含む全身リンパ節転移を伴う3 型進行胃癌に対し胃切除術を施行し,術後に化学療法の投与を開始した。両症例ともに化学療法のレジメンとしてDOC は40 mg/m2を1 時間以上かけて投与,3 週間を1コースとし,S-1は80 mg/m2/dayで朝夕2 分服,2週間投与1 週間休薬を1 コースとする併用療法とした。症例1 では腹水が消失し,症例2 では全身のリンパ節腫脹が消失した。その後は2 例ともにS-1 の内服治療に変更したが症例1 では明らかな再発を認めていない。症例2 では腹腔リンパ節のみの再腫脹を認めたためS-1+DOC の併用療法を再開して継続中である。S-1+DOC の併用療法は癌性腹膜炎やVirchow 転移を有する進行・再発胃癌の症例に対しても安全に行える有用な治療法と考えられた。 -
腹膜転移を伴う高度進行・再発胃癌におけるS-1+Paclitaxel併用療法のFeasibility 試験(OGSG0401)
37巻1号(2010);View Description Hide Description臓器転移を有する症例と比べて,予後が不良である腹膜転移を有する進行胃癌に対する標準治療は明らかでない。経口摂取が可能な腹膜転移を伴う高度進行・再発胃癌患者を対象にS-1+paclitaxel(PTX)併用療法の有効性および安全性を検討することを目的としてfeasibility 試験を行った。対象と方法:対象は経口摂取が可能な腹膜転移を伴う高度進行・再発胃癌患者7 例。投与方法は,S-1 80 mg/m2を2 週投与1 週休薬とし,PTX 50 mg/m2をday 1,8 に投与し,3週を1 コースとした。全生存期間(OS),無増悪生存期間(PFS),腫瘍縮小効果(RECIST評価,腹水評価),経口摂取可能期間,安全性(有害事象発現率とその重症度)を評価項目として,本療法の有用性と認容性を検討した。結果:登録症例の年齢の中央値は64歳(50〜75歳),男性5 例,女性2 例,投与コースの中央値は7 コース(5〜20コース)であった。OSは310 日,PFS は152日,測定可能病変を有する5 例でのRECIST評価による抗腫瘍効果はCR 1 例,PR 3例,SD 1 例,腹水は著効2 例,有効3例,無効3例,経口摂取期間の中央値は161 日であった。grade 3の有害事象を2 例に認めた。結語: S-1+PTX 併用療法は,安全に施行可能で腹水に対して有効であり,経口摂取が可能な腹膜転移を伴う進行・再発胃癌に対するレジメンの候補の一つになり得ると思われた。 -
S-1+CPT-11併用療法でCR が得られた胃癌肝転移の1例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は67 歳,男性。2004 年12 月,幽門前庭部Type 3 胃癌に対し幽門側胃切除,D2 郭清術を施行。se,n(1+),StageIIIAの診断。術後22 か月後の2006年10 月,腹部CT 検査にて肝の両葉に最大径35 mmの多発する腫瘍が認められ,胃癌多発肝転移と診断した。S-1+CPT-11 併用療法を5 コース施行した後,2007 年2 月の腹部CT 検査で,肝の両葉に多発した腫瘍はすべて消失しcomplete response(CR)となった。治療開始後32 コースのS-1+CPT-11併用療法を施行し,24 か月経過した現在無再発生存中である。治療はすべて外来通院で行われ,副作用もgrade 1 の消化器症状と皮膚症状以外認められなかった。胃癌肝転移に対しS-1+CPT-11 併用療法にてCR が得られた症例を経験した。 -
S-1術後補助化学療法中に腹部大動脈周囲リンパ節に転移した再発胃癌に対しS-1+CPT-11併用療法が奏効し30か月間CR を継続中の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。大型3 型胃癌に対し胃全摘術(D2),脾摘術が施行された。pT3,pN2,fStageIIIB,根治度Bで術後補助化学療法としてS-1 の投与を開始した。1 年後の補助化学療法中にCT で腹部大動脈周囲リンパ節の腫大を認め,再発と診断しS-1(100 mg/body,days 1〜28)+CPT-11(80 mg/ body,days 1,8,15,22)併用療法を開始した。4コース施行後リンパ節は著明に縮小(縮小率72.2%),その後CPT-11を隔週投与(days 1,15,28)に変更し,計9 コース目に消失した。全9 コース内での有害事象はgrade 1 の脱毛とgrade 2 の下痢,白血球減少を認めたのみで重篤なものはなかった。以後,患者の希望でS-1 内服のみを継続しているが,30 か月間CR を維持している。S-1+CPT-11 併用療法は外来で安全に施行でき,治療の継続性にも優れていた。 -
多発骨転移に播種性血管内凝固を合併しCDDP+CPT-11併用療法が奏効したS-1耐性胃癌の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は49 歳,女性。進行胃癌(SE,T3N2H0P1CY0M0,StageIV)に対して幽門側胃切除術を施行した。術後,S-1+paclitaxel 併用療法を5 か月,さらにS-1 単独療法を継続して施行した。術後1 年目に多発骨転移を伴う播種性血管内凝固(DIC)を発症した。DICの原因は,胃癌の進行によるものと考えられた。S-1内服中に発症したDICであり,胃癌はS-1 抵抗性であると判断された。cisplatin(CDDP)+irinotecan hydrochloride(CPT-11)併用療法による化学療法を行い,治療開始より1 週間以内にDIC から離脱した。CDDP+CPT-11 併用療法はS-1 耐性となった進行胃癌に伴うDIC の治療に有用であると考えられる。 -
切除不能大腸癌に対してCetuximab併用FOLFIRI 中に発症した肺塞栓症の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は48 歳,女性。2007 年5 月,腸閉塞により来院。S状結腸癌および多発性肺・肝転移と診断。緩和的に原発巣の切除を試みるも,小腸などの周囲臓器に浸潤があり切除不能で空腸-回腸吻合および人工肛門造設術を施行した。中心静脈ポートを挿入し,mFOLFOX6 療法を開始。2008 年5 月,増悪によりFOLFIRI に変更。11月,CEAの急激な上昇および骨盤内腫瘤の増大を認め,11 月20 日よりcetuximab を併用する。12 月24 日,急性呼吸不全にて来院。血液ガス分析ではPO2 20.6 mmHg,BE −6.8 mmol/L と著明な低酸素血症と代謝性アシドーシスを示した。CT では両側肺動脈に血栓症を認めた。一時的には歩行可能なまでに回復するが,2009 年1 月4日より肺炎を併発し,1 月19 日に永眠された。cetuximabと肺塞栓症の因果関係は不明であるが非常に興味深い症例であり,若干の文献的考察を含めて報告する。 -
術前FOLFOX4 療法にて原発巣の組織学的CR が得られた肝・肺転移を伴う進行直腸癌の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は56 歳,男性。検診の胸部X 線異常と便潜血陽性を指摘され,近医を受診した。大腸内視鏡検査で肛門縁から径3 cm 大の1 型腫瘍を認め,さらにS 状結腸にもⅠsp型病変を認めた。生検の結果,直腸病変は高分化〜中分化型腺癌,S状結腸病変は高分化型腺癌であった。CT 検査では多発する肝・肺転移と複数のリンパ節転移を認め,一期的切除不能な病態と判断しFOLFOX4 療法を開始した。4コース施行後の大腸内視鏡検査にて直腸病変の消失と遠隔転移巣の縮小,消失が認められたため,直腸,S 状結腸癌に対して外科的切除の方針とし低位前方切除術を施行した。最終病理結果では直腸癌の完全消失が認められた。 -
FOLFOX6 療法が奏効しいったんCR となるも再発後,S-1 単独投与にて再度CR を維持しているS 状結腸癌多発性肝転移の1 例
37巻1号(2010);View Description Hide Description症例は48 歳,女性。食欲低下,全身倦怠感を主訴に発見された両葉多発肝転移を伴うS 状結腸癌。腸閉塞予防目的でS 状結腸切除を施行し,第27 病日より肝転移に対して,FOLFOX6 を開始した。3 サイクル施行後のCT にてCT 上CRとなったが,grade 3 の下痢症状のためFOLFOX6 を中止した。その後2 か月後のCT にて肝臓転移が再度指摘され,S-1を単独にて1 週投薬1 週休薬にて開始した。8 サイクル施行した時点にて再度CT 上CR となった。現在も再発なくS-1 内服中である。
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